説明

アシタバとキトサンまたはその誘導体とを含有する組成物

【課題】アシタバの茎葉若しくはその加工物とキトサンまたはその誘導体とによって、機能性が高い組成物、例えばその組成物からなる食品および血中コレステロール改善剤を提供し、この組成物に含有されるアシタバの茎葉やキトサンが本来持っている機能性を損なわずに、アシタバの茎葉にキトサンを含有しても浮遊や凝集沈殿を殆ど起こさないように改善された飲料用に適する組成物の提供。
【解決手段】80質量%以上の粒子径が150μm以下のキトサンおよびアシタバの茎葉を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリ科植物であるアシタバと、キトサンまたはその誘導体とを含有する組成物、その組成物からなる食品、およびその組成物からなる血中コレステロール改善剤に関する。また、本発明は、特定のキトサンを用いることにより、アシタバの茎葉にキトサンを含有してもキトサンの浮遊や凝集沈殿が改善された組成物、特に飲料用に適する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セリ科植物であるアシタバの茎葉部は、近年の食生活における野菜不足を解消する目的で、食品に利用されるようになってきており、ビタミンやミネラル、食物繊維等に優れている(例えば特許文献1または2を参照)。
近年、健康志向の高まりとともにケールなどの青物野菜の緑葉の搾汁液、すなわち「青汁」が多くの人に食されるようになってきた。青汁はビタミン・ミネラル・食物繊維などの成分の他、クロロフィル・フラボノイド類などを豊富に含み、食生活が欧米化し野菜不足である日本人の栄養補給や食生活の改善が期待できる。青汁に使用される野菜はケールが最も多く食されているが、近年にケールに追従するかたちで、イネ科植物、例えば大麦や小麦、イネ等は人類の生命維持の主食として世界各地で食されてきた代表的な穀物であり、食物繊維やミネラルが豊富で味も良いイネ科植物の小麦緑葉や大麦緑葉等の緑葉を原料とした青汁が食されるようになってきた。これらの緑葉を飲用とするための用時水懸濁液用組成物も開発され、緑葉微粉末の分散性を向上させる方法として澱粉、グアガム又はプルランなどの多糖類を添加して凝集沈殿等を防止する方法も知られている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
一方キトサンは天然の食物繊維の中で唯一アミノ基を有する塩基性食物繊維であり、血中コレステロール調整作用などがヒトの臨床試験で報告されている。
しかしながら、アシタバ茎葉とキトサンの両者を含む組成物は知られていない。
この原因としては、食品の組み合わせによっては、各成分の機能が相殺されてしまうことが挙げられる。特にキトサンと飲料に加工する場合、直ちに緑葉の水溶性成分とキトサンで凝集沈殿を発生し、食品の外観並びに食感を著しく低下させることが一般的に知られており、これは、キトサンの高分子凝集作用によるもので、アシタバの茎葉についてもキトサンとの併用では同様なことが考えられるため、両者を含む組成物の開発は行われなかったためと思われる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−23912号
【特許文献2】特開平5−153942号
【特許文献3】特開2003−334046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アシタバの緑葉(又はその加工物)やキトサンが本来持っている生理的機能を最大に引き出すことのできる両者を含む組成物の開発、特に、両者を含む優れたコレステロール低下剤の開発に取り組むと共に、pH調整剤や分散剤などの添加物を使用せずに、服用までの間は凝集沈殿を殆ど起こさないように改善された飲料用に適する組成物を開発することを課題として本研究開発に取り組んだ。
即ち、本発明の課題は、アシタバの茎葉若しくはその加工物及びキトサン若しくはその誘導体の両者を含む機能性が高い組成物、特にコレステロール低下剤の提供と、さらに、該組成物を服用のために水懸濁組成物としたときに、服用までの間に凝集沈殿を生ずることなく均一な分散液として存在しうる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、アシタバの茎葉(またはその加工物)とキトサンまたはその誘導体とを組み合わせれば、アシタバ単独の場合よりも優れた機能性を有すること、また、キトサンの粒子径や嵩密度が、上記の凝集沈殿に大きく関係すること、更に好ましくは、キトサン粒子の表面状態及び/又はキトサンの分子量(粘度)等も関係することを見いだし、本発明を完成した。即ち本発明者らの検討によれば、特定の粒子径および嵩密度を有するキトサン、好ましくは特定な水処理乾燥したキトサン粒子、更に好ましくは特定な分子量(粘度)を有するキトサンがアシタバの茎葉若しくはその加工物、好ましくはアシタバの茎葉末と共に水懸濁されたとき、比較的安定な水懸濁液として存在すること、アシタバやキトサンが本来持っている機能性も損なわれないこと、風味や舌触りなども良好であること及び該組成物は飲料用に適することを見いだして本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)アシタバの茎葉若しくはその加工物と、キトサンまたはキトサン誘導体とを含有することを特徴とする組成物、
(2) 前記キトサンまたはキトサン誘導体を、0.4質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物、
