説明

ねじ研削盤

【課題】高精度且つ効率的にねじ研削を行うことができるねじ研削盤を提供する。
【解決手段】ねじ研削盤1は、砥石台送り機構35により砥石車26を切り込み量を有するように位置決めした後、テーブル20をテーブル送り機構21により移動させて砥石車26をワークWに対して相対移動させるもので、ワークWの他端側のねじ溝に当接可能な測定子46を有する測定機構45と、測定子46をねじ溝に当接する位置とねじ溝から離れた位置との間で進退させる進退機構と、制御装置60とを備える。測定機構45は、測定子46の変位を検出して軸線方向におけるワークWの熱変位量を測定する。制御装置60は、測定機構45によって測定された熱変位量を基にワークW軸線方向各位置での熱変位量を算出して、算出した熱変位量を基にワークW軸線方向における送り位置を補正しながらテーブル送り機構21によりワークW及び砥石車26を相対移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状をしたワークにねじ研削を施すためのねじ研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研削盤として、例えば、特開昭61−65723号公報に開示されたものが知られている。この研削盤は、ベッドと、水平に配置されたワークの一端側を支持するための主軸台と、主軸台から間隔を空けて設けられ、ワークの他端側を支持するための心押台と、主軸台及び心押台によって支持されたワークをその軸線中心に回転させるワーク回転駆動機構と、主軸台及び心押台が上面に配設され、ワークの軸線方向に移動自在にベッド上に設けられるテーブルと、テーブル上面の、主軸台と心押台との間に配設され、ワークの外周面に当接してこのワークを回転可能に支持するワークレストと、テーブルを移動させるテーブル送り機構と、ワークの外周面に当接する砥石車と、ワークの軸線と直交する方向に移動自在にベッド上に設けられ、砥石車をその軸線中心に回転自在に支持する砥石台と、砥石車をその軸線中心に回転させる砥石車回転駆動機構と、砥石台を移動させる砥石台送り機構と、主軸台に配設され、ワークの外周面に当接する測定子を備えてワークの外径を測定する測定ヘッドなどを備える。
【0003】
前記砥石車には、ワークの外周面を研削するための外周研削部と、ねじを研削するためのねじ研削部とが一体的に形成されており、このねじ研削部は、ワークの、外周研削部によって外周面が研削された部分に当接するようになっている。
【0004】
このような研削盤では、例えば、主軸台及び心押台によって支持されたワークがワーク回転駆動機構により回転せしめられ、砥石車が砥石車回転駆動機構により回転せしめられるとともに、砥石台送り機構により砥石台が所定の切り込み量を有するようにワークの軸線と直交する方向に移動せしめられて位置決めされ、この後、テーブル送り機構によりテーブルがワークの軸線方向に移動せしめられる。これにより、ワーク外周面の全面に渡って外周研削及びねじ研削が同時に行われる。尚、外周研削及びねじ研削は、測定ヘッドによって測定されるワークの外径が所定寸法となるまで行われる。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−65723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の研削盤では、砥石車のワーク軸線方向における送り位置を調整,制御する手段を何ら備えていないので、高いリード精度が得られるねじ研削を行うことができなかった。リード精度が重要なのは、例えば、ボールねじの場合、このリード精度が位置決め精度に大きく影響するからである。
【0007】
また、研削熱や、ワークレストとの当接部に生じる摩擦熱によりワークが熱膨張することによって、ねじのリード精度が低下するという問題もある。一方、このような問題を防止すべく、温度調整時間を設けると、即ち、ワークの熱変位が一定値以下となるまでねじ研削を停止すると、ねじ研削を効率的に実施することができないという別の問題を生じる。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、ワークに対して高精度にねじ研削を行ったり、効率的にねじ研削を行うことができるねじ研削盤の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、
