説明

インビトロ試験中に試料を攪拌する装置および方法

【課題】容器内容物の損失を防止しながら、容器内の試料を攪拌するための装置および方法が求められている。
【解決手段】溶解または他のインビトロ試験中に試料を攪拌するための装置および方法において、容器内に可動構成要素を配置して投薬剤またはステントなどの試料担体を容器の媒体の中でを往復または回転させる。装置は、試料担体の運動中に内容物の損失を実質的に防止するために、容器を密封するふた部材を含んでもよい。可動構成要素は駆動源により非接触態様で作動されてもよい。可動構成要素は、容器外部の駆動源により駆動可能な磁石を含んでもよい。容器は容量が異なる第1および第2の容器部分を含んでもよく、可動構成要素が作動して、この容器部分のうちのいずれか一方に収容される媒体を介して試料担体の撹拌がなされる。容器はその底部または底部近傍に、容器を満たしたり器具を使用したりする孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、剤形、ステント、ならびに即効性および/または制御された放出特性を有する他の材料の担体の溶解試験などのインビトロ試験に関する。より詳細に本発明は、試験中に、かかる材料の担体に作動された運動を提供するための装置および方法、運動中の蒸発損失防止、ならびに、かかる装置および方法に適合するようになされた構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解試験などのインビトロ試験法は諸条件をシミュレートするのに有用である。これらの諸条件下において、医薬製剤などの物質は制御条件下で消化管系または血管系環境などの生理学的な環境内に放出される。溶解などにより適切な媒体(メディア)内に試料製剤を放出することにより、光学信号または他のデータがより得やすくなり、これにより、実際のインビボ条件の予測またはその相関関係のための濃度、放出速度、その他の情報を導き出すことが可能となる。これらの技術においては、かきまぜ、回転、往復運動などにより媒体中の試料の攪拌を伴うものもある。
【0003】
たとえば、下記非特許文献1では、通常は温度制御された溶解媒体を満たした試験管内で攪拌を行なう技術を数例用いて説明がなされている。これらの技術には、回転バスケット(装置1)、回転パドル(装置2)、往復シリンダ(装置3)、および往復ホルダ(装置7)の使用が含まれる。各装置では、モータ駆動式シャフトを試験管内に挿入する必要がある。装置1では、両側が網状になったステレンス鋼バスケットが、錠剤、カプセル剤、その他の投薬剤を収容するために設けられており、これらをステレンス鋼シャフトにより回転させる。装置2では回転パドルがブレードおよびシャフトから形成される。装置3では、開口が形成され網状に覆われた両端部を有するガラス製往復シリンダが、投薬剤を収容するために設けられている。この往復シリンダは、所与の浸漬率で容器内を垂直に上下する。往復シリンダの上部には、シャフトに取り付けられた穿孔カバー部が設けられている。これらの往復シリンダおよび容器には、蒸発キャップが嵌合される。しかしながらこのキャップは空気孔を有し、往復運動に必要なシャフトがこの中に延びている。したがって、キャップは容器内部を完全に密封できるわけではなく、蒸発により溶液に容認できない損失をもたらすおそれがある。下記特許文献1には類似の装置が説明されている。同様に装置7では、ナイロンネットバッグ、CUPROPHAN(登録商標)材料、ステレンス鋼コイル、TEFLON(登録商標)ディスク、TEFLON(登録商標)シリンダなどの回転軸に取り付けられた他のタイプの試料ホルダが、錠剤および経皮性パッチなどの投薬剤試験のため、容器内で垂直往復運動を行なう。
【0004】
気づかれるように、これらのシステムは全て現在までシャフトの使用を必要としており、このシャフトは媒体内で試料の往復運動、回転、またはかき混ぜを行ない、その後に取り外しができるように媒体容器内部に延びているものでなくてはならなかった。したがってこれらのシステムでは多くの場合、著しい量の蒸発損失を避けることが困難であった。蒸発損失は、撹拌に伴う試験工程の効果を低減させるおそれがある。さらに、回転軸は、ブレや位置ずれを起こしやすく、これにより、再較正または交換を頻繁に行なう必要がでてくる。加えて、媒体を収容するために用いられる容器類は従来から、最も大きいタイプの被試験試料または試料ホルダを収容するような寸法になされてきた。このような態様で、同じ寸法の容器を、寸法が広範囲に異なる試料および試料ホルダの試験で用いることができる。しかしながら、比較的小さい試料を試験する際には、容器の標準的な寸法では、試料が往復運動される媒体が過剰な量となってしまう。この結果、試験中に得られたデータの分解能は多くの種類の試料にとって最適なものにはならない。さらに、従来の試験方法および装置は、分析材料のステントおよび他の担体などのより新しいタイプの投薬手段の取扱、支持、および試験のために具体的に設計されたものではない。
【特許文献1】米国特許第5,011,662号明細書
【非特許文献1】米国薬局方(USP)指針、711章(溶解)および724章(徐放)(United states pharmacopoeia guidelines, Chapters 711 (Dissolution) and 724 (Extended Release))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、蒸発または他の機構により容器内容物の損失を防止、すなわち実質的に低減または軽減しながら、容器内の試料を攪拌するための装置および方法が求められている。周囲環境から容器内部に延びるシャフトが必要なく、容器内の試料を攪拌するための装置および方法もまた求められている。さらに、容器容量が試料、試料ホルダ、および/または容器内の他のアイテムの大きさによりよく適合する、容器内の試料を攪拌するための装置および方法が求められている。さらに、ある種の薬剤化合物または他の分析材料の担体を取り扱い、支持し、試験するための装置および方法もまた求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によると、インビトロ試験中に試料担体を運動させる装置は、容器内の試料担体を支持するための可動構成要素を含む。この可動構成要素は、駆動源との非接触結合により作動することができる駆動可能な構成要素を含む。
他の実施形態によると、インビトロ試験中に試料担体を運動させる装置は、容器と、可動構成要素とを含む。可動構成要素は、容器内に配置されて試料担体を支持し、駆動源との非接触結合により駆動可能である。
【0007】
他の実施形態によると、インビトロ試験中に試料担体を運動させる装置は、容器と、容器内で試料担体を支持するために容器内に配置された可動構成要素と、ふた部材と、を含む。ふた部材は、駆動源により可動構成要素の作動中に容器からの内容物の損失を実質的に防ぐために容器を密閉する。
さらに他の実施形態によると、インビトロ試験中に作動可能な試料担体を収容するために容器が設けられる。容器は、第1および第2の容器部分を含む。第1の容器部分は、駆動源により駆動できる駆動可能な構成要素を収容するための第1の部分容量を有する。第2の容器部分は、駆動可能な構成要素に接続された試料担体を収容するための第2の部分容量であって、第1の容器容量とは異なる第2の部分容量を有する。
