説明

アルミニウムフィン材用の下地処理剤

【課題】 親水性に優れ、かつ加工性、密着性、耐湿性及び耐食性が良好な下地処理剤を提供すること。
【解決手段】
数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びアクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、防錆剤(C)を0.1〜50質量部含有するアルミニウムフィン材用の下地処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性に優れ、かつ加工性、密着性、耐湿性及び耐食性が良好な無公害型のアルミニウムフィン材の製造に好適な下地処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から空調機の熱交換器用のフィン材としては、軽量性、加工性、熱伝導性等に優れるアルミニウム系基材が一般に使用されている。しかし、空調機の熱交換器には、冷房時に発生する凝縮水が水滴となってアルミニウムフィン材の間に水のブリッジを形成し、空気の通風路を狭める為に通風抵抗が大きくなって、電力の損失、騒音の発生、水滴の飛散などの不具合が発生することがあった。
【0003】
このような不具合を防止する方策として、例えば、アルミニウムフィン材(以下、「フィン材」という)の表面に親水化処理を施して水滴や水滴によるブリッジの形成を防止することが行われている。
【0004】
しかし、従来からの親水化処理剤による皮膜を形成したフィン材は、皮膜が親水性を有することもあって、強い腐食環境下(例えば、海岸地域)に置かれていると数ヶ月で腐食することがあった。
【0005】
上記問題を解決する方法として、耐食性、コストなどの面からアルミニウム系基材の表面に、クロメート処理などの下地処理を施す方法が多く行われている。しかしながらクロメート処理は、クロムイオンが有害金属イオンであるため環境面からその使用には問題がある。
【0006】
これに対し、特許文献1には、クロムイオンを使用しない下地処理剤や処理方法、例えば、チタン塩(ジルコニウム塩)、過酸化水素及び(縮合)リン酸(誘導体)を含有する酸性溶液で処理するアルミニウムにおける表面処理法が開示されている。
【0007】
他に、特許文献2には、アルミニウムをチタンイオン(ジルコニウムイオン、鉄イオン)、錯化剤を含有するアルカリ性水溶液で処理し、水洗後、リン酸等の酸性水溶液で処理するアルミニウムにおける表面処理法が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、リン酸イオン、チタン化合物、フッ化物及び促進剤を含むアルミニウムにおける表面処理組成物が開示されている。
他に、特許文献4には、(縮合)リン酸(塩)、チタニウム塩(ジルコニム塩)、フッ化物、(次)亜リン酸(塩)を含有するアルミニウムにおける表面処理組成物が開示されている。
【0009】
上記の特許文献1〜4のような表面処理組成物は、クロムフリー型の下地処理剤であるが、親水化処理の下地処理としては、加工性、密着性及び耐食性のいずれかが劣ることがあった。
【0010】
そこで本出願人は、特許文献5において、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に、下地処理剤の皮膜が形成されており、該下地処理皮膜上に親水化処理皮膜が形成されてなるもので、該下地処理剤が、(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液、(B)リン酸系化合物、金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、及び(C)PH7以下で安定な水性有機高分子化合物を含有するものであることを特徴とする親水化処理された熱交換器アルミニウムフィン材を提案した。しかし、上記の該下地処理剤は、フィン材の親水性を確保できるものの、耐湿性や耐食性が不十分であり、向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭54−24232号公報
【特許文献2】特開昭54−160527号公報
【特許文献3】特開平9−20984号公報
【特許文献4】特開平9−143752号公報
【特許文献5】特開2002−275650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明が解決しようとする課題は、親水性に優れ、かつ加工性、密着性、耐湿性及び耐食性が良好なアルミニウムフィン材用の下地処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者等は、数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びアクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、防錆剤(C)を0.1〜50質量部含有するアルミニウムフィン材用の下地処理剤が、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、
1.数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びアクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、防錆剤(C)を0.1〜50質量部含有するアルミニウムフィン材用の下地処理剤、
2.防錆剤(C)が、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(c1)、及び有機リン酸化合物(c2)を含有し、さらにメタバナジン酸塩(c3)とジルコニウム弗化塩(c4)及び炭酸ジルコニウム塩(c5)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤、
3.防錆剤(C)が、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて、有機リン酸化合物(c2)1〜400質量部、メタバナジン酸塩(c3)1〜400質量部、ジルコニウム弗化塩(c4)1〜400質量部及び炭酸ジルコニウム塩(c5)1〜400質量部を含有することを特徴とする1項又は2項に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤、
4.アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のポリマー成分(D)を1〜40質量部含有する1項〜3項のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤、
5.アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に、1項〜4項のいずれか1項に記載の下地処理剤を塗装して、乾燥して乾燥膜厚で0.05〜5g/mの下地処理皮膜を形成し、該下地皮膜上に、親水化処理組成物を塗装して乾燥膜厚で0.3〜5g/mの親水化処理皮膜が形成されてなるアルミニウムフィン材の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の下地処理剤は、クロムを含有しないことから環境面の問題がなく、しかもアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に、該下地処理剤を塗装し、該下層皮膜の表面に、親水性の上層皮膜を形成して得られた複層の皮膜は、親水性に優れ、かつアルミニウム基材との密着性、加工性、耐湿性及び耐食性に優れたアルミニウムフィン材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の下地処理剤を用いたアルミニウムフィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に、下地処理剤を塗装して下地処理皮膜を形成し、該下地皮膜上に、親水化処理組成物を塗装して親水化処理皮膜を形成されてなるものである。
本発明の下地処理剤は、数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、防錆剤(C)を含有することを特徴とする。以下、詳細に述べる。
