説明

アニリン誘導体類の製造方法

【課題】殺ダニ剤であるピラゾールカルボン酸アニリド誘導体類の中間体であるアニリン誘導体類を、効率的且つ経済的に工業的規模で製造できる方法を提供する。
【解決手段】式(III)の化合物と式(II)の化合物とをルイス酸の存在下、反応させることからなる式(I)で示されるアニリン誘導体又はその塩の製造方法。
【化1】


(式中、R、Rはアルキル、アリール等、RはH、アルキル等、Mはアルカリ金属、XはO,S、Rはアルキル等)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺ダニ剤であるピラゾールカルボン酸アニリド誘導体類の中間体であるアニリン誘導体類又はその塩類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のアルコキシアルキルアニリン誘導体類は、医薬・農薬等の中間体として、特に農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤の中間体として有用であることが知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。そのアニリン誘導体類は、パーフルオロアルキルアニリンとナトリウムメトキシドとを反応させることにより製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−189738号公報
【特許文献2】特開2007−308470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開示された製造方法は反応時間がかかる上、収率が低く工業的に有利な製造方法とはいえない。本発明の課題は、医薬・農薬等の中間体として有用なアルコキシアルキルアニリン誘導体類の工業的に有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決すべく本発明者等は鋭意研究を行った結果、一般式(III)で表されるフルオロアルキルアニリン誘導体類又はその塩類とアルカリ金属アルコキシド類との反応系に、種々のルイス酸を添加することにより一般式(I)で表されるアニリン誘導体類又はその塩類を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
一般式(III):
【化1】

{式中、R及びRは、同一又は異なっても良く、(a1) (C-C)アルキル基;(a2) (C-C)アルケニル基;(a3) (C-C)アルキニル基;(a4) (C-C)シクロアルキル基;(a5) ハロ(C-C)アルキル基;(a6) ハロ(C-C)アルケニル基;(a7) ハロ(C-C)アルキニル基;(a8) ハロ(C-C)シクロアルキル基;(a9) (C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;(a10)(C-C)シクロアルキル(C-C)ハロアルキル基;(a11) (C1-C)アルキル(C-C)シクロアルキル基;(a12) (C1-C)アルキル(C-C)シクロハロアルキル基;
(a13) アリール基;(a14) 同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)シアノ基、(c)ニトロ基、(d)(C-C)アルキル基、(e)ハロ(C-C)アルキル基、(f)(C-C)アルコキシ基、(g)ハロ(C-C)アルコキシ基、(h)(C-C)アルケニ
ルオキシ基、(i)ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(j)(C-C)アルキニルオキシ基、(k)ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(l)(C-C)シクロアルコキシ基、又は(m)ハロ(C-C)シクロアルコキシ基)から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール基;
【0007】
(a15) アリール(C-C)アルキル基;(a16) 同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)シアノ基、(c)ニトロ基、(d)(C-C)アルキル基、(e)ハロ(C-C)アルキル基、(f)(C-C)アルコキシ基、(g)ハロ(C-C)アルコキシ基、(h)(C-C)アルケニルオキシ基、(i)ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(j)(C-C)アルキニルオキシ基、(k)ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(l)(C-C)シクロアルコキシ基、又は(m)ハロ(C-C)シクロアルコキシ基から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール(C-C)アルキル基;
(a17) ヘテロ環基;又は(a18) 同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)シアノ基、(c)ニトロ基、(d)ホルミル基、(e)(C-C)アルキル基、(f)ハロ(C-C)アルキル基、(g)(C-C)アルコキシ基、(h)ハロ(C-C)アルコキシ基、(i)(C-C)シクロアルキル(C-C)アルコキシ基、(j)(C-C)アルキルチオ基、(k)ハロ(C-C)アルキルチオ基、(l)(C-C)アルキルスルフィニル基、(m)ハロ(C-C)アルキルスルフィニル基、(n)(C-C)アルキルスルホニル基、(o)ハロ(C-C)アルキルスルホニル基、(p)(C-C)アルキルカルボニル基、(q)カルボキシル基、又は(r)(C-C)アルコキシカルボニル基から選択される1〜5の置換基を環上に有するヘテロ環基を示す。
