説明

エアゾール組成物及び噴射型エアゾール剤

【課題】薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられ、噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を噴射したときに、噴射被対象物における到達点で、到達実感に優れる噴射圧を維持することができるエアゾール組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るエアゾール組成物は、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤1に用いられる。本発明に係るエアゾール組成物は、水及びアルコールを含む液と、噴射剤とを含有する。上記液中の上記水の含有量と上記液中の上記アルコールの含有量とは質量比で、20:80〜50:50である。上記噴射剤は、ジメチルエーテルと、液化石油ガスと、窒素ガスとを含む。本発明に係るエアゾール剤1は、噴射ノズル13を有するエアゾール容器2と、エアゾール容器2内に充填された上記エアゾール組成物とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられるエアゾール組成物に関する。さらに、本発明は、噴射ノズルを有するエアゾール容器内に上記エアゾール組成物が充填されている噴射型エアゾール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器内にエアゾール組成物が充填されているエアゾール製品が市販されている。上記エアゾール組成物は、例えば、育毛剤及び頭皮リフレッシャーなどの薬剤又は化粧料を含む。例えば、育毛剤を吐出するエアゾール製品を使用者が用いる際には、エアゾール容器内の育毛剤を頭皮上に直接吐出している。
【0003】
上記エアゾール製品に用いられるエアゾール組成物の一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のエアゾール組成物は、血行促進効果を有する生薬抽出物と、ビタミン又はその誘導体と、水溶性高分子と、噴射剤とを含む。特許文献1では、上記噴射剤としては、ジメチルエーテルが好ましいことが記載されており、更にジメチルエーテルに液化天然ガス、炭酸ガス、フロンガス等を組み合せて用いても差し支えないことが記載されている。また、特許文献1の実施例では、上記噴射剤としてジメチルエーテルのみが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−101834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来のエアゾール製品では、エアゾール容器内の充填物を頭皮などの皮膚上に吐出したときに、皮膚到達点での噴射圧が低いことがある。このため、使用者が、充填物が皮膚上に十分に吐出されたか否かを認識することが困難であったり、到達実感を十分に得られなかったりすることがある。
【0006】
さらに、連続使用によりエアゾール容器内の充填物の残量が少なくなったときに、皮膚到達点での噴射圧がかなり低くなり、十分な到達実感が得られないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられ、該噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を噴射したときに、噴射被対象物における到達点で、到達実感に優れる噴射圧を維持することができるエアゾール組成物、並びに該エアゾール組成物を用いた噴射型エアゾール剤を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、連続使用によりエアゾール容器内のエアゾール組成物の残量が減った状態でも、薬剤又は化粧料を噴射したときに、噴射被対象物における到達点で、到達実感に優れる噴射圧を十分に維持し続けることができるエアゾール組成物、並びに該エアゾール組成物を用いた噴射型エアゾール剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられるエアゾール組成物であって、水及びアルコールを含む液と、噴射剤とを含有し、上記液中の上記水の含有量と上記液中の上記アルコールの含有量とが質量比(上記水:上記アルコール)で、20:80〜50:50であり、上記噴射剤が、ジメチルエーテルと、液化石油ガスと、窒素ガスとを含む、エアゾール組成物が提供される。
【0010】
本発明に係るエアゾール組成物のある特定の局面では、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの含有量が質量比(上記ジメチルエーテル:上記液化石油ガス)で、70:30〜90:10である。
【0011】
本発明に係るエアゾール組成物の他の特定の局面では、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの合計100質量部に対して、上記窒素ガスの含有量が0.3質量部以上、1.8質量部以下である。
【0012】
