説明

イオン性液体およびその製造方法。

【課題】電気デバイス用材料、各種反応用溶媒などに好ましく適用できるイオン性液体を開発する。イオン性液体に関する研究開発においては、先行文献が多く、かつ、入手容易なイミダゾリ二ウム系イオン性液体研究が先行している。
イオン性液体を各種電気デバイス用材料、各種反応用溶媒として広く使用する際、高粘度ではイオン伝導性が悪く用途が限定される場合が有った。
【解決手段】上記課題を、ピリジニウムおよびその誘導体から選ばれる少なくとも1つのカチオンを有する、低粘度であるイオン性液体を開発することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス用材料、各種反応用溶媒などに好ましく適用できるイオン性液体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、粘度が従来に比べて低いイオン性液体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体は、一般にイミダゾリニウムなどのカチオンと、適当なアニオン(Br-、Cl-、RSO4-、BF4-、PF6-、(CF3SO22-など)との組み合わせで構成され、高いイオン伝導性や優れた熱安定性を示すため電池やコンデンサなどの電解液、各種化学反応の溶媒などへの応用が広く研究されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
イオン性液体に関する研究開発においては、先行文献が多く、かつ、入手容易なイミダゾリ二ウム系イオン性液体研究が先行している。これらのイオン性液体では、例えば25℃で、10P程度と、粘度が高い傾向が有る。
【0004】
イオン性液体を各種電気デバイス用材料、各種反応用溶媒として広く使用する際、このような高粘度ではイオン伝導性が悪く用途が限定される場合が有った(特許文献1)。粘度が低い(1P以下の)イオン性液体が求められていた。
【特許文献1】特開2005−251466号公報。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のイオン性液体としては、ピリジ二ウムおよびその誘導体であって、イオン性液体の中では極めて低粘性であるものを見出した。
【0006】
(1)本発明の第1は、
イオン性液体のカチオン成分が、ピリジニウムおよびその誘導体
(誘導体とは、水素、および脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、カルボン酸およびエステル基、各種エーテル基、各種アシル基、各種アミノ基などの置換基を、上記カチオン成分の任意の位置に置換されたもの)
から選ばれる1以上であって、25℃での粘度が1P以下である、イオン性液体、
である。
【0007】
(2)本発明の第2は、
前記イオン性液体のアニオン成分が、フッ素を含む原子団である、(1)記載のイオン性液体、
である。
【0008】
(3)本発明の第3は、
前記イオン性液体のアニオン成分が、R1−SO2−原子団
(ここで、R1は、炭素数が1〜50個のうちいずれかの、芳香族あるいは脂肪族であり、枝分かれや置換基を有しても良く、フッ素原子を1以上含んでいてもよい)
を有する、(1)〜(2)のいずれかに記載のイオン性液体、
である。
【0009】
(4)本発明の第4は、
前記イオン性液体のアニオン成分が、
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)アニオン(TFSI)、
CHF2−CF2−CH2OSO3-原子団、
CHF2−(CF23−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2OSO3-原子団、
CHF2−CF2−CH2SO3−原子団、
CHF2−(CF23−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2SO3-原子団および、
CF3−(CF23−(CH22SO3-原子団
からなる群から選ばれる1以上の原子団を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のイオン性液体、
である。
【0010】
(5)本発明の第5は、
前記イオン性液体のアニオン成分が、カルボキシラト(−COO-
を有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のイオン性液体、
である。
【0011】
(6)本発明の第6は、
