説明

エアゾール容器用吐出ヘッド

【課題】ノズルの下方への押圧動作を安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムがある場合でも均等に押圧できるとともに、簡単な構成で、部品点数が少なく、製造や組立の作業工数も少なく、さらに、ノズルの取付け・取外しが容易でノズルが汚損汚染した際にも清掃やメンテナンスの作業が簡単に行なえるエアゾール容器用吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】カバー130と、ステム102に嵌着するノズル110と、ノズル110を下方に押圧可能なレバー140とを有するエアゾール容器用吐出ヘッド100であって、カバー130の天板部131上面と一対の突出壁134で囲まれた凹溝部の一方の側方にはノズル110の嵌着部111を挿入・取外し可能な開口部が形成され、他方の側方にはノズル110の嵌着部111が当接し上下動を案内する案内面部が設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の容器口部の上部に設けられたステムを囲んで取付けられ、ステムを押圧して吐出する内容物を側方に吐出させるノズルを有するエアゾール容器用吐出ヘッドに関し、特に、複数のステムからの吐出される内容物を同時に側方に吐出させるノズルを有するエアゾール容器用吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器の内容物は、ステムを下方に押圧することでステムの先端から吐出するように構成されており、内容物を側方に吐出させるために、側方に吐出孔を有するノズルをステムに嵌着し、該ノズルを押圧することでノズルの先端の吐出孔から内容物を吐出させるものが周知である。
ノズルを操作者が直接手指でノズルを下方に押圧するものがよく知られているが、エアゾール容器のステムは、構造上、ある程度弾性的に傾くため、押圧時にステムがわずかに傾き、側方に延びたノズルの先端の吐出孔の位置が不安定になりやすい。
特に、ノズルの側方への長さが長いほど、わずかな傾きでも、大きな位置変化となる。
【0003】
また、1つのエアゾール容器にステムを複数有し、あるいは、1つのステムを有するエアゾール容器が複数連結され、異なる内容物を同時に吐出させるものが公知であり、この場合、複数のノズルに嵌着可能な1つのノズルを用いて同時に内容物を側方に吐出するように構成される。
複数のステムに対して1つのノズルを用いる場合は、ノズルの先端の吐出孔の位置を安定化することに加え、複数の内容物の吐出量の比を均一にするために複数のステムを均等に押圧することが求められ、このためにも、ノズルが傾くことなく正確に下方に押圧される機構が必要となる。
【0004】
このような機構として、エアゾール容器用吐出ヘッドを、ノズルの上方に、エアゾール容器に対して相対位置が固定された支点を有するレバーを設け、当該レバーを操作者が手指で押圧することでノズルの下方への押圧動作を安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムを均等に押圧するように構成したものが公知である(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3915065号公報(全頁、全図)
【特許文献2】特許第3977954号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたような公知のエアゾール容器用吐出ヘッドにおいては、カバー部材20に、ノズル付き押し下げ部材30を多方向からガイドして下方への押圧動作を安定化する嵌合部が形成されている。
また、上記特許文献2に記載されたような公知のエアゾール容器用吐出ヘッドにおいては、ヘッド本体10に、あるいは操作部30を組み合わせて、ノズル20を多方向からガイドして下方への押圧動作を安定化するための嵌合部が形成されている。
しかしながら、これら公知のエアゾール容器用吐出ヘッドは、個々の部品の形状が複雑であり、部品数も多く、かつ、組立時の作業工数も多くなるため、製造にかかる時間、コストが増大するという問題があった。
また、組立てられた後は、使用者によるノズルの取付け、取外しが困難であり、ノズルが汚染した際の清掃やメンテナンス作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、前述したような公知のエアゾール容器用吐出ヘッドの問題を解決するものであって、ノズルの下方への押圧動作を安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムがある場合でも均等に押圧できるとともに、簡単な構成で、部品点数が少なく、製造や組立の作業工数も少なく、さらに、ノズルの取付け・取外しが容易でノズルが汚染した際にも清掃やメンテナンスの作業が簡単に行なえるエアゾール容器用吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本請求項1に係る発明は、エアゾール容器の容器口部の上部に設けられたステムを囲んで取付けられるカバーと、前記ステムに嵌着する嵌着部