(3) 請求項1又は2に記載の組成物からなることを特徴とする食品、
(4) 請求項1又は2に記載の組成物からなることを特徴とする血中コレステロール改善剤、
(5) 前記キトサン又はキトサン誘導体の80質量%以上の粒子径が150μm(100メッシュ)以下であるキトサンとアシタバの茎葉を含有することを特徴とする、請求項4に記載の血中コレステロール改善剤、
(6) さらに、前記キトサンの嵩密度が0.20〜0.90g/mLであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の血中コレステロール改善剤、
(7)さらに、前記キトサンが、粉砕キトサンを含水させた後、キトサン粒子に運動を与えて乾燥して得えられたものである請求項4〜6に記載の血中コレステロール改善剤、
(8) アシタバの茎葉若しくはその加工物と、キトサンまたはキトサン誘導体とを混合することを特徴とするアシタバ及びキトサン含有混合物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アシタバの茎葉とキトサンまたはキトサン誘導体とを含有する組成物は、アシタバ単独よりも優れた血中コレステロール改善作用を有する。 また、本発明の好ましい組成物は、アシタバの茎葉とキトサンの両者を含有するにもかかわらず、水懸濁液としても3分間以上、より安定なものにおいては10分以上にわたって浮遊や凝集沈殿を殆ど起こさず、かつアシタバやキトサンが本来持っている機能を最大限発揮するもので、飲用し易く、飲料用の健康食品等として適するものである。
本発明の組成物は、固形、液状いずれでもよいが、用時溶解用の乾燥顆粒製剤又は粉末製剤が好ましい。用時溶解用の好ましい本発明組成物を水に分散した時、3分間以上にわたって殆ど浮遊や凝集沈殿を起こさず懸濁分散状態を保持する。又、その殆どが10分間以上にわたって浮遊や懸濁分散状態を維持して飲み易い状態を確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(組成物)
本発明の組成物は、(i)アシタバの茎葉及び(ii)キトサン若しくはその誘導体とを含有している。
以下、上記(i)及び(ii)について詳しく説明する。
(i)アシタバの茎葉若しくはその加工物
まず、セリ科植物のアシタバについて説明する。アシタバは、食品として利用可能であり、しかも栄養価が高いセリ科植物である。このアシタバの茎葉には、ビタミン、ミネラルを始めてとして、カルコン類やポリフェノール類等の有用な植物由来の成分が含まれる。このような茎葉は、黄色く変色してしまう前に収穫したものが好ましい。収穫したこれらの茎葉は、さらに経口摂取に適した形態に加工し、加工物として利用してもよい。
なお、ここでいう「茎葉」とは、植物の茎および葉の少なくともいずれかのことである。つまり、本発明の茎葉として、植物の茎だけを用いてもよく、植物の葉だけを用いてもよく、茎と葉との両方を用いてもよい。
また、本発明においては、アシタバの他に、クワ科植物(クワの葉等)、キク科植物(エキナセア)、イネ科植物(麦の葉)等を、本発明の効果を阻害しない範囲で併用することができる。 本発明の組成物中において、アシタバの茎葉の含有量における下限値は、1質量%以上、好ましくは10質量%以上とするのが良い。そして、本発明の組成物中において、アシタバの茎葉の乾燥物または乾燥粉末を用いる場合、その乾燥物または乾燥粉末の含有量の下限値は、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上とするのが良く、その乾燥物または乾燥粉末の含有量の上限値は、90質量%以下とするのが良い。
【0010】
(茎葉加工物)
本発明において、「茎葉」には、何らかの処理または加工が施された茎葉も含まれるものとする。そして、「何らかの処理または加工が施された茎葉」のことを、以下、適宜「茎葉加工物」と記載する
上記「茎葉加工物」としては、例えば、(a)収穫した茎または葉を乾燥させた乾燥物、(b)乾燥させた茎葉を破砕して得られる乾燥粉末、(c)乾燥せずに圧搾してえられる搾汁、(d)搾汁を乾燥して得られるエキス末、(e)乾燥前または乾燥後の茎葉から溶媒(例えば水、有機溶媒、含水有機溶媒)で抽出した抽出物、などが挙げられる。特に、収穫後の茎葉を丸ごと乾燥させて粉末化した乾燥粉末は、栄養価および機能性の面から、本発明に用いるのに好ましい。
【0011】
(乾燥物)
乾燥物は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、茎葉を、水(好ましくは25℃以下の冷水)で洗浄し、泥などを洗い落とし、水気を切った後、適当な長さ(例えば、5cm〜10cm)に切断する。
次いで、必要に応じて、茎葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために、加熱処理を行ってもよい。ここでいう加熱処理としては、例えば、熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理、焙煎等の乾熱処理などが挙げられる。このときの処理の温度および時間は、処理する茎葉の量および熱水のpHに応じて、適宜決定すればよい。
【0012】
ブランチング処理された茎葉については、緑色および風味を維持する上で、直ちに冷却することが好ましい。冷却は、冷却水中に浸漬する、冷風を当てて急冷するなど、当業者が通常用いる手段で行われる。冷却水への浸漬処理は、30℃以下の水、好ましくは20℃以下の水を用いて行われる。冷水の温度が低いほど、茎葉の緑色が映えるようになり、見た目に美しい。浸漬時間は、茎葉の処理量に応じた任意の時間である。
