説明

アスファルト混合物

バインダーと、骨材と、1種以上の希土類元素をドープした式MAl(但し、MはSr、Ba及びCaから選ばれる)の燐光化合物とを含む燐光性アスファルト混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はアスファルト舗装の製造に好適に使用されるアスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
路面は、通常、ビチューメンのようなバインダーと骨材との混合物であるアスファルトで作られる。発光する燐光性路面を供給し、これにより街路光の必要性を低減すると共に、道路使用者に対する安全性を潜在的に向上するために、多くの試みがなされている。WO 92/18573は、紫外光で蛍光を発する炭化水素成分を含むアスファルト用バインダーを開示している。WO 93/11302は、慣用のビチューメン舗装に燐光性の粒子又は樹脂を添加する方法を開示している。WO 95/10663は、蛍光材料をセメント及び砂と混合し、路面に取込み可能な粒体に成形する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らはルミネセンスを表す路面を供給するため探求した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、バインダーと、骨材と、1種以上の希土類元素をドープした式MAl(但し、MはSr、Ba及びCaから選ばれる)の燐光化合物とを含む燐光性アスファルト混合物を提供する。
【0005】
本発明は更に、(a)前記バインダーを前記骨材と混合する工程、及び
(b)前記燐光化合物を該バインダー及び該骨材と混合する工程、
を含み、工程(a)及び工程(b)を同時に行うか、或いは工程(a)の後に工程(b)を行う本発明アスファルト混合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明者らは、1種以上の希土類元素をドープした式MAl(但し、MはSr、Ba及び/又はCaである)の燐光化合物をアスファルト混合物に取込むと、燐光を示すアスファルト混合物及びアスファルト舗装が得られる方法を開発した。この燐光化合物は、バインダーと骨材とを混合した後、又はバインダーと骨材とを混合しながら、バインダー及び骨材と混合される。骨材を添加する前に燐光化合物をバインダーと混合すると、得られるアスファルト混合物は燐光を発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
殆どの舗装ではバインダーはビチューメン、炭化水素及びその誘導体を必須成分とする固体又は液体である。しかし、近年は合成バインダーも使用されてきた。ShellのMexphalte C(R)のような合成バインダーは、通常、道路用に使用されるビチューメンバインダーと同様な流動学的機械的特性を有する。このような合成バインダーは透明なので、容易に着色され、着色アスファルト混合物を得るために使用される。本明細書で用語“バインダー”は、ビチューメン材料及び同様な流動学的機械的特性を有する合成材料の両方を包含する。
【0008】
発明の詳細な説明
アスファルト混合物はバインダー及び骨材、特に充填材、砂及び石材を含有する。得られるアスファルトには多くの種類があり、その特性は顕著に変化できる。舗装用アスファルトの設計は、大部分、完成建造物において所望特性を得るために材料を選択し、配分する問題である。アスファルト混合物の設計は、通常、骨材とアスファルトとの混合物の格付けに基づいて、密粒度、ギャップ粒度及び開粒度に分類される。本発明のアスファルト混合物はいずれの範疇に入ってもよい。
【0009】
本発明アスファルト混合物中のバインダーの量は、使用すべきアスファルトの用途に従って変化する。しかし、本発明で使用されるアスファルト混合物は、バインダーを、アスファルト全量に対し、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜10重量%、最も好ましくは3〜7重量%含有する。
【0010】
アスファルト混合物中のバインダーはビチューメンバインダーであってもよいし、或いはビチューメンバインダーと同様の流動学的機械的特性を有する合成バインダーであってもよい。バインダーの25℃での針入度(EN 1426に従って測定)は、好ましくは10〜350、更に好ましくは10〜250の範囲である。バインダーの軟化点(EN 1427に従って測定)は、好ましくは30〜70℃、更に好ましくは35〜55℃の範囲である。
【0011】
本発明の一実施態様では、アスファルト混合物中のバインダーは透明な合成バインダーである。透明な合成バインダーは、例えば米国特許第4,629,754に記載されている。
【0012】
本発明の他の一実施態様では、アスファルト混合物中のバインダーはビチューメンバインダーである。ビチューメンバインダーは、安価であり、また一般に好適な機械特性を有するため、普通に使用されている。本発明で都合良く使用できるビチューメンバインダーの例としては、蒸留又は“直留”ビチューメン、沈殿ビチューメン、例えばプロパンビチューメン、酸化又はブローン(blown)ビチューメン、ナフテン性ビチューメン又はそれらの混合物が含まれる。ビチューメンバインダーはビチューメンを融剤(flux)油、例えば芳香族、ナフテン性又はパラフィン性融剤油とブレンドして製造できる。
【0013】
アスファルト混合物中のバインダーは重合体を含有してよい。好ましい重合体は、熱可塑性エラストマー又はプラストマー、例えばスチレン系ブロック共重合体、オレフィン系共重合体、ポリウレタン及びポリエーテル−ポリエステル共重合体である。バインダーは2種以上の重合体の混合物を含有してよい。バインダー中の重合体の量は、バインダーの重量に対し、好ましくは0.5〜15重量%、更に好ましくは1〜7重量%である。
【0014】
アスファルト混合物中のバインダーは、更に添加剤、例えばワックスのような軟化剤、又はワックス、ポリ燐酸及びエチレン重合体のような針入度指数増幅剤を含有してよい。
【0015】
燐光化合物は式MAl(但し、MはSr、Ba及びCaから選ばれる)を有し、1種以上の希土類元素をドープしたものである。好ましくは燐光化合物はユーロピウム及び任意に別の希土類金属でドープされる。更に好ましくは燐光化合物はユーロピウム及びジスプロシウムか、又はユーロピウム及びランタンでドープされる。最も好ましくは燐光化合物は、ユーロピウム及びジスプロシウムをドープしたアルミン酸ストロンチウムである。好適な化合物はUS 2007 096058に開示されている。
【0016】
アスファルト混合物中の燐光化合物の量は、アスファルト混合物の重量に対し、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜8重量%である。この好ましい量は、コスト(燐光化合物はアスファルト混合物中で最も高価な成分になり易い)と十分な燐光との妥協である。
【0017】
更に本発明は本発明のアスファルト混合物から作製した燐光アスファルト舗装を提供する。
【0018】
本発明のアスファルト混合物は、(a)前記バインダーを前記骨材と混合する工程、及び(b)前記燐光化合物を該バインダー及び該骨材と混合する工程を含み、工程(a)及び工程(b)を同時に行うか、或いは工程(a)の後に工程(b)を行う方法により製造できる。好適な混合技術は当業者に知られている。混合は、好ましくはバインダーの軟化点を超える温度、更に好ましくは120℃を超える温度で行われる。燐光化合物は、バインダーと骨材とを混合した後、或いはバインダーと骨材とを混合しながら、バインダー及び骨材と混合される。骨材を添加する前に燐光化合物をバインダーと混合すると、得られるアスファルト混合物は燐光を発生しない。
【0019】
アスファルト混合物は、従来の舗装施工法を用いてアスファルト舗装を形成するために使用できる。舗装を光に曝した後、光が放出される。
【実施例】
【0020】
本発明を以下の実施例を参照して説明するが、これらの実施例は本発明の制限を意図するものではない。
【0021】
実施例1
粗骨材(2/6 Rouillac)40部、細骨材(0/2 Rouillac)52部、充填材(Meac)2部、透明合成バインダー(Mexphalte C(R)、Shellから)6部、及びEu及びDyをドープしたSrAlからなる燐光粉末(BLO−8、Chimirayから)1部を混合して、アスファルト混合物を製造した。このアスファルト混合物を90分間光に曝すと、暗中で15分の蛍光を示した。
【0022】
実施例2
燐光粉末1部の代りに燐光粉末3部を使用した他は実施例1を繰り返した。このアスファルト混合物を90分間光に曝すと、暗中で15分の蛍光を示した。
【0023】
実施例3
燐光粉末1部の代りに燐光粉末5部を使用した他は実施例1を繰り返した。このアスファルト混合物を90分間光に曝すと、暗中で20分の蛍光を示した。
【0024】
実施例4
合成バインダー6部の代りにビチューメンバインダー(針入度等級 160/200)6部を使用した他は実施例3を繰り返した。このアスファルト混合物を90分間光に曝すと、暗中で15分未満の蛍光を示した。また、このアスファルト混合物を300分間光に曝すと、暗中で15分の蛍光を示した。
【0025】
実施例5
輪講粉末部の代りに燐光粉末7部を使用した他は実施例4を繰り返した。このアスファルト混合物を90分間光に曝すと、暗中で15分未満の蛍光を示した。また、このアスファルト混合物を300分間光に曝すと、暗中で15分の蛍光を示した。
【0026】
比較例1
Eu及びDyをドープしたSrAlからなる燐光粉末(BLO−8、Chimirayから)と透明合成バインダー(Mexphalte C(R)、Shellから)とを4:1の比で混合した。得られたバインダーは燐光を示さなかった。得られたバインダー(合成バインダーと燐光粉末とからなる)6部を粗骨材(2/6 Rouillac)40部、細骨材(0/2 Rouillac)52部及び充填材(Meac)2部と混合した。得られたアスファルト混合物は燐光を示さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】WO 92/18573
【特許文献2】WO 93/11302
【特許文献3】WO 95/10663
【特許文献4】米国特許第4,629,754
【特許文献5】US 2007 096058

