アレルギー抑制剤
【課題】日常の食生活に取り入れることの出来る、安全で容易に製造し得る新規のアレルギー抑制剤、インターロイキン(IL)-4産生抑制剤、免疫グロブリン(Ig)E産生抑制剤、IgG1産生抑制剤の提供。
【解決手段】殻成分を除去した甲殻類より調製したエキスあるいは本エキスより精製した活性成分を含有する、アレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤。
【解決手段】殻成分を除去した甲殻類より調製したエキスあるいは本エキスより精製した活性成分を含有する、アレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は新規のアレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活などの変化に伴って、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、接触過敏症、食物アレルギーといったアレルギー性疾患患者が急増している。従来、アレルギー疾患の治療においては、抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの薬剤が対症療法的に処方されてきたが、これらの薬剤は長期連用による副作用が大きいという問題があった。そこで、アレルギー症状を軽減、抑制、あるいは予防でき、かつ日常の食生活に取り入れることの出来る、安全で容易に製造し得る素材の開発が望まれていた。
【0003】
ところで、インターロイキン(IL)-4はヒト又は動物の免疫応答細胞であるTリンパ球より産生される物質であり、Bリンパ球に作用して免疫グロブリン(Ig)EやIgG 1といった抗体の産生を増強すると共に、炎症部位への炎症性細胞の浸潤を促進する作用を有することが見出されている。
【0004】
また、IgEは花粉症、アレルギー性の眼炎及び鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息など様々なアレルギー性疾患の患者に多く見出される抗体であり、これらアレルギー性疾患の発症に深く関与していることが古くから知られている。IgEは肥満細胞に存在するIgEレセプターに結合し、IgEが結合した肥満細胞は、体内に侵入したアレルギー物質、すなわちアレルゲンのIgEへの結合によって、ヒスタミンなどの炎症性化学物質を遊離する。ヒスタミンなどの炎症性化学物質の遊離は、様々なアレルギー症状、すなわち、かゆみ、紅斑、くしゃみ、鼻水などの症状を引き起こす。
【0005】
さらにIgG1は、ヒト免疫グロブリンの70〜75%を占めるIgGの中でも約66 %を占め、食物アレルギーの原因になることが報告されている。また、IgG1による食物アレルギーはIgEの引き起こす即効性の食物アレルギーと比べると遅発性であることが知られている。
【0006】
よって、これらアレルギー症状を引き起こす要因となるIL-4やIgE、IgG1の産生を抑制する効果を調べることにより、アレルギー抑制効果を確認することが可能である。
【0007】
IL-4の産生を抑制する物質としては、IPD1151Tに代表されるスルホニウム誘導体(非特許文献1及び2等を参照)や植物抽出物(特許文献1を参照)など、IgEの産生を抑制する物質としては、乳酸菌(特許文献2を参照)や植物抽出物(特許文献3を参照)などが知られている。また、IgG1の産生を抑制する物質としては乳酸菌(特許文献4を参照)などが報告されている。
【0008】
その他、アレルギー抑制作用を有する物質として、例えば、果物(非特許文献3及び4等を参照)、海藻(特許文献5〜8を参照)などが知られている。エビやカニ等の甲殻類を原料素材として用いたアレルギー抑制剤については、甲殻類の殻に含まれるキチンにおいて血管透過性抑制活性を指標としたアレルギー抑制作用が(特許文献9を参照)、キチンの構成糖であるグルコサミンにおいてIgE産生抑制活性を指標としたアレルギー抑制作用が報告されているが(特許文献10を参照)、キチンやグルコサミンなどを含む殻成分を除いた部分を原料として用いたアレルギー抑制作用については未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-279491号公報
【特許文献2】特許第4212838号公報
【特許文献3】特許第1912470号公報
【特許文献4】特許第4064480号公報
【特許文献5】特開平11-21247号公報
【特許文献6】特開平10-72362号公報
【特許文献7】特許第4012977号公報
【特許文献8】特許第3066484号公報
【特許文献9】特開2003-55232号公報
【特許文献10】特許第4178584号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Japan. J. Pharmacol. 61. 27-30(1993)
【非特許文献2】Japan. J. Pharmacol. 61. 31-39(1993)
【非特許文献3】Biosci. Biotechnol. Biovhem., 62(7), 1284-1289, 1998
【非特許文献4】International Journal of Molevular Medicine 17: 511-515, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、甲殻類より抽出したエキスを利用することで、日常の食生活に取り入れることの出来る、安全で容易に製造し得る新規のアレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤を提供することを課題として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意検討を行った結果、本発明者らは、エビやカニといった甲殻類より抽出したエキスを用いることによって課題を解決することが出来ることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は甲殻類より抽出したエキスを活性成分として、あるいは甲殻類より抽出したエキスから精製した活性成分を含有することを特徴とする、アレルギー反応に関与するIL-4やIgE、IgG1の産生を抑制し、アレルギー症状の軽減、治療又は予防するアレルギー抑制剤を提供するものである。
【0013】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有するアレルギー抑制剤。
[2] 甲殻類がカニ類又はエビ類である、[1]のアレルギー抑制剤。
[3] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有する、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有する、[1]又は[2]のアレルギー抑制剤。
[4] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスに含まれる、少なくとも分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を活性成分として含有する、[1]〜[3]のいずれかのアレルギー抑制剤。
[5] エキスに含まれない殻成分がキチン及びグルコサミンである、[1]〜[4]のいずれかのアレルギー抑制剤。
[6] [1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤を含む医薬。
[7] [1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤を含む飲食物。
[8] 甲殻類を丸ごと粉砕し、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理した原料から抽出した、キチンやグルコサミンを含む殻成分を除去し調製することを含む、[1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤の製造方法。
[9](i) 甲殻類を丸ごと粉砕するか、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理する工程、
(ii) 工程(i)で得られた原料を溶媒を用いて抽出する工程、
(iii ) 工程(ii)で得られた抽出物からキチンやグルコサミンを含む殻成分を除去する工程、
(iv) 工程(iii)で得られた抽出物をイオンクロマトグラフィーで分画する工程、
(v) 工程(iv)で得られた画分をゲル濾過で分画する工程、
を含む分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を含むアレルギー抑制剤を製造する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、甲殻類より経口摂取可能な新規なアレルギー抑制剤を得ることができ、そのままあるいは医薬品や飲食物に含有することにより利用することが出来る。このアレルギー抑制剤又はアレルギー抑制剤を含む医薬品や飲食物を経口摂取することによって、アレルギー反応に関与するIL-4やIgE、IgG1の産生が抑制され、アレルギー症状の軽減、抑制、予防が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】甲殻類エキスによるヒト骨髄腫細胞株U266細胞のIgE産生抑制活性評価試験の結果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図2】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中の総IgE量を示す図である。
【図3】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中のOVA特異的IgE量を示す図である。
【図4】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中の総IgG1量を示す図である。
【図5】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中のOVA特異的IgG1量を示す図である。
【図6】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IgE mRNA発現レベルを示す図である。
【図7】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IgG1 mRNA発現レベルを示す図である。
