説明

ウインチ用保護カバーおよびウインチ

【課題】 回転中のドラムへの接触を確実に防止する。
【解決手段】 ドラム14を覆い開閉自在なドラムカバー2と、ドラムカバー2の開閉に連動し、操作レバー15の操作を制限可能なレバー制限体3と、を備え、ドラムカバー2が閉じた状態ではレバー制限体3による制限が解除され、操作レバー15がニュートラル状態にのみドラムカバー2が開き、かつドラムカバー2が開いた状態ではレバー制限体3によって操作レバー15の操作が制限されるように、ドラムカバー2とレバー制限体3とを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウインチに取り付けられるウインチ用保護カバーおよび、保護カバーを備えるウインチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔工事や架線工事などにおいて、電線・送電線を延線、緊線したり工具類を上げ下げしたりする場合に、ウインチを使用している(例えば、特許文献1参照。)。例えば、電線を鉄塔間に架設する場合、電線の一端部にワイヤロープを接続し、地面に設置したウインチでワイヤロープを巻き取ることで、電線を牽引、架設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−282984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウインチを使用しての作業中に、ワイヤロープが絡まるなどの不具合が生じる場合がある。一方、ウインチのドラム(回転部)には、カバーが設けられていない。このため、ワイヤロープが絡まった場合などに、回転中のドラムに手を触れたり、誤操作などによりドラムに手を挟まれたりするおそれがある。また、ワイヤロープが絡まった場合などに、ドラムの回転を一旦止めてワイヤロープの絡まりなどを直せばよいが、作業効率などを優先させて、ドラムでワイヤロープを巻き取りながら絡まりなどを直すおそれがある。
【0005】
そこでこの発明は、回転中のドラムへの接触を確実に防止することが可能なウインチ用保護カバーおよびウインチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転してロープを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転を制御する操作レバーとを備え、前記操作レバーがニュートラル状態で前記ドラムの回転が停止するウインチに取り付けられるウインチ用保護カバーであり、前記ドラムを覆い、開閉自在なドラムカバーと、前記ドラムカバーの開閉に連動し、前記操作レバーの操作を制限可能なレバー制限手段と、を備え、前記ドラムカバーが閉じた状態では前記レバー制限手段による制限が解除され、前記操作レバーがニュートラル状態にのみ前記ドラムカバーが開き、かつ前記ドラムカバーが開いた状態では前記レバー制限手段によって前記操作レバーの操作が制限されるように、前記ドラムカバーと前記レバー制限手段とが配設されている、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、回転してロープを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転を制御する操作レバーとを備え、前記操作レバーがニュートラル状態で前記ドラムの回転が停止するウインチであり、前記ドラムを覆い、開閉自在なドラムカバーと、前記ドラムカバーの開閉に連動し、前記操作レバーの操作を制限可能なレバー制限手段と、を備え、前記ドラムカバーが閉じた状態では前記レバー制限手段による制限が解除され、前記操作レバーがニュートラル状態にのみ前記ドラムカバーが開き、かつ前記ドラムカバーが開いた状態では前記レバー制限手段によって前記操作レバーの操作が制限されるように、前記ドラムカバーと前記レバー制限手段とが配設されている、ことを特徴とする。
【0008】