本発明に係るエアゾール組成物のさらに他の特定の局面では、上記液100質量部に対して、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスと上記窒素ガスとの合計の含有量が5質量部以上、40質量部以下である。
【0013】
本発明に係るエアゾール組成物の別の特定の局面では、上記液が、薬効成分及び化粧料原料の内の少なくとも一方をさらに含む。
【0014】
本発明に係る噴射型エアゾール剤は、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤であって、噴射ノズルを有するエアゾール容器と、該エアゾール容器内に充填された上記エアゾール組成物とを備える。
【0015】
本発明に係る噴射型エアゾール剤のある特定の局面では、未使用時における上記エアゾール容器の25℃での内圧は、0.4MPa以上である。
【0016】
本発明に係る噴射型エアゾール剤の他の特定の局面では、未使用時の状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、上記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における初期噴射圧が、0.04MPa以上である。
【0017】
本発明に係る噴射型エアゾール剤のさらに他の特定の局面では、未使用時における上記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して上記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、上記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における噴射圧が、上記初期噴射圧の50%以上である。
【0018】
本発明に係る噴射型エアゾール剤の別の特定の局面では、未使用時における上記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して上記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、上記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における噴射圧が、0.02MPa以上である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るエアゾール組成物は、水及びアルコールを質量比で20:80〜50:50で含む液と噴射剤とを含有し、更に該噴射剤がジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとを含むので、本発明に係るエゾール組成物を用いた噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を噴射したときに、噴射被対象物における到達点での噴射圧を維持し続けることができることから、使い始めから終わりまで、優れた到達実感が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る噴射型エアゾール剤を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示す噴射型エアゾール剤におけるエアゾール容器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るエアゾール組成物は、薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられるエアゾール組成物である。
【0023】
本発明に係るエアゾール組成物は、水及びアルコールを含む液と、噴射剤とを含有する。本発明に係るエアゾール組成物に含まれている上記液において、上記水の含有量と上記アルコールの含有量とは、質量比(上記水:上記アルコール)で、20:80〜50:50である。本発明に係るエアゾール組成物に含まれている噴射剤は、ジメチルエーテルと、液化石油ガスと、窒素ガスとを含む。本発明では、上記噴射剤として、1種又は2種ではなく3種の噴射剤を用いており、しかも特定の3種の噴射剤を用いている。
【0024】
本発明に係るエアゾール組成物における上記組成の採用によって、特に噴射剤としてジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとの3種を併用することによって、本発明に係るエゾール組成物を用いた噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を噴射したときに、噴射被対象物における到達点で、到達実感に優れる噴射圧とすることができる。例えば、噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を頭皮等の皮膚上に噴射したときに、皮膚到達点での噴射圧が高いことから、使用者が到達実感を十分に得ることができる。特に、育毛トニックなどの育毛剤及び頭皮リフレッシャー等を頭皮に噴射したときに、頭皮上に噴射物が到達した実感がかなり得られる。
