説明

エアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置

【課題】散気膜のスリットにおいて析出物の発生を抑制・回避することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置を提供する。
【解決手段】本発明のエアレーション装置は、エアレーションノズルの散気膜に形成されるスリット12の開口部及び/又はその近傍に撥水処理を施すことにより、撥水処理層150を設け、スリット12への海水の浸入を防止し、スリットでの硫酸カルシウム等の析出を抑制・回避する。撥水処理層150を形成する材料としては、例えばタルクを用いたタルク被覆処理層、フッ素樹脂を被覆したフッ素被覆処理層、シリコーン樹脂を被覆したシリコーン被覆処理層、ワックスを被覆したワックス被覆処理層等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(暴気)するエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微細気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものである。一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。従来、ゴム製の散気膜の場合、スリットの長さは、1〜3mm程度である。
【0006】
このようなエアレーションノズルを用いて、海水中でエアレーションを連続して行うと、散気膜のスリット壁面やスリット開口近傍に、海水中の硫酸カルシウム等の析出物が析出し、スリットの間隙が狭くなったり、スリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させ、散気装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等の吐出手段の吐出圧高が発生し、ブロワ、コンプレッサ等に負荷がかかるという、問題がある。
【0007】
析出物の発生は、散気膜の外側に位置する海水が、スリットから散気膜の内側へ浸み込み、常時スリットを通過する空気に、長時間に亙って触れて乾燥(海水の濃縮)が促進され、析出に至っている、と推定される。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、散気膜のスリットにおいて析出物の発生を抑制・回避することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、前記スリットの開口部及び/又はその近傍に撥水処理層を有することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記撥水処理層が、疎水性材料からなる被覆処理層であることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、前記撥水処理層が、フッ素被覆処理層又はシリコーン被覆処理層又はワックス被覆処理層のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1の発明において、前記撥水処理層が、フラクタル構造処理層であることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、散気膜がゴム製、金属製又はセラミックス製のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0014】
第6の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、前記散気膜が、ゴム材料100重量部に対して、疎水性材料を25〜95重量部添加してなり、スリットの開口部及び/又はその近傍に撥水処理層を有することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0015】
第7の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルと、前記空気供給配管に疎水性材料を添加する疎水性材料供給手段とを具備することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0016】
第8の発明は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う第1乃至7のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて析出物の発生を抑制・回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
【図2−1】図2−1は、エアレーションノズルの平面図である。
【図2−2】図2−2は、エアレーションノズルの正面図である。
【図3】図3は、エアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図4】図4は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。
【図5】図5は、本実施例に係るエアレーションノズルの散気膜に形成されるスリットの開口部の概略図である。
【図6−1】図6−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。
【図6−2】図6−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況を示す図である。
【図6−3】図6−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物(析出物が成長した場合)の状況を示す図である。
【図7】図7は、本実施例に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図8】図8は、フラクタル構造の模式図の一例である。
【図9】図9は、析出物をX線回折で分析したチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0020】
本発明による実施例に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
図1に示すように、海水排煙脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSO2を亜硫酸(H2SO3)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0021】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインL1を介して供給される海水103の内の一部の吸収用の海水103を排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSO2を海水103に吸収させる。そして、排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aは、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。そして、希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、酸化用空気ブロア121より供給された空気122をエアレーションノズル123により供給し、水質回復させた後、排水124として海へ放流するようにしている。
図1中、符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、120はエアレーション装置、122aは気泡、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は空気供給ラインである。
【0022】
このエアレーションノズル123の構成を図2−1、図2−2及び図3を参照して説明する。
図2−1は、エアレーションノズルの平面図、図2−2は、エアレーションノズルの正面図、図3は、エアレーションノズルの内部構造概略図である。
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、基材の周囲を覆うゴム製の散気膜11に小さなスリット12が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から供給される空気122の圧力により散気膜11が膨張すると、スリット12が開いて略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0023】