【0017】
アクリル変性エポキシ樹脂(A):
本発明の下地処理剤は、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の点から、特に耐湿性や耐食性の向上を目的として、以下に述べる特定のアクリル変性エポキシ樹脂(A)を使用する。
【0018】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造に用いられるビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)は、水性媒体中での分散安定性、得られる塗膜の加工性や衛生性などの観点から、数平均分子量が4,000〜30,000、好ましくは5,000〜30,000の範囲内であり、かつエポキシ当量が2,000〜10,000、好ましくは2,500〜10,000の範囲内のものが好適に使用される。
【0019】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)は、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られる樹脂である。
上記ポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)等を挙げることができる。 ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)の中でも、耐食性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重合法によって得ることができる。また、エポキシ当量が比較的低いビスフェノールA型エポキシ樹脂に、ビスフェノールAを付加させる二段重合法によっても得ることができる。
上記エポキシ当量が比較的低いビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ当量約160〜約2,000のものが一般的であり、その市販品としては例えば、ジャパンエポキシレジン社製の、jER828EL、jER1001、jER1004、jER1007;旭化成エポキシ社製の、アラルダイトAER250、アラルダイトAER260、アラルダイトAER6071、アラルダイトAER6004、アラルダイトAER6007;三井化学社製のエポミックR140、エポミックR301、エポミックR304、エポミックR307、旭電化社製のアデカレジンEP−4100、アデカレジンEP−5100等を挙げることができる。
【0021】
ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)として使用するビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER1010、jER1256B40、jER1256等を挙げることができる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を二塩基酸で変性したビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂であってもよい。この場合、二塩基酸と反応させるビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、数平均分子量が2,000〜8,000であり、かつエポキシ当量が1,000〜4,000の範囲内にあるものを好適に使用することができる。また、上記二塩基酸としては、一般式HOOC−(CHn −COOH(式中、nは1〜12の整数を示す)で表される化合物、具体的にはコハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等やヘキサヒドロフタル酸等が使用でき、特にアジピン酸が好適に使用できる。
【0022】
上記ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂は、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂と二塩基酸との混合物を、例えばトリ−n−ブチルアミンなどのエステル化触媒や有機溶剤の存在下で、反応温度120〜180℃で、約1〜4時間反応を行うことによって得ることができる。上記ビスフェノールA型の変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の分子中に導入される二塩基酸分子鎖が可塑成分として働き、塗膜の加工性の向上に有利である。
【0023】
本発明において、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)と反応させてアクリル変性エポキシ樹脂(A)を製造するのに用いられるカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)(以下、「アクリル樹脂(a2)」と略称することがある)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの重合性不飽和カルボン酸を必須の単量体成分とするアクリル共重合体である。
【0024】
このアクリル共重合体は重量均分子量が5,000〜100,000、好ましくは10,000〜100,000で樹脂酸価150〜450 mgKOH/g、200〜450mgKOH/gの範囲内にあることが、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性の観点から好ましい。
【0025】
上記アクリル樹脂(a2)の重合に用いられる、重合性不飽和カルボン酸以外のその他の単量体成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t− ブチル(メタ)アクリレート、2− エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素原子数1〜22のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート及びヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルに対して、ε−カプロラクトン1〜5モルを開環付加反応させてなる、水酸基を有するカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−sec−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、エチレン、ブタジエンなど挙げることができる。
【0026】
上記アクリル樹脂(a2)は、上記重合性不飽和カルボン酸と上記その他の単量体成分との単量体混合物を、例えば有機溶剤中にて、ラジカル重合開始剤又は連鎖移動剤の存在下にて、80〜150℃で1〜10時間加熱し共重合させることによって得ることができる。
【0027】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等が用いられ、有機過酸化物系では、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系では、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類などが挙げられる。
【0028】
本発明においてアクリル変性エポキシ樹脂(A)は、前記エポキシ樹脂(a1)と上記カルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなる。
【0029】
前記エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)との反応は、有機溶剤中にてエステル化触媒となる、例えばトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミンなどの第3級のアミン化合物の存在下、80〜120℃で0.5〜8時間加熱してエステル化させることによって、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0030】
