説明

アポリポタンパク質フィンガープリント技術

患者から試料を得、特定の容積の内部標準物質を試料に加え、試料を表面増強、プロテインGコーティング、抗体結合チップに添加し、結合しなかった試料成分を除去し、質量分析によって試料を分析し、内部標準物質の値を使用してアポリポタンパク質の濃度を測定し、糖尿病、脳卒中、ストレス、アルツハイマー病、及び心臓血管疾患(例えば脂質障害、メタボリックシンドローム、肥満、アテローム性動脈硬化症など)を診断するためのツールとして使用するアポリポタンパク質、そのアイソタイプの濃度、アミノ酸の置換及び修飾を評価することによって、血漿、血清、及びリポタンパク質分画を含む生体試料中のアポリポタンパク質の濃度及び修飾を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書をもって以下を証する、我々、2840 Livesey Trail、Tucker、GA30084に居住し米国国民であるEMELITA DE GUZMAN BREYER、及び3649 Cherry Hill Place、Decatur、GA30034に居住し米国国民であるMARY K.ROBINSONは、「アポリポタンパク質フィンガープリント技術(APOLIPOPROTEIN FINGERPRINTING TECHNIQUE)」において幾つかの新規且つ有用な改良を発明しており、以下はその明細書である。
【0002】
特許協力条約に基づく本出願は、本発明者Emelita De Guzman Breyer及びMary K.Robinsonの利益のために、シリアル番号60/743,678を有する2006年3月23日に出願された「アポリポタンパク質フィンガープリント技術(APOLIPOPROTEIN FINGERPRINTING TECHNIQUE)」という表題の米国仮特許出願に対する優先権及び利益を主張するものである。
【0003】
本発明は、生体及び臨床試料中のアポリポタンパク質の組成、分析及び定量化の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト血漿、血清、及びリポタンパク質分画の試料中に存在するアポリポタンパク質のフィンガープリント、プロファイル作成、測定、及び/又は定量化のための方法、技術、及びプロトコルに関する。
【背景技術】
【0004】
アポリポタンパク質というリポタンパク質のタンパク質成分は疎水性脂質を溶解し、細胞の標的化及び輸送を容易にすることができる。肝臓及び腸内で合成されるこれらの成分は、リポタンパク質粒子の完全性を維持し、リポタンパク質に作用する酵素の補助因子として働き、及び循環から脂質を除去する受容体媒介相互作用を促進するのに不可欠である。
【0005】
数群のアポリポタンパク質:A(ApoA)、B(ApoB)、C(ApoC)及びE(ApoE)が存在する。3つの群A、B及びCのそれぞれが、2つ以上の異なるタンパク質からなる。これらは、ApoAに関してApoAl、ApoAll、ApoAIV、及びAV;ApoBに関してApoB100及びApoB48;及びApoCに関してApoCI、ApoCli、ApoCIII、及びApoCIVである。ApoCI、CIII、CIV及びApoEはそれぞれ、2つ以上のアイソタイプからなる。アポリポタンパク質は疾患及び健康において様々な役割を有する。
【0006】
アポリポタンパク質CIIIは、スレオニン−74におけるグリコシル化が異なる3つのアイソタイプとしてヒト中に存在する79アミノ酸のタンパク質である。CIII−0アイソタイプはシアリダーゼ酵素反応の最終産物であり、シアル酸、ガラクトース及びガラクトースアミン残基を有しておらず、全てのアイソタイプの14%を占める。CIII−0アイソタイプは脂肪分解刺激受容体との超低密度リポタンパク質(VLDL)の結合の阻害剤であり、それは血漿中の高トリグリセリドリポタンパク質のクリアランスの重要な経路である。CIII−0アイソタイプはVLDLに対して最も低い親和性を有する。CIII−1アイソタイプは1モルのシアル酸を有しており、全てのアイソタイプの51%を占める。CIII−2アイソタイプは肝臓中で合成され分泌されるCIIIの初期形態であり、2モルのシアル酸を有しており、全てのアイソタイプの35%を占める。CIII−2アイソタイプはVLDLに対して高い親和性を有しており、脂肪分解刺激受容体とのVLDLの結合の微弱な阻害剤である。
【0007】
CIIIアイソタイプを同定及び定量化するための現在の方法は、血漿からのリポタンパク質分画の単離、この分画の脱脂、及びアポリポタンパク質の水溶性分画からのCIIIの精製を含む。異なる精製したアイソタイプは、等電点ゲル電気泳動、質量分析、並びに蛍光及び吸光分光法によって検出することができる。現在の方法の幾つかの欠点は、それらが血漿からのCIIIの単離において時間がかかり、わずか60〜80%のタンパク質回収率しか有さないこと、及びELISA及び免疫比濁アッセイなどの、血漿中のCIIIに関する臨床診断のための現在の方法は、全CIIIを検出することのみ可能であることである。
【0008】
CIIIアイソタイプは幾つかの理由で臨床上重要である。アイソタイプのレベルは、糖尿病患者ではグルコース調節のレベルと共に変化する。例えば、高いHbA1Cは高いCIII−0レベルと直接相関している。高トリグリセリド血症の対象は、VLDLにおけるCIII−2アイソタイプとして高い割合のCIIIを有する。重度のカロリー制限を受けた女性では、正常な全CIIIレベルにもかかわらずCIII−2レベルは増大する。CIII−2の変動はVLDLトリグリセリドの変化と正に相関しているが、一方CIII−1の変動は逆相関している。CIIIアイソタイプの正確な定量化及び検出における既存の技術の制約によって、脂質代謝を理解する際に非常に重要である様々な代謝プロセスにおけるそれらの役割は、依然として議論の的である。
【0009】