【0008】
さらに他の実施形態によると、容器を密閉するためにふた部材(ふた装置)が設けられる。ふた部材は、容器の開口部を覆うための本体と、試料担体ホルダと結合するために本体に取り付けられた磁石とを含む。
さらにまた他の実施形態によると、試料担体を支持するために支持具が設けられる。支持具は、本体と、第1および第2の支持部材と、結合部材とを含む。第1および第2の支持部材は、本体に取り付けられ、第1の支持部材と第2の支持部材との間に試料担体を固定するために軸方向に離間されている。結合部材は駆動源と結合するために本体に取り付けられている。
【0009】
試料担体を攪拌するための方法によると、容器内に可動構成要素が設けられる。可動構成要素は、媒体内に放出されうる材料を運搬する試料担体を支持する。可動構成要素は、可動構成要素に対して非接触状態で配置された駆動源と結合することにより、容器内で動くように作動される。
試料担体を攪拌するための他の方法によると、容量が異なる第1の容器部分と第2の容器部分とを含む容器内に、試料担体を支持する可動構成要素が設けられる。可動構成要素は、容器内で動くように作動され、これによって、試料担体により与えられる材料が容器部分のうちの1つにある媒体内に放出される。
【0010】
放出されうる材料を含有する試料担体を操作するための方法によると、ふた部材が設けられる。ふた部材は、容器の開口端部を密閉するように適合している。ふた部材は試料担体を支持する支持具に結合される。ふた部材と支持具との間を結合することにより、試料担体に手動で接触することなく、ふた部材を取り扱うことで試料担体を操作することが可能になる。
【0011】
容器内での試料担体の攪拌に備えて、放出されうる材料を含有する試料担体を試料担体ホルダに固定するための方法もまた提供される。試料担体の第1の部分が試料担体ホルダの第1の支持部材に接触するように、試料担体は試料担体ホルダに取り付けられる。また、第2の支持部材が試料担体の第2の部分に接触するように、第2の支持部材が試料担体ホルダに取り付けられる。
【0012】
実施形態または方法には磁気結合により非接触結合が達成されるものもある。実施形態または方法には、この目的で永久磁石が用いられているものもある。他の実施形態または方法では、1または複数の電磁石を用いることで選択的に通電し、または通電をしないことを可能とし、これにより選択的な結合や結合の切り離しを可能にする。
実施形態または方法には、可動構成要素の作動が往復運動によりなされるものもある。他の実施形態または方法には、作動が回転または旋回によるものもある。
【0013】
実施形態または方法には、容器内に配置されたピックアップ構成要素が可動構成要素と結合されて、試料担体の取り扱いを容易にするものもある。実施形態または方法には、ピックアップ構成要素が磁気結合のための磁石を含むものもある。実施形態または方法には、ピックアップ構成要素がふた部材に取り付けられ、装着されたり、または別の方策としてふた部材と一体化されたりしているものもある。
【0014】
容器が設けられる実施形態または方法には、容器の底部に、容器へのアクセスを提供するための開口部を有し、容器内にまたは容器から流体を送ったり、プローブ類または他の器具を用いたりできるようにされたものもある。密封部材またはふた部材を用いて底部開口を選択的に閉じることもできる。密封部材またはふた部材は、試験管などの導管(コンジット)の嵌合部として設けられてもよい。
【0015】
他の実施形態または方法は、上述された1または複数の特性または要素を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一般に、「連通(コミュニケート)する」、「結合された」およびこれらに類する用語など(たとえば、第2の構成要素と「連通する」または「連通している」第1の構成要素)が本願明細書では用いられて、2以上の構成要素間の構造的、機能的、機構的、電気的、光学的、磁気的、または流体的な関係を示す。このため、一つの構成要素が第2の構成要素と連通もしくは結合されている、または第2の構成要素が第1の構成要素と連通もしくは結合されているということは、さらなる構成要素が第1の構成要素と第2の構成要素との間に存在する、ならびに/または、第1および第2の構成要素と動作可能に関連付けられ、または係合されるという可能性を排除するために意図されたものではないことに留意されたい。
【0017】
本願明細書で用いられる用語「投薬剤」は一般に、溶解試験または他の種類の試験で試料を与えうる放出可能な量の材料を有する任意の配合物または構造物を含む。放出可能な量の材料はたとえば、治療上の活性薬剤であってもよく、これには人体または動物体内で、消化、注射、挿入、経皮送達、外科手術による移植、またはこれらに類するものによりインビボ送達を意図としてなされる製薬製剤、化学的、生化学的、または生物学上の活性材料などが含まれる。放出可能な材料は、可溶性があり、溶出および懸濁が可能で、適切な媒体内での拡散可能、媒体との混合可能、媒体との化合可能、または媒体に可搬であってもよく、これによりいかなる所望の手段においても放出可能な材料で作製された1または複数の構成要素の分析を容易にする。投薬剤の例として、錠剤、カプセル剤、カプセル形の錠剤、ゲル状カプセル、タブレット、細粒、坐剤、膣坐剤、ゲル、軟膏、オイル、クリーム、経皮性パッチなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。さらに投薬剤は、賦形剤、添加剤、活性剤の担体または保持剤、着色剤、タギングまたはマーキング剤、防腐剤、緩衝剤、活性材料として用いられる1または複数の非活性材料、活性材料の放出速度を制御する手段、これらのより多くの特性のうちの2つの組み合わせ、および/または他の目的のためのものを含んでもよい。一般に、多様な投薬剤が入手可能であり、当業者には既知である。
【0018】
本願明細書で用いられる用語「試料担体(サンプルキャリア)」は、一般に放出可能な量の材料を運ぶことができる任意の投薬剤または他の構造体または材料を含む。「試料担体」には、任意の投薬運搬機構が含まれる。投薬剤に加え、他の「試料担体」の例として、ステントまたは類似のプロテーゼがあげられる。ステントの中には、血管を拡張させる従来の機能に加えて薬剤送達機構として機能できるものもある。概ねステントは大略的に、円筒形または管状の構造を有し、血管カテーテルを用いることなどにより血管内または他の内腔に外科移植することができる。一般的なタイプのステントは、複数の微細線維(繊維)を螺旋パターンに織り上げ、変形可能で多くの場合ある程度形状記憶を有する管状の編上げ構造を形成して構成される。微細線維は、金属製または重合体のものであってもよい。ステントの機能に応じて微細線維は、移植後時を経て本質的に永続するもの、あるいは劣化する可能性のものがある。ステントは自己膨張性のものであっても、膨張するのにバルーンの使用を必要とするものであってもよい。ステントは、溶出、拡散または他の運搬機構により、制御された速度でステントから放出されうる放出可能な材料で覆われたタイプのものであっても、あるいは、かかる放出可能な材料を運搬するタイプのものであってもよい。一般に、多様なステントが入手可能であり、当業者には既知である。