該アミン化合物の使用量は、エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)の合計固形分を基準にして1〜10質量%の範囲が、得られた皮膜の耐湿性や耐食性の面から好適である。
【0031】
上記反応におけるエポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)との配合割合は、塗装作業性や塗膜性能に応じて適宜選択すればよいが、樹脂(a1)/樹脂(a2)の固形分質量比で、10/90〜95/5、さらには60/40〜90/10の範囲内であることがよい。
【0032】
上記エステル化反応によって得られるアクリル変性エポキシ樹脂(A)は、酸価20〜120mgKOH/g、好ましくは30〜100mgKOH/g、重量平均分子量が1,000〜40,000、好ましくは2,000〜15,000が、水性媒体中での安定性、得られる塗膜の加工性、密着性、耐湿性及び耐食性の点から好ましい。
【0033】
本明細書における重量平均分子量は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0034】
上記アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、水性媒体中に中和、分散されるが、中和に用いられる中和剤としては、アミン類やアンモニアが好適に使用される。上記アミン類の代表例としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。中でも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好適である。アクリル変性エポキシ樹脂(A)の中和は、樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.2〜2.0当量中和の範囲が好ましい。
【0035】
本発明では、上記エステル化反応時及び中和によって形成される第4級アンモニウム塩基量が3.0×10−4mol/g樹脂以下、好ましくは2.5×10−4mol/g樹脂以下であることが、耐湿性や耐食性の為に好ましい。
【0036】
ここで、第4級アンモニウム塩基量の測定は、反応開始後の試料を溶媒に溶解した試料溶液に、官能基としてのスルホン酸基およびヒドロキシル基を有する指示薬を溶媒に溶解してなる指示薬溶液を滴下して滴定反応を行い、該指示薬と第4級アンモニウム塩化エポキシ化合物とが反応してスルホン酸基およびヒドロキシル基の両者が同時にイオン化された指示薬およびカルボン酸を形成する滴定反応の第1段階、及び該指示薬と該イオン化指示薬とが反応してスルホン酸基のみがイオン化された指示薬を形成する滴定反応の第2段階について滴定量と電導度との関係をプロットし、第1段階におけるプロットを結ぶ直線と第2段階におけるプロットを結ぶ直線との交点における滴定量から、第1段階における滴定量t1 を求め、式(1)により、試料固形分換算1g中の第4級アンモニウム塩量(mol/g)を求める。
【0037】
第4級アンモニウム塩量(mol/g)=t(ml)×2×指示薬濃度(mol /1)×(1/1,000)×{100/(試料(g)×固形分(%))・・式(1)
なおアクリル変性エポキシ樹脂(A)を分散する水性媒体は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、アクリル変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性を損わない限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0038】
上記有機溶媒としては、アルコール系溶剤、セロソルブ系溶剤およびカルビトール系溶剤などが好ましい。この有機溶剤の具体例としては、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのカルビトール系溶剤等を挙げることができる。
【0039】
また有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤もアクリル変性エポキシ樹脂(A)の水性媒体中での安定性を損わない範囲で使用可能であり、この有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系を挙げることができる。本発明のアルミニウムフィン材用の下地処理剤における有機溶剤の量は、環境保護の観点などから水性媒体中に50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲であることが望ましい。
【0040】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)を水性媒体中に中和、分散するには、常法によれば良く、例えば中和剤を含有する水性媒体中に撹拌下にアクリル変性エポキシ樹脂(A)を徐々に添加する方法、アクリル変性エポキシ樹脂(A)を中和剤によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法などが挙げられる。
【0041】
アミノ樹脂(B):
本発明の下地処理剤の架橋剤として用いるアミノ樹脂(B)としては、メラ
ミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が挙げられるが、加工性、密着性の面からメラミン樹脂が好ましい。
【0042】
メラミン樹脂としては、例えば、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0043】
これらは、メチロール基がすべてエーテル化されているか、又は部分的にエーテル化され、メチロール基やイミノ基が残存しているものも使用できる。メチルエーテル化メラミン、エチルエーテル化メラミン、ブチルエーテル化メラミン等のアルキルエーテル化メラミンを挙げることができ、1種のみ、又は必要に応じて2種以上を併用してもよい。なかでもメチロール基の少なくとも一部をメチルエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂が好適である。
【0044】
このような条件を満たすメラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル232」、「サイメル235」、「サイメル238」、「サイメル254」、「サイメル266」、「サイメル267」、「サイメル272」、「サイメル285」、「サイメル301」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル701」、「サイメル703」、「サイメル736」、「サイメル738」、「サイメル771」、「サイメル1141」、「サイメル1156」、「サイメル1158」等(以上、日本サイテック社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン2061」等(以上、三井化学社製)、および「メラン522」等(日立化成社製)の商品名で市販されている。
【0045】
上記、アクリル変性エポキシ樹脂(A)およびアミノ樹脂(B)の配合割合は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)/アミノ樹脂(B)の固形分質量比において85/15〜50/50、特に90/10〜80/20の範囲内が好ましい。アミノ樹脂(B)の量が少な過ぎると十分な硬化性が得られず、多過ぎるとアルミニウムフィン材の加工性が低下するので好ましくない。
【0046】
防錆剤(C):
本発明のアルミニウムフィン材用の下地処理剤は、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)と前記アミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、防錆剤(C)を0.1〜50質量部含有することによって、耐湿性や耐食性に優れる皮膜を得ることができる。