と該嵌着部から側方に延びる吐出筒を有するノズルと、前記ノズルの上方に設けられノズルを下方に押圧可能なレバーとを有するエアゾール容器用吐出ヘッドであって、前記カバーは、中央に開孔を有する天板部と、該天板部周縁から下方に垂下し前記エアゾール容器の容器口部と係合する嵌合筒部と、該開孔の両側の該天板部上面から上方に突出して形成された一対の突出壁とからなり、前記天板部の上面と該一対の突出壁により囲まれた凹溝部が形成され、前記天板部の開孔は、前記カバーを前記容器口部に装着した際に前記ステムが該開孔から凹溝部内に露出するように形成され、前記レバーは、前記突出壁の上部内面側の一端に揺動可能に設けられ、前記凹溝部の前記開孔より一方の側方には、前記ノズルの嵌着部を挿入・取外し可能な開口部が形成され、前記レバーの下面および前記ノズルの嵌着部の上面の少なくとも一方には、前記ステムの上下動方向の延長線上で他方と接触し、前記レバー下方に押圧する際に、該方向に沿って前記ノズルに押圧力が作用する形状を有する押圧用突起が設けられ、前記凹溝部の前記開孔より他方の側方には、前記ノズルの嵌着部が当接するとともに上下動を案内する案内面部が設けられ、該案内面部は、前記突出壁の内面側に連結し、前記天板部の上面から上方に突出して延びるように設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【0009】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたエアゾール容器用吐出ヘッドの構成に加えて、前記ノズルの嵌着部には、上方に突出して前記案内面部との上下方向の当接長さを延長する被案内凸部が設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたエアゾール容器用吐出ヘッドの構成に加えて、前記レバーの下面および前記ノズルの嵌着部の上面には、前記ステムの上下動方向の延長線上で互いに接触し、該方向に沿って押圧力が作用する形状を有する押圧用突起が設けられ、前記レバーの下面に設けられた押圧用突起の前記案内面部側、に傾斜面を有していることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたエアゾール容器用吐出ヘッドの構成に加えて、前記ノズルの吐出筒の下面には、下方に突出し吐出筒の下方へ移動範囲を制限する脚部が設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたエアゾール容器用吐出ヘッドの構成に加えて、前記エアゾール容器が、1つの容器に前記ステムを複数有し、あるいは、1つのステムを有するエアゾール容器が、複数連結されることで前記ステムを複数有し、前記カバーが、前記複数のステムを囲んだ上方に取付けられ、前記ノズルの嵌着部が、1つで前記複数のステムに同時に嵌着するように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明のエアゾール容器用吐出ヘッドによれば、ステムが露出する凹溝部の一方の側方からノズルの嵌着部を挿入・取外し可能とし、他方に設けられた案内面部に当接するように構成されているため、組立時の作業工数が少なく、製造にかかる時間、コストが低減される。
また、一対の突出壁と案内面部がノズルの嵌着部の上下動を3方から案内するため、部品の形状を簡単にしつつ、ノズルの案内面方向への傾きが規制され、ノズルの下方への押圧動作を安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムがある場合でも均等に押圧できる。
また、押圧用突起を設けることで、レバーの下面とノズルの嵌着部との接触点と押圧方向を最適化することが可能となり、ノズルが上下動する際に案内面部から離間することを防止し、ノズルの下方への押圧動作をさらに安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムがある場合でも均等に押圧できる。
さらに、ノズルの取付け・取外しが容易となり、ノズルが汚染した際にも清掃や交換、メンテナンス等の作業を簡単に行なうことができるとともに、ノズルの吐出筒の長さが容器の外周より外まで延びるように設計された場合でも、使用後には容易にノズルを取外してコンパクトに保管することが可能となる。
【0011】
本請求項2に記載の構成によれば、ノズルを大型化したり複雑な形状とすることなく案内面部との当接長さを延長することができ、ノズルの下方への押圧動作をさらに安定化し、ステムの傾きを防止しつつ複数のステムがある場合でも均等に押圧できる。
本請求項3に記載の構成によれば、レバーの下面に設けられた押圧用突起でノズルの嵌着部の上面に設けられた押圧用突起を押圧した際に、傾斜面によって押圧することでノズルの嵌着部が案内面部に押し当てられる方向の力が発生するように設定できるため、さらにノズルが上下動する際に案内面部から離間することが防止される。
本請求項4に記載の構成によれば、万一ステムが傾斜してノズルの吐出筒の先端側が下方に向いても、最下方まで押圧した際には、脚部が下方のカバーあるいは容器に当接することで位置決めして傾斜のない状態とすることができる。