請求項1、2の発明によれば、ドラムカバーが閉じた状態では、レバー制限手段による制限が解除されて、操作レバーを自由に操作すること、つまりドラムを回転させることが可能となる。また、操作レバーがニュートラル状態、つまりドラムの回転が停止した状態でのみ、ドラムカバーが開き、かつレバー制限手段によって操作レバーの操作が制限されるため、ドラムが回転することがない。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のウインチ用保護カバーまたはウインチにおいて、前記ドラムカバーが透明体または半透明体から構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および2に記載の発明によれば、ドラムの回転を停止させなければ、ドラムカバーが開らかないため、ドラムの回転中にドラムカバーを開けてしまいドラムに接触する、ということを確実に防止することができる。また、ドラムカバーが開いた状態では、レバー制限手段によって操作レバーの操作が制限されるため、ドラムカバーを開けた状態でドラムを回転させてしまいドラムに接触する、ということを確実に防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ドラムカバーが透明体または半透明体から構成されているため、ドラムカバーを閉じた状態、つまりドラムの回転中でも、ドラムやロープの状態を目視確認することができる。このため、ロープの絡まりなどを早期に発見し、迅速かつ適正な対応をとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態に係るウインチ用保護カバーを閉じた状態のウインチの平面図(a)と、正面図(b)と、右側面図(c)である。
【図2】この発明の実施の形態に係るウインチ用保護カバーを開いた状態のウインチの平面図(a)と、正面図(b)と、右側面図(c)である。
【図3】この発明の実施の形態に係るウインチの操作レバーの正面図および平面図(a)と、この操作レバーにレバー制限体が装着した状態を示す正面図および平面図(b)である。
【図4】この発明の実施の形態に係る他のウインチ用保護カバーとウインチとを示す平面図(a)と、正面図(b)である。
【図5】図4のウインチ用保護カバーを閉じた状態を示す正面図およびその一部平面図(a)と、ウインチ用保護カバーを開いた状態を示す正面図およびその一部平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0014】
図1、2は、この発明の実施の形態に係るウインチ用保護カバー1を備えたウインチ10を示す図である。このウインチ10は、鉄塔工事や架線工事などにおいて、電線・送電線を架設したり工具類を上げ下げしたりする場合に使用される巻き揚げ機で、駆動源としてのエンジン12と、回転してワイヤロープ(ロープ)13を巻き取るドラム14と、ドラム14の回転を制御する操作レバー15とを備えている。
【0015】
ドラム14には、予めワイヤロープ13が複数回巻かれ、正転することでワイヤロープ13を巻き取り、逆転することでワイヤロープ13を巻き出す(巻き戻す)ようになっている。このような巻き取り、巻き出しなどは、棒状の操作レバー15の操作によって制御される。例えば、図3(a)に示すように、操作レバー15を「B」の位置に操作するとドラム14が正転し、操作レバー15を「F」の位置に操作するとドラム14が逆転し、操作レバー15をニュートラル「N」の位置に操作するとドラム14の回転が停止するようになっている。
【0016】
このような構成は、一般に広く市販、使用されているウインチと同等の構成であり、このような一般的なウインチにウインチ用保護カバー1が取り付けられて、ウインチ10が構成されている。このウインチ用保護カバー1は、主として、ドラムカバー2とレバー制限体(レバー制限手段)3とを備えている。
【0017】
ドラムカバー2は、後述するように開閉自在で、閉じた状態で図1に示すように、底面部のみを有さない略立方体で、両側面部21に、ワイヤロープ13を貫通させるための切り欠き窓21aが形成され、この切り欠き窓21aの周縁から水平方向に延びるロープカバー22が形成されている。また、ドラムカバー2の正面部23は、ドラム14の下端部周辺まで延び、背面部24は、ドラム14の駆動軸部141の上端部周辺まで延びている。この背面部24の下端部の両端側には、垂直下方に延びる棒状の取付脚4が、開閉軸41を介して接続されている。
【0018】
開閉軸41は水平方向に延び、この開閉軸41を軸にしてドラムカバー2が回転・回動し、ドラム14に対して開閉自在となっている。すなわち、ドラムカバー2が閉じた状態では、図1に示すように、ドラムカバー2によってドラム14の上部と正面部と両側部の一部が覆われるとともに、ドラム14から突出しているワイヤロープ13の一部が、ロープカバー22によって覆われる。また、ドラムカバー2が90度開いた状態では、図2に示すように、ドラム14の正面部と両側部とが完全に開放されるとともに、ドラム14の上部が大きく開放され、ドラム14やワイヤロープ13に対する点検や作業が行えるようになる。