【図8】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制剤活性評価試験の結果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIL-4量を示す図である。
【図9】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IL-4 mRNA発現レベルを示す図である。
【図10】アレルギー抑制剤の活性成分の陰イオンクロマトグラフィーによる分画の結果を示す図である。
【図11】アレルギー抑制剤の活性成分の陰イオンクロマトグラフィーにより分画した画分のアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図12】陰イオンクロマトグラフィーにより分画したアレルギー抑制剤の活性成分のゲル濾過による分画の結果を示す図である。
【図13】陰イオンクロマトグラフィーにより分画したアレルギー抑制剤の活性成分のゲル濾過により分画したフラクションのアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図14】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した結果を示す図である。
【図15】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した画分のアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図16】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した画分のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアレルギー抑制剤を得るために使用する甲殻類の種類は特に制限されない。甲殻類は節足動物甲殻亜門に属する総称であり、鰓脚綱、ムカデエビ綱、カシラエビ綱、顎脚綱、軟甲綱などが挙げられる。好ましい甲殻類として、軟甲網真軟甲亜網ホンエビ上目十脚目に含まれる動物群が挙げられ、さらに好ましくはエビ類あるいはカニ類が挙げられる。
【0017】
エビ類では、例えばクルマエビ、フトミゾエビ、クマエビ、タイショウエビなどのクルマエビ類、ヨシエビ、シバエビ、アカエビ、トラエビなどのシバエビ類、サクラエビなどのサクラエビ類、テナガエビ、スジエビなどのテナガエビ類、ホッカイエビ、テッポウエビ、ホッコクアカエビなどの小エビ類、イセエビ、ハコエビなどのイセエビ類、ウチワエビ類、ザルガニ類が挙げられる。
【0018】
また、カニ類では、カイカムリなどのカイカムリ類、コウナガカムリ類、トゲカイカムリ類、マメヘイケガニ類、ツノダシマメヘイケガニ類、ホモラ類、ミズヒキガニ類、アサヒガニなどのアサヒガニ類、ヘイケガニなどのヘイケガニ類、メガネカラッパ、トラフカラッパなどのカラッパ類、キンセンガニなどのキンセンガニ類、マメコブシガニ、ツノナガコブシなどのコブシガニ類、タラバガニ、ハナサキガニ、アブラガニなどのイバラガニ類、ズワイガニ、タカアシガニ、モズクショイ、イソクズガニなどのクモガニ類、ヤワラガニ類、アルイシガニなどのヒシガニ類、ゴカクガニ類、ケガニ(オオクリガニ)、クリガニなどのクリガニ類、イチョウガニなどのイチョウガニ類、ヒゲガニ類、ゴイシガニ類、ガザミ、イシガニ、タイワンガザミ、ノコギリガザミ、アオガニ、ヒラツメガニ、ミドリガニ、カンコクワタリガニなどのワタリガニ類、ムツアシガニ類、オウギガニ、スベスベマンジュウガニなどのオウギガニ類、イオオウギガニ類、ケブカガニ類、サンゴガニ類、エンコウガニ類、ミマミオカガニ(オオオカガニ)などのオカガニ類、モズクガニ、イワガニ、アカテガニ、ベンケイガニ、イソガニなどのイワガニ類、ミナミコメツキガニなどのミナミコメツキガニ類、オオシロピンノ、クロピンノ、オヨギピンノなどのカクレガニ類、ワガガニなどのサワガニ類、ミナミサワガニ類、スナガニ、シオマネキ、コメツキガニ、オサガニなどのスナガニ類、ムツハアリアケガニ類、イトアシガニ類、ユウレイガニ類、サンゴヤドガニ類、ユノハナガニなどのユノハナガニ類が挙げられる。
【0019】
本発明のアレルギー抑制剤が含有するエキスは、甲殻類を丸ごと粉砕した原料からそのまま適切な溶媒を用いて抽出したエキス、甲殻類を丸ごと粉砕した原料をタンパク質分解酵素により酵素処理しタンパク質を可溶化した後、適切な溶媒を用いて抽出したエキス、甲殻類を丸ごと粉砕した原料を適切な溶媒を用いて抽出し、さらにタンパク質分解酵素により酵素処理しタンパク質を可溶化したエキスなどが挙げられるが特に制限されない。好ましくはエビ類あるいはカニ類を粉砕し、タンパク質分解酵素を用いて酵素処理した後、適切な溶媒で抽出したエキスが挙げられる。本発明のエキスは、殻成分が除去されている。殻成分とは、甲殻類の殻に含まれるキチンやグルコサミン等の水不溶成分をいう。本発明において、キチンという場合キチン誘導体も含まれ、グルコサミンという場合グルコサミン誘導体も含まれる。本発明において、タンパク質を可溶化し適切な溶媒を用いてエキスを抽出しており、該抽出工程の工程で殻成分を除去することができる。殻成分を除去するためには、甲殻類の殻部分を除去し、残りの部分からエキスを抽出してもよい。
【0020】
本発明のアレルギー抑制剤を得る方法において、甲殻類から活性成分を抽出する方法は特に限定されない。例えば、抽出に用いる原料はそのまま用いてもよいし粉砕してからでもよく、抽出効率を向上させるため酵素処理による分解工程を行ってもよい。そして、キチンやグルコサミンなどを含む殻成分を除去するため、濾過や圧縮分離、遠心分離などを利用して不溶物残渣とエキスの固液分離を行う。更に、真空濃縮や、凍結濃縮、膜濃縮などを用いてエキスを濃縮してもよい。
【0021】
また、本発明の甲殻類のエキスを含むアレルギー抑制剤は殻成分を含まないので、殻に含まれるキチンやグルコサミンなどを濃塩酸や濃アルカリによる加水分解などによって抽出することはなく、水や中性付近の緩衝液などの水性溶媒で殻成分が含まれないように抽出すればよい。
【0022】
本発明のアレルギー抑制剤が含む活性成分を含むエキスの抽出に用いる抽出溶媒は特に限定されない。例えば、水や塩類を含む水溶液や、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、ヘキサンなどのアルカン類など有機系溶媒などが挙げられるが、好ましくは水、エチルアルコール、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0023】
なお、キチンやグルコサミンは濃塩酸や濃アルカリで加水分解することで大幅に分子量が低下した結果溶解することが可能となるため、本発明で採用する上記の濃塩酸や濃アルカリを用いない調製方法によって抽出されてくることはない。
【0024】
本発明において、使用するタンパク質分解酵素は特に限定されない。例えば、ニューラーゼF3G、ニューラーゼA、モルシンF、スミチームAP、デナプシン2P、オリエンターゼ20A、テトラーゼS、ブリューワーズクラレックス、プロテアーゼYP-SS、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW-40、ブロメラインF、プロモッド223LP、スミチームLP、スミチームFP、スミチームLPL、プロチンSD-NY-10、プロチンSD-PC-10F、ブリューワーズプロテアーゼ、アクセラザイムNP50.000、精製パパイン、食品用精製パパイン、デナチームAP、PTN、ニュートラーゼ、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ90N、オリエンターゼONS、Papain F.、trypsin 4.0 T、COROLASE N、VERON L10、COROLASE L10、COROLASE 7089、パンチダーゼNP-2、パンチダーゼP、アロアーゼAP-10、アロアーゼNP-10、アロアーゼNS、エンチロンNBS、パパイン、プロテックス7L、プロテックス14L、サモアーゼPC10F、プロチンSD-AC-10F、プロチンSD-AY-10、プロレザーFG-F、プロテアーゼP「アマノ」3G、アルカリプロテアーゼGL、プロテックス6L、プロテックス89L、ピュラフェクト、ピュラフェクトOX、プロペラーゼ、プロテックスOXG、プロテックス40L、スミチームMP、デルボラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、アルカラーゼ、クリアーレンズプロ、エバラーゼ、カンナーゼ、ノボザイムFM、ビオプラーゼOP、ビオプラーゼAL-15FG、ビオプラーゼ30G、ビオプラーゼAPL-30、ビオプラーゼXL-416F、ビオプラーゼSP-20FG、ビオプラーゼSP-4FG、プロテアーゼCL-15、オリエンターゼ22BF、アロアーゼXA-10、エンチロンSA、ベイクザイムPPU95.000、ベイクザイムB500、ポーラザイム、プロテアーゼM「アマノ」G、コクラーゼ・P、アクチナーゼAS、グリンドアミルPR59、グリンドアミルPR43、フレーバーザイム、プロメタックス、ノボラン、VERON W、プロテアーゼAL、マグナックスMT、ソフターゲンM2、コルプリン、フロマーゼ、名糖レンネット、名糖レンネットスーパー、マキシレンなどが挙げられる。
【0025】
本発明のアレルギー抑制剤は、上記の甲殻類から抽出したエキスを含んでいても良いし、該エキスから分画した活性成分であるタンパク質を含む画分又は該エキスから部分精製した活性成分若しくは精製した活性成分を含むものでもよい。前記の活性成分を含む画分は、例えば、上記のようにタンパク質分解酵素を用いての酵素処理、溶媒抽出により得られたエキスから得ることができる。例えば、エキスからイオン交換クロマトグラフィーにより特定の等電点を有するタンパク質を得ることにより、又はゲルろ過クロマトグラフィーにより特定の分子量を有するタンパク質を得ることにより、本発明のアレルギー抑制剤の活性成分を得ることができる。例えば、該活性成分は10mMのNaPB(リン酸ナトリウム緩衝液)で平衡化した第4級アンモニウム基をリガンドとする陰イオン交換樹脂に上記の甲殻類エキスを添加した後、塩化ナトリウムを含む緩衝液において、塩化ナトリウムの濃度を変えてグラジエント溶出した場合に、塩化ナトリウムが0.5M〜1Mの濃度範囲の際に溶出される画分に含まれる。また、前記活性成分は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分子量を測定した場合の分子量が29kDa〜45kDaのタンパク質である。
【0026】