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から分岐した複数(本実施例では8本)の枝管(図示せず)に設けられたヘッダ15に対して、フランジ16を介して取り付けられている。なお、希釈使用済海水103B中に設置される枝管及びヘッダ15には、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用されている。
【0024】
エアレーションノズル123は、たとえば図3に示すように、希釈使用済海水103Bに対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体20を用い、この支持体20の外周を覆うようにして多数のスリット12が形成されたゴム製の散気膜11を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結部材22により固定した構成とされる。
【0025】
また、上述したスリット12は、圧力を受けない通常の状態においては閉じている。なお、海水排煙脱硫装置100においては、常時空気122を供給しているので、常にスリット12は開放状態である。
【0026】
ここで、支持体20の一端20aは、ヘッダ15に取り付けた状態で空気122の導入を可能とすると共に、その他端20bは、海水103が導入可能に開口されている。
このため、一端20a側は、ヘッダ15及びフランジ16を貫通する空気導入口20cを介してヘッダ15内部と連通している。そして、支持体20の内部は、支持体20の軸方向の途中に設けた仕切板20dにより分割され、この仕切板20dにより空気の流通が阻止されている。さらに、この仕切板20dよりヘッダ15側となる支持体20の側面には、散気膜11の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜11を加圧して膨張させる加圧空間11aへ空気122を流出させるための空気出口20e、20fが開口している。従って、ヘッダ15からエアレーションノズル123に流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから支持体20の内部へ流入した後、側面の空気出口20e、20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
なお、締結部材22は、散気膜11を支持体20に固定するとともに、空気出口20e、20fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0027】
このように構成されたエアレーションノズル123において、ヘッダ15から空気導入口20cを通って流入する空気122は、空気出口20e、20fを通って加圧空間11aへ流出することにより、最初はスリット12が閉じているため加圧空間11a内に溜まって内圧を上昇させる。内圧が上昇された結果、散気膜11は加圧空間11a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜11に形成されているスリット12が開くことによって空気122の微細気泡を希釈使用済海水103B中に流出させる。
【0028】
図4は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。図4に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120は、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備するものである。
また、空気供給ラインL5には、2基の冷却器131A、131Bと、2基のフィルタ132A、132Bとが各々設けられている。これにより、ブロア121A〜121Dにより圧縮された空気は冷却され、次いで濾過されている。冷却・濾過された空気は、枝管L5A〜5H及びヘッダ15を介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル123で供給され、微細気泡が発生する。
なお、ブロアが4基あるのは、通常は3基で運転しており、その内の1基は予備としている。また、冷却器131A、131Bと、フィルタ132A、132Bとが各々2基あるのは、連続して運転する必要から、通常は片方のみで運転し、他方はメンテナンス用としている。
【0029】
以下、本実施例に係るエアレーション装置について説明する。本発明では、散気膜11に形成するスリットの開口部及び/又はその近傍に撥水処理を施すことにより、スリットへの海水の浸入を防止し、スリット12での硫酸カルシウム等の析出を抑制・回避するようにしたものである。
図5は、本実施例に係るエアレーションノズル123の散気膜11に形成されるスリット12の開口部の概略を示す。
【0030】
図5に示すように、本実施例に係るスリット12は、その開口部のスリット壁面12a及びその開口部の縁12bに撥水処理層150を形成している。
このように、開口部及びその近傍を撥水処理することにより、析出物の析出を抑制・回避することができる。
【0031】
ところで、海水の塩分濃度は3.4%であり、96.6%の水に3.4%の塩が溶けている。この塩は、塩化ナトリウムが77.9%、塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.1%、その他0.2%の構成となっている。
【0032】
この塩のなかで、海水の濃縮(海水の乾燥)につれて、硫酸カルシウムが最初に析出する塩であり、その析出の閾値が海水の塩分濃度で約14%である。
【0033】
ここで、スリットの付着する析出物を分析した結果を図9に示す。図9は、析出物をX線回折で分析したチャートである。図9に示すように、ほとんどのピークは硫酸カルシウム由来のピークであることが判明した。
【0034】
ここで、スリット12に析出物が析出するメカニズムを図6−1〜図6−3を用いて説明する。
図6−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。図6−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水および析出物の状況を示す図である。図6−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物(析出物が成長した場合)の状況を示す図である。
ここで、本発明において、スリット12とは、散気膜11に形成される切れ込みをいい、スリット12の間隙は空気が排出される通路となる。
この通路を形成するスリット壁面12aは、海水103が接触しているが、空気122の導入によって乾燥・濃縮され、濃縮海水103aとなり、その後スリット壁面に析出物103bが析出され、スリットの通路を閉塞するものとなる。
【0035】
図6−1は、空気122の相対湿度(飽和度)が低いので、海水の塩分濃縮が徐々に増加し、濃縮海水103aが形勢された状況を示している。但し、海水の濃縮が始まっても海水の塩分濃度が概ね14%以下では、硫酸カルシウム等の析出はない。
【0036】
図6−2は、濃縮海水103aの一部において、局所的に海水の塩分濃度が14%を超えた部分に析出物103bが発生している状態である。この状態では析出物103bが僅かであるので、スリット12を空気が通過する際の圧力損失が僅かに上昇するものの、空気122は通過可能である。
【0037】
これに対し、図6−3は、濃縮海水103aの濃縮が進行すると、析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が大きくなる状態である。なお、このような状態でも空気122の通路は残っているものの吐出手段にはかなりの負荷がかかるものとなる。
よって、このような状態とならないように、スリット12の開口部及びその近傍に、撥水処理層150を設けることにより、スリットへの海水の浸入を防止し、スリットでの析出物103bの発生を抑制・回避できるので、長期間に亙っての安定した運転が可能となる。
【0038】
