説明

アダマンタン誘導体の製造方法

【課題】硬化性組成物の吸湿率や収縮率を向上できるアダマンタン誘導体を製造する。
【解決手段】アミド系溶剤に溶解させたヒドロキシアダマンタン類に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類を反応させる、下記式(1)で表されるアダマンタン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアダマンタン誘導体の製造方法及び該誘導体を使用した硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、加熱又は光照射により硬化する性質を有し、様々な分野で使用されている。
例えば、特許文献1では半導体集積回路の形成に使用するレジストが記載されている。放射線感光材料としてアダマンタンエステル類を使用することで、酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性のあるレジストを得ている。
特許文献2では、プリント配線板関係のソルダーレジスト、エッチングレジストや層間絶縁材料、感光性接着剤、感光性塗料、スクリーン印刷用感光材、感光性造膜材などに使用できる感光性樹脂組成物が記載されている。本文献では、ビスフェノール型エポキシ樹脂を骨格とし、イソシアナートエチル(メタ)アクリレート残基と、光重合性のエチレン二重結合と、遊離のカルボキシル基とを有する感光性樹脂を使用する。
特許文献3では、カラーフィルター用感光性組成物としてクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂が開示されている。
非特許文献1には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を封止剤として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−39665号公報
【特許文献2】特開平8−286371号公報
【特許文献3】特開2002−341533号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】月刊「マテリアルステージ」2003年6月号20〜24頁(技術情報協会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の各文献に記載されているように、硬化性組成物には様々な重合性単量体が使用されている。その一方で、光学・電子部品分野では部品の高性能化に対応するために、さらなる材料開発が必要とされている。このような状況下、アダマンタン誘導体について検討されているが、吸湿率や収縮率等の性能には未だ改良の余地があった。
本発明は、硬化性組成物の吸湿率や収縮率を向上できるアダマンタン誘導体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のアダマンタン誘導体の製造方法が提供される。
1.アミド系溶剤に溶解させたヒドロキシアダマンタン類に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類を反応させる、下記式(1)で表されるアダマンタン誘導体の製造方法。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ、水素又はメチル基であり、mは0〜10の整数であり、nは1〜10の整数である。)
2.前記イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類が下記式(3)で表される化合物である1記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【化2】

(式中、R〜Rはそれぞれ、水素又はメチル基であり、nは1〜10の整数である。)
3.上記1又は2に記載の製造方法で得たアダマンタン誘導体を含有する硬化性組成物。
4.上記3に記載の硬化性組成物を、加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規なアダマンタン誘導体の製造方法が提供できる。また、本発明の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、吸湿率や収縮率に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は下記式(1)で表されるアダマンタン誘導体の製造方法であり、原料であるヒドロキシアダマンタン類を、アミド系溶剤に溶解させた状態で、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類と反応させることを特徴とする。
【化3】

【0009】
式(1)において、R〜Rはそれぞれ、水素又はメチル基である。
mは0〜10の整数であり、nは1〜10の整数である。
【0010】
本発明の製造方法において、原料であるヒドロキシアダマンタン類としては、下記式(2)で表されるアダマンタン類が使用できる。
【化4】

(式中、R、R、及びmは上記式(1)と同様である。)
【0011】
上記式(2)で表されるアダマンタン類としては、1,3−ジヒドロキシアダマンタン、2,4−ジヒドロキシアダマンタン、1,4−ジヒドロキアダマンタン、1,3−ジヒドロキメチルアダマンタン、2,4−ジヒドロキメチルアダマンタン、1,4−ジヒドロキメチルアダマンタン、1,3−ジヒドロキエチルアダマンタン、2,4−ジヒドロキエチルアダマンタン、1,4−ジヒドロキエチルアダマンタン、1,3−ジヒドロキプロピルアダマンタン、2,4−ジヒドロキプロピルアダマンタン、1,4−ジヒドロキアダマンタン等が挙げられる。
【0012】
本発明では、上記アダマンタン類をアミド系溶剤に溶解させた状態とする。
アミド系溶剤としては、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、モノエチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、エクアミド(出光興産製)等が挙げられる。
溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶媒は、反応系におけるアダマンタン類の濃度が0.5質量%以上となるように使用することが好ましい。より好ましくは10質量%以上である。尚、溶媒中においてアダマンタン類は懸濁状態でもよい。即ち、アダマンタン類のすべてが溶媒に溶解している必要はない。
【0013】
ヒドロキシアダマンタン類を溶解させたアミド系溶媒に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類を投入して、これらを反応させる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、下記式(3)で表されるものが好ましい。
【化5】

