説明

アロマターゼ活性化剤

【課題】肌トラブル等の症状の予防、改善、治療に有効なアロマターゼ活性化剤等を提供すること。
【解決手段】ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物を有効成分とするアロマターゼ活性化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロマターゼの活性を増強するアロマターゼ活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アロマターゼは、性ステロイドホルモン生合成経路の最終段階を触媒し、アンドロゲンからエストロゲンを生合成する、唯一のエストロゲン合成酵素として知られている。アロマターゼは、体内に広く分布するが、厳密な組織特異的発現調節を受けており、この発現調節機構は、I.1型(胎盤)、I.2型(胎盤)、I.3型(脂肪組織、乳がん)、I.4型(皮膚、脂肪組織、骨、胎児)、I.5型(胎児)、I.6型(骨)、I.7型(乳がん)、PII型(卵巣、脂肪組織、乳がん)、I.f型(脳)などの多種のタイプに分けることができる(非特許文献1)と考えられている。
【0003】
アロマターゼによって生合成されるエストロゲンは、一般的に女性ホルモンとも云われ、17β−エストラジオール、エストロン、エストリオール等の存在が知られている。
このエストロゲンは、子宮内膜の増殖(非特許文献2)、性機能の調節(非特許文献3)、骨代謝の調節(非特許文献3)、脂質代謝の調節(非特許文献2)、肌状態(非特許文献2)等様々な生理機能に関与している。
例えば、加齢(年齢の増加)や卵巣機能の低下等に伴って、体内のエストロゲン分泌能が低下してエストロゲンが欠乏し、更年期障害、性機能低下、自律神経失調症、脂質代謝異常、血管運動障害、骨粗しょう症、肌トラブル等の症状が現れることが知られている。
また、皮膚老化は、加齢や紫外線暴露、女性においてはエストロゲンの減少によって進行する。このうち、エストロゲンについては、ホルモン補充療法の結果などから、表皮・真皮厚の増加、皮膚水分量の増加、血行促進能、コラーゲンの増加、弾力性の改善、シワの抑制といった、肌の諸機能の改善効果があることが知られている(非特許文献4)。
このため、体内でのエストロゲンの産生能を高めることができれば、上記エストロゲン欠乏に起因する各種症状、例えば肌の諸機能の減退や皮膚の老化等の予防又は改善も可能であると考えられている。
【0004】
そこで、アロマターゼの活性を促進することによって、上記症状を改善する植物等に関して、種々のものが検討されている(特許文献1〜4)が、更なるアロマターゼ活性化剤が期待されている。
【0005】
ところで、ジンチョウゲ科ステレラ属植物の一種であるロウドク(根)の50%エタノール抽出物には、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子(HB−EGF)遺伝子発現促進作用(特許文献5)や脂肪分解促進作用(特許文献6)があることが知られている。
また、ツヅラフジ科チノスポラ属植物の一種であるキンカラン(塊根)の50%エタノール水溶液やエタノール加熱抽出物及び熱水抽出物には、ヒトβ3アドレナリン受容体アゴニスト作用、メラニン生成抑制作用(特許文献7)があることが知られている。
また、セリ科ハマゼリ属植物又はヤブジラミ属植物の一種であるジャショウシ(成熟果実)の95%エタノール抽出物には、発毛・育毛作用(特許文献8)があることが知られている。
また、モミニア科プネウム属植物の一種であるボルド(葉)の冷水抽出物には、ホスホリパーゼA2酵素阻害作用(特許文献9)があることが知られている。
また、トウダイグサ科トウゴマ属植物の一種であるヒマ(根)の80%エタノールやエタノール抽出物及び水抽出物には、テストステロン5α−レダクターゼ活性阻害作用(特許文献10)、メラニン産生抑制作用(特許文献11)があること、また、ヒマ(葉、茎、根)の50%エタノール水溶液抽出物には、抗酸化作用(特許文献12)があることが知られている。
また、クスノキ科サッサフラノス属植物の一種であるサッサフラスノキ(根皮、茎、葉)には、発汗作用、利尿作用、強壮作用があることや揮発油原料・香料として用いられていること、また、民間薬として胃痛、リューマチ、高血圧などの治療(非特許文献5)に用いられていることが知られている。
【0006】
しかしながら、これら植物に、アロマターゼ活性化作用があることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−343872号公報
【特許文献2】特開2005−343873号公報
【特許文献3】特開2008−63270号公報
【特許文献4】特開2008−81440号公報
【特許文献5】特開2008−266156号公報
【特許文献6】特開2005−60366号公報
【特許文献7】国際公開2005/082391号パンフレット
【特許文献8】特開2007−45770号公報
【特許文献9】特開2009−108104号公報
【特許文献10】特開2001−302528号公報
【特許文献11】特開2001−213757号公報
【特許文献12】特開2008−273978号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Regulation of aromatase expression in estrogen-responsive breast and uterine disease: From bench to treatment., Bulun SE, Lin Z, Imir G, Amin S, Demura M, Yilmaz B, Martin R, Utsunomiya H, Thung S, Gurates B, Tamura M, Langoi D, Deb S., Pharmacol Rev. 2005 Sep;57(3):359-83.