「下記式の構造を有するイオン性液体。
【0012】
【化5】

」、である。
【0013】
(7)本発明の第7は、
「下記式の構造を有するイオン性液体。
【0014】
【化6】

」、である。
【0015】
(8)本発明の第8は、
「下記式の構造を有するイオン性液体。
【0016】
【化7】

」、である。
【0017】
(9)本発明の第9は、
「下記式の構造を有するイオン性液体。
【0018】
【化8】

」、である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のイオン性液体はピリジ二ウムおよびその誘導体であって、イオン性液体の中では25℃での粘度が1P以下と極めて低粘性であるため、各種電気デバイス用材料、各種反応用溶媒、特にはレドックスキャパシタ、アルミ電解コンデンサ等の、低粘性である程好まれる分野に応用できる可能性がある。各種電気デバイス用材料に応用出来る可能性もある為、ピリジ二ウム系であって、粘度が低い(1P以下の)イオン性液体を提供できることは、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明では、ピリジニウムおよびその誘導体に着目、合成し本発明を完成するに到った。
【0021】
イオン性液体に関する研究開発においては、先行文献も多く、かつ、入手容易なイミダゾリ二ウム系イオン性液体研究が先行している。
【0022】
一方ピリジ二ウムおよびその誘導体のイオン性液体に関する先行文献は少なく、本発明に関する、ピリジ二ウムおよびその誘導体のイオン性液体は入手困難な為、当業者にとっては、検討する阻害要因になっていた。本発明では、ピリジニウムおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのカチオンを含有するイオン性液体であって、25℃での粘度が1P以下と(イオン性液体の中では)極めて低粘性なイオン性液体を開発し、本発明を完成した。
【0023】
<イオン性液体>
本発明で使用するイオン性液体は、常温溶融塩とも言われ、アニオン成分とカチオン成分から構成されているにもかかわらず常温で液体である物をいう。イオン性液体は、通常の有機溶媒のように一部がイオン化・解離しているのではなく、イオンのみから形成されている、すなわち100%イオン化していると考えられている。通常イオン性液体は常温で液体であるものを言うが、本発明で用いるイオン性液体は必ずしも常温で液体である必要はなく、コンデンサのエージング処理、あるいは熱処理時に液体となって電解質全体に広がり、酸化皮膜修復時にその発生するジュール熱によって液体となるものであれば良い。
【0024】
<イオン性液体のカチオン成分>
本発明の目的に適当なイオン性液体に用いられるカチオンとしては各種四級化窒素を有するカチオンを用いることができる。例えばピリジニウムおよびその誘導体を例示する事が出来る。ここで誘導体とは、水素、および脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、カルボン酸およびエステル基、各種エーテル基、各種アシル基、各種アミノ基などの置換基を持つものを言い、これらは上記カチオン成分の任意の位置に置換される。
【0025】
我々(本発明の発明者)は、同じアニオンを使用した場合、
カチオン成分としてピリジニウムおよびその誘導体を選択するイオン性液体の粘度の方が、
他のカチオンを選択するイオン性液体の粘度
よりも粘度が低い傾向が有る、という知見を得ている。
【0026】
<イオン性液体のアニオン成分>
本目的に用いられるアニオン成分としては、フッ素を含む原子団であるアニオンを用いることができる。
【0027】
詳しくはアニオン成分が、R1−SO2−原子団を有することを特徴とするイオン性液体や(ここで、R1は、炭素数が1〜50個の芳香族あるいは脂肪族であり、枝分かれや置換基を有しても良く、フッ素原子を1以上含んでいてもよい)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)アニオン(TFSI)、
CHF2−CF2−CH2OSO3-原子団、
CHF2−(CF23−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2OSO3-原子団、
CHF2−CF2−CH2SO3−原子団、
CHF2−(CF23−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2SO3-原子団および、
CF3−(CF23−(CH22SO3-原子団
