説明

イヌの癲癇の治療におけるジヒドロイミダゾロン類の使用

【課題】イヌの癲癇の治療薬を提供すること。
【解決手段】イヌの癲癇の治療における置換ジヒドロイミダゾロン類、とりわけ[1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オン] (AWD 131-138)またはその生理学上許容し得る塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヌの癲癇および行動異常の治療における置換ジヒドロイミダゾロン類、とりわけ[1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オン] (AWD 131-138)またはその生理学上許容し得る塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発作性疾患は、ヒトおよび動物、とりわけイヌおよびネコにおいて最も一般的な頭蓋内疾病である(OLIVER、1980年;SCHWARTZ-PORSCHE、1984年;LOESCHER等、1985年;FREY、1989年)。イヌおよびヒトにおいては、発作性疾患は、推定0.5〜1%の罹患率を有する(US Department of Health, Education and Welfare、1977年;JANZ、1979年;LOESCHER等、1985年;KERAENENおよびRIEKKINGEN、1988年;FORRESTER等、1989年;SRENK等、1994年)。
癲癇に対し種々の同義語が使用されるが、大腦皮質内の突発的な過剰の一過性発作神経細胞放電を説明している(LOESCHER、1993年;JAGGYおよびSTEFFEN、1995年a)。基本的なメカニズムを理解する著しい進展がなされてきている。抑制性神経伝達物質(BURNHAM、1989年;LOESCHER、1989年)と興奮性神経伝達物質(MCNAMARA、1988年;DINGLEDINE等、1990年)間の不均衡が説明されている(FENNERおよびHAAS、1989年)。また、イオンチャンネルと神経伝達物質レセプター機能の変化が癲癇の病因に有意の役割を果たしているようである(OWENSおよびKRIEGSTEIN、2001年)。
【0003】
発作は、意識の喪失を伴うまたは伴わない強直性、間代性または強直・間代性活動を有する局部性または全身性発作として分類されている(SCHWARTZPORSCHE、1984年)。癲癇は、基礎原因が臨床および病理検査によって特定できない場合、特発性として定義される(CUNNINGHAM、1971年;DE LAHUNTA、1983年;MONTGOMERYおよびLEE、1983年;SCHWARTZ-PORSCHE、1984年;およびCHRISMAN、1991年)。症候性癲癇は、頭蓋内病変または神経外代謝障害のいずれかによって生ずる(JAGGYおよびSTEFFEN、1995年bおよびc;PODELL等、1995年;JAGGYおよびHEYNOLD、1996年)。イヌにおいては、特発性癲癇は、発作性疾患を有する症例の約45%(JAGGYおよびSTEFFEN、1995年aおよびc)において、さらに、神経系の疾病を有するイヌ全ての5.3〜8.0%(SCHWARTZ-PORSCHE、1994年;BERNARDINIおよびJAGGY、1998年)において診断されている。特発性癲癇を有するイヌの殆どの症例において、全身性発作(80〜90%)が観察されている(SCHWARTZ-PORSCHE、1984年;LOESCHER等、1985年;BRAUND、1986年;CENTER、1986年;JAGGYおよびSTEFFEN、1995年c)。しかしながら、局部性発作も起り得る(BREITSCHWERDT等、1979年)。発作活動は、特発性癲癇を有するイヌにおいては、1〜3年齢において一般に始まる(CROFT、1965年;CUNNINGHAM、1971年;DE LAHUNTA、1983年;FORRESTER等、1989年;OLIVERおよびLORENZ、1993年)。幾つかの系統においては、遺伝が証明されている(OLIVER、1987年;CHRISMAN、1991年;OLIVERおよびLORENZ、1993年;JAGGYおよびSTEFFEN、1995年a)。
【0004】
イヌにおいては、フェノバルビタール、プリミドンおよび臭化カリウムのような僅かに数種の抗癲癇薬を生涯治療として成功裏に使用し得る(SCHWARTZ-PORSCHE、1984年;FREYおよびSCHWARTZ-PORSCHE、1985年;FREY、1986年;SCHWARTZ-PORSCHEおよびJUERGENS;1991年;LOESCHER、1994年)。
しかしながら、治療結果は、全ての症例において満足し得ない。症例の約1/3においては、薬物抵抗性が観察されている(SCHWARTZ-PORSCHE等、1982年;FREYおよびSCHWARTZ-PORSCHE、1985年;LOESCHER等、1985年;LOESCHERおよびSCHWARTZ-PORSCHE、1986年;HEYNOLD等、1997年)。さらにまた、フェノバルビタールまたはプリミドンのそれぞれの使用により、過剰鎮静、運動失調、強迫性無目的歩行(compulsive pacing)、脆弱、多食症、多渇症および多尿症のような副作用が生じ得る(SCHWARTZ-PORSCHE等、1982年;およびLOESCHER、1995年)。肝酵素の上昇は、頻繁に観察されている(LOESCHER、1995年)。臭化カリウムによる治療は、疲労、食欲不振、便秘、胃炎および皮膚病変をもたらし得る(LOESCHER、1995年)。
より新しいガバペンチンまたはラモトリジンのような抗癲癇薬は、これらの薬物がイヌにおいてペンチレンテトラゾール(PTZ)のような痙攣毒素によって誘発される発作を成功裏に抑制し得るとしても、不十分な半減期のためにイヌの癲癇治療には使用し得ない(LOESCHER、1994年)。そのような薬物の更なる例は、PTZによって誘発される発作を抑制することは証明されているが癲癇の治療には使用できないアベカルニルである(LOESCHER等、1990年)。即ち、現在入手し得る動物モデルを使用し、主として、それぞれの薬物が抗痙攣薬となる潜在力を有し得るかまたは有し得ないかを試験することはできるが、そのような試験によっては、その薬物の臨床上の有効性を予測することはできない。短い半減期の問題は、イヌにおける内蔵通過がヒトにおけるよりも速いという事実によってさらに増悪される。
持続放出性製剤で投与するフェニトイン(最も古い抗痙攣薬の1つ)の抗癲癇活性を試験する臨床試験が最近開始された。しかしながら、この試験は、十分な活性を証明することができなかった。この結果は、イヌにおける急速な内臓通過性故に予想されたことであり、持続放出性製剤の使用を不成功なものとした。イヌにおける更なる臨床試験は、ビガバトリンを使用して実施された(Speciale等、1991年)。この化合物は、その作用メカニズムに基き選択された。その作用メカニズムは、ガンマアミノ酪酸の代謝経路の不可逆的抑制に関与する。即ち、該メカニズムの不可逆的性質により、この薬物は、長期半減期に依存しないでその活性を示すことが予測された。単回の大量投与は、ガンマアミノ酪酸の代謝分解を不可逆的に阻止することが知られていた。しかしながら、この試験は、イヌにおける許容し得ない副作用のために失敗した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この情報により、イヌ用の新たな抗癲癇薬の必要性は明白である。そのような新たな薬物は、癲癇を患っているイヌ(即ち、患畜)の癲癇の治療に活性でなければならない。また、そのような薬物は、入手し得る薬物によって治療することのできなかった癲癇を患っているイヌにおいて活性でなければならない。さらに、そのような薬物は、良好な副作用プロフィールを有しなければならない、即ち、治療時に副作用を殆んど発生させるべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