また、ノズルの吐出筒の先端部を下方に押圧することで、脚部が下方のカバーあるいは容器に当接して梃子の支点となって、ステムに嵌着したノズルの嵌着部を容易に上方に外すことができるため、ノズルの取外しが容易となり、ノズルが汚染した際にも清掃や交換、メンテナンス等の作業を簡単に行なうことができる。
本請求項5に記載の構成によれば、ステムの傾きを防止し、ノズルの上下動を安定化することで複数のステムを均等に押圧でき、複数のステムからの吐出量の割合を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッドの斜視図。
【図2】図1の背面上方からの斜視図。
【図3】本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッドの側方からの断面図。
【図4】図1のノズルを取外した斜視図。
【図5】カバーの斜視図。
【図6】カバーの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図。
【図7】カバーの(a)側面図、(b)背面図、(c)底面図。
【図8】ノズルの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図。
【図9】ノズルの(a)側面図、(b)底面図、(c)背面図。
【図10】エアゾール容器用吐出ヘッドのノズル押圧時の側面断面図。
【図11】ノズルとステムの取外し・取付け途中の側面断面図。
【図12】ノズルとカバーの取外し・取付け途中の側面断面図。
【図13】ノズルを完全に取外した状態の側面断面図。
【図14】連結棒に結合されて一体成型されたノズルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下に、本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッド100の構成および動作について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッド100は、図1乃至図3に示すように、エアゾール容器101の上方で容器口部103の上部に設けられたステム102を囲んで取付けられるカバー130と、前記ステム102に嵌着する嵌着部111と該嵌着部111から側方に延びる吐出筒112を有するノズル110と、前記ノズル110の上方に設けられノズル110を下方に押圧可能なレバー140とを有している。
【0014】
カバー130は、図1乃至図7に示すように、中央に開孔132を有する天板部131と、該天板部131の周縁から下方に垂下しエアゾール容器101の容器口部103と係合する嵌合筒部133と、該開孔132の両側の天板部131上面から上方に突出して形成された一対の突出壁134とを有している。
天板部131の上面と該一対の突出壁134によって囲まれた凹溝部135が形成され、天板部131の開孔132は、カバー130を容器口部103に装着した際にステム102が該開孔132から凹溝部135内に露出するように形成されている。
【0015】
凹溝部135の開孔132より一方の側方(図3の左方向)には、ノズル110の嵌着部111を挿入・取外し可能な開口部136が形成され、凹溝部135の開孔132より他方の側方(図3の右方向)には、前記ノズル110の嵌着部111が当接するとともに上下動を案内する案内面部137が設けられている。
該案内面部137は、天板部131の上面から上方に突出して延びるように設けられており、本実施例では、凹溝部135の対向する突出壁134の内面側に連結し、天板部131の上面から上方に突出して延び、両突出壁134付近にのみ設けられて2本の柱状に形成されている。即ち、一対の案内面部137は、天板部131の上面と突出壁134との両方に連結されているため、安定な案内面として、またノズル110挿入時の安定なガイド部としての機能を果たすことができる。この案内面部137は、凹溝部135全体に連続する1つの壁状に形成しても良い。即ち、両突出壁134の内面側を連結するように形成して、案内面部137を1つの壁状に設けた場合には、案内面部137の強度と共にカバー130の強度を更に確保することができるが、強度的に問題がなければ、本実施例のように2本の柱状に形成することで、材料を節約してコストをさらに低減することができる。
なお、本実施例では、カバー130は、容器口部103に装着した際に、開口部136および凹溝部135を除いて円筒状のエアゾール容器101の外形と連続する円筒状の外観とするため、天板部131周縁の延長部から下方に延びる外壁部138も一体に成形されている。
【0016】
レバー140は、図1乃至図7に示すように、突出壁134の上部内面側の一端に揺動可能に設けられている。
本実施例では、レバー140はカバー130と一体に形成されており、レバー140の一端側の固定部144が一対の突出壁134と一体に連結され、固定部144の開口部136と反対側(カバー130の案内面部137側:図3の右方向)に設けられた薄肉のヒンジ部143を介して弾性変形可能に連結されている。従って、レバー140はカバー130に対して上下方向に揺動可能に形成されている。