円筒状をしたワークの一端を支持する一端側支持部、及び前記ワークの他端を支持する他端側支持部を有するワーク支持手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークをその軸線中心に回転させる回転駆動手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークに対しねじ研削を行う砥石車と、前記ワークの外周面と砥石車とが接近,離反する方向に前記ワーク支持手段と砥石車とを相対移動させる第1送り手段と、前記ワークの軸線方向に前記ワークと砥石車とが相対移動するように前記ワーク支持手段と砥石車とを相対的に移動させる第2送り手段と、前記各送り手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記他端側支持部は、前記ワークの熱変位を許容可能に構成されたねじ研削盤において、
前記ワーク他端側のねじ溝に当接する測定子を有し、この測定子の変位を検出して軸線方向における前記ワークの熱変位量を測定する測定手段と、
前記測定子を前記ねじ溝に当接する位置と前記ねじ溝から離れた位置との間で進退させる進退手段とを備え、
前記制御手段は、前記測定手段によって測定された熱変位量を基に前記ワーク軸線方向各位置での熱変位量を算出して、算出した熱変位量を基に前記ワーク軸線方向における送り位置を補正しながら前記第2送り手段により前記ワーク及び砥石車を相対移動させるように構成されてなることを特徴とするねじ研削盤に係る。
【0010】
この発明によれば、まず、進退手段により、測定子がワーク他端側のねじ溝に当接するようにワーク支持手段によって支持されたワーク側に移動せしめられ、このとき、測定子は、ワークの熱変位量に応じ変位してねじ溝に当接する。そして、測定手段により、この測定子の変位が検出されて軸線方向におけるワークの熱変位量が測定される。熱変位量の測定が終了すると、進退手段により測定子がワークから離れるように移動せしめられる。ここで、前記熱変位量とは、例えば、ねじが実際に使用されるときと同条件の環境(温度)下における位置からの伸び量であり、この位置は、実際に測定して求めても、計算式などを用いて算出しても良い。
【0011】
この後、第1送り手段によりワーク支持手段と砥石車とが相対移動せしめられて砥石車がワークに対して所定の切り込み量を有するように位置決めされた後、砥石車がワークの一端側から他端側に向けて或いはワークの他端側から一端側に向けてワークの軸線方向に沿って移動するようにワーク支持手段と砥石車とが第2送り手段により相対移動せしめられるが、その際、制御手段により、測定手段によって測定された熱変位量を基にワーク軸線方向各位置での熱変位量が算出されて、算出された熱変位量を基にワーク軸線方向における送り位置が補正されながら第2送り手段によりワーク及び砥石車が相対移動せしめられる。このとき、ワーク及び砥石車は回転駆動手段により軸線中心に回転せしめられ、また、ワークの回転と砥石車のワーク軸線方向への移動とが同期するように制御される。ここで、前記ワーク軸線方向各位置における熱変位量とは、例えば、ワークが他端側に向けてのみ伸びたときの、ワーク軸線方向各位置における伸び量である。
【0012】
このように、ワーク軸線方向各位置における熱変位量を求めて送り位置を補正すれば、砥石車が研削時におけるワークの伸びに対応した送り位置に相対移動し、この結果、ねじ研削が高精度に行われる。
【0013】
尚、ワーク及び砥石車を複数回ワークの軸線方向に沿って相対移動させる場合には、毎回、上記と同様にして、ワーク他端側における熱変位量が測定された後、ワーク軸線方向各位置における熱変位量が算出され、算出された熱変位量を基にワーク軸線方向における送り位置が補正される。このとき、ワーク及び砥石車の相対移動方向は、毎回同じ方向としても毎回逆方向としても、どちらでも良い。
【0014】
斯くして、本発明に係るねじ研削盤によれば、ワーク他端側での熱変位量を測定してワーク軸線方向各位置における熱変位量を算出し、算出した熱変位量を基にワーク軸線方向における送り位置を補正しながら砥石車及びワークをワークの軸線方向に沿って相対移動させるようにしたので、良好なリード精度が得られるなど高精度なねじ研削を実施することができる。また、ワークの温度を下げるための温度調整時間の設定が不要であり、効率的にねじ研削を行うことができる。
【0015】
尚、上記ねじ研削盤は、前記進退手段が省略され、前記ワーク他端に着脱自在に外嵌されるリング部材を備え、前記測定手段が、前記リング部材の前記ワーク軸線方向における変位量を、軸線方向における前記ワークの熱変位量として測定するように構成されていても良い。ここで、前記測定手段は、接触式のものでも、非接触式のものでも良い。
【0016】
