説明

アンテナ装置およびそれを搭載した電子機器

【課題】 アンテナを二つの無線部で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与し一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除する。
【解決手段】 アンテナ(40)、第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部(37)、第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部(38)、アンテナの一端と第1の無線部との間に挿入された第1の分離回路(54)、アンテナの他端と第2の無線部との間に挿入された第2の分離回路(55)を備え、第1の分離回路は第1の周波数(Fa)に応答してアンテナの一端と第1の無線部との間をショート状態にする一方、第2の周波数(Fb)に応答してアンテナの一端と第1の無線部との間をオープン状態にし、第2の分離回路は第1の周波数(Fa)に応答してアンテナの他端と第2の無線部との間をオープン状態にする一方、第2の周波数(Fb)に応答してアンテナの他端と第2の無線部との間をショート状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関し、詳細には、二つの無線部で共用できるアンテナ装置およびそれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機には、本来の電話用無線部だけでなく、他の無線部、たとえば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)用の無線部や、BluetoothあるいはWiFi等の近距離通信用の無線部などが実装されてきており、これに伴い、小さな筐体に複数のアンテナ装置(以下、単にアンテナという)が組み込まれるようになってきた。
【0003】
複数のアンテナを一つの筐体、とりわけ携帯電話機のような小さな筐体に組み込む場合、その組み込み位置の決定に際しては、第一に、筐体を持つ手の影響を受けにくいこと、第二に、複数のアンテナの相互間距離ができるだけ離れていること、という少なくとも二つの条件を満たすことを考えなければならない。第一の条件は、人体は所定容量(100pF程度)の接地体とみなされるからであり、そのような接地体がアンテナの近くにあるとアンテナの特性(特に共振周波数)に影響を与えるからである。また、第二の条件は、アンテナ間の距離が近い場合は相互の電磁的干渉により、同様にして、アンテナの特性に影響を与えるからである。
【0004】
図13は、折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。この図において、筐体1は、手持ちされる本体部2と、この本体部2の上短辺端部にヒンジ機構3を介して開閉可能に連結された蓋部4とから構成されている。このような筐体1におけるアンテナ組み込み位置は、本体部2の上短辺端部内(以下、第1の位置5)と、蓋部4の上短辺端部内(以下、第2の位置6)の二カ所が考えられる。これらの組み込み位置(第1の位置5及び第2の位置6)は、いずれも手の平の近くになく、しかも、互いの位置が離れているからであり、上記二つの条件を満たしているからである。
【0005】
しかし、図13に示す組み込み位置は、アンテナの数が三つの場合に適用できない。第1の位置5または第2の位置6の一方に二つのアンテナを組み込む必要があり、これら二つのアンテナについては上記の第二の条件(相互干渉)を満足しないからである。
【0006】
第二の条件を満たすには、三つのアンテナのうちの二つ、つまり、第1の位置5または第2の位置6の一方に組み込まれる二つのアンテナを共用アンテナとすればよい。二つのアンテナを共用アンテナとすれば、実質的なアンテナの数を三つから二つに減らすことができ、上記二つの条件を満たしつつ、各々のアンテナを、たとえば、図13の第1の位置5と第2の位置6に支障なく組み込むことができる。
【0007】
共用アンテナについての従来技術を検討する。
特許文献1には、分波回路を一体形成した「高周波モジュール及び無線通信装置」に関する技術(以下、第1の従来技術)が開示されている。詳細には、周波数または通信方式の異なる二つのシステム(第1のシステム及び第2のシステム)と一つのアンテナとの間に「分波回路」を入れ、その分波回路の分波作用(信号の周波数帯で行き先を振り分ける)によって、前記一つのアンテナを二つのシステムで共用している。これによれば、アンテナの数を減らすことができ、前記の二つの条件をともに満たすことができる。
【0008】
しかしながら、分波回路は、同文献の記載によれば、少なくとも第1のシステム用と第2のシステム用の二つのフィルタ(同文献によればBPF12とLPF13)を含む構成となっており、これらのフィルタは、通常の部品(たとえば、コンデンサや抵抗など)に比べて高価で大きな部品といえるから、コストアップを免れず、また、分波回路が大きくなって実装面積を確保しにくくなるという欠点を指摘できる。
【0009】
特許文献2には、三つのアンテナと三つの無線システムとの間の接続を自由に切り換えることができる「アンテナ配分システムを有する複合無線機」に関する技術(以下、第2の従来技術)が開示されている。詳細には、一端が三つのアンテナのうちの一つに接続され、他端が三つの無線システムの全てに接続された三つの切換スイッチを備え、この三つの切換スイッチの制御を行うことにより、三つのアンテナと三つの無線システムとの間の接続を自由に切り換えている。三つのアンテナの各々は、三つの無線システムのいずれにも接続可能であるので、これら三つのアンテナは各無線システムによって「共用」されるアンテナであるということができる。
【0010】
この第2の従来技術では、上記の分波回路を必要としないため、コストアップや実装面積確保の問題を招かないが、厳密な意味での「共用アンテナ」に関する技術ではない。つまり、同文献に「共用」という用語が認められるものの、同文献の内容を自然に解釈する限り、その用語(共用)の意味するところは、単にスイッチを切り換えながら、三つのアンテナを三つの無線システムで相互利用することを示しているに過ぎないからである。したがって、明らかに、アンテナ数を削減するための共用アンテナの技術を開示していないから、前記の第二の条件(アンテナ相互の干渉回避)を満たせない。
【0011】
特許文献3には、表面実装型アンテナを備えた「アンテナ構造およびそれを備えた無線通信機」に関する技術(以下、第3の従来技術)が開示されている。
【0012】
図14は、第3の従来技術の概念構成図である。この図において、表面実装型アンテナ7は、誘電体からなる基体8の上に、互いに所定距離だけ離隔して形成された(したがって、容量Caを介して電磁的に結合された)メイン放射電極9とサブ放射電極10とを有しており、メイン放射電極9は、第1の整合回路11を介して第1の無線通信用回路12に接続され、サブ放射電極10は、インダクタ13を介して接地されているとともに、第2の整合回路14を介して第2の無線通信用回路15に接続されている。なお、第2の無線通信用回路15はスイッチ16を介して、たとえば、Bluetooth等のシステム17に接続されている。
【0013】
同文献によれば、サブ放射電極10は、一の周波数帯(第1の無線通信用回路12の使用周波数帯:以下、F1)とは別の周波数帯(第2の無線通信用回路15の使用周波数帯:以下、f1)でも共振する構成を有しているとされている。したがって、このサブ放射電極10は異なる二つの周波数帯(F1とf1)で共用可能であると解されるから、サブ放射電極10は、これら二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)の共用アンテナであると認められる。
