説明

インクジェット装置

【課題】空吸引時に生じる泡を極力少なくしたインクジェットヘッドのキャッピング機構を提供する。
【解決手段】この発明は、記録ヘッドのノズル列を覆うことが可能なキャップ部101と、キャップ部101の内部に設けられたインク吸収体103と、キャップ部101が前記ノズル列をキャップした際にインク吸収体103と前記記録ヘッドとの間に形成される閉空間を減圧するための吸引口108と、該閉空間が減圧された際に前記閉空間にインク吸収体103を通して空気を導入するための大気開放口107と、を有する。インク吸収体103は、閉空間側の面に開口部104を有する。開口部104は、上記の閉空間から大気開放口107の開口へインク吸収体103を貫通するように加工した孔からなり、この孔は閉空間と大気開放口107とを直接連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式の記録ヘッドの吐出ノズルを塞ぐキャッピング機構を備えたインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行うものである。それ故、ノズルからの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズルに目詰まりが生じると、印刷不良を起こすことがある。このためインクジェット装置は通常、非印刷時に記録ヘッドのノズルを封止するキャッピング機構を備えている。
【0003】
キャッピング機構は、ノズルのインクの乾燥を防止する蓋として機能するだけでなく、ノズルに目詰まりが生じた際、キャップ部材によりノズル面を封止し、吸引ポンプからの負圧でノズルからインクを吸引し、目詰まりを解消する機能も備えている。
【0004】
このような記録ヘッドの目詰まり解消のために行うインクの強制的な排出処理は、通常クリーニング操作と呼ばれ、長時間休止後の印刷再開時や、ユーザーがクリーニングを実行した際に行われる。
【0005】
クリーニング時に記録ヘッドのノズルから吸引されたインクは、キャップ部材に収容されたインク吸収材に吸収される。その後、キャップに接続された大気開放口を開放した状態での吸引ポンプ動作(空吸引動作と呼ばれる、以下、空吸引と略す。)により、キャップ内へ空気が流入すると共に、キャップ外へインクは排出される。この時、吸引ポンプの始動時はキャップ内にインクが充満している状態で空気がキャップ内のインク吸収部材に流入するため、インク吸収部材上に泡が生じることがある。生じた泡がノズルに侵入すると、ノズルのメニスカスを破壊しドット抜けや混色が発生するなど、吐出状態の劣化という問題が懸念される。特に、ノズルとキャップ内のインク吸収材との距離が近いと、前述した問題が発生し易いことが分かっている。また、インク吸収材がスポンジ等の多孔質材料により形成されており、インク吸収材がインクの吸収よって序々に膨潤した場合も、前述した問題が発生し易い。
【0006】
本問題の解決方法の一つが、特許文献1に開示されている。特許文献1では、インク吸収体のノズルに対向した部分に溝や窪みを設けることで、発生した泡がノズル部に接触し難くなる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特登録4240230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されるようにインク吸収体に溝や窪みを設けると、インク吸収体上に発生する泡とノズル部との距離が遠くなることで泡がノズル部に接触し難くなる。しかし泡の発生状況はインク組成等の影響が大きく、また空気が多孔質体であるインク吸収体内部を通過するため、泡立ち易いインクを使用した際に、完全に接触を防止することができない可能性がある。
【0009】
本発明はこのような技術的課題に着目してなされたものであり、その目的は、空吸引時に生じる泡を極力少なくしたインクジェットヘッドのキャッピング機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドのノズル列を覆うことが可能なキャップ部と、キャップ部の内部に設けられインクを吸収する吸収体とを有するキャッピング機構を備えたインクジェット装置において、
キャッピング機構は、キャップ部がノズル列をキャップした際に吸収体と記録ヘッドとの間に形成される閉空間を減圧するための吸引口と、該閉空間が減圧された際にキャップの外部から吸収体に空気を導入するための大気開放口と、をさらに有し、