ブランチング処理を行った場合は、冷却後、乾燥にさきがけて、茎葉からある程度の水を切る脱水工程を行う。脱水は、遠心分離などの脱水装置を用いて行われる。遠心分離による脱水の場合、茎葉がからまってしまう場合があるので、このような場合は、茎葉をほぐした後、乾燥工程に移行する。乾燥前に脱水することにより、乾燥時のむらや焦げつきをなくすことができる。
【0013】
乾熱処理は、ブランチング処理とは異なり、水を用いるのではなく、焙煎機などの直火加熱や赤外線によって、40℃以上となるように加熱を行う。
次いで、茎葉を乾燥する。茎葉の乾燥は、水分含量が5質量%以下になるように乾燥を行うことが好ましい。このように乾燥すれば、茎葉中の成分の腐敗を防ぐことができ、乾燥物のまま保存または輸送を行うことができるからである。
乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、凍結乾燥などの当業者が通常用いる任意の方法により行えばよい。製造上のコストの面からは、熱風乾燥が最も好ましい。なお、高温で乾燥する場合、乾燥は90℃以下で行う。
上記乾燥工程は、2段階で行うことが好ましい。乾燥を2段階で行う場合は、まず、茎葉の水分含量が5質量%より多く25質量%以下となるまで、60〜80℃の温度で一次乾燥する。そして、該一次乾燥した茎葉の水分含量が5質量%以下となるまで、一次乾燥よりも高くかつ90℃以下の温度で二次乾燥することが好ましい。なお、乾燥温度が60℃未満では乾燥速度が遅くなり、90℃を超えると、焦げなどが生じやすいので、好ましくない。一次乾燥と二次乾燥との好ましい温度差は、約5〜15℃であり、約10℃であることがより好ましい。この2段階の乾燥工程を行うことにより、乾燥時間が短縮されると同時に、茎葉の緑色および風味が維持される。また、温度差を上記のように一定範囲に設定することにより、乾燥工程における茎葉の水分管理が容易になり、効率的に乾燥が行われる。
なお、加熱処理(例えばブランチング処理)を行わずに上記乾燥工程のみでも、風味が損なわれることなく、乾燥物および乾燥粉末を得ることができる。しかし、加熱処理(例えばブランチング処理)と乾燥処理とを組み合わせることにより、緑色および風味がさらに長時間維持される乾燥物および乾燥粉末が得られる。
【0014】
(乾燥粉末)
乾燥させた茎葉は、もちろん、そのまま茎葉加工物として利用することができる。しかし、粉末化を行って、乾燥粉末とすることが好ましい。特に、粗粉砕工程および微粉砕工程の2段階の粉砕を行うことが好ましく、殺菌と風味を向上させる観点からは、粗粉砕工程、加熱工程および微粉砕工程の順を経て、茎葉の乾燥微粉末を得ることが好ましい。
粗粉砕工程は、乾燥した茎葉をカッター、スライサー、ダイサーなどの当業者に公知の任意の機械または道具により、乾燥した茎葉をカットする工程である。カットされた茎葉の大きさは、長径が20mm以下であり、好ましくは0.1〜10mmである。
粗粉砕した茎葉は好ましくは加熱工程によって加熱処理が施される。加熱処理は、110℃以上で行われ、殺菌処理を兼ねる。殺菌処理としては、高圧殺菌、加熱殺菌、加圧蒸気殺菌などが挙げられる。本発明の場合は、乾燥および粗粉砕した茎葉を殺菌するため、加圧蒸気殺菌が好ましい。粗粉砕後、加熱処理を施すことにより、茎葉の香味を良好にすることができる。
加圧蒸気殺菌による加熱処理の場合、粗粉砕した茎葉は、例えば、0.5〜10kg/cm2の加圧下、110〜200℃の飽和水蒸気により、2〜10秒間加熱処理される。必要に応じて、飽和蒸気による加熱時に含んだ水分をさらに乾燥する。
【0015】
上記の工程を経た茎葉は、粗粉のまま使用してもよいが、好ましくは粒子径300μm以下にするのが好ましい。さらに好ましくは90質量%が200メッシュ区分を通過するように、微粉砕されることが好ましい。微粉砕は、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの当業者が通常用いる任意の機械または道具を用いて行われる。粒子径の下限は特に限定されなくてもよいが、通常5μm程度である。そして、粒径300μmより大きいもの、好ましくは250μmより大きいもの、更に好ましくは150μmより大きいものは実質的に含まれない方が好ましい。
本発明の方法のように、粗粉砕、加熱、および微粉砕の工程を順に経ることにより、さらに食感がよくなる。
またこのような2段階の粉砕方法を採用することにより、粒度の均一化、粉砕時間の短縮など、粉砕効率を上げることができる。
また、アシタバの茎葉を採取した後、水、アルコール等の溶媒と共にミキサーでホモジナイズし、その後熱風乾燥や凍結乾燥やスプレードライで乾燥して、アシタバの茎葉末を得ても良い。
【0016】
(搾汁、抽出物)
本発明における茎葉加工物の一例である搾汁は、収穫した生の茎葉やブランチング処理、乾熱処理を行った茎葉をマスコロイダーなどで一度ペースト状にまで粉砕し、ろ過したり、圧搾機で圧搾して搾汁を得ることができる。