【0014】
なお、メイン放射電極9とサブ放射電極10は、二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)によって択一的に励振されるようになっており、励振時には、いずれか一方が給電電極、他方が無給電電極として作用するようになっている。給電電極と無給電電極に関する従来技術としては、たとえば、特許文献4に記載の「アンテナ装置」が知られている。すなわち、特許文献4には、長方形状のグランドパターンと、このグランドパターンの短辺側に一体形成された給電電極(同文献では給電素子13)と、この給電電極から所定距離だけ離隔した無給電電極(同文献では無給電放射素子15)とをプリント基板上に形成した構成を有するアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−186906号公報
【特許文献2】特開2006−261894号公報
【特許文献3】国際公開WO2006/059406 (特願2006−546619号)
【特許文献4】特開2008−148141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のとおり、第3の従来技術(特許文献3)のサブ放射電極10は共用アンテナ、すなわち、二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)で共用されるアンテナであると認められる。しかしながら、以下の理由から、二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)の一方が動作しているときに他方の回路の影響を排除できないという問題点がある。
【0017】
メイン放射電極9とサブ放射電極10は、第1の整合回路11と第2の整合回路14を介して、それぞれ二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)に“常時接続”されている。一般的に「整合回路」の役割はインピーダンスマッチング、すなわち、一の交流回路(第1の無線通信用回路12や第2の無線通信用回路15)のインピーダンスと、二の交流回路(メイン放射電極9やサブ放射電極10)のインピーダンスとのマッチング(整合)をとるためと理解されているから、この理解に従えば、これら二つの整合回路(第1の整合回路11と第2の整合回路14)は、いずれもインピーダンスマッチングの機能しか備えていないと考えるべきである。そうすると、これらの整合回路は、二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)の間の相互影響を排除するために必要なアイソレーション(信号的な分離)の機能を備えていないといえるから、結局のところ、二つの無線通信用回路(第1の無線通信用回路12と第2の無線通信用回路15)の一方が動作しているときに他方の回路の影響を排除できないことになる。
【0018】
ちなみに、第3の従来技術では、第2の無線通信用回路15とBluetooth等のシステム17との間にスイッチ16が入っており、このスイッチ16をオフにすることにより、第2の無線通信用回路15への入力信号を絶つことができるが、前記のとおり、第2の無線通信用回路15とサブ放射電極10の間に入れられた第2の整合回路14はアイソレーションの機能を備えないのであるから、たとえ、第2の無線通信用回路15への入力信号を絶ったとしても、第1の無線通信用回路1に対する第2の無線通信用回路15の影響を排除できない。
【0019】
また、特許文献3の段落〔0023〕に、「第2の整合回路の他の特徴は、メイン放電電極の端子電極の端部からメイン放射電極とサブ放射電極とを介して第2の整合回路側を見たインピーダンスがメイン放射電極とサブ放射電極とを複共振させるインピーダンスとなるためのインピーダンスを有する。」と記載されているが、この記載の意味するところは必ずしも明確でないものの、少なくともアイソレーションの機能を述べていないことは明らかであるし、そもそも、第2の整合回路の具体的構成例を示す特許文献3の図面(図2Aや図2B)の記載(信号線路上にコンデンサまたはインダクタを挿入したものに過ぎない)からも、アイソレーション機能の存在を自明的に把握することはできない。
【0020】
そこで、本発明は、一つのアンテナを二つの無線部で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与し、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るアンテナ装置は、2端子型のアンテナと、第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、前記第1の周波数と異なる第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間に挿入された第1の分離回路と、前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間に挿入された第2の分離回路とを備え、前記第1の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をオープン状態にし、前記第2の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をショート状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一つのアンテナを二つの無線部で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与し、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】携帯電話機の外観図である。
【図2】携帯電話機20の構成図である。
【図3】無線通信部31の構成図である。
【図4】アンテナ共用部39の機能説明図である。
【図5】ショートとオープンのインピーダンス特性である。
【図6】第1〜第3の分離回路54〜56の回路例を示す図である。
【図7】第1〜第3の分離回路54〜56の他の回路例を示す図である。
【図8】携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。
【図9】携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。
【図10】実施形態を適用した無線通信部31の実装図である。
【図11】他の構成を示す図である。
【図12】分離回路の他の構成を示す図である。
【図13】折り畳み式携帯電話機のアンテナ組み込み位置の一例を示す図である。
【図14】第3の従来技術の概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして図面を参照しながら説明する。
図1は、携帯電話機の外観図である。この図において、携帯電話機20は、手持ちに適した厚みと大きさを有する縦長箱型形状の本体部21と、その本体部21の上短辺端にヒンジ機構22を介して連結された、本体部21と略同型状かつ薄厚の蓋部23とを備えた、いわゆる「折り畳み式」の筐体24を有している。
【0025】