防錆剤(C)として具体的には、チタン含有水性液(c1)、有機リン酸化合物(c2)を含有し、さらにメタバナジン酸塩(c3)とジルコニウム弗化塩(c4)及び炭酸ジルコニウム塩(c5)から選ばれる少なくとも1種の金属の塩を含有する、ことが本発明の課題を達成するのに有利である。以下、防錆剤(C)に含まれる各成分について詳細に述べる。
【0047】
チタン含有水性液(c1)
チタン含有水性液(c1)は、加水分解性チタン、加水分解性チタン低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と、過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液である。
【0048】
上記加水分解性チタンは、チタンに直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタンにおいて、チタンに結合する基の全てが加水分解性基であっても、もしくはその1部が加水分解された水酸基であってもどちらでも構わない。上記した加水分解性基としては、上記した様に水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコキシル基やチタンと塩を形成する基(例えば、ハロゲン原子(塩素など)、水素原子、硫酸イオンなど)が挙げられる。
詳しくは、チタン含有水性液(c1)としては、チタン化合物と過酸化水素水を反応させることにより得られるチタンを含む水性液であれば、従来から公知のチタン含有水性液を特に制限なしに使用することができ、例えば、下記方法(1)〜方法(3)によるものが挙げられる。
【0049】
方法(1):含水酸化チタンのゲルあるいはゾルに、過酸化水素水を添加して得られるチタニルイオン過酸化水素錯体あるいはチタン酸(ペルオキソチタン水和物)水溶液が挙げられる(例えば、特開昭63−35419号及び特開平1−224220号公報参照)。
【0050】
方法(2):塩化チタンや硫酸チタン水溶液と塩基性溶液から製造した水酸化チタンゲルに過酸化水素水を作用させて、合成することで得られるチタニア膜形成用液体が挙げられる(例えば、特開平9−71418号及び特開平10−67516号公報参照)。
【0051】
方法(3):塩化チタンや硫酸チタンの無機チタン化合物水溶液に過酸化水素を加えてぺルオキソチタン水和物を形成した後に、塩基性物質を添加して得られた溶液を放置、もしくは加熱することによってペルオキソチタン水和物重合体の沈殿物を形成する。その後、少なくともチタン含有原料溶液に由来する水以外の溶解成分を除去した後に、過酸化水素を作用させて得られるチタン酸化物形成用溶液が挙げられる(例えば、特開2000−247638号及び特開2000−247639号公報参照)。
【0052】
特に、防錆剤(C)で使用するチタン含有水性液(c1)としては、過酸化水素水中にチタン化合物を添加して製造されたものを使用することが好ましい。チタン化合物としては、一般式Ti(OR)(式中、Rは同一もしくは異なって炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表される加水分解して水酸基になる基を含有する加水分解性チタンやその加水分解性チタン低縮合物を使用することが好ましい。
【0053】
加水分解性チタン及び/又はその低縮合物(以下、これらのものを単に「加水分解性チタンc」と略す)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタンc10質量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100質量部、特に1〜20質量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1質量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。
【0054】
一方、100質量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30質量%の範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0055】
また、加水分解性チタンcを用いてなるチタン含有水性液(c1)は、加水分解性チタンcを過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分間〜20時間反応させることにより製造できる。
【0056】
加水分解性チタンcを用いてなるチタン含有水性液(c1)は、加水分解性チタンcと過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタンが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。
【0057】
従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成及び安定性に関し本質的に異なる。
【0058】
加水分解性チタンcを用いてなるチタン含有水性液(c1)を80℃以上で加熱処理あるいはオートクレーブ処理を行うと結晶化した酸化チタンの超微粒子を含む酸化チタン分散液が得られる。80℃未満では十分に酸化チタンの結晶化が進まない。このようにして製造された酸化チタン分散液は、酸化チタン超微粒子の粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。
【0059】
また、該分散液の外観は半透明状のものである。該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下(1μm以上でワレを生じる)するので好ましくない。この分散液も同様に使用することができる。
【0060】
加水分解性チタンcを用いてなるチタン含有水性液(c1)は、鋼鈑材料に塗布乾燥、または低温で加熱処理することにより、それ自体で付着性に優れた緻密な酸化チタン膜を形成できる。加熱処理温度としては、例えば200℃以下、特に150℃以下の温度で酸化チタン膜を形成することが好ましい。
【0061】
加水分解性チタンcを用いてなるチタン含有水性液(c1)は、上記した温度により水酸基を若干含む非晶質(アモルファス)の酸化チタン膜を形成する。
【0062】
また、80℃以上の加熱処理をした酸化チタン分散液は塗布するだけで結晶性の酸化チタン膜が形成できるため、加熱処理をできない材料のコーティング材として有用である。
防錆剤(C)におけるチタン含有水性液(c1)として、さらに酸化チタンゾルの存在下で、上記と同様の加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタンを含む水性液(c11)を使用することもできる。加水分解性チタン及び/又は加水分解性チタン低縮合物(加水分解性チタンc)としては、前記一般式Ti(OR)で表される加水分解して水酸基になる基を含有するチタンモノマーやその加水分解性チタン低縮合物を使用することもできる。
【0063】
上記した酸化チタンゾルは、無定型チタニア又はアナタース型チタニア微粒子が水(必要に応じて、例えば、アルコール系、アルコールエーテル系などの水性有機溶剤を含有しても構わない)に分散したゾルである。
【0064】
上記した酸化チタンゾルとしては従来から公知のものを使用することができる。該酸化チタンゾルとしては、例えば、(1)硫酸チタンや硫酸チタニルなどの含チタン溶液を加水分解して得られるもの、(2)チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(3)四塩化チタンなどのハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られるものなどの酸化チタン凝集物を水に分散した無定型チタニアゾルや該酸化チタン凝集物を焼成してアナタース型チタン微粒子としこのものを水に分散したものを使用することができる。
【0065】
無定形チタニアの焼成は少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、例えば、400℃〜500℃以上の温度で焼成すれば、無定形チタニアをアナターゼ型チタニアに変換させることができる。該酸化チタンの水性ゾルとして、例えば、TKS−201(テイカ(株)社製、商品名、アナタース型結晶形、平均粒子径6nm)、TA−15(日産化学(株)社製、商品名、アナタース型結晶形)、STS−11(石原産業(株)社製、商品名、アナタース型結晶形)などが挙げられる。