吸収体には、大気開放口と閉空間とを連通させるための孔または溝が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空吸引時にキャップ内に空気が導入されるとき、その空気は、インク吸収体自体でなく、インク吸収体に設けられた比較的流路抵抗の小さい孔または溝を通るので、泡の発生を抑制することができる。このため、ノズル面においてインクの泡立ちが大幅に抑制され、ノズルの吐出状態の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1におけるインクジェットプリンタの概念構成図。
【図2】本発明の実施例1におけるキャップ装置の概念図。
【図3】図2に示した構成のキャッピング時の状態を示す図。
【図4】本発明の実施例2におけるキャップ装置の概念図。
【図5】本発明の実施例3におけるキャップ装置の概念図。
【図6】本発明の実施例4におけるキャップ装置の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。ここでは、インクジェットプリンタを例にして説明するが、本発明は、プリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、現像プリント装置、各種製造装置、噴霧器などインクジェット技術を採用したインクジェット装置にも広く適用可能である。
「実施例1」
(1)インクジェット装置
図1はインクジェット装置の一例としてのインクジェットプリンタの模式的斜視図である。図1において、被記録媒体である記録シートSは、搬送ローラ1とこれに従動するピンチローラ2との間に挟まれ、搬送ローラ1の回転により、プラテン3上に案内、支持されながら図中矢印A方向に搬送される。このとき、プラテン3は、インクジェットヘッド4(インクジェット式の記録ヘッド)のインク吐出面とこれに対向する記録シートSの表面との距離を所定の距離に維持するように記録シートSの裏面を支持する。
【0014】
複数のピンチローラ2は不図示のピンチローラホルダに回転自由に保持されている。インクジェットヘッド4は記録シートSに向かってインクを吐出する姿勢で、不図示のモータ等の駆動手段により2本のガイドレール5,6に沿って往復移動されるキャリッジ7に着脱可能に搭載されている。このキャリッジ移動方向は記録シート搬送方向(矢印A方向)と交差する方向であり、主走査方向と呼ばれる。これに対し記録シート搬送方向は副走査方向と呼ばれている。
【0015】
インクジェットヘッド4は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出のために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段(例えば発熱素子)を備えている。その熱エネルギによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化を達成している。なお、インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式に限らず、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用したものであってもよい。
【0016】
インクジェットヘッド4にはそれぞれ異なる色のインクを吐出するための複数のノズル列が設けられている。インクジェットヘッド4から吐出されるインクの色に対応して、複数の独立したインクタンク8が、タンク装着ユニット9に着脱交換可能に装着される。タンク装着ユニット9とインクジェットヘッド4とは、それぞれインクの色に対応した複数の液体供給チューブ10によって接続されている。そして、各インクタンク8をタンク装着ユニット9に装着することで、各インクタンク8内に収納された色のインクを、各インク色に対応するインクジェットヘッド4の各ノズル列に独立して供給することが可能となる。
【0017】
さらに、インクジェットヘッド4の往復移動範囲内で、かつ、記録シートSの搬送時の通過範囲外の領域である非記録領域には、回復ユニット11が、インクジェットヘッド4のインク吐出面と対面するように配置されている。回復ユニット11は、インクジェットヘッド4のインク吐出面をキャッピングするためのキャップ部100を有する。さらに、回復ユニット11は、不図示のインク吐出口面をキャッピングした状態でインクジェットヘッド4から強制的にインクを吸引するための吸引機構を含むキャッピング機構、インク吐出面の汚れを払拭するためのクリーニングブレード等を有する。
【0018】
プラテン3上に搬送された記録シートSは画像記録が実施された後、排出ローラ12とこれに従動する回転体である拍車13との間に案内され、排出ローラ12の回転によりプラテン3上から排出される。
【0019】