又、R1は、Rと一緒になって(a19) C-Cのシクロ環を形成することができ、該シクロ環は同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)(C-C)アルキル基、(c)ハロ(C-C)アルキル基、(d)(C-C)アルコキシ基、又は(e)ハロ(C-C)アルコキシ基から選択される1以上の置換基を有していてもよい。
【0008】
は、(b1) 水素原子;(b2)ハロゲン原子;(b3)ニトロ基;(b4)シアノ基;(b5)ホルミル基;(b6) (C-C)アルキル基;(b7) (C-C)シクロアルキル基;(b8) (C-C)アルケニル基;(b9) (C-C)アルキニル基;(b10) ハロ(C-C)アルキル基;
(b11) ハロ(C-C)シクロアルキル基;(b12) ハロ(C-C)アルケニル基;(b13) ハロ(C-C)アルキニル基;(b14) (C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基;(b15) (C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;(b16) (C-C)アルキルチオ(C-C)アルキル基;(b17) (C-C)アルキルスルフィニル(C-C)アルキル基;(b18) (C-C)アルキルスルホニル(C-C)アルキル基;(b19) ハロ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基;(b20) ハロ(C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;(b21) ハロ(C-C)アルキルチオ(C-C)アルキル基;(b22) ハロ(C-C)アルキルスルフィニル(C-C)アルキル基;(b23) ハロ(C-C)アルキルスルホニル(C-C)アルキル基;(b24) (C-C)アルコキシハロ(C-C)アルキル基; (b25) ハロ(C-C)アルコキシハロ(C-C)アルキル基:
(b26) アリール基;(b27) 同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)シアノ基、(c)ニトロ基、(d)(C-C)アルキル基、(e)ハロ(C-C)アルキル基、(f)(C-C)アルコキシ基、(g)ハロ(C-C)アルコキシ基、(h)(C-C)アルケニルオキシ基、(i)ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(j)(C-C)アルキニルオキシ基、(k)ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(l)(C-C)シクロアルコキシ基、又は(m)ハロ(C-C)シクロアルコキシ基から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール基;
(b28) ヘテロ環基;又は(b29) 同一又は異なっても良く、(a)ハロゲン原子、(b)シアノ基、(c)ニトロ基、(d)ホルミル基、(e)(C-C)アルキル基、(f)ハロ(C-C)ア
ルキル基、(g)(C-C)アルコキシ基、(h)ハロ(C-C)アルコキシ基、(i)(C-C)シクロアルキル(C-C)アルコキシ基、(j)(C-C)アルキルチオ基、(k)ハロ(C-C)アルキルチオ基、(l)(C-C)アルキルスルフィニル基、(m)ハロ(C-C)アルキルスルフィニル基、(n)(C-C)アルキルスルホニル基、(o)ハロ(C-C)アルキルスルホニル基、(p)(C-C)アルキルカルボニル基、(q)カルボキシル基又は(r)(C-C)アルコキシカルボニル基から選択される1〜5の置換基を環上に有するヘテロ環基を示す。
【0009】
は、(c1) 水素原子;(c2) (C-C)アルキル基;(c3) (C-C)シクロアルキル基;(c4) (C-C)アルケニル基;(c5) (C-C)アルキニル基;(c6) ハロ(C-C)アルキル基;(c7) ハロ(C-C)シクロアルキル基;(c8) ハロ(C-C)アルケニル基;又は(c9) ハロ(C-C)アルキニル基を示す。}
で示されるフルオロアルキルアニリン誘導体又はその塩類と、
【0010】
一般式(II):
MXR (II)
{式中、Mは、アルカリ金属原子を示し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を示し、
Rは、(d1)(C-C)アルキル基;(d2)ハロ(C-C)アルキル基;(d3)(C-C)シクロアルキル基;又は(d4)ハロ(C-C)シクロアルキル基を示す。}
で示されるアルカリ金属アルコレート類とを、ルイス酸存在下、反応させることにより、
一般式(I) :
【化2】

{式中、R、R、R、R、R、及びXは、前記に同じ。}
で示されるアニリン誘導体又はその塩の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入手容易な試薬を用い、短時間で、目的化合物を効率的且つ経済的に工業的規模で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアニリン誘導体類の一般式(I)から(III)の定義において、
「ハロ」とは「ハロゲン原子」を意味し、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はフッ素原子を示し、
「(C−C)アルキル基」とは、例えばメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示し、
「(C−C)アルケニル基」とは、例えばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、ペンテニル基、1−ヘキセニル基等の直鎖又は分鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニル基を示し、
「(C−C)アルキニル基」とは、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、1−ヘキシニル基等の直鎖又は分鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニル基を示す。