また、抽出物は、茎葉(または乾燥物といった茎葉加工物)に溶媒を加え、4℃〜100℃の温度で30分〜48時間抽出して得ればよい。なお、ここで用いる溶媒としては、例えば、水、熱水、有機溶媒、極性有機溶媒(特にエタノールやメタノールなど)、含水有機溶媒、含水極性有機溶媒などが挙げられる。特に、溶媒としては、水または含水極性有機溶媒(含水エタノールまたは含水エタノール等)を用いることが、茎葉中の成分を効率よく抽出できる点で好ましい。例えば、エタノール含有量が90容量%以下の含水エタノールまたは水を、茎葉1質量部に対し、0.5質量部〜50質量部添加して、10℃〜100℃で30分〜48時間抽出することにより、抽出物を得ることができる。さらに、必要に応じて、合成吸着剤やデキストラン樹脂などの当業者が通常用いる分離方法を用いて、得られた抽出物を精製してもよい。ここでいう合成吸着剤としては、例えば、ダイアイオンHP20、セファビースSP825、アンバーライトXAD4、MCIgelCHP20Pなどが挙げられる。また、デキストラン樹脂としては、例えばセファデックスLH−20などが挙げられる。もちろん、このようにして得られた抽出物または精製された抽出物を乾燥させて、抽出粉末を得てもよい。
なお、抽出時間については、30分以下となると十分な抽出効率が得られないが、茎葉中に栄養成分が多く含まれることになるため、この場合は、その茎葉を乾燥粉末としたりエキス末とすることが好ましい。
【0017】
上記搾汁を粉末としてエキス末とする場合、および、抽出物を粉末として抽出粉末とする場合、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機や凍結乾燥機、減圧濃縮機を用いて粉末としてもよい。噴霧乾燥機を用いる場合は、回収率を上げるために、必要に応じてデキストリン、シクロデキストリン、デンプン、マルトースのような賦形剤を添加して行われる。好適にはデキストリンが用いられ、搾汁とデキストリンの比は、デキストリン添加により粉末化を容易にするため、質量比で1:10〜5:1が好ましい。
【0018】
(ii)キトサンまたはその誘導体
本発明の組成物に用いられるキトサンとしては、例えば、カニ、エビ、昆虫などの甲殻より作られたもの、きのこ、糸状菌などの細胞壁より作られたものが挙げられる。特に、カニ、エビなどから作られたものを用いることが好ましい。キトサンまたはキトサン誘導体の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、カニ殻、エビ殻などを粉砕し、その粉砕した殻を酸(例えば塩酸など)で処理し、脱カルシウムを行う。次に、アルカリ(例えば苛性ソーダなど)で処理を行い、蛋白質を除去すれば、キチンが得られる。さらに、これをアルカリ(例えば苛性ソーダなど)で処理すれば、キトサンが得られる。キトサン誘導体としては、例えば、キトサンを更に低分子化した水溶性のキトサン、これらの塩などが挙げられる。中でも、平均分子量50万以上であり、脱アセチル化度70%以上好ましくは80〜90%前後のものがよい。また、その粒度は32メッシュ以下、好ましくは48メッシュ以下のものが、85%以上であるものがよい。
【0019】
本発明で用いられるより好ましいキトサンまたはその誘導体、好ましくはキトサンは、嵩密度が0.20〜0.90g/ml程度、好ましくは0.20〜0.50g/ml程度、更に好ましくは0.20〜0.40g/ml程度で、粒子径が300μm〜5μmのものがよい。また、好ましくは粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)が通常20〜400mPa.sのキトサンである。このようなキトサンは、ジェットミル等の適当な粉砕器で、嵩密度及び粒子径が上記の範囲になるようキトサンを適宜粉砕し、必要に応じて後記する改質のための水処理を行うことにより得ることができる。
本発明で用いられる更に好ましいキトサンキトサンまたはその誘導体、好ましくはキトサンは、80質量%以上の粒子径が150μm(100メッシュ)以下であるキトサンであって、好ましくは、嵩密度が0.20〜0.90g/ml程度のものが良く、好ましくは0.20〜0.50程度、更に好ましくは0.20〜0.40程度のものである。このようなキトサンは、ジェットミル等の適当な粉砕器で、適宜粉砕して直接上記粒子径を有するキトサンを製造しても良いが、通常は効率等を考えると、キトサンを粒子径300μm以下、好ましくは180μm(80メッシュ)以下で、平均粒子径が80〜150μm程度、より好ましくは平均粒径100〜150μm程度になるように粉砕し、そのまま若しくは必要に応じて後記する改質のための水処理を行なった後、100メッシュの分級機で篩別して、100メッシュを通過したものを回収し、必要に応じて後記する改質のための水処理を行うことで得ることができる。このようにして得られたキトサンは、キトサンの80質量%以上が150μm以下となる。
より好ましいキトサン粒子径は100μm(150メッシュ)以下で平均粒径100〜80μmが良く、粒子径の下限は特に限定されなくてもよいが、微粉化のコスト等を考えると、通常5μm程度である。後記するように、改質のため粉末キトサンの水処理を行うときは、改質後のキトサンの粒度及び嵩密度が上記の範囲内にあれば良い。
【0020】
また、本発明の組成物に用いられるキトサンの粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)は、通常20mPa.s以上のキトサンであれば特に問題は無いが、好ましくは100mPa.s以上の高分子量キトサンが良く、上限は400mPa.s程度であり、通常は350mPa.s以下、より一般的には300mPa.s以下のものが使用される。このような粘度を有するキトサンは原料として使用するキトサンの粘度が上記範囲にあるものを使用することにより得ることができる。
【0021】