【0025】
本発明に係るエアゾール組成物は、薬剤又は化粧料を皮膚上に噴射する噴射型エアゾール剤に用いられることが好ましく、薬剤又は化粧料を頭皮上に噴射する噴射型エアゾール剤に用いられることがより好ましい。
【0026】
本発明に係るエアゾール組成物では、上記液中の上記水の含有量と上記液中の上記アルコールの含有量とは、質量比(上記水:上記アルコール)で、20:80〜50:50である。水及びアルコールを上述の配合比で用いることで、噴射型エアゾール剤から薬剤又は化粧料を良好に噴射できる。なお、一般に、エアゾール組成物では、原液として、水とアルコールとが用いられることが多く、更に水とアルコールとは質量比(上記水:上記アルコール)で、20:80〜50:50で用いられることが多い。すなわち、一般に、エアゾール組成物では、水及びアルコール以外の成分の配合量及び噴射状態等を考慮して、水とアルコールとは上述の配合比で適宜用いられている。
【0027】
上記液100質量%中、上記水と上記アルコールとの合計の含有量は好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下である。上記液の全量が上記水と上記アルコールとであってもよい。
【0028】
上記噴射剤は、ジメチルエーテルと、液化石油ガスと、窒素ガスとを含む。
【0029】
従来、エアゾール剤では、特に噴射型エアゾール剤では、1種又は2種の噴射剤が用いられている。このように、1種又は2種の噴射剤を用いたとしても、噴射被対象物における到達点での噴射圧を十分に高くすることで優れた到達実感を得ることは困難である。また、たとえ噴射剤を3種以上組み合せて用いたとしても、その種類や配合比率によっては、上記噴射圧を十分に高くすることで優れた到達実感を得ることは困難である。
【0030】
また、例えば、噴射剤として、圧縮ガスを用いずに液化石油ガスのみを用いた場合には、該液化石油ガスの配合量を増やすと、エアゾール剤から噴射された噴射物が拡散しやすくなり、噴射物が霧状に噴射されやすくなる。この結果、噴射被対象物における到達点での噴射圧が低くなりやすく、使用者が到達実感を十分に得られないことがある。さらに、連続使用により充填物の残量が少なくなったときに、噴射被対象物に噴射物が十分に届かないことがある。また、噴射剤として圧力の高い液化石油ガスを使用したとても、エアゾール剤から噴射された噴射物が拡散しやすくなる。
【0031】
また、噴射剤として、液化石油ガスを用いずに窒素ガス及び炭酸ガスなどの圧縮ガスのみを用いた場合には、法規制における上限の35℃で1.0MPa以下の条件でエアゾール剤を設計すると、噴射被対象物の到達点での噴射圧を高くすることは可能である。しかし、この場合には、連続使用により充填物の残量が少なくなると、安定的な噴射状態を維持することが困難になる。
【0032】
さらに、噴射剤として液化石油ガスと圧縮ガスとを用い、かつジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとを併用しなかった場合にも、エアゾール剤から噴射された噴射物が拡散しやすくなり、噴射物が霧状に噴射されやすくなる。この結果、噴射被対象物における到達点での噴射圧が低くなりやすく、使用者が到達実感を十分に得られないことがある。即ち、液化石油ガスと圧縮ガスとを用い、かつジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとを併用しなかった場合に、液化石油ガスの配合量を相対的に多くすると、エアゾール剤から噴射された噴射物がより一層拡散しやすくなる。液化石油ガスと圧縮ガスとを用い、かつジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとを併用しなかった場合に、圧縮ガスの配合量を相対的に多くすると、連続使用により充填物の残量が少なくなったときに、安定的に噴射できなかったり、噴射被対象物に噴射物が十分に届かなかったりする。
【0033】
これに対して、本発明では、上記噴射剤として、ジメチルエーテルと液化石油ガスと窒素ガスとの3種を組み合わせて用いているので、噴射被対象物における到達点での噴射圧を効果的にかつ十分に高めることができ、しかもエアゾール容器内の充填物の量が減少しても高い噴射圧を維持できることから、使用者に優れた到達実感を与えることができる。
【0034】
本発明に係るエアゾール組成物では、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの含有量は、質量比(上記ジメチルエーテル:上記液化石油ガス)で、60:40〜95:5であることが好ましく、70:30〜90:10であることが特に好ましい。この含有量比で上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとを用いることにより、噴射被対象物における到達点での噴射圧がより一層高くなり、使用者が皮膚上で到達実感をより一層得ることができる。特に、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの含有量が質量比で70:30〜90:10であると、使用者の到達実感がかなり良好になる。