からなる群から選ばれる1以上の原子団などを例示する事ができ、これらは本目的に好ましく用いる事が出来る。無論、これらの例に限定されるものではない。
【0028】
我々(本発明の発明者)は、同じアニオンを使用した場合、
カチオン成分としてピリジニウムおよびその誘導体を選択するイオン性液体の粘度の方が、
他のカチオンを選択するイオン性液体の粘度
よりも粘度が低い傾向が有る、という知見を得ている。
【0029】
<陽極酸化>
次に本発明のイオン性液体をもちいた陽極酸化法について説明する。陽極酸化法は金属表面に金属酸化皮膜を形成する手段として広く用いられ、酸化皮膜を形成したい金属を陽極として電解質溶液中あるいは電解質中で電圧、または電流を印加する事によって酸化皮膜を形成する。この方法は特にアルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の表面に酸化皮膜を形成する手段としては最も一般的な手法である。
【0030】
<金属>
以下本発明の酸化皮膜の形成方法としてアルミニウムの例について説明するが、タンタル、ニオブなどの弁金属についても同じであり、また、アルミニウムおよび/またはその合金、タンタルおよび/またはその合金、ニオブおよび/またはその合金、その他の金属についても基本的には同じである。本発明の範囲もアルミニウムに限定されることなくタンタル、ニオブ等の弁金属にも適用される。
【0031】
<陽極酸化、金属表面に形成された酸化被膜、その修復能力、電流−電圧曲線、初期ピーク電圧、2電極系>
電解液の陽極酸化性能の測定には、電解液中に、アルミニウムを陽極とし、ステンレスや銅あるいは白金などを陰極としたセルを浸漬し、電極間に一定の電圧を印加してその間に流れる電流値の変化を測定する。この時印加電圧を一定速度で上昇させ、その時の電流値変化を測定すればよい。すなわち、電解液に酸化皮膜形成能力があり、金属表面に絶縁体である酸化皮膜が形成されると、電流が流れなくなる。しかし電解液の酸化皮膜形成能力には限界があり、電圧上昇に伴ない形成された酸化皮膜が電圧に耐えられなくなり、ついには破壊にいたる。したがってこの様な電流値変化の測定によってその電解液の陽極酸化能力を推定する事ができる。
【0032】
一方、電解液の金属酸化皮膜の修復能力の評価には、既存の電解液中で例えばあらかじめ一定の電圧で陽極酸化皮膜を作製し、その酸化皮膜を沸騰水中で煮沸するなどの定められた方法でその一部に欠陥を導入したものを用いるのが便利であるが、これらに限定されるものでは無い。例えばこの様にして作製した試料を評価すべき電解液に浸漬し、電圧を一定の速度で上昇させながら電流値の変化を測定すればよい。これは再化成評価法とも呼ばれている。この時例えばあらかじめ形成しておく陽極酸化皮膜の形成電圧を選択する事により(すなわち陽極酸化皮膜厚さを変える事により)上記酸化皮膜形成実験と同様の実験を行う事が出来る。すなわち、例えばあらかじめ100Vで酸化皮膜を形成した場合、何Vで破壊に至るかを観察する事で、上記酸化皮膜形成実験と同様の、電解質における陽極酸化能力の評価が出来る。
【0033】
この様に、後者の金属酸化皮膜修復実験は前者の酸化能力評価実験を兼ねる事ができ、これは発明のコンデンサ用電解液のデバイス評価にも適当であるので、もっぱら後者の手法によって評価した。電解液が金属酸化皮膜に対する修復能力を有する場合に観察される典型的な電流値変化(電流−電圧曲線)を図1にしめした。
【0034】
はじめ電流値は酸化皮膜の破壊部分を通って流れるが(領域1)、電解液が陽極酸化性を持つ場合にはその皮膜修復能力によって破壊部分に新しい酸化皮膜が形成されるために電流値は極大値(A)をへて減少する(領域2)。この電圧を、初期ピーク電圧とよぶ。電流値の極小点(B)が修復の完了した時点であり、その後は電圧上昇に比例した直線的なある電流上昇領域が現れる(領域3)。しかしなが、らさらに電圧を上昇させると、ある電圧(C)から直線関係からずれて電流が流れ始める(領域4)。これは電解液の事実上の耐圧を示すもので上記の破壊電圧に相当する。むろん陽極酸化能力が無い場合には領域1の部分のみで、そのまま電流が流れ酸化皮膜の破壊にいたる。
【0035】