【0019】
投薬剤およびステントに加え、「試料担体」の例としてグルコースセンサなどの移植可能な(バイオ)(化学)センサ、輸液カテーテル、歯科用植込剤、神経刺激リード、および脊髄修復具があげられるが、これらに限定されるものではなく、これらの用語は当業者には理解されるものである。
本願明細書で用いられる用語「溶媒(メディア)」は一般に、水、アルコールなどの溶剤および/または放出可能な材料が放出されうる任意の他の媒体、ならびに任意の添加剤または試薬を含む。媒体は多くの場合、所望のpHレベルに緩衝され、あるいは消化管環境などの生理学的な環境、または血管などの管腔もしくは冠状動脈環境を模倣するように処方される。用語「媒体」はまた投薬剤、ステントまたはこれらに類するものから放出される材料を含んでもよく、たとえば、治療活性剤、賦形剤、放出速度改質剤、およびこれらに類するものがあげられる。したがって、用語「媒体」は、溶液、懸濁液、乳剤、微粒混合物、コロイド状混合物、またはこれらに類するものを含む、試験管内で生成されうる複数の構成要素の組み合わせまたは基質(マトリックス)を含んでもよい。
【0020】
図1ないし図7を参照にして本願明細書で開示される対象物の実施形態の例を以下に詳細に説明する。
図1は、一実施形態にしたがった試料試験装置を全体として10で示す。試料試験装置10は、治療活性剤または対象となる他の試料分析物などの放出可能な材料を、1または複数の試料担体14から適切な媒体16内に放出するための環境を引き起こし、容易にし、または提供するために用いられてもよい。試料試験装置10は、試料担体14または放出可能な材料の性能、たとえば分析物が試料担体14から所定の時間内に放出される速度などの性能に関する属性もしくは品質を測定する準備、または測定に関連して用いられてもよい。試料試験装置10は全体として20で示される1または複数の試験管ユニットと、全体として100で示される1または複数の非接触駆動源または構成要素とを含んでもよい。試験管ユニット20は、容器または試験管30と、全体として40で示されるふた部材またはふた装置と、全体として60で示され、非接触駆動構成要素100により駆動可能な非接触可動構成要素または装置と、を含んでもよい。用語「非接触」または「非接触である」は、駆動構成要素100と可動構成要素60とが、これらの構成要素間での物理的接触を必要としない態様で相互作用することを示しており、このことは例を介して以下でより詳細に説明される。
【0021】
容器30は、たとえば、閉じた底部32と、上部に開口部34と、を一般に備えている(図2)管またはバイアルを含んでもよい。底部32は、図1に示されるように半球状もしくは球状のものであっても、または図6に示されるように概ね平坦なものであってもよい。一般に容器30は、1または複数の試料担体14と、試料担体14により供給された1または複数の材料が内部に放出されうる媒体16とを収容するのに有用な任意の構造でもよい。好ましくは、容器30は化学作用を起こさない(不活性な)材料、すなわち、被試験分析物について収着したり、反応したり、妨害したりすることのない材料により作製される。一般に容器30は、ガラスまたは、透明または透光性のある他の材料から作製され、このため容器30内部を見ることが可能である。さらに、容器30の材料は、容器30内の媒体16の温度制御が所望されている場合には、熱を伝達することが可能であることが好ましい。さらに、ガラスまたは他の材料は、当業界で容認され、繰り返しの使用に耐えるように製造されることが好ましい。
【0022】
ふた部材40は、開口部34(図2)を密封し、これにより媒体16または他の含有物が試験工程の過程で容器30から失われることを完全にまたは少なくとも実質的に防止するようになされた任意の構造を含むものであってもよい。特にふた部材40は、容器30の含有物が加熱された場合などの加圧条件下で起こる、容器30からの媒体16の蒸発による漏れを防止または少なくとも著しく軽減するものである。有利な実施形態においては、ふた部材40、または少なくともふた部材40の容器30に接触する部分は、ゴム、ポリエチレン、もしくは他の適切な重合体などの弾性材料、または金属製の材料から作製され、効果的な密封がなされる。一般にふた部材40は、容器30の開口部34(図2)を覆うのに充分な栓、隔壁、外ぶた、キャップ、または任意の他の構造であってもよく、これにより容器30の内部を周囲環境から隔離するものである。図示される実施形態においては、ふた部材40は、主部または本体44と、この本体44から延びている中央部分または中央本体48とを含む。本体44は、開口部34を覆い、本体44と容器30との間の接触により容器30の密封に寄与する。本体44は、DELRIN(登録商標)などの剛性材料、または弾性材料から作製されてもよい。
【0023】
図1に示される例示的な実施形態において、ふた部材40の中央部分48は、容器30の内部に延びている。中央部分48の1または複数の表面は、容器30と接触して密封部を形成し、したがって、中央部分48の1または複数の部分がポリエチレンなどの弾性材料から作製されていると有利である。実施形態には、中央部分48が、容器30の内部と気密状に接触する面として機能する1または複数の環状リブ48Aと48Bとを含むものもある。リブ48Aおよび48Bのそれぞれの直径は容器30の面36Aの内径より大きいものであってもよく、これにより中央部分48が容器30に挿入される際に効果的な密封面が得られる。他の実施形態において中央部分48の外側面48Cは、容器30の内面36Aにきつく当接するような寸法になされて密封を効果的に行なうものであってもよい。さらに他の実施形態において本体44または中央部分48は、容器30の外面36Bに対し気密状に嵌合するように構成された延在部分(図示せず)を含んでもよい。
【0024】
可動構成要素60は図1に示すように、容器30の内部に配置されてもよい。可動構成要素60は1または複数の試料担体14を支持または保持するのに適切な任意の構造または装置を含んでもよい。さらに可動構成要素60は、容器30の密閉状態を損なうことなく、容器30内で往復運動、回転または他の動きを行なうように駆動されてもよい。たとえば、可動構成要素60は、可動構成要素60に対し非接触に配置された駆動構成要素100により作動されるよう構成されているものとすることができる。この目的のため、可動構成要素60は、全体として64で示される試料担体ホルダまたは支持部材と、この試料担体支持部材64に取り付けられるか一体に形成され、全体として90で示される駆動可能な構成要素と、を含んでもよい。実施形態において可動構成要素60は、一般に本体または構造部を含むと考えられ、軸方向に細長いものが有利である。可動構成要素60の本体または構造は、1または複数の部分を含んでもよい。試料担体支持部材64および駆動可能な構成要素90は、可動構成要素60の本体もしくは構造の一部、または1もしくは複数のその構成部分に取り付けられ、または一体化され、またはそれを形成する。図1に示されるようにいくつかの実施形態では、可動構成要素60の本体または構造は、部分78と部分82とを含んでもよい。
【0025】