以上が本発明におけるインクジェットプリンタの構成および機能である。次に本発明の特徴であるキャップ部100について詳細に説明する。
【0020】
(2)キャップ部材構成
図2は本実施例におけるキャップ部の概略図である。図2(a)にキャップ部の斜視図を、(b)に図2(a)中の破線A−A部分での断面図を示す。これらの図に示すようにキャップ部は、凹状のキャップ101と、該キャップを固定するキャップベース102と、該キャップの凹部内に配置されたインク吸収体103と、を備える。
【0021】
キャップ101は、インク吸収体103を固定する固定リブ105と、インクジェットヘッド4のノズル部401が形成された面(以下、ノズル面と呼ぶ。)に対して当接されるリップ面106と、を持つ。
【0022】
キャップベース102は、該ベースの内側に配置されたキャップ101内へ空気を導入するための大気開放口107と、該ベースの内側に配置されたキャップ101内を減圧してキャップ101内からインクを吸引するためのインク吸引口108と、を有する。
【0023】
さらにキャップ101は、固定リブ105とリップ面106を含むゴム等の凹形状の弾性体で構成されている。さらにキャップ101は、本実施例では樹脂部材で構成されるキャップベース102に対して一体成型され、キャップベース102に固定されている。キャップベース102はさらにキャップホルダ109に固定されており、不図示の機構により図2(b)中の矢印方向に昇降可能することができる。
【0024】
インク吸収体103は、インクを吸収しても膨潤しない多孔質体の焼結部材によって構成され、キャップ101の凹部内に収納され且つ固定リブ105によりキャップ101の凹部底面に対し密着するように固定されている。キャップ101の凹部底面には、大気開放口107とインク吸引口108の各々の開口が離間して形成されており、大気開放口107は不図示のチューブ等の部材により大気連通弁へ、インク吸引口108は不図示のポンプ機構に接続されている。
【0025】
キャップ101の開口縁のリップ面106をノズル面に当接させることでインク吸収体103とインクジェットヘッド4との間に閉空間が形成される。インク吸収体103は、その閉空間側の面に開口部104を有する。本実施例では開口部104は、上記の閉空間から大気開放口107の開口へインク吸収体103を貫通するように加工した孔からなる。したがって、この孔は閉空間と大気開放口107とを直接連通している。
【0026】
(3)吸引動作時の空気およびインクの動き
図3はノズル面のキャッピング時の状態を示しており、図2(b)と同方向の断面図である。この図に示すように、キャップ101がヘッド4に密接すると、リップ面106がノズル部401の周囲面に密着し、ノズル部401はキャップにより覆われて密閉される。この状態でポンプ機構を作動させると、キャップ101の内部に負圧が作用し、ノズル部401内から外へインクが吸引される。吸引されたインクはキャップ101内部のインク吸収体103を介してインク吸引口108よりキャップ101の外へ排出される。排出されたインクは不図示の廃インクタンクへと導かれる。
【0027】
吸引動作が終わり、ポンプの駆動が停止すると、キャップ101内部にはインクが残存する。このときのキャップ101内はまだ若干の負圧の状態であるため、キャップ101をヘッド4より離間させると、ノズル部401のメニスカスを破壊する可能性がある。このためキャップ101をヘッド4のノズル面から離間させる前に、まだ残存しているインクをキャップ101外部へ排出するための空吸引が実施される。この空吸引の実施のため、大気開放口107に連通する大気連通弁が開放され、その後、再度ポンプが駆動される。
【0028】
このとき、キャップ101内に残存しているインクは、インク吸収体103に大部分が吸収された状態になっており、上記のポンプ駆動によりインク吸収体103から吸い出され、キャップ101外部へと排出されていく。キャップ101内には、排出されたインクに応じた分の空気が大気開放口107より流入するが、流入した空気は流路抵抗の少ない孔部分(すなわち開口部104における孔)を通過してキャップ101内部へと導かれる。このため、多孔質体であるインク吸収体103の多孔質材内部を空気が通過する場合に比べ、泡が多量に発生し難い。結果、泡がノズル部401に密着することで生じる吐出状態の劣化の問題を防ぐことができる。
「実施例2」
図4(a)に実施例2によるキャップ部の斜視図を、(b)にノズル面のキャッピング時の状態であって図4(a)でのB−B断面図を示す。図中の符号に関して、図1乃至図3と同じ構成要素には同一符号とした。
【0029】
