説明

インバータ装置用コネクタ

【課題】簡易な構成でインバータ装置の小型化を可能にすることができるインバータ装置用コネクタを提供する。
【解決手段】 本発明のインバータ装置用コネクタ1は、パワーケーブルCに設けられたオス端子部2bが挿入される、インバータ装置Iの出力端子に繋がるメス端子部11と、メス端子部11に流れる電流を検出する電流検出部13と、オス端子部2bが挿入可能にメス端子部11と電流検出部13とを内部に収容し、インバータ装置Iの外側面に固定される筐体10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置と電気機器とを互いに接続するケーブルを、当該インバータ装置側に接続するためのインバータ装置用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機等の電気機器に供給する電力を制御するためにインバータ装置が用いられている。このインバータ装置は、スイッチング素子等が実装されたインバータ回路基板や、出力される電流を検出するための電流センサを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−15586
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、インバータ装置は、ハイブリッドカーや、家電製品にも搭載されることが多く、近年の環境問題や省エネルギー化の観点から、さらなる小型化への要請が高まっている。
ところで、インバータ装置が内蔵している電流センサは、当該インバータ装置から分離して設置が可能である。そこで、この電流センサを外部に設ければ、当該インバータ装置の小型化が可能になると考えられる。
【0005】
しかし、インバータ装置から電流センサを単に分離すると、インバータ装置と電気機器との間に電流センサを設置するためのスペースの確保や配線が必要になり構造を複雑にしてしまう場合があり、好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成でインバータ装置の小型化を可能にすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、電気機器とインバータ装置とを互いに接続するケーブルを当該インバータ装置に接続するためのインバータ装置用コネクタであって、前記ケーブルに設けられた差込側端子部が挿入される、前記インバータ装置の出力端に繋がる被差込側端子部と、前記被差込側端子部に流れる電流を検出する電流検出部と、前記差込側端子部が挿入可能に前記被差込側端子部と前記電流検出部とを内部に収容し、前記インバータ装置の外側面に固定される筐体と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成のインバータ装置用コネクタによれば、被差込側端子部と、被差込側端子部に流れるインバータ装置の出力電流を検出する電流検出部とを筐体の内部に収容しつつインバータ装置の外側面に固定されているので、インバータ装置は、出力電流を検出するための電流センサを備える必要がない。このため、インバータ装置の小型化を可能にすることができる。
また、電流検出部は、被差込側端子部に流れる電流を検出するので、上述のように、インバータ装置から電流センサを単に分離した場合と比較して、電流センサの設置スペースの確保や電流センサのための配線を設ける必要がなく簡易な構成にできる。
以上のように、本発明のインバータ装置用コネクタによれば、簡易な構成でインバータ装置の小型化を実現することができる。
【0009】
(2)(3)前記電流検出部は、前記被差込側端子部から延びるバスバーが挿通されるとともにエアギャップを有する枠状のコアと、前記コアのエアギャップの磁束密度を検出するセンサとを備えているものであることが好ましく、また、この場合、前記被差込側端子部を前記筐体に固定するためのハウジングをさらに備え、前記ハウジングには、前記バスバーが挿通された状態で前記コアを固定するための固定部が形成されていることが好ましい。
この場合、被差込側端子部を固定するためのハウジングによってコアを固定するので、コアを固定するための専用の部材が不要になる。この結果、部品点数を減らすことができ、簡易な構成とすることができる。
【0010】
(4)また、上記インバータ装置用コネクタにおいて、前記ハウジングは、前記バスバーがその上面に沿って延びるように当該上面側に固定されている基台部と、前記基台部の上面側に固定されるとともに、前記バスバーの長手方向に対して交差する方向に延びることで前記基台部の上面から突設された前記被差込側端子部を保持する保持部とを備えているものであってもよい。
この場合、基台部と、保持部とが、それぞれ長尺な部材であるバスバーと、バスバーの長手方向に対して交差する方向に延びる被差込側端子部とを保持するので、ハウジングは被差込側端子部を筐体内で確実に固定することができる。
【0011】
