説明

イオントラップ質量分析計システムを操作するための方法

イオントラップを有する質量分析計システムを操作する方法が提供される。本方法は、第1の群の前駆イオンおよび第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の選択された特徴を符号化することを備え、第1の複数のフラグメントイオンは、第1の選択された特徴を有し、他のイオンは、第1の選択された特徴を欠くように、符号化操作は、他のイオンには適用されずに、第1の群の前駆イオンおよび第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、イオントラップ質量分析計システムを操作するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(導入部)
イオントラップ質量分析計を使用した複雑な混合物の分析は、典型的には、標的前駆イオンの質量分解、フラグメントイオンの発生、およびこれらのフラグメントイオンの質量走査の実行を伴う。複雑な混合物の分析の効率性および正確性を改良する継続的必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
本発明の実施形態の側面に従って、イオントラップを有する質量分析計システムを操作する方法が提供される。本方法は、a)第1の群の前駆イオンを処理し、イオントラップ内にトラップされる第1の複数のフラグメントイオンを取得することと、b)第1の群の前駆イオンおよび第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の第1の選択された特徴を符号化するために、第1の符号化操作を適用することであって、第1の複数のフラグメントイオンは、第1の選択された特徴を有し、他のイオンは、第1の選択された特徴を欠くように、第1の符号化操作は、他のイオンには適用されずに、第1の群の前駆イオンおよび第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つに適用される、ことと、c)第1の複数のフラグメントイオンおよび他のイオンをイオントラップから排出することと、d)第1の複数のフラグメントイオンおよび他のイオンを検出することと、e)第1の選択された特徴に基づいて、検出される第1の複数のフラグメントイオンと、第1の群の前駆イオンとを相関させ、第1の複数のフラグメントイオンと、検出される他のイオンとを区別することと、を包含する。
【0004】
出願人の教示のこれらおよび他の特長は、本明細書に記載される。
【0005】
当業者は、後述の図面が、例証目的だけのためであることを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲を決して制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、概略図において、本発明の第1の実施形態の側面に従う方法を実装するように操作可能な、線形イオントラップ質量分析計システムを示す。
【図2】図2は、概略図において、本発明の第2の実施形態の側面に従う方法を実装するように操作可能な、第2の線形イオントラップ質量分析計システムを示す。
【図3】図3は、概略図において、本発明の第3の実施形態の側面に従う方法を実装するように操作可能な、第3の線形イオントラップ質量分析計システムを示す。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態の第1の側面に従って、図1の線形イオントラップ質量分析計システムを操作することによって得られた、2つのペプチド(グルフィブリノペプチド(グルフィブ)およびアンジオテンシンI(アンジオ))の混合物の複合生成イオンスペクトルを示す。
【図5】図5は、図4の複合生成イオンスペクトルの低質量範囲のスケール拡張図である。
【図6】図6は、図4の複合生成イオンスペクトルの中間質量範囲のスケール拡張図である。
【図7】図7は、図4の複合生成イオンスペクトルの高質量範囲のスケール拡張図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
図1を参照すると、概略図において、Hager and LeBlanc in Rapid Communications of Mass Spectrometry System 2003、17、1056−1064に記載のような線形イオントラップ質量分析計システム10が示される。質量分析計システムの操作の際、イオン源11からのイオンは、オリフィス板14およびスキマー16を通して、真空チャンバ12内に入り得る。線形イオントラップ質量分析計システム10は、ロッドセットQ0後のオリフィス板IQ1、Q1とQ2との間のIQ2、Q2とQ3との間のIQ3とともに、4つの細長いセットのロッドQ0、Q1、Q2、およびQ3を備える。付加的セットの短く太いロッドQ1aは、オリフィス板IQ1と細長いロッドセットQ1との間に提供される。
【0008】
ある場合には、隣接する対のロッドセット間の漏れ電界は、イオン流動を歪曲させる場合がある。短く太いロッドQ1aは、オリフィス板IQ1と細長いロッドセットQ1との間に提供され、イオン流動を細長いロッドセットQ1に集中させる。
【0009】
イオンは、圧力約8x10−3トールに維持され得るQ0内で衝突冷却することができる。伝送質量分析計Q1および下流線形イオントラップ質量分析計Q3は両方、従来の伝送RF/DC多極質量分析計として操作可能である。Q2は、イオンが衝突ガスと衝突し、より低い質量の生成物にフラグメント化される衝突セルである。典型的には、イオンは、多極ロッドに印加されるRF電圧と、末端開口レンズ18に印加される障壁電圧とを使用して、線形イオントラップ質量分析計Q3内にトラップされてもよい。Q3は、圧力約3x10−5トール、ならびに10−5トール乃至10−4トールの範囲の他の圧力で操作可能である。
【0010】
