説明

はんだバンプ形成方法

【課題】半導体チップとの接続信頼性に優れたはんだバンプの形成方法を提供する。
【解決手段】基板11表面に被着したソルダーレジスト層12の開口部13に露出した複数の電極14表面にはんだバンプ30を形成する方法であって、各電極14の露出した一端側が接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように開口部13を前記投影面積外に延設する工程と、半導体チップのバンプ接合部位20を除く電極露出部位に樹脂マスク層21を形成する工程と、バンプ接合部位20の電極14表面にはんだペースト組成物を充填し加熱してはんだバンプ30を形成する工程と、はんだバンプ30を形成した後に樹脂マスク層21を除去する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の電極表面にはんだバンプを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バンプ(金属突起)を有する半導体チップを半導体パッケージ用の配線基板に搭載する方法として、フリップチップ接合がある。フリップチップ接合は、半導体チップのバンプと配線基板の電極とを対向させて接合する方法である。一般に、接合後の半導体チップと配線基板との間は接合強度を補強するうえで、アンダーフィルと呼ばれる樹脂で封止される。
【0003】
図4(a)〜(c)は、半導体チップと従来の配線基板とのフリップチップ接合を説明するための概略説明図である。図4(a)に示すように、この配線基板50は、基板51の表面にソルダーレジスト層52が被着しており、該ソルダーレジスト層52の開口部53に、半導体チップ60のバンプ61とフリップチップ接合するための電極54が露出している。
【0004】
電極54の表面には、はんだバンプ55が形成されており、該はんだバンプ55の最大突起部に半導体チップ60のバンプ61を当接させた状態ではんだバンプ55を加熱溶融し、半導体チップ60のバンプ61と配線基板50の電極54とがはんだバンプ55を介して電気的に接合されている(フリップチップ接合)。
【0005】
ついで、接合された半導体チップ60と配線基板50との間にアンダーフィルが充填されることにより、半導体チップ60が配線基板50上に実装される。
しかしながら、開口部53は接合された半導体チップ60の投影面積内に配置されているので、ソルダーレジスト層52の方が開口部53よりも半導体チップ60との距離が近い構成となっている。
【0006】
このため、図4(b)に示すように、半導体チップ60と配線基板50との間にアンダーフィル70を充填すると、毛細管現象によりソルダーレジスト層52の方が開口部53よりもアンダーフィル70の濡れ広がりが早く、開口部53の外周から先に充填されてしまい、その結果、図4(c)に示すように、開口部53に気泡71が形成されてしまう。気泡71が形成されると、十分な接合強度が得られないので、半導体チップ60と配線基板50との接続信頼性が低くなるという問題がある。
【0007】
一方、ソルダーレジスト層の開口部が、該開口部に露出する各電極の一端側が配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように、前記投影面積外に延設された配線基板が提案されている。図5は、この配線基板を示す平面図であり、図6は、図5の配線基板に半導体チップを搭載した状態を示す平面図であり、図7は、図6のソルダーレジスト層の開口部周辺を示す概略断面図である。また、図8(a)〜(c)は、図5の配線基板の電極に形成されたはんだバンプを示す概略断面図である。
【0008】
図5〜図7に示すように、この配線基板10は、基板11の表面にソルダーレジスト層12が被着しており、該ソルダーレジスト層12の開口部13は、該開口部13に露出する各電極14の一端側が配線基板10にフリップチップ接合される半導体チップ60の鉛直投影面積外に位置するように、前記投影面積外に延設されている。開口部13をこのような構成にすると、アンダーフィルの充填において、上記毛細管現象による影響を受けにくくなるので、気泡の形成が抑制される。
【0009】
一方、はんだバンプの形成方法は、ソルダーレジスト層に露出する電極にはんだペースト組成物を塗布して加熱し、溶融させたはんだの表面張力で最大突起部を形成する方法が一般に採用される。このため、半導体チップ60のバンプ61との接合部位(バンプ接合部位)に最大突起部を有するはんだバンプを形成するには、該電極長さは短い方がよいと考えられる。
【0010】
しかしながら、開口部13に露出する電極14の長さは、開口部13の幅が長くなった分、長くなるので、該電極14に形成されるはんだバンプ85は、図8(a),(b)に示すように、表面張力で引き起こされるはんだバンプ85の最大突起部の位置が変動したり、図8(c)に示すように、はんだバンプ85の最大突起部が複数個所に形成され、その結果、配線基板10と半導体チップ60との接続信頼性が低下するという問題がある。
