エキソ−S−メカミラミン製剤および治療におけるその使用
【課題】実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない薬剤的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を投与することによってニコチン反応性神経精神障害を治療する。その薬剤的有効量はその病状を改善するのに十分な量である。
【解決手段】薬剤的に許容される担体と組み合わせて、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない薬剤的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を含むニコチン反応性神経精神障害薬剤組成物。好ましくは、その薬剤的有効量は約0.5mgから約20mgである。
【解決手段】薬剤的に許容される担体と組み合わせて、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない薬剤的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を含むニコチン反応性神経精神障害薬剤組成物。好ましくは、その薬剤的有効量は約0.5mgから約20mgである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体異性体、より詳細にはエキソ−S−メカミラミン鏡像体の化学合成、ならびに医療における使用の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
メカミラミン(N,2,3,3-テトラメチルバイシクロ−[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩、 826-39-1)は、臨床的に有意な血圧降下作用を有する神経節遮断薬としてメルク(Merck & Co., Inc.)によって開発されかつ特徴付けが成された(Stone et al., J. Med Pharm Chem 5(4); 665-90, 1962)。メカミラミンの独特な特徴−非常に優れた経口投与による効果、迅速な効果発現、長い作用持続期間、および胃腸管からのほぼ完全な吸収等−は、その当時、既存の神経節遮断薬よりもメカミラミンをより望ましいものとした(Baer et al., 1956)。
【0003】
高血圧の治療におけるメカミラミンの確認された効果にもかかわらず、広範囲の副交感神経阻害の結果生じる副作用のため、メカミラミンは本態性高血圧のための第一線の治療から排除された。一般的に神経節遮断は、結果として、膀胱および胃腸管の無緊張症、性的機能障害、毛様体筋麻痺、口腔乾燥症、発汗の減少、ならびに体位性低血圧をもたらし得る。高血圧に効果的な用量(25mg/日)で経験したメカミラミンの副作用は、心血管への影響、低体温、振戦、抗利尿、痛覚抑制 (antinociception)、視力障害、勃起不全、排尿困難、舞踏病に似た動作、精神異常、緊張感、鬱状態、不安、不眠、言語不明瞭、虚弱、疲労、鎮静、頭痛、便秘、および腎不全であった。7.5mg/日のような低用量でさえ便秘を生じさせるといういくつかの証拠が報告されている。味覚異常(味覚の変化)、目眩、不眠および消化不良のわずかな増加が認められた。メカミラミンは、高血圧性脳障害(Moser, 1969)、高血圧性緊急状態、自律性反射障害(autonomic dysreflexia)(Badddom and Johnson, 1969; Braddom and Rocco, 1991)のような特別の状況において引き続き使用された。いくつかの研究室および時折の臨床研究を除いて、メカミラミンの需要は稀である。
【0004】
末梢神経節遮断作用に加えて、メカミラミンは血液脳関門を通過し、さらに、副交感神経機能に対する有意な影響を及ぼさない用量で選択的ニコチン受容体アンタゴニストとして機能する(Banerjee et al., 1990; Martin et al., 1993)。その結果、メカミラミンは、タバコおよびニコチンのほとんどの生理的、行動的、および補強的効果を遮断する(Martin et al., 1989)。ニコチン依存性の研究において、2.5から20mgの用量を患者に対して急性に投与した。例えば、Roseらは、成人喫煙者において、うまく許容された低用量のメカミラミン(2.5から10mg)が喫煙の主観的効果を減らすことを見出した(1989)。
【0005】