アルミニウムの陽極酸化皮膜には緻密なバリヤー性の皮膜と多孔性皮膜の2種類があり、ホウ酸塩やリン酸塩などの中性の溶液あるいは中性の電解質では緻密なバリヤー性皮膜が、リン酸、硫酸、シュウ酸水溶液などの酸性溶液あるいは酸性電解質中では多孔性の皮膜が生成する。多孔性の皮膜が生成するのは陽極酸化の途中で皮膜の局所的な溶解が生じるためである。この様な局所的な溶解による多孔質皮膜の生成が始まると熱的作用により電解質中のプロトンが電場に逆らって皮膜の内部にはいりこみ大量のイオン電流が流れ始める。図1において(C)点以上の電圧での電流値の増加はこのようなイオン電流の急激な増加によるものであり、この電流増加点が高いほど好ましい。従って、(A)(B)(C)点の出現する電圧を測定すればその電解液の陽極酸化能力を評価できる。
【0036】
すぐれた陽極酸化性を示す指標として、低電圧で(A)点(初期ピーク電圧)が出願することが好ましい。初期ピーク電圧は、30V以下であることが好ましく、さらに好ましくは、15V以下である。
【0037】
上記のとおり、(C)が高いほど好ましい。すなわち、耐電圧が高いほど好ましく、本発明においては、耐電圧は、50V以上、さらに好ましくは100V以上、最も好ましくは150V以上である。
【0038】
なお、電流−電圧曲線の測定は、陽極(陽極酸化用)と陰極の2電極系で行う。ただし、場合によっては、一方の電極電位を検知する目的で、参照電極を挿入した3電極系でも評価可能である。セルの作製の模式図、セル模式図は、実施例にて、一つの態様を後述するが、実施例には限定されない。
【0039】
一般に陽極酸化に用いられる電解質としては、ホウ酸系化成液、シュウ酸系化成液、リン酸系化成液、あるいはアジピン酸系化成液がある。例えば、リン酸系化成液はリン酸アンモニウム1.5gを1Lの水に溶解して作製される。またアジピン酸系化成液はアジピン酸アンモニウム1gを1Lの水に溶解させて作製される。これらの電解液を上記再化成法で評価すると、(A)は10V〜100V、(B)は20V〜180V,(C)は60V〜200Vの範囲にある。シュウ酸系化成液のような酸性の化成液では(A)点は低く出現するが(C)点も比較的低い電圧となる。一方、アジピン酸の様な中性の化成液の場合は(C)点は高く出来るが(A)点も高くなるという欠点がある。
【0040】
<電位窓>
イオン性液体は、
電気化学的に安定であり、イオン性液体自身が酸化や還元分解を受けない電位領域(すなわち電位窓)が広いことも大きな特徴である。一般に酸化に対する安定性はアニオン種に依存し、一方、還元に対する安定性はカチオン種に依存する。
【0041】
<粘度>
本発明における粘度の測定方法は、下記である。
E型粘度計(東機産業・VCH−4D)を使用して、25℃での測定結果(回転開始後、3分間後)を、粘度とした。
【0042】
<親水性/疎水性>
水と相分離する疎水性を示す液体とは、室温(25℃)下で純水と混合した後、12時間放置すれば水と相分離し、2相に分かれる液体をいう。また、親水性を示す液体とは、室温(25℃)で純水と混合した後、12時間放置しても水と相分離せず、混ざり合ったままである液体をいう。
【実施例】
【0043】
(合成例1)
よく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、ピリジン(300g)と200mlのアセトニトリルを入れ、氷浴下にてクロロ炭酸エチル(375g)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌した後に80℃にて48時間加熱還流を行った。アセトニトリルをエバポレーターで飛ばした後に、反応混合物を過剰のジエチルエーテルにて洗浄した。集めたジエチルエーテル層をデカンテーションし、乾燥させ98.2g(収率:14.5%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.33(triplet、J=5Hz、3H)、2.03(triplet、2H)、7.07(doublet、J=5Hz、1H)、7.44(doublet、J=5Hz、1H)、8.23(singlet、1H)、8.33(singlet、1H)
次によく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、上記褐色液体(81.2g 0.43mol)と150.0g(0.43mol)のリチウムビスペンタフルオロエタンスルホンイミド(LiBETI)と蒸留水(200ml)を室温にて5時間良く攪拌した。ジクロロエタンにて洗浄後、エバポレーターでジクロロエタンを減圧留去した。再度、アセトンに溶解し、活性炭で脱色した。再度回収されたアセトン溶液から、エバポレーターでアセトンを減圧留去、乾燥させ148.2g(収率:71.5%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.43(triplet、J=5Hz、3H)、2.63(triplet、2H)、7.27(doublet、J=5Hz、1H)、7.74(doublet、J=5Hz、1H)、8.28(singlet、1H)、8.44(singlet、1H)