本発明の組成物に用いられるキトサンは好ましくは、微粉砕で得られたキトサン粉末を更に、改質のために水処理するのが好ましい。改質処理はキトサン粉末に含水させ、運動を与えながら若しくは与えた後、乾燥処理すればよい。改質処理によるキトサン粉末の改質機構は明確ではないが、この改質処理により、通常嵩密度が適当な範囲になると共に、本発明組成物を水懸濁液としたとき、懸濁安定性が更に向上する。たぶんこの改質処理により、粉砕物に多く見られる粒子表面毛羽立ち等が減少し滑らかに改質され、懸濁安定性が向上するものと思われる。この改質処理は例えば粉砕したキトサン10質量部に対して水3質量部以上、好ましくは5質量部以上を添加し、キトサンに含水させた後、適当に混合し、キトサン粒子に運動を与えながら、又は与えた後、乾燥すればよい。例えば、コニカルドライヤー、ナウター乾燥機などを用いて、その回転混合により、回転運動をキトサン粒子に与えながら乾燥したものが良い。また、含水したキトサンを混合パンなどで回転運動を与えた後に、棚式乾燥機で乾燥するなど、回転運動と乾燥工程を別々に行っても良い。
キトサンに含水させる水の量はキトサン粒子を濡らすのに充分な量であればよく、過剰にあっても効果的には大差ないので、エネルギー消費を少なくするという観点から見るとキトサン10質量部に対して水50質量部以下、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
この改質処理に使用する粉砕キトサン(キトサン粉末)は本発明で使用する粒度と嵩密度を有するものが好ましいが、通常のジェットミル等で得られる上記の粒度のものは、嵩密度が本願発明で使用するものより大きいので、それを水処理し、処理後のものが本発明で使用する粒度と嵩密度を有するものになっていれば特に支障はない。
このようにして得られた80質量%以上の粒子径が150μm(100メッシュ)以下であり、好ましくはキトサンの嵩密度が0.20〜0.90g/mLであり、更に好ましくは粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)が20〜400mPa.sであるキトサンはアシタバ、好ましくは粒度300μm以下のアシタバと混合して、用時水懸濁液用製剤として保存後、水懸濁液としても、水懸濁時の浮遊物も少なく、且つ懸濁安定性が良く、懸濁後3分以上、安定なものは10分以上凝集沈殿分離を起こさず、もっとも好ましい。
【0022】
(本発明の組成物)
本発明の組成物はアシタバの茎葉若しくはその加工物、好ましくは前記の様にして微粉砕されたアシタバの茎葉末と、キトサンまたはキトサン誘導体、好ましくは上記のように微粉砕され、好ましい嵩密度及び粒度を有するキトサン粉末とを混合することにより、アシタバ及びキトサン含有混合物として得ることができる。該アシタバ及びキトサン含有混合物(本発明の組成物)は必要に応じて他の成形助剤などを含んでいても良い。このようにして得られた本発明の組成物は、アシタバの茎葉とキトサンとを含有する組成物からなる食品および血中コレステロール改善剤として利用し得る。
もちろん、本発明の組成物を含有する食品であって、食品の一用途である、血液中のコレステロールの改善を目的とする食品または明示したコレステロール改善用食品としても利用し得る。
なお、本発明における組成物中のキトサン若しくはキトサン誘導体の量は、キトサンの機能性が発揮できる量が含有されていれば特に問題は無い。また、単回使用分の製剤量、製剤形態等にもよりキトサン含量は異なるので一概には言えないが、該組成物がそのまま飲む水懸濁液飲料組成物の場合を除けば、製剤組成物中のキトサン量は、製剤全量に対して通常通常1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは3〜70質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。特に飲料用として用いる場合は、製剤組成物の乾燥質量で、キトサンまたはキトサン誘導体の含有量の下限値は、0.4質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上とするのが良く、キトサンまたはキトサン誘導体の含有量の上限値は、60質量%以下、好ましくは40質量%以下とするのが良い。
また、その食品および血中コレステロール改善剤における、キトサンまたはその誘導体について、成人の一日あたりの摂取量における下限値は、0.3g以上、好ましくは0.5g以上とするのが良い。キトサンまたはその誘導体について、成人の一日あたりの摂取量における上限値は、3g以下、好ましくは2g以下とするのが良い。
【0023】
本発明の組成物中のアシタバ若しくはその加工物(以下単にアシタバといった場合、特に断らない限り両者を含むものとする。)、好ましくはアシタバ茎葉末含有量は、単回使用分の製剤量にもよるが、アシタバの栄養成分が十分摂取できる量であれば問題ない。該アシタバ含有量は製剤形態等にもよるので一概には言えないが、該組成物がそのまま飲む飲料組成物の場合を除けば、通常製剤全量に対して1〜99質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
キトサンとアシタバの両者の含有割合は特に制限がないが通常キトサン1質量割合に対して、アシタバ0.5〜20質量割合、好ましくは1〜10質量割合、更に好ましくは1〜5質量割合である。
【0024】
また、食品および血中コレステロール改善剤中において、アシタバの茎葉の含有量における下限値は、1質量%以上、好ましくは10質量%以上とするのが良い。そして、食品および血中コレステロール改善剤中において、アシタバの茎葉の乾燥物または乾燥粉末を用いる場合、その乾燥物または乾燥粉末の含有量の下限値は、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは35質量%以上とするのが良く、その乾燥物または乾燥粉末の含有量の上限値は、90質量%以下とするのが良い。
