説明

インライン型蒸着装置

【課題】複数の蒸着材料を被蒸着体に共蒸着するインライン型蒸着装置において、膜厚の蒸着膜を均一に製膜し、信頼性の高い被蒸着体を生産する。
【解決手段】蒸着装置1は、蒸着材料20,30を夫々蒸発させる蒸発源2,3と、蒸発源2,3から被蒸着体4へ向かう蒸着材料20,30の流路を囲うように配置されるホットウォール5と、を備える。蒸発源2,3は、蒸着材料20,30を被蒸着体4側へ放出する放出口22,31を有し、蒸発温度が高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3の放出口32がホットウォール5の上端縁よりも上方に設けられている。この構成によれば、蒸発した蒸着材料30がホットウォール5に付着することなく被蒸着体4に蒸着される。従って、蒸着材料30がホットウォール5によって再蒸発しながら被蒸着体4に付着することがなく、膜厚の蒸着膜を均一に製膜でき、信頼性の高い被蒸着体4を生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被蒸着体に蒸着材料を蒸着させて、薄膜を形成するインライン型蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インライン型蒸着装置は、チャンバ室内に、蒸着材料を含む蒸発源が配置されると共に、基板等の被蒸着体が一定速度で搬送され、減圧状態で蒸発源を加熱して蒸着材料を蒸発させ、蒸着材料を被蒸着体の表面に堆積させることで、薄膜を形成するものである。
【0003】
この種のものとして、蒸発した蒸着材料を蒸発源から被蒸着体へ導くと共に、チャンバ室の室壁への蒸着材料の付着を抑制するホットウォールが設けられたインライン型蒸着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のインライン型蒸着装置の構成を、図6に示す。蒸着装置101は、蒸発温度が異なる2種の蒸着材料120,130を蒸発させる蒸発源102,103と、蒸発源102,103から基板等の被蒸着体104へ向かう蒸着材料120,130の流路を囲うように配置されたホットウォール105と、を備える。蒸発源102,103及びホットウォール105には、それらを加熱するヒータ123,133,153が設けられている。ここでは、蒸着材料130の方が蒸着材料120よりも蒸着温度が高いものとする。ホットウォール105は、蒸着材料120,130が蒸発する温度に加熱され、ホットウォール105に蒸着材料120,130が付着することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−317262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記蒸着装置101において、蒸着材料120,130が互いに蒸発温度が異なっているので、相対的に蒸発温度の高い蒸着材料130が、ホットウォール105の、例えば、図中の破線で示す領域に付着し易くなる。このとき、ホットウォール105に付着した蒸着材料130が微量に再蒸発しながら被蒸着体104に付着してしまい、所望の膜厚の蒸着膜を製膜できないことがある。ホットウォール105全体を、蒸発温度が高い蒸着材料130よりも十分に高い温度に加熱すれば、ホットウォール105への蒸着材料130の付着を抑制することができる。ところが、この場合、相対的に蒸着温度が低い蒸着材料120がホットウォール105の熱で分解したり変性する虞があり、蒸着材料120,130の蒸発温度の差が大きい場合、ホットウォール105の温度を十分に高くすることができない。一般に、有機材料は金属材料に比べて蒸着温度が低く、熱変性し易いので、これらを共蒸着させる場合に上述した問題が生じることがある。また、ホットウォール105の温度が高いと、被蒸着体104がホットウォール105からの輻射熱に曝され易くなるので、例えば、被蒸着体104に蒸着された蒸着材料120が局所的に再蒸発して、蒸着膜の厚みが不均一になることがある。その結果、被蒸着体104に製膜された薄膜の膜質が劣化し、この被蒸着体104を用いたデバイスの性能を低下させる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、被蒸着体に対して複数の蒸着材料を共蒸着させて、正確な膜厚の蒸着膜を均一に製膜することができ、信頼性の高い被蒸着体を効率良く生産することができるインライン型蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、蒸発温度が異なる複数の蒸着材料を被蒸着体上に共蒸着するインライン型蒸着装置であって、前記複数の蒸着材料を夫々蒸発させる複数の蒸発源と、前記蒸発源から前記被蒸着体へ向かう前記蒸着材料の流路を囲うように