前述のように試料担体14は、任意の投薬運搬機構、すなわち、溶剤または他の適切な媒体16にさらされ、試料担体14から放出されうる製剤薬剤などの放出可能な量の材料を運搬できる任意の投薬剤または他の構造もしくは材料を含んでもよい。同様に、試料担体支持部材64の構造は、試料試験装置10で用いられる試料担体14のタイプに依存してもよい。図1および図2は、ステントの態様で設けられる試料担体14を例示するが、これは例示のみを目的をするものであって、本願明細書で開示される本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意されたい。よって本実施例における試料担体支持部材64はステントホルダとして機能すべく構成されている。他の実施形態では試料担体支持部材64は、媒体16内で往復運動中の他のタイプの試料担体14(たとえば、錠剤、経皮性パッチ他)を保持または収容するのに必要なバスケット、ディスク、網状物、格子、シリンダ、またはこれらに類するものを含んでもよい。
【0026】
試料担体14を試料担体支持部材64に安定した態様で固着するために、本実施形態の試料担体支持部材64は、第1の支持部材72と第2の支持部材74とを含み、これらの部材の間に試料担体14が取り付けられる。第1の支持部材72と第2の支持部材74とはそれぞれ、第1の内方に対向する面72Aと、第2の内方に対向する面74Aと、すなわち互いに対向するとともに試料担体14に対向する面を含む。これに対し、試料担体14の両端部がそれぞれ接触するか、あるいは当接する。実施形態では、第1および第2の内方に対向する面72Aおよび74Aはそれぞれ、概ね円錐状または容器30の長手方向の軸に対して先細り状に傾斜され、径の異なる試料担体14を内部に収容する。実施形態で第1の支持部材72は、軸方向の延在部または、試料担体支持部材64と駆動可能な構成要素90との間のスペーサ部材として機能する部分78などのように、可動構成要素60の構造部に取り付けられている。
【0027】
第1の支持部材72と第2の支持部材74とは、その間に相互結合される支持棒または支持部分82を設けることで、互いに離間されるとともに位置合わせされた状態が保たれる。第1の支持部材72と第2の支持部材74とはそれぞれ孔72Bと孔74Bとを有してもよく、この孔の中に支持棒82の対向端部が延びている。図2に示されるように支持棒82は、第1の支持部材72、またはスペーサ部材78のような試料担体支持部材64の他の構成要素に取りはずし可能に取り付けられてもよく、これにより、試料担体14の試料担体支持部材64に対する取り付けおよび取り外しを容易にする。図1に示されるように取り外し可能な取付装置は、任意の手段により達成されてもよく、この手段として、支持棒82に外部ねじ山を設け、スペーサ部材78の孔78Aに形成された内部ねじ山と噛合させるか、あるいは、スペーサ部材78の孔78Aと軸方向に位置合わせされた第1の支持部材72の孔72Bと噛合させてもよい。試料担体14を支持棒82の全長にわたり配置し、支持棒82の自由端部を第1の支持部材72の孔72Bに挿入するか、あるいは孔72Bを通してスペーサ部材78の孔78Aの内部に挿入することにより、試料担体14は試料担体支持部材64に固着される。孔78Aまたは72Bのうちのいずれがねじ切りされるかに依存して、支持棒82の自由端部が孔78Aまたは72Bのいずれかにねじ込まれるか挿入されて試料担体14の取り付けが完了する。支持棒82の自由端部は、孔78Aおよび/または72Bに充分深くねじ込まれるか挿入され、これにより試料担体14は、第1の支持部材72および第2の支持部材74の両者と確実に当接させる。
【0028】
また支持棒82は、同様の態様で第2の支持部材74に取りはずし可能に取り付けられてもよい。この場合第2の支持部材74は試料担体14を挿入、または取り外し中に支持棒82から取り外すことができる。第1の支持部材72および/または第2の支持部材74は支持棒82から取り外すことができるため、これらの個々の構成要素の清浄または交換もまた容易である。
【0029】
本願が開示する対象物は、締付および調節手段などのねじ特性を使用することに限定されるものではないことを理解されたい。これに代わるものとしてたとえばプレス嵌合により、支持棒82は第1の支持部材72および/またはスペーサ部材78に取り付けられてもよい。
これらを任意に選択することにより得られる一利点として、支持棒82は第1の支持部材72の孔72Bおよびスペーサ部材78の孔78Aを介して可動であることがあげられる。したがって、第1の支持部材72および/または第2の支持部材74の位置を支持棒82の長さに対し、ゆえに互いに対し、調節することが可能である。このように距離の調整および変動が可能であるため、試料担体支持部材64は、寸法の異なるステントや他のタイプの試料担体14の使用を可能とする。さらに図1に示されるように、試料担体支持部材64は試料担体14を最小限の接触で固定し、かつ試料担体14を容器30の中心長手軸に対して中心または実質的に中心に固定する。この構成により試料担体14と試料担体支持部材64との間で摩擦や衝撃が生じることを防止し、これによりインビトロ溶解試験の精度を高める。
【0030】
試料担体支持部材64により得られる有用性および利点により、試料担体14および実験手順を多様に広げることができることを理解されたい。したがって試料担体支持部材64は、本願明細書で開示された非接触態様における作動に関連するのみでなく、駆動源との直接的な機械的連係を伴う作動に関連して使用されてもよい。このように本願の開示内容は、試料担体支持部材64が非接触作動を伴うものおよび伴わないものに係る実施形態および方法を含む。たとえば試料担体支持部材64は、完全密封ふた部材40が所望されない場合や必要とされない場合での使用時などに、電動式駆動アセンブリと連通するシャフトに直接機械的に関連するようになされてもよい。
【0031】
駆動可能な構成要素90は、駆動源と物理的に接触したり係合したりせず、容器30の密封状態を損なうことなく、容器30内部で往復運動および/または回転するように駆動されうる任意の構造でよい。非接触の駆動可能な構成要素90を設けることの利点の1つとして、駆動源は容器30に対し外部から操作することができることがあげられる。このような態様で試験管ユニット20が蒸発または他の材料損失を防ぐ能力は、往復、回転、他による運動または攪拌を作動する性能とともに存分に高められる。図示された実施形態において非接触作動は、内部磁気結合構成要素を含む駆動可能な構成要素90を設けることにより実現される。内部磁気結合構成要素は内部磁石92を含む。内部磁石92は、駆動構成要素100の作動などによる非接触駆動入力に応答して、試料担体支持部材64を内部磁石92とともに往復運動させたり回転させたりするような任意の手段により、可動構成要素60に固定されたり一体化されていてもよい。図1に示される実施形態においては、たとえば駆動可能な構成要素90は、スペーサ部材78に取り付けられて内部磁石92を内部に収納するキャップまたはハウジング94を含む。
【0032】