このことで、エアゾール容器用吐出ヘッド100の部品点数を少なくすることができ組立時の作業工数が少なくなり、製造にかかる時間、コストが低減される。
レバー140の下面には、後述するノズル110を押圧する押圧用突起141が設けられており、該押圧用突起141の頂点から揺動端側(カバー130の案内面部137側:図3の右方向)に向けて押圧傾斜面142が形成されている。
押圧用突起141は、後述するノズル110の2つの押圧用突起114の間隔以上の幅に形成されている。
【0017】
ノズル110は、図1乃至図4、図8および図9に示すように、エアゾール容器101の容器口部103の上部に設けられたステム102に嵌着するステム嵌着孔117が下面に設けられた嵌着部111と、該嵌着部111から側方に延びステム嵌着孔117から先端まで連通する吐出導孔118が内部に設けられた吐出筒112とを有している。
嵌着部111の幅方向の寸法は、前述したカバー130の凹溝部135の対向する突出壁134の間隔と略同一に形成され、上下方向の厚み寸法は、必要な吐出量を確保できるステム嵌着孔117と吐出導孔118を設けることができる最低限の厚みに形成されている。
ステム嵌着孔117および吐出導孔118は、本実施例では、エアゾール容器101が2つのステム102を有するため、それぞれ2つ設けられている。
【0018】
嵌着部111の上面には、頂点近傍がR形状に形成された押圧用突起114が設けられており、また、嵌着部111の前述したカバー130の案内面部137と当接する面の上方には被案内凸部113が設けられている。
押圧用突起114には、その頂点から吐出筒112の反対側(カバー130の案内面部137側:図3の右方向)に向けて挿入傾斜面115が形成されている。
押圧用突起114も、本実施例では、エアゾール容器101が2つのステム102を有するため、ステム102の位置に対応して2つ設けられている。
また、被案内凸部113も、カバー130の案内面部137が凹溝部135の対向する突出壁134の内面側からそれぞれ突出して天板部の上面から上方に延びた2本の柱状に形成されているため、案内面部137に対応して幅方向両端部にそれぞれ設けられている。
吐出筒112の下面には、脚部116が設けられている。
【0019】
以上のように構成された本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッド100の内容物の吐出に関する動作および作用について、図3および図10に基づいて説明する。
図3に示すように、カバー130がエアゾール容器101の容器口部103に嵌着され、ノズル110の嵌着部111がカバー130の凹溝部135内でステム102に嵌着された状態で、嵌着部111の端面および被案内凸部113は、カバー130の案内面部137に上下方向全面で当接している。
そして、嵌着部111の上部の押圧用突起114は、ステム102の上下動方向の線状に位置し、その頂点がレバー140の押圧用突起141を上方向に少し押し上げている。
この時、嵌着部111の押圧用突起114の頂点は、レバー140の押圧用突起141の頂点より揺動端側に設けられた押圧傾斜面142に当接している。
また、ノズル110の吐出筒112の下面に設けられた脚部116の下端部と、カバー130の天板部131との間に、ステム102の押し下げストローク相当分の間隔が設けられている。
【0020】
この状態からレバー140を下方に押し下げると、レバー140はヒンジ部143が弾性変形することによって、ヒンジ部143を中心に下方に揺動し、押圧用突起141の頂点より揺動端側に設けられた押圧傾斜面142が嵌着部111の押圧用突起114を下方に押圧してステム102が押し下げられ、エアゾール容器101の内容物がノズル110の吐出導孔118を通って吐出筒112の先端から吐出される。
この時、レバー140の押圧傾斜面142の角度を、嵌着部111の押圧用突起114を押し下げる際に常に吐出筒112と反対方向の分力が発生するように設定する、すなわち、ステム102の押し下げ方向を鉛直とした時、押し下げストローク全域でレバー140の押圧傾斜面142の傾斜が水平をまたいで変化しないように設定することで、ノズル110の嵌着部111の端面および被案内凸部113が、常にカバー130の案内面部137に当接して上下方向に正確に案内され、吐出筒112が下方に傾斜することがない。
また、吐出筒112の下面に設けられた脚部116が、ステム102の押し下げストロークの最下端でカバー130の天板部131に当接するため、使用者が押し下げストロークを正確に感知できるとともに、万一、押し下げ動作途中で吐出筒112の先端が下方に傾斜しても、押し下げストロークの最下端では脚部116が天板部131に当接して傾斜のない状態に修正される。
【0021】
ノズル110の幅方向(図3、図10における紙面裏表方向)については、幅方向に2つある嵌着部111の押圧用突起114の頂点が、レバー140により同時に押し下げられることにより傾斜することはない。
さらに、嵌着部111の幅方向寸法をカバー130の凹溝部135の対向する突出壁134の間隔と略同一に形成することで、嵌着部111および被案内凸部113の側面が突出壁134に案内されて、幅方向の傾斜も確実に防止される。