【0066】
加水分解性チタンcと過酸化水素水とを反応させるために使用する際の上記酸化チタンゾルとチタン過酸化水素反応物との重量比率は1/99〜99/1、好ましくは約10/90〜90/10の範囲である。重量比率が1/99未満になると安定性、光反応性などにおいて酸化チタンゾルを添加した効果が見られず、99/1を越えると造膜性が劣るので好ましくない。
【0067】
加水分解性チタンcと過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタンa 10質量部に対して過酸化水素換算で0.1〜100質量部、特に1〜20質量部の範囲内が好ましい。過酸化水素換算で0.1質量部未満になるとキレート形成が十分でなく白濁沈殿してしまう。一方、100質量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30質量%の範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分の点で好ましい。
【0068】
また、水性液(c11)は、酸化チタンゾルの存在下で加水分解性チタンcを過酸化水素水と反応温度1〜70℃の範囲内で10分間〜20時間反応させることにより製造できる。
【0069】
水性液(c11)は、加水分解性チタンcを過酸化水素水と反応させることにより、加水分解性チタンcが水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いで過酸化水素が生成した水酸基含有チタン化合物に配位するものと推察され、この加水分解反応及び過酸化水素による配位が同時近くに起こることにより得られたものであり、室温域で安定性が極めて高く長期の保存に耐えるキレート液を生成する。
【0070】
従来の製法で用いられる水酸化チタンゲルはTi−O−Ti結合により部分的に三次元化しており、このゲルと過酸化水素水を反応させた物とは組成、安定性に関し本質的に異なる。また、酸化チタンゾルを使用することにより、合成時に一部縮合反応が起きて増粘するのを防ぐようになる。その理由は縮合反応物が酸化チタンゾルの表面に吸着され、溶液状態での高分子化を防ぐためと考えられる。
【0071】
上記チタン含有水性液(c1)には、他の顔料やゾルを必要に応じて添加分散する事もできる。添加物としては、市販されている酸化チタンゾル、酸化チタン粉末など、マイカ、タルク、シリカ、バリタ、クレーなどが一例として挙げることができる。
【0072】
有機リン酸化合物(c2)
有機リン酸化合物(c2)は、例えば、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等のカルボキシル基含有有機亜リン酸、及びこれらの塩等が好適なものとして挙げられる。
【0073】
上記有機リン酸化合物(c2)は、前記チタン含有水性液(c1)の貯蔵安定性を向上させる効果があるが、中でも特に1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0074】
有機リン酸化合物(c2)の添加量は、前記チタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて1〜400質量部、特に20〜300質量部であることが、密着性などの点から好ましい。
【0075】
メタバナジン酸塩(c3)
メタバナジン酸塩(c3)は、例えば、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウムなどが挙げられるが、中でも特にメタバナジン酸アンモニウムが、耐食性の点から好ましい。メタバナジン酸塩(c3)の添加量は、チタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて1〜400質量部、特に10〜400質量部であることが、耐食性などの点から好ましい。
【0076】
ジルコニウム弗化塩(c4)
ジルコニウム弗化塩(c4)は、ジルコニウム弗化水素酸のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩を挙げることができるが、中でもジルコニウム弗化アンモニウムが、耐水付着性などの点から好ましい。ジルコニウム弗化塩(c4)の添加量は、チタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて1〜400質量部、特に20〜400質量部であることが、耐食性などの点から好ましい。
【0077】
炭酸ジルコニウム塩(c5)
炭酸ジルコニウム塩(c5)は、炭酸ジルコニウムのナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの塩を挙げることができるが、中でも炭酸ジルコニウムアンモニウムが、耐水付着性などの点から好ましい。炭酸ジルコニウム塩(c5)の添加量は、チタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて1〜400質量部、特に10〜400質量部であることが、耐食性の点から好ましい。
【0078】
本発明の下地処理剤における防錆剤(C)の配合割合は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)に固形分合計100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは10〜20質量部が、得られた塗膜の耐湿性や耐食性向上のために好ましい。
【0079】
本発明の下地処理剤には、アクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、防錆剤(C)に加え、必要に応じて親水化処理皮膜の親水性、密着性向上を目的として、ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のポリマー成分(D)を配合することができる。
【0080】
ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のポリマー成分(D):
ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のポリマー成分(D)(以下、「ポリマー成分(D)」と略することがある)は、ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種である。
【0081】
ポリグリセリンは、グリセリンのポリエーテル化物であって、通常、数平均分子量が200〜30,000、好ましくは300〜3,000の範囲内にあることが、本発明の下地処理剤による下層皮膜と親水化処理剤による上層皮膜との密着性や親水性の面から好ましい。
【0082】
上記ポリビニルアルコールは、造膜成分としての役割を果たすとともに分子中に二級水酸基が多量に存在するため水との親和性に富み、さらにこの水酸基と他の構成成分との相互作用により耐水性と親水性の持続性を維持する作用を示す。ポリビニルアルコールは、ケン化度87%以上のポリビニルアルコールであり、特にケン化度98%以上の、いわゆる完全ケン化ポリビニルアルコールであることが好ましく、また数平均分子量が3,000〜100,000の範囲内にあることが好適である。
【0083】
完全ケン化ポリビニルアルコールは、常温下における水に対する溶解度が低く、常温以下で使用される熱交換器フィン材用の皮膜材料として好ましい性質を示す。ポリビニルアルコールとしては、他の有機化合物と反応させた変性ポリビニルアルコール(例えば、アクリルアミド、不飽和カルボン酸、スルホン酸モノマー、カチオン性モノマー、不飽和シランモノマーなどの共重合物も使用することができる。
【0084】
本発明の下地処理剤におけるポリマー成分(D)の配合量は、アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)に固形分合計100質量部に対して、1〜40質量部、好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部が、本発明の下地処理剤による下層皮膜と親水化処理剤による上層皮膜との密着性や親水性のために好ましい。