本発明のアレルギー抑制剤に活性成分(有効成分)として含まれる成分は、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有し、その結果アレルギー反応を抑制する。本発明は上記活性成分を含むIL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤又はIgG1産生抑制剤も包含する。
【0027】
本発明のアレルギー抑制剤の形態は特に限定されない。例えば、粉末、顆粒、錠剤、シロップ、注射剤、点滴剤、散剤、座剤、懸濁剤、軟膏剤などが挙げられる。本発明の該組成物は、経口で投与してもよく、また静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与等の非経口で投与してもよい。該アレルギー抑制剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤等を含んでいても良い。賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などがそれぞれ挙げられる。本発明のアレルギー抑制剤は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中甲殻類エキス又はエキス由来の活性成分が0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%程度含まれている。
【0028】
投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定され、1日1回又は数回に分けて投与すればよい。
【0029】
また、本発明を飲食物に含ませることによってその食品を抗アレルギー機能性飲食品にすることができるが、対象となる飲食品の種類は、これらの活性成分の抗アレルギー作用が阻害されないものであれば特に限定されない。例えば、菓子・パン類;穀粉・麺類;水産加工品;農産・林産加工食品;畜産加工品;乳・乳製品;油脂・油脂加工品;酒類;飲料;調味料;調理冷凍食品;レトルト食品;インスタント食品;食品素材などが挙げられ、水産加工品では、素干し品;塩乾品;煮干し品;焼き干し品;みりん干し;魚介せんべいなどの調味乾燥品;魚卵塩蔵品などの塩蔵品;甘露煮、しぐれ煮、角煮などの佃煮;焼き加工品;茹で加工品;魚介味噌などの調味加工品;蒸しかまぼこ、焼きかまぼこ、揚げかまぼこ、茹でかまぼこ、風味かまぼこ、包装かまぼこ、細工かまぼこ、燻製かまぼこなどのかまぼこ;燻製、醤油漬、味噌漬、粕漬、酢漬、麹漬などの漬け物;かつお塩辛、うに塩辛、いか塩辛などの塩辛;缶詰;瓶詰;わかめ加工品、のり加工品、昆布加工品、寒天加工品などの藻類加工品;魚醤油;エキス製品などが挙げられる。
【0030】
本発明の飲食品は、健康飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等を含む。ここで、特定保健用飲食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする飲食品をいう。これらの飲食品には、例えば、アレルギーの症状を緩和する、花粉症の症状を緩和する、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する、アレルギーが気になる方の食品、などの表示が付されていてもよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を記載して本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定的に解釈されることはない。
【0032】
実施例1 甲殻類エキスの調製
サンプル1は以下の通りに調製した。
【0033】
ミドリガニ(Carcinus maenas)を破砕し抽出溶媒として水を加え、タンパク質分解酵素であるパパインで酵素処理してタンパク質画分を可溶化した。次いで、スクリュープレスを用いて、キチンやグルコサミンを含む殻などの不溶成分を除去した後、加熱により殺菌及び酵素を失活させ濃縮した。
【0034】
サンプル2は以下の通りに調製した。
【0035】
韓国ワタリガニ(Portunus trituberculata)を破砕し抽出溶媒として水を加え、タンパク質分解酵素であるアルカラーゼで酵素処理してタンパク質画分を可溶化した。次いで、スクリュープレスを用いて、キチンやグルコサミンを含む殻などの不溶成分を除去した後、加熱により殺菌及び酵素を失活させ濃縮した。以降の検討に際しては、サンプル1及びサンプル2について、分画分子量100の透析膜で脱塩処理を行い、10 mMのリン酸ナトリウム緩衝液(以降NaPBと記載)に可溶化したものをサンプルとして用いた。
【0036】
実施例2 ヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験
ヒト骨髄腫細胞株U266細胞を37℃、5% CO2、100%湿度の条件下で培養した。培養培地は、10%のウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;以降FBSと記載)を含むERDF培地(極東製薬工業(株)製)を用いた。継代時には、2×105 cells/mlとなるよう細胞を蒔きこみ、2日から3日の間隔で培地交換を行った。IgE産生抑制活性評価試験では、ERDF培地に5μg/mlのインスリン、20μg/mlのトランスフェリン、20μMのエタノールアミン、25 nMの亜セレン酸ナトリウム(Sodium selenite)と、被験サンプル又はコントロール群には10 mMリン酸緩衝液を添加して1日間培養したのち、培養上清を採取し、培養上清中に分泌されたIgE量をELISA法により定量した。
【0037】
ELISA法による定量は次の様に行った。1次抗体溶液(抗-ヒトIgE抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で1晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、0.05%のTween 20を含むリン酸緩衝液(以降PBS-Tと記載)で96 wellのプレートを2回洗浄した後、1.0%のウシ血清アルブミン(以降BSAと記載)を含むリン酸緩衝液を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、96 wellのプレートをPBS-Tで3回洗浄し、培養上清又は標準品溶液を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、2次抗体溶液(抗-ヒトIgE-ビオチン結合体 と1.0 %のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37 ℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2 を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、培養上清中に分泌されるIgE量を算出した。
【0038】
その結果、図1に示す通り、コントロール群に比べて被験サンプルを添加したいずれの群においても、その添加したタンパク質濃度依存的にIgE産生量が低下したことから、これらエキスを添加することによりIgEの産生は抑制されることが確認された。
【0039】
実施例3 マウスを用いたアレルギー抑制活性評価試験
7〜8週齢のBALB/cマウス(メス)に、被験サンプルとして実施例1で調製したサンプル1を原液(1/1)、あるいは10 mMリン酸緩衝液を用いて1/20又は1/400に希釈したものを25μl/尾/日で連続経口投与した。コントロール群には10 mMリン酸緩衝液を同量投与した。サンプル投与開始後7日目に、アルミニウムアジュバントと共に0.1 mg/尾の卵白アルブミン(以降OVAと記載)を腹腔内投与し、2週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫の7日後に屠殺して採血を行うと共に脾臓細胞を採取した。採血した血液中に含まれる総IgE量、総IgG1量、OVA特異的IgE量、OVA特異的IgG1量はELISA法により定量した。
【0040】
血中の総IgE量及び総IgG1量の定量は次の様に行った。まず、1次抗体溶液(抗-マウスIgEラット抗体又は抗-マウスIgG1ヤギ抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で1晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで96 wellのプレートを2回洗浄し、1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、96 wellのプレートをPBS-Tで3回洗浄し、血液サンプル又は標準品溶液を添加し、37 ℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、2次抗体溶液(抗-マウスIgEラット抗体-ビオチン結合体又は抗-マウスIgG1ウサギ抗体-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415nmの吸光度を測定して、血液中に含まれる総IgE量、総IgG1量の測定を行った。
【0041】
血中OVA特異的IgE量の測定は、DSファーマバイオメディカル(株)製のマウスOVA特異的IgE測定用試薬を用いて使用説明書に従って実施した。
【0042】
血中OVA特異的IgG1量の測定は、次に記すindirect ELISA法を用いて測定した。まず、リン酸緩衝液で希釈したOVAを96wellのプレートに添加して4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、リン酸緩衝液で洗浄し、ブロックエース(DS ファーマバイオメディカル(株)製)を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、血液サンプルを添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、2次抗体溶液(抗-マウスIgG1ウサギ抗体-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH 4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、血液中に含まれるOVA特異的IgG1量を測定した。
【0043】