【0013】
「(C−C)シクロアルキル基」とは、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜6個の環状のアルキル基を示し、
「(C−C)アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基を示す。
【0014】
「(C−C)アルケニルオキシ基」としては、例えば、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニルオキシ基を示し、
「(C−C)アルキニルオキシ基」としては、例えば、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基、ヘキシニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニルオキシ基を示す。
「(C−C)シクロアルコキシ基」とは、例えばシクロプロピルオキシ基、シクロブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素原子数3〜6個の環状のアルキルオキシ基を示す。
【0015】
「(C−C)アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、セカンダリーブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ノルマルペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ノルマルヘキシルチオ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルチオ基を示し、
「(C−C)アルキルスルフィニル基」としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ノルマルプロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ノルマルブチルスルフィニル基、セカンダリーブチルスルフィニル基、ターシャリーブチルスルフィニル基、ノルマルペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、ノルマルヘキシルスルフィニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルフィニル基を示し、
「(C−C)アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、セカンダリーブチルスルホニル基、ターシャリーブチルスルホニル基、ノルマルペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、ノルマルヘキシルスルホニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルホニル基を示す。
【0016】
「アリール基」とは、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10個の芳香族炭化水素基を示す。
「ヘテロ環基」及び「ヘテロ環」としては、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する5または6員の単環式芳香族複素環基が挙げられる。例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル等のヘテロ環基が挙げられる。
【0017】
上記「(C−C)アルキル基」、「(C−C)アルケニル基」、「(C−C)アルキニル基」、「(C−C)シクロアルキル基」、「(C−C)シクロアルキルオキシ基」、「(C−C)アルコキシ基」、「(C−C)アルケニルオキシ基」、「(C−C)アルキニルオキシ基」、又は「(C−C)シクロアルキル
オキシ基」は、その置換し得る位置に1又は2以上のハロゲン原子が置換されていても良く、置換されるハロゲン原子が2以上の場合は、ハロゲン原子は同一又は異なっても良い。
それぞれ、「ハロ(C−C)アルキル基」、「ハロ(C−C)アルケニル基」、「ハロ(C−C)アルキニル基」、「ハロ(C−C)シクロアルキル基」、「ハロ(C−C)シクロアルキルオキシ基」、「ハロ(C−C)アルコキシ基」、「ハロ(C−C)アルケニルオキシ基」、「ハロ(C−C)アルキニルオキシ基」、又は「ハロ(C−C)シクロアルキルオキシ基」と示す。
【0018】
又、「(C−C)」、「(C−C)」、「(C−C)」等の表現は各種置換基の炭素原子数の範囲を示す。更に、上記置換基が連結した基についても上記定義を示すことができ、例えば、「(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基」の場合は環状の炭素数1〜6個のシクロアルキル基が直鎖又は分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基に結合していることを示す。
【0019】
本発明の好ましい実施態様としては、R及びRはハロ(C−C)アルキル基であり、好ましくはハロ(C−C)アルキル基、更に好ましくはフルオロ(C−C)アルキル基、最も好ましくはトリフルオロメチル基であり、Rは(C−C)アルキル基が好ましく、Rは水素原子、(C−C)アルキル基であり、好ましくは水素原子であり、Rは(C−C)アルキル基が好ましく、Xは酸素原子、硫黄原子であり、好ましくは酸素原子である。Mはアルカリ金属原子であり、好ましくは、ナトリウム原子である。
ルイス酸としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、水酸化亜鉛、トリイソプロポキシアルミニウム、イッテルビウム(III)トリフレートが良い。
【0020】
本発明は、以下のように図示される。
製造方法1.