AWD 131-138 [1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オン]は、抗痙攣および抗不安作用を有する新たな薬物である(Rostock等、1998年a〜d;WO 97/09314号)。また、該薬物は、マウスおよびイヌにおける静脈内ペンチレンテトラゾール(PTZ)発作試験において化学誘発発作閾値を上昇させることも証明されていた。イヌにおいて、経口(p.o.)での20 mg/kgおよび40 mg/kgは、それぞれ、発作閾値を39%および118%上昇させていた(Bialer等、1999年)。しかしながら、上述したように、このモデルは、癲癇を患っているイヌにおける薬物の臨床活性の予言者ではない。このPTZ試験においては、薬物を経口投与し、薬物投与後の明確な時点において、PTZを間代性痙攣のような最初の発作が誘発されるまで静脈内(i.v.)注入する。そのような痙攣を誘発させるのに要し体重に尺度合せしたPTZ投与量が、痙攣閾値として定義される。薬物効果は、薬物治療動物における痙攣閾値をビヒクル処置のみによる対照試験の閾値と比較することによって評価する。薬物効果は、痙攣閾値の%増大として表す。これは発作様行動に対するある種の活性を指標するモデルであるものの、PTZは、癲癇をイヌにおいては誘発させず、疾患動物に対してのそのようなモデルの予測性を制約している。さらにまた、試験薬投与とPTZ注入間の厳格な相関関係のため、上記データは、試験薬が、1日に1〜3回を越えないで投与した場合のその当日に亘って動物を発作から保護するに十分に長く持続する血漿値を発生させ得るかどうかを指標していない。
【0007】
AWD 131-138の作用メカニズムは、今日まで十分には理解されていない。GABAAレセプターのベンゾジアゼピン結合部位に対する極めて低い親和性が広範なレセプタースクリーンにおいて見出されている。種々のクローン化ヒトGABAレセプター複合体を使用しての電気生理学研究においては、AWD 131-138がサブタイプ選択性を有さないベンゾジアゼピンレセプターにおいて低親和性部分作用薬として作用することが示唆されている。AWD 131-138によって得られた最高刺激は、ジアゼパンの作用の僅か20%にしか達してなかった。特定のレセプター拮抗薬フルマゼニルを使用して、薬理活性に対するベンゾジアゼピンレセプター相互作用の寄与が評価された。AWD 131-138の抗痙攣活性は部分的に拮抗され得、抗不安活性はフルマゼニルの同時投与時に十分に拮抗された。発作および不安試験における拮抗度合は、抗痙攣に対するフルマゼニルの効果およびジアゼパンの抗不安活性に匹敵していた。これらのデータは、低親和性および低固有活性にもかかわらず、AWD 131-138のベンゾジアゼピンレセプターとの相互作用が薬理活性の主要メカニズムであり得ることを示唆している。しかしながら、AWD 131-138の精神薬理学プロフィールは、既知のベンゾジアゼピン作用薬と著しく異なる。薬物識別試験においては、モンキー類は、ミダゾラムおよびジアゼパンを識別するようにはAWD 131-138をベンゾジアゼピン様として識別しなかった。このベンゾジアゼピン様精神薬理性の欠如は、AWD 131-138が、完全ベンゾジアゼピン作用薬と異なり、コカインと置き換わらなかった自己投与パラダイムにおいても実証された。このベンゾジアゼピン様精神薬理性の欠如は、低固有活性による部分作用薬活性に関連し得る。また、AWD 131-138は、弱いカルシウムチャンネル遮断効果も見出された。このメカニズムは、抗痙攣活性に寄与し得る(Rostock等、1998年a〜d;Rundfeldt等、1998年;Sigel等、1998年;Yasar等、1999年)。
【0008】
本発明の基礎をなす試験においては、AWD 131-138の有効性を癲癇イヌにおける臨床試験において評価した。さらに詳細には、何ら事前治療を行っていない新たに診断された特発性癲癇を有するイヌ並びに通常の抗癲癇薬物療法には応答しなかった特発性癲癇を有するイヌを治療した。さらに、AWD 131-138と他の癲癇薬物との併用治療も実施した。さらに、他の抗癲癇薬と比較したAWD 131-138の副作用プロフィールも評価した。驚くべきことに、AWD 131-138は、新規診断および薬物抵抗性イヌの双方において高い発作抑制効力有することを見出した。さらに、AWD 131-138は、長期投与においてさえも良好に耐容性であり、副作用も伝統的な抗癲癇薬と比較して少なめにしか観察されない。さらにまた、AWD 131-138は、イヌの行動異常、とりわけ不安に関連する行動異常、即ち、ヒトまたは周囲に対する予期に反した攻撃のような恐怖行動の治療に有効である。
癲癇イヌにおけるAWD 131-138のこの驚くべき効果は、下記の2つの要因に関連し得ていた:1つには、他の臨床使用薬、即ち、フェノバルビタール、プリミドンおよび臭化カリウムに比較してはるかに良好であった当該化合物のイヌにおける驚くべき耐容性(tolerance)。もう1つは、図1に示すような投与後12時間においてさえも十分に高かった血漿値をもたらしたAWD 131-138の投与。投与後2時間で測定した血漿値はかなり高かった(図1)。即ち、投与後の高血漿値を可能にする例外的な耐容性と投与後12時間においてさえもの十分に高い血漿値との双方の組合せを、イヌにおける本臨床試験において見られるように、癲癇イヌにおける当該化合物の予想外の活性の根拠として理解できる。
【0009】
即ち、本発明の第1の局面は、イヌの癲癇治療用の薬剤の製造における活性成分としての[1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オン] (AWD 131-138)またはその生理学上許容し得る塩の使用である。本発明の第2の局面は、イヌの行動異常の治療におけるAWD 131-138またはその生理学上許容し得る塩の活性成分としての使用に関する。
本発明の薬剤は、任意の適切な経路、例えば、非経口、経口、経鼻、肺投与等によって投与し得る。しかしながら、実用目的においては、経口投与が好ましい。
上記薬剤は、1日当り1回または数回、例えば、1日当り1〜5回投与し得る。1日当り1〜3回の投与がとりわけ好ましい。活性成分の投与量は、治療上有効な投与量、即ち、癲癇症状および/または行動異常を改善または解消するのに十分な投与量である。投与日量は、好ましくは1〜200mg/kg、より好ましくは5〜100mg/kgである。投与量は、個々の患畜の必要量に適応させ得る。活性成分は、活性成分および製薬上許容し得る担体、希釈剤および/またはアジュバントを含む製薬組成物として通常投与する。
また、上記活性成分は、所望であれば、少なくとも1種の更なる活性成分と一緒に同時投与し得る。さらなる活性成分は、他の抗癲癇薬から、例えば、フェノバルビタール、プリミドンおよび臭化カリウムから選択し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬剤は、任意のタイプの癲癇、例えば、特発性または症候性癲癇の治療において使用し得る。とりわけ好ましいのは、特発性癲癇、例えば、新たに診断された特発性癲癇または既に診断確定した特発性癲癇、とりわけ通常の抗癲癇薬によっては治療することのできない薬物抵抗性癲癇の治療である。