その結果、まず図2に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中総IgE量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中総IgE量は低下し、また、1/1濃度においては有意差(P< 0.05)をもって血中総IgE量が低下したことから、本エキスを摂取することによって血中総IgE量は抑制されることが確認された。
【0044】
次いで図3に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中OVA特異的IgE量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中OVA特異的IgE量は低下したことから、エキスを摂取することによって血中OVA特異的IgEは抑制されることが確認された。
【0045】
血中総IgG1量については図4に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中総IgG1量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次にエキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて血中総IgG1量は低下したことから、本エキスを摂取することによって血中総IgG1量は抑制されることが確認された。
【0046】
血中OVA特異的IgG1量については図5に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中OVA特異的IgG1量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中OVA特異的IgG1量は低下したことから、本エキスを摂取することによって血中OVA特異的IgG1量は抑制されることが確認された。
【0047】
実施例4 マウス脾臓細胞を用いた評価試験
次に、実施例3で用いたBALB/cマウスの脾臓組織から採取した脾臓細胞より、セパゾールRNA I Superを用いてmRNAを調製した後、RT-PCR法を用いて脾臓細胞中のIgE mRNA、IgG1 mRNA、IL-4 mRNA量の測定を行った。PCR反応はABI StepOnePlus Real-time PCR systemを用いて、変性反応を95℃で15秒間、アニーリング及び伸長反応を60 ℃で60秒間行い、これを30サイクル繰り返して行った。mRNA発現量はDNA結合色素としてSYBER Green Iを用いて検出し内部標準としてβ-アクチンを用いて補正を行った。PCR反応溶液の組成を表1、プライマー配列を表2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
更に、実施例3で用いたBALB/cマウスの脾臓組織から採取した脾臓細胞を5%のFBSと2μg/mlのコンカナバリンAを含むRPMI1640培地(日水製薬(株)製)を用いて5% CO2、37℃、100%湿度の条件下で培養し、脾臓細胞の培養上清中に含まれるIL-4量を次に記すサンドイッチELISA法を用いて測定した。
【0051】
1次抗体溶液(抗-マウスIL-4ラット抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、リン酸緩衝液で洗浄しブロックエースを添加して37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し培養上清又は標準品溶液を添加して室温で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し2次抗体溶液(抗-マウスIL-4-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加して室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄しストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加して室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、脾臓細胞から培養上清中に分泌されるIL-4量を算出した。
【0052】
結果、図6及び図7の示す通り、本エキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて脾臓細胞におけるIgE mRNA及びIgG1 mRNA発現レベルが低下したことから、本エキスを摂取することによって遺伝子レベルにおいてもIgE及びIgG1の産生は抑制されることが確認された。
【0053】
また、図8に示す通り、本エキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて培養上清中に分泌されるIL-4量が低下した。更に図9に示す通り、本エキスを1/1又は1/20濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて脾臓細胞におけるIL-4 mRNA発現レベルが低下したことから、本エキスを摂取することによって、タンパク質レベルだけではなく遺伝子レベルにおいてもIL-4の産生が抑制されることが確認された。
【0054】
実施例5 活性成分の精製
実施例1で調製した被験サンプル1を10 mMのNaPBで平衡化した第4級アンモニウム基をリガンドとする陰イオン交換樹脂(東ソー(株)製TOYOPEARL SuperQ-650M)に供した。非吸着画分を洗浄した後、1 Mの塩化ナトリウムを含む緩衝液(以降NaCl)を用いてグラジエント溶出を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて溶出されるタンパク質の測定を行った。その結果、図10に示す通り、1、2、3、4、5、6、7、8のフラクションを得た。得られた分画物について、実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図11に示す通り0.5 Mから1 MのNaClで溶出したフラクション7においてIgEの産生が抑制された。そこで次に、このIgEの産生が抑制されたフラクション7を、タンパク質の排除限界分子量が1×105、カラムサイズが直径7.5 mm、長さ30 cmのゲル濾過カラム(東ソー(株)製G3000SW)に供し、10 mMのNaPBを移動相として用いて分画を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて分画されるタンパク質の測定を行った。その結果、図12に示す通り、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIIIのフラクションを得た。得られた分画物について実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図13に示す通り、保持時間が5分から15分程度のフラクションIIIにおいてIgEの産生が抑制された。
【0055】
そこで、このフラクションIIIを、再度、タンパク質の排除限界分子量が1×105、カラムサイズが直径7.5 mm、長さ60 cmのゲル濾過カラム(東ソー(株)製G3000SWXL)に供し、10 mMのNaPBを移動相として用いて分画を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて分画されるタンパク質の測定を行った。その結果、図14に示す通り、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]のフラクションを得た。得られた分画物について、実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図15に示す通り保持時間が10分から30分程度のフラクション[3]においてコントロールに比べてIgEの産生が強く抑制された。得られたフラクション[3]は、図14に示す通りほぼ左右対称のシングルピークであることから単一に調製されていると考えられた。更に、このフラクション[3]についてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った後、タンパク質の蛍光染色剤であるFlamingoゲルステイン試薬(Bio-Rad社製)を用いて染色を行ったところ、図16に示す通り分子量29 kDaから45 kDaの間にシングルバンドが確認され、活性成分は分子量29 kDaから45 kDaの間のタンパク質であることが考えられた。
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は新規のアレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活などの変化に伴って、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、接触過敏症、食物アレルギーといったアレルギー性疾患患者が急増している。従来、アレルギー疾患の治療においては、抗ヒスタミン剤やステロイド剤などの薬剤が対症療法的に処方されてきたが、これらの薬剤は長期連用による副作用が大きいという問題があった。そこで、アレルギー症状を軽減、抑制、あるいは予防でき、かつ日常の食生活に取り入れることの出来る、安全で容易に製造し得る素材の開発が望まれていた。
【0003】
ところで、インターロイキン(IL)-4はヒト又は動物の免疫応答細胞であるTリンパ球より産生される物質であり、Bリンパ球に作用して免疫グロブリン(Ig)EやIgG 1といった抗体の産生を増強すると共に、炎症部位への炎症性細胞の浸潤を促進する作用を有することが見出されている。
【0004】
また、IgEは花粉症、アレルギー性の眼炎及び鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息など様々なアレルギー性疾患の患者に多く見出される抗体であり、これらアレルギー性疾患の発症に深く関与していることが古くから知られている。IgEは肥満細胞に存在するIgEレセプターに結合し、IgEが結合した肥満細胞は、体内に侵入したアレルギー物質、すなわちアレルゲンのIgEへの結合によって、ヒスタミンなどの炎症性化学物質を遊離する。ヒスタミンなどの炎症性化学物質の遊離は、様々なアレルギー症状、すなわち、かゆみ、紅斑、くしゃみ、鼻水などの症状を引き起こす。
【0005】
さらにIgG1は、ヒト免疫グロブリンの70〜75%を占めるIgGの中でも約66 %を占め、食物アレルギーの原因になることが報告されている。また、IgG1による食物アレルギーはIgEの引き起こす即効性の食物アレルギーと比べると遅発性であることが知られている。