図2を参照すると、概略図において、代替線形イオントラップ質量分析計システム10が示される。明確にするために、図1の線形イオントラップ質量分析計システムに対し使用されるものと同一参照番号が、図2の線形イオントラップ質量分析計システムに対し使用される。簡潔にするために、図1の説明は、図2に対し繰り返さない。
【0011】
図2の線形イオントラップ質量分析計システム10は、図1の線形イオントラップ質量分析計システムに類似するが、図2の線形イオントラップ質量分析計システム10では、Q1は、伝送質量分析計である代わりに、イオントラップである。本発明の実施形態の側面に従う図2の線形イオントラップ質量分析計システム10のための操作モードは、後述される。
【0012】
図3を参照すると、さらなる代替質量分析計システム10が、概略図において示される。明確にするために、図1の線形イオントラップ質量分析計システムに対し使用されるものと同一参照番号が、図3の線形イオントラップ質量分析計システムに対し使用される。簡潔にするために、図1の説明は、図3に対し繰り返さない。図3のこの質量分析計システム10は、図1の質量分析計システムに類似するが、図1のQ3および検出器30は、飛行時間(TOF)型質量分析計と置換されている。さらに詳細に後述されるように、図3の質量分析計システム10はまた、本発明のさらなる実施形態の側面に従う方法を実装するために使用可能である。
【0013】
前述のように、イオントラップ質量分析計を使用する複雑な混合物の分析は、通常、標的前駆イオンの質量分解、フラグメントイオンの発生、および質量走査の実行を伴う。このサイクルに伴う時間は、限られた数の生成イオン質量スペクトルが、液体クロマトグラフ分離の際に発生し得ることを意味する場合が多い。検体混合物が特に複雑な場合、この制限は深刻となり得る。したがって、数回の再注入が必要とされる場合がある。
【0014】
本発明の実施形態の側面に従って、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10のデューティサイクルを向上させるための方法が後述される。本方法は、イオントラップQ3を一連の前駆イオンからの生成イオンで連続的に充填することを伴い、その後、単一質量分析走査ステップが続き得る。結果として生じるスペクトルは、前駆イオンすべてのフラグメントイオンからの寄与率を含有するであろう。特定のフラグメントイオンが、由来する前駆イオンにマップバック可能である場合、複数の生成イオン質量スペクトルは、イオントラップの各質量走査ステップに対し発生し得るため、イオントラップ質量分析計システム10は、より高いデューティサイクルで操作可能である。
【0015】
通常、2つ以上の前駆イオンがフラグメント化されている場合、フラグメントイオンまたはフラグメントイオンの群を特定の前駆イオンに帰属させることは非常に困難であるだろう。現在の方法は、前駆イオンから生じるフラグメントイオンでも可視であり得る各前駆イオンに対し、情報を符号化することを可能とする。そのような前駆イオン特有情報は、同位体分布の差異、質量スペクトルピーク幅の差異、イオン強度の差異、およびフラグメント化の程度の差異であることができる。また、他のイオン特有情報が符号化されてもよい。情報は、前駆体内で符号化され、次いで、フラグメント内に引き継がれてもよく、または他の符号化操作を使用して、フラグメント内で直接符号化されてもよい。これらの符号化操作はそれぞれ、以下で順に検討される。
【0016】
(同位体パターンの差異)
線形イオントラップ質量分析計システムは、線形イオントラップQ3への流入に先立って、前駆イオンを質量選択し、フラグメント化することができる。例えば、イオン源11からのイオンは、Q1によって質量分析され、Q2における衝突活性化を介してフラグメント化され得る。イオン源11からのイオン流がQ3の上流で質量分解可能であるという事実は、各「充填」ステップのための分解Q1質量フィルタの設定を単純に変更することによって、連続的「充填」ステップを使用して、異種イオンをQ3に流入させることが可能であることを意味する。さらに、Q1は、それぞれ独特の同位体パターンを有するように、前駆イオンを選択可能である。
【0017】
線形イオントラップ質量分析計システムの従来の操作では、前駆イオンは、多くの場合、「単位」または「開放」分解能のいずれかを伴って、それぞれに対し同一分解特徴を使用して、Q1によって選択される。Q1が「単位」質量分解能で操作される場合、伝送ピーク幅は、半値幅約0.7amuである。Q1が「開放」分解能で操作される場合、伝送窓は、非常に広くなり、例えば、半値幅2−4amuである。単位質量分解で操作されるQ1は、前駆イオン同位体分布から単一同位体のみを選択可能である場合が多い。対照的に、開放分解能で操作されるQ1は、前駆イオンの同位体分布全体の通過を可能にする場合が多い。
【0018】
本発明の実施形態の側面による本方法に従って、前駆イオンは、それぞれ独特の同位体分布を有するように選択可能である。したがって、フラグメント化される場合、各前駆体に対し結果として生じる生成イオンもまた、独特の同位体分布を有するであろう。前駆体1に対し12C同位体と、前駆体2に対し121313C同位体のみを選択する単純な実施例を検討する。前駆体1から発生するフラグメントイオンはすべて、単同位体であり得る一方、前駆体2から発生するものは、13C同位体を伴わず、単一13C同位体を伴うフラグメントイオンと、2つの13C同位体を伴うフラグメントとからの寄与率を有し得る。生成イオンスペクトルにおけるフラグメントの同位体の相対強度は、フラグメントイオンのm/zに依存し、既知の技術を使用して計算可能である。
【0019】