(5)また、前記固定部は、前記基台部の側面に開口して設けられ前記コアを収容する環状空間を有し、前記保持部に設けられるとともに当該保持部が前記基台部に固定されたときに前記環状空間に収容された前記コアを前記開口側から位置決め固定する位置決め部を備えていてもよい。
この場合、基台部に保持部を固定する前にコアを環状空間に容易に収容でき、その後、保持部を固定すればコアを環状空間内で固定することができるので、コアの取り付け及び位置決め固定が容易となる。
【0012】
(6)(7)また、前記基台部の下面側には、前記センサが実装された基板が配置されていることが好ましく、この場合、バスバーとの間に基台部が介在させることができ、基板とバスバーとを絶縁することができる。
さらに、前記基板と前記基台部との間に電界ノイズの影響を抑制するシールド板が設けられていれば、基板とバスバーとをより効果的に絶縁することができる。
【0013】
(8)また、前記コアが圧粉磁心により形成されている場合には、低コスト化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成でインバータ装置の小型化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るインバータ装置用コネクタの断面図である。
【図2】インバータ装置用コネクタの分解斜視図である。
【図3】ハウジングの分解斜視図である。
【図4】電流検出装置のコア及びホール素子の位置関係を示す断面図である。
【図5】メス端子部をハウジングに組み込み、筐体の台座部材に固定するまでの態様を示す図であり、(a)は、基台部にメス端子部、及びコアを取り付けた状態を示す斜視図、(b)は、(a)に示すものに保持部を固定してハウジングを構成した状態を示す斜視図、(c)は、(b)に示すハウジングを台座部材に固定した状態を示す斜視図である。
【図6】回路基板の配置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ装置用コネクタの断面図であり、図2は、インバータ装置用コネクタの分解斜視図である。インバータ装置用コネクタ1は、インバータ装置Iの外側面に固定されており、当該インバータ装置Iと電気機器としての電動機(図示せず)とを互いに接続するパワーケーブルCをインバータ装置I側に接続している。
【0017】
パワーケーブルCは、前記電動機に3相交流を供給するための電線であり、3本のケーブルc1によって構成されている。パワーケーブルCの端部には、インバータ装置用コネクタ1に係合している電動機側コネクタ2が設けられている。
電動機側コネクタ2には、インバータ装置用コネクタ1に設けられた円筒孔状の差込部3に差し込み可能な円筒部2aが3つ突設されている。これら3つの円筒部2aは、それぞれ、パワーケーブルCを構成している3本のケーブルc1に対応して設けられている。
【0018】
各円筒部2aの内周側には、当該円筒部2aの軸中心に沿って配置されている棒状のオス端子部2bが円筒部2aの開口に向けて突設されている。差込側端子部としてのオス端子部2bは、導電性を有する金属により形成された部材であり、対応するケーブルc1が電気的に接続されている。
【0019】
インバータ装置用コネクタ1は、内部を保護するための筐体10を備えている。筐体10は、インバータ装置Iの外側面に固定された台座部材10aと、台座部材10aの上面側を覆うカバー部材10bとを備えている。筐体10を構成している台座部材10a及びカバー部材10bは、絶縁性の樹脂で形成された部材であり、インバータ装置Iが出力する電圧が印加される各部を外部に対して絶縁保護している。
【0020】
カバー部材10bには、上述の差込部3が3箇所設けられている。差込部3は、カバー部材10bの上面から突出しており、電動機側コネクタ2の3つの円筒部2aに対応して3箇所設けられている。各差込部3の内周側には、当該差込部3の軸中心に沿って配置されている円筒状のメス端子部11が差込部3の開口に向けて突設されている。
被差込側端子部としてのメス端子部11は、導電性を有する金属により形成された部材であり、インバータ装置Iの出力端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0021】
筐体10の内部には、メス端子部11の他、このメス端子部11を筐体10の内部で固定するためのハウジング12が収容されている。
ハウジング12は、各差込部3の内周側に設けられたメス端子部11が、それぞれ差込部3の軸中心に沿うように位置決め固定している。
【0022】
図1に示すように、電動機側コネクタ2は、各差込部3に電動機側コネクタ2の円筒部2aが差し込まれることで、インバータ装置用コネクタ1に係合する。このとき、差込部3と円筒部2aとは互いに同心に位置決めされる。このため、これらの軸中心に配置されているオス端子部2b及びメス端子部11それぞれの軸方向も互いに一致するように位置決めされる。よって、差込部3に円筒部2aが差し込まれると、オス端子部2bは、軸方向が一致しているメス端子部11に挿入され、電動機から延びるパワーケーブルCと、インバータ装置Iとを電気的に接続する。