【0035】
上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの合計100質量部に対して、上記窒素ガスの含有量は好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.8質量部以下である。上記窒素ガスの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、噴射被対象物における到達点での噴射圧がより一層高くなり、使用者が皮膚上で到達実感をより一層得ることができる。特に、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスとの合計100質量部に対する上記窒素ガスの含有量が0.3質量部以上、1.8質量部以下であると、使用者の到達実感がかなり良好になる。
【0036】
上記液100質量部に対して、上記ジメチルエーテルと上記液化石油ガスと上記窒素ガスとの合計の含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。上述の3種の噴射剤の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、噴射被対象物における到達点での噴射圧がより一層高くなり、使用者が皮膚上で到達実感をより一層得ることができる。特に、上記液100質量部に対する上述の3種の噴射剤の合計の含有量が5質量部以上、40質量部以下であると、使用者の到達実感がかなり良好になる。
【0037】
また、上記エアゾール組成物100質量%中、上記液の含有量は好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0038】
本発明に係るエアゾール組成物に含まれている液は、薬効成分及び化粧料原料の内の少なくとも一方を含むことが好ましい。上記薬効成分及び上記化粧料原料として、医薬品、医薬部外品及び化粧品に配合され得る薬効成分及び上記化粧料原料を用いることができる。但し、本発明に係るエアゾール組成物は、薬効成分及び化粧料原料を必ずしも含んでいなくてもよい。本発明に係るエアゾール組成物とは別に、薬効成分及び化粧料原料の内の少なくとも一方を用いてもよい。
【0039】
上記薬効成分及び化粧料原料としては、例えば、ビタミンE及びその誘導体、センブリエキス、ニンニクエキス、セファランチン、塩化カルプロニウム、アセチルコリン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の血行促進剤;トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ノニル酸バニリルアミド等の局所刺激剤;サリチル酸、レゾルシン、乳酸等の角質溶解剤;プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリド、パントテニルエチルエーテル、パントテニルアルコール、ビオチン、ヒノキチオール、アラントイン等の代謝賦活剤;グリチルリチン酸、グチリルレチン酸等の消炎剤;イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ジンクピリチオン、ヒノキチール等の殺菌剤;l−メントール、メンチルグリセリルエーテル、カンフル等の清涼剤;アロエエキス、ヘチマ水、ローヤルゼリー、バーチ、ニンジンエキス、カモミラエキス、甘草エキス、サルビアエキス、アルテアエキス、セイヨウノコギリソウエキス等の生薬成分;非イオン性界面活性剤等の界面活性剤;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤;シリコーン油、脂肪酸エステル油、高級アルコール等の油剤;香料、防腐剤等が挙げられる。上記薬効成分及び化粧料原料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記液が上記薬効成分及び化粧料原料の内の少なくとも一方の成分(以下、成分Xと記載することがある)を含む場合に、上記液100質量%中、上記成分Xの含有量は好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記成分Xが皮膚上に噴射されたときに、上記成分Xの性能がより一層効果的に発現する。なお、上記成分Xの含有量は、上記成分Xとして上記薬効成分のみを用いる場合には上記薬効成分の含有量を示し、上記成分Xとして上記化粧料原料のみを用いる場合には上記化粧料原料の含有量を示し、上記成分Xとして上記薬効成分と上記化粧料原料との双方を用いる場合には上記薬効成分と上記化粧料との合計の含有量を示す。
【0041】
上記噴射型エアゾール剤から噴射される薬剤又は化粧料は、医薬品、医薬部外品及び化粧品に相当する薬剤又は化粧料であることが好ましい。上記噴射型エアゾール剤から噴射される薬剤又は化粧料としては特に限定されないが、例えば、育毛剤、頭皮リフレッシャー、制汗剤、筋肉消炎剤、ヘアスタイリング剤、ヘアシャンプー剤、ヘアトリートメント剤、ヘアリンス剤、染毛剤、シェービング剤、ムダ毛処理剤及び殺虫剤等が挙げられる。