本体部21の一方面(蓋部23との対向面)には、多数の操作ボタンからなる操作ボタン群25や送話孔26が設けられ、また、蓋部23の一方面(本体部21との対向面)には、表示部27や、この表示部27の周囲を覆う額縁部28及び受話孔29が設けられている。
【0026】
表示部27は、縦長形状の表示面を有する二次元表示デバイス、典型的には、高精細なカラー液晶ディスプレイパネルであり、表示部27の表示面には透明なタッチパネル30が貼り付けられている。
【0027】
なお、図示の携帯電話機20は「折り畳み式」であるが、これに限定されない。非折り畳み式やスライド式などであってもよい。
【0028】
図2は、携帯電話機20の構成図である。この図において、携帯電話機20は、無線通信部31、送受話部32、操作部33、制御部34、表示部27、タッチパネル30、並びに、この携帯電話機20の動作に必要な電源を供給するためのバッテリ(一次電池または充電可能な二次電池)を含む電源部35などを備えている。なお、これら以外にも、たとえば、カメラ等の撮像部や、カメラで撮影された画像を保存するための記憶部、さらには、パーソナルコンピュータ等の外部機器との間でデータのやりとりをするための入出力部などを備えていてもよい。
【0029】
無線通信部31は、複数の無線通信部(以下、単に無線部という)を含む。ここでは、第A無線部36、第B無線部37及び第C無線部38の三つを含むものとする。第A無線部36は携帯電話用、第B無線部37はGPS用、第C無線部38はBluetooth用である。但し、これらの用途に限定されない。実施形態の電子機器は携帯電話機20であるから、少なくとも携帯電話用の第A無線部36は必須であるが、他の無線部(第B無線部37及び第C無線部38)については、上記用途の限りではなく、たとえば、WiFiやワンセグ放送受信などの他の用途の無線部であってもよい。
【0030】
携帯電話用の第A無線部36は、制御部34からの制御により、アンテナ36aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で所定周波数帯(700MHz帯〜2GHzまでの間の所定周波数帯)の無線電波によるアナログもしくはデジタルデータの送受信を行い、このデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれるほか、必要であれば、インターネット上のコンテンツを利用(ダウンロード)する際などのコンテンツ情報や電子メールの送受信情報などが含まれる。
【0031】
GPS用の第B無線部37及びBluetooth用の第C無線部38は、アンテナ共用部39を介して一つのアンテナ40を共用する。以下、このアンテナ40を「共用アンテナ」と呼ぶことにする。
【0032】
第B無線部37は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介してGPS衛星(図示略)からの所定周波数帯(1.5GHz帯)の電波(GPS信号)を受信し、その受信信号を制御部34に出力する。以下、GPS衛星からの信号周波数を便宜的に第1の周波数Faということにする。
【0033】
なお、GPS(全地球測位システム)とは、地球周回軌道上の最低3個の衛星からの電波を受信することにより、地球上における位置座標(緯度と経度及び衛星の捕捉数によっては高度)を測位できる位置測位システムのことをいう。一般的にこのシステムは、GPSアンテナと信号受信部と測位計算部の三つからなる。図2の構成では、共用アンテナ40がGPSアンテナに相当し、第B無線部37が信号受信部に相当する。そして、図示の例では、測位計算部が制御部34に含まれているが、これに限定されない。測位計算部を第B無線部37の構成に含めてもよい。つまり、第B無線部37で衛星からの電波受信と位置座標の測位計算とを行うようにし、その測位結果を制御部34に出力する構成であってもよい。
【0034】
第C無線部38は、制御部34からの制御により、共用アンテナ40を介して近距離(一般的に数十メートル以内)に存在するあらかじめペアリングされたBluetooth機器(図示略)との間で所定周波数帯(2.4GHz帯)の無線電波による近距離ワイヤレス通信を行う。以下、Bluetoothの信号周波数を便宜的に第2の周波数Fbということにする。
【0035】
ここで、アンテナ共用部39は、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第B無線部37と第C無線部38)で「共用」するための機能を持つが、特に重要な機能はアイソレーションの機能である。すなわち、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している際には、第C無線部38が信号的に分離(アイソレーション)された状態となり、また、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している際には、第B無線部37が信号的に分離(アイソレーション)された状態となることが特に重要な機能である。
【0036】
このようにすれば、第B無線部37が共用アンテナ40を利用している間は、第C無線部38が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第B無線部37は非動作中の第C無線部38の影響を受けない。同様に、第C無線部38が共用アンテナ40を利用している間は、第B無線部37が回路的に分離(アイソレーション)されるので、動作中の第C無線部38は非動作中の第B無線部37の影響を受けない。分離(アイソレーション)についての詳しい説明は後述する。
【0037】
送受話部32は、本体部21の送話孔26の下に配置されたマイク32aや蓋部23の受話孔29の下に配置されたスピーカ32bを含み、この送受話部32は、制御部34からの制御により、マイク32aからの音声信号をデジタルデータに変換して制御部34に出力したり、制御部34から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ32bから出力したりする。
【0038】
操作部33は、制御部34に対して所要のユーザ入力を行うための各種操作ボタン(図1の操作ボタン群25)を備え、ユーザによる任意の操作ボタンの押し下げに対応した操作ボタン信号を発生して制御部34に出力する。
【0039】
制御部34は、マイクロコンピュータまたは単にコンピュータ(以下、CPU)34a、書き換え可能不揮発性半導体メモリ(以下、PROM)34bおよび高速半導体メモリ(以下、RAM)34cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、この制御部34は、携帯電話機20の全体動作を統括制御するために、あらかじめPROM34bに格納されている制御プログラムをRAM34cにロードしてCPU36aで実行する。
【0040】
次に、無線通信部31の具体的な構成を説明する。
図3は、無線通信部31の構成図である。この図において、携帯電話用の第A無線部36は、整合回路41とWCDMA回路42とを含む。WCDMAとは、第三世代携帯電話(3G)の無線アクセス方式の一つである「Wideband Code Division Multiple Access」の略であるが、この方式に限定されない。たとえば、MCDMA(MicroWave CDMA)やNCDMA(NarrowBand CDMA)またはその他の携帯電話通信方式であってもよい。
【0041】