【0011】
特許文献1には、配線となる配線パターンと、該配線パターンと連続的に形成されバンプが接合される接続パッドとを有する接続部導体パターンにおいて、前記接続パッドの幅寸法を配線パターンの幅寸法より大きく構成することで、ソルダーレジスト層から露出する接続部導体パターンが長くなっても、はんだバンプを前記接続パッド上に形成することができるフリップチップ実装基板の製造方法が記載されている。
【0012】
しかしながら、この文献に記載されているフリップチップ実装基板を用いても、必ずしもはんだバンプを所定位置に形成できないのが現状である。
【特許文献1】特許第3420076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、半導体チップとの接続信頼性に優れたはんだバンプの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ソルダーレジスト層の開口部が、前記のように配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に延設されている場合に、半導体チップのバンプ接合部位を除く電極露出部位に樹脂マスク層を形成する場合には、前記バンプ接合部位にはんだバンプを確実に形成することができるという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明のはんだバンプ形成方法は、以下の構成からなる。
(1)配線基板の基板表面に被着したソルダーレジスト層の開口部に露出した複数の電極表面にはんだバンプを形成する方法であって、各電極の露出した一端側が前記配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように前記ソルダーレジスト層の開口部を前記投影面積外に延設する工程と、半導体チップのバンプ接合部位を除く電極露出部位に樹脂マスク層を形成する工程と、前記半導体チップのバンプ接合部位の電極表面にはんだペースト組成物を充填し加熱してはんだバンプを形成する工程と、前記はんだバンプを形成した後に前記樹脂マスク層を除去する工程とを含むことを特徴とするはんだバンプ形成方法。
(2)前記樹脂マスク層がドライフィルムレジストからなる前記(1)記載のはんだバンプ形成方法。
(3)前記はんだバンプは、析出型はんだ組成物を加熱して析出させたものである前記(1)または(2)記載のはんだバンプ形成方法。
(4)前記樹脂マスク層を除去した後にフリップチップ接合された半導体チップと配線基板との間にアンダーフィルを充填する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のはんだバンプ形成方法。
なお、本発明における上記「バンプ接合部位」は、バンプ接合位置のみに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、バンプ接合位置およびその近傍をも含む概念である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ソルダーレジスト層の開口部が、該開口部に露出する各電極の一端側が配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように、前記投影面積外に延設されているので、接合された半導体チップと配線基板との間にアンダーフィルを充填する場合には、上記毛細管現象による影響を受けにくくなり、開口部に気泡が形成されることなく充填することができ、開口部を延設することによる該開口部に露出する電極長さが長くなっても、該電極の半導体チップのバンプ接合部位を除く電極露出部位に樹脂マスク層を形成するので、前記バンプ接合部位にはんだバンプを確実に形成することができ、その結果、半導体チップとの接続信頼性が向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかるはんだバンプ形成方法の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)〜(d)は、本実施形態のはんだバンプ形成方法を示す工程図である。図1(a)に示すように、このはんだバンプ形成方法は、配線基板10の基板11表面に被着したソルダーレジスト層12の開口部13に露出し、半導体チップのバンプとフリップチップ接合するための複数の電極14表面にはんだバンプを形成する方法である。
【0018】
配線基板10は、図1(a)および図5〜図7に示すように、基板11の表面にソルダーレジスト層12が被着しており、該ソルダーレジスト層12の開口部13に電極14が複数露出している。基板11は、特に限定されるものではなく、半導体チップをフリップチップ接合により搭載することができる各種の公知の基板が採用可能である。ソルダーレジスト層12は、各電極14の電気的絶縁信頼性を高めると共に、基板11を外部環境の変化等から保護する機能を有し、例えばエポキシ系、アクリル系、ポリイミド系の樹脂等が採用可能である。また、ソルダーレジスト層12の厚みは5〜60μm程度であるのが好ましい。電極14は、半導体チップ60のバンプ61とフリップチップ接合するためのものであり、基板11の表面に所定のピッチで複数設けられている。