配置されると共に前記蒸着材料が蒸発する温度に加熱されるホットウォールと、を備え、前記蒸発源は、蒸発した前記蒸着材料を前記被蒸着体側へ放出する放出口を有し、前記複数の蒸着材料のうち蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる蒸発源の放出口が前記ホットウォールの上端縁よりも上方に設けられており、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料を蒸発させる蒸発源の放出口が前記ホットウォールの上端縁よりも下方に設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記インライン型蒸着装置において、蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口が、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口よりも、前記被蒸着体の搬送方向の下流側に設けられていることが好ましい。
【0009】
上記インライン型蒸着装置において、蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口が複数設けられていることが好ましい。
【0010】
上記インライン型蒸着装置において、蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源は、前記蒸着材料が前記放出口に至る経路にバルブ機構が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記インライン型蒸着装置において、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料が、有機材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、相対的に蒸発温度が高い蒸着材料を蒸発させる蒸発源の放出口が、ホットウォールの上端縁よりも上方に設けられているので、この放出口から放出された蒸着材料はホットウォールに付着することなく、被蒸着体に蒸着される。従って、蒸発温度が高い蒸着材料がホットウォールによって再蒸発しながら被蒸着体に付着することがなく、膜厚の蒸着膜を均一に製膜でき、信頼性の高い被蒸着体を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るインライン型蒸着装置における被蒸着体の搬送方向に沿う側断面図。
【図2】(a)は同装置の上面図、(b)は(a)のA−A’線側断面。
【図3】(a)は上記実施形態の変形例に係るインライン型蒸着装置の上面図、(b)は(a)のB−B’線側断面図。
【図4】(a)は上記実施形態の別の変形例に係るインライン型蒸着装置の上面図、(b)は(a)のA−A’線側断面図。
【図5】(a)は上記実施形態の更に別の変形例に係るインライン型蒸着装置の上面図、(b)は(a)のA−A’線側断面図。
【図6】従来のインライン型蒸着装置の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態に係るインライン型蒸着装置(以下、蒸着装置という)について、図1及び図2(a)(b)を参照して説明する。蒸着装置1は、蒸発温度が異なる2種の蒸着材料20,30を夫々蒸発させる蒸発源2,3と、蒸発源2,3から基板等の被蒸着体4へ向かう蒸着材料20,30の流路を囲うように配置されたホットウォール5と、を備える。蒸着装置1は、室内を減圧状態にすることができるチャンバ室(不図示)内に配置されている。また、このチャンバ室には、被蒸着体4を蒸発源2,3上に一定速度で持続的に搬送する搬送機構(不図示)が配置されている。この搬送機構は、被蒸着体4を、図1及び図2(a)の例においては、図面の左側から右側へ搬送し、図2(b)の例においては、図面の手前から奥方へ搬送する。
【0015】
本例において、蒸着材料20,30のうち、蒸着材料30の蒸発温度が、蒸着材料20の蒸着温度よりも相対的に高いものとする。蒸着温度が高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3が、蒸着材料20を蒸発させる蒸発源2よりも、被蒸着体4の搬送方向の下流側に配置されている。また、蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3は、被蒸着体4の搬送方向と直交する方向に2箇所配置されている。なお、図1においては、一方の蒸発源3の構成のみを示す。
【0016】