アンテナ36aは、伝送線路43を介して第A無線部36の整合回路41に接続されており、このアンテナ36aは、第A無線部36の専用アンテナ、つまり、携帯電話専用アンテナとして機能する。この携帯電話専用アンテナ(アンテナ36a)には、たとえば、プレーナーアンテナ(望ましくはプレーナー逆F型アンテナ)やチップアンテナまたはその他の形式のアンテナの中で電波効率や大きさ及びコストなどを総合的に勘案して適切なものを選択して使用することができる。
【0042】
整合回路41は、WCDMA回路42と伝送線路43及びアンテナ36aとのインピーダンス整合、すなわち、WCDMA回路42の特性インピーダンスと伝送線路43及びアンテナ36aの特性インピーダンスとを一方の特性インピーダンスにマッチングさせる(整合させる/揃える/等価にするなどともいう)ための回路であり、一般的にはWCDMA回路42の特性インピーダンスを伝送線路43及びアンテナ36aの特性インピーダンスにマッチングさせる。ちなみに、マッチングがとれていない状態(不整合状態)では、無駄な電力が生じて伝送効率を損なうばかりか、とりわけ高周波帯域では伝送路の反射波が増え、この反射波と進行波との重畳波(定在波)による様々な悪影響を生じるから、高周波技術の分野にとってマッチングは不可欠である。
【0043】
第B無線部37は、整合回路44とGPS回路45とを含み、また、第C無線部38は、整合回路46とBluetooth回路47とを含む。これらの整合回路44、46も、第A無線部36の整合回路41と同様の目的で設けられている。すなわち、第B無線部37の整合回路44は、GPS回路45の特性インピーダンスと、伝送線路48及び共有アンテナ40の特性インピーダンスとをマッチングさせるための回路であり、同様に、第C無線部38の整合回路46は、Bluetooth回路47の特性インピーダンスと、伝送線路49、50及び共有アンテナ40の特性インピーダンスとをマッチングさせるための回路であり、いずれも、伝送効率の悪化や定在波による悪影響を回避するためのものである。
【0044】
共用アンテナ40は、一方の端子(以下、一端40a)と他方の端子(以下、他端40b)とを備えた、いわゆる2端子型のアンテナであり、たとえば、所定の誘電率εを持つ誘電体基体の表面に所定形状の放射電極を形成したチップアンテナであってもよい。このようなチップアンテナの場合、放射電極を伝わる信号の速度が誘電率εに応じて遅くなるため、放射電極の長さ(つまり、伝送波長λに対する規定の長さ:一般的にはλ/2やλ/4)を速度低下分だけ短縮することができ、アンテナの小型化を図ることができるから好ましい。さらに、放射電極をL型などの屈曲状にしたり、あるいは、基体の表面に螺旋状に巻き付けたりしてもよい。このようにすれば、放射電極の長さをチップサイズよりも大きくすることができ、上記の誘電率εによる速度低下効果と相まって、さらなるアンテナの小型化を達成できるから好ましい。
【0045】
共用アンテナ40は、複数の共振周波数を持つ複共振型のアンテナである。この実施形態においては、少なくともGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)と、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)の二つの周波数帯に対応する複共振特性を持っている。なお、二つの周波数帯(第1の周波数Fa、第2の周波数Fb)の一方を共用アンテナ40の基本共振周波数に対応させ、他方を基本共振周波数の任意の高次共振周波数に対応させてもよく、あるいは、第1の周波数Faと第2の周波数Fbの双方を任意の高次共振周波数に対応させてもよい。
【0046】
また、もしも共用アンテナ40のみで上記二つの周波数帯(第1の周波数Fa、第2の周波数Fb)に対応した複共振特性が得られない場合を想定して、所要の共振周波数調整要素を設けておくのが望ましい。この共振周波数調整要素は、たとえば、共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間の伝送線路50、51を利用することができる。一般的に伝送線路は高周波的には等価的なインダクタとして働くので、この伝送線路50、51の長さを調節することにより、共用アンテナ40のインダクタンスを増減することができ、複共振特性の微調整を行うことができるからである。以下、便宜上、この伝送線路50、51の全てまたは共用アンテナ40に近い方の伝送線路50を共振周波数調整要素のための補助パターンということにする。
【0047】
共用アンテナ40と第B無線部37及び第C無線部38との間に入れられたアンテナ共用部39は、三つのアイソレーション用回路(以下、分離回路という)54〜56を含む。以下、共用アンテナ40と第B無線部37の間に入れられた一の分離回路54を「第1の分離回路」ということにし、また、共用アンテナ40と第C無線部38の間に入れられた二の分離回路55を「第2の分離回路」ということにし、さらに、共用アンテナ40とグランド(接地電位)の間に入れられた三の分離回路56を「第3の分離回路」ということにする。
【0048】
図4は、アンテナ共用部39の機能説明図である。なお、この図における第1の無線部37は前記の第B無線部37と同じものであり、また、第2の無線部38も前記の第C無線部38と同じものである。これらは、説明の便宜上、第1の分離回路54や第2の分離回路55の接頭文字(第1、第2)に合わせて単に呼び名を統一しただけに過ぎない。
【0049】
さて、アンテナ共用部39に含まれる三つの分離回路(第1の分離回路54、第2の分離回路55及び第3の分離回路56)の機能的な特徴は、周波数(第1の周波数Fa、第2の周波数Fb)に応じて不要な回路(第1の無線部37や第2の無線部38及びGND)をアイソレーション(分離)することにある。
【0050】
具体的には、第1の分離回路54は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の一端40aと第1の無線部37との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の一端40aと第1の無線部37との間の信号的な接続をオフ(オープン)する。また、第2の分離回路55は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の他端40bと第2の無線部38との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の他端40bと第2の無線部38との間の信号的な接続をオン(ショート)にする。さらに、第3の分離回路56は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする。
【0051】
ここで、上記の「ショート」や「オープン」は、第1の分離回路54、第2の分離回路55及び第3の分離回路56の各々の入出力間のインピーダンス抵抗の大きさを意味する。つまり、ショートは0Ω(短絡)、オープンは∞Ω(開放)である。なお、これらの値(0Ω、∞Ω)は理想値である。実用上は0Ωにきわめて近い値(略0Ω)及び∞Ωにきわめて近い値(略∞Ω)であってもよい。
【0052】
図5は、ショートとオープンのインピーダンス特性図である。この図は、いわゆるスミスチャート(Smith Chart)と呼ばれる特性図のうちの「インピーダンスチャート」であり、(a)は第1の分離回路54と第3の分離回路56の特性図57を示し、(b)は第2の分離回路55の特性図58を示している。
【0053】