【0019】
ここで、本発明方法では、まず、各電極14の露出した一端側が配線基板10にフリップチップ接合される半導体チップ60の鉛直投影面積外に位置するように、ソルダーレジスト層12の開口部13を前記延設投影面積外に延設する。これにより、接合された半導体チップ60と配線基板10との間にアンダーフィルを充填する際には、上記毛細管現象による影響を受けにくくなるので、開口部13に気泡が形成されることなく、アンダーフィルを充填することが可能となる。
【0020】
ついで、図1(b)に示すように、延設された開口部13に露出した電極14の半導体チップ60のバンプ接合部位20を除く電極露出部位に、樹脂マスク層21を形成する。これにより、開口部13を延設することによる該開口部13に露出する電極14の長さが長くなっても、バンプ接合部位20にはんだバンプを確実に形成することができる。
【0021】
樹脂マスク層21を構成する樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、均一な厚膜形成の上で、フィルム状の感光性樹脂を用いるのが好ましく、ドライフィルムレジストであるのが特に好ましい。ドライフィルムレジストとは、支持フィルム上に感光性樹脂を積層し、この感光性樹脂層の表面(すなわち支持フィルムとは反対側の面)に保護フィルムを設けてなる3層の感光性樹脂積層体を意味する。
【0022】
前記感光性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばアルカリ可溶性高分子、付加重合性モノマー、光重合開始剤などから構成される。
【0023】
ここで、はんだバンプを後述する析出型はんだ組成物により形成する場合には、はんだ析出量の上で、感光性樹脂層の厚みは5μm以上、好ましくは10μm以上であるのがよい。また、感光性樹脂層の厚みは300μm以下、好ましくは150μm以下であるのがよく、厚みが300μmを超えると、感光性樹脂層の底部まで硬化させるのが困難になる。
【0024】
なお、ドライフィルムレジストとしては、例えば旭化成エレクトロニクス社製の「サンフォート」(登録商標)、デュポン社製の「リストン」(登録商標)、関西ペイント社製の「ゾンネ」(登録商標)等を用いることができる。
【0025】
上記ドライフィルムレジストを用いて樹脂マスク層21を形成するには、まずドライフィルムレジストから保護フィルムを剥がし、感光性樹脂層を配線基板10の表面に圧着する。そして、支持フィルム上に半導体チップのバンプ接合部位20が描かれたフォトマスクを重ねて露光し、露光した部分の感光性樹脂層を光硬化させる。ついで、マスクおよび支持フィルムを剥離した後、Na2CO3水溶液などで現像することにより、図1(b)に示すようなバンプ接合部位20の部分に開口部22を有する樹脂マスク層21が形成される。
【0026】
樹脂マスク層21の厚さは、形成されるはんだバンプの高さより高くてもよく、あるいは低くてもよい。具体的には、はんだバンプの高さが、樹脂マスク層21の厚さとソルダーレジスト層12の厚さを合わせた総厚みに対して0.05〜3倍、好ましくは0.1〜1.5倍であるのがよい。通常、樹脂マスク層21の厚さは約5〜300μm、好ましくは約10〜150μmである。
【0027】
ついで、図1(c)に示すように、樹脂マスク層21によって囲まれた開口部22内の電極14の表面、すなわちバンプ接合部位20の電極14の表面にはんだペースト組成物を充填して加熱し、はんだを電極14の表面に付着させてはんだバンプ30を形成する。これにより、加熱されて溶融したはんだの表面張力で形成されるはんだバンプを、確実にバンプ接合部位20に形成することができる。
【0028】
はんだペースト組成物は、はんだ粉末を含有し、該はんだ粉末の組成としては、各種の公知のはんだ粉末が採用可能であり、例えば錫(Sn)−鉛(Pb)系、Sn−Ag(銀)系、Sn−Cu(銅)系等のはんだ合金粉末の他、Sn−Ag−In(インジウム)系、Sn−Ag−Bi(ビスマス)系、Sn−Ag−Cu系等の無鉛合金粉末が挙げられる。また、これらのはんだ粉末は、それぞれ単独で使用できるほか、2種以上をブレンドして用いてもよく、例えばSn−Ag−In系とSn−Ag−Bi系とをブレンドし、Sn−Ag−In−Bi系等としてもよい。
【0029】
前記Sn−Ag系のはんだ合金粉末は、その組成中、Agの含有量は0.3〜5.0重量%であり、残部がSnであるのが好ましい。また、SnおよびAg以外の成分(In、Bi、Cu等)の含有量は0.1〜15重量%であるのがよい。
【0030】
はんだ粉末の平均粒子径は0.5〜50μm、好ましくは1〜30μmであるのがよい。前記平均粒子径は、粒度分布測定装置で測定して得られる値である。
【0031】