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、M及びXは前記に同じ。)
一般式(III)で表されるフルオロアルキルアニリン誘導体類又はその塩類と一般式(II)で表されるアルカリ金属アルコレート類、及びルイス酸を不活性溶媒の存在下、反応させることにより、一般式(I)で表されるアニリン誘導体類又はその塩類を製造することができる。
【0021】
当該ルイス酸の使用量は一般式(III)で表されるフルオロアルキルアニリン誘導体類又はその塩類に対して0.05〜3モル当量の範囲で使用される。好ましくは、0.1〜1モル当量の範囲がよい。ここで「ルイス酸」とは、G.N.Lewisにより定義されているように、電子対を受け取り得る物質を意味する。本反応で使用するするルイス酸としては、ホウ酸、塩化鉄等のハロゲン化鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛等のハロゲン化亜鉛、水酸化亜鉛、トリイソプロポキシアルミニウム、又はトリフルオロメタンスルホン酸のランタノイド金属塩をあげることができる。
ここでランタノイド金属とは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)を挙げることができ、当該金属のルイス酸の例としては、当該金属のハロゲン化塩、当該金属のトリフレート(即ち、トリフルオロメタンスルホネート)[(OTf)3]が挙げられる。具体的には、塩化セリウム(III)、セリウム(III)トリフレート、塩化イッテルビウム(III)、イッテルビウム(III)トリフレート等が挙げられる。
【0022】
本反応で使用できる不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しないものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)等の鎖状又は環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、水等の極性溶媒を挙げることができ、これらの不活性溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
本反応における反応温度は通常約20℃から使用する溶媒の沸点の範囲で行えばよく、反応時間は反応規模、反応温度等により一定しないが、数分〜48時間の範囲で適宜選択すれば良い。
一般式(II)で表されるアルカリ金属アルコラート類は一般式(III)で表されるフルオロアルキルアニリン誘導体に対して1.0〜20モル当量の範囲で使用される。好ましくは、3.0〜10モル当量の範囲である。
また本反応は、例えば窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガスの雰囲気下で行うほうが良い。
反応終了後、目的物を含む反応系から常法により目的物を単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。
【0023】
本反応の原料化合物である一般式(III)で表されるフルオロアルキルアニリン誘導体類又はその塩類は、特開2004−189738号公報に記載されている方法に従って製造することができる。
【0024】
以下に本発明の製造方法を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
実施例1. 3−イソブチル−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリンの製造
3−イソブチル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ− 1−( トリフルオロメチル)エチル]アニリン0.317g(1mmol)、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.965g(5mmol)、及び表1記載の添加物を加え還流下に5時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、メタノール10mL及び5%酢酸水2mLを加え均一溶液とした。得られた溶液をHPLCにより分析し表題化合物の収率を求め、結果を表1に示した。
【0026】
分析条件
カラム:INERTSIL ODS−2、 φ4.6mm×150mm, 5μm, GL
Sciences Inc.
移動層:CHCN:HO = 60 : 40 (v/v)
カラム温度:40℃
流速:1.0 mL/min.
検出波長:240nm
分析時間:40min.
内部標準物質:フタル酸ジペンチルエステル
【0027】
比較データは、上記反応条件において添加物を加えずに行った。
【表1】

【0028】
実施例2. 3−n−プロピル−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリンの製造
3−n−プロピル−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ− 1−( トリフルオロメチル)エチル]アニリン4.97g(16.4mmol)、 28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液15.82g(82.0mmol)、 塩化亜鉛 2.24g(16.4mmol)を順次加え、還流下、3時間撹拌した。氷水で冷却した後、35%塩酸 5.13g(49.2mmol)、酢酸 4.92g(82.0mmol)、 水 33mLの混合液を加えて反応を停止した後、酢酸エチル30mLで2回抽出した。有機相をあわせて、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄したのち、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧留去することにより、目的物4.76gを得た。
収率:92%
物性:
1) 1H-NMR[CDCl/TMS,δ値(ppm)]
7.23(d,1H),6.68(d,1H),6.54(dd,1H), 3.78(br.s,2H),3.42(s,3H),2.86(m,2H),1.64(m,2H),1.01(t,3H)
2) 19F-NMR[CDCl/CFCl,δ値(ppm)] ‐70.1(s)
【0029】
実施例3. 2−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(2−メチルブチル)アニリンの製造