本実施例と実施例1の差異は、大気開放口107とノズル部401の位置関係である。大気開放口107とインク吸引口108はノズル部401のノズル列(複数のインク吐出口からなる列)の形成方向に沿った方向に離間して配設されている。上述した実施例1では大気開放口107がノズル部401と対向する位置に配置され、この位置に合せてインク吸収体の開口部104もノズル部401と対向する位置にある。これに対して本実施例では、ノズル部401と対向する位置の外側(ノズル部の直下でない場所)に、大気開放口107と、インク吸収体の開口部104とが設けられている。
【0030】
本実施例では開口部104は、インク吸収体103の側面に対して加工された溝と、キャップ101の内壁とからなる。この溝の延在方向の両端は、一方が大気開放口107に直接接続され、他方が、ノズル面のキャッピング時にインク吸収体103とインクジェットヘッド4の間に形成される閉空間に接続されている。したがって、この溝は、上記の閉空間と大気開放口107とを直接連通するように加工され、かつノズル部401と対向する位置の外側にある。
【0031】
このような構成によってもまた、実施例1と同様に泡の発生を抑制することができる。本実施例によれば、キャップ101の中へ流入した空気は、図4(b)中の矢印のように、インク吸収体103とヘッド4のノズル面との間の隙間をノズル列に対し平行に流れるため、インクや泡がノズル内部へ押し込まれ難い。
【0032】
さらに、本実施例ではノズル部401の直下全域にインク吸収体103が対向しているため、以下に示す別の効果も得ることができる。
【0033】
インクジェット記録装置では前述したクリーニング動作に加え、別の吐出機能回復動作として、印刷とは関係の無いタイミングでインクを吐出させる予備吐出動作(以下、予備吐出と呼ぶ。)も実施されている。
【0034】
予備吐出はクリーニング後に、ノズル部のメニスカスを回復させるために実施されたり、印刷時にインク滴の吐出が少ないノズルの目詰まりを防止するため、記録用紙上でない場所で一定周期ごとに実行されている。この予備吐出は、通常印刷領域外に設置された予備吐出口(予備吐出動作の受け口)で実施され、吐出されたインクは予備吐出口の下に設けられたスペースや、前述したクリーニング時に生じる廃インクを貯留するスペースに導かれて貯留される。
【0035】
しかし、前述した予備吐出口を設けることは本体の大型化やコストアップに繋がるため、予備吐出口の代わりに、キャップをノズル部に密着しない程度まで接近させた状態で保持し、キャップ内へ予備吐出を行うことがある。吐出されたインクは前述したキャップ内のインク吸収体に吸収され、適宜吸引ポンプを駆動することでキャップ外へ排出される。このとき、キャップ内のインク吸収体とノズルとの距離が近いほど、予備吐出時に吐出されたインクは確実にキャップ内吸収体に着弾するため、吐出されたインクはミスト化し難い。すなわち、特許文献1のようにインク吸収体に溝や窪みを設けると、キャップ内で予備吐出を実施すると空中にミストとして飛散してしまい、機内を汚す原因となってしまう。
【0036】
これに対して本実施例では、泡の発生そのものが抑制されているため、ノズル部401直下全域にインク吸収体103を対向させ、さらにノズル部401とインク吸収体103との距離を小さくすることが可能である。このため予備吐出動作をキャップ内に実施してもインクがミスト化し難い。このため、予備吐出口及び吐出されたインクの貯留スペースを別に設けることなく、予備吐出動作をキャップ内に実施することができ、本体の小型化やコストダウンにも効果がある。
「実施例3」
図5(a)に実施例3によるキャップ部の斜視図を、(b)にノズル面のキャッピング時の状態であって図5(a)でのC-C断面図を示す。図中の符号に関して、図1乃至図4と同じ構成要素には同一符号とした。
【0037】
本実施例と実施例2の差異は、インク吸収体104の、キャップ101の凹部底面側のみに、大気流入空間111を設けた点である。つまり、実施例2のようにキャップ101の凹部底面から反対側へ貫通したインク吸収体104の貫通孔(図3の開口部104における孔)を設けるのではない。そして、大気開放口107および大気流入空間111はノズル部401の直下でない場所(ノズル部に対向する位置の外側)に配置されている。大気流入空間111の周壁の一部はキャップ101の内壁である。大気流入空間111は、インク吸収体104の角部に溝を切り欠くことでキャップ101とインク吸収体104の間に形成されている。
【0038】
本実施例では大気開放口107から大気流入空間111へ空気が流入した直後は、大気開放口107近傍にインク吸収体103が存在しないため泡は発生し難い。その後吸引動作が持続すると大気開放口107からの空気は、大気開放口107の直上にあるインク吸収体103の多孔質材内を通過するので、これによって泡が発生することがある。しかし、大気開放口107および大気流入空間111はノズル部401の直下にないため、図5(b)に示すように発生した泡はノズル部401に触れ難い。このような構成でも実施例2と同様の効果を得ることができる。