【非特許文献2】からだの科学 No 219 2001 日本評論社
【非特許文献3】女性ホルモンの作用と性差の出現 玉舎輝彦 著 金芳堂 2006年
【非特許文献4】Hormone replacement therapy and the skin., Brincat MP. Maturitas. 2000 May 29;35(2):107-17.、Biology of estrogens in skin: implications for skin aging., Verdier-Sevrain S, Bonte F, Gilchrest B. Exp Dermatol. 2006 Feb;15(2):83-94
【非特許文献5】Folk medical uses of plant foods in southern Appalachia, United States., Cavender A. J Ethnopharmacol. 2006 Nov 3;108(1):74-84.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性が高く、エストロゲン生成を促進させることができ、上記エストロゲン欠乏に起因する各種症状、特に肌トラブル症状の予防、改善又は治療に有効なアロマターゼ活性化剤又は皮膚老化予防若しくは改善剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、天然物由来であってアロマターゼ活性化作用を有する物質について鋭意研究を重ねた結果、ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物に、アロマターゼ、特に線維芽細胞に存在するアロマターゼを活性化する作用等があることを見出し、この知見により本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)のものである。
(1)ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物を有効成分とするアロマターゼ活性化剤。
(2)抽出物が、水抽出物、アルコール類抽出物、アルコール類−水混合液抽出物又はヘキサン抽出物である前記(1)記載のアロマターゼ活性化剤。
(3)ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物を有効成分とする皮膚老化予防又は改善剤。
(4)前記アロマターゼ活性化剤又は皮膚老化防止予防若しくは改善剤が、皮膚外用剤である前記(1)〜(3)記載のいずれか1つのアロマターゼ活性化剤又は皮膚老化予防若しくは改善剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアロマターゼ活性化剤又は皮膚老化予防若しくは改善剤は、天然由来であるので安全性が高く、エストロゲン生成を促進させることから、エストロゲン欠乏に起因する各種症状、特に肌トラブル症状の予防、改善又は治療の効果を発揮する医薬品又は化粧品等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いるロウドクとは、ジンチョウゲ科植物(Thymelaeacea)のStellera chamaejasme (狼毒);トウダイグサ科植物(Euphorbiaceae)のEuphorbia fischeriana(ヒロハタイゲキ、狼毒大戟)、Euphorbia ebracteolata(マルミノウルシ、月腺大戟);サトイモ科植物(Araceae)の Alocasia odora K. KOCH (クワズイモ)及びこれらの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(中薬大辞典 上海科学技術出版社・株式会社 小学館編集,株式会社 小学館 1985年発行)。このうち、Stellera chamaejasme、Euphorbia fischeriana及びEuphorbia ebracteolataが好ましい。
【0014】
本発明に用いるキンカランとは、ツヅラフジ(Menispermaceae)科植物のTinospora capillipes Gagnep.(金果欖);Tinospora sagittata (Oliv.) Gagnep.(セイギュウタン:青牛胆)及びこれらの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(中薬大辞典,上海科学技術出版社・株式会社 小学館編集,株式会社 小学館 1985年発行)。このうち、Tinospora sagittata (Oliv.) Gagnep.が好ましい。
【0015】
本発明に用いるジャショウシとは、セリ科植物(Umbelliferae)のCnidium monnieri Cusson(オカゼリ);Torilis japonica(ヤブジラミ);Torilis scabra(オヤブジラミ)及びこれらの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(中薬大辞典,上海科学技術出版社・株式会社 小学館編集,株式会社 小学館 1985年発行)。このうち、Cnidium monnieri Cussonが好ましい。
【0016】
本発明に用いるボルドとは、モミニア科植物(Monimiaceae)のPeumus boldus及びこの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(ハーブ大全,株式会社 小学館編集,株式会社 小学館 1990年発行)。
