説明

アース端子

【課題】シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力を軽減でき、シールドとの導通を安定化させることができるアース端子を提供する。
【解決手段】繊維導体からなるシールド3に接続されてアース処理するアース端子1において、シールド3が配置される底壁5と、底壁5と一体に設けられシールド3を加締める一対の加締め片7と、底壁5を折り返して設けられ少なくとも底壁5との間にシールド3が配置され一対の加締め片7の加締めによってシールド3に掛かる加締め力を底壁5の幅方向に逃がす折り返し片11とを有した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アース端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維導体からなるシールドに接続されてアース処理するアース端子としては、ケーブル内に設けられたシールドとしての編組が配置される底壁と、底壁と一体に設けられ編組を加締める一対の加締め片としての編組加締め部と、一対の編組加締め部の先端部との間で編組を狭持するように先端部がケーブル端部側からケーブルの絶縁内皮と編組との間に差し込まれる接続片とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このアース端子では、一対の編組加締め部の内面に加締め時に接続片がケーブルの芯線側に変位するのを阻止する係止部が突設されており、加締め時の接続片の変位を阻止して絶縁内皮の押し潰しを防止し、ケーブルの高周波特性が圧着接続によって損なわれることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−319175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなアース端子では、シールドの端部から芯線とこの芯線を覆う絶縁内皮とが外部に引き出され、芯線に接続端子が挿着されてこの接続端子を覆うようにアース端子が配置され、このアース端子の接続片が絶縁内皮とシールドとの間に挿入されている。
【0006】
これに対して、シールドの途中から絶縁内皮と芯線とを外部に引き出し、アース処理をするためにシールドのみにアース端子を接続することがある。この場合には、シールドにアース端子に接続されたドレイン線などを半田付けによって接続している。
【0007】
しかしながら、半田付けによるドレイン線のシールドへの接続では、ドレイン線に外力などが加わると接続が解除される可能性が高いと共に、良品生産のための温度や時間などの条件管理が困難であった。
【0008】
これに対して、シールドに対して直接アース端子の一対の加締め片を加締めることが考えられるが、この場合には、シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力が非常に大きく、シールドが損傷してしまう恐れがある。
【0009】
そこで、この発明は、シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力を軽減でき、シールドとの導通を安定化させることができるアース端子の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、繊維導体からなるシールドに接続されてアース処理するアース端子であって、前記シールドが配置される底壁と、前記底壁と一体に設けられ前記シールドを加締める一対の加締め片と、前記底壁を折り返して設けられ少なくとも前記底壁との間に前記シールドが配置され前記一対の加締め片の加締めによって前記シールドに掛かる加締め力を前記底壁の幅方向に逃がす折り返し片とを有することを特徴とする。
【0011】
このアース端子では、底壁を折り返して設けられ少なくとも底壁との間にシールドが配置され一対の加締め片の加締めによってシールドに掛かる加締め力を底壁の幅方向に逃がす折り返し片を有するので、シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力を分散でき、シールドの損傷を防止することができる。
【0012】
従って、このようなアース端子では、シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力を軽減でき、シールドとの導通を安定化させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアース端子であって、前記折り返し片と前記底壁との間には、前記シールドが配置され、前記折り返し片と前記底壁とは、互いに近接するように加締められ、前記一対の加締め片の端部側は、前記折り返し片を加締めることを特徴とする。
【0014】
このアース端子では、折り返し片と底壁との間に配置されたシールドが折り返し片と底壁とによって加締められ、一対の加締め片の端部側が折り返し片を加締めるので、一対の加締め片の加締め力が直接シールドに入力されることがなく、加締め時にシールドに掛かる負担を軽減することができる。加えて、折り返し片と底壁とを加締めるので、シールドを確実に保持することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のアース端子であって、前記一対の加締め片は、一方の加締め片が前記折り返し片の対向面と平行になるように加締められ、他方の加締め片が前記一方の加締め片に重なるように加締められていることを特徴とする。
【0016】
このアース端子では、一対の加締め片が、一方の加締め片が折り返し片の対向面と平行になるように加締められ、他方の加締め片が一方の加締め片に重なるように加締められているので、一対の加締め片の加締め力がシールドに対して局部的に掛かることがなく、シールドの損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シールドに掛かる一対の加締め片の加締め力を軽減でき、シールドとの導通を安定化させることができるアース端子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアース端子の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るアース端子の断面図である。