本発明にかかるはんだペースト組成物は、微細なピッチでも正確に電極14上にはんだバンプ30を形成することができ、かつボイドの発生を抑制することができるうえで、析出型はんだ組成物であるのが好ましい。析出型はんだ組成物とは、例えばはんだ粉末として錫粉末と、有機酸の鉛塩などとを含むものであり、該組成物を加熱すると、有機酸鉛塩の鉛原子が錫原子と置換して遊離し、過剰の錫金属粉末中に拡散しSn‐Pb合金を形成するものである。
【0032】
本発明にかかる析出型はんだ組成物は、(a)錫粉末と、鉛、銅、銀等の金属塩とを含有した析出型はんだ組成物、あるいは(b)錫粉末と;銀イオン及び銅イオンから選ばれる少なくとも一種と、アリールホスフィン類、アルキルホスフィン類及びアゾール類から選ばれる少なくも一種との錯体とを含有した析出型はんだ組成物が挙げられる。上記(a)の金属塩と(b)の錯体とは混合して使用することもできる。本発明では、特に鉛を含有しない鉛フリーの析出型はんだ組成物を使用するのが好ましい。
なお、本発明において錫粉末というときは、金属錫粉末の他、例えば銀を含有する錫−銀系の錫合金粉末や銅を含有する錫−銅系の錫合金粉末なども含むものとする。
【0033】
前記金属塩としては、例えば有機カルボン酸塩、有機スルホン酸塩などが挙げられる。有機カルボン酸としては、炭素数1〜40のモノまたはジカルボン酸を使用することができる。これを例示すると、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの低級脂肪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの動植物油脂から得られる脂肪酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、n−ウンデカン酸などの有機合成反応から得られる各種合成酸、ピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などの樹脂酸、石油から得られるナフテン酸などのモノカルボン酸とトール油脂肪酸または大豆脂肪酸から合成して得られるダイマー酸、ロジンを二量化させた重合ロジンなどのジカルボン酸などであり、これらを二種以上含むものでもよい。
【0034】
また有機スルホン酸としては、例えばメタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、アニソールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられ、これらを二種以上含むものでもよい。
【0035】
また、前記した銀や銅の錯体としては、銀イオンおよび/または銅イオンと、アリールホスフィン類、アルキルホスフィン類およびアゾール類から選ばれる少なくとも一種との錯体が挙げられる。
【0036】
前記ホスフィン類としては、例えば5−メルカプト−1−フェニルテトラゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−オクチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール等が好適に用いられる。
【0037】
アリールホスフィン類またはアルキルホスフィン類との錯体は、カチオン性であるので、カウンターアニオンが必要である。このカウンターアニオンとしては、有機スルホン酸イオン、有機カルボン酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオンまたは硫酸イオンが適当である。これらは、単独であるいは二種以上を併用して使用することができる。
【0038】
カウンターアニオンとして使用される有機スルホン酸としては、例えばメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が好適である。また、カウンターアニオンとして使用される有機カルボン酸としては、例えばギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸又はパーフルオロプロピオン酸が好適であり、酢酸、乳酸、トリフルオロ酢酸等が好適に用いられる。
【0039】
前記アゾール類としては、例えばテトラゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ピロール、インドール又はこれらの誘導体の一種又は二種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも、5−メルカプト−1−フェニルテトラゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−オクチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール等が好適に用いられる。
【0040】
前記組成物中の前記錫粉末と、前記金属の塩または錯体との比率(錫粉末の重量:金属の塩または錯体の重量)は99:1〜50:50程度、好ましくは97:3〜60:40程度とするのがよい。
【0041】