駆動構成要素100は、可動構成要素60のいかなる部分とも物理的に接触させたり係合させたりする必要なしに、容器30内で攪拌を起こさせ、これにより、容器30の密封状態を損なうことなく蒸発損失防止に貢献する任意の構造でよい。駆動構成要素100は容器30に対し外側に配置されて、容器30と独立して可動されるものでもよい。図1に示される有利な実施形態において駆動構成要素100は、外部磁気結合構成要素を含む。外部磁気結合構成要素は、容器30の壁厚を超えて、可動構成要素90の外部磁石102と内部磁石92との間に引力を維持するのに適した磁界パターンを確立するために必要な1または複数の外部磁石102を含む。駆動構成要素100はさらに、ハウジング、プレート、またはこれらに類するものなど、単数または複数の外部磁石102を支持するための支持部材104を含む。当業者なら理解されるであろうが、駆動構成要素100および容器30の近接部の構造は、外部磁石102が、駆動可能な構成要素90の内部磁石92に磁気的に結合されるものである。この場合、駆動可能な構成要素90は駆動構成要素100の動きに応答して動くことができる程度に結合される。また一方で、駆動可能な構成要素90の結合が解除され、可動構成要素60が容器30の底部32に降下することを防止する。
【0033】
図3に示される有利な実施形態において駆動構成要素100は、内部磁石92に対し円周方向に配置される複数の外部磁石102A、102B、102Cを含む。たとえば図3では3個の外部磁石102A、102B、102Cが120度の間隔をあけて円周方向に離間されているが、外部磁石102A、102B、102Cは、これより多いまたは少ない数で、より広いまたは狭い間隔で離間されていてもよい。外部磁石102A、102B、102Cは、支持部材104に形成された凹部またはポケット104A、104B、104Cにそれぞれ配置されている。このような配置により、攪拌中の磁力の平衡が得られる。これにより、内部磁石92と、外部磁石102A、102B、102Cとの間の結合関係の安定性を高め、摩擦または磁界不完全による可動構成要素60(図1および図2)のスキップ、ジッター、または他の好ましくない動きを軽減することができる。この実施形態において容器30は、支持部材104により画定される開口部104Dを介して同軸に延び、これにより、外部磁石または磁石102A、102B、102Cが内部磁石92と制御可能な磁気結合関係を保つ機能を促進する。他の実施形態において駆動構成要素100は、容器30に完全に外接することなく容器30に近接して配置されうる。
【0034】
図3は1つの容器30と、1または複数の一組の外部磁石102A、102B、102Cとが配置された一試験サイトを示す。他の実施形態においては複数の試験管20(図1および図2)が同時に操作されてもよい。したがって1個の駆動構成要素100は、容器30および1または複数の外部磁石、または一組の磁石102A、102B、102Cがそれぞれ配置される複数の試験サイトを収容するように構成されてもよい。また、複数の駆動構成要素100は、試験管サイトの対応する数にあわせて設けられてもよい。複数の試験サイトが設けられる場合、図3は一試験サイトが画定される駆動構成要素100の一部または複数の駆動構成要素100のうちの1つを図示していると考えられる。
【0035】
図1の矢印Aに示されるように、いくつかの実施形態における駆動構成要素100は容器30に対し往復運動できる。図示される実施形態において駆動構成要素100は、容器30の長さにわたり軸方向に往復運動できるが、他の経路での往復運動もまた可能である。駆動構成要素100は、モータおよび連係、または駆動構成要素100と操作可能に連通する伝達アセンブリなどの任意の適切な手段により往復運動が行なわれてもよい。駆動構成要素100の外部磁石102と、駆動可能な構成要素90の内部磁石92との間が磁気結合されているために、駆動構成要素100の往復運動は、駆動可能な構成要素90と試料担体支持部材64とを含む、矢印Bで示される可動構成要素60の往復運動を生じる。このことにより試料担体14と、この試料担体14が運搬する試料材料とは容器30内の媒体16を往復運動する。
【0036】
上述された実施形態において試料担体14の往復運動は、容器30が静止した状態で駆動構成要素100を動かすことにより達成される。しかしながら別の実施形態では、図1を参照すれば容易に理解できるように、外部磁石102が静止した状態で容器30が往復運動をする。この別の実施形態において、容器30には適切な駆動源が任意の既知の手段で機械的に結合されて、空間内で容器30の往復運動的な移動を生じさせる。外部磁石102と内部磁石92との間が磁気的に結合しているため、容器30が往復運動している間、試料担体支持部材64、および容器30に対する試料担体14の位置は固定されたままの状態となるか、または実質的に固定される。この別の構成により容器30内に類似した流体力学的効果が生じるが、この場合、試料担体14の位置は、容器30内部の媒体16の容量に対して変化する。
【0037】
図1に示される有利な実施形態において試料試験装置10はさらに、可動構成要素60と選択的に結合または係合するために容器30に配置されたピックアップ構成要素110を含む。ピックアップ構成要素110は、可動構成要素60、および容器30から支持される任意の試料担体14の取り外しを容易にし、汚染や損傷の危険を低減するために接触することなく、試料担体14の取り扱いおよび移動を可能にする。有利な実施形態においてピックアップ構成要素110は、ふた部材40に取り付けられ、すなわちふた部材40に一体化されている。このような構成により、可動構成要素60がピックアップ構成要素110に結合または取り付けられた後、ふた部材40を取り外すことにより、可動構成要素60および試料担体14は容器30から取り外されてもよい。駆動可能な構成要素90が内部磁気結合部を含む実施形態では、ピックアップ構成要素110はピックアップ磁石112を含んでもよい。図1に示されるようにピックアップ磁石112は、ふた部材40の中央部分48内部に密閉されてもよい。ピックアップ磁石112は、駆動構成要素100に比較すると、駆動可能な構成要素90との間により強い磁気結合関係をもたらすように(たとえば大きさ、材料などが)構成されてもよい。このような態様で、可動構成要素60および試料担体14を容器30から取り外すことが所望される場合には、駆動構成要素100は可動構成要素60をピックアップ構成要素110に向けて運搬するように、すなわち容器30の開口部34(図2)の方向に向けて、上述の往復運動サイクルの間に通常起きるストロークより大きいストロークで作動される。可動構成要素60の内部磁石92とピックアップ磁石112との間の距離はある値まで縮まるが、この値では内部磁石92とピックアップ磁石112との間の磁気引力は、駆動構成要素100の内部磁石92と外部磁石102との間の磁気引力より強くなるため、ふた部材40を操作して可動構成要素60を容器30から取り外してもよい。
【0038】
