説明

α−グルコシダーゼ阻害剤

【課題】本発明は、優れたα−グルコシダーゼ阻害効果を有する組成物を提供する。
【解決手段】パシャンベの抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤、該パシャンベの抽出物が、一般式(I):


(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物を含有する抽出物であるα−グルコシダーゼ阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−グルコシダーゼ阻害剤作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
α-グルコシダーゼは、小腸上皮上に局在する糖タンパク質プロセシング及びグリコー
ゲン分解に関与する2糖類分解酵素である。この酵素を特異的に阻害するα-グルコシダ
ーゼ阻害剤は、糖質吸収を直接阻害することが可能となる。
【0003】
また、糖生物学における最近の進歩により、免疫反応、腫瘍形成、腫瘍の転移、ウィルス性や細菌性感染症および神経細胞の分化等の様々な生物機能においてグルコシダーゼが重要な役割を果たすことが分かってきた。
【0004】
そのため、α−グルコシダーゼ阻害剤は、例えば、糖尿病、肥満及びウィルス性感染症の治療薬として有用であることが報告されている(非特許文献1〜3)。近年、ストレスや運動不足による肥満、糖尿病が増加しており、より安全かつ有効なα−グルコシダーゼ阻害剤が強く望まれている。
【0005】
ところで、ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属の植物であるヒンズー名「パシャンベ」は、メラニン生成抑制効果を有し、美白化用皮膚外用剤として用いられることが報告されている(特許文献1)。また、パシャンベは、コラゲナーゼ阻害効果、エラスターゼ阻害効果等を有し、抗老化化粧料として用いられることが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-315491号公報
【特許文献2】特開2004-315492号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Eur. J. Clin. Invest. 1994 , 524, 3-10
【非特許文献2】Bioorg. Med. Chem. Lett. 2000, 10, 1081-1084
【非特許文献3】FEBS Lett. 2001, 501, 84-86
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、優れたα−グルコシダーゼ阻害効果を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、インドのアーユルベーダにて使用されているパシャンベ(pashanbheda)の抽出物が、優れたα−グルコシダーゼ阻害効果を有することを見出し、これをさらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記のα−グルコシダーゼ阻害剤を提供する。
【0011】
項1.パシャンベの抽出物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
【0012】
項2.前記抽出物が、アルコール類、グリコール類、及びエステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種の抽出溶媒を用いて抽出されたものである項1に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
【0013】
項3.パシャンベの抽出物が、一般式(I):
【0014】
【化1】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物を含有する抽出物である項1又は2に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
【0015】
項4.一般式(I):
【0016】
【化2】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
【0017】
項5.糖尿病治療剤、肥満治療剤及びウィルス性感染症治療剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである項1〜4のいずれかに記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
【0018】
項6.糖尿病、肥満又はウィルス性感染症の患者に、項1〜4のいずれかに記載のα−グルコシダーゼ阻害剤の有効量を投与して、糖尿病、肥満又はウィルス性感染症を治療する方法。
【0019】
項7.糖尿病、肥満又はウィルス性感染症の治療剤を製造するためのパシャンベの抽出物又はその活性成分である一般式(I):
【0020】
【化3】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物の使用。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、ヒンズー名pashanbheda(以下、パシャンベ )抽出物を含有す
ることを特徴とするα−グルコシダーゼ阻害剤を提供するものである。
【0023】
本発明で使用されるヒンズー名パシャンベとは、ユキノシタ科ヒマラヤユキノシタ属の植物で、Bergenialigulata(Wall.)Engl.(以下、ベルゲニア ・リグラータ)、Bergeniastracheyi(Hook.f.&Thom
s.)Engl.(以下、ベルゲニア ・ストラチェイ)、Bergeniacilia
ta(Haw.)Sternb.(以下、ベルゲニア ・シリアータ)を指し、ヒマラヤ
からインド北部に分布する。
【0024】
パシャンベ 抽出物は、根茎を使用し、調製方法は特に限定されないが、生又は乾燥し