文献又は従来技術は、様々なアポリポタンパク質と疾患の間の様々な特徴及び相関関係を報告している。例えば、ApoDはマルチリガンド、多機能性輸送体であり、アルツハイマー病では再生する末梢神経の特定部位に蓄積することが知られている。さらに、ApoJはこれまでに、精子成熟、脂質輸送、補体阻害、組織再構築、膜循環、細胞−細胞及び細胞−基層相互作用、フォールディング受容状態におけるストレスタンパク質の安定化、及びアポトーシスの促進又は阻害などの幾つかの多様な生理的プロセスと関係があることが報告されてきている。さらにApoHは、負に帯電した表面と強く結合し、血液凝固の固有経路の活性化及び活性化血小板のプロトロンビナーゼ活性を、両方の活性に必要な負に帯電した表面を覆うことによって阻害することが知られている。ApoFはLDLと結合し、コレステロールエステル輸送タンパク質(CETP)活性を阻害し、コレステロール輸送の重要な制御物質であるようである。ApoFはより低い程度でVLDL、ApoAl及びApoAllと結合する。ApoMは脂質輸送に関与することが提唱された。ApoCIVはCI及びCIIと同じ遺伝子座の14.5kDの大きさのアポリポタンパク質であり、文献中では如何なる機能も報告されていないようである。
【0010】
さらに、心臓血管疾患とコレステロールレベルの間の疫学的相関関係に基づいて、臨床医は長年コレステロールレベルの測定値を測定及び標準化して、心臓疾患のリスクを評価してきている。リポタンパク質粒子(LDL及びHDL)及びそれらと結合するコレステロールも、心臓血管のリスクの評価において使用されてきている。多くの試験研究が実施されて健康への影響とリポタンパク質粒子の大きさ及び密度が関連付けられているが、これらの試験からの結論は一貫していない。
【0011】
最近数年間で、アポリポタンパク質レベルは様々な状態と関係があるという相当な証拠が存在しており、近年National Heart、Lung、and Blood Institute(NHLBI)は、Centers for Disease Control and Preventionとの先日のミーティングにおいて、アポリポタンパク質Bの測定を近い将来標準化に含めることを勧めた。アポリポタンパク質は心臓血管疾患、糖尿病、脳卒中、肥満、アルツハイマー病、HIV及び他の疾患と関係している。脂質の輸送及び代謝におけるアポリポタンパク質の主な役割を考慮すると、これらの関係は驚くべきことではない。アポリポタンパク質の精製、検出、及び定量化の難しさによって、これらの化合物のレベルと健康への影響の間の調査を実施することは容易なことになっていない。
【0012】
従来技術の方法を使用すると、アポリポタンパク質の定量化及び測定は現在、分析又は連続超遠心分離、カラムクロマトグラフィー、電気泳動、又は沈降によるリポタンパク質粒子の分離のステップを必要とする。これらの技術は現在、通常の臨床用途には高価で時間を浪費しすぎである。他の有用な技術は高速液体クロマトグラフィーであり、これは迅速であるが一層より複雑で高価である。ApoA及びBの含有量の測定に使用される他の技術には、酵素イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、放射免疫拡散、ネフェロメトリー、比濁法及びエレクトロイムノアッセイがある。近年、表面増強レーザー脱離イオン化質量分析(SELDI又はSELDITOF−MS、TOFは飛行時間を意味し、MSは質量分析を意味する)は、血漿、血清、及びリポタンパク質分画中のアポリポタンパク質を測定するための幾つかの新たな選択肢を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、アポリポタンパク質を分離、同定、及び定量化するための正確で、迅速で、再現可能なアッセイに関する必要性が常に存在する。ヒト血漿、血清、及びリポタンパク質分画の試料中に存在するアポリポタンパク質のフィンガープリント、プロファイル作成、測定、及び/又は定量化のための改善された技術に関する必要性が存在する。本発明が対象とするのは、特にこれらの必要性である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡単に言うと、本発明の技術は、免疫学的技術と表面増強レーザー脱離/イオン化、SELDIを組合せて、非分画血漿又は血清中、又はリポタンパク質分画中の多数のアポリポタンパク質を直接検出及び測定する。内部標準物質の定量化のために、当該のタンパク質と抗体結合性が非常に類似しているが、明らかに異なる分子質量を有する既知のタンパク質の検出及び測定が必要とされるはずである。質量分析によって測定される未知のポリペプチドの質量は、既知の特性及び濃度の参照ポリペプチドの質量と比較することが可能である。
【0015】
全血漿又は血清のプロファイルは、正常で健康な個体の試料における差を検出するために、精巧なクラスタリング及びパターン認識技術を必要とする。SELDI技術における特異的抗体の使用は、一層単純な分析法をもたらす。SELDI技術の特徴の他の単純化は、保持物クロマトグラフィーである。当該のタンパク質は、そのタンパク質を特異的表面と結合させることによって保持し、一方他の検体は洗浄除去する。吸収及び脱離は、pH、塩濃度又は有機溶媒を調節することによって変えることができる。シナピン酸又は他の適切なマトリクスを、新たに調製した溶液中でテトラフルオロ酢酸と混合させ、それをいわゆるチップに添加し、乾燥後、マトリクスが組み込まれた検体分子はレーザーによって脱離され、固相からイオン化し、完全な分子イオンとして加速する。
【0016】
本発明の好ましい技術の一実施形態は、プロテインGを介して表面増強チップと結合した特異的抗体を使用して、血漿試料から直接アポリポタンパク質を選択的に吸収する。プロテインGは抗体のfc部分と結合し、それによって生体試料中の当該の特異的抗原と抗体の結合が増大する。表面増強チップの表面は特異的アポリポタンパク質を保持し、一方他の試料成分は洗浄除去する。EAM溶液マトリクスは、アポリポタンパク質のレーザー脱離イオン化を容易にする。イオン化したアポリポタンパク質は、それらの飛行時間に基づいてわずかに異なる時間で検出器に到達し、その時間差は質量に変換され得る。ピークの強度はそれぞれのタンパク質の量と関係がある。