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、骨材と、1種以上の希土類元素をドープした式MAl(但し、MはSr、Ba及びCaから選ばれる)の燐光化合物とを含む燐光性アスファルト混合物。
【請求項2】
前記バインダーが透明な合成バインダーである請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
前記バインダーがビチューメンバインダーである請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項4】
前記燐光化合物が、1種以上の希土類元素をドープしたアルミン酸ストロンチウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアスファルト混合物。
【請求項5】
前記燐光化合物にユーロピウムがドープされ、更に任意に別の希土類元素がドープされている請求項1〜4のいずれか1項に記載のアスファルト混合物。
【請求項6】
前記アスファルト混合物中の燐光化合物の量が、該アスファルト混合物に対して0.1〜10重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアスファルト混合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアスファルト混合物から製造された燐光性アスファルト舗装。
【請求項8】
(a)前記バインダーを前記骨材と混合する工程、及び
(b)前記燐光化合物を該バインダー及び該骨材と混合する工程、
を含み、工程(a)及び工程(b)を同時に行うか、或いは工程(a)の後に工程(b)を行う請求項1〜7のいずれか1項に記載のアスファルト混合物の製造方法。

【公表番号】特表2011−525562(P2011−525562A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515349(P2011−515349)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057798
【国際公開番号】WO2009/156389
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】