説明

アスファルトフィニッシャー

【目的】 タンパ装置を備えたアスファルトフィニッシャーはストライキオフとベースプレートの関係位置は調節可能に固定されている。そこでタンパエッジ25とストライキオフ21及びベースプレート23との間に隙間が生じてアスファルトが内部に入るので調節回数も多く保守が容易ではない。
【構成】 ストライキオフ21の背部にピン51で枢着されたテンションバー24aの後端をフレーム23Aに設けたブラケット23jを挿通させ、ばね52をバー24aにねじ込んだナット54で引く。これによってタンパエッジ25はベースプレート23とストライキオフ21でばね力を用いて挾持される。ベースプレート23及びストライキオフ21夫々とタンパエッジ25の接触面が摩耗しても隙間は生じないし、アスファルトが内部へ入ることが抑制され、更に振動が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーに関し、特にタンパ装置を備えたアスファルトフィニシャーに関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装道路は、アスファルト舗装を幾層にも施工した複数のアスファルト層から構成される。アスファルト舗装は、天然の砂、砂利、粉砕した石等の骨材とストレートアスファルトを混合した合材を締め固めた層からなり、アスファルト舗装は合材が固化したものである。
【0003】
アスファルトフィニッシャーは、施工業者の基地からトレーラ又はトラック等で施工現場へ運ばれる。施工現場おいてアスファルトフィニッシャーは、アスファルト合材プラントで混合し、トラックやダンプカー等で施工現場に運ばれた合材を敷き均す工程を担当する。合材は、トラックやダンプカーからアスファルトフィニッシャーに直接受け渡され、アスファルト舗装の幅に広げられ、下層路盤に押し付けられて敷設される。
【0004】
通常のアスファルト舗装道路においては、雨水が道路に染み込まないので、通行する車のタイヤと路面との間に水の膜ができてブレーキが効かなくなる現象(ハイドロプレーニング現象)が発生して、雨天時の交通事故原因となることなどから、近年、高規格道路と呼ばれる排水性舗装道路が高速道路や幹線道路等で採用されている。排水性舗装道路は、ハイドロプレーニング現象の解消の他に、水跳ねによる運転者の視界の悪化防止効果があり、騒音の軽減効果もあるとされる。
【0005】
排水性舗装道路では、表層に染み込んだ雨水が、その下の基層上を流れて、排水溝に集められる構成となる。この際、雨水を染み込ませる表層は、通常の舗装よりもやや粗めの骨材に砂や石粉を配合し、ゴムや樹脂を添加して接着力を高めたアスファルトと混合した合材で施工する。これにより、雨水が通過する無数の連通した空隙が存在する表層ができるので、路面に降った雨水は短時間で表層を通過するため路面に水溜りはできない。
【0006】
排水性舗装道路では、例えば粒径13〜5ミリメートル(6号砕石)と中砂と石粉とからなる骨材にアスファルトを配合して合材としている。上記における砕石は通常の舗装道路に用いられる舗装材の砕石より粒径が大きい。粒径が大きい砕石を結合するためタール分の多いアスファルトをより多く使用する。また、アスファルトフィニッシャーのベースプレートだけで敷き均しても砕石はしめ硬められないのでタンパ装置が用いられる。タンパ装置は合材と接地して合材を衝き固めるタンパエッジを上下動させる駆動手段を設けている。タンパエッジは、アスファルトフィニッシャーの進行方向のタンパエッジの前方にあるストライキオフと後方にあるスクリードベースプレート(以下、単にベースプレートという)との間にある。
【特許文献1】特開2002−302907号公報
【特許文献2】特開2003−213617号公報
【特許文献3】特開2003−221806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アスファルトフィニシャーは進行方向の後端にスクリードマンの搭乗するステップが設けられている。ベースプレートは合材を押し付けるだけでなく同時に振動をし乍押しつけている。この振動をベースプレートに与えるためベースプレート上方のフレームに加振装置を備えている。このフレームにステップが支持されているため、ステップは振動する。
【0008】
タンパ装置を備えたアスファルトフィニシャーにあっては、タンパ装置に基ずく振動が加わる。従ってステップは振動する。
【0009】
後者の振動を軽減したとしても、加振装置に基ずく振動は軽減する方法としてはベースプレートのみを振動させれば可能である訳であるが現在はそのような方法は開発されていない。
【0010】
本発明はステップの振動を大幅に軽減してアスファルトフニッシャーを提供することを目的とする。
【0011】
タンパエッジはストライキオフとベースプレートに挟持されている。そしてタンパエッジは上下動するので、タンパエッジとストライキオフ、タンパエッジとベースプレート間は摺動する。この摺動面間から合材中の主としてアスファルトがスクリード装置内ヘ入り込む。この中のタール分は固まり易い。このため、ストライキオフとベースプレートを強固に引き寄せ上記摺動面間に隙間をないようにしている。処が、ストライキオフとベースプレートの関係位置は固定されているので上記摺動面が合材中の微粉骨材により摩耗すると隙間ができる。また、タンパエッジの駆動手段の構成によっては隙間が生じる。この隙間ができることより骨材がこの隙間に進入することとなり、更に摺動面を摩耗させ隙間を拡大する。
【0012】
ダンパエッジの摺動面側の隙間から合材中の主としてアスファルトがスクリード内ヘ侵入すると、アスファルトはタンパエッジ両側のストライキオフ及びベースプレート上の空間内に溜まる。
【0013】
このようにして溜まったアスファルトの量が増えると施工した舗装面上に落ちて10〜20センチメートル位の大きさの点状のアスファルトによる層が生ずることがある。このようにアスファルトの量が多い点状の部分は強度が弱く車輌の進行によって穴となり、この穴が拡大する。
【0014】
舗装工事終了後はアスファルトフィニッシャーをトレーラ等に積載して持ち帰る。排水性舗装に用いられる合材はその組成により、透水性でない普通の合材に比較して温度が降下し易い。そこで持ち帰っている間にアスファルトは冷却されて固化する。これを放置すると次回の作業を行えなくなることがある。
【0015】
そこで再びベースプレートを加熱してタンパエッジ回りのアスファルトを溶融する。しかし、一旦冷却されたベースプレートからタンパ装置回りに固着したアスファルトを溶融するのは時間のかかることであるがストライキオフの背部の一方、タンパエッジ、タンパバー、ベースプレート前部下方に付着したアスファルトを除去する。
【0016】
このようにタンパエッジとストライキオフとの間の摺動面、タンパエッジとベースプレートとの間の摺動面との間の隙間が大きくなると、上述のようにストライキオフの背面下部、ベースプレート前面下部にアスファルトの侵入が増々増大する。
【0017】
現在は上記タンパエッジとストライキオフとの間の摺動面間の隙間、タンパエッジとベースプレート間の摺動面間の隙間が大きくならないようにストライキオフとベースプレート間の距離を頻繁に調整しストライキオフとベースプレートでタンパエッジを強力に加圧している。
【0018】
長期間タンパエッジ回りを清掃しないと堆積固化したアスファルトはバーナで焼いて炭化させて除去する。しかし、バーナで焼くと超高張力鋼製のタンパエッジの強度が低下する。更に、バーナでアスファルトを焼却させると環境問題が生ずる。
【0019】
本発明はストライキオフとタンパエッジとの間の摺動面、ベースプレートとタンパエッジとの間の摺動面が常にほぼ一定の圧力で、すなわち、決められたトルクで加圧装置を締めてタンパエッジを加圧しておき、隙間なく保持されることにより上記課題を解決してアスファルトのタンパエッジ上部への侵入、侵入したアスファルトとの舗装面への滴下を防止し保守を低減したスファルトフィニッシャーを提供することを目的とする。
【0020】
アスファルトフィニッシャーはスクリード装置に加振装置を備えている。このため、アスファルトフィニッシャーのスクリードは、振動している。アスファルトフィニッシャーに搭乗している作業者は作業中アスファルトフィニッシャーの振動を常に受けている。上記作業者はスクリュード上で立った姿勢で舗装厚の管理をしている。これによって足及び腰に常に該振動を受ける。そのためにひざ及び腰を傷めることが知られている。
【0021】
タンパ装置を備えたアスファルトフィニッシャーではタンパ装置を備えないアスファルトフィニッシャーに比較して激しく振動する。そのため、作業者の健康を考慮して例えば、10年以内にアスファルトフィニッシャーの運転歴でもって職場の配置替えを行っている。
【0022】
従来、タンパ装置を備えたアスファルトフィニッシャーはタンパが上下方向に運動して合材をたたいて衝き固めるためにタンパ装置を備えないアスファルトフィニッシャーに比較して振動が大きいと考えられて来た。
【0023】