単純な実施例として、2つのペプチド(グルフィブリノペプチド(グルフィブ)およびアンジオテンシンI(アンジオ))の混合物と、4000QTRAPとを検討する。アンジオ前駆イオンは、12C同位体のみが伝送されるように、Q1によって選択可能である。次いで、このイオンは、Q2においてフラグメント化され、生成物および残留前駆イオンは、Q3LIT内にトラップされ得る。次に、Q3LITの走査に先立って、Q1は、Q2においてフラグメント化され得るグルフィブの121313C同位体と、Q3LIT内にトラップされる生成物とを選択可能である。Q3の作動圧力に応じて、数十ミリ秒であり得る冷却期間後、Q3LITは、走査され、アンジオおよびグルフィブフラグメントイオンから成る複合生成イオン質量スペクトルを生成し得る。スペクトルを詳しく観察すると、フラグメントイオンが、その同位体分布に基づいて、前駆イオンに容易に割り当てられ得ることが示される。アンジオフラグメントはすべて、単同位体から成り得る一方、グルフィブからのものは、Q1によって選択される前駆同位体と、フラグメントm/zとに基づいて、独特の同位体分布を有し得る。図4は、完全複合質量スペクトルを示す。ここでは、スペクトルは、視覚的区別を明確にするために、個別に収集され、点線および実線を使用して符号化されている。図5−7は、同位体符号化による前駆イオン選択の効果をさらに理解するための質量スケール拡張図を示す。図5から7の質量スペクトルから明白であるように、アンジオのフラグメントのピークは、予測通り、グルフィブのフラグメントのピークと容易に区別される。故に、異なる同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、異なる前駆体のフラグメントを区別し、これらのフラグメントをそのそれぞれの前駆体と相関させ戻すことが可能である。
【0020】
これらのスペクトルは、前駆同位体符号化が、フラグメントイオンと、単一生成イオン質量スペクトル内の2つ以上の前駆イオンとを区別するために十分な情報を提供可能であることを実証する。
【0021】
一般に、前駆イオン同位体符号化は、前駆イオンの単一同位体ピークの選択に制約される必要はない。121313C同位体がすべて同一強度を有するように、または前駆同位体パターンが、フラグメント化に先立って、特定の同位体を欠いている、例えば、最初の13C同位体が、フラグメント化のために下流に送られる同位体クラスタから省略されている12C_13Cのように、前駆イオンが符号化される技術が想定され得る。一連の可能な前駆イオン同位体の符号化は、後述される。
【0022】
(前駆イオン同位体の符号化スキームの実施例)
【0023】
【化1】

この技術は、イオントラップに先立って、質量選択およびフラグメント化を伴わない他のイオントラップ質量分析計にも適用可能である。トラップ内前駆イオン選択およびフラグメント化に対し、調整された波形を前駆同位体符号化およびフラグメント化の両方に使用可能である。この種の同位体符号化は、2つを超える前駆体のフラグメントが分析される場合の特定の利点に対し、採用可能である。例えば、前述の同位体符号化技術を使用して、そのそれぞれのフラグメントが、互いに区別可能となって、起因する前駆体に相関させ戻すことが可能なように、3つ、または4つ、あるいはそれ以上の前駆体を異なる同位体分布によって別々に符号化してもよい。その結果、同一時間間隔の間、または少なくとも異なるフラグメントの走査時間が、連続的である代わりに、ほぼ同時であり得るように重複する時間間隔の間、異なる前駆体のフラグメントが、Q3LITから排出または走査され得る。
【0024】
次に、同位体符号化が標準的RF/DC四重極を使用して達成される場合のアプローチが記載される。任意の化合物の同位体寄与率は、周知のように計算可能である(F. W. McLafferty and F. Turecek, Interpretation of Mass Spectra, Fourth Edition, University Science Books, Sausalito California 1993, Chapter 2参照)。例えば、着目検体が、炭素および水素のみから構成され、合計60個の炭素原子を有する場合、(M+H)イオンの結果として生じる同位体クラスタは、以下の強度パターンを有し、計算可能である。12C同位体は、強度1を有し、最初の13C同位体は、強度0.66、および第2の13C同位体は、強度0.21を有するであろう。相対強度1:1:1を有する符号化された同位体クラスタを発生させるために、イオントラップは、相対充填時間1、1/0.66、および1/0.21において、個々の同位体のそれぞれによって充填する必要がある(単位分解能で)。当然ながら、いくつかの低強度の同位体によってイオントラップを充填するステップは、特に、RF/DC四重極質量フィルタを使用する場合は、時間がかかり得る。前駆イオンのオリジナル同位体分布は、単一MS測定走査を使用して、最初に判断可能である。
【0025】
例えば、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10は、本本発明の実施形態のさらなる側面に従って、前述のように、それぞれ独特の同位体分布を有するように、例えば、4つの前駆イオンを選択可能である。例えば、4つの前駆体A、B、C、およびDの混合物を検討する。Aのイオンは、12C同位体のみ伝送されるように、図1のQ1によって選択可能である。次いで、このイオンは、Q2においてフラグメント化され、生成物および残留前駆イオンは、Q3LIT内にトラップされ得る。次に、Q3LITの走査に先立って、Q1は、前駆体Bの異なる同位体パターンを選択することができる。例えば、最初に既知の同位体分布に基づいて、前述のものと類似する態様で、2つの異なる同位体の相対強度が1:1であるように、Q1は、単位分解能で異なる時間期間の間、作動し、例えば、2つの個々の同位体のそれぞれを伝送することができる。次いで、第2の同位体分布による前駆体Bイオンは、Q2においてフラグメント化され、生成物および残留前駆イオンは、生成物および残留前駆イオンAとともに、Q3LIT内にトラップされ得る。
【0026】