(a)及び(b)において、円の中心を横切る水平軸上はインピーダンスの純抵抗分(R)を表し、水平軸の左端がR=0Ω(ショート/短絡)、右端がR=∞Ω(オープン/開放)である。なお、インダクタンス成分(L)が含まれる場合はチャート上の軌跡が水平軸から円弧に沿って上に移動する。Lが最大になると∞Ω(オープン/開放)になる。また、キャパシタンス成分(C)が含まれる場合はチャート上の軌跡が円弧に沿って水平軸から下に移動する。Cが最小になると∞Ω(オープン/開放)になる。
【0054】
これらの特性図57、58から理解されるように、第1の分離回路54及び第3の分離回路56は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して0Ω(ショート)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して∞Ω(オープン)になり、一方、第2の分離回路55は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して∞Ω(オープン)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して0Ω(ショート)になるという特性を持つ。
【0055】
図6は、第1〜第3の分離回路54〜56の回路例を示す図であり、(a)は第1の分離回路54及び第3の分離回路56の一例回路図、(b)は第2の分離回路55の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分離回路54及び第3の分離回路56は、一対の入出力端子59、60の間にコンデンサC11を接続し、さらに、そのコンデンサC11の両端に、直列接続されたインダクタL11とコンデンサC12とを接続した、いわゆる共振回路の構成を有している。また、(b)に示すように、第2の分離回路55は、一対の入出力端子61、62の間にインダクタL21を接続し、さらに、そのインダクタL21の両端に、直列接続されたインダクタL22とコンデンサC21とを接続した、同様の共振回路の構成を有している。
【0056】
このような構成において、たとえば、C11=1.5pF、C12=2pF、L11=5nH、L21=4nH、L22=2.7nH、C21=1.5pFとすることにより、前出の図5に示した特性、つまり、「第1の分離回路54及び第3の分離回路56はGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して0Ω(ショート)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して∞Ω(オープン)になり、一方、第2の分離回路55はGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して∞Ω(オープン)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して0Ω(ショート)になる」という所望の特性を得ることができる。
【0057】
また、第1〜第3の分離回路54〜56を次のように構成してもよい。
図7は、第1〜第3の分離回路54〜56の他の回路例を示す図であり、(a)は第1の分離回路54及び第3の分離回路56の他の一例回路図、(b)は第2の分離回路55の他の一例回路図である。(a)に示すように、第1の分離回路54及び第3の分離回路56は、一対の入出力端子59、60の間にコンデンサC31とコンデンサC32を直列に接続し、さらに、そのコンデンサC31の両端にインダクタL31を接続した共振回路の構成を有している。また、(b)に示すように、第2の分離回路55は、一対の入出力端子61、62の間にコンデンサC41とインダクタL41を直列に接続し、さらに、そのインダクタL41の両端にコンデンサC41を接続した共振回路の構成を有している。
【0058】
このような構成においても、たとえば、C31=1.5pF、C32=2.3pF、L31=2.7nH、L41=4nH、L42=3nH、C41=2.5pFとすることにより、前出の図5に示した所定の特性、つまり、「第1の分離回路54及び第3の分離回路56はGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して0Ω(ショート)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して∞Ω(オープン)になり、一方、第2の分離回路55はGPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)に対して∞Ω(オープン)、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)に対して0Ω(ショート)になる」という所望の特性を得ることができる。
【0059】
第1〜第3の分離回路54〜56を共振回路で構成した場合のメリットは、回路構成や回路定数を適宜に変更することにより、様々な周波数に柔軟に対応でき、したがって、GPSやBluetoothに限らず、他の用途の無線部にも汎用性よく適用できる点にある。
【0060】
次に、実施形態の動作について説明する。
<GPS動作>
図8は、携帯電話機20をGPS端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をGPS端末として動作させた場合は、(a)に示すように、GPS用の第2の無線部(第B無線部)37が動作し、Bluetooth用の第3の無線部(第C無線部)38が非動作となるので、三つの分離回路(第1の分離回路54、第2の分離回路55及び第3の分離回路55)は、前記のとおり、第1の分離回路54と第3の分離回路55が「ショート」、残りの第2の分離回路55が「オープン」となり、その結果、オープン状態の第2の分離回路55につながる第2の無線部38が、図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0061】
したがって、GPS動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40の一端40aに第1の無線部37が接続されるとともに、共用アンテナ40の他端40bにグランド(GND)が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第2の無線部38)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第2の無線部38)からの干渉等の影響を排除できるという特有の効果を得ることができる。
【0062】
<Bluetooth動作>
図9は、携帯電話機20をBluetooth端末として動作させたときの概念図である。携帯電話機20をBluetooth端末として動作させた場合は、(a)に示すように、Bluetooth用の第3の無線部(第C無線部)38が動作し、GPS用の第2の無線部(第B無線部)37が非動作となるので、三つの分離回路(第1の分離回路54、第2の分離回路55及び第3の分離回路55)は、前記のとおり、第1の分離回路54と第3の分離回路55が「オープン」、残りの第2の分離回路55が「ショート」となり、その結果、オープン状態の第1の分離回路54につながる第1の無線部37と第3の分離回路55につながるグランド(GND)が、図中の破線で示すように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。
【0063】