本発明は振動を大幅に軽減したタンパ装置を有するアスファルトフィニッシャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本出願に係る第1の発明はアスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根と、
合材を施工する面に押し付けるスクリードと、
を有し、
スクリードは、夫々がアスファルトフィニッシャーの走行方向に直角で水平方向に長いストライキオフと、タンパエッジと、ベースプレートを走行の順に有し、ストライキオフはベースプレート上部のフレームに支持され、接地面に交叉する長手方向の対タンパエッジ接触面を有し、タンパエッジは長手方向に直角な断面がほぼ方形でスクリードに上下に微動の往復動するようにベースプレート上部のフレームに設けた駆動手段に連結されストライキオフの対タンパエッジ接触面に接する前接触面と前接触面とベースプレートに接触する後接触面と合材を衝き固める接地面とを有し、ベースプレートはタンパエッジの後接触面に接触する対タンパエッジ接触面と合材を均す接地面とを有し、
ストライキオフとベースプレートを弾性的に引き寄せて、ストライキオフの対タンパエッジ接触面とタンパエッジの前接触面とを弾力で加圧すると共にタンパエッジの後接触面とベースプレートの対タンパエッジ接触面を弾力で加圧する弾性部材を有する加圧装置を有することを特徴とするアスファルトフィニッシャーである。
【0025】
本出願に係る第2の発明は前記加圧装置はベースプレート上部のフレームの上部にアスファルトフィニッシャーの進行方向に直角で水平方向の軸心でもって枢着されたストライキオフの背面の下部に一端が枢着されてアスファルトフィニッシャーの進行方向の後方へ向ってのび、ベースプレート上部のフレームに設けたブラケットを挿通し、他端にねじを有するテンションバーと、テンションバーの他端側に挿入された弾性部材であるばね部材と、テンションバーの他端のねじにねじ込まれたねじ部材と、を有し、ねじ部材を締め込み前記ブラケットとねじ部材間のばね部材の圧縮によりテンションバーでもってストライキオフとベースプレートをタンパエッジを介して加圧することを特徴とする第1の発明に記載のアスファルトフィニッシャーである。
【0026】
本出願に係る第3の発明はストライキオフはベースプレートに対して上下位置を調節可能で且つアスファルトフィニッシャーの進行方向に関し、接地面に対する傾斜角度を調節可能に固定されていることを特徴とする第2の発明に記載のアスファルトフィニッシャーである。
【0027】
本出願に係る第4の発明はアスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根と、
加振装置を備え合材を施工する面に加振し乍押し付けるスクリードと、
スクリードの後端に設けられたスクリードマンの搭乗するためのステップと、
を有し、
ステップはスクリードに設けた合材を加振し乍押し付けるベースプレートを有するフレームの支持部材に緩衝装置を介して設けられており、緩衝装置はゴムダンパーと、ばねとばねの圧縮手段とを有し、ばねはステップの重量とスクリードマンの体重によりたわむ長さとを予め圧縮手段で圧縮されており、上記ばねのあらかじめ圧縮された状態において、ステップの上方への振動工程においてゴムダンパーの制振力が作用するようにゴムダンパーには圧縮たわみがない又は圧縮たわみが小さいことを特徴とするアスファルトフィニシャーである。
【0028】
本出願に係る第5の発明はタンパ装置を有することを特徴とする第4の発明に記載のアスファルトフィニシャーである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によればストライキオフとベースプレートとを弾性的に引き寄せてストライキオフの対タンエッジ接触面と、タンパエッジの前接触面とを弾力で加圧すると共にタンパエッジの後接触面とベースプレートの対タンパエッジ接触面とを弾力で加圧する弾性部材を有する加圧装置を有することとしたので各接触面は隙間なく接触して摺動するので摺動面をとおって上方へアスファルトが移動することは少ないので、ストライキオフの背面、タンパエッジ上部、ベースプレートのタンパエッジ上に面する部分に溜まるアスファルトの量は格段に少なくなる。そこで、
(1)保守清掃のためにベースプレートを加熱する必要時間が少なくなる。
(2)接触面は弾性部材により常に隙間なく保たれるので、ストライキオフとベースプレート間の引き寄せを常々行う必要がなくなる。
(3)タンパエッジがベースプレートとストライキオフに常にほぼ一定圧力でしかも非常に低い加圧力で加圧されているので摩擦力による減衰作用がありタンパ装置に基づく振動を大幅に軽減できる。
【0030】
アスファルトフィ二ッシャーの加圧装置をスクリード上部のフレームにストライキオフを枢着し、ストライキオフの背面の下部に一端が枢着されてアスファルトフィニッシャーの進行方向の後方へ向ってのび、ベースプレート上部に設けたブラケットを挿通し他端にねじを有するテンションバーと、テンションバーの他端側に挿入されたばね部材と、テンションバーの他端のねじにねじ込まれたねじ部材とを有することとした場合には、ストライキオフ、タンパエッジ、ベースプレート夫々の間の摺動面が摩耗しても、これら摺動面間に隙間が生ずることがなく、ストライキオフとベースプレートとのタンパエッジに対する加圧力が殆ど変化しないので、このための保守は軽減される。また、ねじ部材のねじ込みトルク力を軽く加減してもより最適な上記加圧力が容易に得られる。
【0031】
ストライキオフがベースプレートに対して上下位置を調節可能で且つアスファルトフィニッシャーの進行方向に関し、接地面に対する傾斜角度を調節可能に固定されている場合にも上記構成の加圧装置によれば一定範囲のストライキオフのベースプレートに対する上下位置傾斜角度の調節をおこなったとしても上記効果は維持される。
【0032】
ステップはスクリードに設けた合材を加振し乍押し付けるベースプレートを有するフレームの支持部材に緩衝装置を介して設けられており、緩衝装置はゴムダンパーと、ばねとばねの圧縮手段とを有し、ばねはステップの重量とスクリードマンの体重によりたわむ長さとを予め圧縮手段で圧縮されており、上記ばねのあらかじめ圧縮された状態において、ステップの上方への振動工程においてゴムダンパーの制振力が作用するようにゴムダンパーには圧縮たわみがない又は圧縮たわみが小さいこととしたことにより、上下動の振動成分はその往復動共にゴムダンパーにより減衰され、ステップの振動を抑制できる。特にタンパ装置アスファルトフィニシャーに対して有効である許りでなく、タンパ装置のないアスファルトフィニシャーにおいても有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本出願に係る第1の最良の実施の形態はアスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置(1,2)と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置(18)と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根19と、
合材を施工する面に押し付けるスクリード11,12と、
を有し、
スクリード11,12は、夫々がアスファルトフィニッシャーの走行方向に直角で水平方向に長いストライキオフ21と、タンパエッジ25と、ベースプレート23を走行の順に有し、ストライキオフ21はベースプレート23上部のフレーム23Aに支持され、接地面に交叉する長手方向の対タンパエッジ接触面21fを有し、タンパエッジ25は長手方向に直角な断面がほぼ方形でスクリード11,12に上下に微動の往復動するようにベースプレート23上部のフレーム23Aに設けた駆動手段に連結されストライキオフ21の対タンパエッジ接触面21fに接する前接触面25dと前接触面25dとベースプレート23に接触する後接触面25cと合材を衝き固める接地面(25b)とを有し、ベースプレート23はタンパエッジ25の後接触面25cに接触する対タンパエッジ接触面23dと合材を均す接地面(23a)とを有し、
ストライキオフ21とベースプレート23を弾性的に引き寄せて、ストライキオフ21の対タンパエッジ接触面21fとタンパエッジ25の前接触面25dとを弾力で加圧すると共にタンパエッジ25の後接触面25cとベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dを弾力で加圧する弾性部材(52)を有する加圧装置24を有することを特徴とするアスファルトフィニッシャーである。
【0034】
アスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置(1,2)と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置(18)と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根19と、
加振装置を備え合材を施工する面に加振し乍押し付けるスクリード(11,12)と、
スクリード(11,12)の後端に設けられたスクリードマンの搭乗するためのステップ10,20と、
を有し、