【0017】
血漿中及びリポタンパク質分画中のアポリポタンパク質の組成、レベル、及びアイソタイプは、心臓血管疾患、及び脳卒中、メタボリックシンドローム、糖尿病、アルツハイマー病、プロテアーゼ阻害剤下のHIV及びHIV患者(高トリグリセリド血症)、及び様々な型のリポタンパク質血症などの他の慢性障害と関係がある幾つかの障害又は状態の決定要因である。したがって、本発明などのCIIIアイソタイプに関する臨床診断アッセイから利益を受け得る障害には、前述の障害がある。脂質低下薬を使用する臨床試験は本発明のアポリポタンパク質フィンガープリント技術から利益を受けるはずであり、本発明の技術は、血漿中及び異なるリポタンパク質分画中のアポリポタンパク質及びそれらのアイソタイプのレベル及び分布を見て、これらのパラメータが異なる障害及び治療でどのように変化するかを示すことができるはずである。本発明の技術は、新生児中のアポリポタンパク質の状態を見極め、加齢、栄養状態、環境暴露、及びライフスタイルの変化によって生じるアポリポタンパク質の修飾を評価するのにも理想的である。
【0018】
本発明の例示的特徴には、疾患特異的アポリポタンパク質バイオマーカー又はプロファイルを定義すること、及び1つ又は複数の疾患又は状態を診断又は分類するための迅速且つ有用である定量アッセイを開発することがある。本発明のこれらの特徴、及び他の特徴及び利点は、添付の図面と共に以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むと、当業者にはより明らかになるはずである。
【0019】
添付の図面を参照しながら好ましい実施形態及び代替実施形態の詳細な説明を読むことによって、本発明はよりよく理解されるはずであり、図面は本発明に関する代表的なアイソタイプ標準及びプロファイルの再現性を例証し、その中で同様の参照符号は、全体を通じて類似の構造を示し同様の要素を指す:
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
特許協力条約に基づく本出願は、本発明者Emelita De Guzman Breyer及びMary K.Robinsonの利益のために、シリアル番号60/743,678を有する2006年3月23日に出願された「アポリポタンパク質フィンガープリント技術(APOLIPOPROTEIN FINGERPRINTING TECHNIQUE)」という表題の米国仮特許出願に対する優先権及び利益を主張するものである。
【0021】
本発明は、アポリポタンパク質を含むプロファイルを使用して診断することができる心臓血管疾患(例えば、脂質障害、メタボリックシンドローム、及びアテローム性動脈硬化症)、アルツハイマー病、ストレス、脳卒中、糖尿病にアクセスする際に有用であり得る高感度且つ迅速な方法を提供する。このプロファイルは疾患状態と相関関係があり、したがって患者における疾患状態は、本発明を使用して高感度且つ迅速に決定することができる。したがって、本発明の能力は、疾患特異的アポリポタンパク質バイオマーカー又はプロファイルを定義すること、及び1つ又は複数の疾患又は状態を診断又は分類するための迅速且つ有用である定量アッセイを開発することである。
【0022】
より詳細には、例示的な一実施形態において、本発明は、対象における疾患状態を定性化する方法であって、
(1)対象由来の試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを測定するステップであって、バイオマーカーがApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoAll、ApoAIV、ApoAV、ApoB100、ApoB48、ApoE、ApoD、ApoH、ApoG、ApoF、ApoJ、ApoL、ApoM、それらのアイソタイプ、及びそれらの組合せからなる群から選択されるステップと、
(2)分光分析によって10個の試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを分析又は定量化又は測定するステップと、
(3)分析、定量化、又は測定を使用して少なくとも1つのバイオマーカーのプロファイルを作成するステップと、
(4)少なくとも1つのバイオマーカーと疾患を示す標準プロファイルを比較するステップと
を含み、試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在又は不在から疾患が示される方法を提供する。
【0023】
関連する例示的な実施形態において、本発明は、対象における疾患状態を定性化する方法であって、
(1)対象由来の試料中の複数のバイオマーカーを測定するステップであって、20個のバイオマーカーがApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoAll、ApoAIV、ApoAV、ApoB100、ApoB48、ApoE、ApoD、ApoH、ApoG、ApoF、ApoJ、ApoL、ApoM、それらのアイソタイプ、及びそれらの組合せからなる群から選択されるステップと、
(2)分光分析によって試料中のバイオマーカーを分析又は定量化又は測定するステップと、
(3)分析、定量化、又は測定を使用してバイオマーカーのプロファイルを作成するステップと、
(4)バイオマーカーと疾患を示す標準プロファイルを比較するステップと
を含み、試料中のバイオマーカーの存在又は不在から1つ又は複数の疾患が示される方法を提供する。
【0024】
他の例示的な実施形態では、測定するステップは、試料中の少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの量を定量化するステップを含む。さらなる例示的な実施形態では、本発明は、SELDI質量分析の使用を含む少なくとも1つのバイオマーカー又は複数のバイオマーカーの分離を含む。
【0025】