【0085】
さらに、本発明の下地処理剤には、必要に応じて、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、ゼオライト(アルミノシリケート)などの防菌剤;タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなどの腐食抑制剤;モリブデン、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、鉄などの酸素酸塩化合物;着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類、ワックス、レベリング剤などの通常塗料に用いられる各種添加剤を含有できる。特に着色顔料を含有させることにより、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に下地皮膜が形成されていることを確認できる。
【0086】
次いで、本発明では、上記下地皮膜上に、親水化処理組成物を塗装して親水化処理皮膜を形成し、下地処理剤を下層皮膜とし、その皮膜上に親水化処理組成物を塗装して上層皮膜としたアルミニウムフィン材が製造される。
【0087】
親水化処理組成物
親水化処理組成物による上層皮膜は、表面が親水性で十分な皮膜強度を有し、かつ加工性、密着性、耐水性が良好である。このような親水性皮膜の形成に用いられる親水化処理剤としては、例えば、親水性皮膜形成性のバインダーを含有するものを好適に使用することができる。
【0088】
上記、親水化処理組成物に用いるバインダーの代表例としては、(1)親水性有機樹脂を主成分とし、必要に応じて架橋剤を組合せてなる有機樹脂系バインダー;(2)親水性有機樹脂とコロイダルシリカを主成分とし、必要に応じて架橋剤を組合せてなる有機樹脂とコロイダルシリカ系バインダー;(3)主成分のアルカリ珪酸塩とノニオン系水性有機樹脂との混合物である水ガラス系バインダーなどが挙げられる。なかでも、有機樹脂系バインダー(1)や有機樹脂とコロイダルシリカ系バインダー(2)が、親水性や耐食性面から好適である。
【0089】
上記有機樹脂系バインダー(1)における親水性有機樹脂としては、分子内に水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を含有し、そのままで、又は官能基に応じ酸もしくは塩基で中和することにより、水溶化ないしは水分散化可能な樹脂を挙げることができる。親水性有機樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(例えば、アクリルアミド、不飽和カルボン酸、スルホン酸モノマー、カチオン性モノマー、不飽和シランモノマーなどとの共重合物)、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、カルボキシル基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂とアミンとの付加物、エチレンとアクリル酸との共重合体アイオノマーなどの合成親水性樹脂;デンプン、セルロース、アルギンなどの天然多糖類;酸化デンプン、デキストリン、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類の誘導体を挙げることができる。
【0090】
有機樹脂系バインダー(1)において必要に応じて使用される架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、金属キレート化合物などを挙げることができる。該架橋剤は一般に水溶性又は水分散性を有していることが好ましい。
【0091】
架橋剤の具体例としては、例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化尿素樹脂、メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ポリフェノール類もしくは脂肪族多価アルコールのジ−又はポリグリシジルエーテル、アミン変性エポキシ樹脂、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリイソシアヌレート体のブロック化物;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)などの金属元素の金属キレート化合物などを挙げることができる。上記金属キレート化合物は、一分子中に少なくとも2個以上の金属アルコキ
シド結合を有するものが好適である。
【0092】
上記有機樹脂・コロイダルシリカ系バインダー(2)における親水性有機樹脂としては、前記有機樹脂系バインダー(1)における親水性有機樹脂と同様のものを使用することができる。また、バインダー(2)におけるコロイダルシリカは、いわゆるシリカゾル又は微粉状シリカであって、通常、粒子径が5nm〜10μm程度、好ましくは5nm〜1μmで、通常、水分散液として供給されているものをそのまま使用するか、又は微粉状シリカを水に分散させて使用する。
【0093】
有機樹脂とコロイダルシリカ系バインダー(2)においては、有機樹脂とコロイダルシリカとが単に混合されたものであってもよいし、有機樹脂とコロイダルシリカとがアルコキシシランの存在下で反応され複合化されたものであってもよい。
【0094】
上記水ガラス系バインダー(3)における水性有機樹脂としては、上記有機樹脂系バインダー(1)における親水性有機樹脂のうち、アニオン系又はノニオン系有機樹脂を使用することができる。
【0095】
親水性皮膜形成性バインダーは、水性媒体中に溶解ないしは分散させることができる。この水性媒体は、水、又は水を主体とする水と有機溶剤との混合物を意味する。親水化処理剤は、親水性皮膜形成性バインダの水溶液又は水分散液のみからなっていてもよいが、必要に応じて、塗膜の親水性を向上させるための界面活性剤;親水性を向上させるための親水性重合体微粒子(通常、平均粒子径0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.6μmの範囲内である);2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、ゼオライト(アルミノシリケート)などの防菌剤;タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾールなどの防錆剤;モリブデン、バナジウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、鉄などの酸素酸塩化合物;着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類、ワックス、レベリング剤などの通常塗料に用いられる各種添加剤を含有できる。次に、本発明の親水化処理アルミニウム板の製造方法について詳細に説明する。
【0096】
親水化処理アルミニウム板の製造方法
親水化処理アルミニウム板の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材の表面に、本発明の下地処理剤を塗装し、乾燥して下層皮膜を形成した後、該下層皮膜の表面に親水化処理剤を塗装し、乾燥して親水性の上層皮膜を形成するものである。
【0097】
該基材であるアルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材としては、従来、熱交換器アルミニウムフィン材の基材として使用可能なそれ自体既知のものを使用することができ、通常、無処理の上記基材を従来公知の方法で脱脂、水洗、乾燥したものを好適に使用することができる。
【0098】
上記アルミニウム系基材上に前記下地処理剤を塗装し乾燥させることによって下層皮膜を形成することができる。下地処理剤は、基材であるアルミニウム系基材(熱交換器に組み立てられたものであってもよい)上に、それ自体既知の塗装方法、例えば、浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、ロール塗装、電着塗装などによって塗装することができる。下地処理剤の乾燥条件は、通常、素材到達最高温度が60〜250℃となる条件で、2秒間〜30分間乾燥させることが好適である。