次に、Q3LITの走査に先立って、Q1は、前駆体AおよびBの同位体パターンと異なる前駆体Cの同位体パターンを選択するように操作され得る。例えば、前駆体Bに関連して前述のものに類似する態様で充填時間を変化させることによって、3つの異なる同位体の相対強度が1:1:1であるように、Q1は、異なる時間期間の間、単位分解能で作動し、3つの個々の同位体をそれぞれ伝送することができる。次いで、第3の同位体パターンを符号化する前駆体Cのこれらのイオンは、Q2においてフラグメント化され、AおよびBのフラグメントとともに、Q3LIT内にトラップされ得る。
【0027】
最後に、Q1は、前駆体A、B、およびCの同位体パターンと異なる前駆体Dの同位体パターンを選択するように操作され得る。すなわち、2つの異なる同位体ならびに中間同位体の相対強度が1:0:1であるように、Q1は、異なる時間期間の間、単位分解能で作動し、2つの個々の同位体のそれぞれを伝送することができる。この分布中に表される中間同位体は、Q1によってフィルタリングされ、したがって、Q2に伝送される前駆体Dのイオンからほぼ完全に欠落しているであろう。次いで、前駆体Dのこれらのイオンは、Q2においてフラグメント化され、結果として生じるフラグメントは、Q3LIT内にトラップされ得る。
【0028】
冷却期間後、Q3LITは、走査され、A、B、C、およびDの生成物(フラグメント)から成る複合生成イオン質量スペクトルを生成し得る。これらのフラグメントそれぞれのピークは、そのそれぞれの前駆体内に符号化される特定の同位体分布に応じて、異なるパターンを有するであろう。すなわち、前駆体Aのフラグメントを表すピークは、単一同位体のみQ1から伝送されるため、強度において単一スパイクのみを備えるであろう。Bのフラグメントのピークは、1:1の同位体分布を表す約同一高の2つの密接に離間したスパイクを備えるであろう。
【0029】
同様に、前駆体Cのフラグメントのピークは、1:1:1の同位体分布を表す約同一高の3つの密接に離間したスパイクを備えるであろうため、前駆体Cのフラグメントのピークは、前駆体AおよびBのフラグメントのピークと区別され得る。最後に、前駆体Dのフラグメントを表すピークは、1:0:1の同位体分布を表す約同一高のあまり密接せずに離間するスパイクを備え、そのギャップは、Q1によってフィルタリングされる欠落同位体を表す。
【0030】
さらに詳細に後述されるように、前駆イオン選択が、イオントラップまたはイオンガイドによって実行される場合、前駆イオン選択デバイスが、前駆イオン集団をより豊富ではない同位体の方へと偏向させるように、調整波形(ノッチ広帯域AC電界)を発生させ得る。これらの波形は、数学的に構築可能であるため、本アプローチは、多くの異なる認識可能な前駆イオン同位体パターンをもたらすことができる。
【0031】
操作のこのモードは、図2の線形イオントラップ質量分析計システム10を使用して実装可能である。例えば、第1の前駆イオンは、イオントラップQ1に供給され得る。その時点で、ノッチ広帯域AC電界が発生し、Q1内にトラップされる第1の前駆イオンに印加され得る。ノッチ広帯域AC電界内のノッチは、第1の前駆イオンの同位体のうちのいくつかをフィルタリングするために十分狭くなるように選択され得る。このノッチが、十分に狭くされる場合、Q1内に残留する第1の前駆イオンは、単同位体であるだろう。このノッチ波形が印加された後、第1の前駆イオンは、フラグメント化のために、衝突セルQ2に伝送され得る。次いで、第1の前駆イオンからのフラグメントは、線形イオントラップに伝送され、格納され得る。
【0032】
第1の前駆イオンがQ1から伝送された後、第2の前駆イオンが流入され得る。次いで、異なるノッチ波形が、Q1内の第2の前駆体に印加される、または全く印加され得ない。異なるノッチ波形が第2の前駆イオンに印加される場合、第2のノッチ波形のノッチは、異なる同位体をフィルタリングするように選択され、次いで、第1のノッチ波形によってフィルタリングされたものは、第1の前駆イオンに印加されるであろう。その結果、第1の前駆イオンおよび第2の前駆イオンの同位体分布は、異なるであろう。次いで、第1の前駆イオンと同様に、第2の前駆イオンは、フラグメント化のために、Q2に伝送され、続いて、第2の前駆イオンのフラグメントは、Q3に伝送され得る。次いで、第1の前駆イオンおよび第2の前駆イオンの両方のフラグメントは、Q3からともに排出され、質量スペクトルを発生し得、一方では、第1の前駆イオンのフラグメントと、他方では、第2の前駆イオンのフラグメントの同位体分布の差異を使用して、これらのフラグメントと、そのそれぞれの前駆体とを相関させ、これらのフラグメントを互いに区別し得る。
【0033】
調整波形を使用する独立型イオントラップ質量分析計を用いた代替アプローチをとることができる。この場合、イオン源からの類種または異種イオンの群は、イオントラップ質量分析計に伝送され、熱運動化される。次に、適切に構築された波形を使用して、同時に(または、ほぼ同時に)、着目検体の所望の前駆イオン同位体分布を分離する。分離後しばらくして、異なる調整波形を使用して、同時に(または、ほぼ同時に)、トラップされ、符号化された前駆イオンを励起し、符号化されたフラグメントイオンを形成することができる。次いで、符号化されたフラグメントイオンは、従来の技術を使用して、排出および検出されるであろう。
【0034】
図3に戻ると、この質量分析計システム10の操作モードは、図1の線形イオントラップ質量分析計システム10の操作モードと非常に類似する。しかしながら、図3の質量分析計システム10では、検出のために、Q2からTOF質量分析計内に伝送される前に、分析される前駆イオンすべてのフラグメントが、Q2内に格納されるように、Q2は、衝突セルおよび線形イオントラップの両方として機能する。
【0035】
(デューティサイクル増幅率)