ステップ10,20はスクリードに設けた合材を加振し乍押し付けるベースプレート23を有するフレーム2Aの支持部材(23m)に緩衝装置を介して設けられており、緩衝装置はゴムダンパー56と、ばね58とばね58の圧縮手段(59,61,62)とを有し、ばね58はステップ10,20の重量とスクリードマンの体重によりたわむ長さとを予め圧縮手段(59,61,62)で圧縮されており、上記ばね58のあらかじめ圧縮された状態において、ステップ10,20の上方への振動工程においてゴムダンパー56の制振力が作用するようにゴムダンパー56には圧縮たわみがない又は圧縮たわみが小さいことを特徴とするアスファルトフィニシャーである。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【0036】
以下の説明において左右とはアスファルトフニッシャーの進行方向で見て左右のことである。また、前後方向とはアスファルトフニッシャーの進行する方向と同方向に関していう。
【0037】
(全体構成)
図6、図7はアスファルトフィニッシャーの側面図及び平面図である。シャーシー枠1は4つの車輪2で支持され、搭載した不図示の内燃機関で矢印イの方向へ走行するようになっている。即ち、車輌としてのアスファルトフィニッシャーは走行装置を有する。なお、走行装置としてはクローラによるものがある。
【0038】
シャーシー枠1に根本をピン3結合されたアーム4端にはスクリード装置5が設けてある。両側のアーム4先端は横架材で結合され両アーム間をわたって固定軸7が設けられ、固定軸7に中央スクリード枠8が回転自在に支持されている。中央スクリード枠8は操作ハンドル9によって傾動される。
【0039】
中央スクリード枠8の左右にわたる枠部材には中央スクリード11が固定されている。中央スクリード枠8にはワイドナー支持枠12が固定されている。ワイドナー支持枠12にはワイドナー枠13が左右両側の方向に伸縮自在に取り付けられている。ワイドナー枠13には水平方向に案内として円孔が設けられ、この円孔に案内部材のガイドバー14が出入り自在に摺動するように嵌合しており、ガイドバー14の先端にワイドナー枠13が固定されている。ワイドナー枠13にはワイドナースクリード15が支持されている。
【0040】
中央スクリード11は車輛の進行方向に該ワイドナースクリード15より前方に有り、両者は常に端部が重なっている。ワイドナースクリード15と中央スクリード11の下面は同一平面上に存在する。なお、アスファルトフィニッシャーによってはワイドナースクリードを備えないものがあるが後述するタンパ装置はワイドナースクリードの無い場合にも適用される。
【0041】
スクリード装置5には不図示ではあるがスクリード11,15のベースプレート部を加振するために不図示の加振装置を備えている。また、両スクリード11,15のベースプレート部を加熱するための加熱手段を備えている。
【0042】
作業時は車輛を前進し、説明を省略した油圧装置でもってアーム4をピン3を中心に回転してスクリード装置5を所要の舗装面となる位置まで下げ、車輌前部に設けたホッパー17にアスファルト合材(以下合材という)を投入すると図示矢印ロの方向に移動するコンベヤ18により車輌後部に配設したねじ羽根19に送られ、車輌進行方向に直角方向に配されたねじ羽根19により、左右両側へ送られ、路盤上に散布され、アスファルトフィニッシャーの進行により中央スクリード11、ワイドナースクリード15で押しならされこれらの下面により加振加熱押圧される。なお、本発明では後述するタンパ装置を備えており、同時に合材の衝き固めが行われる。
【0043】
アスファルトフニッシャーの進行方向で見て後端にはスクリードマンが搭乗するステップ10,20が設けてある。
【0044】
(ワイドナー)
アスファルトフィニッシャーがアスファルト舗装を施工する幅を決めるのがワイドナースクリード15である。合材を敷き均すスクリードは、施工する幅の基となる中央スクリード11と、施工する幅を調節するワイドナースクリード15で構成される。
【0045】
ワイドナースクリード15は、矢印イで示すアスファルトフィニッシャーの進行方向に対してスクリードの左右両翼を構成し、中央スクリード11と共にスクリードを構成する。
【0046】
ワイドナースクリード15は、中央スクリード11と一定の隙間を保った状態で、車体の前後方向で見て重なりを常に有する。
【0047】
(スクリード装置)
既にのべたようにスクリード装置5は中央スクリード11とワイドナースクリード15を備える。図1は中央スクリード11の縦断面図、図2はワイドナースクリードの縦断面図、図3はワイドナースクリードの正面図である。なお、図2は中央スクリードの説明にも用いる。
【0048】
図1、図2に示すように中央スクリード11、ワイドナースクリード15はストライキオフ21とタンパ装置22と、ベースプレート23と、加圧装置24とを主に有する。なお、タンパ装置22は中央スクリード11、ワイドナースクリード15において駆動手段(駆動装置)の駆動源側を除くと同様な構成であるので、駆動手段の異なる点を除いて同符号を用いる。
【0049】
ベースプレート23はフレーム23Aの下端に固定されている。ここでフレーム23Aとは燃焼室23bの周壁を構成する前板23e、天板23cを含む部材、上にのびる前板23eの上端に設けた上板23fで一体に設けてある。このフレーム23Aは中央スクリード枠8、又はワイドナー枠13に固体されている。
【0050】
ベースプレート23の下面23aが合材に接する接地面である。ベースプレート23は中央スクリード11、ワイドナースクリード15夫々の全幅にわたる(ここで幅とはアスファルトフィニッシャーの進行方向に直角方向の長さをいう、以下同じ)ベースプレート23を加熱するために図示されない熱源で加熱された加熱空気が送り込まれる燃焼室23bがベースプレート23上に設けてある。燃焼室23bはベースプレート23のほぼ全幅にわたる。燃焼室23bを構成する天板23c上には図示されない加振装置が設けてある。燃焼室23bに送り込まれる加熱空気でベースプレート部23aが約120°Cに加熱される。それだけでなく熱伝導によりタンパ装置22、ストライキオフ21が加熱される。合材は振動するベースプレート23の下面23aで加圧された状態でアスファルトフィニッシャーの図示矢印イの方向の進行により敷き均される。合材を迎え入れるため下面23aは前端部に前上りの斜面23a1を有するがこれを除いて平面である。
【0051】
ベースプレート23の前部には対タンパエッジ接触面23dが設けてある。対タンパエッジ接触面23dはタンパエッジ25の後接触面25cと後述のタンパエッジ加圧装置24の作用で常時圧接している。
【0052】
前板23eの上部はそのままほぼ垂直に立ち上り、水平方向の上板23fにつながる。そしてスクリード幅の端部となるベースプレート23を有するフレーム23Aの両端部は側板23gとなっている。ベースプレート23は厚肉鋼板をボルト30で燃焼室23bの構成材に設けたフランジ23kに固定してある。
【0053】
(タンパ装置)
タンパ装置22はタンパエッジ25、タンパエッジ25をボルト等で一体的に固着したタンパバー26、タンパバー26上面に接してボルト27でもってタンパバー26に固定された連結部材28、図2に示すように連結部材28にボルト29でもって固定された偏心輪部材31、軸受32を介して偏心輪部材31をピン部33bが回転自在に支持している偏心軸33、偏心軸33のジャーナル部33a(図3参照)を回転自在に支持している軸受ブラケット34を有する。軸受ブラケット34はジャーナル部33aを回転自在に支持する図示されない軸受を有する。ピン部33bはジャーナル部33aに対してタンパエッジ25の行程の半分偏心している。
【0054】
タンパエッジ25は図示のように角形断面をしており、合材を衝き固めるために合材に接する接地面は水平な下面25bとアスファルトフィニッシャーの進行方向の合材を迎え入れるように前部が傾斜した斜面25aを有する。タンパエッジ25は超高張力鋼を焼入したものである。断面寸法は前後方向の厚さ25ミリメートル、高さ22ミリメートル程度であり、スクリード11,15の夫々全幅にわたる長さを有する。
【0055】
タンパエッジ25と同長のタンパバー26がタンパエッジ25の上面に溶着されている。タンパバー26は厚さ25(−公差)ミリメートル、高さはタンパエッジ25を含めて70ミリメートルである。タンパバー26はタンパエッジ25の垂直荷重に対する強度、曲げ剛性を強化する。同時にタンパエッジ25の合材衝き固めのための慣性重量を得るようにしてある。タンパバー26は普通鋼材である。なお、タンパバー26は前後方向の厚さがタンパエッジ25の同厚さよりもわずかに小さい。タンパバー26はベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d、ストライキオフの耐タンパエッジ接触面21fとは接触しない。
【0056】
図2に示すように連結部材28はタンパバー26の上面に接して、六角ボルト27でもってタンパバー26に固定されるアングル部材28aと、アングル部材28aに溶接にて固定された水平断面角形の上下に長い棒材28bを有する。
【0057】