(式中、R〜R及びnは上記式(1)と同様である。)
【0014】
上記式(3)で表される(メタ)アクリレート類としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
反応には触媒を使用してもよい。触媒としては、アミン類及び有機金属化合物が使用できる。
アミン類としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
有機金属化合物としては、ウレタン化反応に対して触媒活性のある有機金属化合物が使用できる。具体的には、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、テトラ−n−ブチルスズ、トリメチルスズヒドロキシド、ジメチル二塩化スズ、ジ−n−ブチルスズジラウレート、オクトエ酸スズ等の有機スズ化合物を例示することができる。
【0016】
触媒の使用量は、原料であるアダマンタン類1モルに対して、通常、0.01〜10モル程度が好ましく、特に0.01〜5モルであることが好ましい。触媒の使用量が0.01モル未満の場合、触媒の効率が低下し反応時間が長くなるおそれがある。一方、10モルを超えると、使用量の増加による効果が得られなくなる。触媒の使用量が5モル以下であると、触媒の効果と経済性のバランスが良好となる。
【0017】
アダマンタン類と(メタ)アクリレート類との反応温度は、通常、0〜150℃程度が好ましく、より好ましくは20〜100℃である。温度が低すぎると、反応速度が低下するため反応時間が長くなる。反応温度が0℃以上であると、反応速度が低下せず、反応時間が短縮される。また、反応温度が150℃より高いと、生成物の着色が激しくなる。反応温度が100℃以下であれば着色の少ない生成物を得ることができる。
【0018】
反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度が好ましく、より好ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎると、安全上問題があり、特別な装置が必要となるため産業上有用ではない。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。
反応時間は、通常、1分〜24時間程度が好ましく、より好ましくは1〜15時間である。
【0019】
本発明では反応終了後に、蒸留、晶析、カラム分離等により目的物を精製してもよい。精製方法は、生成物の性状と不純物の種類により選択できる。
【0020】
本発明の製造方法で得たアダマンタン誘導体は、硬化性組成物に使用される重合性単量体として使用できる。
本発明の硬化性組成物を構成する材料、例えば、重合開始剤、重合性モノマー、バインダーポリマー等については、用途により適宜調製することができる。以下、硬化性組成物の構成材料を例示する。
【0021】
重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、これらの重合開始剤(硬化剤)を用いた反応により硬化させることができる。
上記熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0022】
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
【0023】
また、重合開始剤(硬化剤)としては、カチオン重合開始剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤等から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
カチオン重合開始剤としては、熱又は紫外線によりエポキシ環と反応するものであればよく、上述したように例えば、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩及びメタロセン化合物等が挙げられる。
中でもトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
カチオン重合開始剤の使用量は、本発明のアダマンタン誘導体、又はアダマンタン誘導体及び後述する樹脂成分100質量部に対して、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。カチオン重合開始剤の含有率を上記範囲とすることにより、良好な重合及び光学特性等物性を発現できる。
【0026】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でもヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
酸無水物系硬化剤を用いる場合、その硬化を促進する目的で硬化促進剤を配合してもよい。この硬化促進剤の例としては、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類又はこれらの塩、オクチル酸亜鉛及びオクチル酸スズ等の金属石鹸類が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びトリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びm−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
これらの硬化剤の中では、硬化樹脂の透明性等の物性の点から、酸無水物系硬化剤が好適であり、中でも、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。
【0030】
上記硬化剤の配合割合は、本発明のアダマンタン誘導体、又はアダマンタン誘導体及び後述する樹脂成分の重合性基と、反応する硬化剤の官能基の比率で決定する。通常は、重合性基の数に対して、対応する硬化剤の官能基の数が0.5〜1.5倍、好ましくは0.7〜1.3倍となる割合である。
硬化剤の配合割合を上記範囲とすることにより、組成物の硬化速度が遅くなることや、その硬化樹脂のガラス転移温度が低くなることがなく、また、耐湿性の低下もないので好適である。
【0031】
本発明の組成物は、耐熱性や機械物性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。そのような重合性モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジオール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジエタノール ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレート等が挙げられる。アクリレートの配合量は、仕込んだアダマンタン誘導体に対して0.05〜80wt%、好ましくは1〜30wt%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、さらにバインダーポリマーを含んでいてもよい。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バインダーポリマーの配合量は、仕込んだアダマンタン誘導体に対して1〜50wt%が好ましく、アルカリ現像の見地から5〜30wt%の範囲がより好ましい。
【0033】
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明の組成物には、さらに必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、及び顔料等公知の各種添加剤を添加してもよい。
【0036】
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類及びリン化合物を用いることが好ましい。
【0037】
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物及びリン系化合物等の、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤を添加すると、本発明の組成物における耐熱性や透明性等の特性を保持することができる。
【0038】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛及びアルミナ等の公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、樹脂成分が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等を使用することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は白色ソルダーレジストにも用いることができる。この場合、樹脂組成物は例えば、光硬化性モノマー、チオール系化合物(硬化剤)、光重合開始剤、希釈剤、ルチル型酸化チタン及び上記のアダマンタン誘導体を含む。
【0040】
本発明の硬化物は、上記組成物を熱硬化又は光硬化することにより得ることができる。
熱硬化温度は通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。30℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色等を生じることがなくなる。硬化時間は使用するアダマンタン化合物や重合開始剤等によって異なるが、0.5〜6時間程度が好ましい。
【0041】
光硬化においては、例えば紫外線の照射により硬化物を得ることができる。紫外線の照射光量はアダマンタン誘導体や重合開始剤の種類、硬化物の膜厚等の諸条件により異なるが、通常、100〜5000mJ/cm程度、好ましくは500〜4000mJ/cmである。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃程度で0.5〜12時間程度行うことが好ましい。
【0042】
このように本発明で得られるアダマンタン誘導体及び硬化性組成物は、優れた特性を有するので、光回路(光導波路)、光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ等に用いられる光学接着剤、シール剤、カラーレジスト材料、プリント回路基板形成用レジスト材料、ソルダーレジスト材料、半導体用レジスト材料、半導体用下地膜、光記録材料等として用いることができる。
【実施例】
【0043】
実施例1
下記反応により、式(A)で表されるアダマンタン誘導体を合成した。
【化6】