この場合、ワークを研削するときにリング部材がワークの他端に装着され、このリング部材はワークの熱変位によって軸線方向の位置が変化することから、このリング部材のワーク軸線方向における変位量の測定によりワークの熱変位量が測定される。リング部材の変位量を測定するに当たっては、ワークを1回転させてその時に得られる測定値の平均をリング部材の変位量としても良く、このようにすれば、より精度の良い測定を行うことができる。このようにしてワークの熱変位量を測定し、その測定結果を基にワーク軸線方向における送り位置を補正するようにしても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0017】
また、上記ねじ研削盤は、前記ワーク支持手段に代えて、前記ワークの一端及び他端をそれぞれ支持するワーク支持手段を備え、前記第2送り手段が、前記砥石車及び測定手段とワークとを相対移動させ、前記測定手段が、前記砥石車及びワークが相対移動する方向においてこれらが当接する部分よりも先行した位置のねじ溝に当接する測定子を有し、この測定子の前記ワーク軸線方向における変位量を測定するとともに、前記測定子の前記ワークに対する相対移動及び相対回転によってこのワークの全長に渡り連続的に或いは一定距離毎に又は一定時間毎に前記変位量を測定するように構成され、前記制御手段が、前記測定手段によって測定される測定値が一定となるように前記ワーク軸線方向における送り位置を補正しながら前記第2送り手段により前記ワークと砥石車及び測定手段とを相対移動させるように構成されていても良い。
【0018】
この場合、制御手段による制御の下、測定手段によって測定される測定値、即ち、測定子のワーク軸線方向における変位量が一定となるようにワーク軸線方向における送り位置が補正されながらワークと砥石車及び測定手段とが相対移動せしめられるので、例えば、ワークと砥石車との当接部よりも先行した位置のリードに倣ってねじ研削を行うことができ、砥石車のワーク軸線方向における送り位置がずれるのを防止してワークの全長に渡りリードが一定となるようにねじ研削を行うことができる。このようにしても、高い精度のねじ研削を実施することができる。
【0019】
また、上記各ねじ研削盤において、前記制御手段は、前記第2送り手段によって前記ワーク及び砥石車を相対移動させるに当たり、前記砥石車を前記ワークの他端側から一端側に向けてのみ移動させるように構成されていても良い。
【0020】
砥石車をワークに対して相対移動させると、砥石車による研削後の部分が研削熱によって順次温度上昇するが、ワークの他端側が熱変位を許容可能に支持されているので、ワークはその温度上昇により他端側に向けて伸びる。このため、砥石車をワークの一端側から他端側に向けて移動させると、砥石車による研削後の部分が他端側に向けて伸びることよって、研削前の部分である、ワークの他端と砥石車当接部との間の部分も変位し、これによってねじ研削のリード精度が低下する。一方、砥石車をワークの他端側から一端側に向けて移動させると、砥石車による研削後の部分が他端側に向けて伸びたとしても、研削前の部分である、ワークの一端と砥石車当接部との間の部分は変位しないので、リード精度に影響を与えない。したがって、砥石車をワークの他端側から一端側に向けて相対移動させれば、ワークに対して精度良くねじ研削を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係るねじ研削盤によれば、ワークに対して高精度にねじ研削を行ったり、効率的にねじ研削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態について、添付図面に基づき説明する。尚、図1は、本発明の一実施形態に係るねじ研削盤の概略構成を示した平面図であり、図2は、図1における矢示A−A方向の断面図である。また、図3は、本実施形態に係る測定機構の概略構成を示した平面図であり、図4は、図3における矢示B方向の側面図である。
【0023】
図1乃至図4に示すように、本例のねじ研削盤1は、ベッド11と、間隔を隔てて配設され、円筒状をした長尺のワークWを水平に支持する主軸台12及び心押台17と、ワークWをその軸線中心に回転させるワーク回転駆動機構(図示せず)と、ワークWの軸線方向たる左右方向に移動自在にベッド11上に設けられ、上面に主軸台12及び心押台17が配設されるテーブル20と、テーブル20を移動させるテーブル送り機構21と、ワークWの軸線と垂直な水平方向たる前後方向に移動自在にベッド11上に設けられる砥石台25と、軸線がワークWの軸線と平行な垂直面内に位置するように且つ軸線中心に回転自在に砥石台25によって支持され、ワークWの外周面に当接してねじ研削を施すための砥石車26と、砥石車26をその軸線中心に回転させる砥石車回転駆動機構30と、砥石台25を移動させる砥石台送り機構35と、テーブル20の上面の、主軸台12と心押台17との間に一定間隔で配設され、ワークWの外周面に当接してこのワークWを回転可能に支持する複数のワークレスト40と、テーブル20上に配設され、ワークWの熱変位量を測定する測定機構45と、測定機構45の測定子46をワークWに対して進退させる駆動シリンダ54と、ワーク回転駆動機構(図示せず),テーブル送り機構21,砥石車回転駆動機構30,砥石台送り機構35及び駆動シリンダ54の作動を制御する制御装置60とを備える。