【0042】
本発明に係るエアゾール組成物に含まれている上記液の性状は、液状又はゲル状であることが好ましく、液状であることがより好ましい、なお、「液状」又は「ゲル状」とは、25℃での粘度が3000mPa・s未満であることをいう。上記粘度は、B型粘度計(トキメック社製)を用いて、ロータNo.3、60rpm及び1分の各条件で測定される。
【0043】
次に、上述したエアゾール組成物を用いた噴射型エアゾール剤を詳細に説明する。
【0044】
図1に、本発明の一実施形態に係る噴射型エアゾール剤を正面図で示す。図2に、図1に示す噴射型エアゾール剤におけるエアゾール容器を断面図で示す。
【0045】
図1,2に示すように、噴射型エアゾール剤1は、エアゾール容器2と、エアゾール容器2内に充填されている上記エアゾール組成物(図示せず)とを備える。エアゾール容器2は、容器本体11とキャップ12と噴射ノズル13とを有する。キャップ12は、容器本体11の上端に、噴射ノズル13を覆うように取り付けられる。図1では、キャップ12は、容器本体11から取り外されている。噴射ノズル13は、容器本体11の上端の中央に取り付けられている。噴射ノズル13は先端に、噴射口13aを有する。
【0046】
また、図2に示すように、エアゾール容器2は、バルブ21とボタン22とを有する。バルブ21は、ステム31とマウンテンカップ32とハウジング33とパイプ34と錘り35とを有する。また、ボタン22は、ボタン本体41と、噴射口13aを有する噴射ノズル13とを有する。
【0047】
噴射型エアゾール剤1は、薬剤又は化粧料を皮膚上に噴射する噴射型エアゾール剤であることが好ましく、薬剤又は化粧料を頭皮上に噴射する噴射型エアゾール剤であることがより好ましい。噴射型エアゾール剤1は、育毛剤又は育毛リフレッシャーを頭皮上に噴射する噴射型エアゾール剤であることが特に好ましい。
【0048】
噴射型エアゾール剤1はエアゾール組成物を、霧状に噴射しないことが好ましく、ジェット噴射することが好ましく、略直線状に噴射することが好ましい。未使用時の状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、噴射ノズル13の噴射口13aから5cm離れた位置における噴射幅Wbが、噴射口13aから1cm離れた位置における噴射幅Waの1.5倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましい。
【0049】
未使用時におけるエアゾール容器2の25℃での内圧は、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上、更に好ましくは0.5MPa以上、特に好ましくは0.6MPa以上である。上記内圧が上記下限以上であると、噴射口13aから充填物をより一層良好に噴射でき、噴射圧をより一層高めることができる。特に、上記内圧が0.4MPa以上であると、ジェット状にかつ略直線状に良好に噴射することができ、更に上記噴射幅Wbを上記噴射幅Waの1.5倍以下、1.2倍以下にすることが容易である。未使用時におけるエアゾール容器2の25℃での内圧の上限は、0.65MPa以下であることが好ましい。上記内圧が上記上限以下であると、噴射口13aから充填物をより一層良好に噴射できる。
【0050】
未使用時の状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、噴射ノズル13の噴射口13aから5cm離れた位置における初期噴射圧Pは、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.04MPa以上である。上記初期噴射圧Pが上記下限以上であると、使用者が頭皮などの皮膚上で到達実感をより一層得ることができる。上記初期噴射圧Pの上限は特に限定されないが、好ましくは0.08MPa以下である。上記初期噴射圧Pが上記上限以下であると、噴射口13aから充填物をより一層良好に噴射できる。
【0051】
未使用時のエアゾール剤(製品)において、エアゾール組成物は消費されずに、エアゾール容器2内にエアゾール組成物100質量%が残存していることが好ましい。
【0052】
未使用時における上記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して上記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、噴射ノズル13の噴射口13aから5cm離れた位置における噴射圧P1が、上記初期噴射圧Pの30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。上記初期噴射圧Pに対する上記噴射圧P1の減少率が小さいほど、連続使用により噴射型エアゾール剤における上記エアゾール組成物の残量が少なくなった場合でも、使用者が皮膚上で到達実感を十分に得ることができる。
【0053】