た根茎を種々の溶媒を用い、低温から加温下において抽出する方法があげられる。
【0025】
具体的に抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の低級一価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、酢酸エチル等の低級アルキルエステルが例示され、これらの一種又は二種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0026】
上記した方法によってパシャンベから抽出物を得た後、通常、濾過、遠心分離等の常法によって残渣と固液分離することによって、抽出液を得ることができる。本発明では、得られた抽出液をそのままα−グルコシダーゼ阻害剤として用いることが可能であるが、活性が低い場合もあるため、適宜濃縮又は溶媒を留去して、エキス状や粉末状として用いることもできる。更に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒を1種又は2種以上用いた溶媒分画操作によって、得られた抽出液から活性画分を分取することができる。更に、必要に応じて、アルミナカラムクロマトグラフィーやシリカゲルクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、向流分配法等の適当な分離精製手段を1種若しくは2種以上組み合わせて精製することもできる。更に、上記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し、適宜製剤化して用いることもできる。
【0027】
なお、パシャンベからの活性化合物の単離及び同定は、具体的には実施例1の記載に従
い行うことができる。
【0028】
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、パシャンベの抽出物を有効成分として含有するものである。そして、上記パシャンベの抽出物は、その活性成分として、一般式(I):
【0029】
【化4】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物を含有している。
【0030】
化合物(I)において、R〜Rで示されるアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のC1−10アルキル基が挙げられ、好ましくは、直鎖状、分岐状又は環状のC1−6アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示される。そのうち、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0031】
化合物(I)において、R〜Rで示されるアシル基としては、アルカノイル基等が挙げられる。アルカノイル基としては、直鎖状又は分岐状のC1−6アルカノイル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐状のC1−3アルカノイル基である。具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等が例示される。特に、アセチル基が好ましい。
【0032】
化合物(I)において、好ましくは、R〜Rが全てHであるアフゼレチン(afzelechin)、該アフゼレチンのR〜Rがメチル基である化合物が高い活性を有している。
【0033】
また、化合物(I)において、クロマン環の2位炭素がR配置、3位炭素がS配置の絶対配置を有する化合物が好ましい。具体的には、(+)−アフゼレチン、(+)−テトラメトキシアフゼレチン、(+)−3−アセチル−5,7,4’−トリメトキシアフゼレチン、(+)−5,7,4’−トリメトキシアフゼレチンが好ましい。
【0034】
上記の化合物(I)は、いずれも公知化合物であるアフゼレチンからから当業者が容易に合成することができる。
【0035】
上述のように、パシャンベの抽出物及びその活性成分である化合物(I)は、α−グルコシダーゼ活性に対し高い阻害活性を有し、α−グルコシダーゼ阻害剤として有効である。具体的には、本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、糖尿病、肥満、ウィルス性感染症等の治療剤などとして有用である。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、上記したパシャンベの抽出物及び化合物(I)からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることができる。また、α−グルコシダーゼ阻害剤(或いは、糖尿病、肥満又はウィルス性感染症
の治療剤)を製造するためにパシャンベの抽出物及びその活性成分である化合物(I)を使用することができる。
【0036】
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、人体、動物に対して、注射、経直腸、点眼等の非経口投与、固形もしくは液体形態での経口投与等のための製薬上許容しうる担体とともに組成物として処方することができる。
【0037】
注射剤としての本発明の組成物の形態としては、例えば、製薬上許容しうる無菌水もしくは非水溶液、懸濁液もしくは乳濁液が挙げられる。適当な非水担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルとしては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油等)等が挙げられる。このような組成物は、補助剤を含んでいてもよく、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤等を挙げることができる。これらの組成物は、例えば、細菌保持フィルターによるろ過により、又は使用直前に滅菌水を混入することにより滅菌することができる。点眼投与のための製剤としては、例えば、溶解補助剤、保存剤、等張化剤、増粘剤等を加えてもよい。