【0024】
尚、前記ねじ研削盤1は、例えば、旋盤などによって外周面にボールねじのねじ溝Waが予め形成されたワーク(ねじ軸)Wの該ねじ溝Waを研削するように構成されているものとする。また、前記ワークWは、両端が他の部分よりも小径に形成された段付き形状に形成されている。
【0025】
前記主軸台12は、支持するワークWと同軸且つ回転自在に設けられる主軸13と、主軸13の先端部に設けられたセンタ14及び回し板15と、ワークWの一端側に取り付けられ、回し板15に係合してこれとともに回転する回し金16とを備えており、センタ14によってワークWの一端側を支持する。前記ワーク回転駆動機構(図示せず)は、主軸台12の内部に内蔵され、主軸13を回転させることで、回し板15,回し金16及びワークWを一体的に回転させる。
【0026】
前記心押台17は、支持するワークWと同軸に設けられるセンタ18と、センタ18をその軸線方向に移動させる機構(図示せず)と、センタ18を任意の位置に固定する機構(図示せず)とを備えており、センタ18によってワークWの他端側を支持する。また、この心押台17は、センタ18が任意位置に固定された状態であっても、ワークWの熱膨張を許容すべく、適宜ばね体などによってセンタ18の軸線方向における移動が許容されるように構成されている。したがって、ワークWは、その一端側には伸びず、他端側に向けてのみ伸びるようになっている。
【0027】
前記テーブル20は、ベッド11の上面に設けられたガイドレール11aと係合するスライダ(図示せず)を備えており、これらガイドレール11a及びスライダ(図示せず)によって移動が案内される。
【0028】
前記テーブル送り機構21は、ベッド11に固定されたサーボモータ22と、ワークWの軸線方向と平行に設けられ、サーボモータ22によって軸中心に回転せしめられるボールねじ23と、テーブル20の下面に固設され、ボールねじ23と螺合してこれに沿って移動するナット24とを備えており、ボールねじ23の回転によりナット24とともにテーブル20を前記左右方向に移動させる。
【0029】
前記砥石台25は、砥石車26の回転軸27がワークWの軸線と平行な状態(水平)から研削すべきボールねじのリード角と同じ角度だけ傾くように傾斜して配置され、ベッド11の後部側に配設されている。また、砥石台25は、ベッド11の上面に設けられたガイドレール11bと係合するスライダ25aを備えており、これらガイドレール11b及びスライダ25aによって移動が案内される。前記砥石車26は、ワークWの横側に配置され、その回転軸27が砥石台25の両側面から突出している。
【0030】
前記砥石車回転駆動機構30は、砥石台25の上面に固設された駆動モータ31と、駆動モータ31の出力軸に固設されたプーリ32と、砥石車26の回転軸27の一端に固設されたプーリ33と、各プーリ32,33間に掛け渡された伝動ベルト34とを備えており、駆動モータ31の回転動力をプーリ32,伝動ベルト34及びプーリ33を介し砥石車26に伝達してこれを回転させる。
【0031】
前記砥石台送り機構35は、ベッド11に固定されたサーボモータ36と、ワークWの軸線と垂直な水平方向に設けられ、サーボモータ36によって軸中心に回転せしめられるボールねじ37と、砥石台25の下面に固設され、ボールねじ37と螺合してこれに沿って移動するナット38とを備えており、ボールねじ37の回転によりナット38とともに砥石台25を前記前後方向に移動させる。
【0032】
前記各ワークレスト40は、砥石車26との間にワークWを挟むようにその横側に配置されてワークWの外周面に当接する第1当接部材41と、ワークWのほぼ下側に配置されてワークWの外周面に当接する第2当接部材42と、これら各当接部材41,42を支持し、テーブル20の上面に設けられた支持部材43とを備える。
【0033】