(化学構造式を、式(1)に示す)
粘度は、0.8P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
【0044】
(合成例2)
よく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、ピリジン(300g)と200mlのアセトニトリルを入れ、氷浴下にてクロロ炭酸エチル(375g)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌した後に80℃にて48時間加熱還流を行った。アセトニトリルをエバポレーターで飛ばした後に、反応混合物を過剰のジエチルエーテルにて洗浄した。集めたジエチルエーテル層をデカンテーションし、乾燥させ98.2g(収率:14.5%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.33(triplet、J=5Hz、3H)、2.03(triplet、2H)、7.07(doublet、J=5Hz、1H)、7.44(doublet、J=5Hz、1H)、8.23(singlet、1H)、8.33(singlet、1H)
上記褐色液体(88.1g 0.47mol)と154.2g(0.47mol)の2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタン硫酸アンモニウムと200cm3のアセトンをよく乾燥した500cm3のセパラブルフラスコに、攪拌ペラとリービッヒ還流管を取りつけ、室温(25℃)で12時間攪拌した。沈殿した塩化アンモニウムをセライト上で取り除き、回収されたアセトン溶液から、エバポレーターでアセトンを減圧留去した。再度、アセトンに溶解し、活性炭で脱色した。再度回収されたアセトン溶液から、エバポレーターでアセトンを減圧留去、112.3g(収率:51.7%)の淡褐色の溶液を回収した。
(化学構造式を、式(2)に示す)
粘度は、0.9P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.43(triplet、J=5Hz、3H)、2.63(triplet、2H)、7.27(doublet、J=5Hz、1H)、6.33(singlet、1H)、7.16(doublet、J=5Hz、1H)、
7.74(doublet、J=5Hz、1H)、8.28(singlet、1H)、8.44(singlet、1H)
(合成例3)
よく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、ピリジン(300g)と200mlのアセトニトリルを入れ、氷浴下にてクロロ炭酸エチル(375g)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌した後に80℃にて48時間加熱還流を行った。アセトニトリルをエバポレーターで飛ばした後に、反応混合物を過剰のジエチルエーテルにて洗浄した。集めたジエチルエーテル層をデカンテーションし、乾燥させ98.2gの褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)σ=1.33(triplet、J=5Hz、3H)、2.03(triplet、2H)、7.07(doublet、J=5Hz、1H)、7.44(doublet、J=5Hz、1H)、8.23(singlet、1H)、8.33(singlet、1H)
次によく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、上記褐色液体(50.0g 0.27mol)と41.0g(0.27mol)ののヘキサフルオロけい酸リチウム(LiPF6)と蒸留水(200ml)を室温にて3時間良く攪拌した。ジクロロエタンにて洗浄後、エバポレーターでジクロロエタンを減圧留去した。再度、アセトンに溶解し、活性炭で脱色した。再度回収されたアセトン溶液から、エバポレーターでアセトンを減圧留去、乾燥させ75.2g(収率:94.2%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.43(triplet、J=5Hz、3H)、2.66(triplet、2H)、7.30(doublet、J=5Hz、1H)、7.74(doublet、J=5Hz、1H)、8.24(singlet、1H)、8.44(singlet、1H)