図1に概略が示されるように駆動構成要素100は、当業者が考えうる任意のタイプの駆動システム120を動力源としてもよい。駆動システム120は一般に、駆動構成要素100により提供される非接触結合を介して駆動可能な構成要素90に伝達できる往復運動的および/または回転(かきまぜを含む)動作を生成することが可能である任意のシステムまたはアセンブリを含んでもよい。したがって駆動システム120は、モータと、駆動構成要素100と連通する伝達装置または連係装置(図示せず)とを含んでもよい。駆動システム120の設計に依存して、駆動構成要素100を伝達装置または連係装置の一部として考えてもよい。往復運動および/または回転動作は、回転方向が繰り返し変化可能な可逆モータにより、またはモータが生じる回転を往復運動および/または回転に変換するように設計された伝達装置または連係装置により生成されてもよい。たとえば駆動システム120は、線形往復動作を生成するクランク機構に結合されたDCモータを含んでもよい。駆動構成要素100がモータと連通する伝達装置または連係装置の構成要素の他の例として、ラックピニオンの構成、ベルトまたは鎖とプーリとの構成、レールに案内される台車またはステージなどがあげられる。一般的にラボラトリーオートメーションまたはロボット工学の分野における当業者にとって多様な駆動システム120は既知であり、したがって駆動システム120は本願明細書においてさらなる説明を必要とするものではない。
【0039】
図2を参照にして前述したように操作時には、可動構成要素60を、被試験試料を含んだ試料担体14に組立てて試験管20を準備する。容器30は所望のレベルまで選択した媒体16で満たされる。次いで可動構成要素60を容器30内に挿入し、ふた部材40を用いて容器30を密封する。ピックアップ構成要素110が設けられふた部材40と一体化されている場合には、可動構成要素60を容器30に挿入するのにふた部材40を用いてもよい。組立の前後および組立中に試験管20は、駆動構成要素100が作動されうる適切な試験サイトに取り付けられる。駆動構成要素100の作動により可動構成要素60が動作し、これにより試料担体14および試料担体により運ばれる試料材料が、容器30の媒体16を介する往復運動または回転により運動を生じる。密封が所望される工程では、容器30は攪拌中密封されたままの状態で、容器30からのいかなる内容物の損失をも防止される。
【0040】
容器30に非接触作動の手段により運動や攪拌を生じることにより得られる有用性および利点は、完全密封のふた部材40が所望されない場合や必要とされない場合の適用にも拡大できることを理解されたい。したがって本願明細書での開示は、前述された態様で容器30を密封することなく非接触作動がなされうる実施形態および方法をも含むことを理解されるであろう。
【0041】
図4を参照すると、全体として200で示される他の実施形態にしたがった試料試験装置が図示されている。この実施形態では同時に操作される複数の試験管ユニット20において複数の試験工程がそれぞれ個々に行うことができる。試料試験装置200は、種々の構成要素を支持するための、全体として202で示される枠部を含んでもよい。実施形態には試料試験装置200が、全体として210で示される試験管保持台を含むものもある。試験管保持台210は、1または複数の試験管ユニット20を配置でき、好ましくは、安定した繰り返し可能な態様で、かつ上述した駆動システム120および1または複数の駆動構成要素100と使用上の互換性がある、試験サイトの配列を画定するのに適切な任意の構造を含んでもよい。たとえば試験管保持台210は、1または複数の試験管プレートを含んでもよい。図5に最もよく示される例示的な実施形態では、試験管保持台210は、中を試験管ユニット20が延びる開口部222Aを備えた上部試験管プレート222を含む。試験管保持台210はまた、上部の試験管プレート222の下方に位置し、試験管ユニット20の位置を調整するための開口部224Aを有する中間の試験管プレート224と、試験管保持台210に載置される各試験管ユニット20の底部32を支持するための底部プレート226と、を含む。
【0042】
図4に示されるように、試料試験装置200の枠部202は、試験管保持台210および試験管ユニット20が配置される温度調節部230を支持する。温度調節部230は、公示された特定のUSP指針に従って進める場合など所望であれば、試験管ユニット20内の媒体の温度を調節するのに適切な任意の構造を含んでもよい。たとえば温度調節部230は、試験管ユニット20を浸漬する温度制御された水槽を含んでもよい。また、水槽を設ける代わりに直接、個々の試験管ユニット20を加熱するための手段を設けてもよい。溶解試験中の温度調節技術は一般に当業者には既知である。
【0043】
さらに図4に示されているように試料試験装置200は、試験管保持台210上に枠部202で支持された制御頭部240を含んでもよい。制御頭部240には一般に、利用者入力、読み取り、および、より大きい他の分析システムモジュールとの接続部(インターフェース)を含む、自動化および試験工程の1または複数の態様を可能にする任意の数の機能を設けることができる。制御頭部240はまた、先に概要を説明した駆動システム120を内蔵して使用することも可能である。
【0044】
有利な実施態様において、単一の駆動システム120により試料試験装置200内で操作される試験管ユニット20の全ての試料を攪拌することができる。図4で示されるように全体として250で示される連係装置アセンブリは、駆動システム120と駆動構成要素100との間の接続部として機能する。連係装置アセンブリ250は一般に、この接続を可能にするために必要であれば、任意適切に配置された1または複数の棒、ピストン、または他の連係部材252を含んでもよい。図5に示されるように1または複数の連係部材252は駆動構成要素100の支持部材104に結合されてもよい。往復の実施形態において、1または複数の連係部材252の往復運動により、矢印Dで示されるような外部駆動構成要素100の往復運動が可能になる。
【0045】
図4および図5で示されるように、駆動構成要素100は攪拌平台などの単一の支持部材104を含んでもよい。支持部材104は図3に関連して先に説明した複数の試験サイトを、対応する試験管ユニット20のそれぞれに1または複数の外部磁石(たとえば図3の外部磁石102A、102B、102C)を設けるように構成されてもよい。図5に示すように支持部材104の開口部104Aは、単一の支持部材104が試験管ユニット20の軸に概ね平行に往復運動するように、試験管用プレート222および224と軸方向に位置調整される。他の実施形態においてたとえば試験管ユニット20は独立したそれぞれの駆動構成要素100と関連され、駆動構成要素100はそれぞれ外部磁石102、または一組の外部磁石102A、102B、102Cを含んでもよい。
【0046】
操作時には上述されたように1または複数の試験管ユニット20を準備し組立て、試験管ユニット20を試験管保持台210に挿入する。駆動システム120が操作され、単数または複数の駆動構成要素100を往復運動させる。各外部磁石102(図1)または一組の外部磁石102A、102B、102C(図3)は駆動構成要素100の支持部材104と往復運動する。したがって、操作され、上述された可動構成要素60(図1および図2)を含む全ての試験管ユニット20では、駆動構成要素100の往復運動が可動構成要素60を駆動し、(図1の矢印Bに示されるように)試験管ユニット20内で同様に往復運動させ、これにより対応する試料担体14全てを同時に攪拌する。試料担体14をそれぞれの容器30から取り出すためには、本開示の実施形態に示すように、駆動システム120を操作またはプログラムして、駆動構成要素100を上方に作動して各可動構成要素60を各ピックアップ構成要素110(図1)と結合関係にしてもよい。
【0047】