したがって、Bluetooth動作時の実質的な回路構成は、(b)に示すように、共用アンテナ40の他端40bに第2の無線部38が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第1の無線部37とGND)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第1の無線部37)からの干渉等の影響を排除できるという特有の効果を得ることができる。
【0064】
このように、本実施形態の携帯電話機20では、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(GPS用の第1の無線部37とBluetooth用の第2の無線部38)で共用することができるから、筐体24に組み込むアンテナの数を電話用のアンテナ36aと合わせて二つにすることができる。したがって、冒頭で説明した二つの条件(手の影響を受けないこと、及び、アンテナ相互の電磁的干渉を回避できること)を満たすことができる適切な位置(たとえば、図13の第1の位置5及び第2の位置6)に支障なく組み込むことができる。
【0065】
加えて、本実施形態の携帯電話機20では、
(1)共用アンテナ40の一端40aと第1の無線部37との間に一の分離回路(第1の分離回路54)を介在させる、
(2)共用アンテナ40の他端40bと第2の無線部38との間に二の分離回路(第2の分離回路55)を介在させる、
(3)共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間に三の分離回路(第3の分離回路56)を介在させる、
構成とし、さらに、
【0066】
(4)第1の分離回路54は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の一端40aと第1の無線部37との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の一端40aと第1の無線部37との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする、
(5)第2の分離回路55は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の他端40bと第2の無線部38との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の他端40bと第2の無線部38との間の信号的な接続をオン(ショート)にする、
(6)第3の分離回路56は、GPS信号の周波数帯(第1の周波数Fa)で共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間の信号的な接続をオン(ショート)にする一方、Bluetooth信号の周波数帯(第2の周波数Fb)で共用アンテナ40の他端40bとグランド(GND)との間の信号的な接続をオフ(オープン)にする、
という機能を有するような回路構成としたので、
【0067】
(7)携帯電話機20をGPS端末として動作させた場合には、第1の分離回路54と第3の分離回路55が「ショート」、残りの第2の分離回路55が「オープン」となり、その結果、オープン状態の第2の分離回路55につながる第2の無線部38が、図8(a)の破線で示されるように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。したがって、GPS動作時の実質的な回路構成が、図8(b)に示すように、共用アンテナ40の一端40aに第1の無線部37が接続されるとともに、共用アンテナ40の他端40bにグランド(GND)が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第2の無線部38)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第2の無線部38)からの干渉等の影響を排除できるという特有の効果を得ることができる。
【0068】
(8)また、携帯電話機20をBluetooth端末として動作させた場合には、第1の分離回路54と第3の分離回路55が「オープン」、残りの第2の分離回路55が「ショート」となり、その結果、オープン状態の第1の分離回路54につながる第1の無線部37と第3の分離回路55につながるグランド(GND)が、図9(a)の破線で示されるように回路上、無視される(等価的に構成から省かれる)ことになる。したがって、Bluetooth動作時の実質的な回路構成が、図9(b)に示すように、共用アンテナ40の他端40bに第2の無線部38が接続された構成となり、要するに、不要な回路(第1の無線部37)が信号的に分離(アイソレーション)された構成となるから、分離された回路(第1の無線部37)からの干渉等の影響を排除できるという特有の効果を得ることができる。
【0069】
以上のとおり、本実施形態の携帯電話機20によれば、アンテナの数を三つから二つに減らして小さな筐体24に支障なく組み込むことができるという効果に加え、一つのアンテナ(共用アンテナ40)を二つの無線部(第2無線部37と第3無線部38)で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与することができ、これによって、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除できるという格別の効果が得られる。
【0070】
図10は、実施形態を適用した無線通信部31の実装図である。この図において、筐体24の本体部21には本体側電子基板63が内蔵され、また、蓋部23には蓋部側電子基板64が内蔵されており、これら二つの基板(本体側電子基板63と蓋部側電子基板64)の間に張り渡されたフレキシブル配線65を介して両基板間の信号伝達が行われている。
【0071】
二つの基板(本体側電子基板63と蓋部側電子基板64)には、それぞれ携帯電話機20の動作に必要な多種多様な部品が実装されているが、ここでは、図面の輻輳を避けるために、無線通信部31を構成する部品の実装例だけを示すことにする。まず、本体部21の上短辺付近に電話用のアンテナ36aが組み込まれている。この組み込み位置は、図13の第1の位置5に相当する。また、本体側電子基板63には整合回路41とWCDMA回路42とを含む第A無線部36が実装されており、さらに、第A無線部36の給電点P1と電話用のアンテナ36aとの間が伝送線路43を介して接続されている。
【0072】
また、蓋部23の上短辺付近にGPSとBluetooth兼用の共用アンテナ40が組み込まれている。この組み込み位置は、図13の第2の位置6に相当する。加えて、蓋部側電子基板64には整合回路44とGPS回路45とを含む第B無線部(第1の無線部)37及び整合回路46とBluetooth回路47とを含む第C無線部(第2の無線部)38が実装されており、さらに、三つの分離回路(第1〜第3の分離回路54〜56)が実装されている。
【0073】
第1の分離回路54の実装位置は第B無線部(第1の無線部)37と給電点P2の間であり、第2の分離回路54の実装位置は第C無線部(第2の無線部)38と給電点P3の間であり、また、第3の分離回路56の実装位置は伝送線路50とグランド(GND)の給電点P4との間である。
【0074】
第B無線部(第1の無線部)37の給電点P2と共用アンテナ40の一端40aとの間が伝送線路48を介して接続され、第C無線部(第2の無線部)38の給電点P3と共用アンテナ40の他端40bとの間が伝送線路49、50を介して接続され、さらに、第3の分離回路56とグランド(GND)の給電点P4との間が伝送線路51を介して接続されている。
【0075】