図3に示すように偏心輪部材31はベースプレート23を固定したフレーム23Aの長手方向の両側に配設されている。偏心軸33はジャーナル部33aから偏心したピン部33bに軸受32を介して偏心輪部材31を回転自在に支持している。
【0058】
軸受ブラケット34は上下方向の位置を調節可能にフレーム23Aに固定されている。そのための装置は前板23eに設けた図示されない上下方向の案内にガイドされるブラケット本体34aと、ブラケット本体34aの上端に下端がねじ込み固定され、上端部がベースプレート23の上方の上板23fに固定されたブラケット23hを挿通する通しねじ35aと、通しねじ35aにねじ込まれブラケット23hを挟持するナット35c,35dと、ブラケット本体34aの上下方向に長い長穴34a1を挿通して前板23eにねじ込まれるボルト34eを有する。
【0059】
ボルト34eを弛めて、ナット35c,35dの位置を変えることによりブラケット本体34aは上下動する。そこで、偏心軸33、軸受32、偏心輪部材31、連結部材28を介してタンパバー26と一体のタンパエッジ25は上下に位置を変える。これによって、タンパエッジ25の上下位置及びベースプレート23の接地面とタンパエッジ25の接地面との平行度を調整する。調整後はナット35c,35dをブラケット23hに対し締め込み、ボルト34eを締める。
【0060】
(ストライキオフ)
ストライキオフ21は合材を必要量導き入れる導入部21aと、合材をアスファルトフィニッシャーの前進方向へ押し進める迎え板部21bと、ほぼ垂直な前面板部21cとを有する。導入部21aは前進方向前側がわずかに上った傾斜面であり接地面となっている。迎え板部21bは下端側が前進方向に対して上端側よりもわずかに後退した上下方向の面となっている。導入部21aと迎え板部21bの交叉する角部は円弧21dで丸めてある。導入部21aの後端がタンパエッジ25の前接触面25dと接触する対タンパエッジ接触面21fとなっている。
【0061】
ストライキオフ21はベースプレート23上のフレーム23A上部に位置を調節可能に枢着されている。以下、詳細に説明する。
【0062】
ストライキオフ21はピン36でフレーム23Aに枢着されている。このピン36の軸心はアスファルトフィニッシャーの進行方向に直角で水平方向である。ピン36はストライキオフ21の背後の上部の両端部に夫々ある。ピン36はストライキオフ21の背面上部に上下の位置を調節可能に固定された支持部材37のブラケット37aと、フレーム23Aの上板23fに固定されたブラケット23i上に前後方向に位置を調節可能(調整用送り装置は説明を省略)に固定された支持部材38のブラケット38aとの夫々の穴に嵌合している。ブラケット37a,38aは板面が垂直で互に重なり接触している。
【0063】
支持部材37は図1、図2に示すように逆L形をしている。そしてストライキオフ21の上部に設けたブラケット21eの穴を挿通する上下方向の調節ねじ39が支持部材37の横片37bにねじ込まれている。支持部材37の竪片37cに設けた上下方向の長穴37dを挿通してボルト40がストライキオフ21にねじ込み固定されている。ここで調節ねじ39は例えば六角ボルトである。
【0064】
六角ボルト40を弛めて調節ねじ39を回転することによりストライキオフ21は上下動できる。所望位置でボルト40を締めるとストライキオフ21の上下方向の位置が定まる。この調節ボルト39はストライキオフ21の幅方向において2個所あるのでストライキオフ21の幅方向における導入部(接地面)21aの水平面に対する傾きを調整できる。
【0065】
支持部材38は前後方向に長い長穴38bを有する。支持部材38は長穴38bを挿通するボルト41をブラケット23iにねじ込み前後方向に位置を調節可能にブラケット23iに固定されている。ボルト41を弛めてストライキオフ21の上部を前後に位置を調整した後にボルト41を締め込む。これによってストライキオフ21の前後方向の傾きが調節できる。
【0066】
フレーム23Aの長手方向(幅方向)の両端付近に夫々ブラケット23iを設けて、ブラケット23iに支持部材38の前後位置を調節可能としてあるのでストライキオフ21のアスファルトフィニッシャーの進行方向に交叉する方向の水平面内における傾きを調節可能である。これによって長手方向において対タンパエッジ接触面21fをタンパエッジ25の前接触面25dに均一に当接できる。
【0067】
(タンパ装置の駆動手段)
タンパ装置22の駆動手段は、偏心軸33がジャーナル部33aに駆動源から回転力を伝えられることによって回転されるようになっている。中央スクリードとワイドナースクリードでは駆動手段は相違点がある。
【0068】
図1には中央スクリード11におけるタンパ装置22の駆動手段が示されている。ジャーナル部33aに固定したプーリ42とモータ43のモータ軸43aに固体されたプーリ44の間には複数のVベルト45が巻掛けてある。
【0069】
モータ43はフレーム23Aに設けたスライドベース46に図示矢印の前後方向に位置を調節可能に固定されている。
【0070】
ここで、Vベルト45が前後方向に巻掛けてあるのでジャーナル部33aが上下位置を調節されてもベルト装置の軸間距離は殆ど変化しないのでジャーナル部33aの上下位置による駆動力の変化は無視できる範囲にある。
【0071】
図3にはワイドナースクリード15におけるタンパ装置22の駆動手段が示されている。フレーム23Aの前板23eに固定された油圧回転モータ48の出力軸と偏心軸33のジャーナル部33aの先端側につづけて設けた軸端部とは自在継手49で連結されている。自在継手49と油圧モータ48の出力軸又は偏心軸33の軸端部とは何れも回転力を伝えるようににスプライン、又はキーを介していて自在継手49の何れかの端部は軸方向に移動可能としてある。
【0072】
タンパエッジ25の上下位置を調節するとき、偏心軸33がベースプレート23に対して上下し、油圧モータ48の軸心と偏心軸33のジャーナル部33aがくい違うので自在継手49が用いられているものである。
【0073】
上記において偏心軸33の偏心量は1.5ミリメートル、偏心軸33の回転速度は800r.p.mである。
【0074】
(タンパエッジの加圧装置)
タンパエッジ加圧装置24はストライキオフ21とベースプレート23を両者の相対位置にかかわらず常時引寄せて、ストライキオフ21の対タンパエッジ接触面21fとタンパエッジ25の前接触面25dとを加圧すると共にタンパエッジ25の後接触面25cとベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dを加圧する加圧部材として弾性部材、例えば、ばね部材52を有する。次に詳細を説明する。
【0075】
図1,図2に示すようにストライキオフ21の背後の下部に一端がピン51で枢着されてアスファルトフィニッシャーの進行方向の後方へ向ってのび、フレーム23Aに設けたブラケット23jを挿通し他端におねじを有するテンションバー24aが設けてある。テンションバー24aはタンパバー26上方をとおる。又は、図示の場合はタンパバー26の上縁の切り欠き部(図示されない)中を挿通している。
【0076】
テンションバー24aの一端のヨーク部24a1はストライキオフ21の背部に溶接により固定されたブラケット21gを挟み込み、ヨーク部24a1とブラケット21gの夫々の穴にピン51が丁度嵌合している。
【0077】
フレーム23A後部のブラケット23jのテンションバー24aが挿通する部分はU溝23j1であり、テンションバー24aはピン51を中心にして上方へ回動可能である。
【0078】
テンションバー24aの他端側には弾性部材が挿入されている。弾性部材としては本例でばね部材52を用いている。具体的には角形の断面を持つ線材を巻いた圧縮コイルばねを用いている。ばね部材52はブラケット23jをばね座としており、テンションバー24aに挿入された座金53を介してねじ込まれたねじ部材であるナット54により締め込まれている。ブラケット23jと座金53間のばね部材52の圧縮によりテンションバー24aでもってストライキオフ21とベースプレート23をタンパエッジ25を介して加圧している。
【0079】
ばね部材52は本例では外径30ミリメートル又は35ミリメートルの圧縮コイルばねである。テンションバー24aは直径12ミリメートルであり、前記他端のおねじはJISの標準ねじ(並ねじ)である。ナット54の締付トルクは80kg−mであり、テンションバー52にはばね部材52の外径が30ミリメートルの場合には約300kgの引張力が発生する。同じく外径35ミリメートルの場合は約400kgの引張力が発生する。
【0080】
テンションバー24a、ストライキオフのブラケット21g、フレーム23Aのブラケット23j等は各スクリード11,15夫々の幅方向(長手方向)の両側にあり、2箇所ある。
【0081】
(作用)
次に上記構成の作用を説明する。アスファルトフィニッシャーが図6、図7において図示矢印イの方向に前進すると、図1、図2に示すように中央スクリード11、ワイドナースクリード15は矢印イの方向に前進する。ホッパー17からコンベア18により図6、図7に示す図示矢印ロ方向に送られた合材はアスファストフィニッシャーの進行方向に直角方向に配設されたねじ羽根19により、左右両側へ送られ、路盤上に散布される。