【0023】
電動機側コネクタ2は、当該電動機側コネクタ2を円筒部2aの軸方向と平行に貫通する螺子2cによって、インバータ装置用コネクタ1に強固に固定される。螺子2cの外周面には、カバー部材10bに設けられた螺子用孔10b1の内周面との間を防水するパッキン2c1が設けられている。円筒部2aの外周面にも、円筒部2aと差込部3との間を防水するパッキン2a1が設けられている。
【0024】
筐体10の内部には、メス端子部11、及びハウジング12に加え、電流検出装置13が収容されている。電流検出装置13は、枠状のコア14と、コア14のエアギャップの磁束密度を検出することにより電流を検出するセンサとしてのホール素子が実装された回路基板15とを備えている。この電流検出装置13については後に詳述する。
【0025】
図3は、ハウジング12の分解斜視図である。ハウジング12は、台座部材10aに固定されている基台部20と、基台部20の上面側に組み合わせて固定されることで3つのメス端子部11を保持する保持部21とを備えている。
【0026】
図3に示すように、メス端子部11の下端部には、導体16が固定されている。この導体16は、オス端子部2bに向けて供給される電力をインバータ装置I側からメス端子部11に伝達するための部材であり、導電性を有する金属により形成されている。
導体16は、基台部20の上面に沿って延びる板状のバスバー16aと、バスバー16aとメス端子部11とを繋ぐ柔軟バスバー16bとを備えている。柔軟バスバー16bとメス端子部11との接続部、及び、柔軟バスバー16bとバスバー16aとの接続部は、共に、ろう付や溶接等によって固定されており、導体16及びメス端子部11は、一体に固定されている。
【0027】
柔軟バスバー16bは、フレキシブルに変形可能な素材で形成されており、オス端子部2b及びメス端子部11の位置関係に多少の誤差が生じたとしても、メス端子部11側が、柔軟バスバー16bによる変形によって、前記誤差を吸収する。
メス端子部11は、基台部20上面に固定されている導体16のバスバー16aの長手方向に対して交差する方向に延びており、基台部20の上面側から突設されている。
各導体16は、基台部20の上面に形成された3つの固定部22それぞれによって基台部20の上面側に固定されている。
【0028】
基台部20は、絶縁性を有する樹脂によって形成された部材であり、上述の固定部22が基台部20の上面側に一体に形成されている。また、基台部20には、固定部22の他、当該基台部20を台座部材10aに固定するためのボルトを挿通するための孔部20aや、保持部21に係合して当該保持部21を固定する係合部20bが形成されている。
【0029】
各固定部22は、導体16及びコア14をハウジング12に固定するためのものであり、各バスバー16aの長手方向が平行となるようにかつメス端子部11が上方から見て三角形状となるように、基台部20の上面に配置されている。
このように、バスバー16aに交差する方向に突設させて設けたメス端子部11を、上記にように三角形状となるように配置することで、各メス端子部11をより接近して設置することができ、例えば、各バスバーaを平行に3本並べたコネクタと比較して、コネクタ全体を小型化することができる。
また、インバータ装置用コネクタ1を小型化できることにより、電動機側コネクタ2も小型化でき、螺子2cのみによって両コネクタ1,2を固定しパワーケーブルCを接続することができる。よって、例えば、3本のバスバーaをそれぞれ対応するコネクタとの間でボルト締めによって接続する場合と比較して、接続が容易となる。
【0030】
各固定部22は、基台部20の側面に矩形状に開口している角筒状の外枠部23と、この外枠部23の内側に配置されている内枠部24とを備えている。内枠部24は、バスバー16aが挿通保持される保持孔24aが形成されることで外枠部23と同様に角筒状に形成されている。内枠部24は、外枠部23の内底面から突設された柱部23b、及び外枠部23の開口側から当該外枠部23の背面側を塞ぐ背面壁23aに繋がるように形成されることで、外枠部23の内側に配置されている。
保持孔24aは、基台部20の上面とほぼ平行に形成され、背面壁23a側に亘って貫通している。
バスバー16aは、外枠部23の背面壁23a側から保持孔24aに挿通され、その先端が外枠部23の開口側から突出するように当該保持孔24aに保持される。
【0031】
また、内枠部24の下面と、外枠部23の内底面とを繋ぐ柱部23bは、バスバー16aの長手方向と同一の方向に延びている。よって、内枠部24の外側面と、外枠部23の内側面との間には、柱部23bの部分を除いて、所定の間隔が設けられることで、基台部20の側面に開口する環状空間Aが形成されている。
【0032】
環状空間Aには、電流検出装置13のコア14が収容されている。コア14は、図3に示すようにエアギャップ付きの枠状とされており、エアギャップ14bに柱部23bが位置するように収容されている。