また、例えば、ステム102が1つのみのエアゾール容器101に適用した場合、嵌着部111の押圧用突起114もステム102に対応する位置に1つだけ設けることとなるが、嵌着部111および被案内凸部113の側面が突出壁134に案内されることで、幅方向に傾斜を防止することが可能となる。
【0022】
次に、本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッド100のノズル110の取付け・取外しに関する動作および作用について図3および図11乃至図13に基づいて説明する。
まず、取外しの際は、図3の状態から、ノズル110の吐出筒112の先端を下方に押し下げることで脚部116がカバー130の天板部131に当接し、さらに押し下げることで、図11に示すように、該当接点が支点となってノズル110の嵌着部111が上方に持ち上げられ、ステム嵌着孔117がステム102から離脱する。
この時、レバー140の押圧用突起141も、嵌着部111の上面の押圧用突起114によって上方に押し上げられ、レバー140はヒンジ部143を中心に上方に揺動する。
なお、嵌着部111の上面の被案内凸部113は、幅方向の両側方にのみ設けられているため、レバー140とは干渉しない。
【0023】
そして、図12に示すように、ステム嵌着孔117がステム102から完全に離脱させた後、ノズル110を開口部136側から引き抜くことでノズル110の取外しが完了し、図13に示すように、ノズル110のみを独立して取り扱うことが可能となる。
これらの取外し作業は、ノズル110の吐出筒112を手指でつかむのみ、あるいは、レバー140をヒンジ部143の弾性に抗して上方に押し上げる補助動作を加えることで、極めて簡単に行なうことが可能である。
【0024】
ノズル110を取付ける際は、図13に示す状態から、ノズル110の嵌着部111をカバー130の凹溝部135の開口部136に向けて挿入し、図12に示すように、嵌着部111がステム102を乗り越えるように傾斜させてさらに奥に挿入する。
そして、嵌着部111のステム嵌着孔117がステム102の上方に位置するまで挿入した後、ステム嵌着孔117にステム102を嵌着させるべく、嵌着部111を下方に押圧する。
この挿入時に、図11に示すように、嵌着部111の上面の押圧用突起114によってレバー140の押圧用突起141が押し上げられるが、本実施例では、押圧用突起114の頂点から吐出筒112の反対側に向けて挿入傾斜面115が設けられ、また、レバー140の押圧用突起141の開口部136側も傾斜面に形成されているため、挿入方向の力のみ、あるいは軽くレバー140を押し上げる補助動作を加えることで、簡単に挿入することができる。この実施例では、押圧用突起114と141の両方に傾斜面を設けたが、何れか一方に傾斜面を設けても同様の効果が得られる。
【0025】
挿入時のステム嵌着孔117とステム102の位置合わせについては、ステム嵌着孔117の開放側端縁119をテーパー状とし、嵌着部111が案内面部137に当接した位置でステム嵌着孔117とステム102が嵌合可能とすることで、作業者が容易に挿入位置を決めることができる。
そして、嵌着部111を下方に押圧してステム嵌着孔117とステム102を嵌着させる際には、図11に示すように、脚部116をカバー130の天板部131に当接させることにより、該当接点を支点としてノズル110の吐出筒112を上方に押し上げて嵌着部111を容易に下方に押し下げることができ、ステム嵌着孔117にステム102を確実に嵌着させることができる。
【0026】
本発明の実施例であるエアゾール容器用吐出ヘッド100に用いられるノズル110は容易に交換可能であることから、同一のノズルを交換用として準備したり、ノズルを取り付けていない状態で別部品として準備して流通、保管、販売を行い使用時に取付ける使用形態が考えられる。
このような使用形態の場合、図14に示すように、複数の(図示では3つの)ノズル210を、容易に破断可能なブリッジ221によって連結棒220に結合して一体に形成することで、想定される使用回数分のノズル210を紛失することなく保管可能となる。
また、連結棒220の少なくとも一方の端部222を、吐出筒212の先端から吐出孔内を清掃できるように吐出孔の形状に対応した形状に形成することにより、ノズルを交換せずに清掃のみ行って使用する場合であっても、清掃用具を別途準備する必要がなく、メンテナンスの作業が容易となる。
このことで、例えば、内容物が吐出後に固まったり変質しやすい場合、1回の使用ごとにノズル210を交換することが可能であり、また、1回の使用が少量でノズル210の数が不足する場合には、連結棒220の端部222で清掃して1つのノズル210を複数回使用することも可能となる。
さらに、ノズル210の吐出筒212の長さがエアゾール容器101の外周より外まで延びるように設計された場合でも、未使用のエアゾール容器用吐出ヘッド100にはノズルを取付けていない状態として、上記ノズル210を添付しておくことで、使用前の流通、保管、販売時の取り扱いを容易とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のエアゾール容器用吐出ヘッドは、実施例では、1つの容器に2つのステムを有するエアゾール容器に用いたものであるが、当然に一般的な1つのステムを有するエアゾール容器や、1つのステムを有する容器を連結して複数のステムとしたエアゾール容器等、様々な形態に合わせて、本発明の技術的特徴を用いて具体的形態を設計することが可能であり、容器の外形、ステムの数・間隔等に合わせて、適宜の変形が可能である。