【0038】
経口投与のための固形製剤としては、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。この固形製剤は、例えば、パシャンベの抽出物又は化合物(I)に少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、乳糖、でんぷん等)を混和して調製することができる。この製剤はまた、通常の製剤化において、不活性希釈剤以外に滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)等を含んでいても良い。カプセル剤、錠剤、又は丸剤の場合には、緩衝剤を含んでいても良い。これらの固形製剤には、さらに腸溶解性被膜を施すこともできる。
【0039】
経口投与のための液体製剤には、当業者間で普通に使用される不活性希釈剤(例えば、水を含む製薬上許容しうる乳剤、溶液、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等)が含まれていても良い。かかる不活性希釈剤に加えて、補助剤(例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、調味剤、香味剤等)等を配合することができる。経直腸投与のための製剤は、好ましくはパシャンベの抽出物又は化合物(I)に加えて、賦形剤(例えば、カカオ脂、坐剤ワックス等)等を含んでいても良い。
【0040】
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤は、糖尿病、肥満又はウィルス性感染症の患者に、その有効量を投与して、糖尿病、肥満又はウィルス性感染症を治療することができる。本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤の投与量は、投与される組成物ないし化合物の性状、投与経路、所望の処置時間、その他の要因によって左右されるが、一般に、成人に対し一日あたり約0.1から100mg/kg、特に約0.1から10mg/kgが好ましい。また、所望によりこの一日量を2〜4回に分割して投与することもできる。
【0041】
本発明のα−グルコシダーゼ阻害剤を経口的に摂取する場合には、食品添加剤として食品に添加して摂取することができる。
【0042】
食品添加剤として用いる場合には、その添加量については、特に限定的ではなく、食品の種類に応じ適宜決めればよい。例えば、清涼飲料、炭酸飲料などの液体食品や菓子類やその他の各種食品等の固形食品に添加して用いることができるが、これらの場合の添加量については、食品の種類に応じて適宜決めればよく、一例としては、上記した抽出物の乾燥重量として、含有量が0.005重量%〜5重量%程度の範囲内となるように添加すればよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明のパシャンベの抽出物及び化合物(I)は、高いα−グルコシダーゼ阻害作用を
有するため、これらを有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】α−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイの手順を示す図である。
【図2】パシャンベからの活性成分の単離操作を示す工程図である。
【図3】化合物1−5の化学構造式を示す図である。
【図4】化合物1−5のα−グルコシダーゼ阻害活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<α−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイ>
α−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイは、Shibano, Mら Chem. Pharm. Bull. 1997, 45, 700-705 に記載の方法に準じて行った。アッセイに用いる反応混合物は、次の組成からなる。
・0.1 M リン酸バッファ(pH 7.0) 475μL
・0.5 mM p−ニトロフェニル−α−グルコピラノシド(PNP-G)[0.1M リン酸バッファ
(pH 7.0)の溶液] 250 μL
・0.04 units/ml α−グルコシダーゼ溶液[0.01 M リン酸バッファ(pH 7.0)の1.0 mg/ml溶液を、アッセイ直前に、同バッファで希釈] 250 μL
・0.05-0.25 mMのDMSO溶液 25μL
37℃で30分間インキュベートした後、0.2 M炭酸ナトリウム水溶液 1 mLを加えて、反応を止めた。遊離したp−ニトロフェニルの量を、光波長400nmで比色分析した。α−グル
コシダーゼ活性(%)は、次の式から求めた。なお、式中「OD」は吸光度(Optical density)を示す。
【0046】
α−グルコシダーゼ活性(%)=[(ODテスト−ODブランク)/(コントロールODテスト−
コントロールODブランク)]×100
「ODテスト」は、テストサンプル(0.1 M リン酸バッファ、PNP-G、α−グルコシダー
ゼ溶液及びサンプル溶液)の吸収を、「ODブランク」は、溶液(0.1 M リン酸バッファ、PNP-G、0.01 M リン酸バッファ及びサンプル溶液)の吸収を、「コントロールODテスト」は、溶液(0.1 M リン酸バッファ、PNP-G、α−グルコシダーゼ溶液及びDMSO)の吸収を
、「コントロールODブランク」は、溶液(0.1 M リン酸バッファ、PNP-G、0.01 M リン酸バッファ及びDMSO)の吸収を意味する。ID50値は、阻害曲線から求めた。
【0047】
上記のα−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイの手順を、図1に示す。
【0048】
実施例1(パシャンベからの活性化合物の単離)
(1)パシャンベからのα−グルコシダーゼ活性阻害化合物の抽出及び単離