バイオインフォマティクスツールの有効な使用と組合せた高スループットのタンパク質プロファイル作成は、バイオマーカーをスクリーニングするための有用な手法をもたらす。本発明中で使用するシステムは、クロマトグラフィー用PROTEINCHIPO実験装置、即ち、試料をスクリーニングし、試料中の検体の存在を検出し、試料の型を同定しパターンを測定するための機器、及び分子アレイを作製しスクリーニングして、SELDIを使用して試料をアッセイするための装置を利用することが好ましい。アレイと結合したタンパク質は、飛行時間型質量分析計であるPROTEINCHIPOアレイリーダーで読みとる。
【0026】
さらに、本発明の方法は、修飾タンパク質(グリコシル化タンパク質など)及び分解タンパク質を検出するチップの能力を利用する。この方法は、翻訳前及び/又は翻訳後修飾を有するアポリポタンパク質を検出する能力を利用することもできる。翻訳前修飾形態には、対立遺伝子変異体、スライス変異体及びRNA編集形態がある。翻訳後修飾形態には、切断、タンパク質分解による切断(例えば、親タンパク質の断片)、グリコシル化、脂質化、システイニル化、グルタチオニル化、リン酸化、プレニル化、アシル化、アセチル化、メチル化、硫酸化、スルホン化、ヒドロキシル化、ミリストイル化、ファルネシル化、酸化及びユビキチン化から生じる形態がある。本発明の任意のバイオマーカーの修飾形態も、それ自体をバイオマーカーとして使用することができる。
【0027】
理解することができるように、プロファイルは血漿及びリポタンパク質分画中から抽出したアポリポタンパク質の組成、レベル、及びアイソタイプを含むことができ、それらは幾つかの疾患、障害又は状態の決定要因である。本明細書で使用するように、疾患という用語は障害及び状態を含み、具体的には心臓血管疾患、及び脳卒中、メタボリックシンドローム、糖尿病、アルツハイマー病、HIVや様々な型のリポタンパク質血症などの他の慢性障害に関して使用する。例えば、疾患に関して実施され脂質低下薬を使用する臨床試験は、本発明のアポリポタンパク質フィンガープリント技術から利益を受けるはずである。他の例では、本発明のフィンガープリント技術を使用することによって、血漿中及び異なるリポタンパク質分画中のアポリポタンパク質及びそれらのアイソタイプのレベル及び分布を見て、これらのパラメータが異なる疾患及びそれらの治療でどのように変化するかを示すことができるはずである。さらに他の例では、本発明の技術は、新生児中のアポリポタンパク質の状態を見極め、加齢、栄養状態、環境暴露、及びライフスタイルの変化によって生じるアポリポタンパク質の修飾を評価するのに理想的である可能性がある。
【0028】
さらに他の例では、本発明は疾患状態を定性化するためのキットを提供し、キットを使用して本発明のバイオマーカーを測定することができる。例えば、キットを使用して本明細書に記載する任意の1つ又は複数のバイオマーカーを測定することができ、これらのバイオマーカーは疾患状態の患者及び正常な対象の試料中に別個に存在する。他の例では、キットを使用して治療過程に対する患者の応答性をモニタリングすることもでき、医師は試験の結果に基づいて治療を修正することができる。さらに他の例では、キットを使用して、in vitro又はin vivoにおいて疾患状態の動物モデルの1つ又は複数のバイオマーカーの発現を調節する化合物を同定することができる。
【0029】
本発明の好ましい技術の一実施形態は、プロテインGを介して表面増強チップと結合した特異的抗体を使用して、血漿試料から直接アポリポタンパク質を選択的に吸収する。プロテインGは抗体のfc部分と結合し、それによって生体試料中の当該の特異的抗原と抗体の結合が増大する。表面増強チップの表面は特異的アポリポタンパク質を保持し、一方他の試料成分は洗浄除去する。EAM溶液マトリクスは、アポリポタンパク質のレーザー脱離イオン化を容易にする。イオン化したアポリポタンパク質は、それらの飛行時間に基づいてわずかに異なる時間で検出器に到達し、その時間差は質量に変換され得る。ピークの強度はそれぞれのタンパク質の量と関係がある。本明細書で使用するように、1つ及び複数の抗体という用語は、抗体の断片、免疫グロブリン、アフィボディ(affybodies)などを含む。
【0030】
バイオマーカーを測定する好ましい方法は、バイオチップアレイの使用を含む。本発明中で有用なバイオチップアレイは、タンパク質及び核酸アレイを含む。1つ又は複数のバイオマーカーをバイオチップアレイ上に捕捉し、レーザーイオン化にさらして、バイオマーカーの分子量を検出する。バイオマーカーの分析は、例えば全体のイオン電流に対して標準化した閾値強度に対する、1つ又は複数のバイオマーカーの分子量による。ピーク強度の範囲を縮小して検出するバイオマーカーの数を限定するために、対数変換を使用することが好ましい。
【0031】
本発明の好ましい方法では、バイオマーカーのプロファイルを作成しそのバイオマーカーを疾患状態と比較するステップは、ソフトウェア分類アルゴリズムによって実施する。(1)バイオチップアレイをレーザーイオン化にさらし、質量/電荷比用にシグナルの強度を検出すること、(2)コンピュータ可読形態にデータを変換すること、及び(3)疾患状態の患者中に存在し非疾患状態の対象の対照群には欠けているバイオマーカーを表すシグナルを検出するために、ユーザ入力パラメータに従いデータを分類するアルゴリズムを実行することによって、バイオチップアレイ上に固定化された対象試料に関するデータを作成することが好ましい。ステップ(1)はSELDI−TOF−MSを使用することが好ましく、これは一般的に言うと、(a)質量分析計と共に使用するのに適した結合吸着剤を含むプローブを提供すること、(b)対象試料を吸着剤と接触させること、(c)プローブから1つ又は複数のバイオマーカーを脱離及びイオン化すること、及び(d)質量分析計を用いてイオン化バイオマーカーを検出することを含む。
【0032】