【0006】
よって、これらアレルギー症状を引き起こす要因となるIL-4やIgE、IgG1の産生を抑制する効果を調べることにより、アレルギー抑制効果を確認することが可能である。
【0007】
IL-4の産生を抑制する物質としては、IPD1151Tに代表されるスルホニウム誘導体(非特許文献1及び2等を参照)や植物抽出物(特許文献1を参照)など、IgEの産生を抑制する物質としては、乳酸菌(特許文献2を参照)や植物抽出物(特許文献3を参照)などが知られている。また、IgG1の産生を抑制する物質としては乳酸菌(特許文献4を参照)などが報告されている。
【0008】
その他、アレルギー抑制作用を有する物質として、例えば、果物(非特許文献3及び4等を参照)、海藻(特許文献5〜8を参照)などが知られている。エビやカニ等の甲殻類を原料素材として用いたアレルギー抑制剤については、甲殻類の殻に含まれるキチンにおいて血管透過性抑制活性を指標としたアレルギー抑制作用が(特許文献9を参照)、キチンの構成糖であるグルコサミンにおいてIgE産生抑制活性を指標としたアレルギー抑制作用が報告されているが(特許文献10を参照)、キチンやグルコサミンなどを含む殻成分を除いた部分を原料として用いたアレルギー抑制作用については未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-279491号公報
【特許文献2】特許第4212838号公報
【特許文献3】特許第1912470号公報
【特許文献4】特許第4064480号公報
【特許文献5】特開平11-21247号公報
【特許文献6】特開平10-72362号公報
【特許文献7】特許第4012977号公報
【特許文献8】特許第3066484号公報
【特許文献9】特開2003-55232号公報
【特許文献10】特許第4178584号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Japan. J. Pharmacol. 61. 27-30(1993)
【非特許文献2】Japan. J. Pharmacol. 61. 31-39(1993)
【非特許文献3】Biosci. Biotechnol. Biovhem., 62(7), 1284-1289, 1998
【非特許文献4】International Journal of Molevular Medicine 17: 511-515, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者らは、甲殻類より抽出したエキスを利用することで、日常の食生活に取り入れることの出来る、安全で容易に製造し得る新規のアレルギー抑制剤、IL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤、IgG1産生抑制剤を提供することを課題として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意検討を行った結果、本発明者らは、エビやカニといった甲殻類より抽出したエキスを用いることによって課題を解決することが出来ることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は甲殻類より抽出したエキスを活性成分として、あるいは甲殻類より抽出したエキスから精製した活性成分を含有することを特徴とする、アレルギー反応に関与するIL-4やIgE、IgG1の産生を抑制し、アレルギー症状の軽減、治療又は予防するアレルギー抑制剤を提供するものである。
【0013】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有するアレルギー抑制剤。
[2] 甲殻類がカニ類又はエビ類である、[1]のアレルギー抑制剤。
[3] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有する、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有する、[1]又は[2]のアレルギー抑制剤。
[4] 甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスに含まれる、少なくとも分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を活性成分として含有する、[1]〜[3]のいずれかのアレルギー抑制剤。
[5] エキスに含まれない殻成分がキチン及びグルコサミンである、[1]〜[4]のいずれかのアレルギー抑制剤。
[6] [1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤を含む医薬。
[7] [1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤を含む飲食物。
[8] 甲殻類を丸ごと粉砕し、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理した原料から抽出した、キチンやグルコサミンを含む殻成分を除去し調製することを含む、[1]〜[5]のいずれかのアレルギー抑制剤の製造方法。
[9](i) 甲殻類を丸ごと粉砕するか、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理する工程、
(ii) 工程(i)で得られた原料を溶媒を用いて抽出する工程、
(iii ) 工程(ii)で得られた抽出物からキチンやグルコサミンを含む殻成分を除去する工程、
(iv) 工程(iii)で得られた抽出物をイオンクロマトグラフィーで分画する工程、
(v) 工程(iv)で得られた画分をゲル濾過で分画する工程、
を含む分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を含むアレルギー抑制剤を製造する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、甲殻類より経口摂取可能な新規なアレルギー抑制剤を得ることができ、そのままあるいは医薬品や飲食物に含有することにより利用することが出来る。このアレルギー抑制剤又はアレルギー抑制剤を含む医薬品や飲食物を経口摂取することによって、アレルギー反応に関与するIL-4やIgE、IgG1の産生が抑制され、アレルギー症状の軽減、抑制、予防が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】甲殻類エキスによるヒト骨髄腫細胞株U266細胞のIgE産生抑制活性評価試験の結果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図2】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中の総IgE量を示す図である。
【図3】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中のOVA特異的IgE量を示す図である。
【図4】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中の総IgG1量を示す図である。
【図5】マウスを用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、マウス血中のOVA特異的IgG1量を示す図である。
【図6】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IgE mRNA発現レベルを示す図である。
【図7】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IgG1 mRNA発現レベルを示す図である。
【図8】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制剤活性評価試験の結果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIL-4量を示す図である。
【図9】マウス脾臓細胞を用いたアレルギー抑制剤のアレルギー抑制活性評価試験の結果を示す図であり、IL-4 mRNA発現レベルを示す図である。
【図10】アレルギー抑制剤の活性成分の陰イオンクロマトグラフィーによる分画の結果を示す図である。
【図11】アレルギー抑制剤の活性成分の陰イオンクロマトグラフィーにより分画した画分のアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図12】陰イオンクロマトグラフィーにより分画したアレルギー抑制剤の活性成分のゲル濾過による分画の結果を示す図である。
【図13】陰イオンクロマトグラフィーにより分画したアレルギー抑制剤の活性成分のゲル濾過により分画したフラクションのアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図14】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した結果を示す図である。
【図15】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した画分のアレルギー抑制効果を示す図であり、培養上清中に分泌されたIgE量を示す図である。
【図16】陰イオンクロマトグラフィー及びゲル濾過で分画したアレルギー抑制剤の活性成分をさらにゲル濾過で分画した画分のSDS-PAGEの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のアレルギー抑制剤を得るために使用する甲殻類の種類は特に制限されない。甲殻類は節足動物甲殻亜門に属する総称であり、鰓脚綱、ムカデエビ綱、カシラエビ綱、顎脚綱、軟甲綱などが挙げられる。好ましい甲殻類として、軟甲網真軟甲亜網ホンエビ上目十脚目に含まれる動物群が挙げられ、さらに好ましくはエビ類あるいはカニ類が挙げられる。
【0017】
エビ類では、例えばクルマエビ、フトミゾエビ、クマエビ、タイショウエビなどのクルマエビ類、ヨシエビ、シバエビ、アカエビ、トラエビなどのシバエビ類、サクラエビなどのサクラエビ類、テナガエビ、スジエビなどのテナガエビ類、ホッカイエビ、テッポウエビ、ホッコクアカエビなどの小エビ類、イセエビ、ハコエビなどのイセエビ類、ウチワエビ類、ザルガニ類が挙げられる。
【0018】