外部磁石102(図1)が所定の位置に固定され試験管ユニット20自体が往復運動する他の実施形態において、試験管保持台210のプレートのうちの一枚に試験管ユニット20と係合するための手段を設け、類似の態様で連係装置アセンブリ250と結合してもよい。
図6には全体として300で示される他の実施形態が示されており、ここで試料試験は広範囲の寸法の試料担体14を用いて最適化されてもよい。全体として320で示される試験管は、径が減じられた、または段差がつけられた輪郭を有する容器330を含む。容器330は、少なくとも2つの異なる第1の容器部330Aと第2の容器部330Bとを含む。第1の容器部330Aおよび第2の容器部330Bは軸方向の長さおよび/または内径が異なっており、このために内部容量も異なっている。容器330で用いられる媒体は一般に第2の容器部330Bのみを満たす。試料担体14は、試料担体14が媒体の入った第2の容器部330Bを介してのみ攪拌されるように、可動構成要素60の試料担体支持部材64に取り付けられる。第2の容器部330Bは、特定の被試験試料担体14に最適の媒体量を与える寸法になされている。溶解試験と関連して最適の媒体容量とは、溶解曲線を生成するために用いられる光学データを得る際に、最も高い分解能をもたらす容量をさす。媒体容量は一般に所与の寸法の試料担体14を試験することが可能な最小の容量をさす。
【0048】
図6はまた、全体として420で示される他の試験管を示し、容量の異なる第1の容器部430Aと第2の容器部430Bとを備える容器430を同様に含む。比較すると容器430の第2の容器部430Bは、容器330の第2の容器部330Bより大きくなっており、これにより寸法のより大きい試料担体14を収容し、そのための試験条件を最適化する。しかしながら、可能な限り多くの他の構成要素(たとえば、ふた部材40、駆動可能な構成要素90、駆動構成要素100、試験管保持台210など)の寸法および特性を標準化するために、容器430の第1の容器部430Aの寸法は容器330の第1の容器部330Aの寸法と同じ寸法になされてもよい。したがって試験管420および試験管320はいずれも、改良または調節を全く行なわないか、最小限に行なうだけで同じ装置内で操作することができる。
【0049】
前述のように可動構成要素60の運動により、実行される試験において適切とされる、または所望される攪拌態様に依存して、容器30の長手軸に沿った直線往復運動および/または長手軸を中心とした回転を構成することができる。図3を参照すると実施形態においては、可動構成要素60が回転することで、単数または複数の回転外部磁石102A、102B、102Cが磁気的に作動され、結果として得られる磁界の方位の変化の手段により内部磁石92を回転させることができるものもある。図3の矢印Eに示されるように、回転はフルサイクル(360度)を繰り返す一方向性のものであっても、部分的なサイクルで交互方向性(たとえば時計回り/反時計回り)を示すものであってもよい。
【0050】
単数または複数の外部磁石102A、102B、102Cの回転は、公知の、または今後開発される任意適切な駆動手段により作動および制御されてもよい。いかなる態様においても対象範囲を限定されることを意図するものではないが、一例として駆動手段は、容器30(図3)を中心として同軸状に配置され、駆動構成要素100の支持部材104により支持される環状の回転可能な部材(図示せず)を含む。単数または複数の外部磁石102A、102B、102Cは、回転可能な部材に取り付けられ、この回転可能な部材とともに回転する。回転可能な部材は、プーリまたは、はめ歯様の特性を有してもよく、ベルトまたは鎖により駆動されてもよい。また回転可能な部材は、駆動システム120(図1および図4)に結合された駆動ギアと噛合する歯を含んでもよい。
【0051】
図7を参照すると他の実施形態が開示されており、容器30(または図6の容器330もしくは430)は底部32に開口部502を有する。底部開口部502は多くの機能を有するが、特に試料材料の溶解前、溶解中、および溶解後の液体または器具のための入り口および/または出口として機能する。たとえば底部開口部502は、容器30に媒体16(図1)を満たすため、試料を容器30から取り出すため、温度プローブへのアクセス、洗浄のため容器30内に洗浄流体を入れるため、緩衝液または試薬を容器30内に入れるため、媒体16の再充填や補充のため、光学ベースのデータ他を得るために光学プローブまたは光パイプへのアクセスを得るためなどの場合に用いることができる。これらまたは任意の他の目的のため、底部開口部502を画定する端部領域面と密着接触してふた部材504を嵌合することにより底部開口部502を選択的に開閉してもよい。またふた部材504は、流体の取り扱いに適切な、研究室の品質を有する導管506を受け入れるようになされた孔との嵌合部として形成されてもよい。導管506は、ふた部材504をルアー型嵌合部を有するものとすることにより、または、エポキシ樹脂などの適切な接着材料によりふた部材504に取付けることにより、取り外し可能になされてもよい。当業者なら理解されるように、導管506は密閉された流体システムの一部であってもよく、したがって、所望される時間内は容器30を完全に密封するふた部材40の性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0052】
底部開口部502の機能または底部開口部502によりなされうる動作は従来、容器30の上部から行なわれた。実際、実施形態において上部開口部34に嵌合する前述のふた部材40(図1)には1または複数の導管、プローブなどが設けられてもよく、かかる実施形態は本願明細書に開示される範囲に含まれる。しかしながら、本実施形態において底部開口部502を用いることにより、ふた部材40が設けられた場合には、このふた部材40を、主目的である蒸発損失防止について最適化することができる。
【0053】
本願明細書に説明された任意の実施形態においては、磁石を用いて非接触作動による運動を可能にするが、磁石とは永久磁石、電磁石、またはその両方を含むものであってもよいことを理解されるであろう。したがって本願の開示中に使用される「磁石」「磁気的」「磁気的結合」などの用語は、永久磁石および/または電磁の使用を含むものである。いいかえると、本願明細書に使用される用語「磁石」は永久磁石ダイポールを有することであってもよく、または外部の磁界もしくは電流の印加に反応することで磁気を示す材料であってもよい。たとえば外部磁石102A、102B、102C(図3)および/またはピックアップ磁石112(図1)が電磁石として設けられ、内部磁石92(図1)との選択的な磁気結合を可能にしてもよい。電磁石が設けられる実施形態においては、導線を介し適切な電流または電圧源に連通して電磁石を設けることができ、かつ、たとえば可動構成要素60を制御するのに十分な強さの磁界を生成するためにコイル、ソレノイドなどを使用する必要があるということは当業者なら理解されるであろう。
【0054】