特に、1つのノズルで複数のステムから吐出される内容物を、ノズル先端の位置、吐出量の割合等を正確に制御して吐出することが可能となるため、複数のステムを有するエアゾール容器用吐出ヘッドとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
100 ・・・エアゾール容器用吐出ヘッド
101 ・・・エアゾール容器
102 ・・・ステム
103 ・・・容器口部
110、210 ・・・ノズル
111 ・・・嵌着部
112、212 ・・・吐出筒
113 ・・・被案内凸部
114 ・・・押圧用突起
115 ・・・挿入傾斜面
116 ・・・脚部
117 ・・・ステム嵌着孔
118 ・・・吐出導孔
119 ・・・開放側端縁
220 ・・・連結棒
221 ・・・ブリッジ
222 ・・・端部
130 ・・・カバー
131 ・・・天板部
132 ・・・開孔
133 ・・・嵌合筒部
134 ・・・突出壁
135 ・・・凹溝部
136 ・・・開口部
137 ・・・案内面部
138 ・・・外壁部
140 ・・・レバー
141 ・・・押圧用突起
142 ・・・押圧傾斜面
143 ・・・ヒンジ部
144 ・・・固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の容器口部の上部に設けられたステムを囲んで取付けられるカバーと、前記ステムに嵌着する嵌着部と該嵌着部から側方に延びる吐出筒を有するノズルと、前記ノズルの上方に設けられノズルを下方に押圧可能なレバーとを有するエアゾール容器用吐出ヘッドであって、
前記カバーは、中央に開孔を有する天板部と、該天板部周縁から下方に垂下し前記エアゾール容器の容器口部と係合する嵌合筒部と、該開孔の両側の該天板部上面から上方に突出して形成された一対の突出壁とからなり、
前記天板部の上面と該一対の突出壁により囲まれた凹溝部が形成され、
前記天板部の開孔は、前記カバーを前記容器口部に装着した際に前記ステムが該開孔から凹溝部内に露出するように形成され、
前記レバーは、前記突出壁の上部内面側の一端に揺動可能に設けられ、
前記凹溝部の前記開孔より一方の側方には、前記ノズルの嵌着部を挿入・取外し可能な開口部が形成され、
前記レバーの下面および前記ノズルの嵌着部の上面の少なくとも一方には、前記ステムの上下動方向の延長線上で他方と接触し、前記レバー下方に押圧する際に、該方向に沿って前記ノズルに押圧力が作用する形状を有する押圧用突起が設けられ、
前記凹溝部の前記開孔より他方の側方には、前記ノズルの嵌着部が当接するとともに上下動を案内する案内面部が設けられ、
該案内面部は、前記突出壁の内面側に連結し、前記天板部の上面から上方に突出して延びるように設けられていることを特徴とするエアゾール容器用吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルの嵌着部には、上方に突出して前記案内面部との上下方向の当接長さを延長する被案内凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用吐出ヘッド。
【請求項3】
前記レバーの下面および前記ノズルの嵌着部の上面には、前記ステムの上下動方向の延長線上で互いに接触し、該方向に沿って押圧力が作用する形状を有する押圧用突起が設けられ、
前記レバーの下面に設けられた押圧用突起の前記案内面部側に、押圧傾斜面を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール容器用吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルの吐出筒の下面には、下方に突出し吐出筒の下方へ移動範囲を制限する脚部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアゾール容器用吐出ヘッド。
【請求項5】
前記エアゾール容器が、1つの容器に前記ステムを複数有し、あるいは、1つのステムを有するエアゾール容器が複数連結されることで前記ステムを複数有し、
前記カバーが、前記複数のステムを囲んだ上方に取付けられ、
前記ノズルの嵌着部が、1つで前記複数のステムに同時に嵌着するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアゾール容器用吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−10540(P2013−10540A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144595(P2011−144595)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】