このように、前記の実施形態を適用した無線通信部31の実装例においては、本体部21の上短辺付近に電話用のアンテナ36aを組み込み、さらに、蓋部23の上短辺付近にGPS及びBluetooth兼用の共用アンテナ40を組み込むことができるが、これらの組み込み位置は、図13の第1の位置5及び第2の位置6に相当するから、結局のところ、人体(手)の影響を受けにくく、しかも、複数のアンテナ(電話用のアンテナ36aと、GPS及びBluetooth兼用の共用アンテナ40)の相互間距離を離すことができるというアンテナ組み込み位置の冒頭の条件(第1の条件と第2の条件)をともに満たすことができる。
【0076】
なお、図10における二つの基板(本体側電子基板63と蓋部側電子基板64)のハッチング部分は、接地電位のグランドパターンを示している。図示のように、グランドパターンの一部を切り抜いて無線通信部31の主要部がグランドパターンの上に位置しないようにすることが望ましい。ここで、無線通信部31の主要部とは、整合回路41、44、46、分離回路54、55、56、共用アンテナ40並びに伝送線路43、48、49、50、51などである。これらの主要部直下からグランドパターンを無くすことにより、電磁的なグランドループの発生を回避でき、高周波特性の変化や効率の低下を防止することができる。
【0077】
なお、以上の説明では、共用アンテナ40の一端40aに第B無線部(第1の無線部)37を接続するとともに、共用アンテナ40の他端40bに第C無線部(第2の無線部)38を接続し、さらに、共用アンテナ40の他端40bにグランド(GND)を接続する構成を示したが、これに限定されない。
【0078】
図11は、他の構成を示す図である。この図に示すように、共用アンテナ40の一端40aに第B無線部(第1の無線部)37を接続するとともに、共用アンテナ40の他端40bに第C無線部(第2の無線部)38を接続する構成であってもよい。つまり、共用アンテナ40の他端40bにグランド(GND)を接続しない構成であってもよい。この構成の場合は、第3の分離回路56が不要になるうえ、共用アンテナ40(2端子型のアンテナ)の一方側電極(他端40b)をグランド(GND)に接続しないタイプの無線部にも支障なく適用することができる。
【0079】
さらに、前記の実施形態では、第1〜第3の分離回路54〜56を「共振回路」(図6または図7参照)で構成しているが、これにも限定されない。たとえば、以下のようにしてもよい。
【0080】
図12は、分離回路の他の構成を示す図である。この図において、第1の分離回路66、第2の分離回路67及び第3の分離回路68は、いずれも制御部34からの制御信号に応じて個別にオンオフするスイッチ素子66a、67a、68aを備えている。このような構成において、第C無線部(第2の無線部)38を分離するには、第1の分離回路66のスイッチ素子68aと第3の分離回路68のスイッチ素子68aを「オン」にし、第2の分離回路67のスイッチ装置67aを「オフ」にすればよい。また、第B無線部(第1の無線部)37を分離するには、第1の分離回路66のスイッチ素子68aと第3の分離回路68のスイッチ素子68aを「オフ」にし、第2の分離回路67のスイッチ装置67aを「オン」にすればよい。前記の実施形態と同様に、GPS動作時(第1の無線部37の動作時)には第C無線部(第2の無線部)38を分離してその影響を完全に回避することができ、また、Bluetooth動作時(第2の無線部38の動作時)には第B無線部(第1の無線部)37を分離してその影響を完全に回避することができる。周波数特性を持たないスイッチ要素66a〜68aを使用するため、無線部の動作周波数を考慮する必要がなく、したがって、より汎用性の向上を図ることができる。
【0081】
なお、この構成においても、先の図11と同様に、第3の分離回路68を含まない構成としてもよい。
【0082】
また、以上の説明では、携帯電話機への適用を例にしたが、これに限定されない。少なくとも二つの無線部を実装した電子機器であって、二つの無線部で一つのアンテナを共用することが求められる電子機器であれば、如何なるものであっても適用することができる。
【0083】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
2端子型のアンテナと、
第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、
前記第1の周波数と異なる第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、
前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間に挿入された第1の分離回路と、
前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間に挿入された第2の分離回路とを備え、
前記第1の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をオープン状態にし、
前記第2の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置。
付記1によれば、一つのアンテナを二つの無線部で共用する際の無線部間のアイソレーション機能を付与し、一方の無線部に対する他方の無線部の影響を排除することができる。
【0084】
(付記2)
さらに、前記アンテナの他端とグランドとの間に挿入された第3の分離回路を備え、
前記第3の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの他端と前記グランドとの間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの他端と前記グランドとの間をオープン状態にする
ことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置。
付記2によれば、2端子型のアンテナの一方側電極(他端)をグランドに接続するタイプの無線部にも支障なく適用することができる。
【0085】
(付記3)
前記第1の分離回路及び第2の分離回路が共振回路で構成されていることを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置。
付記3によれば、共振回路の構成や回路定数を適宜に選択することにより、様々な周波数で動作する各種の無線部に対して汎用的に適用することができる。
【0086】
(付記4)
前記第3の分離回路が共振回路で構成されていることを特徴とする付記2に記載のアンテナ装置。
付記4によれば、付記3と同様に、共振回路の構成や回路定数を適宜に選択することにより、様々な周波数で動作する各種の無線部に対して汎用的に適用することができる。
【0087】
(付記5)
前記第1及び第2の分離回路がスイッチ要素で構成されており、
さらに、前記スイッチ要素のオンオフを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記第1の無線部が動作しているときに、前記第1の分離回路が前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をショート状態にするように前記第1の分離回路のスイッチ要素をオンにするとともに、前記第2の分離回路が前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をオープン状態にするように前記第2の分離回路のスイッチ要素をオフにし、