この散布された合材はアスファルトフィニッシャーの進行により中央スクリード11、ワイドナースクリード15で押しならされこれらの下面により衝き固め、加振、加圧される。
【0082】
上記作用を詳細に説明する。スクリード11,15の下面は全体としてアタックアングルが付されている。ストライキオフ21で推し進められる合材はその下面へ迎え入れる状態となりストライキオフ21では薄層にならされ軽い力で圧縮される。つづく、アスファルトフィニッシャーの進行により、ストライキオフ21が通過した合材はタンパエッジ25で衝き固められる。
【0083】
中央スクリード11においてはモータ43が回転しておりプーリ44からVベルト45を介してプーリ42が回転され偏心軸33は回転する。ワイドナースクリード15においては油圧モータ48が回転し自在継手49を介して偏心軸33が回転する。
【0084】
何れのスクリード11,15においても同様に偏心軸33の回転によりピン部33bはふれ回り偏心輪部材31の上部はピン部33bに追従してふれ回り下部は主として上下動する。次にタンパ装置22の挙動を詳細に説明する。
【0085】
(タンパ装置の挙動)
図8は偏心軸33の回転と、タンパエッジ25の変位と、ストライキオフ21の変位と、ベースプレート23の作用を説明する図面である。
【0086】
偏心軸33のジャーナル部33aはフレーム23Aに固定された軸受ブラケット34に回転自在に支持されているため、ジャーナル部33aの軸心C1とフレーム23Aの対タンパ接触面23dとの関係位置は不動である。
今、上死点にあるピン部33bの中心C2及びジャーナル33aの中心C1を通る垂線がタンパエッジ25の前接触面25d、後接触面25c間の2等分位置をとおるものとする。この垂線を連杆中心線RLと称するものとする。ベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dを垂直面とする。ベースプレート23とタンパエッジ25が面接触する状態はピン部33bが偏心軸33の偏心回転に関して上死点又は下死点にあるときである(図8(a),(d)参照)。なお、図8は作用を分り易くするため偏心軸33の偏心量を誇張して大きく画いてある。
【0087】
図8(a)はピン部33bが上死点にある状態を示す。このとき、タンパエッジの後接触面25cとベースプレート23対タンパエッジ接触面23dは面接触する。また、このとき、タンパエッジの前接触面25dとストライキオフの対タンパエッジ接触面21fは面接触している。なお、このときタンパエッジの前接触面25dと後接触面25cは本例では平行で下面(接地面)25bは水平面とする。
図8(a)から偏心軸33が図示矢印ハの方向に回転するとピン部33bが上死点から矢印ハの方向に回転し直ちにタンパエッジ25を押し下げると共に連杆中心線RLは上部を右方へ変位して傾くのでタンパエッジ25の左下角25eがベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dに線状に接触する。また、タンパエッジ25の右上角25fがストライキオフの対タンパエッジ接触面21fに線状に接触する。同時に、ストライキオフ21はタンパエッジの角25fに押されて、ストライキオフ21をフレーム23Aに枢着しているピン36を中心にして図1、図2のばね部材52のばね力に抗して矢印ニの方向に回動する。この時ストライキオフ21はピン51、テンションバー24a、ナット54、座金53を介して弾性部材であるばね部材52を圧縮する。そして、タンパエッジの角25eはベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d上を下方へ摺動する。また、タンパエッジの角25fはストライキオフの対タンパ接触面21f上を下方へ摺動する。
図8(b)から(c)に示すように、ピン部33bが矢印ハの方向に回動して、図8(a)に示す位置からの回動した角度が90度になると、連杆中心線RLは垂直線に対する傾きがほぼ最大となる。このとき、タンパエッジの後接触面25cとベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d間のなす角αは角25eを頂点としてほぼ最大となる。そして、ストライキオフ21もピン36を中心に更に矢印二の方向に回動してほぼ回動限度位置に達する。このとき、タンパエッジの前接触面25dとストライキオフ21の対タンパエッジ接触面21f間のなす角βは角25fを頂点としてほぼ最大となる。このときタンパエッジの角25eはベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dに対して引き続き下方へ摺動し、タンパエッジの角25fはストライキオフの対タンパエッジ接触面21fに対して下方に摺動する。
図8(c)からピン部33bが矢印ハの方向に回動するとき、連杆中心線RLの垂直線に対する角度は減少して行き角α、βも減少して行く。図8(d)において接触角α、βとも零となる。このときタンパエッジ25は最も降下した位置となり、前接触面25dはストライキオフの対タンパエッジ接触面21fと面接触し、後接触面25cはベースプレートの対タンパエッジ接触面23dと面接触する。
かかる図8(a)から(d)のタンパエッジ25の下降により合材は衝き固められる。
次に図8(d)から(e)のようにピン部33bが矢印ハの方向に回動するとき、連杆中心線RLはピン部33bが左方に移動するので上側が左方になるように傾き、タンパエッジの角25hがベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dに線接触し、角25gがストライキオフの対タンパエッジ接触面21fに線接触して、これらの角25f,25gは上昇する。タンパエッジ25の下面25bは衝き固めた合材表面から離れる。
図8(d)から(a)にピン部33bが図示矢印ハの方向に回転することにより上記タンパエッジの角25hはベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dと摺動し、角25gはストライキオフ21対タンパエッジ接触面21fと摺動し、タンパエッジ25は上昇する。
図8(a)のタンパエッジ25の上昇限度位置において、タンパエッジの前接触面25dはストライキオフ21の対タンパエッジ接触面21fと面接触し、後接触面25cはベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dと面接触する。
上記図8(a)から(d)のタンパエッジ25の降下により合材は衝き固められる。これによる合材は下層側まで締め固められる。
【0088】
上述のようにタンパエッジ25が上下動するとベースプレート23及びストライキオフ21に対して、タンパエッジ25が摺動する。この際のベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dとストライキオフの対タンパエッジ接触面21f間の間隔の変化量は微小な大きさである。なんとなれば、偏心軸33のジャーナル部33a中心C1とタンパエッジ25までの距離(ジャーナル部33aの中心C1とタンパエッジの下面25bまでとする)を例えば300ミリメートルに比較すると、偏心軸33の偏心量は1.5ミリメートルと小さい。従って、αmax,βmaxの最大値は約1.5/600radであり、角α,βにより、タンパエッジの角25e,25fにおけるベースプレート23、ストライキオフ21の夫々の対タンパエッジ接触面23d,21fとの隙間g1,g2の大きさは、タンパエッジ25の高さをh=20ミリメートルとするとg1,g2の最大値は約0.05ミリメートルとなる。
【0089】
上述より、テンションバー24aは上下方向について、タンパエッジ25よりも、ストライキオフ21のベースプレート23付のフレーム23Aを支持するピン36側にあるからテンションバー24aの軸方向の変位は約0.05ミリメートル以下である。タンパエッジ25が上下動する間ばね部材52のばね力はほぼ一定であり、タンパエッジ25はほぼ一定のばね力でベースプレート23とストライキオフ21に挟持されている。従って、タンパエッジの前接触面25dとストライキオフの対タンパエッジ接触面21f及びタンパエッジの後接触面25cとベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d間には常にほぼ一定の摩擦力が働く。
【0090】
上記構成のアスファルトフィニッシャーによれば、タンパエッジとベースプレート及びタンパエッジとストライキオフ間は常に接触して接触面がばね力で加圧されているので接触面間に隙間が生じない。従って、タンパエッジとベースプレート、タンパエッジとストライキオフ間から上方へのアスファルトの侵入を防止できる。タンパエッジとベースプレート、タンパエッジとストライキオフ間は摺動するので粘度が小さい状態のアスファルトはあたかも潤滑剤のようになってマテリアルシールの作用も呈し上方へ移動するとしても微量である。これによって、タンパエッジ附近のベースプレート上、ストライキオフ上にはなかなかアスファルトが堆積するまでに到らない。