つまり、コア14の内周側には、内枠部24の保持孔24aに挿通されたバスバー16aが位置している。このようにして、固定部22は、バスバー16aが挿通された状態でコア14を保持固定する。
【0033】
基台部20の上面側に固定される保持部21は、絶縁性を有する樹脂によって形成された部材であり、基台部20の上面側に固定される本体部21aと、本体部21aの上面から突設しているメス端子部11を保持するための3つの筒部21bとを備えている。
各筒部21bは、その内側にメス端子部11を収容し、当該メス端子部11を保持する。
筒部21bの先端縁には、メス端子部11の先端面に当接するように、内周側に突出した段差部21b1が形成されている(図1参照)。また、メス端子部11における柔軟バスバー16bとの接続部側の下側端面には、後述する固定金具25が当接している(図1参照)。
【0034】
メス端子部11は、これら段差部21b及び固定金具25によって、軸方向(上下方向)への移動が規制されている。
また、メス端子部11は、径方向については、上述した柔軟バスバー16bの変形によるオス端子部2bとメス端子部11との位置関係に生じる誤差吸収を妨げない程度のクリアランスを介して、筒部21bの内周面で保持されている。
筒部21bは、上述のようにメス端子部11の移動を規制しつつ、カバー部材10bの差込部3の軸中心にほぼ沿う位置となるように当該メス端子部11を位置決め保持している。
【0035】
保持部21は、本体部21aを基台部20の上面側に組み合わせられ、基台部20の上面側に固定された各バスバー16aを挟むように保持しつつ、基台部20側から延びる係合部20b等によって強固に固定される。
また、保持部21の下端縁には、基台部20に形成された各外枠部23の開口に対応して、下方向に突設された位置決め部21cが形成されている。位置決め部21cは、保持部21と基台部20とが組み合わされたときに、環状空間A内に収容されたコア14を外枠部23の開口側から位置決め固定するように形成されている。つまり、位置決め部21cは、環状空間Aに収容されたコア14を位置決め固定しており、固定部22の一部として機能する。
【0036】
また、本体部21aには、メス端子部11及びこれに繋がる導体16を固定するための固定金具25を、その側面側から差し込むための開口部21dが形成されている。
【0037】
基台部20の下面側には、電流検出装置13の回路基板15が固定されている。電流検出装置13は上述のように、コア14と、回路基板15とにより構成されている。
コア14は、上述のように、環状空間Aに収容固定されている枠状の部材であり、圧粉磁心によって構成されている。
【0038】
回路基板15には、コア14のエアギャップ14bに生じる磁束密度を検出するためのホール素子17や、このホール素子17を制御するためのICチップ(図示せず)等が実装されている。また、外部に信号を出力したり、電力供給を受けたりするためのハーネス15aも接続されている。
本実施形態では、回路基板15を基台部20の下面側に配置する構成としたので、バスバー16aと回路基板15との間に基台部20を介在させることができる。このため、回路基板15とバスバー16aとを絶縁でき、回路基板15に対するバスバー16aからの電界ノイズの影響を抑制することができる。
【0039】
図4は、電流検出装置13のコア14及びホール素子17の位置関係を示す断面図である。
コア14の内周側には、上述のように、電動機に供給される電流が流れるバスバー1616aが挿通されている。またコア14のエアギャップ14bには、外枠部23の内底面に形成された柱部23bが位置している。
【0040】
ここで、ホール素子17は、回路基板15から上方向に突設されている。柱部23bには、回路基板15から突設されたホール素子17の位置に対応してコア14のエアギャップ14bの両端面が互いに露出して対向するように切り欠かれた切欠部23cが形成されている。また、この切欠部23cの部分には、ホール素子17を基台部20の下面側からコア14のエアギャップ14bに導く孔部23cが形成されている。
孔部23cに差し込まれているホール素子17は、コア14のエアギャップ14bに配置される。
【0041】
バスバー16aに電流が流れると、バスバー16aの外周側に配置されているコア14のエアギャップ14bには、流れる電流に応じた磁束が生じる。電流検出装置13は、コア14のエアギャップ14bに生じる磁束密度をホール素子17によって検知し、その検知結果を取得することで、バスバー16aを流れる電流量、すなわち、メス端子部11に流れるインバータ装置Iの出力電流を検知することができる。
【0042】
なお、基台部20の下面側に回路基板15を配置するためのスペースを確保するために、台座部材10aには、その上面から下方向に凹む凹部10a1が形成されている。
【0043】