前記第2の無線部が動作しているときに、前記第1の分離回路が前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をオープン状態にするように前記第1の分離回路のスイッチ要素をオフにするとともに、前記第2の分離回路が前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をショート状態にするように前記第2の分離回路のスイッチ要素をオンにする
ことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置。
付記5によれば、周波数特性を持たないスイッチ要素を使用するため、無線部の動作周波数を考慮する必要がなく、したがって、より汎用性の向上を図ることができる。
【0088】
(付記6)
前記第3の分離回路がスイッチ要素で構成されており、
さらに、前記スイッチ要素のオンオフを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記第1の無線部が動作しているときに、前記第3の分離回路が前記アンテナの他端と前記グランドとの間をショート状態にするように前記第3の分離回路のスイッチ要素をオンにし、
前記第2の無線部が動作しているときに、前記第3の分離回路が前記アンテナの他端と前記グランドとの間をオープン状態にするように前記第3の分離回路のスイッチ要素をオフにする
ことを特徴とする付記2に記載のアンテナ装置。
付記6によれば、付記5と同様に、周波数特性を持たないスイッチ要素を使用するため、無線部の動作周波数を考慮する必要がなく、したがって、より汎用性の向上を図ることができる。
【0089】
(付記7)
前記アンテナの一端または他端につながる伝送線路を前記アンテナの共振周波数特性調整要素としたことを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置。
付記7によれば、もしも、アンテナの共振周波数が所要の共振周波数、つまり、第1の周波数(Fa)と第2の周波数(Fb)に合致していなかった場合に伝送線路の長さを増減して所要の共振周波数を得ることができる。
【0090】
(付記8)
付記1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器。
付記8によれば、携帯電話機に限らず、少なくとも二つの無線部を実装した電子機器であって、二つの無線部で一つのアンテナを共用することが求められる電子機器一般に広く適用して好適な技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0091】
GND グランド
20 携帯電話機(電子機器)
34 制御部(制御手段)
37 第B無線部(第1の無線部)
38 第C無線部(第2の無線部)
40 共用アンテナ(アンテナ)
40a 一端
40b 他端
50 伝送線路(共振周波数特性調整要素)
54 第1の分離回路(共振回路)
55 第2の分離回路(共振回路)
56 第3の分離回路(共振回路)
66a スイッチ要素
67a スイッチ要素
68a スイッチ要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2端子型のアンテナと、
第1の周波数(Fa)で動作する第1の無線部と、
前記第1の周波数と異なる第2の周波数(Fb)で動作する第2の無線部と、
前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間に挿入された第1の分離回路と、
前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間に挿入された第2の分離回路とを備え、
前記第1の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をオープン状態にし、
前記第2の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をオープン状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をショート状態にする
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
さらに、前記アンテナの他端とグランドとの間に挿入された第3の分離回路を備え、
前記第3の分離回路は、前記第1の周波数(Fa)に応答して前記アンテナの他端と前記グランドとの間をショート状態にする一方、前記第2の周波数(Fb)に応答して前記アンテナの他端と前記グランドとの間をオープン状態にする
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の分離回路及び第2の分離回路が共振回路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第3の分離回路が共振回路で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の分離回路がスイッチ要素で構成されており、
さらに、前記スイッチ要素のオンオフを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記第1の無線部が動作しているときに、前記第1の分離回路が前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をショート状態にするように前記第1の分離回路のスイッチ要素をオンにするとともに、前記第2の分離回路が前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をオープン状態にするように前記第2の分離回路のスイッチ要素をオフにし、
前記第2の無線部が動作しているときに、前記第1の分離回路が前記アンテナの一端と前記第1の無線部との間をオープン状態にするように前記第1の分離回路のスイッチ要素をオフにするとともに、前記第2の分離回路が前記アンテナの他端と前記第2の無線部との間をショート状態にするように前記第2の分離回路のスイッチ要素をオンにする
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第3の分離回路がスイッチ要素で構成されており、
さらに、前記スイッチ要素のオンオフを制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
前記第1の無線部が動作しているときに、前記第3の分離回路が前記アンテナの他端と前記グランドとの間をショート状態にするように前記第3の分離回路のスイッチ要素をオンにし、
前記第2の無線部が動作しているときに、前記第3の分離回路が前記アンテナの他端と前記グランドとの間をオープン状態にするように前記第3の分離回路のスイッチ要素をオフにする
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナの一端または他端につながる伝送線路を前記アンテナの共振周波数特性調整要素としたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のアンテナ装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−124728(P2012−124728A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274251(P2010−274251)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)