【0091】
タンパエッジの前後の接触面、ベースプレート及びストライキオフ夫々の対タンパエッジ接触面は摩耗するが、タンパエッジとベースプレート、タンパエッジとストライキオフ間の接触面はばね力により、タンパエッジをベースプレート及びストライキオフが挟持して加圧されているため常に接触状態が保たれる。
【0092】
偏心軸の回転につれてタンパエッジは上下動すると共に傾動するが、タンパエッジの前接触面とストライキオフの対タンパエッジ接触面及びタンパエッジの後接触面とベースプレートの対タンパエッジ接触面はほぼ一定の圧力が加わった状態で接触して摺動するので制振作用があり、微小変位をストライキオフに与えるとしても実施例のアスファルトフィニッシャーでは従来のタンパ装置付のアスファルトフィニッシャーの大きな振動はなくなった(比較実証済)。
【0093】
なお、タンパエッジで合材を衝き固める場合ストライキオフで導かれた合材は殆ど加圧されておらず(合材はやわらかい)、タンパエッジが合材を衝き固める作用によってはアスファルトフィニッシャーの振動を有意的に増大させるものではない。従来のベースプレートとストライキオフをタンパエッジを介して引き寄せている締結力よりも小さなばね力により、ほぼ一定の力でタンパエッジがベースプレートとストライキオフに挟持加圧されていること、及びタンパ装置及びタンパ装置の駆動手段である駆動装置の運動部分の慣性重量が小さいことからもタンパ装置自体の振動によってアスファルトフィニッシャーの振動を格別に増大しないことは明らかである。
【0094】
(従来例のタンパ装置の挙動)
ここで従来例ではどのような現象が生ずるかを考えて見る。
【0095】
従来例ではベースプレートとストライキオフの関係位置は調節可能であるが、調節後は固定される。この固定はベースプレートとストライキオフを可能な限り強固に締め付けた状態で不動とするとされている。
【0096】
例えば図9(a)又は(c)の状態においてベースプレートとストライキオフでタンパエッジを強固に締めつける。
そこで、例えば図9(b)のように連杆中心線RLが垂直に対してほぼ最大角度の場合にベースプレート23とストライキオフ21を引き寄せると、タンパエッジの角25e,25fはベースプレート23とストライキオフ21に押される。ベースプレート23とストライキオフ21を引き寄せる力が大きくなると、タンパエッジ25は反時計方向に傾動し、角α,βを減少させ偏心軸33を矢印ホの方向に回転させる。タンパエッジ25は上昇して、図9(a)に示すように、タンパエッジの前接触面25dはストライキオフの対タンパエッジ接触面21fと、及びタンパエッジの後接触面25cはベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dと、夫々面接触する。上述のように従来ベースプレートとストライキオフは可能な限り強固に締付けるとされているので各接触面25dと21f,25cと23dが面接触した後もベースプレート23とストライキオフ21を強く引き寄せて締付ける。
なほ、図9(b)はピン部33bが水平方向真横を向いているので上述のようになるが、今図9(b)において、連杆中心線RLが偏心軸33のピン部33bの中心が画く円Kに接する位置にピン部33bの中心があるとする。そのときベースプレート23とストライキオフ21を引き寄せると、ピン部33bは図示矢印ホの方へ回動する場合もあり、矢印ハの方向に回動する場合もある。矢印ハの方向へ回動した場合は、図9(c)に示すようにタンパエッジ25は角α,βを減少させ乍ら降下してタンパエッジ25と対するストライキオフ21、ベースプレート23の接触は面接触となる。
上述のように連杆中心線RLが傾いている状態、傾いていない状態においてベースプレートとストライキオフを引き寄せると図9(a)又は(c)のようになる。
モータ43、油圧モータ48が駆動されると、図9(a)において、矢印ハの方向に偏心軸33のピン部33bが回動すると、タンパエッジ25は連杆中心線RLの傾動に従って傾くと共に下降する。その際、タンパエッジの角25f,25eはストライキオフ21及びベースプレート23の対タンパエッジ接触面21f及び23d間を押し拡げる。タンパエッジの角25fとストライキオフの対タンパエッジ接触面21f、タンパエッジの角25eとベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d間には急速に大きな力が発生する。そして、この力はピン部33bが図9(b)まで回動するとほぼ最大となる。このとき、タンパエッジ25がストライキオフ21及びベースプレート23に加える上記力の変化は大きい。図9(a)の状態でベースプレート23とストライキオフ21を近ずけるように大きな力で締結してあるため、ベースプレート23に対してストライキオフ21は逃げることができないので、タンパエッジの角25e,25fでもってベースプレート23とストライキオフの夫々の対タンパエッジ接触面23d,21fが加圧された状態で、タンパエッジ25が移動するため、大きな摺動抵抗が生ずる。
図9(a)から(c)のようにピン部33bの回転によりタンパエッジ25は角25e,25fがベースプレート23とストライキオフの対タンパエッジ接触面23d,21fを摺動し乍降下し、図9(c)の状態となり、タンパエッジの前接触面25dとストライキオフの対タンパエッジ接触面21fとが面接触し、タンパエッジの後接触面25cがベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dと面接触する。
この際、タンパエッジの角25e,25fとベースプレート23、ストライキオフ21夫々の対タンパエッジ接触面23d,21f間の接触している力は急速に減少する。
【0097】
同様に図9(c)から(d)及び(d)から(a)に示すようにピン部33dの矢印ハの方向の夫々の半回転においても、同様の現象となる。
【0098】
このため、タンパエッジ25のかかる挙動に起因してタンパ装置を備えないアスファルトフィニッシャーに比較してタンパ装置付きのアスファルトフィニッシャーは振動が大であると考えられる。
【0099】
タンパエッジとベースプレート及びタンパエッジとストライキオフ間に大きな接触圧下、タンパエッジの角が対タンパエッジ接触面上を摺動するため、ベースプレートとストライキオフの夫々対タンパエッジ接触面がタンパエッジの摩耗に比較して支配的に著しく摩耗することになる(図10参照)。なんとなれば、タンパエッジは高張力鋼等を焼入れしてあるのに対して、ベースプレート、ストライキオフの夫々の対タンパエッジ接触面を構成する部分の材質は中硬鋼(例えばSC45)であるためである。なお、タンパエッジとベースプレート及びストライキオフの対タンパエッジ接触面の構成材を同一としても、対タンパエッジ接触面の摩耗が軽減されるだけである。
【0100】
(タンパエッジと対タンパエッジ接触面の摩耗状態)
図10はベースプレート23とストライキオフ21の関係位置が図9(a),(c)の位置で一定するように、ベースプレート23とストライキオフ21がタンパエッジ25と面接触して締結されている場合において、断面方形のタンパエッジ25がベースプレート23及びストライキオフ21の対タンパエッジ接触面23dを摩耗する状態を示す。
【0101】
図10において、図9(a)に示す状態からピン部33bが矢印ハの方向に180度回転するとタンパエッジ25は上側が右傾する。ベースプレートの対タンパエッジ接触面23dは、L1の間がタンパエッジの角25eによって図示凹面23d1のように摩耗する。同時にストライキオフの対タンパエッジ接触面21fのS1の間がタンパエッジの角25fによって図示凹面21f1のように摩耗する。
【0102】
図10において、図9(c)に示す状態からピン部33bが矢印ハの方向に更に180度回転するとタンパエッジ25は上側が左傾する。ベースプレート23の対タンパエッジ接触面23dはL2の間がタンパエッジの角25hによって図示凹面23d2のように摩耗する。同時にストライキオフの対タンパエッジ接触面21fのS2の間がタンパエッジの角25gによって図示凹面21f2のように摩耗する。
【0103】
実施例ではこのとき、タンパエッジはベースプレートとストライキオフにほぼ一定の力で挟持されるので摩耗は少ない。そして、摩耗に拘わらずタンパエッジとベースプレートの接触面、タンパエッジとストライキオフの接触面がほぼ一定の圧力で加圧されているのでタンパエッジとベースプレート及びタンパエッジとストライキオフとの間に隙間が生ずることがないので、路盤側に散布した合材中のアスファルトがタンパ装置回りでベースプレート近くのフレーム上、ストライキオフ上に堆積したり、タンパ装置の駆動装置に障害を与えることはない。
【0104】