また、本発明の医薬は、行動異常、とりわけ不安症の治療においても使用し得る。
上記治療における驚くべき利点は、鎮静のような望ましくない行動副作用リスクの軽減である。さらに、上記薬物の投与は、肝酵素活性を誘発させず、従って、他の合併症を潜伏させない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】20〜30mg/kgのAWD 131-138経口投与(単独治療)後2時間および12時間で測定したAWD 131-138血漿濃度を示すグラフである。
【図2】新規診断および慢性癲癇を有するイヌにおける治療の最初の1ヶ月中のAWD 131-138血漿濃度(ng/mL、投与後2時間)と発作数を示すグラフである。
【図3】新規診断および慢性癲癇を有するイヌにおけるフォローアップ検査中のAWD 131-138血漿濃度(ng/mL、投与後2時間)と発作数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、図面および実施例によりさらに詳細に説明する。
1. 材料および方法
1.1. イヌ
本試験においては、111匹の特発性癲癇を有するイヌを試験した。前向き試験においては、29匹のイヌをAWD 131-138で治療した。12匹の新たに診断した特発性癲癇を有するイヌ(新規診断イヌ)において、初期抗痙攣治療をAWD 131-138により開始した。慢性癲癇を有し通常の治療に応答を示さない更なる17匹のイヌにおいては、AWD 131-138を追加した(追加治療)。回顧的に、82匹の特発性癲癇を有するイヌを評価した。70匹の新規診断イヌは、確立された抗癲癇薬フェノバルビタールまたはプリミドンで治療されていた。
これら2つの薬物による治療後に何ら改善のない慢性癲癇を有する残りの12匹においては、臭化カリウムが追加されていた(表1)。
【0013】
表1:本試験に登録したイヌ数

【0014】
1.1.1. イヌ:AWD 131-138治療
本研究の第1部は、AWD 131-138 [1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ1-H-イミダゾール-2-オン]を試験する臨床パイロット試験である。発作疾患歴を有する29匹のイヌを特発性癲癇と診断した。
1.1.1.1. 新規診断イヌ
これらのイヌの12匹においては、特発性癲癇を新たに診断した。これらのイヌは、提示前は治療されてなく、AWD 131-138による単独治療を受けた(表1)。これらのイヌの1匹は、AWD 131-138治療の4ヶ月後において発作頻度の改善を示さず、フェノバルビタール(4mg/kg体重経口、投与日量)を追加した。
全てのイヌが、2回以上の全身性癲癇発作を提示前に有していた。痙攣大発作は、全症例において飼い主によって観察され、これらのうちの5匹は群発発作を発症していた。全身性発作に加え、3匹のイヌにおいて、焦点性発作が観察された(表2)。12匹の未治療イヌにおける発作頻度は、月当り8回発作ないし8ヶ月毎の1回発作の範囲であった。
1.1.1.2 慢性癲癇を有するイヌ
慢性癲癇を有する17匹のイヌは、提示前にフェノバルビタールまたはプリミドンによって治療されており、この通常の薬物療法に応答していなかった。治療期間は、3ヶ月〜5年間であった(中央値 1.5年、平均および標準偏差 1.6±1.3年)。これらの動物は、当該パイロット試驗中、AWD 131-138と組合せたフェノバルビタールまたはプリミドンのいずれかとの併用治療を受けた(表1)。
これらのイヌのうちの11匹は、6〜23mg/kg体重経口の投与日量(中央値 10.7、平均および標準偏差 12.9±6.6mg/kg)のフェノバルビタールで治療した。フェノバルビタールの血清濃度を測定したところ、19.5〜58.9μg/mLの範囲であった(中央値 26.5、平均および標準偏差 32.0±13.6μg/mL;FRANBACH、1984年によって確立された参照値 15〜45μg/mL)。
残りの6匹のイヌは、25〜53mg/kg体重経口の投与日量(中央値 45.5、平均および標準偏差 42.8±8.9mg/kg)を使用してのプリミドンで治療した。これらの場合、フェノバルビタール濃度は、23.2〜27.4μg/mLの範囲であった(中央値 23.7、平均および標準偏差 24.8±1.8μg/mL)。
痙攣大発作が全症例において観察されており、これらのうちの15例は群発発作を発症しており、8匹のイヌは持続性または急性癲癇重積症のいずれかを示していた。全身性発作に加え、5匹のイヌにおいては焦点性発作が、さらに2症例においては複雑部分発作が観察された(表2)。これら17匹のイヌにおける発作頻度は、月当り6回癲癇発作ないし6ヶ月当り1回発作の範囲であった。
【0015】
表2:AWD 131-138による治療前の29匹のイヌにおける発作のタイプ

【0016】
1.1.2. イヌ:回顧試験、通常治療
本試験の第2部においては、特発性癲癇を有する良好に記録された82症例からのデータを回顧的に分析した。
これらのイヌの70匹は、新たに診断された特発性癲癇を有しており、提示前には治療されてなかった。全てのイヌが治療前に2回以上の発作を有していた。これらのイヌの44匹は、4〜13mg/kg体重経口範囲の投与日量(中央値 5.0、平均および標準偏差 6.0±2.4mg/kg)のフェノバルビタールで治療されていた。血清濃度は、4.6〜33.2μg/mLの範囲であった(中央値 17.2、平均および標準偏差 18.2±7.2μg/mL)。
26匹のイヌは、プリミドンで治療され、24〜70mg/kg体重経口投与量(中央値 60.0、平均および標準偏差 51.0±13.4mg/kg)を受けていた。フェノバルビタール血清濃度は、5.9〜37.5μg/mLの範囲であった(中央値 18.3、平均および標準偏差 19.7±10.2μg/mL)。
全てのイヌが治療前に少なくとも2回以上の発作を有していた。イヌの大部分(n = 61)において、全身性発作(大発作タイプ)が観察されていた。19匹のイヌが発作歴において群発を示しており、7匹のイヌは癲癇重積症の急性期または回復後について触れられていた。13匹のイヌは焦点性発作を有しており、3匹のイヌにおいては複雑部分発作が記録されていた(表3)。
慢性癲癇を有する12匹のイヌは、フェノバルビタールまたはプリミドンのいずれかで提示前の3ヶ月〜3年間(中央値 0.5年、平均および標準偏差 1.7±0.9年)治療されており、該薬物治療に応答してなかった。これらのイヌは、追加薬物の臭化カリウムを受けていた。
これらのイヌの8匹は、6〜17mg/kg体重経口の投与日量(中央値 9.5、平均および標準偏差 10.0±3.2mg/kg)のフェノバルビタールで治療されており、血清濃度が測定され、18.7〜41μg/mLの範囲であった(中央値 24.6、平均および標準偏差 27.2±8.4μg/mL)。
残りの4匹のイヌは、50〜70mg/kg体重経口の投与日量(中央値 60.0、平均および標準偏差 60.0±7.0mg/kg)のプリミドンで治療されていた。これらの症例においては、血清濃度は、24.5〜36.2μg/mLの範囲であった(中央値 30.4、平均および標準偏差 30.4±5.9μg/mL)。