また、カニ類では、カイカムリなどのカイカムリ類、コウナガカムリ類、トゲカイカムリ類、マメヘイケガニ類、ツノダシマメヘイケガニ類、ホモラ類、ミズヒキガニ類、アサヒガニなどのアサヒガニ類、ヘイケガニなどのヘイケガニ類、メガネカラッパ、トラフカラッパなどのカラッパ類、キンセンガニなどのキンセンガニ類、マメコブシガニ、ツノナガコブシなどのコブシガニ類、タラバガニ、ハナサキガニ、アブラガニなどのイバラガニ類、ズワイガニ、タカアシガニ、モズクショイ、イソクズガニなどのクモガニ類、ヤワラガニ類、アルイシガニなどのヒシガニ類、ゴカクガニ類、ケガニ(オオクリガニ)、クリガニなどのクリガニ類、イチョウガニなどのイチョウガニ類、ヒゲガニ類、ゴイシガニ類、ガザミ、イシガニ、タイワンガザミ、ノコギリガザミ、アオガニ、ヒラツメガニ、ミドリガニ、カンコクワタリガニなどのワタリガニ類、ムツアシガニ類、オウギガニ、スベスベマンジュウガニなどのオウギガニ類、イオオウギガニ類、ケブカガニ類、サンゴガニ類、エンコウガニ類、ミマミオカガニ(オオオカガニ)などのオカガニ類、モズクガニ、イワガニ、アカテガニ、ベンケイガニ、イソガニなどのイワガニ類、ミナミコメツキガニなどのミナミコメツキガニ類、オオシロピンノ、クロピンノ、オヨギピンノなどのカクレガニ類、ワガガニなどのサワガニ類、ミナミサワガニ類、スナガニ、シオマネキ、コメツキガニ、オサガニなどのスナガニ類、ムツハアリアケガニ類、イトアシガニ類、ユウレイガニ類、サンゴヤドガニ類、ユノハナガニなどのユノハナガニ類が挙げられる。
【0019】
本発明のアレルギー抑制剤が含有するエキスは、甲殻類を丸ごと粉砕した原料からそのまま適切な溶媒を用いて抽出したエキス、甲殻類を丸ごと粉砕した原料をタンパク質分解酵素により酵素処理しタンパク質を可溶化した後、適切な溶媒を用いて抽出したエキス、甲殻類を丸ごと粉砕した原料を適切な溶媒を用いて抽出し、さらにタンパク質分解酵素により酵素処理しタンパク質を可溶化したエキスなどが挙げられるが特に制限されない。好ましくはエビ類あるいはカニ類を粉砕し、タンパク質分解酵素を用いて酵素処理した後、適切な溶媒で抽出したエキスが挙げられる。本発明のエキスは、殻成分が除去されている。殻成分とは、甲殻類の殻に含まれるキチンやグルコサミン等の水不溶成分をいう。本発明において、キチンという場合キチン誘導体も含まれ、グルコサミンという場合グルコサミン誘導体も含まれる。本発明において、タンパク質を可溶化し適切な溶媒を用いてエキスを抽出しており、該抽出工程の工程で殻成分を除去することができる。殻成分を除去するためには、甲殻類の殻部分を除去し、残りの部分からエキスを抽出してもよい。
【0020】
本発明のアレルギー抑制剤を得る方法において、甲殻類から活性成分を抽出する方法は特に限定されない。例えば、抽出に用いる原料はそのまま用いてもよいし粉砕してからでもよく、抽出効率を向上させるため酵素処理による分解工程を行ってもよい。そして、キチンやグルコサミンなどを含む殻成分を除去するため、濾過や圧縮分離、遠心分離などを利用して不溶物残渣とエキスの固液分離を行う。更に、真空濃縮や、凍結濃縮、膜濃縮などを用いてエキスを濃縮してもよい。
【0021】
また、本発明の甲殻類のエキスを含むアレルギー抑制剤は殻成分を含まないので、殻に含まれるキチンやグルコサミンなどを濃塩酸や濃アルカリによる加水分解などによって抽出することはなく、水や中性付近の緩衝液などの水性溶媒で殻成分が含まれないように抽出すればよい。
【0022】
本発明のアレルギー抑制剤が含む活性成分を含むエキスの抽出に用いる抽出溶媒は特に限定されない。例えば、水や塩類を含む水溶液や、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、ヘキサンなどのアルカン類など有機系溶媒などが挙げられるが、好ましくは水、エチルアルコール、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0023】
なお、キチンやグルコサミンは濃塩酸や濃アルカリで加水分解することで大幅に分子量が低下した結果溶解することが可能となるため、本発明で採用する上記の濃塩酸や濃アルカリを用いない調製方法によって抽出されてくることはない。
【0024】
本発明において、使用するタンパク質分解酵素は特に限定されない。例えば、ニューラーゼF3G、ニューラーゼA、モルシンF、スミチームAP、デナプシン2P、オリエンターゼ20A、テトラーゼS、ブリューワーズクラレックス、プロテアーゼYP-SS、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW-40、ブロメラインF、プロモッド223LP、スミチームLP、スミチームFP、スミチームLPL、プロチンSD-NY-10、プロチンSD-PC-10F、ブリューワーズプロテアーゼ、アクセラザイムNP50.000、精製パパイン、食品用精製パパイン、デナチームAP、PTN、ニュートラーゼ、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ90N、オリエンターゼONS、Papain F.、trypsin 4.0 T、COROLASE N、VERON L10、COROLASE L10、COROLASE 7089、パンチダーゼNP-2、パンチダーゼP、アロアーゼAP-10、アロアーゼNP-10、アロアーゼNS、エンチロンNBS、パパイン、プロテックス7L、プロテックス14L、サモアーゼPC10F、プロチンSD-AC-10F、プロチンSD-AY-10、プロレザーFG-F、プロテアーゼP「アマノ」3G、アルカリプロテアーゼGL、プロテックス6L、プロテックス89L、ピュラフェクト、ピュラフェクトOX、プロペラーゼ、プロテックスOXG、プロテックス40L、スミチームMP、デルボラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、アルカラーゼ、クリアーレンズプロ、エバラーゼ、カンナーゼ、ノボザイムFM、ビオプラーゼOP、ビオプラーゼAL-15FG、ビオプラーゼ30G、ビオプラーゼAPL-30、ビオプラーゼXL-416F、ビオプラーゼSP-20FG、ビオプラーゼSP-4FG、プロテアーゼCL-15、オリエンターゼ22BF、アロアーゼXA-10、エンチロンSA、ベイクザイムPPU95.000、ベイクザイムB500、ポーラザイム、プロテアーゼM「アマノ」G、コクラーゼ・P、アクチナーゼAS、グリンドアミルPR59、グリンドアミルPR43、フレーバーザイム、プロメタックス、ノボラン、VERON W、プロテアーゼAL、マグナックスMT、ソフターゲンM2、コルプリン、フロマーゼ、名糖レンネット、名糖レンネットスーパー、マキシレンなどが挙げられる。
【0025】
本発明のアレルギー抑制剤は、上記の甲殻類から抽出したエキスを含んでいても良いし、該エキスから分画した活性成分であるタンパク質を含む画分又は該エキスから部分精製した活性成分若しくは精製した活性成分を含むものでもよい。前記の活性成分を含む画分は、例えば、上記のようにタンパク質分解酵素を用いての酵素処理、溶媒抽出により得られたエキスから得ることができる。例えば、エキスからイオン交換クロマトグラフィーにより特定の等電点を有するタンパク質を得ることにより、又はゲルろ過クロマトグラフィーにより特定の分子量を有するタンパク質を得ることにより、本発明のアレルギー抑制剤の活性成分を得ることができる。例えば、該活性成分は10mMのNaPB(リン酸ナトリウム緩衝液)で平衡化した第4級アンモニウム基をリガンドとする陰イオン交換樹脂に上記の甲殻類エキスを添加した後、塩化ナトリウムを含む緩衝液において、塩化ナトリウムの濃度を変えてグラジエント溶出した場合に、塩化ナトリウムが0.5M〜1Mの濃度範囲の際に溶出される画分に含まれる。また、前記活性成分は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分子量を測定した場合の分子量が29kDa〜45kDaのタンパク質である。
【0026】
本発明のアレルギー抑制剤に活性成分(有効成分)として含まれる成分は、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有し、その結果アレルギー反応を抑制する。本発明は上記活性成分を含むIL-4産生抑制剤、IgE産生抑制剤又はIgG1産生抑制剤も包含する。
【0027】
本発明のアレルギー抑制剤の形態は特に限定されない。例えば、粉末、顆粒、錠剤、シロップ、注射剤、点滴剤、散剤、座剤、懸濁剤、軟膏剤などが挙げられる。本発明の該組成物は、経口で投与してもよく、また静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与等の非経口で投与してもよい。該アレルギー抑制剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤等を含んでいても良い。賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などがそれぞれ挙げられる。本発明のアレルギー抑制剤は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中甲殻類エキス又はエキス由来の活性成分が0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%程度含まれている。
【0028】
投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定され、1日1回又は数回に分けて投与すればよい。
【0029】
また、本発明を飲食物に含ませることによってその食品を抗アレルギー機能性飲食品にすることができるが、対象となる飲食品の種類は、これらの活性成分の抗アレルギー作用が阻害されないものであれば特に限定されない。例えば、菓子・パン類;穀粉・麺類;水産加工品;農産・林産加工食品;畜産加工品;乳・乳製品;油脂・油脂加工品;酒類;飲料;調味料;調理冷凍食品;レトルト食品;インスタント食品;食品素材などが挙げられ、水産加工品では、素干し品;塩乾品;煮干し品;焼き干し品;みりん干し;魚介せんべいなどの調味乾燥品;魚卵塩蔵品などの塩蔵品;甘露煮、しぐれ煮、角煮などの佃煮;焼き加工品;茹で加工品;魚介味噌などの調味加工品;蒸しかまぼこ、焼きかまぼこ、揚げかまぼこ、茹でかまぼこ、風味かまぼこ、包装かまぼこ、細工かまぼこ、燻製かまぼこなどのかまぼこ;燻製、醤油漬、味噌漬、粕漬、酢漬、麹漬などの漬け物;かつお塩辛、うに塩辛、いか塩辛などの塩辛;缶詰;瓶詰;わかめ加工品、のり加工品、昆布加工品、寒天加工品などの藻類加工品;魚醤油;エキス製品などが挙げられる。
【0030】