従来例では、タンパエッジが傾いたときタンパエッジとベースプレート及びストライキオフとの間を無理に拡げるので夫々の接触面21f,25c,25d,23dに大きな力が発生し摩耗が早い。図10のような摩耗状態では、少なくとも、図示のように凹面23d1と23d2との交線において隙間g3、凹面21f1と21f2の交線において隙間g4がタンパエッジ25の全長にわたり生ずる。この隙間g3,g4はタンパエッジ25の上下動の間、常に生じており、アスファルトはこの隙間g4,g3を通じてスクリード内へ侵入する。これを回避するためには頻繁にベースプレートとストライキオフ間の締結の増し締めを行わねばならない。そして、ベースプレートとストライキオフの締結を強いものとしているために、タンパエッジとベースプレート及びタンパエッジとストライキオフとの間の接触面に生ずる力が急変化するのでアスファルトフィニッシャーの振動を増大させる。ベースプレートとストライキオフを頻繁に強く締結するので摩耗を促進する。
【0105】
(他の実施例1)
上記においては、タンパエッジの形状を方形としたがベースプレート及びストライキオフの対タンパエッジ接触面を夫々平面とし、タンパエッジの前接触面、後接触面をタンパエッジの上下動に伴うこの平面に対する包絡面(中高の面)としてもよい。
【0106】
このようにタンパエッジの前接触面、後接触面を中高の面としたとしても、従来例によれば、ベースプレートとストライキオフを強固に締結しているため、タンパエッジとベースプレート及びタンパエッジとストライキオフとの間の接触面の摩耗が急速で両者間に隙間が早くできる。接触の摩耗による隙間の発生を抑えるためにベースプレートとストライキオフとの締結を強固に保つため頻繁に増し締めしなければならない点も同様である。そして、ベースプレートとストライキオフを強固に締結しているため、アスファルトフィニッシャーの振動が増大する点に変わりはない。
【0107】
本実施例によれば、タンパエッジの前接触面、後接触面を中高の面としても、タンパエッジの前接触面、後接触面に加わるベースプレート及びストライキオフの対タンパエッジ接触面での接触圧力はほぼ一定しているため、タンパエッジの前接触面とストライキオフの対タンパエッジ接触面間、タンパエッジの後接触面とベースプレートの対タンパエッジ接触面間には隙間が生じることなく、アスファルトが機内に侵入することがない。そして上記接触面21fと25d、25cと23dでは接触圧力は小さく摩耗も少なくなる。更に、ベースプレートとストライキオフの増し締めの必要がなくなる。
【0108】
(他の実施例2)
なお、図11に示すようにタンパ装置の駆動装置は既にのべたのと同様としてタンパ装置が偏心輪33のピン部33bとタンパエッジ25の上部とピン25iで結合した連杆47を用いた場合はタンパエッジ25はベースプレート23の対タンパエッジ接触面23d、ストライキオフの対タンパエッジ接触面21fとは摩耗によりストライキオフ21がピン36を中心に傾くことを無視すると面接触状態を大体に保つが、ベースプレート23、ストライキオフ21の対タンパエッジ接触面23d,21fが摩耗して来てタンパエッジ25とベースプレート23及びストライキオフ21の間に隙間が生ずる。この隙間が生じても従来例ではベースプレート23とストライキオフ21の関係位置は変化しないので、路盤側のアスファルトはこの隙間を通じてタンパエッジ25上に侵入する。従って、このようにしてもベースプレートとストライキオフの関係位置は頻繁に調整を行う必要がある。本実施例においては連杆47を用いたタンパ装置においても、既に述べたとおりの効果が生ずる。
【0109】
実施例は圧縮コイルばね52を用いたが、弾性部材としては伸縮に対して応答が早ければ他の形式のばね部材例えば板ばねを用いることもできる。また、圧縮コイルばね52に代えて空圧シリンダを用いてもよい。
【0110】
(他の実施例3)
タンパ装置を備えたアスファルトフィニッシャーではスクリードのベースプレートを加振する加振装置を備えた上にタンパ装置が振動を発生させるのでタンパ装置を備えないアスファルトフィニッシャーよりも大きく振動する。しかし、後者にあっても、スクリードに加振装置を備えているので大きく振動する。特に、スクリードマンが乗るステップは加振装置を取り付けてあるフレームに片持梁状に取り付けざるを得ないので大きく振動する。特にワイドナースクリードに付されているステップは位置の関係もあって大きく振動する。しかも、ワイドナースクリードに付されているステップはスクリードマンがほぼ常時立った姿勢で搭乗している。そこで既にのべたようにひざ腰を傷めることが多いのである。
【0111】
本発明では、特にタンパ装置付のアスファルトフィニッシャーに有効であるが、タンパ装置付でないアスファルトフィニッシャーにもステップの防振に有効な制振装置備えたアスファルトフィニッシャーを提供することを目的とする。
【0112】
この実施例はフレームの支持部材に緩衝装置を介してスッテプを設けたものである。以下、詳細に説明する。
【0113】
図6、図7に示すように進行方向から見てアスファルトフィニッシャーの後端にはスクリードマンが立って乗るためのステップ10,20が設けてある。ステップ10は中央スクリード11に設けられている。ステップ20はワイドナースクリード12に設けられている。
【0114】
この実施例はステップ20に施したものであるが、ステップ10に施してもよい。
【0115】
ステップ20はワイドナースクリード12のフレーム23Aに支持されるように設けてある。
【0116】
図12はワイドナースクリード12の左後方から見る斜視図である。フレーム23Aにはアスファルトフィニッシャーの進行方向とは逆方向にブラケット23mが突出している。ブラケット23mは溝形鋼を用いておりフレーム23Aに根本が溶接されている。フレーム23Aに属するブラケット23mはスッテプ20の支持部材となっている。
【0117】
ブラケット23mに設けたばね装置55、ゴムダンパー56を介してステップ20が支持されている。ステップ20は細長い方形の平面図形をしている。ブラケット23mはステップ20の短辺側を支持するように2個所に設られ、離れて並行している。
【0118】
ステップ20はブラケット23mに以下にのべる緩衝装置を介して支持されている。
【0119】
各々のブラケット23m上にはばね装置55、ゴムダンパー56を接近して設けて1組として、これを2組設けてある。従ってステップ20は長手方向の両端において支持されている。
【0120】
ステップ20は中空箱形に作られている。ステップ20はスクリードマンの乗るふみ板20aに平行して下板20bが設けてあり、ふみ板20aと下板20bの全周辺は側板となった一体物である。
【0121】
ステップ20は厚さ4.5ミリメートルの鋼板製であり、上面のふみ板20aと側板はしま鋼板製となっている。
【0122】
図13はばね装置55、ゴムダンパー56を含む縦断面図である。
【0123】
ばね装置55はブラケット23mに設けた円穴23m1に丁度嵌まり込みつば57aでブラケット23mに支持される円筒形の容器57の底57bとふみ板20a間に縮設されたばね58を有する。ばね58は下板20bの穴20b1を挿通している。ばね58は圧縮コイルばねであって断面が厚さ2.5ミリメートル、幅4ミリメートルの線材を巻いたものである。ばね58の外径は25ミリメートル、巻き数15、全長90ミリメートルを80ミリメートル(ご確認願います)に圧縮して装着してある。
【0124】
ばね58を予め圧縮した状態を保つために圧縮手段が設けてある。この圧縮手段は一端をふみ板20aに固定され、ばね58の中心を挿通して容器57の底57bを貫通する植ボルト59と、座金61を介して植ボルト59にねじ込まれるナット62を有する。
【0125】
下板20bとブラケット23mに両端が固定されているゴムダンパー56は強減衰防振ゴム製の円筒形の防振ゴム56aの両端に円板56bと一体におねじ部材56cとを有する取付具を備えている。取付具は鉄製である。円板56bと防振ゴム56aは加硫接着で一体とされている。一方のおねじ部材56cはブラケット23mにねじ込まれている。他方のねじ部材56cは下板20bを貫通してステップ20内に突出している。他方のねじ部材56cにはナット63がねじ込まれている。即ち、ゴムダンパー56はブラケット23mとステップ20を連結している。
【0126】
上記、状態では4本のばね58にはステップ20の荷重と想定されるスクリードマン1人の体重60kgが加わったときに丁度10ミリメートルたわむようになっている。このたわみ10ミリメートルはナット62を締め込んでばね58を10ミリメートルたわませている。そして、ゴムダンパー56は上記状態では圧縮も引張りも受けない状態となっている。1本だけのばね58についていえば、ステップ20の重量の4分の1と体重の4分の1の15kgが加わったときにばね58は10ミリたわむようになっている。このときゴムダンパー56には圧縮力も引張力も加わらないようになっている。
【0127】
ここで、ゴムダンパー56はステップ20が振動工程において上方へも下方への変位の両方において制振力が生ずればよいので、上記ステップ20の重量とスクリードマンの体重に見合う以下の荷重をゴムタンパ56に予め加えておいてもよい。この荷重はダンパゴム56aを上下方向に圧縮するものでもよく、引張るものでもよい。
【0128】
ゴムダンパー56は防振ゴム56aが直径32ミリメートル、高さ22ミリメートルである。防振ゴム56aは強減衰防振ゴムゴムが採用されている。
【0129】