臭化カリウムは、40〜60mg/kg体重経口の投与日量(中央値 41、平均および標準偏差 42.6±5.4mg/kg)で投与されていた。臭化物濃度は、0.6〜1.4mg/mLの範囲であった(中央値 0.9、平均および標準偏差 1.0±0.3mg/mL;PODELLおよびFENNER、1993年により確立された治療範囲 1.0〜2.0mg/mL)。
全てのイヌにおいて、全身性発作(大発作タイプ)が観察されていた。7匹のイヌが発作歴において群発を示しており、6匹のイヌは癲癇重積症の急性期または回復後について触れられていた。6匹のイヌは焦点性発作を有しており、1匹のイヌにおいては複雑焦点性発作が記録されていた(表3)。
【0017】
表3:新規診断特発性癲癇を有するまたは慢性癲癇(追加臭化カリウム)を有するイヌにおけるフェノバルビタールまたはプリミドンによる治療前の82匹のイヌにおける発作のタイプ

【0018】
1.2. 試験設計
1.2.1. パイロット試験:AWD 131-138治療
当企画は、7〜9ヶ月の期間に亘る前向き試験であるように設計した。死亡した場合、観察期間は、上記よりも短かった(結果参照)。発作頻度歴、重篤度および期間、最初の発作発症齢、および以前のまたは継続中の抗癲癇治療を各々の症例において記録した(1.1を参照されたい)。癲癇発作は、飼い主の観察およびビデオモニタリングに基づき分類した(表2) (HEYNOLD等、1997年;BERNARDINIおよびJAGGY、1998年;BERENDTおよびGRAM、1999年;THOMAS、2000年)。
特発性癲癇の診断は、標準の身体的および神経学的知見並びに標準の特別検査に基づいていた。全てのイヌが標準の身体的および神経学的検査を受けていた(JAGGYおよびTIPOLD、1999年)。血液検査は、すべての症例において、血液学(赤血球数、白血球数および白血球百分率)並びに血液化学(アラニントランスフェラーゼ(ALT)、アラニンホスファターゼ(AP)、グルタメートデヒドロゲナーゼ(GLDH)、アンモニア、グルコース、尿素、クレアチニン、総血清ビリルビン、コレステロール、血清アルブミン、カルシウム、ナトリウムおよびカリウム)を含んでいた。フェノバルビタール(ALOMED社、ラドルフゼル)の血漿濃度は、外部検査室によって分析された。更なる特別検査は全てのイヌにおいて実施しなかったが、脳脊髄液検査、頭蓋コンピュータ断層撮影、EEGおよび胸部X線を含んでいた(表4)。2症例においては、特発性癲癇は、組織病理学によって確認した。
【0019】
表4:AWD 131-138で治療した29匹のイヌにおける特別検査

【0020】
AWD 131-138治療は、全ての症例において、1週間の間5mg/kg体重経口1日2回の投与量で開始した。第2週においては、投与量をイヌ毎に10mg/kgに増大させた。発作が依然として観察される場合には、AWD 131-138の投与量を30mg/kg体重1日2回まで増大させた(表5)。
表5:mg/kg体重でのAWD 131-138の投与日量

【0021】
最初のフォローアップ検査は、AWD 131-138による治療を開始した後の3週間で実施し、その後、6週または8週間隔でまたは個々の発作発生に応じた検査を行った。血液検査を含む臨床および神経学検査を実施した。試験中、全ての飼い主が、頻度、時間および重篤度を含む発作発生;行動変化;他の薬物療法および観察し得る有害作用を正確に記録する日誌を保有した。これらの時点において、AWD 131-138の血漿濃度およびその代謝産物を測定した。
AWD 131-138による治療の第2ヶ月後、飼い主は、発作発生および以下の副作用に絞ったアンケートに記入した:鎮静、多食、多尿および多渇、嘔吐、下痢、食欲不振、態度変化、情動不安、AWD投与後の咀嚼増強(augmented chewing)、飼い主または他のイヌに対する攻撃性、および歩行異常。
【0022】
1.2.1.1. AWD 131-138の血漿濃度の測定
薬物動態学試験を、AWD 131-138単独治療による2匹のイヌおよびAWD 131-138とフェノバルビタールまたはプリミドンとの併用治療による4匹のイヌにおいて、治療開始時に実施した。6匹のイヌ全てが、5mg/kg体重のAWD 131-138を受けていた。血液は、2時間毎に3回採取した。AWD 131-138の血漿濃度およびその代謝産物は、HPLC/質量分析を使用して測定した。同じ方法をフォローアップ検査中のコンプライアンス制御として使用した。血液は、AWD 131-138の経口投与後の2時間および12時間で採取した。
1.2.2. 回顧試験
当該試験のこの部分において得られたデータは、対照として機能した。通常の薬物療法による82の症例(1.1.2.参照)全てにおいて、発作の頻度、重篤度および持続時間;発作発症齢並びに抗癲癇治療の歴が各症例において記録されていた。発作は、飼い主の観察およびビデオモニタリングに基づいて分類した。
全てのイヌが標準の身体的および神経学的検査を受けていた(JAGGYおよびTIPOLD、1999年)。実施された血液検査は、全てのイヌにおいて、血液学および血液化学を含んでいた(1.2.1.参照)。フェノバルビタール(ALOMED社、ラドルフゼル)および臭化カリウム(Gesellschaft fuer Epilepsieforschung E.V.社、ビーレフェルト)の血漿濃度は、標準方法で分析されていた。他の特別検査としては、頭蓋コンピュータ断層撮影、脳脊髄液検査、EEGおよび胸部X線を含んでいた(表6)。
【0023】
表6:82匹のイヌ(回顧試験)における特別検査

【0024】
実施された検査全てが正常値範囲内であった場合には、特発性癲癇が疑われそれぞれ診断されていた。各ペットの飼い主は、1〜9ヶ月の期間を含む治療前後の臨床観察;発作頻度、持続時間および重篤度に関する治療転帰について質問されていた。
1.2.3. 統計データ
EXCELR用の統計ソフトウェアパッケージWinSTATRを使用して、年齢、発作発症年齢、治療開始時年齢、血清濃度を含むフェノバルビタールまたはプリミドンの投与量の平均、中央値および標準偏差のような各群における記述パラメーターを算出した。治療前と治療中の発作頻度の差の有意性は、InStatRを使用し、複製対についてのウィルコクソン符号つき順位和検定によって算出した。有意性のレベルは、P = 0.05として選択した。治療群の比較は、ANOVA(3群)またはフィッシャーの精密検定(2群)によって実施した。
【0025】
2. 結果
2.1. 発作頻度
2.1.1. パイロット試験:AWD 131-138治療
2.1.1.1. 新規診断イヌ
提示前、発作頻度は、1ヶ月当り8回の発作〜8ヶ月当り1回の発作の範囲であった(中央値1.6)。AWD 131-138による単独治療中、月当りの発作頻度は、発作の完全制御ないし月当り9回の発作事象に変化した(中央値0.71) (表7)。これらの12匹のイヌのうちの9匹において、発作の減少が観察された。これら9匹のイヌにおける値を算出し、従って、無応答動物を削除すると、月当りの中央値発作頻度は、治療前の1.7とAWD 131-138治療中の0.55であった。これらのイヌにおける発作頻度の改善は、統計的に有意であった(p < 0.05)。応答動物における発作減少割合は、平均値として示して49.8%であった(表7)。
1匹のイヌ(8%)は、治療前に5回発作していたが、9ヶ月の観察期間中発作なしのままであった(飼い主の新しい情報によれば、このイヌは、17ヶ月間の今も発作なしである)。50%以上の発作頻度の減少は、12匹のイヌの4匹(33%)に置いて達成された(表7)。3匹のイヌ(25%)は、治療中に発作頻度の減少または発作頻度の上昇のいずれも示さないイヌとして定義される無応答動物とみなされた。これら3匹のうちの1匹は、30mg/kgの投与量のAWD 131-138を受け且つ投与後2時間で3997.5ng/mLの測定血漿濃度を有する薬物治療の最初の2ヶ月後に癲癇重積症で死亡した。1匹のイヌは、悪化したが、フェノバルビタールによる補完後に改善した。