【図3】(a)は本発明の第1実施形態に係るアース端子の上面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係るアース端子の側面図である。
【図4】(a)は本発明の第1実施形態に係るアース端子の上面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係るアース端子の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るアース端子の断面図である。
【図6】本発明のアース端子が接続されるケーブルの側面図である。
【図7】(a)は本発明の第2実施形態に係るアース端子が接続されるケーブルの側面図である。(b)は本発明の第2実施形態に係るアース端子の断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るアース端子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図8を用いて本発明の実施の形態に係るアース端子について説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図6を用いて第1実施形態について説明する。
【0021】
本実施の形態に係るアース端子1は、繊維導体からなるシールド3に接続されてアース処理する。
【0022】
そして、このアース端子1は、シールド3が配置される底壁5と、底壁5と一体に設けられシールド3を加締める一対の加締め片7,9と、底壁5を折り返して設けられ少なくとも底壁5との間にシールド3が配置され一対の加締め片7,9の加締めによってシールド3に掛かる加締め力を底壁5の幅方向に逃がす折り返し片11とを有する。
【0023】
図6に示すように、アース端子1が接続されるシールド3は、ケーブル13の構成部材の1つとなっている。ケーブル13は、芯線が絶縁被覆によって覆われた2本の電線15と、この2本の電線15の外周を覆うシールド3とを備えている。なお、シールド3の外周は、図示しないが、絶縁被覆によって覆われている。2本の電線15は、端部が絶縁被覆を剥がされ、電機部品などに接続される接続端子17がそれぞれ電気的に接続されている。この2本の電線15は、シールド3の途中部分から外部に引き出されている。
【0024】
シールド3は、高分子繊維材料に無電解めっき処理などを施し、高分子材料に導電性を持たせた可撓性の繊維導体からなる。このシールド3の端部には、アース端子1が電気的に接続され、アース端子1を接地することによってアース処理される。
【0025】
図1〜図5に示すように、アース端子1は、板状の導電性材料を折り曲げ加工されて形成され、底壁5と、一対の加締め片7,9と、折り返し片11とを備えている。底壁5は、シールド3の長さ方向に延設され、シールド3の端部が載置される。また、底壁5の端部側には、接地用の孔からなる接地部19が形成され、この接地部19でアース端子1が接地される。この底壁5の幅方向の両側には、一対の加締め片7,9が底壁5と連続する一部材で設けられている。
【0026】
一対の加締め片7,9は、底壁5の幅方向両側でそれぞれ底壁5から上方に向けて延設されると共に、シールド3の長さ方向に延設されている。この一対の加締め片7,9は、治具(不図示)によって互いに端部を当接するように加締められシールド3を固定すると共に、シールド3とアース端子1とを電気的に接続する。このような一対の加締め片7,9と底壁5との間には、折り返し片11が介在されている。
【0027】
折り返し片11は、底壁5の一対の加締め片7,9が位置する部分の中央部を切り欠き、底壁5の上面と平行となるように折り曲げ加工されて断面コ字状に設けられている。この折り返し片11は、シールド3が挿通されて一対の加締め片7,9によって加締められる。このとき、折り返し片11は、シールド3の長さ方向と直交する幅方向に広く設けられているので、シールド3に掛かる一対の加締め片7,9の上下方向への加締め力が幅方向に分散される。このため、シールド3を幅方向に広げながら徐々に圧縮させることができ、シールド3の損傷を防止しながら、シールド3と底壁5と一対の加締め片7,9と折り返し片11とを密着させることができる。このような折り返し片11により、一対の加締め片7,9の加締め力がシールド3に対して局部的に掛かることを防止して、アース端子1とシールド3との導通信頼性を向上することができる。
【0028】
このように構成されたアース端子1のシールド3への組付けは、まず、折り返し片11を覆うようにシールド3を折り返し片11に挿通させる。そして、治具によって、一対の加締め片7,9の端部を当接するように加締め、シールド3をアース端子1に固定して組付けを完了する。
【0029】
このようなアース端子1では、底壁5を折り返して設けられ少なくとも底壁5との間にシールド3が配置され一対の加締め片7,9の加締めによってシールド3に掛かる加締め力を底壁5の幅方向に逃がす折り返し片11を有するので、シールド3に掛かる一対の加締め片7,9の加締め力を分散でき、シールド3の損傷を防止することができる。
【0030】
従って、このようなアース端子1では、シールド3に掛かる一対の加締め片7,9の加締め力を軽減でき、シールド3との導通を安定化させることができる。
【0031】
(第2実施形態)
図7を用いて第2実施形態について説明する。
【0032】
本実施の形態に係るアース端子101は、折り返し片11と底壁5との間には、シールド3が配置され、折り返し片11と底壁5とは、互いに近接するように加締められ、一対の加締め片7,9(片側のみ図示)の端部側は、折り返し片11を加締める。
【0033】
なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0034】
図7に示すように、シールド3は、アース端子101に接続される端部が厚み方向に小さくなるように潰され、折り返し片11と底壁5との間に挿入される。このシールド3を折り返し片11と底壁5との間に挿入した状態で、折り返し片11と底壁5とを治具(不図示)によって互いに近接するように加締める。この加締めにより、シールド3が折り返し片11と底壁5とによって狭持されて仮固定されると共に、シールド3とアース端子1とが電気的に接続される。この折り返し片11と底壁5との加締めにおいては、折り返し片11が幅方向に広く形成された平板状であるので、折り返し片11がシールド3を平面で押圧することになり、シールド3に対して加締め力が局部的に掛かることがない。