【0017】
本発明に用いるヒマとは、トウダイグサ科植物(Euphorbiaceae)のRicinus communis L.(トウゴマ:castor bean)及びこの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(中薬大辞典,上海科学技術出版社・株式会社 小学館編集,株式会社 小学館 1985年発行)。
【0018】
本発明に用いるサッサフラスノキとは、クスノキ科植物(Lauraceae)のSassafras officinale Nees(サッサフラスノキ:Sassafras Lvs)及びこの近縁植物から選ばれる少なくとも1種を意味する(THE PLANT-BOOK SECOND EDITION・CAMBRIDGE UNIVERSITY出版,1987年発行)。
【0019】
本発明における植物としては、その植物の全草、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、木質部、枝、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、根、塊根、根茎等を、そのまま、破砕、粉砕、搾取して用いるか、又はこれら処理されたものを乾燥若しくは粉末化して用いることができる。
用いる部位としては、ロウドクについては根を;キンカランについては塊根、根を;ジャショウシについては果実を;ボルドについては葉を;ヒマについては種子を;サッサフラスノキについては葉を、使用するのが好ましい。
尚、本発明に用いる上記植物を単独で、又は上記植物から選ばれる2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0020】
本発明における抽出物とは、本発明に用いる植物を一定温度(低温、常温又は加温)下にて抽出すること;又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出すること等の抽出手段により得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその粉末を意味するものである。
【0021】
本発明の植物の抽出物を得るために用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤の何れをも使用することができる。当該抽出溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワレン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して混合液として使用することができる。
この溶剤のうち、水、アルコール類(好ましくは炭素数1〜5)、水−アルコール類混合液、炭化水素類(好ましくはヘキサン)が好ましい。このうち、水、エタノール、水−エタノール混合液、ヘキサンが好ましい。
水−エタノール混合液やエタノールを用いる場合、当該混合液中のエタノール濃度(V/V)は、0.01〜100容量%であるのが好ましく、20〜100容量%であるのがより好ましく、40〜100容量%であるのが更に好ましい。
【0022】
溶剤の使用量は、植物1質量部(乾燥物換算)に対して、1〜50質量部であるのが好ましく、5〜40質量部であるのが好ましい。抽出温度は、0〜100℃であるのが好ましく、より4〜80℃、更に4〜60℃であるのが好ましい。抽出時間は、1分〜150日間であるのが好ましく、より30分〜50日間、更に60分〜30日間であるのが好ましい。
一例として、抽出物を得る際、植物1質量部(乾燥物換算)に対して、20〜95容量%エタノール−水混液、エタノール、ヘキサン又は水の1〜50質量部の溶剤を用い、4〜50℃の温度(好ましくは、4〜40℃)で、1時間〜50日間(好ましくは1〜45日間)抽出するのが好ましい。
また、抽出の際、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、非酸化的雰囲気下で行なってもよい。
【0023】
上記にて得られた植物抽出物は、単独で又は混合して、そのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥して、液状、粉末状又はペースト状に調製して用いることもできる。
また、得られた植物抽出物は、クロマトグラフィー、液液分配、ゲルろ過分離、活性炭処理等の公知の分離技術により、当該抽出物から不活性な夾雑物を除去して用いることができる。
【0024】
後記実施例に示すように、本発明の植物又はその抽出物は、線維芽細胞型アロマターゼ遺伝子の発現を増強させたり、線維芽細胞に存在するアロマターゼを活性化させるので、優れたアロマターゼ活性化作用を有する。
そして、本発明の植物又はその抽出物は、皮膚組織内のエストロゲン量を増加させることができるので、角層のバリア能、表皮のターンオーバー促進能、真皮の血行促進能やコラーゲン産生能を向上させることができる。
よって、本発明の植物又はその抽出物は、肌の諸機能の減退や皮膚の老化等によって引き起こされる、シワやタルミ(弛緩)の増加、肌荒れ、肌の弾力性損失と云った、様々な肌トラブルの予防、改善又は治療に有効であると考えられる。
また、肌トラブル症状以外の、更年期障害、性機能低下(排泄障害、膣炎、性機能低下等)、自律神経失調症(ほてり、多汗等)、精神神経症状(うつ、不眠症等)脂質代謝異常(動脈硬化、コレステロール上昇、脳梗塞等)、血管運動障害、骨粗しょう症(腰痛、骨折等)等の体内のエストロゲン減少によって現れる各種症状(非特許文献2及び3)の予防、改善又は治療にも有効であると考えられる。