【0099】
また、下地処理剤の乾燥膜厚としては通常、0.05〜5g/m、特に0.1〜3g/mの範囲が好ましい。0.05g/m未満になると、耐食性、耐水性などの性能が劣り、一方5g/mを超えると、下地皮膜が割れたり親水性などが劣るので好ましくない。
【0100】
上記下地皮膜を設けたアルミニウム系基材(熱交換器に組み立てられたものであってもよい)上に、前記親水化処理剤を、それ自体既知の塗装方法、例えば、浸漬塗装、シャワー塗装、スプレー塗装、ロール塗装、電着塗装などによって塗装し、焼付け乾燥することによって親水化処理されたアルミニウム板を製造できる。
【0101】
親水化処理剤から形成される親水化処理皮膜の膜厚は特に限定されるものではないが、親水性の維持及び経済性の点から通常、0.3〜5g/m、好ましくは0.5〜3g/mの範囲内にある。また、親水化処理剤の硬化条件はバインダー種、膜厚などに応じて適宜設定することができるが、通常、素材到達最高温度が約80〜250℃となる条件で5秒間〜30分間焼付けることが好適である。
【実施例】
【0102】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0103】
製造例1 カルボキシル基含有アクリル樹脂No.1溶液の製造
n−ブタノール850部を窒素気流下で100℃に加熱し、単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸450部、スチレン450部、エチルアクリレート100部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 40部」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部とn−ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、n−ブタノール933部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.1を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価300mgKOH/g、重量平均分子量分子量約17,000を有していた。
【0104】
製造例2 カルボキシル基含有アクリル樹脂No.2溶液の製造
n−ブタノール1,400部を窒素気流下で100℃に加熱し、単量体混合物及び重合開始剤「メタクリル酸 670部、スチレン250部、エチルアクリレート80部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート50部 」を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで、 t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部とn−ブタノール100部との混合溶液を30分間かけて滴下し、滴下後2時間熟成した。次いで、n−ブタノール373部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部を加え、固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.2を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価450mgKOH/g、重量平均分子量分子量約14,000を有していた。
【0105】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)の製造
製造例3 アクリル変性エポキシ樹脂No.1
jER828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380)513部、ビスフェノールA287部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱し、約4時間反応を行いエポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量3,700、数平均分子量約1,7000を有していた。
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例1で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.1を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、ついでジメチルエタノールアミン30部を添加して1時間撹拌して反応を行った。
さらに、脱イオン水2380部を1時間かけて添加して固形分約25%のアクリル変性エポキシ樹脂No.1の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価48mgKOH/g、第4級アンモニウム塩量(明細書中の導電率滴定方法による)1.2×10−4mol/gを有していた。
【0106】
製造例4 アクリル変性エポキシ樹脂No.2
jER828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂、エポキシ当量約190、数平均分子量約380)519部、ビスフェノールA281部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.3部及びメチルイソブチルケトン89部を仕込み、窒素気流下で140℃に加熱し、約4時間反応を行いエポキシ樹脂溶液を得た。得られたエポキシ樹脂はエポキシ当量2,800、数平均分子量約12,000を有していた。
次いで、得られたエポキシ樹脂溶液に製造例2で得た固形分約30%のカルボキシル基含有アクリル樹脂No.2を667部仕込み、90℃に加熱して均一に溶解させた後、同温度で脱イオン水40部を30分かけて滴下し、次いでジメチルエタノールアミン53部を添加して1時間撹拌して反応を行った。さらに、脱イオン水2,350部を1時間かけて添加して固形分約25%のアクリル変性エポキシ樹脂No.2の水分散体を得た。得られた樹脂は、樹脂酸価75mgKOH/g、第4級アンモニウム塩量(導電率滴定による結果)1.8×10−4mol/gを有していた。
【0107】
製造例5 アクリル樹脂No.1水溶液の製造(比較例用)
ポリアクリル酸「AC10LP」(日本純薬(株)製のポリアクリル酸、重量平均分子量25,000、酸価779mgKOH/g)80部を水535部に溶解させ、固形分13%のアクリル樹脂No.1水溶液を得た。
【0108】
製造例6 アクリル樹脂No.2水溶液の製造(比較例用)
還流管、温度計、滴下ロート、攪拌機を装着した四つ口フラスコに、エチレングリコールモノブチルエーテル406部を仕込み、窒素気流下で100℃に加熱、保持し、アクリル酸196部、2−ヒドロキシエチルアクリレート49部、エチレングリコールモノブチルエーテル35部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル14部の混合物を滴下ロートから3時間を要して滴下し、滴下後、さらに同温度で2時間攪拌を続け、ついで冷却し、固形分35%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂(固形分)は、酸価623mgKOH/g、重量平均分子量25,000を有していた。得られた35%のアクリル樹脂溶液に水を徐々に添加、攪拌して固形分13%のアクリル樹脂No.2水溶液を得た。
【0109】
防錆剤(C)の製造
製造例7
四塩化チタン60%溶液5mlを蒸留水で500mlとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10ml加えてかき混ぜ、チタンを含む黄色半透明の粘性のあるチタン系水性液T1を得た。
【0110】
製造例8
テトラiso−プロポキシチタン10部とiso−プロパノール10部の混合物を30%過酸化水素水10部と脱イオン水100部の混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し、黄色透明の少し粘性のあるチタン系水性液T2を得た。
【0111】