【0044】
還流冷却器、温度計、攪拌機、窒素導入管を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、トリエチルアミン[31.76g、0.306mol]、1,3−アダマンチルジメタノール[30g、0.157mol]、DMF[300ml]を仕込み、攪拌しながら60℃まで加熱した。その後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI、昭和電工製)[43.14g、0.306mol]をゆっくり滴下した。ガスクロマトグラフィ(GC)で原料の消失を確認後、反応液を室温まで冷却した。
その後、メチルイソブチルケトン(MIBK)、水を加え、MIBK相を水洗、濃縮し、粗体を得た。粗体をトルエン、ヘプタン混合溶媒で再結晶し、目的物を得た(黄白色固体、収量60g、収率82%、融点88℃)。
【0045】
上記目的物について、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを測定した。結果を以下に示す。
H−NMR(500MHz):1.57(2H),1.75−1.9(10H),2.34(2H)、3.5(4H)、3.7(4H)、4.2(4H)、5.8(2H)、6.1(2H)、6.4(2H)
13C−NMR(125MHz):31.56,34.33、40.2、40.35、45.01,49.26、63.7、74、75.6、128、131.4、155、166.1
【0046】
実施例2
実施例1で得られたアダマンタン誘導体60質量部、メチルメタクリレート40質量部、及び重合開始剤であるベンゾインブチルエーテル1質量部を加え硬化性組成物とした。これに紫外線を光量2000mJ/cmで照射して硬化させた。
得られた硬化物の下記物性(1)〜(5)を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(1)全光線透過率(%)
試料として肉厚3mmの試験片を用いてJISK7105に準拠し、測定波長400nmにて測定した。測定装置は株式会社島津製作所製分光光度計UV−3100Sを用いた。
【0048】
(2)吸湿性率(%)
30×30×3mmの試験片を100℃で24時間乾燥した質量と、乾燥後の試験片を80℃で3時間水に浸けた質量との質量差から算出した。
【0049】
(3)硬化収縮率(%)
硬化性組成物の硬化前の比重と、硬化後の比重から算出した。
【0050】
(4)線膨張係数
JISK7197に準拠して測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
比較例1
溶媒をDMFからヘプタンに変更した他は、実施例1と同様にして上記化合物(A)の合成を試みた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートを投入してから3時間後にGC分析した結果、目的物ができていないことがわかった。
【0053】
比較例2
溶媒をDMFからテトラヒドロフラン(THF)に変更した他は、実施例1と同様にして上記化合物(A)の合成を試みた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートを投入してから3時間後にGC分析した結果、目的物ができていないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のアダマンタン誘導体及び樹脂組成物は、光回路(光導波路)、光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ等に用いられる光学接着剤、シール剤、カラーレジスト材料、プリント回路基板形成用レジスト材料、ソルダーレジスト材料、半導体用レジスト材料、半導体用下地膜、光記録材料等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド系溶剤に溶解させたヒドロキシアダマンタン類に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類を反応させる、下記式(1)で表されるアダマンタン誘導体の製造方法。
【化7】

(式中、R〜Rはそれぞれ、水素又はメチル基であり、mは0〜10の整数であり、nは1〜10の整数である。)
【請求項2】
前記イソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート類が下記式(3)で表される化合物である請求項1記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【化8】

(式中、R〜Rはそれぞれ、水素又はメチル基であり、nは1〜10の整数である。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法で得たアダマンタン誘導体を含有する硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物を、加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物。

【公開番号】特開2013−60492(P2013−60492A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198411(P2011−198411)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】