従って、本発明の植物又はその抽出物は、アロマターゼ活性化剤、皮膚老化予防又は改善剤等(以下、「アロマターゼ活性化剤等」という)として使用でき、さらにこれらの製剤を製造するために使用することができる。このとき、当該SREBP抑制剤では、当該植物又はその抽出物を単独で、又はこれ以外に、必要に応じて適宜選択した担体等の、配合すべき後述の対象物において許容されるものを使用してもよい。なお、当該製剤は配合すべき対象物に応じて常法により製造することができる。
【0025】
斯かるアロマターゼ活性化剤等は、肌トラブルの予防又は改善作用や皮膚老化予防又は改善作用等の各効果を発揮する、ヒト若しくは非ヒト動物用の医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、皮膚外用剤、入浴剤等として又はこれらの有効成分として配合して使用することができる。また、食品は、上記各種症状予防又は改善作用、特に、肌トラブルの予防又は改善作用や皮膚老化予防又は改善作用等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品、病者用食品、特定保健用食品等の機能性食品の有効成分として使用することができる。
【0026】
本発明のアロマターゼ活性化剤等を、医薬品として用いる場合、当該医薬品は任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、経口投与、並びに経皮、経腸、経結膜及び注射等の非経口投与が挙げられる。経口投与のための製剤の剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口投与のための製剤の剤型としては、塗布剤又は貼付剤等の外用剤、静脈内注射用、皮下注射用又は点滴注射用等の注射剤、吸入剤、輸液、座剤、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。
斯かる医薬品製剤では、本発明の上記植物若しくはその抽出物を単独で、またこれと、薬学的に許容される担体とを組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、香料、被膜剤等が挙げられる。
【0027】
本発明のアロマターゼ活性化剤等を、経口投与用製剤として用いる場合、本発明の上記植物又はその抽出物の含有量は、製剤全質量中、乾燥物換算で、通常0.0001〜20質量%、より0.01〜5質量%であるのが好ましい。
上記経口投与製剤の投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、本発明の上記植物又はその抽出物の投与量は、成人(60kg)1日当たり、通常0.001〜1200mg、より0.01〜300mgであるのが好ましい。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日当たり1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0028】
本発明のアロマターゼ活性化剤等を、食品の有効成分として用いる場合、当該食品の形態は、固形、半固形又は液状等であり得る。食品としては、例えば、パン類、麺類、菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、澱粉加工製品、加工肉製品、その他加工食品、飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等、及びそれらの原料等が挙げられる。また、上記の経口投与製剤と同様の、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、粉末剤、顆粒剤等の形態であってもよい。
これら食品を調製するには、本発明のアロマターゼ活性化剤等を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油脂、乳化剤、防腐剤、香料、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
また、食品中の、本発明の上記植物又はその抽出物の含有量は、その使用形態により異なる。飲料の形態では、乾燥物換算で、通常、0.0001〜20質量%、より0.001〜5質量%であるのが好ましい。また、錠剤や加工食品等の固形食品の形態では、乾燥物換算で、0.0001〜20質量%、より0.01〜5質量%であるのが好ましい。
【0029】
また、本発明のアロマターゼ活性化剤等を、飼料の有効成分として用いる場合には、当該飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、マグロ、ウナギ、タイ、ハマチ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。
尚、飼料を製造する場合には、本発明のアロマターゼ活性化剤等の他に、牛、豚、羊等の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料、更に一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等を組み合わせて用いることができる。
また、飼料中の、本発明の上記植物又はその抽出物の含有量は、その使用形態により異なるが、乾燥物換算で、通常0.0001〜20質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい
【0030】
本発明のアロマターゼ活性化剤等を、外用医薬品、医薬部外品又は化粧品として用いる場合には、これら外用医薬品、医薬部外品又は化粧品は、皮膚外用剤、洗浄剤、入浴剤、又はメイクアップ化粧料等とすることができ、使用方法に応じて、これらを、美容液、化粧水、マッサージ剤、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末剤、パック、パップ剤、顆粒剤、ファンデーション、口紅、シャンプー、コンディショナー、ヘアトニック、錠剤、カプセル、吸収性物品、シート状製品等の種々の剤型で提供することができる。
このような種々の剤型の外用医薬品、医薬部外品又は化粧品は、本発明のアロマターゼ活性化剤等を、単独で、又は外用医薬品、医薬部外品若しくは皮膚化粧料に配合される、油又は油状物質(油脂類、ロウ類、高級脂肪酸類、精油類、シリコーン油類等)、保湿剤(グリセロール、ソルビトール、ゼラチン、ポリエチレングリコール等)、粉体(チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、ゴム等)、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬効成分、香料、樹脂、防菌防黴剤、他の植物抽出物(生薬、漢方薬、ハーブ類)、アルコール類、多価アルコール類、無機酸(重炭酸塩、炭酸塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等)、有機酸(コハク酸、グルタル酸、フマル酸、グルタミン酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸等)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンE類、ビタミンB類、ビタミンC、葉酸等)、水溶性高分子、アニオン性界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等)、カチオン性界面活性剤(アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等)、両性界面活性剤(アルキル基を有するイミダゾリン系、カルボベタイン系等)等を組み合わせることにより調製することができる。
当該外用医薬品、医薬部外品、化粧品の全量中の、本発明の上記植物又はその抽出物は、乾燥物換算で、通常0.0001〜20質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
また、入浴剤の全量中の、本発明の上記植物又はその抽出物は、乾燥物換算で、通常0.0001〜20質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例及び試験例を挙げるが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
製造例1:ロウドク抽出物
(1)乾燥した狼毒(学名 Stellera chamaejasme L.)の根40gに、10倍量(0.4L)の50容量%(以下、「50%」とする)エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、22日間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、狼毒の50%エタノール抽出乾固物1を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「95%エタノール」に代えた以外は、上記と同様にして狼毒のエタノール抽出乾固物2を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「ヘキサン」に代えた以外は、上記と同様にして狼毒のヘキサン抽出乾固物3を得た。
(2)「狼毒(学名 Stellera chamaejasme L.)の根」を「狼毒大戟(学名 Euphorbia fischeriana Steud.)の根」に代えた以外は、上記と同様にして、狼毒大戟の50%エタノール抽出乾固物4、狼毒大戟のエタノール抽出乾固物5、狼毒大戟のヘキサン抽出乾固物6を得た。また、「50%エタノール−水混合溶液」を「水」に代えた以外は、上記と同様にして狼毒大戟の水抽出乾固物7を得た。
(3)「狼毒(学名 Stellera chamaejasme L.)の根」を「月腺大戟(学名 Euphorbia ebracteolataHayata)の根」に代えた以外は、上記と同様にして、月腺大戟の50%エタノール抽出乾固物8、月腺大戟のエタノール抽出乾固物9、月腺大戟のヘキサン抽出乾固物10を得た。また、「50%エタノール−水混合溶液」を「水」に代えた以外は、上記と同様にして月腺大戟の水抽出乾固物11を得た。
【0033】
製造例2:キンカラン抽出物
乾燥したセイギュウタン(青牛胆)(学名 Tinospora sagittata (Oliv.) Gagnep.)の根40gに、10倍量(0.4L)の50容量%エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、26時間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、セイギュウタンの50%エタノール抽出乾固物12を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「95%エタノール」に代えた以外は、上記と同様にしてセイギュウタンのエタノール抽出乾固物13を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「ヘキサン」に代えた以外は、上記と同様にしてセイギュウタンのヘキサン抽出乾固物14を得た。