本発明の飲食品は、健康飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等を含む。ここで、特定保健用飲食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする飲食品をいう。これらの飲食品には、例えば、アレルギーの症状を緩和する、花粉症の症状を緩和する、アトピー性皮膚炎の症状を緩和する、アレルギーが気になる方の食品、などの表示が付されていてもよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を記載して本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定的に解釈されることはない。
【0032】
実施例1 甲殻類エキスの調製
サンプル1は以下の通りに調製した。
【0033】
ミドリガニ(Carcinus maenas)を破砕し抽出溶媒として水を加え、タンパク質分解酵素であるパパインで酵素処理してタンパク質画分を可溶化した。次いで、スクリュープレスを用いて、キチンやグルコサミンを含む殻などの不溶成分を除去した後、加熱により殺菌及び酵素を失活させ濃縮した。
【0034】
サンプル2は以下の通りに調製した。
【0035】
韓国ワタリガニ(Portunus trituberculata)を破砕し抽出溶媒として水を加え、タンパク質分解酵素であるアルカラーゼで酵素処理してタンパク質画分を可溶化した。次いで、スクリュープレスを用いて、キチンやグルコサミンを含む殻などの不溶成分を除去した後、加熱により殺菌及び酵素を失活させ濃縮した。以降の検討に際しては、サンプル1及びサンプル2について、分画分子量100の透析膜で脱塩処理を行い、10 mMのリン酸ナトリウム緩衝液(以降NaPBと記載)に可溶化したものをサンプルとして用いた。
【0036】
実施例2 ヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験
ヒト骨髄腫細胞株U266細胞を37℃、5% CO2、100%湿度の条件下で培養した。培養培地は、10%のウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;以降FBSと記載)を含むERDF培地(極東製薬工業(株)製)を用いた。継代時には、2×105 cells/mlとなるよう細胞を蒔きこみ、2日から3日の間隔で培地交換を行った。IgE産生抑制活性評価試験では、ERDF培地に5μg/mlのインスリン、20μg/mlのトランスフェリン、20μMのエタノールアミン、25 nMの亜セレン酸ナトリウム(Sodium selenite)と、被験サンプル又はコントロール群には10 mMリン酸緩衝液を添加して1日間培養したのち、培養上清を採取し、培養上清中に分泌されたIgE量をELISA法により定量した。
【0037】
ELISA法による定量は次の様に行った。1次抗体溶液(抗-ヒトIgE抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で1晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、0.05%のTween 20を含むリン酸緩衝液(以降PBS-Tと記載)で96 wellのプレートを2回洗浄した後、1.0%のウシ血清アルブミン(以降BSAと記載)を含むリン酸緩衝液を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、96 wellのプレートをPBS-Tで3回洗浄し、培養上清又は標準品溶液を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、2次抗体溶液(抗-ヒトIgE-ビオチン結合体 と1.0 %のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37 ℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2 を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、培養上清中に分泌されるIgE量を算出した。
【0038】
その結果、図1に示す通り、コントロール群に比べて被験サンプルを添加したいずれの群においても、その添加したタンパク質濃度依存的にIgE産生量が低下したことから、これらエキスを添加することによりIgEの産生は抑制されることが確認された。
【0039】
実施例3 マウスを用いたアレルギー抑制活性評価試験
7〜8週齢のBALB/cマウス(メス)に、被験サンプルとして実施例1で調製したサンプル1を原液(1/1)、あるいは10 mMリン酸緩衝液を用いて1/20又は1/400に希釈したものを25μl/尾/日で連続経口投与した。コントロール群には10 mMリン酸緩衝液を同量投与した。サンプル投与開始後7日目に、アルミニウムアジュバントと共に0.1 mg/尾の卵白アルブミン(以降OVAと記載)を腹腔内投与し、2週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫の7日後に屠殺して採血を行うと共に脾臓細胞を採取した。採血した血液中に含まれる総IgE量、総IgG1量、OVA特異的IgE量、OVA特異的IgG1量はELISA法により定量した。
【0040】
血中の総IgE量及び総IgG1量の定量は次の様に行った。まず、1次抗体溶液(抗-マウスIgEラット抗体又は抗-マウスIgG1ヤギ抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で1晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで96 wellのプレートを2回洗浄し、1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、96 wellのプレートをPBS-Tで3回洗浄し、血液サンプル又は標準品溶液を添加し、37 ℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、2次抗体溶液(抗-マウスIgEラット抗体-ビオチン結合体又は抗-マウスIgG1ウサギ抗体-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSA を含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415nmの吸光度を測定して、血液中に含まれる総IgE量、総IgG1量の測定を行った。
【0041】
血中OVA特異的IgE量の測定は、DSファーマバイオメディカル(株)製のマウスOVA特異的IgE測定用試薬を用いて使用説明書に従って実施した。
【0042】
血中OVA特異的IgG1量の測定は、次に記すindirect ELISA法を用いて測定した。まず、リン酸緩衝液で希釈したOVAを96wellのプレートに添加して4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、リン酸緩衝液で洗浄し、ブロックエース(DS ファーマバイオメディカル(株)製)を添加し、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、血液サンプルを添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、2次抗体溶液(抗-マウスIgG1ウサギ抗体-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し、0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH 4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し、反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、血液中に含まれるOVA特異的IgG1量を測定した。
【0043】
その結果、まず図2に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中総IgE量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中総IgE量は低下し、また、1/1濃度においては有意差(P< 0.05)をもって血中総IgE量が低下したことから、本エキスを摂取することによって血中総IgE量は抑制されることが確認された。
【0044】
次いで図3に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中OVA特異的IgE量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中OVA特異的IgE量は低下したことから、エキスを摂取することによって血中OVA特異的IgEは抑制されることが確認された。
【0045】
血中総IgG1量については図4に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中総IgG1量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次にエキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて血中総IgG1量は低下したことから、本エキスを摂取することによって血中総IgG1量は抑制されることが確認された。
【0046】
血中OVA特異的IgG1量については図5に示す通り、OVAによる感作を行わない無処置の群に比べてコントロール群の血中OVA特異的IgG1量は増加しており、アレルギー状態は問題なく惹起されていることが確認された。次に本エキスを摂取させた1/1、1/20、1/400濃度のいずれの群においてもコントロール群に比べて血中OVA特異的IgG1量は低下したことから、本エキスを摂取することによって血中OVA特異的IgG1量は抑制されることが確認された。
【0047】
実施例4 マウス脾臓細胞を用いた評価試験
次に、実施例3で用いたBALB/cマウスの脾臓組織から採取した脾臓細胞より、セパゾールRNA I Superを用いてmRNAを調製した後、RT-PCR法を用いて脾臓細胞中のIgE mRNA、IgG1 mRNA、IL-4 mRNA量の測定を行った。PCR反応はABI StepOnePlus Real-time PCR systemを用いて、変性反応を95℃で15秒間、アニーリング及び伸長反応を60 ℃で60秒間行い、これを30サイクル繰り返して行った。mRNA発現量はDNA結合色素としてSYBER Green Iを用いて検出し内部標準としてβ-アクチンを用いて補正を行った。PCR反応溶液の組成を表1、プライマー配列を表2に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