また、未使用時における上記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して上記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、噴射ノズル13の噴射口13aから5cm離れた位置における噴射圧P1は、好ましく0.015MPa以上、より好ましくは0.02MPa以上である。上記噴射圧P1が上記下限以上であると、連続使用により噴射型エアゾール剤における上記エアゾール組成物の残量が少なくなった場合でも、使用者が皮膚上で到達実感を十分に得ることができる。
【0054】
なお、上記初期噴射圧P及び上記噴射圧P1を、噴射口13aから5cm離れた位置における値としたのは、噴射型エアゾール剤1の充填物を頭皮などの皮膚上に噴射する際に、噴出口13aと皮膚との間隔が一般に2〜10cmであり、5cm程度であることが多いためである。
【0055】
上記初期噴射圧P及び上記噴射圧P1は、具体的には、以下のようにして測定される。
【0056】
図1に示すように、噴射ノズル13の噴射口13aから5cm離れた位置に、プラスチック板51(縦10cm×横10cm×厚み2mm)を主面が水平方向と直交するように配置する。なお、プラスチック板51は、噴射型エアゾール剤1に含まれない。この配置状態で、プラスチック板51の主面の略中央部に向けて、噴射ノズル13の噴射口13aからエアゾール組成物(充填物)を噴射する。噴射物(エアゾール組成物)がプラスチック板51に到達したときの、プラスチック板51にかかる荷重(N)と、噴射物がプラスチップ板51に当たった面積(mm)とを測定する。荷重(N)と面積(mm)とから、上記初期噴射圧P及び上記噴射圧P1が求められる。
【0057】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0058】
(実施例1〜8及び比較例1〜7)
下記の表1,2に示す組成を有する液及び噴射剤を下記の表1,2に示す配合量で配合したエアゾール組成物を、エアゾール容器内に充填した。また、下記の表1,2に示す使用バルブ及び使用ボタンを用いて、更に内圧を下記の表1,2に示すように設定して、噴射型エアゾール剤を得た。
【0059】
(評価)
(1)到達実感の評価:上記初期噴射圧P及び上記噴射圧P1
得られた噴射型エアゾール剤を、エアゾール組成物(充填物)が水平方向に噴射されるように配置した。噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置に、プラスチック板(縦10cm×横10cm×厚み2mm)を主面が水平方向と直交するように配置した。レオメータ(RHEO METER CR−5000DX:サン科学社製)の応力感知部分に、上記プラスチック板を固定した。
【0060】
上述の配置状態で、プラスチック板の主面の略中央部に向かって、25℃にて噴射ノズルの噴射口からエアゾール組成物(充填物)を水平方向(鉛直方向と直交する方向)に噴射した。噴射物であるエアゾール組成物がプラスチック板に到達したときの、プラスチック板にかかる荷重(N)と、噴射物がプラスチップ板に当たった面積(mm)とを測定した。
【0061】
上記レオメータの応力感知部分にかかる応力(N)を、上記荷重(N)とした。また、噴射物がプラスチップ板に当たった面積(mm)は、ハイスピードカメラ(GX−8:ナックイメージテクノロジー社製)を用いて、噴射物がプラスチップ板に当たった時点での画像を撮影し、撮影された画像の幅から、円の到達面積を求めた。なお、実施例及び比較例ではいずれも、噴射物がプラスチック板に当たった部分の形状は略真円状であった。
【0062】
未使用時の状態(エアゾール組成物180g)から25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、荷重(N)と面積(mm)との測定値から、上記初期噴射圧Pを求めた。
【0063】
未使用時における上記エアゾール組成物180g(100質量%)のうちの162g(90質量%)を噴射し、上記エアゾール組成物の残量が18g(10質量%)となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、荷重(N)と面積(mm)との測定値から、上記噴射圧P1を求めた。
【0064】
(2)到達実感の評価:官能評価
官能評価パネル20名がそれぞれ、未使用時の状態(エアゾール組成物180g)から25℃にて、得られた噴射型エアゾール剤の充填物を、噴射口から5m離れた頭皮に向けて噴射した。
【0065】
また、官能評価パネル20名がそれぞれ、未使用時における上記エアゾール組成物180g(100質量%)のうちの162g(90質量%)を噴射し、上記エアゾール組成物の残量が18g(10質量%)となった状態から25℃にて、得られた噴射型エアゾール剤の充填物を、噴射口から5m離れた頭皮に向けて噴射した。
【0066】
官能評価パネル20名が、頭皮上での到達実感を、下記の基準で判定した。
【0067】
[到達実感の判定基準]
○○:20名中16名以上が、頭皮上での到達実感に優れると回答
○:20名中11〜15名が、頭皮上での到達実感に優れると回答