前記測定機構45は、ワークWのねじ溝Waに当接する測定子46と、測定子46を平行ばね48を介してワークWの軸線方向に変位可能に支持する第1支持部材47と、測定子46の変位を検出する変位検出部49と、変位検出部49を支持する第2支持部材51と、各支持部材47,51が固設される移動台52と、テーブル20の心押台17側に固設され、移動台52が砥石台25と同方向(前記前後方向)に移動自在に設けられるベース53とを備えており、測定子46がワークWの他端側のねじ溝Waに当接可能に構成され、変位検出部49によって検出された変位量によりワークWの軸線方向における熱変位量を測定する。尚、ワークWの熱変位量とは、例えば、ねじが実際に使用されるときと同条件の環境(温度)下における位置からの伸び量であり、この位置は、実際に測定して求めても、計算式などを用いて算出しても良い。
【0034】
前記測定子46は、矩形ブロック状に形成され、その先端部に当該ボールねじで使用される実際のボールと同じボール46aを備えており、このボール46aがねじ溝Waに当接する。また、この測定子46の一方の側面には、変位検出部49の当接部材50が当接する当接部46bが形成されている。尚、前記ボール46aは、その中心の高さがワークWの軸線と同じ高さとなるように配置されている。
【0035】
前記第1支持部材47は矩形ブロック状に形成され、測定子46と間隔を隔てた下方位置に配置される。前記平行ばね48は、ワークWの軸線方向に一定間隔を隔てた平板状の部材から構成され、測定子46及び第1支持部材47の両側面にそれぞれ設けられており、この平行ばね48によって測定子46のワークW軸線方向における移動が許容されるようになっている。
【0036】
前記変位検出部49は、測定子46の当接部46bに当接する当接部材50を有し、測定子46の変位による当接部材50の変位を検出する。前記駆動シリンダ54は、ベース53に配設され、移動台52を駆動して測定子46をワークWに対して進退させる。
【0037】
前記制御装置60は、砥石台送り機構35の制御により、砥石台25を前記前後方向に移動させて砥石車26がワークWに対して所定の切り込み量を有するように位置決めし、ワーク回転駆動機構(図示せず)及びテーブル送り機構21の制御により、ワークWの回転と砥石車26のワークW軸線方向の相対移動とを同期させつつ、所定の切り込み量を有する砥石車26がワークWの他端側から一端側に(心押台17側から主軸台12側に)相対移動するようにテーブル20を前記左右方向に移動させてワークWに対しねじ研削を施すとともに、このような相対移動を複数回繰り返して所定寸法に仕上げる。
【0038】
また、制御装置60は、砥石車26及びワークWを前記左右方向に相対移動させるに当たり、測定機構45によって測定されたワークWの熱変位量を基にワークW軸線方向各位置での熱変位量を算出して、算出した熱変位量を基にワークW軸線方向における送り位置を補正しながら、テーブル送り機構21により砥石車26をワークWの軸線方向に移動させる。
【0039】
尚、ワークW軸線方向各位置における熱変位量とは、例えば、ワークWが他端側に向けてのみ伸びたときの、ワークWの軸線方向各位置における伸び量である。したがって、図5(a)に示すように、任意の位置Xにおける熱変位量δは、例えば、測定機構45によって測定されたワークWの熱変位量をδaと、当接部材46がねじ溝Waに当接する位置の長さをLとすると、以下の数式により求めることができる。
【0040】
(数1)
δ=(X/L)×δa
【0041】
また、図5(a)のように、ワークWの一端側端部から長さを規定するのではなく、図5(b)に示すように、ワークWの一端側のねじ形成部から長さを規定するようにしても良い。
【0042】
以上のように構成された本例のねじ研削盤1によれば、以下に説明するようにしてワークWに対しねじ研削が行われる。即ち、まず、ワークWが主軸台12及び心押台17によって支持された後、駆動シリンダ54により移動台52が駆動されて測定子46がワークW側に移動せしめられ、測定子46のボール46aがワークWの他端側のねじ溝Waに当接する。
【0043】
このとき、ワークWの熱変位に応じ、測定子46が平行ばね48の付勢力に抗してワークWの軸線方向に変位する。そして、この測定子46の変位量が変位検出部49により検出されて、測定子46が当接したねじ溝Wa位置におけるワークWの熱変位量が測定される。このようにしてワークWの熱変位量が測定されると、駆動シリンダ54により移動台52が駆動されて測定子46がワークWから離れるように移動せしめられる。
【0044】
この後、砥石台送り機構35により砥石車26がワークWに対して所定の切り込み量を有するように位置決めされた後、ワーク回転駆動機構(図示せず)及び砥石車回転駆動機構30によりワークW及び砥石車26がそれぞれ回転せしめられた状態で、テーブル送り機構21により砥石車26がワークWの他端側から一端側に移動せしめられ、ワークWの外周面(両端の小径部を除いた部分)のねじ溝Waが砥石車26によって他端側から一端側に向けて順次研削されていくが、このとき、制御装置60により、測定機構45によって測定されたワークWの熱変位量を基にワークW軸線方向各位置での熱変位量が算出されて、算出された熱変位量を基に砥石車26の送り位置が調整されつつ砥石車26がワークWの他端側から一端側に相対的に移動せしめられる。これにより、砥石車26が研削時におけるワークWの伸びに対応した送り位置に相対移動し、この結果、ねじ研削が高精度に行われる。