一例では、CIPHERGEN PROTEINCHIP(登録商標)アレイプラットホーム質量分析計、及びタンパク質の特性及び構造を決定するために使用する化学合成装置から誘導したSELDI質量スペクトルデータセットの管理分類用のソフトウェアパッケージである、CIPHERGEN BIOMARKER PATTERNSTMソフトウェアを使用して、生成するスペクトルのパターンを検出する。分類モデルを使用するパターン認識法を使用してデータを分類する。一般にスペクトルは、分類アルゴリズムが検索する少なくとも2つの異なる群由来の試料を表すはずである。例えば群は、病的群対非病的群(例えば、癌対非癌)、薬剤応答群対薬剤非応答群、毒性応答群対毒性非応答群、疾患状態進行群対疾患状態非進行群、又は表現型条件存在群対表現型条件不在群であってよい。
【0033】
本発明の実施形態のステップ(1)において生じるスペクトルは、分類モデルを使用するパターン認識法を使用して分類することができる。幾つかの実施形態では、「知られている試料」などの試料を使用して生じるスペクトル(例えば、質量スペクトル又は飛行時間型スペクトル)から誘導したデータを次いで使用して、分類モデルを「トレーニングする」ことができる。「知られている試料」は、事前に分類されている試料である(例えば、癌又は非癌)。「知られている試料」などの試料を使用して生じるスペクトル(例えば、質量スペクトル又は飛行時間型スペクトル)から誘導したデータを次いで使用して、分類モデルを「トレーニングする」ことができる。「知られている試料」は、事前に分類されている試料である。スペクトルから誘導し分類モデルを形成するために使用されるデータは「トレーニングデータセット」と呼ぶことができる。ひとたびトレーニングすると、分類モデルは未知の試料を使用して生じるスペクトルから誘導したデータのパターンを認識することができる。したがって分類モデルを使用して、未知の試料を幾つかのクラスに分類することができる。これは例えば、個々の生体試料が特定の生物学的状態(例えば、疾患対非疾患)と関係があるかどうか予想する際に有用である可能性がある。
【0034】
分類モデルを形成するために使用されるトレーニングデータセットは、生データ又は事前処理データを含み得る。幾つかの実施形態では、生データは飛行時間型スペクトル又は質量スペクトルから直接得ることができ、次いで場合によっては任意の適切な方法で「事前処理」することができる。例えば、所定のシグナル対ノイズ比を超えるシグナルを、スペクトル中の全てのピークが選択されるのではなく、スペクトル中のピークの一部分が選択されるように選択することができる。他の例では、共通の値(例えば、特定の飛行時間値又は質量対電荷比の値)における所定数のピーク「クラスター」を使用してピークを選択することができる。例示的には、所与の質量対電荷比でのピークが質量スペクトル群中の質量スペクトルの50%未満である場合、したがってその質量対電荷比におけるピークは、トレーニングデータセットから除去することができる。これらのステップなどの事前処理ステップを使用して、分類モデルをトレーニングするために使用されるデータの量を減らすことができる。
【0035】
データ中に存在する目的パラメータに基づいてデータのボディを幾つかのクラスに分けることを試みる任意の適切な統計分類(又は「学習」)法を使用して、分類モデルを形成することができる。分類法は監視型又は非監視型のいずれかであってよい。監視型及び非監視型分類法の例は、参照としてその全容が本明細書に組み込まれる、Jain、「統計パターン認識:総説、パターン分析及び人工知能に対するIEEEトランザクション(Statistical Pattern Recognition:A Review、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence)」、Vol.22、No.1、January 2000中に記載されている。
【0036】
監視型分類では、知られているカテゴリーの例を含むトレーニングデータを、知られているクラスの各々を定義するもう一組の関係を学習する学習メカニズムに提示する。次いで新しいデータを学習メカニズムに適用することができ、これによって学習した関係を使用して新しいデータを次いで分類する。監視型分類法の例には、線形回帰法(例えば、多重線形回帰(MLR)、部分最小二乗(PLS)回帰及び主成分回帰(PCR))、二分決定木(例えば、CART−分類及び回帰ツリーなどの再帰分割法)、誤差逆伝搬ネットワークなどの人工ニューラルネットワーク、判別分析(例えば、ベイズ識別器又はフィッシャー分析)、ロジスティック識別器、及びサポートベクター識別器(サポートベクターマシン)がある。
【0037】
基質、例えばバイオチップ又は抗体上で捕捉した後、任意の適切な方法を使用して、試料中の1つ又は複数のバイオマーカーを測定することができる。例えば、気相イオン分光分析法、光学法、電気化学法、原子間力顕微鏡法及び高周波法を例えば含む様々な検出法によって、バイオマーカーを検出及び/又は測定することができる。これらの方法を使用して、試料中の1つ又は複数のバイオマーカーを検出することができる。
【0038】
本発明の好ましい方法では、多数のバイオマーカーを測定する。多数のバイオマーカーの使用は試験の予想値を増大させ、診断、毒物学、患者の層別化及び患者のモニタリングにおいて多大な有用性を与える。「パターン認識」と呼ばれる方法は多数のバイオマーカーによって形成されるパターンを検出し、予測医療の臨床プロテオミクスの感度及び特異性を大幅に改善する。例えばSELDIを使用して得た臨床試料からのデータの微妙な変化は、タンパク質発現の特定のパターンによって、特定の疾患の存在又は不在などの表現型、疾患進行の個々の段階、或いは薬剤治療に対する正又は負の応答性を予測することができることを示す。
【0039】
質量分析におけるデータ生成は、前に記載したようにイオン検出器によるイオンの検出で始まる。検出器に衝突するイオンは、アナログシグナルをデジタル方式で捕捉する高速時間−アレイ記録デバイスによってデジタル化される電位を生成する。CIPHERGEN PROTEINCHIP(登録商標)アレイシステムは、アナログデジタルコンバータ(ADC)を利用してこれを実施する。ADCは検出器の出力を規則的間隔の時間間隔で時間依存性値域に統合する。時間間隔は典型的には1〜4ナノ秒の長さである。さらに、最終的に分析する飛行時間型スペクトルは、試料に対する電離エネルギーの単一パルスからのシグナルを典型的には表さず、むしろ幾つかのパルスからのシグナルの合計を表す。これはノイズを低下させダイナミックレンジを増大させる。次いでこの飛行時間型データにデータ処理を施す。CIPHERGEN PROTEINCHIPOアレイソフトウェアにおいて、データ処理はTOFからM/Zの変換、ベースラインサブトラクション、及び高周波ノイズフィルタリングを典型的には含む。このステップでは、シグナルは時間領域から質量領域に変換される。