単独治療群の比較(2.2.1.対2.2.2.)は、AWD 131-138、フェノバルビタールまたはプリミドンの抗癲癇有効性間に何ら有意差を示しておらず、従って、治療的等価性を示唆している。
【0026】
2.1.1.2. 慢性癲癇を有するイヌおよびAWD 131-138による追加治療
月当りの発作頻度は、フェノバルビタールまたはプリミドンによる不成功な治療中、月当り8回の発作〜6ヶ月毎の1回ないし4回の発作で変動していた(中央値 1.9)。AWD 131-138による追加治療中は、月当りの発作頻度は、無発作ないし9回の発作事象の範囲であった(中央値 2.0) (表8)。これらの17匹のイヌのうち10匹においては、発作減少が観察された。これら10匹のイヌにおける値を算出し、従って、無応答動物を削減すると、月当りの中央値発作頻度は、治療前の2.4とAWD 131-138による追加治療中の1.1であった。これらのイヌにおける発作頻度の改善は、統計的に有意であった(p < 0.05)。応答動物における発作減少割合は、平均値として示して47.2%であった(表8)。
6匹のイヌ(35%)が50%よりも高い発作減少を有していた。1匹のイヌ(6%)は、完全に発作なしであった。このイヌは、月当り1〜4回の群発を伴って8歳半の年齢で発作を発症していた。AWD 131-138との併用治療の3ヵ月後、このイヌは、急性白血病のために残念ながら安楽死させた。2匹の他のイヌは、治療開始時にはまだ2回の発作を有していたが、9ヶ月の観察期間の静養の間発作はなかった。残りの11匹のイヌは、50%よりも低い発作減少を有するか(4匹)、或いは無応答動物とみなされた(7匹)。この群の9匹の患畜は、癲癇重積症で死亡するか或いは飼い主の要望により安楽死させた。これらの2匹は、組織病理学検査を行った。神経外または神経病変は検出されなかった。もう1匹のイヌは、クマリン中毒後に死亡した。これらのイヌにおいては、治療観察期間は2〜8ヶ月に短縮された。
【0027】
2.1.2. 回顧試験、通常治療
2.1.2.1. 新規診断イヌ、フェノバルビタール単独治療
治療前、発作は、月当り7回〜6ヶ月毎の1回発作の頻度(中央値 1.6)で生じていた(表7)。フェノバルビタールによる治療中の月当りの発作頻度は、無発作ないし10回の発作事象の範囲であった(中央値 0.59)。これらの44匹のイヌの32匹において、発作減少が観察されていた。これら32匹のイヌにおける値を算出し無応答動物を削除すると、月当りの中央値発作頻度は、治療前の1.68とフェノバルビタールによる薬物治療中の0.42であった。これらのイヌにおける発作頻度の改善は、両計算法を使用して、統計的に有意であった(p < 0.05)。応答動物における発作減少割合は、平均値として示して72.4%であった(表7)。
これら44匹のイヌのうちの9匹(20%)は、治療中癲癇発作は無かった。28匹(64%)のイヌにおいて、50%よりも高い発作減少が観察されていた。12匹のイヌ(27%)は、無応答動物とみなされていた。この群の10匹のイヌは、癲癇重積症で死亡するか或いは飼い主の要望により安楽死させた。更なる3匹のイヌは、癲癇以外の疾病により安楽死させた。
【0028】
2.1.2.2. 新規診断イヌ、プリミドン単独治療
これらの26匹のイヌにおいては、発作は、月当り10回〜5ヶ月毎の1回発作の頻度(中央値 1.75)で生じていた(表7)。プリミドンによる治療中、月当りの発作事象は、0〜12の範囲であった(中央値 0.39)。しかしながら、この発作減少は、統計的に有意ではなかった。26匹のイヌのうち19匹において、発作減少が観察されていた。これら19匹のイヌにおける値を算出し無応答動物を削除すると、月当りの中央値発作頻度は、治療前の2.0とフェノバルビタールによる薬物治療中の0.29であった。これらのイヌにおける発作頻度の改善は、統計的に有意であった(p < 0.05)。応答動物における発作減少割合は、平均値として示して75.1%であった(表7)。
4匹のイヌ(15%)がプリミドン治療において発作なしであった。16匹のイヌ(62%)において、発作頻度の減少は50%よりも高かった。7匹のイヌ(27%)は、無応答動物とみなされていた。これらの群の10匹のイヌは、癲癇重積症で死亡するか或いは飼い主の要望により安楽死させた。
【0029】
2.1.2.3. 慢性癲癇を有するイヌ、および臭化カリウムによる追加治療
フェノバルビタールまたはプリミドンに応答しなかった12匹のイヌにおいて、薬物治療を臭化カリウムで補完した。発作は、月当り13回〜2ヶ月毎に1回の発作の頻度(中央値 3.0)で生じていた。この併用治療中、発作頻度は、月当り11回〜8ヶ月毎の1回の発作(中央値 1.9)に変化していたが(表8)、この発作減少は、統計的に有意ではなかった。12匹のイヌのうちの7匹において、発作減少が観察されていた。これら7匹のイヌにおける値を算出し、従って、無応答動物を削除すると、月当りの中央値発作頻度は、治療前の3.0と臭化カリウムによる追加薬物治療中の0.8であった。これらのイヌにおける発作頻度の改善は、統計的に有意であった(p < 0.05)。応答動物における発作減少割合は、平均値として示して59.7%であった(表8)。5匹のイヌ(42%)において、発作頻度の減少は、50%よりも高く、5匹の更なるイヌは無応答動物とみなされていた。これらの群の6匹のイヌは、癲癇重積症で死亡するか或いは飼い主の要望により安楽死させた。
慢性癲癇を有するイヌにおける治療群のフィッシャーの精密検定による比較は、2つの追加治療スケジュール、即ち、AWD 12-281または臭化カリウムの追加治療による群の抗癲癇有効性間で何ら有意差を示していなかった。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
2.2. 発作活動の持続時間および重篤度
2.2.1. パイロット試験:AWD 131-138治療
2.2.1.1. 新規診断イヌ
この群のイヌにおいては、提示前の発作の持続時間は、0.5分〜10分(中央値 3.0分)で変動していた(表9)。平均時間は、殆んどの患畜において、2〜3分であった。AWD 131-138による単独治療中、この場合も、発作持続時間は、0.5分〜10分の範囲であったが、2.5分の中央値であった。5症例において、発作の持続時間は、12〜50%短縮していた(平均38%)。
行動変化を伴う発作後期間が提示前の12匹のイヌ全てにおいて観察され、10分〜24時間の範囲であった。4匹のイヌにおいては、発作後時間は、50〜75%短縮されていた。
発作重篤度の軽減は、12名の飼い主のうちの9名により主観的に記録されていた。提示前は、全てのイヌが痙攣大発作を有しており(表2)、5匹のイヌにおいては、群発に至っていた。AWD 131-138治療中、2匹のイヌのみが焦点性発作を発症していた。1匹のイヌは全く群発を示さず、他の4匹は群発当りの発作数の低下を示していた(平均45.3%の低下)。
【0033】
2.2.1.2. 慢性癲癇を有するイヌ、およびAWD 131-138による追加治療