(化学構造式を、式(3)に示す)
粘度は、0.3P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
【0045】
(合成例4)
よく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、ピリジン(300g)と200mlのアセトニトリルを入れ、氷浴下にてクロロ炭酸エチル(375g)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌した後に80℃にて48時間加熱還流を行った。アセトニトリルをエバポレーターで飛ばした後に、反応混合物を過剰のジエチルエーテルにて洗浄した。集めたジエチルエーテル層をデカンテーションし、乾燥させ98.2g(収率:14.5%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.33(triplet、J=5Hz、3H)、2.03(triplet、2H)、7.07(doublet、J=5Hz、1H)、7.44(doublet、J=5Hz、1H)、8.23(singlet、1H)、8.33(singlet、1H)
次によく乾燥した300mlの丸底フラスコに攪拌子を入れ、上記褐色液体(50.0g 0.27mol)と77.4g(0.27mol)のリチウムビストリフルオロエタンスルホンイミド(LiTFSI)と蒸留水(200ml)を室温にて5時間良く攪拌した。ジクロロエタンにて洗浄後、エバポレーターでジクロロエタンを減圧留去した。再度、アセトンに溶解し、活性炭で脱色した。再度回収されたアセトン溶液から、エバポレーターでアセトンを減圧留去、乾燥させ100.2g(収率:85.9%)の褐色の液体を回収した。
[スペクトルデータ]:500MHz、1H−NMR(DMSO−d6)
σ=1.40(triplet、J=5Hz、3H)、2.53(triplet、2H)、7.20(doublet、J=5Hz、1H)、7.72(doublet、J=5Hz、1H)、8.25(singlet、1H)、8.44(singlet、1H)
(化学構造式を、式(4)に示す)
粘度は、0.26P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
【0046】
(比較合成例1)
4.02g(41.7mmol)のNエチルイミダゾールを50mlのエタノールに溶解した。次に、8.35g(41.7mmol)のp−トルエンスルフォン酸・一水和物を、氷冷下、前記N−エチルイミダゾールエタノール溶液中にすばやく加え、23時間攪拌した。エタノールをエバポレーターで留去したのち、残った反応液をドライアイスで冷却した200mlのエーテル中に滴下した。混合物をガラスフィルターを取り付けた吸引ヌッチェ上ですばやく吸引し、ガラスフィルター上にろ別することで、8.10gの1−エチル−イミダゾリウム−pトルエンスルフォナートを回収した。(収率は65.5%)(化学構造式を、下記に示す)
【0047】
【化9】

粘度は、8.2P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、親水性だった。 (比較合成例2)
1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウム(PF6-
(化学構造式を、下記に示す)
【0048】
【化10】

粘度は、4.9P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
【0049】
(比較合成例3)
1−オクチルー3−メチルイミダゾリウム(PF6-
(化学構造式を、下記に示す)
【0050】
【化11】

粘度、8.6P(25℃)だった。また、本イオン性液体は、疎水性だった。
【0051】
(耐電圧測定例)
純度99.99%のアルミニウムワイヤ(1.5mm直径)を70%HNO3(15重量部)と85%H3PO4(85重量部)からなる混液に2分間浸漬後、純水で洗浄した。次に1N,NaOH溶液で10分間エッチング、純水で洗浄後アセトン浸漬、乾燥した。
【0052】
次にアルミニウムワイヤをアジピン酸水溶液(1g/L)中で化成処理した。化成は10mA/cm2の定電流で行い、電圧が200Vに達した後、10分間200V定電圧で保持する事によって行った。次に上記化成皮膜を100Vに直流をAl(アルミニウム)側が+極になるように印加しつつ沸騰水で3分間処理した。この処理によって化成皮膜の一部が破壊される。