上記α−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイ方法を用いて、パシャンベからのα−グルコシダーゼ活性阻害化合物の抽出及び単離を行った。
【0049】
パシャンベ(Bergenia ligulata)からの阻害活性を有する化合物の抽出、単離は、図
2に示すバイオアッセイ誘導分画を用いて行った。パシャンベ(2kg)をエタノールで還流し、エタノール抽出物(157.9g)を得た。エタノール抽出物は、0.5μg/mlで20%の阻害活性を有していた。
【0050】
この抽出物を水に懸濁させ、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル及び水で再抽出し、各画分を減圧下濃縮し、ヘキサン画分(0.1g)、クロロホルム画分(1.1g)、酢酸エチル画分(27.0g)及び水画分(129.6g)を得た。酢酸エチル画分は、α−グルコシダーゼ阻害活性を示した(図2)。
【0051】
酢酸エチル画分をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:クロロホルム−メタノール)で画分1〜5に分画した。画分2及び3が阻害活性を示したため、この画分を併せてさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:クロロホルム−メタノール)
で繰り返し分画し、最終的に阻害活性を有する化合物1(3.0g)を白色結晶として単離した。化合物1のスペクトルデータの一部を下記に示す。この結果より、化合物は、(+)-afzelechinであることを確認した。具体的な化合物の化学構造式を図3に示す。
<化合物1>
mp 221-222℃
[α]18D +10.1° (acetone : water = 1 : 1, c 1.0); EI-MS, m/z (rel. intensity) 274 ([M]+, 36), 167 (6), 139 (100), 136 (46), 107 (57), 77 (4); IR (KBr) υmax cm-1, 3347, 2906, 1618, 1519, 1479, 1243, 1142; 1H NMR (acetone-d6) δ 2.54 (1H, dd, J = 16.0, 8.4 Hz, H-4ax), 2.95 (1H, dd, J =16, 5.8 Hz, H-4eq), 3.95-4.05 (1H, m, H-3), 4.60 (1H, d, J =8.0 Hz, H-2), 5.88 (1H, d, J =2.3 Hz, H-6), 6.03 (1H,
d, J =2.3 Hz, H-8), 6.83 (2H, dt, J =8.8, 2.6 Hz, H-3', -5'), 7.26 (2H, dt, J =8.8, 2.6 Hz, H-2', -6'); 13C NMR δ29.2 (C-4), 68.3 (C-3), 82.7 (C-2), 95.4 (C-6), 96.1 (C-8), 100.7 (C-10), 115.7 (C-3', C-5'), 129.6 (C-2', C-6'), 131.3 (C-1'), 156.9 (C-9), 157.2 (C-5), 157.2 (C-7), 158.0 (C-4'). 1H, 13C NMR 及び EI-MS
の測定値は、(+)-afzelechin (例えば、Tucci, A. Pら、Ann. Ist. Super. Sanita 1969,
5, 555-556など)と一致した。
【0052】
実施例2(活性化合物のスクリーニング)
上記化合物1に加え、その水酸基の修飾体である化合物2〜5を製造し(図3を参照)、α−グルコシダーゼ阻害活性のアッセイを行った。化合物2は、化合物1に無水酢酸/ピリジンを反応させて製造した。化合物3は、化合物1にジアゾメタンを反応させて製造した。化合物4は、化合物1のヨウ化メチル/NaHを反応させて製造した。化合物5は、化合物3をアセチル化して製造した。
【0053】
化合物1〜5の活性評価結果を図4に示す。化合物2を除き、いずれの化合物も高いα−グルコシダーゼ阻害活性を有していることが分かった。特に、化合物5が高い阻害活性を有していることが判明した。化合物1、4及び5のID50値(50%阻害濃度)は、それぞ
れ0.13、0.14、0.05であった。従って、化合物1、3〜5は、α−グルコシダーゼ阻害剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物を有効成分として含有するα−グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項2】
糖尿病治療剤、肥満治療剤及びウィルス性感染症治療剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のα−グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項3】
糖尿病、肥満又はウィルス性感染症の治療剤を製造するための一般式(I):
【化2】

(式中、R〜Rは同一又は異なってH、アルキル基又はアシル基を示す。但し、R〜Rが全てアセチル基であるものを除く。)
で表される化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51916(P2012−51916A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226536(P2011−226536)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2005−180237(P2005−180237)の分割
【原出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(599000212)香栄興業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】