更に、実施例3で用いたBALB/cマウスの脾臓組織から採取した脾臓細胞を5%のFBSと2μg/mlのコンカナバリンAを含むRPMI1640培地(日水製薬(株)製)を用いて5% CO2、37℃、100%湿度の条件下で培養し、脾臓細胞の培養上清中に含まれるIL-4量を次に記すサンドイッチELISA法を用いて測定した。
【0051】
1次抗体溶液(抗-マウスIL-4ラット抗体を含む炭酸ナトリウム緩衝液)を96 wellのプレートに添加して4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション終了後、リン酸緩衝液で洗浄しブロックエースを添加して37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し培養上清又は標準品溶液を添加して室温で2時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄し2次抗体溶液(抗-マウスIL-4-ビオチン結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加して室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで洗浄しストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体溶液(ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体と1.0%のBSAを含むリン酸緩衝液)を添加して室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、PBS-Tで3回洗浄し0.6 mg/mlのABTSと0.03%のH2O2を含む0.05 Mのクエン酸緩衝液(pH4.0)を添加し発色反応を行った。発色後、1.5%のシュウ酸水溶液を添加し反応を停止した後、プレートリーダーを用いて415 nmの吸光度を測定して、脾臓細胞から培養上清中に分泌されるIL-4量を算出した。
【0052】
結果、図6及び図7の示す通り、本エキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて脾臓細胞におけるIgE mRNA及びIgG1 mRNA発現レベルが低下したことから、本エキスを摂取することによって遺伝子レベルにおいてもIgE及びIgG1の産生は抑制されることが確認された。
【0053】
また、図8に示す通り、本エキスを1/1濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて培養上清中に分泌されるIL-4量が低下した。更に図9に示す通り、本エキスを1/1又は1/20濃度で摂取させた群において、コントロール群に比べて脾臓細胞におけるIL-4 mRNA発現レベルが低下したことから、本エキスを摂取することによって、タンパク質レベルだけではなく遺伝子レベルにおいてもIL-4の産生が抑制されることが確認された。
【0054】
実施例5 活性成分の精製
実施例1で調製した被験サンプル1を10 mMのNaPBで平衡化した第4級アンモニウム基をリガンドとする陰イオン交換樹脂(東ソー(株)製TOYOPEARL SuperQ-650M)に供した。非吸着画分を洗浄した後、1 Mの塩化ナトリウムを含む緩衝液(以降NaCl)を用いてグラジエント溶出を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて溶出されるタンパク質の測定を行った。その結果、図10に示す通り、1、2、3、4、5、6、7、8のフラクションを得た。得られた分画物について、実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図11に示す通り0.5 Mから1 MのNaClで溶出したフラクション7においてIgEの産生が抑制された。そこで次に、このIgEの産生が抑制されたフラクション7を、タンパク質の排除限界分子量が1×105、カラムサイズが直径7.5 mm、長さ30 cmのゲル濾過カラム(東ソー(株)製G3000SW)に供し、10 mMのNaPBを移動相として用いて分画を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて分画されるタンパク質の測定を行った。その結果、図12に示す通り、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIIIのフラクションを得た。得られた分画物について実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図13に示す通り、保持時間が5分から15分程度のフラクションIIIにおいてIgEの産生が抑制された。
【0055】
そこで、このフラクションIIIを、再度、タンパク質の排除限界分子量が1×105、カラムサイズが直径7.5 mm、長さ60 cmのゲル濾過カラム(東ソー(株)製G3000SWXL)に供し、10 mMのNaPBを移動相として用いて分画を行い、波長280 nmにおける吸光度を用いて分画されるタンパク質の測定を行った。その結果、図14に示す通り、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]のフラクションを得た。得られた分画物について、実施例2と同様にヒト骨髄腫細胞株U266細胞を用いたIgE産生抑制活性評価試験を行ったところ、図15に示す通り保持時間が10分から30分程度のフラクション[3]においてコントロールに比べてIgEの産生が強く抑制された。得られたフラクション[3]は、図14に示す通りほぼ左右対称のシングルピークであることから単一に調製されていると考えられた。更に、このフラクション[3]についてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った後、タンパク質の蛍光染色剤であるFlamingoゲルステイン試薬(Bio-Rad社製)を用いて染色を行ったところ、図16に示す通り分子量29 kDaから45 kDaの間にシングルバンドが確認され、活性成分は分子量29 kDaから45 kDaの間のタンパク質であることが考えられた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有するアレルギー抑制剤。
【請求項2】
甲殻類がカニ類又はエビ類である、請求項1記載のアレルギー抑制剤。
【請求項3】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有する、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有する、請求項1又は2に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項4】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスに含まれる、少なくとも分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を活性成分として含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項5】
エキスに含まれない殻成分がキチン及びグルコサミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤を含む医薬。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤を含む飲食物。
【請求項8】
甲殻類を丸ごと粉砕し、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理した原料から抽出した、キチンやグルコサミンを含む殻成分を除去し調製することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤の製造方法。
【請求項1】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有するアレルギー抑制剤。
【請求項2】
甲殻類がカニ類又はエビ類である、請求項1記載のアレルギー抑制剤。
【請求項3】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスを活性成分として含有する、IL-4産生抑制作用、IgE産生抑制作用及びIgG1産生抑制作用からなる群から選択される少なくとも1つの作用を有する、請求項1又は2に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項4】
甲殻類より調製した殻成分を除去したエキスに含まれる、少なくとも分子量29 kDa〜45 kDaのタンパク質を活性成分として含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項5】
エキスに含まれない殻成分がキチン及びグルコサミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤を含む医薬。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤を含む飲食物。
【請求項8】
甲殻類を丸ごと粉砕し、又は甲殻類を丸ごと粉砕し酵素処理した原料から抽出した、キチンやグルコサミンを含む殻成分を除去し調製することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアレルギー抑制剤の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−178750(P2011−178750A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46709(P2010−46709)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000233620)株式会社マルハニチロ食品 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000233620)株式会社マルハニチロ食品 (34)
【Fターム(参考)】
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