【0053】
次にこの様な処理を行った化成皮膜をイオン性液体に浸漬し、室温中1V/秒の速度で電圧上昇させた時の電流値の変化を測定した。1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=パラトルエンスルホナートを用いた場合の電流変化を図2に示す。
【0054】
はじめ電流値は酸化皮膜の破壊部分を通って流れる(領域1)が、電解液が陽極酸化性を持つ場合にはその皮膜修復能力によって破壊部分に新しい酸化皮膜が形成されるために電流値は最大値(A点:15V付近)をへて減少する(領域2)。電流値が最小値(B点:40V付近)が修復の完了した時点であり、その後は電圧上昇に比例したイオン伝導に基づく直線的なある電流上昇領域が現れる(領域3)。しかしながら、さらに電圧を上昇させるとある電圧(C点:80〜100V付近)から直線関係からずれて電流が流れ始める(領域4)。これは電解液の事実上の耐圧を示すものである。むろん陽極酸化能力が無い場合には領域1の部分のみで、そのまま電流が流れ酸化皮膜の破壊にいたる。
【0055】
(実施例1〜4)
<耐電圧測定>
純度99.99%のアルミニウムプレート(長さ50mm、幅5mm、厚さ0.5mm)を70%HNO3(15部)と85%H3PO4(85部)からなる85℃の混液に2分間浸漬後、25℃の純水で洗浄した。次にアルミニウムプレートを25℃、1NのNaOH水溶液に浸漬して10分間エッチングし、25℃の純水で洗浄後25℃のアセトン浸漬して25℃で風乾し、デシケーター中に保管した。
【0056】
次に化成前処理としてアルミニウムプレートを沸騰水中に5分間浸漬し、直後にアジピン酸2アンモニウム水溶液(1g/L)中で化成処理した。化成処理の際の陰極には円筒型の銅電極(高さ3.0cm、内径1.5mm、肉厚1.0mm)、を使用し、アルミニウムプレートは円筒型銅電極の中心に来るようにし、化成液に垂直に深さ1.0cm漬けた。この際にアルミニウムプレートと銅電極間の距離は約7mmである。アルミニウムプレートの化成はまず10mA/cm2の定電流で行い、その際電圧が徐々に上昇して200Vに達した後(約2、3分後)は、10分間200Vの定電圧で保持する事によって行った。
【0057】
次にアルミニウムプレートを陽極、長さ4.0cm、幅3.0cm、厚さ0.5mmの白金板を陰極として、沸騰水中で100Vの電圧を3分間印加した。この際、化成膜のついたアルミニウムプラートは沸騰水に垂直に1.0cm漬け、白金は垂直に2.0cm沸騰水に漬けた(アルミニウムプレートと白金板の距離は1.5cm)。この処理によって化成皮膜の一部が破壊される。
【0058】
次に上記の処理を行ったアルミニウムプレート(欠陥のある化成皮膜つき)を25℃のイオン性液体(合成例1)(式1)に浸漬し、0Vから1V/秒の速度で200Vまで電圧上昇させた時の電流値の変化を測定した。一回目の化成処理と同様、陰極には円筒型の銅電極(高さ3cm、内径1.5mm、肉厚1.0mm)、を使用し、アルミニウムプレートは円筒型銅電極の中心に位置するよう化成液に浸漬した(アルミニウムプレートと銅電極間の距離は約7mm)。再化成評価の際はアルミプレートは深さ0.5cm化成液に浸漬した。1−エチル−3−メチルイミダゾリウム=パラトルエンスルホナートを化成液として用いた場合の再化成評価時の電流変化である図2と同様だった。合成例1のイオン性液体は疎水性であり、初期ピーク電位(A点)20V、耐電圧150Vであった。なお、この方法により、合成例2〜4記載のイオン性液体の耐電圧測定をそれぞれ行い、実施例2〜4とした。耐電圧測定結果を、表1に示す。
【0059】
本発明の酸化皮膜修復能力評価には北斗電工株式会社製:Potentiostat/Galvanostat HA−3001A、Function Generator HB−104、グラフテック株式会社製:Graphic Tachologerを用いた。
【0060】
<電位窓測定>
30ml容量のビーカーに、20mlの試料を入れ上記の作用電極、対極、参照極を配置する。(作用電極にφ1mm×5mm の白金、対極に10mm×10mm×0.1mmの白金板、参照電極には、Ag/Ag+電極(ビーエーエス社製RE−5電極)を使用した。)続いて10mV/secの走査速度で、0Vからプラス側に電位を走査し20mA/cm2の電流が流れるまで測定を実施した。マイナス側の電位窓の測定は、プラス側の測定が終了後、測定溶液を入れかえ、上と同ni様の手順で、10mV/secの走査速度で、0Vからマイナス側に電位を走査し、20mA/cm2の電流が流れるまで測定を実施した。この方法により合成例1〜4記載のイオン性液体の耐電圧測定を行った。電位窓結果を(表2)に示す。