前記組成物中には、前記成分以外にフラックスを含有するのが好ましい。該フラックスとしては、ベース樹脂、活性剤およびチキソトロピー剤等を主成分とし、フラックスを液状にして使用する場合には、さらに有機溶剤を加えるようにしてもよい。
【0042】
前記ベース樹脂としては、例えばロジンまたはアクリル樹脂等を用いることができる。前記ロジンとしては、従来からフラックス用途で用いられているロジンおよびその誘導体を使用することができる。ロジンおよびその誘導体としては、例えば通常のガム、トール、ウッドロジンが用いられ、その誘導体として熱処理した樹脂、重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂等が挙げられる。
【0043】
前記アクリル樹脂としては、分子量が10,000以下、好ましくは3,000〜8,000であるのがよい。分子量が10,000を超えると、耐亀裂性や耐剥離性が低下するおそれがある。また、活性作用を助長するために、酸価は30以上のものを使用するのが好ましく、はんだ付け時には軟化している必要があるため、軟化点は230℃以下であるのが好ましい。そのため、重合性不飽和基を有するモノマー、例えば(メタ)アクリル酸、その各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸およびそのエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル等を使用し、過酸化物等の触媒を用いて、塊状重合法、液状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合により重合されたものを使用するのがよい。
【0044】
上記したこれらのベース樹脂は併用することができ、例えば前記ロジンと前記アクリル樹脂を混合して使用することもできる。また、ベース樹脂の含有量は、フラックス総量に対して20〜60重量%、好ましく30〜50重量%であるのがよい。
【0045】
前記活性剤としては、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン等のハロゲン化水素酸塩、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸、安息香酸等の有機カルボン酸等が挙げられる。活性剤の含有量は、フラックス総量に対して0.1〜30重量%であるのがよい。
【0046】
前記チキソトロピー剤としては、例えば硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス等があげられる。チキソ剤の含有量は、フラックス総量に対して1〜7重量%であるのがよい。
【0047】
前記有機溶剤としては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、トルエン、テレピン油等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、揮発性、活性剤の溶解性の点でアルコール系溶剤を主溶剤とするのが好ましい。有機溶剤は、フラックス総量に対して20〜50重量%の範囲で添加するのが好ましい。
【0048】
さらに、本発明にかかるフラックスは、従来からフラックスのベース樹脂として公知のポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルベン樹脂等の合成樹脂等を併用することや、酸化防止剤、防黴剤、つや消し剤等の添加剤を添加することもできる。また、はんだペースト組成物が前記析出型はんだ組成物である場合には、該フラックス中に、前記金属の塩または錯体を含有させてもよい。
【0049】
電極14にはんだバンプ30を形成するには、上記で説明したはんだペースト組成物をスクリーン印刷等で樹脂マスク層21によって囲まれた開口部22内の電極14の表面、すなわち、バンプ接合部位20の電極14の表面に塗布し、例えば150〜200℃程度でプリヒートを行い、最高温度170〜280℃程度でリフローを行うことで、電極14に所定のはんだバンプ30が形成される。
なお、電極14への塗布およびリフローは、大気中で行ってもよく、N2、Ar、He等の不活性雰囲気中で行ってもよい。
【0050】
上記のようにして形成されたはんだバンプ30の高さは、通常5〜40μm程度である。また、はんだペースト組成物として、前記した析出型はんだ組成物を用いれば、はんだバンプ30を狭ピッチで配列することが可能であり、約30〜200μm程度のピッチにも対応することができる。
【0051】
ついで、図1(d)に示すように、はんだバンプ30を形成した後に、樹脂マスク層21を除去する。樹脂マスク層21の剥離には、例えば剥離液としてアルカリ性の溶液を使用することができる。本発明では、樹脂マスク層21を除去するための剥離液として、グリコールエーテル類およびアミノアルコール類から選ばれる少なくとも1種の溶剤を用いるのが好ましい。グリコールエーテル類としては、例えばグリコールのモノエーテル類、グリコールのジエーテル類、グリコールモノエーテルのエステル類などが挙げられる。中でもグリコールのモノエーテル類が好ましく、特にジエチレングリコールのモノエーテル類(カルビトール類)が好ましい。