フェノバルビタールまたはプリミドンによる通常の単独治療中の17匹のイヌにおける痙攣大発作の持続時間は、30秒〜10分の範囲であった(中央値 2.0分) (表9)。AWD 131-138による補完後、発作持続時間は、2.0分の中央値により30秒〜5分に僅かに短縮した。発作時間は、3匹のイヌにおいて、40〜50%短縮した。
行動変化を伴う発作後期間が提示前のイヌ全てにおいて観察され、30分〜48時間(平均8.5時間)の範囲であった。AWD 131-138治療中、この時間範囲は、10匹のイヌにおいて30〜75%(平均54%)短縮されていたので、10分〜24時間(平均5.5時間)であった。
17症例の8例において、ペットの飼い主は、発作重篤度の軽減を主観的に説明した。17匹のイヌ全てが、AWD 131-138治療前に、痙攣大発作を有しており、15匹のイヌにおいては群発までおよび/または8匹のイヌにおいては癲癇重積症まで至っていた(表2)。更なるAWD 131-138投与後、9匹のイヌにおいて、焦点性発作が痙攣大発作と部分的に置換わった。3匹のイヌにおいては、群発はもはや生じておらず、群発当りの発作数が更なる4症例において21〜64%(平均39.5%)低下していた。1名の飼い主が発作重篤度の悪化を報告し、治療2ヵ月後にAWD 131-138の投与を急に停止したが、イヌへの更なる副作用はなかった。もう1匹のイヌにおいては、AWD投与を、合併症なしの4ヶ月治療後に、飼い主の要求により漸次低減させた。
【0034】
2.2.2. 回顧試験、通常の治療
2.2.2.1. 新規診断イヌ、フェノバルビタール単独治療
治療前の発作持続時間は、0.5〜10分で変動していた(中央値 4.0分) (表9)。平均時間は、殆どの場合、2〜3分であった。フェノバルビタール投与中も、主要発作事象の持続時間は、0.5〜10分で変動していたが、5.0分の中央値であった。発作が無くならなかった4匹のみにおいては、観察された発作の33〜50%の短縮が生じていた。
行動変化を伴う発作後期間が治療前の39匹のイヌにおいて観察され、10分〜24時間(平均3.5時間)の範囲であった。フェノバルビタール投与中、発作後期間は、5分〜24時間(平均3時間)に短縮していた。この期間は、8匹のイヌにおいて30〜65%(平均43%)短縮していた。
無発作とならなかった24症例においては、飼い主が発作重篤度の軽減を主観的に報告していた。提示前、40匹のイヌが痙攣大発作を有し、10匹の症例において群発として、4匹のイヌにおいて癲癇重積症として拡大していた(表3)。フェノバルビタール治療中、6匹のイヌにおいて、痙攣大発作の代りに焦点性発作が飼い主により観察されていた。10匹のイヌからの3匹においては、群発発症は止んでいた。4匹のイヌからの3匹においては、癲癇重積症はもはや生じてなかった。11匹のイヌにおいては、痙攣大発作活動は変化しないままであり、飼い主の記録によれば、重篤度は増大していた。
【0035】
2.2.2.2. 新規診断イヌ、プリミドン単独治療
これらの26匹のイヌにおいて、提示前の発作は、0.5分〜10分の範囲であった(中央値 1.5分) (表9)。殆どの症例において、平均時間は、2〜3分であった。プリミドン治療中、発作持続時間は、0.5分〜10分で変動しており(1.0分の中央値)、2匹のイヌ(30%)においてのみ短縮していた。
発作後兆候は、提示前の22匹のイヌにおいて観察されており、15分〜48時間(平均5時間)の範囲であった。プリミドン投与中は、発作後期間は、10分〜48時間(平均4.5時間)持続していた。発作後期間の持続時間は、5匹のイヌにおいて、25〜65%(平均40%)短縮していた。
無発作とならなかった22症例のうちの10例において、飼い主が発作重篤度の軽減を主観的に報告していた。治療前、25匹のイヌが痙攣大発作を有し、9匹の症例において群発として、3匹のイヌにおいて癲癇重積症として拡大していた(表3)。プリミドン治療中、2匹のイヌにおいて、痙攣大発作の代りに焦点性発作が飼い主により観察されていた。10匹のイヌからの5匹においては、群発当りの発作頻度は、23〜50%(平均37.5%)減少していた。癲癇重積症は、3匹の犬全部においてもはや観察されてなかった。2匹の犬において、飼い主の記録によれば、発作重篤度は増大していた。
【0036】
2.2.2.3. 慢性癲癇を有するイヌ、および臭化カリウムによる追加治療
フェノバルビタールまたはプリミドン単独療法で治療した12匹のイヌにおいて、発作持続時間は、1.0分〜13分で変動していた(中央値 3.0分) (表9)。平均時間は、殆どの症例において、1〜3分であった。臭化カリウム補完後、発作の持続時間は、1.0分〜10分で変動していた(中央値 2.0分)。発作持続時間は、3匹のイヌにおいて40〜50%短縮していた。
発作後兆候は、提示前の11匹のイヌにおいて観察されており、半時間〜24時間(平均6.0時間)の範囲であった。臭化カリウムとの併用治療中は、発作後期間は、15分〜24時間(平均5.5時間)で変動していた。発作後期間の持続時間は、2匹のイヌにおいて短縮していた(50および75%)。
12症例のうちの4例において、飼い主が発作重篤度の軽減を主観的に報告していた。併用治療前、12匹全てイヌが痙攣大発作を有し、この発作は、6匹のイヌにおいて癲癇重積症として、7匹のイヌにおいて群発として進行したが、6匹のイヌにおいては臭化カリウムによる補完後もはや生じなかった。1匹のイヌにおいては、飼い主が発作重篤度の増大を認識していた。
【0037】
表9:各種抗痙攣治療前および治療中の痙攣大発作における発作持続時間

表中凡例:n = イヌ数;分で示す中央値1および時間範囲2
【0038】
2.3. AWD 131-138の血漿濃度
AWD 131-138によるパイロット試験に登録した6匹のイヌにおいて、薬物動態学試験を実施した。AWD 131-138は、投与後2時間、4時間および6時間での血漿サンプルにおいて測定した。結果は、表10に要約している。AWD 131-138の初期投与量は、全症例において5mg/kg体重経口であった。
【0039】
表10:AWD 131-138血漿濃度(ng/mL)

表中凡例:AWD 131-138:bld (検出限界以下):< 2ng/mL
【0040】
2.3.1. 新規診断イヌにおけるAWD 131-138血漿濃度
飼い主コンプライアンスを制御するため、AWD 131-138血漿濃度を、治療開始後の最初の3週間において、投与後2時間および12時間に測定した。濃度は、経口投与後2時間の11症例において、53.28〜8619.4ng/mLの範囲であった(中央値 2585.0、平均および標準偏差 3356.3±3290.3ng/mL) (図1および2)。AWD 131-138投与量は、8匹のイヌにおける10mg/kg体重、2匹のイヌにおける15mg/kg体重および1匹のイヌにおける1日2回の20mg/kg体重間で変動していた。投与後12時間のこの時点での血漿濃度は、12匹全てのイヌにおいて、5.4〜1139.2ng/mLの範囲であった(中央値 218.1、平均および標準偏差 377.5±406.0ng/mL) (図1)。更なる対照検査を各イヌにおいて異なる時点で実施した。血漿濃度は、経口投与後の2時間で53.28〜10 737.41ng/mLで変動していた(図1および3)。血漿濃度と発作頻度間に相関はなかった(図2および3)。
2.3.2. 慢性癲癇を有するイヌにおけるAWD 131-138血漿濃度