【0035】
このように折り返し片11と底壁5とでシールド3を仮固定した状態で、一対の加締め片7,9を治具によって加締めると、一対の加締め片7,9の端部側が折り返し片11の上面を押圧しながら加締められることになる。この一対の加締め片7,9の加締め力は、折り返し片11の上面に局部的に掛かることとなるが、折り返し片11はシールド3を平面で押圧するので、シールド3に一対の加締め片7,9の加締め力が局部的に入力されることがない。この一対の加締め片7,9を加締めることにより、シールド3がアース端子101に本固定され、シールド3とアース端子101との導通を安定化することができる。また、折り返し片11と底壁5と加締めた後に一対の加締め片7,9を加締めることにより、シールド3が徐々に加締められることになり、繊維導体からなるシールド3に掛かる負荷を軽減することができる。
【0036】
このように構成されたアース端子101のシールド3への組付けは、まず、シールド3を折り返し片11と底壁5との間に挿入可能なように厚みを薄く成形する。次に、成形されたシールド3を折り返し片11と底壁5との間に挿入し、折り返し片11と底壁5とを治具によって互いに近接するように加締める。そして、一対の加締め片7,9を治具によって加締め、シールド3をアース端子101に固定して組付けを完了する。
【0037】
このようなアース端子101では、折り返し片11と底壁5との間に配置されたシールド3が折り返し片11と底壁5とによって加締められ、一対の加締め片7,9の端部側が折り返し片11を加締めるので、一対の加締め片7,9の加締め力が直接シールド3に入力されることがなく、加締め時にシールド3に掛かる負担を軽減することができる。加えて、折り返し片11と底壁5とを加締めるので、シールド3を確実に保持することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図8を用いて第3実施形態について説明する。
【0039】
本実施の形態に係るアース端子201は、一対の加締め片7,9は、一方の加締め片9が折り返し片11の対向面と平行になるように加締められ、他方の加締め片7が一方の加締め片9に重なるように加締められている。
【0040】
なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、得られる効果は同一である。
【0041】
図8に示すように、一対の加締め片7,9は、シールド3を折り返し片11に挿通した後(もしくは図7に示すように、シールド3を折り返し片11と底壁5との間に挿入した後)、一方の加締め片9が治具(不図示)によって折り返し片11の対向面である上面と平行となるように加締められ、他方の加締め片7が治具によって一方の加締め片9の上面と重なるように加締められる。このように一対の加締め片7,9を加締めることにより、一対の加締め片7,9の端部がシールド3(もしくは折り返し片11の上面)を押圧することがなく、シールド3に局部的に加締め力が掛かることを防止することができる。
【0042】
なお、このような一対の加締め片7,9の加締めにおいては、例えば、折り返し片11を円柱状に形成し、一方の加締め片9を折り返し片11の対向面である曲面に沿うように加締めてもよい。この場合には、一対の加締め片7,9の加締め力を折り返し片11の曲面に沿ってより幅方向に分散させることができる。
【0043】
このように構成されたアース端子201のシールド3への組付けは、まず、シールド3を折り返し片11に挿通させる(もしくはシールド3を折り返し片11と底壁5との間に挿入させる)。次に、一方の加締め片9を治具によって、折り返し片11の上面と平行となるように加締める。そして、他方の加締め片7を治具によって、一方の加締め片9に重なるように加締め、シールド3をアース端子201に固定して組付けを完了する。
【0044】
このようなアース端子201では、一対の加締め片7,9が、一方の加締め片9が折り返し片11の対向面と平行になるように加締められ、他方の加締め片7が一方の加締め片9に重なるように加締められているので、一対の加締め片7,9の加締め力がシールド3に対して局部的に掛かることがなく、シールド3の損傷を防止することができる。
【0045】
なお、本発明の実施の形態に係るアース端子では、折り返し片の形状が平板状や円柱状となっているが、これに限らず、一対の加締め片の加締め力を幅方向に逃がすことができる形状であれば、折り返し片の形状はどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,101,201…アース端子
3…シールド
5…底壁
7,9…一対の加締め片
11…折り返し片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維導体からなるシールドに接続されてアース処理するアース端子であって、
前記シールドが配置される底壁と、前記底壁と一体に設けられ前記シールドを加締める一対の加締め片と、前記底壁を折り返して設けられ少なくとも前記底壁との間に前記シールドが配置され前記一対の加締め片の加締めによって前記シールドに掛かる加締め力を前記底壁の幅方向に逃がす折り返し片とを有することを特徴とするアース端子。
【請求項2】
請求項1記載のアース端子であって、
前記折り返し片と前記底壁との間には、前記シールドが配置され、前記折り返し片と前記底壁とは、互いに近接するように加締められ、前記一対の加締め片の端部側は、前記折り返し片を加締めることを特徴とするアース端子。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアース端子であって、
前記一対の加締め片は、一方の加締め片が前記折り返し片の対向面と平行になるように加締められ、他方の加締め片が前記一方の加締め片に重なるように加締められていることを特徴とするアース端子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−38046(P2013−38046A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175712(P2011−175712)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】