図5は、メス端子部11をハウジング12に組み込み、筐体10の台座部材10aに固定するまでの態様を示す図であり、(a)は、基台部20にメス端子部11、及びコア14を取り付けた状態を示す斜視図、(b)は、(a)に示すものに保持部21を固定してハウジング12を構成した状態を示す斜視図、(c)は、(b)に示すハウジング12を台座部材10aに固定した状態を示す斜視図である。なお、図5(a)〜(c)では、メス端子部11を1つ省略して示している。
【0044】
メス端子部11をハウジング12に組み込むには、まず、図5(a)に示すように、基台部20の各保持孔24aにバスバー16aを挿通することで、バスバー16aを基台部20の上面側に固定する。バスバー16aは、保持孔24aに挿通されることで、図に示すように、その先端部が外枠部23の開口側から突出する。メス端子部11は、柔軟バスバー16bを介してバスバー16aから当該バスバー16aの長手方向に対して交差する方向に延びており、基台部20の上面側から突設される。
【0045】
また、この段階でコア14を各外枠部23内側の環状空間Aに収容する。この段階では、環状空間A(外枠部23)の開口部には何ら妨げになるものがないので、コア14は、環状空間Aの開口から挿入し環状空間A内に収容可能である。コア14は、環状空間Aに収容されたときに、その外側端部が、環状空間Aの開口端縁とほぼ面一となるように形成されている。
【0046】
基台部20にメス端子部11及びコア14を取り付けた後、図5(b)に示すように、保持部21を固定する。保持部21は、メス端子部11が筒部21bの内周側に挿入しつつ本体部21aを基台部20の上面側に重ね合わせて組み合わせられる。このとき、保持部21は、基台部20の上面側に固定されたバスバー16aを挟むように保持する。
基台部20側から延ばされた係合部20bと、本体部21a側に形成された突起21a1とが互いに係合することで、基台部20と保持部21とは強固に固定される。
基台部20の上面側から突設された各メス端子部11は、保持部21の筒部21bの内周側に収容されることによって、位置決め保持される。
【0047】
また、このとき、各外枠部23の開口に対応して本体部21aの下端縁から下方向に突設された位置決め部21cは、環状空間Aの開口の内、バスバー16aの上側及び左右両側の部分を塞ぐ。
コア14は、上述のように、環状空間Aに収容された状態で当該環状空間Aの開口端縁とほぼ面一に形成されている。よって、位置決め部21cは、環状空間Aの一部を塞ぐことで、環状空間Aに収容されたコア14を開口側から位置決め固定する。
従って、この場合、基台部20に保持部21を固定する前にコア14を環状空間Aに容易に収容でき、その後、保持部21を固定すればコア14を環状空間11内で固定することができるので、コア14の取り付け及び位置決め固定が容易となる。
【0048】
基台部20に保持部21を固定した後、開口部21dに固定金具25(図3)を差し込み、筒部21b内のメス端子部11及びこれに繋がる導体16を固定する。
以上によって、メス端子部11が組み込まれたハウジング12を得ることができる。
【0049】
次いで、基台部20の下面側に回路基板15(図3)を固定し、図5(c)に示すように、台座部材10aにハウジング12全体を固定する。なお、図5(c)では、ハウジング12の保持部21を除いた状態を示している。
【0050】
ハウジング12は、孔部20a(図3)に挿通された固定ボルト26によって台座部材10aに固定される。
先端部が外枠部23の開口側から突出しているバスバー16aは、ハウジング12が台座部材10aに固定された状態で、台座部材10a側に突設された端子台10a2の上面に当接している。
さらに、バスバー16aの先端には、端子台10a2に形成されている雌ねじ部10a3と一致するように、孔部16a1が形成されている。この端子台10a2の雌ねじ部10a3に螺合されるボルト、又はボルトによって共締めされる導電材を介して、バスバー16a(導体16)と、インバータ装置Iの出力端子(図示せず)とが電気的に接続される。
【0051】
上記のように構成されたインバータ装置用コネクタ1によれば、メス端子部11と、メス端子部11に流れるインバータ装置Iの出力電流を検出する電流検出装置13とを筐体10の内部に収容しつつインバータ装置Iの外側面に固定されているので、インバータ装置Iは、自装置の出力電流を検出するための電流センサを備える必要がない。このため、インバータ装置Iの小型化を可能にすることができる。
また、電流検出装置13は、メス端子部11に流れる電流を検出するので、上記従来例にて述べたように、インバータ装置Iから電流センサを単に分離した場合と比較して、電流センサの設置スペースの確保や電流センサのための配線を設ける必要がなく簡易な構成にできる。
以上のように、本発明のインバータ装置用コネクタ1によれば、簡易な構成でインバータ装置Iの小型化を可能にすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、ハウジング12に、バスバー16aが挿通された状態でコア14を固定するための固定部22が形成されているので、コア14を固定するための専用の部材が不要になる。この結果、部品点数を減らすことができ、簡易な構成とすることができる。