慢性癲癇および追加治療を有する17匹のイヌの血漿濃度は、投与の2時間後279.6〜10613.7ng/mLの範囲であった(中央値 2992.4、平均および標準偏差 3896.1±3339.2ng/mL) (図2)。AWD 131-138投与量は、15匹のイヌにおける10mg/kg体重と2匹のイヌにおける1日2回の15mg/kg体重の間で変動していた。投与12時間後の血漿濃度は、7.57〜5873.04ng/mLの範囲であった(中央値 179.3、平均 644.0)。更なる対照検査を、この群においても、異なる時点で実施した。血漿濃度は、経口投与後2時間で156.46〜26710.58ng/mLで変動していた(図1)。しかしながら、AWD 131-138の治療範囲は、この時点では未知であった。血漿濃度と発作頻度間に相関はなかった(図2および3)。
【0041】
2.4.1. アンケートの評価:新規診断特発性癲癇を有する12匹のイヌにおけるAWD 131-138投与
AWD 131-138によるイヌの治療は、極めて良好に耐容していた。各イヌは生気に満ちたままであり、鎮静は生じてなかった。事実、各イヌは、より活発で開放的でさえあることが認められた。行動におけるこの僅かな変化は、不安行動を示すことが分かっているイヌにおいてはとりわけ注目される。AWD 131-138により治療した12匹のイヌにおける飼い主によって観察された主な副作用は、試験開始時のみの4匹のイヌにおいて、7症例(58%)で生じた多食症であった。さらなる副作用は観察されなかった。
2.4.2. アンケートの評価:慢性癲癇を有する17匹のイヌにおけるAWD 131-138投与
これらのイヌにおいても、AWD 131-138による治療は、極めて良好に耐容していた。AWD 131-138で補完した通常の抗癲癇薬によって治療した17匹のイヌにおける飼い主によって観察された主な副作用は、試験開始時のみの7匹のイヌにおいて、10症例(59%)で生じた多食症であった。併用フェノバルビタール治療および高レベルのフェノバルビタール血清濃度(56.6〜58.9μg/mL)を有する2匹のイヌは、1日当り40mg/kg体重AWD 131-138からの投与量および投与2時間後で5563.26〜10858.45ng/mLの血漿濃度でのAWD 131-138投与2〜4時間後の後肢運動失調および無気力を示した。これらのイヌの1匹においては、咀嚼増強がAWD投与後の観察された。さらなる副作用は観察されなかった。
【0042】
2.4.3. フォローアップ:新規診断特発性癲癇を有する12匹のイヌにおけるAWD 131-138投与
一定のフォローアップ検査中、臨床および神経学的検査は、正常なままであった。1匹のイヌが、腸感染症のために指示獣医からエンロフリキサシンを受け、24時間後に発作し始めた。この薬物療法の解除後は、更なる発作は観察されなかった。血液学(赤血球、白血球および白血球百分率)および血液化学において異常は見出せなかった。
2.4.4. フォローアップ:慢性癲癇を有する17匹のイヌにおけるAWD 131-138投与
一定のフォローアップ検査中、臨床および神経学的検査は、15匹のイヌにおいて、正常なままであった。併用フェノバルビタール治療によるイヌのうちの2匹において、飼い主によって既に観察された運動失調を検証し得た。これら2匹のイヌは、AWD 131-138投与の2〜4時間後のみであったが、四肢全てにおいて僅かな固有感覚欠損(proprioceptive deficits)を有していた。この時点以降、これらのイヌは、臨床的に正常であった。1匹のイヌが、肺感染症のため指示獣医によりペニシリン-ストレプトマイシンを受け、この薬物治療後に無関心となった。この追加の薬物治療の解除は、早急の改善をもたらした。
異常は、血液学(赤血球、白血球および白血球百分率)において見出せなかった。血液化学は、試験開始時および追加治療中に既に異常を明らかにした。6匹のイヌにおけるAP、1匹のイヌにおけるALTおよび3匹のイヌにおけるGLDHの上昇が生じた。検査した他のパラメーターは、全て正常範囲内のままであった。
【0043】
3. 考察
新しい抗癲癇および抗不安薬であるAWD 131-138を、この物質の抗痙攣有効性を試験するための新規診断または慢性特発性癲癇を有するイヌにおける本臨床パイロット試験において評価した。ヒト癲癇と同様な動物は、薬物抵抗性発作を有するイヌおよび薬物感受性発作を有するイヌ中に選択し得る(LOESCHER、1997年)。
本試験においては、AWD 131-138により治療したイヌからのデータを通常の抗癲癇薬物治療によるイヌからの結果と比較した。本試験に登録するために、全てのイヌが以下の2つの主要基準を満たさなければならなかった:正常な臨床および神経学検査値、特別検査における異常の無いことおよび治療開始前の2回以上の発作。慢性癲癇を有するイヌにおいては、フェノバルビタール血清濃度が治療範囲内でなければならなかった。広範囲の癲癇イヌを得るためには、動物は、系統、年齢、発作タイプおよび発作頻度を理由としては選択しなかった。従って、種々の系統および雑種のイヌを含ませた。しかしながら、大型系統犬(> 15kg)が小型系統犬よりも特発性癲癇により有意に影響を受け易いという周知の事実を反映するドイツシェパードまたはレトリバーのような大型系統犬は、過剰代表である(PODELL等、1995年)。
本試験の全ての部分(AWD 131-138治療および通常薬物治療の回顧的評価)に登録した大多数のイヌは、生涯の第1〜第3年において初めて発作を起していた。幾人かの著者は、特発性癲癇がこの期間に主として始まることを記載している(OLIVER、1987年;OLIVERおよびLORENZ、1993年;CHRISMAN、1991年;DE LAHUNTA、1983年;MARTIINEK等、1970年;CROFT、1965年および1971年;CENTER、1986年;CUNNINGHAM、1971年;SCHWARTZ-PORSCHE、1984年;およびFORRESTER等、1989年)。本試験においては、1部の犬は、1〜3歳よりも若いまたは高い年齢で発作を始めていた。ほぼ全ての群において、1匹の高齢イヌが特発性癲癇の臨床診断並びに標準の臨床および特別検査により本試験に登録された。診断が老齢故に疑問視し得たとしても、これらのイヌは、本試験における基準を満たしており、臨床パイロット試験の広範な局面に対する情報を付加していた。
【0044】
自然発症イヌ特発性癲癇におけるAWD 131-138の理想的な投与量についての情報を得るために、全てのイヌは、1週間に1日2回 5mg/kg体重経口によって出発した。この投与量は、第2週の後、イヌ毎に2倍にした。応答しなかった動物においては、投与量を1日2回30mg/kg体重経口まで増大させた。投与量を急速増大させた1つの症例において副作用は観察されず、高投与量が治療出発時に使用され得る可能性があるようである。治療応答に応じて修正した種々の投与量も通常の薬物治療による群において使用された。従って、種々の治療スケジュールを比較し得る。
AWD 131-138の血漿濃度は、2つの目的、即ち、疾患イヌにおける当該新しい物質の経口投与の単回投与後の薬物動態を制御するためおよび本試験中の飼い主コンプライアンスを制御するために測定した。薬物動態は、おそらくは当該物質の種々の組織中での異なる分布によって生ずるであろう血漿濃度の高変動を明らかにした。血漿濃度における同じ変動性は、AWD 131-138による治療の3週間後および種々の時点においても生じていた。興味ある知見は、慢性癲癇を有しAWD 131-138で補完したフェノバルビタールによる治療のイヌにおいて最低値が見出されたことであった。更なる試験を実施して、フェノバルビタールとAWD 131-138間のある種の相互作用が起って低血漿濃度をもたらしているかどうかを評価すべきである。血漿濃度は、発作頻度に相関していなかった。しかしながら、AWD 131-138投与量の遅延増大によるイヌにおいては、発作減少は、ある種の遅れによってのみ生じていた。副作用は観察されなかったので、より挑戦的な治療スケジュールをこれからの実験に取り入れ、特発性癲癇を有するイヌにおける有効性を増強し得るであろう。