ホットウォール5は、その上端縁が開口部51を形成するように、蒸発源2,3の四方に配置される。このとき、開口部51は、被蒸着体4の搬送方向の開口が長くなるように形成される。なお、図2(a)では被蒸着体4等の構成の図示を省略している。また、ホットウォール5等の上端縁にハッチングを入れている。後述する上面図においても同様である。被蒸着体4は、開口部51の上方位置に搬送される(図1参照)。ホットウォール5の下端に底板52が配置され、この底板52を貫通するように、蒸発源2,3が配置されている。ホットウォール5の外周には、シーズヒータ等から構成されるホットウォールヒータ(以下、ヒータ53)が巻き付けられている。ヒータ53は、電源54に接続されて給電を受けることにより、ホットウォール5内を加熱する。また、底板52には、ホットウォール5内の温度を測定するための温度センサ55が設けられ、温度センサ55の測定情報は、CPUやメモリ等から構成されるホットウォール温度制御器56に出力される。ホットウォール温度制御器56は、温度センサ55の測定情報を受けて電源54からヒータ53に供給される電力量を制御することにより、ホットウォール5内の温度を調節する。なお、図2(b)では電源54や温度センサ55等の構成の図示を省略している。
【0017】
蒸発源2,3は、堆塙等の加熱容器21,31内に蒸着材料20,30が充填されたものである。加熱容器21,31はいずれも筒状部材であり、その上端に蒸発した蒸着材料2を被蒸着体4側へ放出する放出口22,32が形成されている。蒸発源2の加熱容器21は、底板52から僅かに被蒸着体4方向へ突設されており、蒸発源2の放出口22が、ホットウォール5の上端縁(開口部51)より下方であって、底板52に近い位置に設けられている。一方、蒸発源3の加熱容器31は、被蒸着体4方向へ更に延設されており、蒸発源3の放出口32は、ホットウォール5の上端縁よりも上方であって、被蒸着体4に近い位置に設けられている。蒸発源3の放出口32と被蒸着体4との間隔は、蒸発した蒸着材料30が少なくとも被蒸着体4の表面積の半分以上の面積に拡散する程度に離間している。
【0018】
蒸着材料20,30には、任意の材料が用いられるが、相対的に蒸発温度が低い蒸着材料20として、例えば、有機EL素子の発光層や電子注入層等に用いられる有機半導体材料等の有機材料が挙げられる。また、相対的に蒸発温度が高い蒸着材料30としては、例えば、上記有機材料と共蒸着されるリチウム等の金属材料が挙げられる。
【0019】
加熱容器21,31の筒状部には、蒸発源ヒータ23,33が配されている。蒸発源ヒータ23,33は、電源24,34に接続されて給電されることにより、加熱容器21,31自体及びこれに充填された蒸着材料20,30を加熱する。蒸発源ヒータ23,33は、加熱容器21,31の周囲に巻きつけるように配置されていてもよく、また、加熱容器21,31の筒状部に埋め込まれていてもよい。相対的に蒸発温度が高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源ヒータ33は、蒸着材料30の充填部と蒸発した蒸着材料30の流路部とを夫々個別に温度制御できるように構成されていてもよい。
【0020】
相対的に蒸発温度が高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3は、蒸着材料30が放出口32に至る経路にバルブ機構37が設けられている。このバルブ機構37は、蒸着材料30の流路の開口面積を調整することができ、蒸発源3から被蒸着体4へ向かう蒸着材料30の流量を制御することができる。なお、同様のバルブ機構が、相対的に蒸発温度が低い蒸着材料20を蒸発させる蒸発源2に設けられていてもよい(不図示)。
【0021】
加熱容器21,31には、各々の温度を測定するための温度計25,35が設けられ、温度計25,35の測定情報は、蒸発源温度制御器26,36に出力される。これらの蒸発源温度制御器26,36は、蒸着速度制御器6に接続される。蒸着速度制御器6は、電源24,34から蒸発源ヒータ23,33に供給する電力量を制御することにより、加熱容器21,31内の温度を調節することにより蒸着速度を制御する。
【0022】
このように構成された蒸着装置1を用いて被蒸着体4に各蒸着材料20,30から成る共蒸着膜を製膜する手順を説明する。まず、各蒸発源2,3の加熱容器21,31に夫々蒸着材料20,30が充填される。そして、被蒸着体4が一定速度で搬送されると共にチャンバ室内が減圧される。次に、各蒸発源2,3の蒸発源ヒータ23,33を発熱させて、各蒸着材料20,30を加熱すると共に、ホットウォール5が、ヒータ53によって蒸着材料20を蒸発させ、且つ分解等させない程度の温度に加熱される。蒸発源2の蒸発源ヒータ23による加熱によって、蒸着材料20が蒸発すると、蒸発した蒸着材料20は、ホットウォール5で囲われた空間に充満しながら開口部51方向へと進行し、搬送された被蒸着体4の表面に付着する。また、蒸発源3の蒸発源ヒータ33による加熱によって蒸着材料30が蒸発すると、蒸発した蒸着材料30は、延設された加熱容器31内に充填され、バルブ機構37が開状態とされたときに放出口32から放出される。