【0034】
製造例3:ジョショウシ抽出物
乾燥したジャショウシ(学名 Cnidium monnieri (L.) Cuss.)の果実40gに、10倍量(0.4L)の50%エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、43日間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、50%エタノール抽出乾固物15を得た。
【0035】
製造例4:ボルド抽出物
乾燥したボルド(学名 Peumus boldus)の葉40gに、10倍量(0.4L)の50%エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、27日間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、ボルドの50%エタノール抽出乾固物16を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「95%エタノール」に代えた以外は、上記と同様にしてボルドのエタノール抽出乾固物17を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「ヘキサン」に代えた以外は、上記と同様にしてボルドのヘキサン抽出乾固物18を得た。
【0036】
製造例5:ヒマ抽出物
乾燥したヒマ(学名 Ricinus communis L.)の種子40gに、10倍量(0.4L)の50%エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、39日間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、ヒマの50%エタノール抽出乾固物19を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「95%エタノール」に代えた以外は、上記と同様にしてヒマのエタノール抽出乾固物20を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「ヘキサン」に代えた以外は、上記と同様にしてヒマのヘキサン抽出乾固物21を得た。
【0037】
製造例6:サッサフラスノキ抽出物
乾燥したサッサフラスノキ(学名 Sassafras officinale Nees)の葉40gに、10倍量(0.4L)の50%エタノール−水混合溶液を加え、20〜30℃(常温)、21日間で抽出し、不溶物をろ別後、抽出液を得、減圧濃縮し、サッサフラスノキの50%エタノール抽出乾固物22を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「95%エタノール」に代えた以外は、上記と同様にしてサッサフラスノキのエタノール抽出乾固物23を得た。
また「50%エタノール−水混合溶液」を「ヘキサン」に代えた以外は、上記と同様にしてサッサフラスノキのヘキサン抽出乾固物24を得た。
【0038】
試験例1:各抽出物におけるアロマターゼ遺伝子発現増強作用
<各抽出物>
製造例1〜6で得られた各抽出乾固物1〜24を用いた。50%エタノール−水混合溶液にて溶解し、それぞれ抽出物溶液1〜24とした。コントロールは、50%エタノールとした。
<レポータージーンアッセイ系の構築>
ヒト正常ケラチノサイトより抽出したゲノムDNAより、ヒトアロマターゼ遺伝子エクソンI.4の転写調節領域とエクソンI.4の一部を含む部分を、以下のプライマーを用いてPCRを行って増幅した。
upper primer 5'- GACTAGTAAGGTGCAGTGACAGGCTC -3'(配列番号1)
lower primer 5'- GGAATTCCTGTCAGGCTCCAGTTGGTC -3'(配列番号2)
得られたPCR産物を制限酵素SpeIとEcoRIで処理し、シーパンジーnullコントロールベクター(東洋インキ製造株式会社)のSpeIサイトとEcoRIサイトに組み込み、これをExI.4−lucプラスミドとして、後述のルシフェラーゼアッセイに用いた。
<アロマターゼ遺伝子エクソンI.4発現増加作用>
(i)使用細胞:
ヒト皮膚由来正常線維芽細胞
(ii)使用プラスミド:
アロマターゼ遺伝子エクソンI.4の転写調節領域、約1kbをルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだExI.4−lucと生細胞に導入されるとホタルルシフェラーゼが強制発現されるコントロールベクター(東洋インキ製造株式会社)を用いた。
(iii)細胞へのトランスフェクション:
ヒト皮膚由来正常線維芽細胞を96ウェル培養プレート中に3万個ずつまき、ExI.4−lucとコントロールベクターを10:1で混合し、リポフェクトアミン試薬(Invitrogen)を用いて導入した。プロトコールは試薬に添付された説明書の記載に従った。DNAの量は1ウェル当たり0.1μg用いた。コントロールとして2つのウェルに対しては、DNAを加えずに同様の操作を行った。
(iv)ルシフェラーゼアッセイ:
トランスフェクションを行った細胞を1晩培養した後、製造例で調製した各植物の50%エタノール抽出物を加え、蒸発残分〔培地中に添加した終濃度〕0.01又は0.001(w/v)%になるように、24時間培養した。また、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。細胞の溶解は5xLysis Bufferを1x濃度に調整し、各ウェルに25μL加えて細胞を溶解した。
【0039】
下記表1に示すように、上記各植物抽出物は、何れも線維芽細胞型アロマターゼ遺伝子発現増強作用、従ってまたアロマターゼ産生促進作用を有している。
【0040】
【表1】

【0041】
試験例2:各抽出物におけるアロマターゼ活性化
上記各抽出物1〜22を試料として用いた。
ヒト皮膚由来線維芽細胞(HDF1616:KURABO)を使用した。
24穴細胞培養プレート(FALCON)にヒト皮膚線維芽細胞を播種し、コンフルエントになるまで培養した。培地を除き、無血清培地900μLを加えて24時間培養した。
その際、ウェルには、乾燥質量換算での抽出物の最終濃度が、1,0.1,0.01,0.001又は0.003(w/v)%となるように50%EtOHを用いて調製した各抽出物1〜6の9μLを3ウェルずつに加えた。
また、ネガティブコントロールとして50%エタノール水溶液9μLを加えたものと、何も添加しないものを用意した。
バックグラウンドには細胞を含まない培地を用い、薬剤を加えず同様の時間インキュベートし、その後も同様の操作をした。アロマターゼの基質である1β-3H-androst-4-ene-3, 17-dione (PerkinElmer)を37kBq/100μLとなる様に無血清培地に加え、各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。1ウェルから900μLを2mLチューブにとり、CHCl3 1mLを加え激しく攪拌した。15,000rpm,10分間遠心して上層(水層)を別のチューブに移した。Charcoal/Dextran (Charcoal, dextran coated (SIGMA) 5gをH2O 50mLに懸濁したもの) 200μLを加えてよく混ぜ、30分間室温で放置した。15,000rpm,10分間遠心し、上清を新しいチューブに移した。CHCl3 1mLを加え激しく攪拌し、15,000rpm,10分間遠心して上層(水層)をUltimaGold (PerkinElmer) 5mLに加え、液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Tricarb 2550)で3Hの放射活性を測定した。
なお、上記測定方法は、〔Stampfer MJ, Willett WC, Colditz GA, Rosner B, Speizer FE and Hennenkens CH, N. Engl. J. Med., 313, 1044-1049, 1985〕を参考にして行った。
アロマターゼの反応によって、1β-3H-androst-4-ene-3, 17-dioneは3H2Oを放出して、放射活性のないエストロンに変換される。この実験法では放出された3H2Oの放射活性を検出しており、放射活性が高いほどアロマターゼ活性も高いことを示している。
よって、下記表2〜4に示すように、コントロールでは基質の分解がほとんどなかったのに対し、各植物抽出物を添加した細胞ではアロマターゼ活性が促進されたことから、上記各植物抽出物は、何れも線維芽細胞に存在するアロマターゼの活性化作用を有している。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
以上のことから、ロウドク(狼毒、狼毒大戟及び月腺大戟の各植物)から水、40〜60%エタノール、90〜100%エタノール及びヘキサンの各溶剤にて抽出された各抽出物;ジャショウシから40〜60%エタノールにて抽出された抽出物;ヒマ、キンカラン(青牛胆)、サッサフラスノキ及びボルトの各植物から40〜60%エタノール、90〜100%エタノール及びヘキサンの各溶剤にて抽出された各抽出物は、何れも優れたアロマターゼ活性化作用を有していた。よって、ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、サッサフラスノキ及びボルトから選ばれる少なくとも1種又はその抽出物は、アロマターゼ活性化剤等の有効成分として有望である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物を有効成分とするアロマターゼ活性化剤。
【請求項2】
抽出物が、水抽出物、アルコール類抽出物、アルコール類−水混合液抽出物又はヘキサン抽出物である請求項1記載のアロマターゼ活性化剤。
【請求項3】
アロマターゼ活性化剤が、皮膚外用剤である請求項1又は2記載のアロマターゼ活性化剤。
【請求項4】
ロウドク、キンカラン、ジャショウシ、ボルド、ヒマ及びサッサフラスノキから選ばれる1種以上又はその抽出物を有効成分とする皮膚老化予防又は改善剤。
【請求項5】
皮膚老化予防又は改善剤が、皮膚外用剤である請求項4記載の皮膚老化予防又は改善剤。

【公開番号】特開2011−102264(P2011−102264A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257759(P2009−257759)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】