さらに、キトサンとアシタバ、好ましくはアシタバの茎葉末の両者の含有割合は特に制限がないが、通常キトサン1質量割合に対して、アシタバの茎葉末0.5〜20質量割合、好ましくは1〜10質量割合、更に好ましくは1〜5質量割合である。
【0025】
本発明における組成物は上記キトサン及びアシタバ以外に、その他の添加物、例えば製剤用添加物例えば担体、増量剤、粘着剤、崩壊剤、分散剤等や、味覚調整剤(調味料等)等を必要に応じて適宜含有することができる。それらの製剤全体に対する含量はキトサン及びアシタバを除いた残量であり、通常0〜98%の範囲内であり、好ましくは0〜87%であり、より好ましくは0〜77%である。
アシタバとキトサンは混合してから、錠剤や頼粒状、ベースト状、液状、ゲル状など目的に応じた造粒、製剤化処理を行って組成物を得ても良いし、このアシタバとキトサンをそれぞれ単独で前記製剤化処理を行い、それらを混合して組成物を得ても良い。又、生のアシタバの茎葉とキトサンを混合後、水などの分散剤を加えて粉砕した後、乾燥することによって本発明の組成物を得ることも出来る。特に、本発明の組成物をペースト状、ゲル状にした場合は、凝集沈殿が生じないため、均一に分散したベーストやゲルとすることができ、アシタバとキトサンを水へ分散させて湿式造粒した場合においても均一な造粒物を得ることができる。
さらに、本発明の組成物は、前記のように服用時に飲料用に水懸濁しても、服用時までに浮遊や凝集沈殿することがないので、適宜水に懸濁して飲料として使用するのに適している。
前記した最も好ましいキトサン含む本発明の組成物は、水懸濁下で浮遊や凝集沈殿が生じないため、錠剤などの乾燥製剤として摂取した場合においては、口腔内や胃腸内での分散性がよくなり、本発明の組成物中に含まれる各成分の吸収や生理作用が阻害を受けなくなるといったことも考えられる。
【0026】
本発明における組成物のうち、水懸濁液からなる組成物は、乾燥したアシタバの茎葉末、前記粉砕キトサン若しくはキトサン粉末、及び必要に応じてその他の添加剤に水を加え水懸濁液とするか、上記の本発明の用時水懸濁用の本発明の組成物を水懸濁させることにより得ることができる。また、生のアシタバの茎葉に前記キトサン若しくは粗キトサン、必要に応じてその他の添加物及び水を加え、ミキサーでホモジナイズすることでも製造できる。またキトサンを添加する手順としては成分を乾燥状態で混合後、水に懸濁しても、水懸濁時にキトサンを加えても、あるいは、キトサンを除く成分で懸濁液を調整しておき、その後キトサンを加えても良い。該水懸濁液からなる組成物中のキトサンの含有量は単回使用分の製剤量にもよるがキトサンの機能性が発揮できる量が含有されていれば特に問題は無く、キトサン量は製剤全体に対して、通常0.05〜8%(質量:以下特に断らないかぎり同じ)、好ましくは0.1〜5.0%、また、アシタバの茎葉末の含有量は、アシタバの茎葉の栄養成分が十分摂取できる量であれば問題なく、通常0.01〜40%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは0.3〜10%、さらには0.3〜5%である。残部は水を含むその他の添加剤であり、水含量は少なくとも、製剤全体に対して少なくとも30%以上であり、99.94%以下である。残部がその他添加剤であり、0〜40%以下である。 本発明の組成物において、香り付けとして、香料、ハーブ、抹茶、紅茶、コーヒ一、ココア、きな粉、などを加えたり、調味料として砂糖などの糖類、蜂蜜、食塩、醤油、味噌、酒類を加えたり更には色素を加えて味や香り、色調の調整をすることもできる。また、製剤化において、水への分散性やハンドリング、包装への充填性を良くするため、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、頼粒状、茶状、ティーバッグ状、ゼリー状、もしくは飴状などの形態に加工することも可能であり、その際の加工に必要な増粘剤(メチルセノレロース、デンプン、ガム質、セラック等)や滑沢剤(タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カノレシウム、卵殻粉末、骨粉、貝殻カルシウム、ドロマイト等)、を使用することができる。これら添加物の配合割合は、特に制限は無いが、組成物の場合は98%以下、飲料の場合は40%以下が好ましい。そして、これらの形状は、水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良く、ティーバッグ状などの場合は、成分を浸出させてから飲んでも良い。また、好みに応じて、そのまま食することもできる。
【0027】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に示す実施例ならびに比較例に使用した改質キトサンは表1に示す方法で製造した。なお、キトサンの粘度は、キトサンを0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液に溶解して、20℃の条件で、ビスメトロン粘度計VDA型(芝浦システム(株)製)を用いて測定した。また、粒度の測定は、以下の方法によって測定した。
使用機器:ミクロ型電磁振動ふるい器M-2型(筒井理化学器械(株)製)
篩:ステンレス製、7.5mmゆふるい
ブロッキング防止剤:約5mmφのガラスビーズ
【0028】
測定方法:
1.測定に使用する各簡にガラスビーズ約9gを乗せ、重量を0.001gの精度で測定する。
2.受け器の重量を0.00lgの精度で測定する。