製造例9
製造例8において、テトラiso−プロポキシチタンの代わりにテトラn−ブトキシチタンを使用する以外は製造例8と同様の製造条件で製造し、チタン系水性液T3を得た。 製造例10〜15
下記表1に示す配合内容を脱イオン水にて固形分を調整し、固形分10%の各防錆剤No.1〜No.6を得た。
【0112】
【表1】

【0113】
ポリマー成分(D)の製造
製造例16 ポリビニルアルコールNo.1水溶液の作成
デンカポバールK−05(電気化学工業(株)製、ケン化度99%、重合度550)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコールNo.1水溶液を得た。
【0114】
製造例17 ポリビニルアルコールNo.2水溶液の作成
デンカポバールB−05(電気化学工業(株)製、ケン化度88%、重合度550)を水に溶解し、固形分14%のポリビニルアルコールNo.2水溶液を得た。
【0115】
下地処理剤の製造
実施例1〜15
下記表2及び表3に示す配合に従って各成分を攪拌機で十分に混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整して固形分10%の下地処理剤No.1〜No.15を作成した。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】


比較例1〜9
下記表4に示す配合に従って配合して、各成分を攪拌機で十分に混合し、脱イオン水を加えて固形分を調整して固形分10%の下地処理剤No.16〜No.24を作成した。
【0118】
【表4】

【0119】
(注1)サイメル350:日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分100%。
(注2)サイメル370:日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分82%。
(注3)ポリグリセリン#750:坂本製薬(株)製、商品名、デカグリセリンを主成分とするポリグリセリン、水酸基価約900mgKOH/g、固形分100質量%。
【0120】
親水化処理アルミニウム板の製造及び性能評価
実施例16
無処理で板厚0.11mmのNo.1000系アルミニウム板を脱脂、水洗、乾燥した後、その表面に上記各下地処理剤を乾燥皮膜質量が1.0g/mになるように塗布した後、素材到達最高温度(PMT)が100℃になるようにして10秒間焼付け乾燥して下地皮膜を得た。
該下地皮膜の上に、表5に示す親水化処理剤を乾燥皮膜質量が1.2g/mになるように塗布した後、素材到達最高温度(PMT)が220℃になるよう10秒間焼付けて親水化処理アルミニウム板No.1を得た。
【0121】
実施例17〜34
下地皮膜と親水化処理剤の組合せ及び性能結果において、実施例を表5〜6に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
【表6】

【0124】
親水化処理剤
(注4)処理剤A:コスマー9600、商品名、関西ペイント社製、高酸化アクリル樹脂とポリビニルアルコールを主成分とする親水化処理剤。
【0125】
(注5)処理剤B:コスマー9400、商品名、関西ペイント社製、ポリオキシアルキレングリコールと親水性架橋重合体微粒子を主成分とする親水化処理剤。
【0126】
(注6)処理剤C:コスマー1310、商品名、関西ペイント社製、親水性有機樹脂とコロイダルシリカを主成分とする親水化処理剤。
【0127】
比較例8〜18
下地皮膜と親水化処理剤の組合せ及び性能結果において、比較例を表7に示す。
【0128】
【表7】

【0129】
親水化処理アルミニウム板No.31
比較例19
リン酸クロメート処理アルミニウム板の上に、親水化処理剤Aを塗布して親水化処理アルミニウム板No.31を作成した。
【0130】
評価方法
(注7)塗膜密着性:各試験板上の塗膜に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
【0131】
(注8)耐食性:各試験板を70mm×150mmの大きさに切断後、端面部をシールし、JIS Z−2371塩水噴霧試験法に準じて240時間試験を行った後、各試験片の腐食の程度を下記基準に従い評価した。
○:腐食発生面積5%未満。
△:腐食発生面積5%以上、20%未満。
×:腐食発生面積20%以上。
【0132】
(注9)耐湿性:各試験板を温度50℃で相対湿度95%の環境に10日間放置した後、塗膜の変色の程度を下記基準で評価した。
○:変色が平面部の面積の5%未満。
△:平面部の面積の5%以上、80%未満で変色。
×:平面部の面積の80%以上で変色。
【0133】
(注10)親水性:各試験板の塗面上に注射器にて0.03ccの脱イオン水を滴下して水滴を形成し、水滴の接触角を協和化学社製CA−X150型測定器にて測定した。
○:接触角が20°未満。
△:接触角が20°以上で40°未満。
×:接触角が40°以上。
【0134】
(注11)色調持続性:水道水流水に72時間浸漬前後の各試験板の色調変化を目視で下記基準に従い評価した。
○:色の変化がほとんど認められない。
△:色の変化が少し認められる。
×:色の変化が著しい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
親水性に優れ、かつ加工性、密着性、耐湿性及び耐食性が良好な、コンデンサー、ラジエーター、エバポレーター等の熱交換器用フィン材が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量4,000〜30,000のビスフェノール型エポキシ樹脂(a1)とカルボキシル基含有アクリル樹脂(a2)とをアミン化合物の存在下に反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、及びアクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、防錆剤(C)を0.1〜50質量部含有するアルミニウムフィン材用の下地処理剤。
【請求項2】
防錆剤(C)が、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(c1)、及び有機リン酸化合物(c2)を含有し、さらにメタバナジン酸塩(c3)とジルコニウム弗化塩(c4)及び炭酸ジルコニウム塩(c5)から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤。
【請求項3】
防錆剤(C)が、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液(c1)の固形分100質量部に基いて、有機リン酸化合物(c2)1〜400質量部、メタバナジン酸塩(c3)1〜400質量部、ジルコニウム弗化塩(c4)1〜400質量部及び炭酸ジルコニウム塩(c5)1〜400質量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤。
【請求項4】
アクリル変性エポキシ樹脂(A)とアミノ樹脂(B)の固形分合計100質量部に対して、ポリグリセリン及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種のポリマー成分(D)を1〜40質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウムフィン材用の下地処理剤。
【請求項5】
アルミニウム又はアルミニウム合金製のフィン材上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の下地処理剤を塗装して、乾燥して乾燥膜厚で0.05〜5g/mの下地処理皮膜を形成し、該下地皮膜上に、親水化処理組成物を塗装して乾燥膜厚で0.3〜5g/mの親水化処理皮膜が形成されてなるアルミニウムフィン材の製造方法。

【公開番号】特開2011−42842(P2011−42842A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192508(P2009−192508)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】