【0040】
ベースラインサブトラクションは、スペクトルを乱す人工的、再現的な装置におけるオフセットを排除することによってデータ定量化を改善する。ベースラインサブトラクションは、ピーク幅などのパラメータを組み込んだアルゴリズムを使用してスペクトルのベースラインを計算すること、次いで質量スペクトルからベースラインを差し引くことを含む。1つ又は複数のスペクトルからのピークのデータは、例えばそれぞれの列が個々の質量スペクトルを表し、それぞれの行が質量によって定義されるスペクトル中のピークを表し、それぞれのセルがその個々のスペクトル中のピークの強度を含むスプレッドシートを作成することによって他の分析を施すことができる。様々な統計又はパターン認識手法をデータに適用することができる。前に開示したように、CIPHERGEN BIOMARKER PATTERNSTMソフトウェアを使用して、生成するスペクトルのパターンを検出する。分類モデルを使用するパターン認識法を使用してデータを分類する。一般にスペクトルは、分類アルゴリズムが検索する少なくとも2つの異なる群からの試料を表すはずである。
【0041】
試料は様々な疾患状態を確定することを望む患者又は他の対象から収集することができる。対象は、例えばその病歴から、特定の型の疾患に関する高いリスクがあるか、或いはその可能性があると考えられる特定のヒトであってよい。他の対象は、特定の疾患を有しており、その治療の有効性をモニタリングすることを望む人間であってよい。さらに、通常の実験の一部として対象から試料を得ることが可能である。
【0042】
任意のバイオマーカーは個々に、疾患状態の決定を支援する際に有用である。最初に、本明細書に記載する方法、例えばSELDIバイオチップ上での捕捉、次に質量分析による検出を使用して、対象試料において選択したバイオマーカーを測定する。次いで、測定値を診断量又は対照と比較し、これによって疾患状態と非疾患状態を区別する。診断量は、非疾患状態と比較して疾患状態において、個々のバイオマーカーが上方制御又は下方制御されていることを表すはずである。当技術分野でよく理解されているように、使用する個々の診断量を調整して、診断医の好みに応じて診断アッセイの感度又は特異性を高めることができる。したがって、診断量と比較した試験量は疾患状態を示す。
【実施例】
【0043】
実施例の方法
以下に開示する実施例の方法は、本発明の好ましい実施形態を使用するための代表的な方法である。これらの方法では、血清試料を患者から収集し、次いでアニオン交換樹脂を使用して分画化することができる。試料中のバイオマーカーは、IMAC銅PROTEINCHIP(登録商標)アレイを使用して捕捉する。次いでSELDIを使用してバイオマーカーを検出する。次いで結果を、本来バイオマーカーを測定するための学習アルゴリズム及び分類アルゴリズムにおいて使用した同じパラメータを使用して設計したアルゴリズムを含む、コンピュータシステムに入力する。アルゴリズムによって、各バイオマーカーに関して得たデータに基づく診断値が生じる。CIIIアイソタイプと心臓血管疾患の間の相関関係に関する実験データに関する図1〜9を参照。前に論じたように、様々なアポリポタンパク質と疾患の間の例示的な相関関係を文献中で確認した。
【0044】
バイオマーカーを使用して開発される分類アルゴリズムを用いたSELDI試験から生成したデータを調べることによって、診断値を決定することができる。分類アルゴリズムは、バイオマーカーを検出するために使用する試験プロトコルの項目に依存する。これらの項目は、例えば試料調製、チップ型及び質量分析パラメータを含む。試験パラメータが変わる場合、アルゴリズムは変わるはずである。同様に、アルゴリズムが変わる場合、試験プロトコルが変わる可能性がある。
【0045】
本発明では、精製アポリポタンパク質、正常対象からの血漿試料、及び糖尿病対象からの血漿試料を、PG−20タンパク質チップ表面を使用して分析した。本発明の方法によって分析した特異的アポリポタンパク質は、様々なレベルで血漿、血清、及びリポタンパク質分画中に存在する。それぞれのアポリポタンパク質の存在は、そのそれぞれのアポリポタンパク質に特異的な抗体を使用して決定する。以下に開示するプロトコルは、現在のMS技術によって分析することができる分子量範囲に限られる。最初に、B100(500kD)及びB48(約250kD)を、MS分析の前に抗体表面と結合させ、切り離し、次いで化学的或いは酵素によって断片化することによって、又は以下のプロトコルを使用してPG20チップとの結合中に直接消化することによって最初に単離する。
【0046】
1.試料調製
SELDI−TOF−MS手順の前に、血漿試料を緩衝液5で希釈し、抗体は以下のようにPROTEINCHIP(登録商標)と結合させた:
血漿試料の調製:
(1)U9バッファー(9Mの尿素、50mMのHEPES、0.5%のCHAPS、pH7)を調製する、
(2)U9バッファーで血漿試料を希釈し(1:2)、30分間冷気中で攪拌する。
抗体とPROTEINCHIP(登録商標)アレイの結合
(1)抗体を0.2mg/mlに希釈し、アレイ上のスポットに2μl加える、
(2)アレイを湿度チャンバーに移し、室温で1時間インキュベートする、
(3)スポットの表面に触れずに抗体を吸引する、
(4)8mLの洗浄バッファーを用いて10分間、15mLの円錐管中でチップを洗浄する、
(5)中身を空にして8mLのリン酸緩衝生理食塩水で5分間洗浄し、繰り返す、
(6)チップの表面から過剰なPBSを除く。
【0047】
2.SELDI−TOF−MS手順