3.メッシュが細かいふるいが下になる順番で重ねる。
4.一番上の篩に試料2.5gをのせて、蓋をしてメモリ8で10分間振動させる。
5.各篩及び受け器の重量を測定する。
6.5の重量から1及び2の重量を差し引くことで、篩上の試料重量を求める。
【0029】
かさ密度はカサ比重測定器(筒井理化学機械(株)製)を用い、30ml容ステンレス製の筒に、サンプルを振動を与えないように入れて、余分なサンプルをスパーテルで取り除いた後、1mgの精度でサンプノレ重量を測定し、1mlあたりの重量に換算することで求めた。実施例・比較例に使用したキトサンの製造条件
【0030】
表1 実施例及び比較例で使用したキトサンの製造条件
【表1】

【0031】
尚、表1において製造した改質キトサン(5)及び(6)、低密度キトサン、低粘度キトサン及び粗粒キトサンの調製は、ベニズワイガニの殻を原料としキチン、キトサン実験マニュアノレ(キチン、キトサン研究会編、技報堂出版、1991)に記載されている方法に準じて、上記の条件で粗キトサンを調製し、水洗後、ジェットミル等により粉砕して調製した。また、その際、塩酸処理温度を10〜50℃にすることで粘度の異なるキトサンを調製した。更にジェットミル等による粉砕を繰り返すことで、粒子径の異なるキトサンを調製した。さらに本発明の効果が発揮される改質処理として、粉砕したキトサンに水を適当量加え、コニカルドライヤー等を用いて80℃で減圧乾燥し改質キトサンを調製した。
【実施例1】
【0032】
アシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、改質キトサン(5)1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有アシタバ組成物の水懸濁液(飲料)を調製した。該飲料を調製後直ちに静置し、懸濁液の懸濁成分が凝集沈殿により分離し、澄明な層が5ml以上になる時間を測定した。その結果、本実施例の懸濁液は10分以上沈殿分離は生じなかった。
【実施例2】
【0033】
アシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、低密度キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有アシタバ組成物の水懸濁液(飲料)を調製した。本実施例のものを実施例1と同様に沈殿分離の時間を測定したところ、1分以内に沈殿分離が生じ、懸濁液製剤としては優れたものとは言えなかった。
【実施例3】
【0034】
アシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、低粘度キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有アシタバ組成物の水懸濁液(飲料)を調整した。本実施例のものを実施例1と同様に沈殿分離の時間を測定したところ、1分以内に沈殿分離が生じ、懸濁液製剤としては優れたものとは言えなかった。
【実施例4】
【0035】
アシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)3gを100ml容共栓付きメスシリンダーに採取し水100mlを加え分散懸濁した。その後、粗粒キトサン1.0gを添加して10秒間懸濁して本発明のキトサン含有アシタバ組成物の水懸濁液(飲料)を調製した。本実施例のものを実施例1と同様に沈殿分離の時間を測定したところ、1分以内に沈殿分離が生じ、懸濁液製剤としては優れたものとは言えなかった。
【実施例5】
【0036】
改質キトサン(6)を電磁振動ふるい器にかけ、100メッシュを通過するキトサンを回収し、改質キトサン(7)を得た(この改質キトサン(7)を再度、電磁振動ふるい器にかけたところ、100メッシュを通過するキトサンは、80質量%以上であった)。
そして、アシタバの乾燥粉末(粒子径が180μm以下)30Kgと改質キトサン(7)10Kgを混合して、流動層造粒を行い、本発明のキトサン含有アシタバ組成物を得た。得られた組成物を3gずつアルミパウチに充填して密閉し、合計5包の分包を調製した。
【実施例6】
【0037】
実施例5の改質キトサン(7)の代わりに、改質キトサン(5)を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、キトサン含有アシタバ組成物を充填した分包を得た。該分包品を、実施例1同様に、水100mlに分散懸濁させ、沈殿分離の時間を測定した。その結果、本実施例の懸濁液は10分以上沈殿分離は生じなかった。
【0038】
試験例1
実施例5と実施例6で得られた分包を用いて、浮遊改善効果について以下のようにして評価を行った。
まず、各分包を55℃で13日間保管した後に、1包あたり200mlとなるように分包中の組成物を均一になるように混合して、1分間静置した。次いで、白く固まりとなって浮遊したキトサンの粒子をカウントした。結果を表2に示す。なお、表中の値は、平均値である。
【0039】
表2 浮遊改善効果
【表2】

【0040】
表2の結果から、本発明の改質キトサン(7)を含有するキトサン含有アシタバ組成物は、水への懸濁時に起こるキトサンの浮遊を改善しえることが分かった。このことから、本発明のより好ましいキトサン含有アシタバ組成物は、水等の溶媒に懸濁した時に浮遊や凝集沈殿が改善された飲料が得られ、特に飲料摂取時における不均一性が改善されることから、飲料用として好適に用いることができることが分かった。
【0041】
(製造例1:食品の製造)