【0061】
以上の測定は、電気化学アナライザー(ソーラトロン社製1255B)を用い行なった。
【0062】
(比較例1〜3)
実施例1〜3記載の方法により比較合成例1〜3のイオン性液体の耐電圧測定及び電位窓測定を行った。耐電圧結果を(表1)に、電位窓結果を(表2)に示す。なお表1中で数値の記載していない部分(―と示した部分)は明確な電圧値が観察されなかったことを示している。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】電解液が金属酸化皮膜に対する修復能力を有する場合に観察される典型的な電流値変化(電流−電圧曲線)を示す。
【図2】((1−C25−3−CH3−Im)+(p−CH3−C64SO3-)(Imとは、イミダゾリニウム基のこと)を用い次の条件で再化成(酸化皮膜修復実験)を行なった場合の電流変化を示す。初期化成電圧200V、電圧上昇速度:1V/秒、測定:25℃。
【図3】セルの作製の模式図を示す。
【図4】セル模式図の概念図(断面図)を示す。
【符号の説明】
【0066】
A:再化成反応により電流が減少し始める点
B:再化成終了点
C:電解液の耐圧(耐電圧)を示す点
【産業上の利用可能性】
【0067】
上記のように、本発明にかかるイオン性液体は、各種電気デバイス用材料、各種反応用溶媒として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性液体のカチオン成分が、ピリジニウムおよびその誘導体
(誘導体とは、水素、および脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、カルボン酸およびエステル基、各種エーテル基、各種アシル基、各種アミノ基などの置換基を、上記カチオン成分の任意の位置に置換されたもの)
から選ばれる1以上であって、25℃での粘度が1P以下である、イオン性液体。
【請求項2】
前記イオン性液体のアニオン成分が、フッ素を含む原子団である、請求項1記載のイオン性液体。
【請求項3】
前記イオン性液体のアニオン成分が、R1−SO2−原子団
(ここで、R1は、炭素数が1〜50個のうちいずれかの、芳香族あるいは脂肪族であり、枝分かれや置換基を有しても良く、フッ素原子を1以上含んでいてもよい)
を有する、請求項1〜2のいずれかに記載のイオン性液体。
【請求項4】
前記イオン性液体のアニオン成分が、
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)アニオン(TFSI)、
CHF2−CF2−CH2OSO3-原子団、
CHF2−(CF23−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2OSO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2OSO3-原子団、
CHF2−CF2−CH2SO3−原子団、
CHF2−(CF23−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF22−CH2SO3-原子団、
CF3−(CF26−CH2SO3-原子団および、
CF3−(CF23−(CH22SO3-原子団
からなる群から選ばれる1以上の原子団を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のイオン性液体。
【請求項5】
前記イオン性液体のアニオン成分が、カルボキシラト(−COO-
を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のイオン性液体。
【請求項6】
下記式の構造を有するイオン性液体。
【化1】

【請求項7】
下記式の構造を有するイオン性液体。
【化2】

【請求項8】
下記式の構造を有するイオン性液体。
【化3】

【請求項9】
下記式の構造を有するイオン性液体。
【化4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−91617(P2007−91617A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281237(P2005−281237)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】