2−[1,2,2,2−テトラフルオロ− 1−( トリフルオロメチル)エチル]−5−(2−メチルブチル)アニリン1.99g(6mmol)、 28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液5.79g(30mmol)、 塩化亜鉛 0.82g(6mmol)を順次加え、還流下、2時間撹拌した。以下実施例2と同様な処理を行い、目的物2.02gを
得た。
収率:98%
物性:
1) 1H-NMR[CDCl/TMS,δ値(ppm)]
7.16(d,1H), 6.55(dd,1H), 6.46(d,1H), 4.47(br.s,2H), 3.55(s,3H),2.53(dd,1H), 2.25(dd,1H), 1.63(m,1H), 1.40(m,1H), 1.19(m,1H) 0.91(t,3H), 0.86(d,3H)
2) 19F−NMR[CDCl/CFCl,δ値(ppm)] ‐70.5(s)
【0030】
実施例4. 3−(2−メチル−1−プロペン−1−イル)−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリンの製造
3−(2−メチル−1−プロペン−1−イル)−4−[1,2,2,2−テトラフルオロ− 1−( トリフルオロメチル)エチル]アニリン5.15g(16.3mmol)、 28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液15.76g(81.7mmol)、 塩化亜鉛 2.22g(16.3mmol)を順次加え、還流下、4時間撹拌した。以下実施例2と同様な処理を行い、目的物5.14gを得た。
収率:96%
物性:
1) 1H-NMR[CDCl/TMS,δ値(ppm)]
7.28(d,1H),6.58(dd,1H), 6.48(s,1H), 6.47(s,1H), 3.80(br.s,2H),3.24(s,3H), 1.86(d,3H), 1.71(d,3H)
2) 19F−NMR[CDCl/CFCl,δ値(ppm)] ‐70.5(s)
【0031】
参考例1. N−{3−イソブチル−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−1,3,5−トリメチルピラゾール−4−カルボン酸アミドの製造
1,3,5−トリメチルピラゾール−4−カルボン酸クロリド(3.93g,22.8mmol)、3−イソブチル−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]アニリン(5.0g,15.2mmol)及びトリエチルアミン(3.07g,30.4mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、5時間加熱還流した。反応液を酢酸エチルで希釈後、水洗した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた粗結晶をエーテル洗浄することにより目的物5.62gを得た。
収率:80%
物性:融点 189〜190℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(III):
【化1】

{式中、R及びRは、同一又は異なっても良く、(C-C)アルキル基;(C-C)アルケニル基;(C-C)アルキニル基;(C-C)シクロアルキル基; ハロ(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)アルケニル基;ハロ(C-C)アルキニル基;ハロ(C-C)シクロアルキル基;(C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル(C-C)ハロアルキル基;(C1-C)アルキル(C-C)シクロアルキル基;(C1-C)アルキル(C-C)シクロハロアルキル基; アリール基; 同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基、ハロ(C-C)アルコキシ基、(C-C)アルケニルオキシ基、ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(C-C)アルキニルオキシ基、ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(C-C)シクロアルコキシ基、又はハロ(C-C)シクロアルコキシ基)から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール基; アリール(C-C)アルキル基; 同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基、ハロ(C-C)アルコキシ基、(C-C)アルケニルオキシ基、ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(C-C)アルキニルオキシ基、ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(C-C)シクロアルコキシ基又はハロ(C-C)シクロアルコキシ基から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール(C-C)アルキル基; ヘテロ環基;又は 同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基、ハロ(C-C)アルコキシ基、(C-C)シクロアルキル(C-C)アルコキシ基、(C-C)アルキルチオ基、ハロ(C-C)アルキルチオ基、(C-C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C-C)アルキルスルフィニル基、(C-C)アルキルスルホニル基、ハロ(C-C)アルキルスルホニル基、(C-C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基又は(C-C)アルコキシカルボニル基から選択される1〜5の置換基を環上に有するヘテロ環基を示す。
又、R1は、Rと一緒になってC-Cのシクロ環を形成することができ、該シクロ環は同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基又はハロ(C-C)アルコキシ基から選択される1以上の置換基を有していてもよい。