【0052】
これらの溶剤は、単独で用いてもよく、あるいは他の溶剤、例えば水、アルコールなどと混合して使用してもよい。他の溶剤と混合する場合、グリコールエーテル類およびアミノアルコール類から選ばれる少なくとも1種の溶剤は溶剤総量に対して10質量%以上、好ましくは15質量%以上であるのがよい。
【0053】
樹脂マスク層21の除去は、加熱処理によりはんだバンプ30が形成された配線基板10表面の樹脂マスク層21を上記の溶剤に接触させることによって行う。接触方法には、例えば基板10を上記の溶剤に浸漬する浸漬法、溶剤を基板10に噴霧する噴霧法などが含まれる。また、使用する溶剤の温度は特に制限されないが、通常、1〜80℃、好ましくは15〜65℃の範囲から適宜選択すればよい。また、樹脂マスク層21の除去に要する時間、すなわち樹脂マスク層21が上記溶剤に接触する時間は、約30秒〜2時間、好ましくは50秒〜45分間であるのがよい。一般には、処理温度が高いほど、処理時間を短縮できる。
また、基板10を上記の溶剤に浸漬して超音波洗浄を行ってもよい。これにより、処理時間をより一層短縮できる。
【0054】
上記のようにして形成されたはんだバンプ30は、バンプ接合部位20に確実に形成されているので、優れた接続信頼性で配線基板10と半導体チップ60とを接合することができる。
【0055】
ついで、接合された半導体チップ60と配線基板10との間にアンダーフィルを充填し、半導体チップ60が配線基板10上に実装されるが、上述の通りソルダーレジスト層12の開口部13は、所定の長さに延設されているので、開口部13に気泡が形成されることなく、アンダーフィルが充填される。前記アンダーフィルは、半導体チップ60と配線基板10との接合強度を補強するためのものであり、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等から構成される。
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
(配線基板)
厚さ10μmのソルダーレジスト膜で基板表面が被覆され、該ソルダーレジスト層の開口部に複数の電極が露出した配線基板を準備した。ついで、前記開口部を、各電極の露出した一端側が該配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように、前記投影面積外に延設した(各電極の長さ方向に対して320μmの長さで開口)。なお、電極は、幅が40μm、ピッチ75μmで基板に形成されている。
【0058】
ドライフィルムレジストは、旭化成エレクトロニクス社製のドライフィルムレジスト「サンフォート」(登録商標)を使用した。このドライフィルムレジストは、支持フィルムが厚さ19μmのポリエチレンテレフタレートであり、感光性樹脂の厚みは38μmである。
【0059】
(樹脂マスク層の作製)
上記ドライフィルムレジストから保護フィルムを剥がし、感光性樹脂層を上記配線基板表面に圧着した。ついで、支持フィルム上に半導体チップのバンプ接合部位が描かれたフォトマスクを重ねて露光し、露光した部分の感光性樹脂層を光硬化させた。ついで、マスクおよび支持フィルムを剥離した後、Na2CO3水溶液で現像して、バンプ接合部位に開口部(各電極の長さ方向に対して210μmの長さで開口)を有する樹脂マスク層を形成した。
【0060】
(析出型はんだ組成物)
下記組成物を混練して、析出型はんだ組成物を得た。
Sn/Pb合金粉末・・・75質量%
(Sn/Pb=70/30、平均粒径10μm)
ナフテン酸鉛・・・10質量%
フラックス・・・15質量%
【0061】
使用したフラックスは、下記処方の成分を混合して120℃で加熱溶融させ、室温に冷却したものである。
ロジン樹脂・・・70質量%
へキシルカルビトール(溶剤)・・・25質量%
硬化ひまし油(チキソトロピー剤)・・・5質量%
【0062】
(はんだ析出処理)
上記基板の各開口部に、上記で得たはんだ組成物を厚さ80μmのステンシルマスクを用いて印刷することにより充填した。ついで、240℃以上で1分間加熱することにより、各電極上にはんだバンプを形成した。
【0063】
(樹脂マスク層剥離液の調製)
2−エタノールアミン溶液(三菱瓦斯化学社製)17mlを蒸留水83mlと室温にて混合し、剥離液100mlを調製した。
【0064】
(樹脂マスク層の剥離処理)
200mlビーカーに上記で調製した剥離液100mlを加え、ホットプレートにより約40℃に加熱した後、はんだバンプを形成した上記基板を剥離液中に1〜2分間浸漬し、樹脂マスク層を除去した。
【0065】
形成されたはんだバンプについて、以下に示す方法でその平均高さを算出した。具体的には、電極表面からバンプトップまでの距離をはんだ高さとし、形成された任意のバンプ60個の各はんだ高さを焦点深度計(オリンパス製のSTM)で測定し、その測定結果から平均値を算出して平均高さとした。その結果、平均高さは15μmであった。