「実施例4」
図6(a)に実施例4によるキャップ部の斜視図を、(b)にノズル面のキャッピング時の状態であって図6(a)でのD−D断面図を示す。図中の符号に関して、図1乃至図5と同じ構成要素には同一符号とした。
【0039】
本実施例と実施例3の差異は、大気開放口107の位置と、実施例1の開口部104をキャップ101の凹部底面から凹部の垂直面に沿って形成したことと、インク吸収体103に新たにインク流入溝110を設けたことである。
【0040】
本実施例の大気開放口107はノズル部401の直下に位置するが、インク吸収体103に設けられた開口部104の孔形状により、ノズル部401の直下に位置する領域の外側で空気がノズル面とインク吸収体103との隙間に導かれる点である。このような構成でも実施例2,3と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、インク流入溝110は、インク吸収体103の、開口部104が位置する側とは反対側の端部に設けられている。このことにより、大気がキャップ101内に流入した際、押されたインクは、吐出口径が小さくメニスカスのあるノズルでなく、該ノズルよりも流路抵抗の低いインク流入溝110へ流れ込み易い。このため、ノズル内へのインクや泡の流入をより効果的に防止することができる。このようなインク流入溝110は、上述した実施例1乃至3のインク吸収体に設けても問題はない。
【符号の説明】
【0042】
100 キャップ部
101 キャップ
103 インク吸収体
104 インク吸収体開口部
107 大気開放口
108 インク吸引口
110 インク流入溝
111 インク流入空間
401 ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット式の記録ヘッドのノズル列を覆うことが可能なキャップ部と、前記キャップ部の内部に設けられインクを吸収する吸収体とを有するキャッピング機構を備えたインクジェット装置において、
前記キャッピング機構は、前記キャップ部が前記ノズル列をキャップした際に前記吸収体と前記記録ヘッドとの間に形成される閉空間を減圧するための吸引口と、該閉空間が減圧された際に前記キャップの外部から前記吸収体に空気を導入するための大気開放口と、をさらに有し、
前記吸収体には、前記大気開放口と前記閉空間とを連通させるための孔または溝が設けられていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記孔または溝は、前記大気開放口の位置から、前記吸収体の前記ノズル列と対向する部分の外側へ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット装置。
【請求項3】
インクジェット式の記録ヘッドのノズル列を覆うことが可能なキャップ部と、前記キャップ部の内部に設けられインクを吸収する吸収体とを有するキャッピング機構を備えたインクジェット装置において、
前記キャッピング機構は、前記キャップ部が前記ノズル列をキャップした際に前記吸収体と前記記録ヘッドとの間に形成される閉空間を減圧するための吸引口と、該閉空間が減圧された際に前記キャップの外部から前記吸収体に空気を導入するための大気開放口と、をさらに有し、
前記大気開放口が、前記ノズル列と対向する位置の外側に配置されており、
前記吸収体には、前記大気開放口に接続された孔または溝が形成され、かつ、該孔または溝が、前記閉空間に通じることなく該大気開放口の近傍に空間を形成していることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項4】
前記大気開放口と前記吸引口は、前記ノズル列の形成方向に沿った方向に離間して、前記キャップ部に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記キャップ部は、前記ノズル列が形成されたノズル面に当接される開口縁を持つ凹形状の弾性体と、該弾性体を固定するキャップベースとを含み、該弾性体の凹部内に、多孔質体からなる前記吸収体が該凹部の底面に対し密着するように配置されており、前記吸引口および前記大気開放口は前記凹部の底面に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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