【0019】
このようなドラムカバー2は、透明または半透明なアクリル板などの樹脂体で構成され、ドラムカバー2を閉じた状態でも、ドラム14やワイヤロープ13を目視確認できるようになっている。また、取付脚4の下端部は、ウインチ10のベース16に固定され、取付脚4をベース16に固定することで、ウインチ用保護カバー1がウインチ10に取り付けられるようになっている。
【0020】
レバー制限体3は、ドラムカバー2の開閉に連動し、操作レバー15の操作を制限可能な部材である。具体的には、図1(b)に示すように、略L字形の平板状で、操作レバー15側のロープカバー22の上部に、その板面がドラムカバー2の正面部23と平行になるように配設されている。また、図3(b)に示すように、レバー制限体3の垂直部3aには、自由端部(非ロープカバー22側)から長孔状に切り欠かれたスリット部3bが形成され、これに隣接する一方の先端部が第1の先端部3c、隣接する他方の先端部が第2の先端部3dとなっている。
【0021】
そして、ドラムカバー2が閉じた状態では、図1(b)に示すように、レバー制限体3の板面が垂直に位置し、レバー制限体3が操作レバー15に干渉しない状態となる。また、操作レバー15がニュートラル「N」に位置する場合にのみ、ドラムカバー2を開けられるようになっている。すなわち、ニュートラル「N」状態でドラムカバー2を回転・回動させると、この回転に連動してレバー制限体3が回転し、図3(b)に示すように、スリット部3bに操作レバー15が挿入されて、ドラムカバー2が90度回転可能となる。また、この状態では、操作レバー15がスリット部3bに挿入されているため、操作レバー15の操作が不可能な状態となる。一方、操作レバー15が「B」または「F」に位置する場合には、ドラムカバー2を回転・回動させて開けようとすると、操作レバー15が第1の先端部3cまたは第2の先端部3dに当たり、ドラムカバー2が回転できないように、レバー制限体3が形成、配設されている。
【0022】
このように、ドラムカバー2が閉じた状態では、レバー制限体3による操作レバー15への操作制限が解除され、操作レバー15を自由に操作可能、つまりドラム14を回転させることが可能となる。また、操作レバー15がニュートラル「N」状態にのみドラムカバー2が開き、かつドラムカバー2が開いた状態では、レバー制限体3によって操作レバー15の操作・動き、つまりドラム14の回転が制限される。
【0023】
次に、このような構成のウインチ用保護カバー1およびウインチ10の作用などについて説明する。
【0024】
まず、ウインチ10を使用して電線の架設や工具類の上げ下げなどを行う場合には、ドラムカバー2を閉じる。この状態では、上記のように操作レバー15を自由に操作することが可能で、ドラム14を正転させてワイヤロープ13を巻き取ったり、ドラム14を逆転させてワイヤロープ13を巻き出したりする。このような操作・作業中には、操作レバー15が「B」または「F」に位置するため、上記のようにドラムカバー2を開けることができない。
【0025】
続いて、ドラム14の回転中に、ドラムカバー2越しにドラム14やワイヤロープ13の状態を確認し、例えば、ワイヤロープ13が絡まった場合には、操作レバー15をニュートラル「N」状態にして、ドラム14の回転を止める。次に、ドラムカバー2を開けて、ワイヤロープ13の絡まりなどを直す。ここで、ドラムカバー2を開けた状態では、上記のように操作レバー15を操作できず、ドラム14は停止したままとなる。そして、ワイヤロープ13の絡まりなどを直し終えた後に、再びドラムカバー2を閉じることで、操作レバー15の操作が可能となり、作業を続行できるものである。
【0026】
以上のように、このウインチ用保護カバー1およびウインチ10によれば、ドラム14の回転を停止させなければ、ドラムカバー2が開らかないため、ドラム14の回転中にドラムカバー2を開けてしまいドラム14に接触する、ということを確実に防止することができる。また、ドラムカバー2が開いた状態では、レバー制限体3によって操作レバー15の操作ができなくなるため、ドラムカバー2を開けた状態でドラム14を回転させてしまいドラム14に接触する、ということを確実に防止することができる。このように、作業員の手や服などが、回転中のドラム14に接触するのを確実に防止することができ、安全性を著しく確保することができる。
【0027】