【0066】
また、上記した各工程における配線基板の表面を顕微鏡で観察した。具体的には、樹脂マスク層形成前、樹脂マスク層形成後、はんだ析出処理後、および樹脂マスク層の剥離処理後の各配線基板の表面を、マイクロスコープ(キーエンス社製VHX―200)で観察した。図2(a),(b)および図3(c),(d)は、各工程における配線基板の表面のマイクロスコープ(キーエンス社製VHX―200)による拡大画像である。これらの図面のうち、図2(a)は、樹脂マスク層形成前の配線基板表面を示す拡大画像であり、図2(b)は、樹脂マスク層形成後の配線基板表面を示す拡大画像である。図3(c)は、はんだ析出処理後の配線基板表面を示す拡大画像であり、図3(d)は、樹脂マスク層の剥離処理後の配線基板表面を示す拡大画像である。
【0067】
図2(a),(b)および図3(c),(d)から明らかなように、本発明方法におけるはんだバンプ形成方法によれば、バンプ接合部位にはんだバンプを形成できているのがわかる。
【0068】
ついで、形成されたはんだバンプの最大突起部に半導体チップのバンプを当接させた状態ではんだバンプを加熱溶融し、半導体チップのバンプと配線基板の電極とをはんだバンプを介して電気的に接合させた(フリップチップ接合)。そして、各電極と半導体チップのバンプとが、はんだバンプを介して接合されているか否かについて、マイクロスコープ(キーエンス社製VHX―200)により確認した。その結果、各電極と半導体チップのバンプとが接合しているのを確認できた。
【0069】
ついで、接合後の半導体チップと配線基板との間にアンダーフィル(エポキシ樹脂)を充填した。充填後の状態をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX―200)により確認した結果、開口部に気泡が形成されることなくアンダーフィルが充填されているのを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】(a)〜(d)は、本実施形態のはんだバンプ形成方法を示す工程図である。
【図2】(a),(b)は、実施例の各工程における配線基板の表面のマイクロスコープによる拡大画像である。
【図3】(c),(d)は、実施例の各工程における配線基板の表面のマイクロスコープによる拡大画像である。
【図4】(a)〜(c)は、半導体チップと従来の配線基板とのフリップチップ接合を説明するための概略説明図である。
【図5】ソルダーレジスト層の開口部が延設された配線基板を示す平面図である。
【図6】図5の配線基板に半導体チップを搭載した状態を示す平面図である。
【図7】図6のソルダーレジスト層の開口部周辺を示す概略断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、図5の配線基板の電極に形成されたはんだバンプを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 配線基板
11 基板
12 ソルダーレジスト層
13 ソルダーレジスト層の開口部
14 電極
20 バンプ接合部位
21 樹脂マスク層
22 樹脂マスク層の開口部
30 はんだバンプ
60 半導体チップ
61 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の基板表面に被着したソルダーレジスト層の開口部に露出した複数の電極表面にはんだバンプを形成する方法であって、
各電極の露出した一端側が前記配線基板上にフリップチップ接合される半導体チップの鉛直投影面積外に位置するように前記ソルダーレジスト層の開口部を前記投影面積外に延設する工程と、
半導体チップのバンプ接合部位を除く電極露出部位に樹脂マスク層を形成する工程と、
前記半導体チップのバンプ接合部位の電極表面にはんだペースト組成物を充填し加熱してはんだバンプを形成する工程と、
前記はんだバンプを形成した後に前記樹脂マスク層を除去する工程とを含むことを特徴とするはんだバンプ形成方法。
【請求項2】
前記樹脂マスク層がドライフィルムレジストからなる請求項1記載のはんだバンプ形成方法。
【請求項3】
前記はんだバンプは、析出型はんだ組成物を加熱して析出させたものである請求項1または2記載のはんだバンプ形成方法。
【請求項4】
前記樹脂マスク層を除去した後にフリップチップ接合された半導体チップと配線基板との間にアンダーフィルを充填する請求項1〜3のいずれかに記載のはんだバンプ形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−123558(P2007−123558A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313772(P2005−313772)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】