フレーム23Aに設けてある図示されない加振装置が駆動される。又は同時にタンパ装置22が駆動される。すると、加振装置はベースプレート23のみを加振することが目的であるけれども、フレーム23Aを加振している。又、タンパ装置22はフレーム23Aに支持されているのでタンパ装置22の駆動に基づく振動はフレーム23Aに伝わる。これらの振動はブラケット23mに伝わる。ステップ20上にスクリードマンが乗った状態ではばね58のばね力はスクリードマンの体重にステップ20の重量を加えた荷重と釣合うようにばね58はたわんでいるので防振ゴム56は圧縮されていないし、引張りもされていない。そこで、ブラケット23mの振動の上下動成分はブラケット23mが上方へ振動で変位するときも下方へ振動で変位するときも共に防振ゴム56aによって減衰される。ゴムダンパー56はまた、ブラケット23mの水平面内における振動(横方向の振動)も減衰する。
【0130】
上述のように、この実施例によれば、ステップの振動が抑制される。これによって、スクリードマンに与える悪影響が大幅に除かれる。この悪影響とは振動を受けることによる感覚の鈍磨が少なくなることである。長期的にはスクリードマンのひざ腰への負担が小さくなるため、ひざ腰を傷めて職場として長くいられないということがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、ベースプレートとストライキオフ間にタンパエッジを加圧するための弾性部材を設けるだけでアスファルトフィニッシャーの保守点検を頻繁に行わなくてよく、少ない保守時間でより長い稼働時間が得られるようになる。また、タンパエッジとベースプレート、タンパエッジとストライキオフとの接触面はほぼ一定の圧力で加圧され、この加圧力も従来例よりも著しく低くできるのでこれら接触面におけるベースプレート、ストライキオフ、タンパエッジの摩耗が減少され耐久性を増す。
【0132】
特に、タンパ装置付のアスファルトフィニッシャーの振動を著しく軽減できるので作業者の健康に与える影響を抑制できる。新たに必要な主な部材は弾性部材として圧縮コイルばねを用いる場合は、きわめて安価である。
【0133】
ステップを本発明の緩衝装置を介してフレームで支持することにより、フレーム側からステップへ伝わる振動は軽減され作業環境の改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】中央スクリードの縦断面図である。
【図2】ワイドナースクリードの縦断面図である。
【図3】ワイドナースクリードの内部を見る正面図である。
【図4】加圧装置の略斜視図である。
【図5】タンパ装置の略斜視図である。
【図6】アスファルトフィニッシャーの側面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】(a)から(e)は実施例のタンパ装置の作用を示す側面図である。
【図9】(a)から(b)は従来例のタンパ装置の作用を示す側面図である。
【図10】タンパエッジ回りの摩耗状態示す側面図である。
【図11】他のタンパ装置を示す模式図である。
【図12】他の実施例3を示し、ステップの緩衝装置を示すための斜視図である。
【図13】ステップの緩衝装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0135】
C1…ジャーナル中心 C2…中心 RL…連杆中心線 g1,g2,g3,g4…隙間
1…シャーシー枠
2…車輪
3…ピン
4…アーム
5…スクリード装置
7…固定軸
8…中央スクリード枠
9…操作ハンドル
10…ステップ(中央)
11…中央スクリード
12…ワイドナースクリード
13…ワイドナー枠
14…ガイドバー
15…ワイドナースクリード
17…ホッパー
18…コンベア
19…ねじ羽根
20…ステップ(ワイドナー) 20a…ふみ板 20b…下板 20b1…穴
21…ストライキオフ 21a…導入部 21b…迎え板部 21c…前面板部 21d…円弧 21e…ブラケッド 21f…対端タンパエッジ接触面 21f1,21f2…凹面 21g…ブラケット
22…タンパ装置
23…ベースプレート 23A…フレーム 23a…下面(接地面) 23b…燃焼室 23c…天板 23d…対タンパエッジ接触面 23d1,23d2…凹面 23e…前板 23f…上板 23g…側板 23h,23i,23j…ブラケット 23k…フランジ 23m…ブラケット 23m1…丸穴
24…加圧装置 24a…テンションバー 24a1…ヨーク部
25…タンパエッジ 25a…斜面 25b…下面(接地面) 25c…後接触面 25d…前接触面 25e,25f,25g,25h…角
26…タンパバー
27…ボルト
28…連結部材 28a…アングル部材 28b…棒材
29…ボルト
30…ボルト
31…偏心輪部材
32…軸受
33…偏心軸 33b…ピン部
34…軸受ブラケット 34a…ブラケット本体 34a1…長穴 34e…ボルト
35a…通しねじ 35c,35d…ナット
36…ピン
37…支持部材 37a…ブラケット 37b…横片 37c…竪片 37d…長穴
38…支持部材 38a…ブラケット 38b…長穴
39…調節ねじ
40,41…ボルト
42…プーリ
43…モータ 43a…モータ軸
44…プーリ
45…Vベルト
46…スライドベース
47…連杆
48…油圧回転モータ
49…自在継手
51…ピン
52…ばね部材(弾性部材)
53…座金
54…ナット
55…ばね装置
56…ゴムダンパー 56a…防振ゴム 56b…円板 56c…おねじ部材
57…容器 57a…つば 57b…底
58…ばね
59…植ボルト
61…座金
62…ナット
63…ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根と、
合材を施工する面に押し付けるスクリードと、
を有し、
スクリードは、夫々がアスファルトフィニッシャーの走行方向に直角で水平方向に長いストライキオフと、タンパエッジと、ベースプレートを走行の順に有し、ストライキオフはベースプレート上部のフレームに支持され、接地面に交叉する長手方向の対タンパエッジ接触面を有し、タンパエッジは長手方向に直角な断面がほぼ方形でスクリードに上下に微動の往復動するようにベースプレート上部のフレームに設けた駆動手段に連結されストライキオフの対タンパエッジ接触面に接する前接触面と前接触面とベースプレートに接触する後接触面と合材を衝き固める接地面とを有し、ベースプレートはタンパエッジの後接触面に接触する対タンパエッジ接触面と合材を均す接地面とを有し、
ストライキオフとベースプレートを弾性的に引き寄せて、ストライキオフの対タンパエッジ接触面とタンパエッジの前接触面とを弾力で加圧すると共にタンパエッジの後接触面とベースプレートの対タンパエッジ接触面を弾力で加圧する弾性部材を有する加圧装置を有することを特徴とするアスファルトフィニッシャー。
【請求項2】
前記加圧装置はベースプレート上部のフレームの上部にアスファルトフィニッシャーの進行方向に直角で水平方向の軸心でもって枢着されたストライキオフの背面の下部に一端が枢着されてアスファルトフィニッシャーの進行方向の後方へ向ってのび、ベースプレート上部のフレームに設けたブラケットを挿通し、他端にねじを有するテンションバーと、テンションバーの他端側に挿入された弾性部材であるばね部材と、テンションバーの他端のねじにねじ込まれたねじ部材と、を有し、ねじ部材を締め込み前記ブラケットとねじ部材間のばね部材の圧縮によりテンションバーでもってストライキオフとベースプレートをタンパエッジを介して加圧することを特徴とする請求項1に記載のアスファルトフィニッシャー。
【請求項3】
ストライキオフはベースプレートに対して上下位置を調節可能で且つアスファルトフィニッシャーの進行方向に関し、接地面に対する傾斜角度を調節可能に固定されていることを特徴とする請求項2に記載のアスファルトフィニッシャー。
【請求項4】
アスファルト舗装の施工を行うアスファルトフィニッシャーにおいて、
アスファルトフィニッシャーを走行させる走行装置と、
合材を車輌前部のホッパーから車輌後部へ搬送する合材搬送装置と、
合材をアスファルト舗装の幅に広げるねじ羽根と、
加振装置を備え合材を施工する面に加振し乍押し付けるスクリードと、
スクリードの後端に設けられたスクリードマンの搭乗するためのステップと、
を有し、
ステップはスクリードに設けた合材を加振し乍押し付けるベースプレートを有するフレームの支持部材に緩衝装置を介して設けられており、緩衝装置はゴムダンパーと、ばねとばねの圧縮手段とを有し、ばねはステップの重量とスクリードマンの体重によりたわむ長さとを予め圧縮手段で圧縮されており、上記ばねのあらかじめ圧縮された状態において、ステップの上方への振動工程においてゴムダンパーの制振力が作用するようにゴムダンパーには圧縮たわみがない又は圧縮たわみが小さいことを特徴とするアスファルトフィニシャー。
【請求項5】
タンパ装置を有することを特徴とする請求項4に記載のアスファルトフィニシャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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