【0045】
そして、砥石車26がワークWの一端側まで移動し、また、ワークWのほぼ全長に渡ってねじ研削が行われると、上記と同様にして、ワークWの他端側における熱変位量が測定された後、再度、砥石台送り機構35により砥石車26がワークWに対して所定の切り込み量を有するように位置決めされ、テーブル送り機構21により砥石車26がワークWの他端側から一端側に移動せしめられてワークWが研削されるが、その際、測定されたワークWの熱変位量を基に砥石車26の送り位置が調整される。これにより、前回の研削で生じたワークWの熱変位量を考慮して送り制御を行うことができ、より精度の高いねじ研削を実施することができる。
【0046】
以降、一定回数に達するまで研削が繰り返されるが、毎回、ワークWの熱変位量が測定されて、測定された熱変位量を基に砥石車26の送り位置が補正される。
【0047】
このように、本例のねじ研削盤1によれば、ワークWの熱変位に合わせた送り位置に砥石車26を相対移動させながらねじ研削するようにしたので、良好なリード精度が得られるなど高精度なねじ研削を実施することができる。また、ワークWの温度を下げるための温度調整時間の設定が不要であり、効率的にねじ研削を行うことができる。
【0048】
また、ねじ研削時に砥石車26をワークWの他端側から一端側に向けて移動させるようにしたので、このことによっても高精度にねじ研削を実施することができる。即ち、砥石車26をワークWに対して相対移動させると、砥石車26による研削後の部分が研削熱によって順次温度上昇するが、ワークWの他端側が熱変位を許容可能に支持されているので、ワークWはその温度上昇により他端側に向けて伸びるため、砥石車26をワークWの一端側から他端側に向けて移動させると、砥石車26による研削後の部分が他端側に向けて伸びることよって、研削前の部分である、ワークWの他端と砥石車26当接部との間の部分も変位し、これによってねじ研削のリード精度が低下する。一方、砥石車26をワークWの他端側から一端側に向けて移動させると、砥石車26による研削後の部分が他端側に向けて伸びたとしても、研削前の部分である、ワークWの一端と砥石車26当接部との間の部分は変位しないので、リード精度に影響を与えない。したがって、ワークWに対して精度良くねじ研削を行うことができるのである。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0050】
上例では、ワークWの熱変位量を測定するに当たり、測定子46をワークWのねじ溝Waに当接させるようにしたが、これに限られるものではない。例えば、図6及び図7に示すように、ワークWの他端の、ねじ溝Waが形成されていない部分にリング部材65を着脱自在に外嵌し、このリング部材65の変位量を測定するようにしても良い。
【0051】
この場合、前記測定機構45に代えて測定機構66が設けられ、この測定機構66は、リング部材65の変位量を測定する測定ヘッド67と、テーブル20の心押台17側に固設され、測定ヘッド67をワークWに対して進退自在に支持する支持部材69とを備えており、測定ヘッド67は、リング部材65の心押台17側の端面に当接する測定子68を有し、この測定子68の変位を検出してリング部材65の変位量を測定する。
【0052】
尚、リング部材65の変位量を測定するに当たっては、ワークWを1回転させてその時に得られる測定値の平均をリング部材65の変位量としても良く、このようにすれば、より精度の良い測定を行うことができる。また、リング部材65は、ワークWをねじ研削するときのみ装着され、ねじ研削終了後は取り外されるようになっている。また、測定ヘッド67は、測定を行うときのみワークW側に移動させ、測定終了後は元の退避位置に移動させても良いが、一連のねじ研削が完了するまで、ずっとワークW側に移動させておいても良い。
【0053】
前記リング部材65はワークWの熱変位によってその軸線方向の位置が変化するので、このリング部材65のワークW軸線方向における変位量を測定することによってワークWの熱変位量を測定することができる。そして、このようにして得られたワークWの熱変位量を基に補正を行えば、上記と同様、高精度にねじ研削を行うことができる。尚、この場合においても、任意の位置Xにおける熱変位量δは、図8(a)や図8(b)に示すように、上述の数式1により求められる。また、リング部材65の変位量を測定するに当たっては、非接触式の測定手段を採用しても良い。