(1)2μlの血漿試料を各スポットに加える、
(2)アレイを湿度チャンバーに移し、室温で1時間インキュベートする、
(3)8mLの洗浄バッファーを用いて10分間、15mLの円錐管中でチップを洗浄する、
(4)中身を空にして8mLのリン酸緩衝生理食塩水で5分間洗浄し、繰り返す、
(5)中身を空にして8mLの1mMのHEPESで1分間洗浄し、繰り返す、
(6)管からチップを除去し、液体を払い落とし、及び10分間空気乾燥させる、
(7)1バイアル(10mg)のシナピン酸粉末に100μlの99.8%アセトニトリル及び100μlの1.0%トリフルオロ酢酸を加えることによってEAM溶液を調製し、5分間攪拌して粉末を溶解する、
(8)5μlのEAM溶液を各スポットに加え、5分間空気乾燥させ、繰り返し、10分間空気乾燥させる。
【0048】
試料及び試薬のより大きな容量及び自動添加を可能にするバイオプロセッサーと共に使用するために、手順を修正することができる。陽性対照と陰性対照の両方を、通常実験中に含める。この目的のためにTNF−a抗体及び抗原をキット中に含める。
【0049】
3.フィンガープリントの作成
血漿試料及び精製アポリポタンパク質に関するアポリポタンパク質フィンガープリントを作成するための手順を、以下に記載する:
(1)PROTEINCHIP(登録商標)アレイリーダー及びソフトウェア(Ciphergen Biosystems、Inc.)を使用して、プロファイルを作成する。
(2)スポットプロトコルを作成しそれらを使用してチップをマッピングする。
(3)データ収集パラメータはそれぞれの抗原に関して調節しなければならず、それらは分子量に基づく。Ciphergen Biosystems、Inc.によって供給されるPROTEINCHIP(登録商標)アレイ抗体捕捉キット中には使用説明書が含まれている。
(4)データを分析し、アポリポタンパク質フィンガープリントは、例えばデータを自身と内的に比較すること、及びデータを例えば対照の対象などの基準と外的に比較することによって作成した。
【0050】
或いは、抗体とビーズを結合させ、ビーズ上のアポリポタンパク質を捕捉し、ビーズから精製タンパク質を溶出させ、次いでマトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)及びエレクトロスプレー法を含めた任意の型の質量分析法により検出することによって、本発明を実施することができる。抗体とビーズを結合させる方法は当技術分野でよく知られており、このような方法は本発明に適している。MALDIはレーザーベースのソフトイオン化法であり、その方法では試料を化学マトリクス中に組み込み、これによってタンパク質、オリゴヌクレオチド、合成ポリマー、及び大きな無機化合物などの大きな、不揮発性且つ熱不安定性の化合物からの完全な気相イオンの生成を非常に容易にする。レーザー光エネルギーを吸収し、わずかな割合の標的基質を気化させることによって、マトリクスはこの技術において重要な役割を果たす。
【0051】
前述の好ましい実施形態の詳細な説明及び添付の図面は、単なる例示及び説明的な目的で提示するに過ぎず、本発明の範囲及び趣旨を包括又は制限することを目的とするものではない。本発明の原理及びその実際の適用例を最もよく説明するために、実施形態を選択し記載した。当業者は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに、本明細書に開示した本発明に対して多くの変形形態を作り出すことができることを理解しているはずである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】異なるCIIIアイソタイプ標準の報告された質量スペクトル及び分子量を示す図である。
【図2】CIPHERGEN Q10チップのプールしたアポリポタンパク質CIII(CIII−0、CIII−1、及びCIII−2アイソタイプ)のプロファイルを示す図である。
【図3】CIPHERGEN CM10チップのプールしたアポリポタンパク質CIII(CIII−0、CIII−1、及びCIII−2アイソタイプ)のプロファイルを示す図である。
【図4】CIPHERGEN抗CIIIPS20チップのCIIIアイソタイプのプロファイルの再現性を示す図である。
【図5】CIPHERGEN抗CIIIPS20チップのCIIIアイソタイプのプロファイルの再現性を示す図である。
【図6】血漿のCIIIアイソタイプのプロファイルの再現性を示す図である。
【図7】異なる血漿希釈での血漿のCIIIアイソタイプのプロファイルを示す図である。
【図8】異なる血漿希釈での血漿のCIIIアイソタイプのプロファイルを示す図である。
【図9】CIPHERGEN抗CIIIPS20チップの正常対象と糖尿病対象のCIIIアイソタイプのプロファイルの比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーのプロファイルを得る方法であって、
a)試料を提供するステップと、
b)試料を表面に添加し結合しなかった試料成分を除去することによって、少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーを測定するステップと、
c)分光分析によって試料を分析するステップと、
d)分析を使用してプロファイルを作成するステップとを含み、それによって少なくとも1つの疾患を診断することができる上記方法。
【請求項2】
少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーが、ApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoAll、ApoAIV、ApoAV、ApoB48、ApoB100、ApoD、ApoE、ApoF、ApoG、ApoH、ApoJ、ApoL、ApoM、それらのアイソタイプ、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料を表面増強、抗体捕捉タンパク質コーティング、抗体結合表面に添加し結合させ、結合しなかった試料成分を洗浄除去する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーを、レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析又は他の適切な質量分析法によって検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