さらに、本実施形態では、ハウジング12が、バスバー16aがその上面に沿って延びるように固定されている基台部20と、基台部20の上面側に固定されるとともに、バスバー16aの長手方向に対して交差する方向に延びることで基台部20の上面から突設されたメス端子部11を保持する保持部21とを備えており、これら基台部20と、保持部21とが、長尺な部材であるバスバー16aを挟むように保持するとともに、バスバー16aの長手方向に対して交差する方向に延びるメス端子部11を保持するので、ハウジング12はメス端子部11を筐体10内で確実に固定することができる。
【0053】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、電流検出装置13の回路基板15を基台部20の下面側に配置する構成とすることで、回路基板15とバスバー16aとの間に基台部20を介在させて絶縁したが、図6に示すように、回路基板15と基台部20との間、及び回路基板15の下面側に、電界ノイズの影響を抑制するシールド板27を設けてもよい。この場合、回路基板15とバスバー16aとをより効果的に絶縁することができ、電界ノイズの影響をさらに低減することができる。
【0054】
本発明に関して、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 インバータ装置用コネクタ
2b オス端子部
10 筐体
11 メス端子部
12 ハウジング
13 電流検出装置
14 コア
14b エアギャップ
15 回路基板
16a バスバー
17 ホール素子
20 基台部
21 保持部
21c 位置決め部
22 固定部
27 シールド板
A 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器とインバータ装置とを互いに接続するケーブルを当該インバータ装置に接続するためのインバータ装置用コネクタであって、
前記ケーブルに設けられた差込側端子部が挿入される、前記インバータ装置の出力端に繋がる被差込側端子部と、
前記被差込側端子部に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記差込側端子部が挿入可能に前記被差込側端子部と前記電流検出部とを内部に収容し、前記インバータ装置の外側面に固定される筐体と、を備えていることを特徴とするインバータ装置用コネクタ。
【請求項2】
前記電流検出部は、前記被差込側端子部から延びるバスバーが挿通されるとともにエアギャップを有する枠状のコアと、前記コアのエアギャップの磁束密度を検出するセンサとを備えている請求項1に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項3】
前記被差込側端子部を前記筐体に固定するためのハウジングをさらに備え、
前記ハウジングには、前記バスバーが挿通された状態で前記コアを固定するための固定部が形成されている請求項2に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記バスバーがその上面に沿って延びるように当該上面側に固定されている基台部と、
前記基台部の上面側に固定されるとともに、前記バスバーの長手方向に対して交差する方向に延びることで前記基台部の上面から突設された前記被差込側端子部を保持する保持部とを備えている請求項3に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項5】
前記固定部は、前記基台部の側面に開口して設けられ前記コアを収容する環状空間を有し、前記保持部に設けられるとともに当該保持部が前記基台部に固定されたときに前記環状空間に収容された前記コアを前記開口側から位置決め固定する位置決め部を備えている請求項4に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項6】
前記基台部の下面側には、前記センサが実装された基板が配置されている請求項4又は5に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項7】
前記基板と前記基台部との間に電界ノイズの影響を抑制するシールド板が設けられている請求項6に記載のインバータ装置用コネクタ。
【請求項8】
前記コアが圧粉磁心により形成されている請求項2〜7に記載のインバータ装置用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99158(P2013−99158A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241167(P2011−241167)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】