【0054】
また、前記ねじ研削盤1は、図9乃至図11に示すようなものとして構成することもできる。この場合において、前記測定機構45は、ベース53がベッド11上に配設され、測定子46が砥石車26よりも主軸台12側に配置されてボール46aが砥石車26及びワークWが相対移動する方向においてこれらが当接する部分よりも先行した位置のねじ溝Waに当接し、変位検出部49が測定子46のボール46aのワークWに対する相対移動及び相対回転によってこのワークWのほぼ全長に渡り連続的に或いは一定距離毎に又は一定時間毎に測定子46の変位を検出し、変位検出部49により測定子46の変位を検出して測定子46のワークW軸線方向における変位量を測定するように構成され、制御装置60は、測定機構45によって測定される測定値が一定となるようにワークW軸線方向における送り位置を補正しながらテーブル送り機構21により砥石車26をワークWの軸線方向に移動させる。
【0055】
尚、測定子46は、ねじ研削を行う際に、駆動シリンダ54によりボール46aがねじ溝Waに当接する位置に移動せしめられ、ねじ研削の終了後は、退避位置に移動せしめられる。
【0056】
このようにすれば、制御装置60による制御の下、測定機構45によって測定される測定値、即ち、測定子46のワークW軸線方向における変位量が一定となるようにワークW軸線方向における送り位置が補正されながらワークWと砥石車26及び測定子46とが相対移動せしめられるので、例えば、ワークWと砥石車26との当接部よりも先行した位置のリードに倣ってねじ研削を行うことができ、砥石車26のワークW軸線方向の送り位置がずれるのを防止してワークWの全長に渡りリードが一定となるようにねじ研削を行うことができる。このようにしても、高い精度のねじ研削を実施することができる。
【0057】
上記ねじ研削盤1の具体的な構造や動作は、上述したものに何ら限定されるものではなく、また、前記測定機構45,66の具体的構造や配置位置についても上述したものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るねじ研削盤の概略構成を示した平面図である。
【図2】図1における矢示A−A方向の断面図である。
【図3】本実施形態に係る測定機構の概略構成を示した平面図である。
【図4】図3における矢示B方向の側面図である。
【図5】ワーク軸線方向の任意位置での熱変位量を説明するための説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る測定機構などの概略構成を示した平面図である。
【図7】図6における矢示C方向の側面図である。
【図8】ワーク軸線方向の任意位置での熱変位量を説明するための説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るねじ研削盤の概略構成を示した断面図である。
【図10】図9における矢示D方向の平面図である。
【図11】図10における矢示E方向の側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 ねじ研削盤
11 ベッド
12 主軸台
14 センタ
17 心押台
18 センタ
20 テーブル
21 テーブル送り機構
25 砥石台
26 砥石車
30 砥石車回転駆動機構
35 砥石台送り機構
45 測定機構
46 測定子
47 第1支持部材
48 平行ばね
49 変位検出部
50 当接部材
60 制御装置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をしたワークの一端を支持する一端側支持部、及び前記ワークの他端を支持する他端側支持部を有するワーク支持手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークをその軸線中心に回転させる回転駆動手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークに対しねじ研削を行う砥石車と、前記ワークの外周面と砥石車とが接近,離反する方向に前記ワーク支持手段と砥石車とを相対移動させる第1送り手段と、前記ワークの軸線方向に前記ワークと砥石車とが相対移動するように前記ワーク支持手段と砥石車とを相対的に移動させる第2送り手段と、前記各送り手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記他端側支持部は、前記ワークの熱変位を許容可能に構成されたねじ研削盤において、