デューティサイクル増幅率は、複数の生成イオン質量スペクトルを取得するために必要な時間と、前駆同位体符号化によって、単一複合スペクトルの質量スペクトルを取得するために必要な時間とを比較することによって、推測可能である。10msの充填時間と、1000amu/秒または10,000amu/秒で1500amu質量範囲を走査するQ3LITとを仮定する場合、表1の結果が取得され得る。いずれの走査速度でも、複合生成イオン発生および復号化アプローチを使用する効果は、2つの検体の分析に対し約1.8倍、3つの検体の分析に対し2.6倍を上回って、4つの検体の分析に対し3.5倍を上回って、デューティサイクルをほぼ向上させることができる。1000amu/秒から10,000amu/秒の10倍の走査速度または増加率の効果は、符号化された前駆イオンに基づく複合生成イオン質量スペクトルの分析のデューティサイクル向上を大幅に薄弱化しない。Q3LITからフラグメントを排出することの増幅率は、実質的に同時に、検体数の増加に伴って上昇する。
【0036】
【表1】

表1は、2つの異なるRF電圧走査速度で生成イオン走査を実行するために必要とされる計算されたサイクル時間を示す。従来サイクルは、各検体に対する連続的充填、冷却、走査ステップである。複合サイクルは、複数の符号化された前駆イオンの生成物によって、イオントラップを充填した後、冷却ステップ、次いで、走査ステップが続く。充填時間10ms/検体と仮定する。表1から分かるように、デューティサイクルの増幅率は、検体数に伴って上昇する。例えば、2つの検体の場合、複合サイクルの走査時間は、従来サイクルを使用する走査時間の3分の2を大幅に下回る。3つの検体の場合、複合サイクル走査時間は、従来サイクルに従って、3つの異なるセットのフラグメントを別々に走査するために必要とされる合計走査時間の2分の1を大幅に下回る。4つの検体の場合、複合サイクルの走査時間は、従来サイクルに従って、4つの異なるセットのフラグメントイオンを別々に走査するために必要とされる合計走査時間の3分の1を大幅に下回る。
【0037】
(符号化のための他の技術)
前駆イオン情報を結果として生じるフラグメントイオン内に符号化するための他の技術が存在する。1セットのフラグメントイオンを別のものから区別する方法の1つは、質量スペクトルピーク幅の差異によるものである。別のものと異なるピーク幅を有する1セットのフラグメントイオンを符号化するための技術は、イオントラップ内への流入後の異なる冷却時間を可能にすることである。第1の前駆イオンからのフラグメントイオンセットがQ3LIT内に流入され、約50ms間冷却される走査機能を検討する。次に、第2の前駆イオンからのフラグメントイオンは、Q3LIT内に流入し、走査プロセスの間でさえ、イオントラップに最も新しく添加されたイオンを冷却するための十分な時間がないように、すべてのイオンがすぐに走査される。結果として生じる複合生成イオン質量スペクトルは、狭および広ピークの混合を伴うイオンを有するであろう。冷却されたフラグメントイオン、すなわち、第1の前駆イオンから流入されたものは、続いて流入されたフラグメントイオンは、十分に冷却されないため、2回目に流入されたものよりも狭いピーク幅を有するであろう。この場合、(前述のように)フラグメントイオンがすべて単同位体であるように、狭伝送窓を使用して、高分解能で、両方の前駆イオンから12C同位体を選択することが可能である。これによって、任意のピーク幅差異を区別することが容易となり得る。
【0038】
【表2】

表2は、標準的アプローチに基づいて、生成イオン走査を実行するために必要とされる計算されたサイクル時間を表にしたものであって、イオンは、異なる冷却ステップを使用して、異なるピーク幅で符号化されている。走査範囲は、1500amuであって、充填時間は、10msと仮定する。複合方法は、イオントラップを第1の検体によって充填するステップ後、冷却期間75msが続き、第2の検体の10msの充填ステップが続き、直後に高速質量走査(30ms中50,000amu/秒)が続く。
【0039】
本方法の他の側面に従って、1つの前駆体のフラグメントイオンが冷却される冷却時間は、40ミリ秒に過ぎない一方、他のフラグメントイオンが冷却される最短時間期間は、10ミリ秒未満であることができる。当然ながら、適切な冷却時間は、線形イオントラップが作動する圧力に応じて変動し、圧力は、線形イオントラップから線形イオントラップで変化し得る。可能性のある経験則の1つとして、冷却時間期間は、前述の最短時間期間の少なくとも4倍であるべきである。
【0040】
フラグメントイオンを由来する前駆イオンに関する情報によって符号化する他の技術は、相対強度およびフラグメント化の程度の差異を含む。相対強度の差異は、イオントラップを他よりもさらに多い1つの前駆体のフラグメントによって単純に充填することによって、符号化可能である。当然ながら、低強度フラグメントは、高強度フラグメントによって単純に圧倒される危険があるため、本方法を実装する際は、配慮が必要となるであろう。また、フラグメント化の程度の差異は、前駆体情報を一式のフラグメントイオンに符号化する方法を提供し得る。このアプローチによると、前駆イオンのうちの1つは、比較的に高エネルギーで、他は、比較的に低エネルギーで、フラグメント化される。このアプローチは、単純なニュートラルロスによって利用可能な有意に低エネルギーフラグメント化経路が存在する場合、有用である場合がある。
【0041】
本発明の他の変形例および修正も可能である。例えば、本方法(特に、前駆イオン同位体符号化)は、前述以外の器具にも適用可能であることが理解されるであろう。前述の説明は、線形イオントラップを参照するが、本発明のいくつかの実施形態のいくつかの側面を実装するために使用されるイオントラップは、線形イオントラップである必要はないことを理解されるであろう。例えば、従来の球形イオントラップが使用されてもよい。また、他の幾何学形状を有するイオントラップも使用可能である。そのような修正および変形例はすべて、請求項によって定義されるように、本発明の領域および範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップを有する質量分析計システムを操作する方法であって、
a)第1の群の前駆イオンを処理し、前記イオントラップ内にトラップされる第1の複数のフラグメントイオンを取得することと、