△:20名中6〜10名が、頭皮上での到達実感に優れると回答
×:20名中5名以下が、頭皮上での到達実感に優れると回答
【0068】
結果を下記の表1,2に示す。なお、実施例及び比較例の噴射型エアゾール剤では、未使用時及び10質量%残存時において、エアゾール組成物(充填物)はジェット状かつ略直線状に噴射され、かつ噴射口から5cm離れた位置における噴射幅Wbは、噴射口から1cm離れた位置における噴射幅Waの1.2倍以下であった。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
上記表1,2において、噴射型エアゾール剤に用いた使用バルブ及び使用ボタンの種類は以下の通りである。
【0072】
使用バルブの種類1:A80W14(D)62373(0.4)×137C(1.1)FW45(丸一社製)
使用バルブの種類2:A80W14(B)62373(0.4)×137C(1.1)FW45(丸一社製)
使用ボタンの種類3:白2F−139M90−387(0.6)白55G(丸一社製)
【符号の説明】
【0073】
1…噴射型エアゾール剤
2…エアゾール容器
11…容器本体
12…キャップ
13…噴射ノズル
13a…噴射口
21…バルブ
22…ボタン
31…ステム
32…マウンテンカップ
33…ハウジング
34…パイプ
35…錘り
41…ボタン本体
51…プラスチック板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤に用いられるエアゾール組成物であって、
水及びアルコールを含む液と、噴射剤とを含有し、
前記液中の前記水の含有量と前記液中の前記アルコールの含有量とが質量比で、20:80〜50:50であり、
前記噴射剤が、ジメチルエーテルと、液化石油ガスと、窒素ガスとを含む、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記ジメチルエーテルと前記液化石油ガスとの含有量が質量比で、70:30〜90:10である、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記ジメチルエーテルと前記液化石油ガスとの合計100質量部に対して、前記窒素ガスの含有量が0.3質量部以上、1.8質量部以下である、請求項1又は2に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記液100質量部に対して、前記ジメチルエーテルと前記液化石油ガスと前記窒素ガスとの合計の含有量が5質量部以上、40質量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
前記液が、薬効成分及び化粧料原料の内の少なくとも一方をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
薬剤又は化粧料を噴射する噴射型エアゾール剤であって、
噴射ノズルを有するエアゾール容器と、
前記エアゾール容器内に充填された請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアゾール組成物とを備える、噴射型エアゾール剤。
【請求項7】
未使用時における前記エアゾール容器の25℃での内圧が、0.4MPa以上である、請求項6に記載の噴射型エアゾール剤。
【請求項8】
未使用時の状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、前記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における初期噴射圧が、0.04MPa以上である、請求項6又は7に記載の噴射型エアゾール剤。
【請求項9】
未使用時における前記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して前記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、前記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における噴射圧が、前記初期噴射圧の50%以上である、請求項8に記載の噴射型エアゾール剤。
【請求項10】
未使用時における前記エアゾール組成物100質量%のうちの90質量%を噴射して前記エアゾール組成物の残量が10質量%となった状態から、25℃にて水平方向に噴射を行ったときに、前記噴射ノズルの噴射口から5cm離れた位置における噴射圧が、0.02MPa以上である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の噴射型エアゾール剤。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−1682(P2013−1682A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134966(P2011−134966)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】