前記ワーク他端側のねじ溝に当接する測定子を有し、この測定子の変位を検出して軸線方向における前記ワークの熱変位量を測定する測定手段と、
前記測定子を前記ねじ溝に当接する位置と前記ねじ溝から離れた位置との間で進退させる進退手段とを備え、
前記制御手段は、前記測定手段によって測定された熱変位量を基に前記ワーク軸線方向各位置での熱変位量を算出して、算出した熱変位量を基に前記ワーク軸線方向における送り位置を補正しながら前記第2送り手段により前記ワーク及び砥石車を相対移動させるように構成されてなることを特徴とするねじ研削盤。
【請求項2】
円筒状をしたワークの一端を支持する一端側支持部、及び前記ワークの他端を支持する他端側支持部を有するワーク支持手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークをその軸線中心に回転させる回転駆動手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークに対しねじ研削を行う砥石車と、前記ワークの外周面と砥石車とが接近,離反する方向に前記ワーク支持手段と砥石車とを相対移動させる第1送り手段と、前記ワークの軸線方向に前記ワークと砥石車とが相対移動するように前記ワーク支持手段と砥石車とを相対的に移動させる第2送り手段と、前記各送り手段の作動を制御する制御手段とを備え、前記他端側支持部は、前記ワークの熱変位を許容可能に構成されたねじ研削盤において、
前記ワーク他端側に着脱自在に外嵌されるリング部材と、
前記リング部材の前記ワーク軸線方向における変位量を、軸線方向における前記ワークの熱変位量として測定する測定手段とを備え、
前記制御手段は、前記測定手段によって測定された熱変位量を基に前記ワーク軸線方向各位置での熱変位量を算出して、算出した熱変位量を基に前記ワーク軸線方向における送り位置を補正しながら前記第2送り手段により前記ワーク及び砥石車を相対移動させるように構成されてなることを特徴とするねじ研削盤。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2送り手段によって前記ワーク及び砥石車を相対移動させるに当たり、前記砥石車を前記ワークの他端側から一端側に向けてのみ移動させるように構成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のねじ研削盤。
【請求項4】
円筒状をしたワークの一端及び他端をそれぞれ支持するワーク支持手段と、前記ワーク支持手段によって支持されたワークをその軸線中心に回転させる回転駆動手段と、前記ワークに対しねじ研削を行う砥石車と、前記ワークの外周面と砥石車とが接近,離反する方向に前記ワーク支持手段と砥石車とを相対移動させる第1送り手段と、前記ワークの軸線方向に前記ワークと砥石車とが相対移動するように前記ワーク支持手段と砥石車とを相対的に移動させる第2送り手段と、前記各送り手段の作動を制御する制御手段とを備えたねじ研削盤において、
前記砥石車及びワークが相対移動する方向においてこれらが当接する部分よりも先行した位置のねじ溝に当接する測定子を有し、この測定子の前記ワーク軸線方向における変位量を測定する測定手段を備え、
前記第2送り手段は、前記砥石車及び測定手段とワークとを相対移動させ、
前記測定手段は、前記測定子の前記ワークに対する相対移動及び相対回転によってこのワークの全長に渡り連続的に或いは一定距離毎に又は一定時間毎に前記変位量を測定し、
前記制御手段は、前記測定手段によって測定される測定値が一定となるように前記ワーク軸線方向における送り位置を補正しながら前記第2送り手段により前記ワークと砥石車及び測定手段とを相対移動させるように構成されてなることを特徴とするねじ研削盤。
【請求項5】
前記ワーク支持手段は、前記ワークの一端を支持する一端側支持部と、前記ワークの他端を支持する他端側支持部とを有し、この他端側支持部が前記ワークの熱変位を許容可能に構成され、
前記制御手段は、前記第2送り手段によって前記ワーク及び砥石車を相対移動させるに当たり、前記砥石車を前記ワークの他端側から一端側に向けてのみ移動させるように構成されてなることを特徴とする請求項4記載のねじ研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−42483(P2010−42483A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208851(P2008−208851)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】