【0023】
また、蒸着装置1においては、蒸発源2が被蒸着体4の搬送方向の上流側に、蒸発源3が被蒸着体4の搬送方向の下流側に配置されている。従って、ホットウォール5の開口部51のうち、被蒸着体4の搬送方向の上流側において相対的に蒸着材料20の濃度が高くなり、下流側において相対的に蒸着材料30の濃度が高くなる。そのため、ホットウォール5の開口部51上に搬送された被蒸着体4には、先に蒸着材料20が付着し、この蒸着材料20をホスト材料として蒸着材料30がドープされるようにして蒸着材料20,30の共蒸着がなされる。また、バルブ機構37により蒸発源3から被蒸着体4へ向かう蒸着材料30の流量を制御することにより、蒸着材料20に対するドープ量を調整することができる。
【0024】
この構成によれば、相対的に蒸発温度が高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3の放出口32が、ホットウォール5の上端縁よりも上方に設けられているので、この放出口32から放出された蒸着材料30はホットウォール5に付着することなく、被蒸着体4に蒸着される。そのため、蒸着材料30がホットウォール5によって微量に再蒸発しながら被蒸着体4に付着することがなく、所望の膜厚の蒸着膜を製膜することができる。また、ホットウォール5全体を、蒸着材料30よりも十分に高い温度に加熱する必要もないので、相対的に蒸着温度が低い蒸着材料20が分解したり熱変性することを抑制することができる。従って、例えば、蒸着材料20を有機材料、蒸着材料30を金属材料としたとき、金属材料に比べて蒸着温度が低く熱変性し易い有機材料と、金属材料とを安定的に共蒸着させることができる。
【0025】
また、被蒸着体4がホットウォール5からの輻射熱に曝され難くなるので、例えば、被蒸着体4に蒸着された蒸着材料20が局所的に再蒸発して、蒸着膜の厚みが不均一になることもない。その結果、被蒸着体4に対して複数の蒸着材料20,30を共蒸着させて、正確な膜厚の蒸着膜を均一に製膜することができ、信頼性の高い被蒸着体4を効率良く生産することができる。
【0026】
また、本実施形態においては、蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3を、被蒸着体4の搬送方向と直交する方向に2箇所に配置している。蒸発源3の放出口32が被蒸着体4に近接していると、蒸発した蒸着材料30が被蒸着体4の隅々まで拡散せず、放出口32近傍において蒸着材料30の濃度が高くなり易い。ところが、放出口32と被蒸着体4との距離を大きくすると、ホットウォール5と被蒸着体4との距離が離れてしまい、蒸着材料20が拡散し過ぎて被蒸着体4への蒸着効率が悪くなる。これに対して、上記構成によれば、2箇所の蒸発源3から蒸着材料30が放出されるので、被蒸着体4全体に均一な濃度で蒸着材料30を付着させることができる。
【0027】
次に、本実施形態の変形例に係る蒸着装置について、図3(a)(b)を参照して説明する。この変形例に係る蒸着装置1は、蒸発温度が相対的に高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3の放出口32が複数、図例では2つ設けられている。加熱容器31は、蒸着材料30の充填部が一箇所であり、この充填部からの蒸着材料30の流路部が二股に分岐されている。
【0028】
この構成によれば、放出口32が2つあるので、上記実施形態と同様に被蒸着体4の広い範囲に均一な濃度で蒸着材料30を付着させることができる。また、加熱容器31における蒸着材料30の充填部が一箇所なので、蒸発源ヒータ33及び温度センサ35等は一系統あればよく、蒸発源3の温度管理を容易にすることができる。
【0029】
次に、本実施形態の別の変形例に係る蒸着装置について、図4(a)(b)及び図5(a)(b)を参照して説明する。図4(a)(b)に示す変形例では、蒸発温度が相対的に高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3が、ホットウォール5の外側に設けられている。また、図5(a)(b)に示す変形例では、ホットウォール5が、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料20を蒸発させる蒸発源2の近傍に設けられ、蒸発源3の近傍には設けられていない。
【0030】