撥水処理層を形成する材料としては、種々の撥水性材料を挙げることができるが、例えばタルク、シリカ粉末等を用いた疎水性材料からなる被覆処理層、フッ素樹脂を被覆したフッ素被覆処理層、シリコーン樹脂を被覆したシリコーン被覆処理層、ワックスを被覆したワックス被覆処理層を挙げることができる。
ここで、疎水性材料の被覆の際には、直ちに、剥がれないような例えば定着剤等を用いることが好ましい。散気膜を離型する際、またはその後、形成するようにすればよい。
【0039】
このように、化学的に撥水材料を用いて撥水処理をした結果、その表面状態が疎水性を有し、水を弾くこととなる。
よって、スリットへの海水の浸入が抑制・回避され、海水の海塩濃度が濃縮されることがなく、析出物の析出が防止される。
【0040】
図8は、フラクタル構造の模式図である。図8に示すような、スリットの表面を物理的な無数の凹凸面を形成したフラクタル構造処理層とすることにより、撥水性を向上させるようにしてもよい。このフラクタル構造は、例えばコッホ曲線のような、大きな凹凸の中に小さな凹凸を有し、この小さな凹凸の中に更により小さな凹凸が存在するという凹凸構造が入れ子状態となったものであり、濡れ性が増大するものをいう。
【0041】
また、スリットの形成の際において、例えばプラズマ処理によって開口部を形成することにより、開口部分に無数の凹凸面を形成するようにしてもよい。この際、不活性雰囲気で処理するのが好ましい。これは酸素官能基の発生を防止するためである。
【0042】
ここで、散気膜としては、ゴム製のものが好適であるが、本発明ではこれに限定されず、例えばステンレス製や樹脂製のものを挙げることができる。
【0043】
フッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂、略号:PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂、略号:PCTFE, CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(略号:PVDF)、ポリフッ化ビニル(略号:PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(略号:PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(略号:FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(略号:ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(略号:ECTFE)等を例示することができる。
この撥水処理は、スリットの形成後に、処理するようにしている。
【0044】
また、散気膜11のそれ自体に疎水性材料を練りこむようにしてもよい。
例えば、ゴム材料100重量部に対して、疎水性材料を25〜95重量部添加して散気膜を構成し、結果としてスリット12の開口部及び/又はその近傍に撥水処理層を有するようにしてもよい。なお、疎水性材料の添加が上記範囲外であると、撥水性の効果が発現できず、好ましくない。
この疎水性材料としては、例えばタルク、シリカ粉末等を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
また、ゴム材料としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とするのが好ましい。
【0046】
図7は、本実施例に係る他のエアレーション装置の概略図である。
図7に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Aは、図4に示すエアレーション装置120において、疎水性材料160を添加する疎水性材料供給手段161を設け、疎水性材料ラインL6を介して、疎水性材料160を空気供給ラインL5内に供給するようにしている。
添加する疎水性材料160としては、例えばタルク、シリカ粉末の少なくとも一つを用いるのが好ましい。
【0047】
この疎水性材料160の供給は、空気122を供給してエアレーションノズル123より微細な空気を供給している際に、圧力変動があった後、スリット12から析出物を除去し、その後撥水処理を行うのが好ましい。
析出物の除去は、空気のパージ処理や空気の停止処理を行うことで、散気膜11のスリット12に変動を与えて、スリット12に付着した析出物を除去するようにすればよい。
この撥水処理を施すことにより、その後スリット12は撥水性を有するとともに、汚れにくくなる。
【0048】
以上、本実施例では被処理水として海水を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば汚染処理における汚染水にエアレーションを行うエアレーション装置において、散気孔(メンブレンスリット)での汚泥成分の析出によるプラッギングを防止でき、長期間に亙って安定して操業することができる。
【0049】
以上、本実施例ではエアレーション装置として、チューブ型のエアレーションノズルを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばディスク型や平板型のエアレーション装置や、セラミックス、金属(例えばステンレス製)の散気装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係るエアレーション装置によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて析出物の発生を抑制・回避することができ、例えば海水排煙脱硫装置に適用して、長期間に亙って連続して安定した操業が可能となる。
【符号の説明】
【0051】
11 散気膜
12 スリット
100 海水排煙脱硫装置
102 排煙脱硫吸収塔
103 海水
103A 使用済海水
103B 希釈使用済海水
105 希釈混合槽
106 酸化槽
120、120A エアレーション装置
123 エアレーションノズル
150 撥水処理層
160 疎水性材料



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、
前記スリットの開口部及び/又はその近傍に撥水処理層を有することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記撥水処理層が、疎水性材料からなる被覆処理層であることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記撥水処理層が、フッ素被覆処理層又はシリコーン被覆処理層又はワックス被覆処理層のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記撥水処理層が、フラクタル構造処理層であることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
散気膜がゴム製、金属製又はセラミックス製のいずれかであることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項6】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、
前記散気膜が、ゴム材料100重量部に対して、疎水性材料を25〜95重量部添加してなり、スリットの開口部及び/又はその近傍に撥水処理層を有することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項7】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルと、
前記空気供給配管に疎水性材料を添加する疎水性材料供給手段とを具備することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項8】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至7のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置。



【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−40494(P2012−40494A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183500(P2010−183500)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】