は、水素原子;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル基;(C-C)アルケニル基;(C-C)アルキニル基; ハロ(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)シクロアルキル基;ハロ(C-C)アルケニル基;ハロ(C-C)アルキニル基;(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;(C-C)アルキルチオ(C-C)アルキル基;(C-C)アルキルスルフィニル(C-C)アルキル基;(C-C)アルキルスルホニル(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;
ハロ(C-C)アルキルチオ(C-C)アルキル基; ハロ(C-C)アルキ
ルスルフィニル(C-C)アルキル基; ハロ(C-C)アルキルスルホニル(C-C)アルキル基;(C-C)アルコキシハロ(C-C)アルキル基; ハロ(C-C)アルコキシハロ(C-C)アルキル基:アリール基;同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基、ハロ(C-C)アルコキシ基、(C-C)アルケニルオキシ基、ハロ(C-C)アルケニルオキシ基、(C-C)アルキニルオキシ基、ハロ(C-C)アルキニルオキシ基、(C-C)シクロアルコキシ基又はハロ(C-C)シクロアルコキシ基から選択される1〜5の置換基を環上に有するアリール基;ヘテロ環基;又は
同一又は異なっても良く、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、(C-C)アルキル基、ハロ(C-C)アルキル基、(C-C)アルコキシ基、ハロ(C-C)アルコキシ基、(C-C)シクロアルキル(C-C)アルコキシ基、(C-C)アルキルチオ基、ハロ(C-C)アルキルチオ基、(C-C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C-C)アルキルスルフィニル基、(C-C)アルキルスルホニル基、ハロ(C-C)アルキルスルホニル基、(C-C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基又は(C-C)アルコキシカルボニル基から選択される1〜5の置換基を環上に有するヘテロ環基を示す。
は、水素原子;(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル基;(C-C)アルケニル基;(C-C)アルキニル基;ハロ(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)シクロアルキル基;ハロ(C-C)アルケニル基;又はハロ(C-C)アルキニル基を示す。}で示されるフルオロアルキルアニリン誘導体又はその塩類と、
一般式(II )
MXR (II)
{式中、Mはアルカリ金属原子を示し、Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、Rは(C-C)アルキル基;ハロ(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル基;又はハロ(C-C)シクロアルキル基を示す。}で示されるアルカリ金属アルコレート類とを、ルイス酸存在下、反応させることにより、
一般式(I)
【化2】

{式中、R、R、R、R、R、及びXは、前記に同じ。}で示されるアニリン誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項2】
及びRが同一又は異なっても良く、(C-C)アルキル基;(C-C)アルケニル基;(C-C)アルキニル基;(C-C)シクロアルキル基; ハロ(C-C)アルキル基; ハロ(C-C)アルケニル基; ハロ(C-C)アルキニル基;又は ハロ(C-C)シクロアルキル基を示し、Rが 水素原子;ハロゲン原子;(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル基;(C-C)アルケニル基;(C-C)アルキニル基; ハロ(C-C)アルキル基; ハロ(C-C)シクロアルキル基; ハロ(C-C)アルケニル基; ハロ(C-C)アルキニル基;(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル(C-C)アルキル基;又はハロ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル基を示し、Rが 水素原子;(C-C)アルキル基;(C-C)シクロアルキル基;(C-C)アルケニル基;又は(C-C)アルキニル基を示し、Rが(C-
)アルキル基;又はハロ(C-C)アルキル基を示し、Xが酸素原子又は硫黄原子を示す、請求項1記載のアニリン誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項3】
及びRが ハロ(C-C)アルキル基を示し、Rが(C-C)アルキル基を示し、Rが 水素原子を示し、Rが(C-C)アルキル基を示す、請求項1記載のアニリン誘導体又はその塩の製造方法。
【請求項4】
ルイス酸が、ホウ酸、ハロゲン化鉄、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化亜鉛、水酸化亜鉛、トリイソプロポキシアルミニウム、又はトリフルオロメタンスルホン酸のランタノイド金属塩である請求項1乃至3いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
ルイス酸が、ハロゲン化亜鉛、トリイソプロポキシアルミニウム、又はトリフルオロメタンスルホン酸のランタノイド金属塩である請求項1乃至3いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ルイス酸の使用量が、一般式(III)で示されるフルオロアルキルアニリン誘導体又はその塩類に対して、0.05モル当量から3モル当量である請求項1乃至3項いずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−67060(P2012−67060A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215573(P2010−215573)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】