これらの構成においても、蒸発した蒸着材料30はホットウォール5に付着することなく、被蒸着体4に蒸着される。従って、上記実施形態と同様に、被蒸着体4に対して正確な膜厚の蒸着膜を均一に製膜することができ、信頼性の高い被蒸着体4を効率良く生産することができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。上記実施形態及び各変形例では、蒸発温度が異なる2種の蒸着材料20,30を共蒸着させるための構成を示したが、蒸着材料は3種以上で、各々に対応するように複数の蒸発源が設けられていてもよい。このとき、最も蒸着温度が高い材料を蒸発させる蒸発源の放出口が、被蒸着体に近い位置に設けられる。この場合、蒸着温度の高い順に対応するように、各蒸発源の放出口の高さが異なるように構成してもよい。また、上記実施形態及び各変形例では、蒸着温度の高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3が、他方の蒸発源2よりも被蒸着体4の下流側に配置された構成を示したが、少なくとも蒸発源3の放出口32が蒸発源2の放出口22よりも下流側に設けられていればよい。つまり、蒸発源2,3の加熱容器21,22の蒸着材料20,30を充填する充填部自体は、例えば、ホットウォール5で囲われた領域の中央部にあり、蒸発源2の流路部が被蒸着体4の上流方向へ延設され、蒸発源3の流路部が下流側へ延設された構成であってもよい。
【0032】
また、例えば、上記実施形態において、ホットウォール5の開口部51に、蒸着材料20の放出濃度を制御するために、複数の孔部が形成さえた補正板(不図示)を設けてもよい。更に、ホットウォール5と被蒸着体4との間に、ホットウォール5の輻射熱から被蒸着体4を保護するための熱拡散板(不図示)が設けられてもよい。また、この熱拡散板が、蒸着温度の高い蒸着材料30を蒸発させる蒸発源3の放出口32に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 蒸着装置(インライン型蒸着装置)
2 蒸発源
20 相対的に蒸発温度が低い蒸着材料(有機材料)
22 放出口
3 蒸発源
20 相対的に蒸発温度が高い蒸着材料
32 放出口
37 バルブ機構
4 被蒸着体
5 ホットウォール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発温度が異なる複数の蒸着材料を被蒸着体上に共蒸着するインライン型蒸着装置であって、
前記複数の蒸着材料を夫々蒸発させる複数の蒸発源と、前記蒸発源から前記被蒸着体へ向かう前記蒸着材料の流路を囲うように配置されると共に前記蒸着材料が蒸発する温度に加熱されるホットウォールと、を備え、
前記蒸発源は、蒸発した前記蒸着材料を前記被蒸着体側へ放出する放出口を有し、
前記複数の蒸着材料のうち蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる蒸発源の放出口が前記ホットウォールの上端縁よりも上方に設けられており、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料を蒸発させる蒸発源の放出口が前記ホットウォールの上端縁よりも下方に設けられていることを特徴とするインライン型蒸着装置。
【請求項2】
蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口が、蒸発温度が相対的に低い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口よりも、前記被蒸着体の搬送方向の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインライン型蒸着装置。
【請求項3】
蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源の放出口が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインライン型蒸着装置。
【請求項4】
蒸発温度が相対的に高い蒸着材料を蒸発させる前記蒸発源は、前記蒸着材料が前記放出口に至る経路にバルブ機構が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のインライン型蒸着装置。
【請求項5】
蒸発温度が相対的に低い蒸着材料が、有機材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のインライン型蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108137(P2013−108137A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254350(P2011−254350)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】