【0045】
新規診断特発性癲癇を有するイヌにおけるAWD 131-138を使用しての発作頻度の低減は、フェノバルビタールまたはプリミドンのいずれかによる治療イヌにおける低減に匹敵し得た。フェノバルビタールおよびプリミドン治療転帰の本発明の回顧的評価の結果は、以前に記載された研究と一致している(SCHWARTZ-PORSCHE等、1985年)。3つの治療群は、3つの薬物の抗癲癇有効性間に何ら有意差を示さなかった。無応答動物を除外して発作頻度の減少を算出することによって、3つの群全てにおいて、治療前および治療中の値における有意差が明らかになった。AWD 131-138治療群においては、発作減少の総割合は、他の群におけるよりも幾分低かった。しかしながら、当該前向きパイロット試験群における患畜数は、回顧群におけるよりも少なく、転帰に影響した可能性がある。治療スケジュール開始時の高めのAWD 131-138投与量は、当該新物質の抗痙攣有効性をさらに改善し得ていた。
慢性癲癇を有しAWD 131-138または臭化カリウムのいずれかによる追加治療によるイヌにおいては、他の物質との補完が発作頻度に対して効果を有していた。イヌは、両群において同じ程度に改善した。無応答動物を除外して発作頻度の減少を算出することによって、治療前および治療中の値における有意差が両群において明らかになった。無応答動物の割合は、予想通り、新規診断癲癇を有するイヌにおけるよりも高かった。
発作頻度の減少に加え、治療前および治療中の発作持続時間および重篤度を評価した。AWD 131-138治療中、痙攣大発作の発作は、1/3よりも多い症例において短縮された。この現象は、フェノバルビタール治療イヌにおいては稀にしか生じてなかった(イヌの約1/10)。対照的に、フェノバルビタール治療イヌにおいては、発作持続時間の中央値が治療中に増大した。しかしながら、発作後期間は、試験した全ての群において短縮された。発作および発作後期間の短縮に加え、単回発作事象の重篤度もAWD 131-138治療中に低下した。痙攣大発作は焦点性発作に変り、群発発生はなくなり或いは群発当りの単回発作数が減少した。殆どの飼い主が発作重篤度の軽減を主観的に記録していた。
【0046】
AWD 131-138治療と通常の薬物治療との最も明らかな相違は、副作用の評価に表われた。望ましくない副作用は、まれにしか報告されず、治療開始時の多食症および併用フェノバルビタール治療と高フェノバルビタール血清濃度による2匹のイヌにおける運動失調であった。多渇症、多食症、過剰鎮静および歩行異常のようなフェノバルビタール治療において報告された重篤な副作用(BUNCH等、1982年;SCHWARTZ-PORSCHE等、1985年)は、発生しなかった。上述のイヌの運動失調は、おそらくはフェノバルビタールとの併用が原因であろう。フェノバルビタール治療の副作用は、場合によっては、飼い主とって許容し得るものではなく、治療は中断する。AWD 131-138を使用することにより、飼い主コンプライアンスは、とりわけイヌが何らの沈静も決して示さないことから、極めて良好であった。ましてなおさら、とりわけ不安行動について知られているイヌにおいては、この点が改善された。このことは、抗不安活性の指標とみなし得る。プリミドンおよびフェノバルビタールの慢性応用は、肝酵素(ALT、GLDHおよびAP)の著しい上昇をもたらし得るが(SCHWARTZ-PORSCHE等、1985年)、この上昇は、AWD 131-138単独療法で治療したイヌにおいては観察されず、癲癇以外の疾病を潜在的に発生させ得る点での検査結果の解釈において大きな利点であると考えられる。
【0047】
要するに、本発明のパイロット試験は、新物質AWD 131-138が特発性癲癇を有するイヌにおいて強力な抗痙攣作用を有することを初めて証明している。AWD 131-138は、フェノバルビタールまたはプリミドンのような通常の抗癲癇薬と等価に強力である。慢性投与も良好に耐容し、伝統的な抗癲癇薬と比較して、少ない副作用しか観察されなかった。これらの明確な結果は、AWD 131-138のイヌ治療用の有効な抗癲癇薬としての開発を支持している。予期に反して、ベンゾジアゼピンレセプターに対する極めて低い親和性と部分的作用薬活性は、患畜における副作用の可能性の低減を伴う抗痙攣活性に形を変えた。より多数の治療動物および治療開始時でのより高投与量のAWD 131-138による更なる前向き試験は、おそらく、併発する投与量限定副作用なしでより一層良好な臨床上の有効性をもたらすであろう。さらにまた、臨床プロフィールからの観察は、当該薬物がイヌにおける抗不安特性も付加的に有することを示唆している。
【0048】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌの癲癇治療用の薬剤の製造における活性成分としての1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オンまたはその生理学上許容し得る塩の使用。
【請求項2】
前記薬剤が経口投与用である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤を1日に1〜5回投与する、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記活性成分の投与日量が1〜200mg/kgである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記活性成分を少なくとも1種の更なる活性成分と一緒に同時投与する、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記更なる活性成分をフェノバルビタール、プリミドンおよび臭化カリウムから選択する、請求項5記載の使用。
【請求項7】
前記癲癇が特発性または症候性癲癇である、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
新たに診断された癲癇の治療における、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
薬物抵抗性癲癇の治療における、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
イヌの行動異常治療用の薬剤の製造における活性成分としての1-(4-クロロフェニル)-4-(4-モルホリニル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-オンまたはその生理学上許容し得る塩の使用。
【請求項11】
不安症の治療における、請求項10記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−68685(P2011−68685A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293113(P2010−293113)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2004−542480(P2004−542480)の分割
【原出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】