b)前記第1の群の前駆イオンおよび前記第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の第1の選択された特徴を符号化するために、第1の符号化操作を適用することであって、前記第1の複数のフラグメントイオンは、前記第1の選択された特徴を有し、前記他のイオンは、前記第1の選択された特徴を欠くように、前記第1の符号化操作は、他のイオンには適用されずに、前記前記第1の群の前駆イオンおよび前記第1の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つに適用される、ことと、
c)前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記他のイオンを前記イオントラップから排出することと、
d)前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記他のイオンを検出することと、
e)前記第1の選択された特徴に基づいて、検出される前記第1の複数のフラグメントイオンと、前記第1の群の前駆イオンとを相関させ、前記第1の複数のフラグメントイオンと、検出される前記他のイオンとを区別することと、
を包含する、方法。
【請求項2】
a)第2の群の前駆イオンを処理し、前記第1の複数のフラグメントイオンとともに、前記イオントラップ内にトラップされる第2の複数のフラグメントイオンを取得することをさらに包含し、
b)前記第2の群の前駆イオンおよび前記第2の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の第2の選択された特徴を符号化するために、第2の符号化操作を適用することであって、前記第2の複数のフラグメントイオンは、前記第2の選択された特徴を有し、前記第2の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンは、前記第2の選択された特徴を欠くように、前記第2の符号化操作は、前記第2の群の前駆イオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオン以外のイオンには適用されずに、前記前記第2の群の前駆イオンおよび前記第2の複数のフラグメントのうちの前記少なくとも1つに適用される、ことをさらに包含し、
c)前記第2の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含し、
d)前記第2の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを検出することを包含し、
e)前記第2の選択された特徴に基づいて、検出される前記第2の複数のフラグメントイオンと、前記第2の群の前駆イオンとを相関させ、前記第2の複数のフラグメントイオンと、検出される前記第2の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンとを区別することをさらに包含し、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することは、前記第1の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出する時間と実質的に重複する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
c)は、ある走査速度における走査時間の間に生じ、
前記走査時間は、前記走査速度において、前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから別々に走査するために必要とされる合計走査時間の3分の2未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
a)第3の群の前駆イオンを処理し、前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオンとともに、前記イオントラップ内にトラップされる第3の複数のフラグメントイオンを取得することをさらに包含し、
b)前記第3の群の前駆イオンおよび前記第3の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の第3の選択された特徴を符号化するために、第3の符号化操作を適用することであって、前記第3の複数のフラグメントイオンは、前記第3の選択された特徴を有し、前記第3の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンは、前記第3の選択された特徴を欠くように、前記第3の符号化操作は、前記第3の群の前駆イオンおよび前記第3の複数のフラグメント以外のイオンには適用されずに、前記第3の群の前駆イオンおよび前記第3の複数のフラグメントのうちの前記少なくとも1つに適用される、ことをさらに包含し、
c)前記第3の複数のフラグメントイオンおよび前記第3の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含し、
d)前記第3の複数のフラグメントおよび前記第3の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを検出することを包含し、
e)前記第3の選択された特徴に基づいて、検出される前記第3の複数のフラグメントイオンと、前記第3の群の前駆イオンとを相関させ、前記第3の複数のフラグメントイオンと、検出される前記第3の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンとを区別することを包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
c)は、実質的に同時に、前記第1の複数のフラグメントイオン、前記第2の複数のフラグメントイオン、および前記第3の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
c)は、ある走査速度における走査時間の間に生じ、