アシタバの茎葉の乾燥粉末(アシタバ乾燥粉末、株式会社日本生物.科学研究所製)、賦形剤(還元麦芽糖、ショ糖)、増粘多糖類(キサンタンガム)、および、風味並びに色の違いが分からなくなるように抹茶と色素(スピルリナ末)とを用いて、食品1および2を製造した。なお、食品1については、キトサン(実施例5の改質キトサン(7))も添加した。なお、食品1および食品2の処方については、表3に示している。
【0042】
表3 食品の製造例
【表3】

【0043】
試験例2:血中コレステロール改善作用の検討
表3の食品1を用いて、血中コレステロール改善作用が得られるかどうかについて検証を行った。まず、被験者30名について採血を行い、血中の総コレステロール値を検査機関(有限会社久留米臨床検査センター)へ委託して測定を行った。次いで、血中の総コレステロール値が200mg/dL以上の被験者を選抜した(18名)。これらの被験者に、表3の食品1を、1日あたり9g(1回の摂取量を3gとし、3gを100mLの水に混合して摂取してもらうようにする)を摂取してもらった。なお、血中コレステロールの低下作用を有する医薬品等の摂取以外は、特に制限は設けなかった。次いで、摂取開始から4週間、8週間後に再度採血を行い、血中の総コレステロール及び低密度リポ蛋白(LDL)を測定した。総コレステロールの測定結果(mg/dL)を表4に、LDLの測定結果(mg/dL)を表5に示す。
【0044】
比較試験例
食品1に代えて製造例1の食品2を用いたことおよび選抜された被験者数が19名であったこと以外は、実施例1と同様の方法で試験を行い、血中の総コレステロール並びにLDLを測定した。総コレステロールの測定結果(mg/dL)を表4に、LDLの測定結果(mg/dL)を表5に示す。
【0045】
表4 血中の総コレステロール値
【表4】

【0046】
表5 血中のLDL値
【表5】

【0047】
表4によれば、試験例2の結果(摂取8週間目)において、血中の総コレステロールの値は、摂取前に対して有意に低下しているだけでなく、比較試験例(食品2の摂取)に対しても、有意な低下作用が見られた。
また、表5によれば、試験例2の結果(摂取4週間目)において、LDLの値は、摂取前に対して有意に低下した。さらに、試験例2の結果(摂取8週間目)において、LDLの値は、摂取前に対して有意に低下しているだけでなく、比較試験例(食品2の摂取)に対しても、有意な低下作用が見られた。 表4および表5の結果から、アシタバの茎葉とキトサンとを含有する組成物(食品1)の摂取により、総コレステロール値とLDL値とが有意に低下したことが分かる。一方、食品2の摂取によっては、総コレステロール値とLDL値との両方、有意な低下は見られない。 よって、アシタバの茎葉とキトサンとを含有する組成物は、優れた血中コレステロール改善作用を有することが分かり、食品としてだけでなく、経口投与を目的とした血中コレステロール改善剤として利用できることが分かる。
以上から、本発明の組成物の組み合わせは、アシタバの茎葉に含まれる成分とキトサンとの機能の相殺がないだけでなく、凝集沈殿や浮遊が改善されるため、特にキトサンの有する機能を相殺することなく摂取できる組成物であることがわかった。 また、アシタバの茎葉とキトサンとを含有する組成物は、LDLの値の低下が明らかに見られるため、特に血中のLDL低下剤としても利用することが可能である。よって、本発明の組成物は、優れた血中コレステロール改善作用を有し、更にこれはLDL値の低下作用を有することが分かり、血中コレステロール改善剤として利用できることもわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバの茎葉若しくはその加工物と、キトサンまたはキトサン誘導体とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記キトサンまたはキトサン誘導体を、0.4質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物からなることを特徴とする食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の組成物からなることを特徴とする血中コレステロール改善剤。
【請求項5】
前記キトサン又はキトサン誘導体の80質量%以上の粒子径が150μm(100メッシュ)以下であるキトサンとアシタバの茎葉を含有することを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
さらに、前記キトサンの嵩密度が0.20〜0.90g/mLであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、前記キトサンが、粉砕キトサンを含水させた後、キトサン粒子に運動を与えて乾燥して得えられたものである請求項4〜6に記載の組成物。
【請求項8】
アシタバの茎葉若しくはその加工物と、キトサンまたはキトサン誘導体とを混合することを特徴とするアシタバ及びキトサン含有混合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−6315(P2006−6315A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124267(P2005−124267)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(596015527)日本化薬フードテクノ株式会社 (6)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】