また、ドラムカバー2を閉じた状態でも、ドラム14やワイヤロープ13の状態を目視確認できるため、ワイヤロープ13の絡まりなどを早期に発見し、迅速かつ適正な対応をとることが可能となる。さらに、既存、既製のウインチ10にウインチ用保護カバー1を取り付けるだけで、既存、既製のウインチ10に対して、ドラム14への接触を確実に防止することが可能となる。
【0028】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、ドラムカバー2が回動することで開閉自在となっているが、ウインチ10の構造や大きさなどに応じて、ドラムカバー2が水平方向にスライドすることで、ドラム14に対して開閉するようにしてもよい。
【0029】
また、上記の実施の形態では、ドラム14と操作レバー15とをそれぞれひとつ備えているが、複数備えるウインチに対しても、本発明を適用することができる。例えば、図4に示すように、2つのドラム14を備え、それぞれのドラム14に操作レバー15を備える場合、上記と同様なウインチ用保護カバー1を2つ配設する。これにより、各ドラム14を別個にカバーして、かつ各操作レバー15の操作を別個に制限、解除することができる。例えば、図4(a)の上側のドラム14のようにドラムカバー2が閉じた状態では、図5(a)に示すように、レバー制限体3が操作レバー15に干渉せず、操作レバー15が操作可能となる。一方、図4(a)の下側のドラム14のようにドラムカバー2が開いた状態では、図5(b)に示すように、操作レバー15にレバー制限体3が装着し、操作レバー15の操作が不可能となる。ここで、図4(b)は、ドラムカバー2が閉じた状態を示す正面図である。
【0030】
また、上記の実施の形態では、ドラムカバー2とレバー制限体3とが別体となっているが、ドラムカバー2にレバー制限手段を一体的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ウインチ用保護カバー
10 ウインチ
13 ワイヤロープ(ロープ)
14 ドラム
15 操作レバー
2 ドラムカバー
3 レバー制限体(レバー制限手段)
3b スリット部
4 取付脚
41 開閉軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転してロープを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転を制御する操作レバーとを備え、前記操作レバーがニュートラル状態で前記ドラムの回転が停止するウインチに取り付けられるウインチ用保護カバーであり、
前記ドラムを覆い、開閉自在なドラムカバーと、
前記ドラムカバーの開閉に連動し、前記操作レバーの操作を制限可能なレバー制限手段と、を備え、
前記ドラムカバーが閉じた状態では前記レバー制限手段による制限が解除され、前記操作レバーがニュートラル状態にのみ前記ドラムカバーが開き、かつ前記ドラムカバーが開いた状態では前記レバー制限手段によって前記操作レバーの操作が制限されるように、前記ドラムカバーと前記レバー制限手段とが配設されている、
ことを特徴とするウインチ用保護カバー。
【請求項2】
回転してロープを巻き取るドラムと、前記ドラムの回転を制御する操作レバーとを備え、前記操作レバーがニュートラル状態で前記ドラムの回転が停止するウインチであり、
前記ドラムを覆い、開閉自在なドラムカバーと、
前記ドラムカバーの開閉に連動し、前記操作レバーの操作を制限可能なレバー制限手段と、を備え、
前記ドラムカバーが閉じた状態では前記レバー制限手段による制限が解除され、前記操作レバーがニュートラル状態にのみ前記ドラムカバーが開き、かつ前記ドラムカバーが開いた状態では前記レバー制限手段によって前記操作レバーの操作が制限されるように、前記ドラムカバーと前記レバー制限手段とが配設されている、
ことを特徴とするウインチ。
【請求項3】
前記ドラムカバーが透明体または半透明体から構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインチ用保護カバーまたは請求項2に記載のウインチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153459(P2012−153459A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12500(P2011−12500)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)