前記走査時間は、前記走査速度において、前記第1の複数のフラグメントイオン、前記第2の複数のフラグメントイオン、および前記第3の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから別々に走査するために必要とされる合計走査時間の半分未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)iii)第4の群の前駆イオンを処理し、前記第1の複数のフラグメントイオン、前記第2の複数のフラグメントイオン、および前記第3の複数のフラグメントイオンとともに、前記イオントラップ内にトラップされる第4の複数のフラグメントイオンを取得することをさらに包含し、
b)前記第4の群の前駆イオンおよび前記第4の複数のフラグメントのうちの少なくとも1つ内の第4の選択された特徴を符号化するための第4の符号化操作を適用することであって、前記第4の複数のフラグメントイオンは、前記第4の選択された特徴を有し、前記第4の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンは、前記第4の選択された特徴を欠くように、前記第4の符号化操作は、前記第4の群の前駆イオンおよび前記第4の複数のフラグメント以外のイオンには適用されずに、前記第4の群の前駆イオンおよび前記第4の複数のフラグメントのうちの前記少なくとも1つに適用される、ことをさらに包含し、
c)前記第4の複数のフラグメントイオンおよび前記第4の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含し、
d)前記第4の複数のフラグメントイオンおよび前記第4の複数のフラグメントイオン以外のフラグメントイオンを検出することを包含し、
e)前記第4の選択された特徴に基づいて、検出される前記第4の複数のフラグメントイオンと、前記第4の群の前駆イオンとを相関させ、前記第4の複数のフラグメントイオンと、検出される前記他のイオンとを区別することを包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
c)実質的に同時に、前記第1の複数のフラグメントイオン、前記第2の複数のフラグメントイオン、前記第3の複数のフラグメントイオン、および前記第4の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
c)は、ある走査速度における走査時間の間に生じ、
前記走査時間は、前記走査速度において、前記第1の複数のフラグメントイオン、前記第2の複数のフラグメントイオン、前記第3の複数のフラグメントイオン、および前記第4の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから別々に走査するために必要とされる合計走査時間の3分の1未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の選択された特徴は、第1の同位体パターンであり、
前記第2の選択された特徴は、前記第1の同位体パターンと異なる第2の同位体パターンであり、
d)検出されるイオンに基づいて、質量スペクトルを提供することを包含し、
e)i)前記第1の同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第1の複数のフラグメントを区別することと、ii)前記第2の同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第2の複数のフラグメントを区別することと、を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の群の前駆イオンおよび前記第2の群の前駆イオンはそれぞれ、複数の同位体の初期分布から開始し、
前記第1の符号化操作は、前記第1の群の前駆イオンを処理し、前記第1の同位体パターンを前記複数の同位体の第1の分布として提供することを包含し、
前記第2の符号化操作は、前記第2の群の前駆イオンを処理し、前記第2の同位体パターンを前記複数の同位体の第2の分布として提供し、前記複数の同位体の前記第2の分布は、前記複数の同位体の前記第1の分布と異なることを包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の符号化操作は、狭伝送窓を使用して、高分解能で前記第1の群の前駆イオンを質量選択し、前記第1の群の前駆イオンの同位体をフィルタリングし、前記第1の同位体パターンを提供することを包含し、
前記第2の符号化操作は、広伝送窓を使用して、低分解能で前記第2の群の前駆イオンを質量選択し、前記第2の群の前駆イオンの同位体を留保し、前記第2の同位体パターンを提供することを包含し、
前記広伝送窓は、前記狭伝送窓よりも広い、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の符号化操作は、狭ノッチを有する第1のノッチ波形を前記第1の群の前駆イオンに適用し、前記第1の群の前駆イオンの同位体をフィルタリングし、前記第1の同位体パターンを提供することを包含し、
前記第2の符号化操作は、広ノッチを有する第2のノッチ波形を前記第2の群の前駆イオンに適用し、前記第2の群の前駆イオンの同位体を留保し、前記第2の同位体パターンを提供することを包含し、
前記広ノッチは、前記狭ノッチよりも広い、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の選択された特徴は、第1の同位体パターンであり、
前記第2の選択された特徴は、前記第1の同位体パターンと異なる第2の同位体パターンであり、
前記第3の選択された特徴は、前記第1の同位体パターンおよび前記第2の選択された特徴と異なる第3の同位体パターンであり、
d)検出されるイオンに基づいて、質量スペクトルを提供することを包含し、