電磁石の使用により機能上の利点が得られる。たとえば電磁石として設けられるとピックアップ磁石112は、ふた部材40を使用して可動構成要素60の取り付けまたは取り外しを所望する場合にのみ通電され、それ以外の場合には非通電状態とされる。可動構成要素60が容器30内部に取り付けられた後に、ピックアップ磁石112への電流を切断することなどによりピックアップ磁石112を非通電状態にして、可動構成要素60のピックアップ磁石112との結合を解除してもよい。これにより可動構成要素60は容器30の奥に投下され、単数もしくは複数の外部磁石102A、102B、102Cに印加された電流、または単数もしくは複数の外部磁石102A、102B、102Cの材料における永久磁石ダイポールの存在のいずれかにより、単数もしくは複数の外部磁石102A、102B、102Cと磁気結合されうる適切な操作位置に配置される。さらに、単数または複数の外部磁石102A、102B、102Cが電磁石である場合、単数または複数の外部磁石102A、102B、102Cと可動構成要素60との間の磁気結合が選択的に確立されうる。
【0055】
本発明の種々の態様および詳細は、本発明の範囲を逸脱することなく変更されてもよいことを理解されたい。さらにこれまでの記述は単に説明を目的とするものであり、特許請求の範囲で定義される本発明を限定することを目的とするものではないことも重ねて理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本願明細書に開示される実施形態にしたがった、試験管ユニットと外部駆動構成要素とを含む試料試験装置の正面断面図である。
【図2】図1Aに示された試験管ユニットの分解図である。
【図3】本開示実施形態にしたがった、試験管ユニットの内部と、外部駆動構成要素とを示す上面(平面)図である。
【図4】他の実施形態にしたがった、1または複数の試験管ユニットを操作するようになされた試料試験装置を示す前面図である。
【図5】1または複数の試験管ユニットを配置することができる図4に示される試料試験装置の一部を示す斜視図である。
【図6】1または複数の試験管ユニットが段差がつけられた輪郭を有する一実施形態にしたがった試料試験装置の一部を示す正面断面図である。
【図7】他の実施形態にしたがった試験管ユニットの底部を示す正面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ試験中の試料担体を運動させるための装置であって、
当該装置は前記試料担体を容器内に支持するための可動構成要素を含み、
前記可動構成要素は、駆動源と非接触結合することにより作動可能な、駆動可能な構成要素を含む装置。
【請求項2】
前記駆動可能な構成要素は、前記駆動源と磁気結合するための磁石を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動構成要素は、前記試料担体を前記可動構成要素に固定するための支持部材を含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記支持部材は、本体と、前記本体に取り付けられた第1の支持部材部分および第2の支持部材部分であって、前記試料担体をこの第1の支持部材部分と第2の支持部材部分との間に固定するために軸方向に離間された第1の支持部材部分および第2の支持部材部分と、を含む請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の支持部材部分および前記第2の支持部材部分のうちの少なくとも一方は、前記第1の支持部材部分と前記第2の支持部材部分との間の空間を変化させるために、前記本体に沿って軸方向に調節可能である請求項4に記載の装置。
【請求項6】
容器を含み、
前記可動構成要素が前記容器内に配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記試料担体の運動中に前記容器からの内容物の損失を実質的に防止するために前記容器を密封するふた部材を含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記容器内に配置され、前記可動構成要素の取り扱いを容易にするために前記可動構成要素に結合されたピックアップ構成要素を含む請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記容器を密封し、前記ピックアップ構成要素が取り付けられているふた部材を含む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ピックアップ構成要素は、前記可動構成要素を磁気結合するための磁石を含む請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記容器は、前記駆動可能な構成要素を収容するための第1の部分容量を有する第1の容器部と、前記試料担体を収容するための第2の部分容量であって前記第1の部分容量とは異なる第2の部分容量を有する第2の容器部と、を含む請求項6に記載の装置。
【請求項12】
前記駆動源は、前記可動構成要素と磁気結合するための磁石を含む請求項1に記載の装置。
【請求項13】
試料担体の攪拌方法であって、
(a)媒体内に放出されうる材料を運搬する試料担体を支持する可動構成要素を容器内に設けることと、
(b)前記可動構成要素と非接触関係で配置された駆動源に前記可動構成要素を結合することにより、前記可動構成要素が前記容器内で動くように作動することと、を含む試料担体の攪拌方法。
【請求項14】
作動は、前記可動構成要素を前記容器の軸に沿って往復させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
作動は、前記可動構成要素を前記容器の軸を中心に回転させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
作動は、前記可動構成要素を前記駆動源に磁気結合させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記容器を密封し、前記容器を密封状態に維持しながら、前記可動構成要素を作動させることで前記容器からの内容物の損失を実質的に防止することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記可動構成要素をピックアップ構成要素に結合して前記試料担体の取り扱いを容易にすることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記可動構成要素の前記ピックアップ構成要素との結合は、前記可動構成要素と前記ピックアップ構成要素との間に磁気結合を確立することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記容器を密封するようになされ、前記ピックアップ構成要素が取り付けられたふた部材を取り扱うことにより、前記試料担体を操作することを含む請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534000(P2007−534000A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509619(P2007−509619)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/013568
【国際公開番号】WO2005/105277
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】