試料がヒト血漿、血清、及びヒトリポタンパク質分画からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの疾患が糖尿病、脳卒中、ストレス、アルツハイマー病、心臓血管疾患、脂質障害、メタボリックシンドローム、肥満、及びアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
生体試料中の特異的アポリポタンパク質の濃度及び修飾を測定する方法であって、試料が患者から得られ、試料が血漿、血清、及びリポタンパク質分画を含み、
a)特定の容積の内部標準物質を試料に加えるステップと、
b)試料を表面増強、プロテインGコーティング、抗体結合チップに添加し、結合しなかった試料成分を除去するステップと、
c)質量分析によって試料を分析するステップと、
d)内部標準物質の値を使用してアポリポタンパク質の濃度を測定するステップと
を含み、この方法の適用が、糖尿病、脳卒中、ストレス、アルツハイマー病、心臓血管疾患、脂質障害、メタボリックシンドローム、肥満、及びアテローム性動脈硬化症を検出するための診断ツールとして使用するアポリポタンパク質のアイソタイプの濃度を評価するためである上記方法。
【請求項8】
特異的アポリポタンパク質が特異的抗体と結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
特異的抗体が抗体捕捉タンパク質コーティング表面上に固定化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料を抗体捕捉タンパク質コーティング表面に添加し結合させ、結合しなかった試料成分を洗浄除去する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アポリポタンパク質をレーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析又は他の適切な質量分析法によって検出する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
アポリポタンパク質がApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoAll、ApoAIV、ApoAV、ApoB48、ApoB100、ApoD、ApoE、ApoF、ApoG、ApoH、ApoJ、ApoL及びApoMからなる群から選択され、特異的抗体がApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoCll、ApoAIV、ApoAV、ApoB48、ApoB100、ApoD、ApoE、ApoF、ApoG、ApoH、ApoJ、ApoL及びApoMに対する抗体からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
試料がヒト血漿、血清、及びヒトリポタンパク質分画から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
試料中の特異的アポリポタンパク質に関する濃度値が、選択された精製タンパク質を修飾し高分解能質量分析を使用して基準値を設定することによって開発した内部標準物質に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
修飾が糖化、シアリル化、断片化、及びアミノ酸溶解からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
薬理遺伝学の分野において危険因子、疾患状態、薬剤治療及び応答を評価する際に使用する方法。
【請求項17】
対象由来の生体試料中の少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーのプロファイルを得る方法であって、
a)対象由来の生体試料を提供するステップと、
b)少なくとも1つのアポリポタンパク質バイオマーカーを特異的に捕捉する捕捉試薬の表面に生体試料を添加し、少なくとも1つのアポリポタンパク質バイオマーカーを捕捉試薬と結合させ、結合しなかった試料成分を除去するステップと、
c)レーザー脱離/イオン化質量分析によって捕捉した少なくとも1つのアポリポタンパク質を分析するステップと、
d)分析を使用してプロファイルを作成するステップと
を含み、少なくとも1つの選択されたアポリポタンパク質バイオマーカーが、ApoCI、ApoCII、ApoCIII、ApoCIV、ApoAl、ApoAll、ApoAlV、ApoAV、ApoB48、ApoB100、ApoD、ApoE、ApoF、ApoG、ApoH、ApoJ、ApoL、ApoM、それらのアイソタイプ、及びそれらの組合せからなる群から選択される上記方法。
【請求項18】
a)プロファイルを使用して対象における疾患を診断するステップ
をさらに含む、請求項17に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−531712(P2009−531712A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502905(P2009−502905)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/007359
【国際公開番号】WO2007/112055
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(508287286)
【Fターム(参考)】