e)i)前記第1の同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第1の複数のフラグメントを区別することと、ii)前記第2の同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第2の複数のフラグメントを区別することと、iii)前記第3の同位体パターンの質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第3の複数のフラグメントを区別することと、を包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の群の前駆イオン、前記第2の群の前駆イオン、および前記第3の群の前駆イオンはそれぞれ、複数の同位体の初期分布を備え、
前記第1の符号化操作は、前記第1の群の前駆イオンを処理し、前記第1の同位体パターンを前記複数の同位体の第1の分布として提供することを包含し、
前記第2の符号化操作は、前記第2の群の前駆イオンを処理し、前記第2の同位体パターンを前記複数の同位体の第2の分布として提供し、前記複数の同位体の前記第2の分布は、前記複数の同位体の前記第1の分布と異なることを包含し、
前記第3の符号化操作は、前記第3の群の前駆イオンを処理し、前記第3の同位体パターンを前記複数の同位体の第3の分布として提供し、前記複数の同位体の前記第3の分布は、前記複数の同位体の前記第1の分布および前記複数の同位体の前記第2の分布と異なることを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
a)前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップに流入させる前に、前記イオントラップ中の前記第1の複数のフラグメントイオンをトラップすることをさらに包含し、
前記第1の符号化操作は、前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップに流入させる前に、冷却期間の間、前記イオントラップ中の前記第1の複数のフラグメントイオンを冷却することを包含し、
前記第2の符号化操作は、前記第2の複数のフラグメントイオンの実質的に冷却することが生じる前に、前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することを包含し、
d)検出されるイオンに基づいて、質量スペクトルを提供することを包含し、
e)i)前記第1の選択された特徴の質量スペクトルピークの質量スペクトルを検索し、前記第1の複数のフラグメントイオンと、前記第2の複数のフラグメントイオンとを区別することを包含し、前記第1の選択された特徴は、検出される前記第2の複数のフラグメントイオンの質量スペクトルピークよりも実質的に狭い、前記第1の複数のフラグメントイオンの前記質量スペクトルピークを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
c)前記第2の複数のフラグメントイオンが前記冷却トラップに流入された後、最短期間内に、前記第1の複数のフラグメントイオンおよび前記第2の複数のフラグメントイオンを前記イオントラップから排出することをさらに包含し、
前記第1の複数のフラグメントイオンの前記質量スペクトルピークが、区別可能なように、検出される前記第2の複数のフラグメントイオンの前記質量スペクトルピークよりも実質的に狭くなるように、前記冷却期間および前記最短期間を選択することをさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記冷却期間は、少なくとも40msであって、前記最短期間は、10ms未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記冷却期間は、前記最短期間の少なくとも4倍である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
a)i)フラグメント化のために、前記第1の群の前駆イオンを質量選択的に伝送し、前記イオントラップ内にトラップされる前記第1の複数のフラグメントイオンを発生させることと、ii)フラグメント化のために、前記第2の群の前駆イオンを質量選択的に伝送し、前記イオントラップ内にトラップされる前記第2の複数のフラグメントイオンを発生させることと、をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
狭伝送窓を使用して、高分解能で前記第1の群の前駆イオンおよび前記第2の群の前駆イオンを質量選択し、同位体をフィルタリングし、より狭い範囲の同位体を提供し、検出される前記第1の複数のフラグメントイオンの前記質量スペクトルピークおよび前記第2の群の前駆イオンの前記質量スペクトルピークの両方を狭めることをさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イオントラップは、線形イオントラップである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−521681(P2010−521681A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553874(P2009−553874)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/CA2008/000317
【国際公開番号】WO2008/116283
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508153855)エムディーエス アナリティカル テクノロジーズ, ア ビジネス ユニット オブ エムディーエス インコーポレイテッド, ドゥーイング ビジネス スルー イッツ サイエックス ディビジョン (17)
【出願人】(508298514)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】