成人における禁煙治療のための経口メカミラミン(5mg/日、1日に2回服用)の効果を評価した最近の二重盲式プラセボ比較試験において、メカミラミン治療で報告された視覚障害、起立時の目眩、口腔乾燥、虚弱、腹痛、または排尿困難等のほとんどの症状の副作用に関して、対照を超える有意な上昇は無かった。メカミラミン治療による最も一般的な症状は軽い便秘である;5週間のメカミラミン治療のある時点において、プラセボ群において32%であったのに対して、患者の70%が便秘を報告した(Rose et al., 1994)。また、メカミラミンが認識機能(Newhouse PA et al., Neuropsychopharmacology 10: 93-107, 1994)、脳波(Pickworth WB, Herning RI, Henningfield JE, Pharmacology Biochemistry & Behavior 30: 149-153, 1988)、および皮質血流(Gitalman DR, Prohovnik I, Neurobiology of Aging 13: 313-318, 1992)を変化させることが報告されている。
【0006】
ほとんどの動物研究は0.5mg/kgを超える用量を用いたが、Driscollは、低用量のメカミラミン(0.5mg/kgではなく、<0.3mg/kg)のみを高回避ラット(high-avoidance rats)に投与すると、0.1mg/kgニコチンとほとんど同程度(0.2mg/kgニコチンよりは低いが)、回避成功を上昇させることを見出した。その実験に基づき、Driscollは、「メカミラミンは、行動試験においてニコチンを遮断するのに用いられる用量レベルで、ラットに予測できない効果を与えるであろう」と結論付けた(Driscoll P., Psychopharmacologia (Berl.) 46: 119-21, 1976)。
【0007】
多くの有機化合物が光学活性体として存在し、すなわち、それら化合物は平面偏光の偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物の記載において、前に付けたRおよびSは、キラル中心の周りでのその分子の絶対配置を表示するのに用いられる。前につけた(+)および(−)、あるいはdおよびlは、その化合物による偏光面の回転の符号を示すのに用いられ、(−)およびlはその化合物が左旋性であることを意味する。(+)およびdが前に付けられた化合物は右旋性である。所定の化学構造において、立体異性体と称されるそれら化合物は、それらがお互いの鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体を鏡像体と称して差し支えなく、さらにそのような異性体の混合物を鏡像体混合物またはラセミ混合物と称することが多い。
【0008】
立体化学的純度は医薬の分野で重要であり、上位20の処方薬の中で、12が光学活性である。プロプラノロールのl-体が1つの例であり、d-体よりも約100倍強力である。特定の異性体は単に不活性というよりもむしろ有毒と成り得るため、光学純度は重要である。別の例は、妊娠時のつわりを制御するための安全かつ効果的な鎮静剤であるd-サリドマイドである;l-サリドマイドは強力なテラトゲンと考えられている。
【0009】
メカミラミンは、光学異性体エキソ−R−メカミラミンおよびエキソ−S−メカミラミン塩酸塩を含むラセミ混合物として市販されてきた。それら2つの異性体の薬理作用を調べる目的での以前の研究は、概して、効能または効果においてほとんどまたは全く違いを見出さなかった。例えば、Stoneらは(1962)、ニコチン誘導痙攣および瞳孔拡張に対する効果について、(+)メカミラミン塩酸塩をメカミラミン塩酸塩ラセミ混合物と比較し、本質的にそれら2つの化合物間に有意差を見出さず、「光学異性は活性の程度の決定に重要な役割を果たさない」と結論付けた(Stone, supra, p.675)。Schonenbergerらは(1986)、神経筋伝達の測定法でのd-およびl-メカミラミン塩酸塩の作用において「興味深い違い」を報告した。しかしながら、彼らはその違いについて詳述しなかった。
【0010】
米国特許第5,039,801号(Brossi and Schonenberger)は、「対応するメチルベンジル尿素から、それぞれ収率40%で、正反対の(−)-および(+)-メカミラミンを得て、それらは高い光学純度(95%、HPLC)であり、1回の結晶化によって光学的に純粋である塩酸塩をもたらす」ことを開示した(段落3、32-37行)。しかしながら、それら実験結果の開示において、彼らは、「濃縮された酸性化反応混合物のエーテル抽出物を濃縮し、さらにその残渣を蒸留して(Kugel、180°、20トール(2.67kpa))、TLC純粋無色液体(冷却するとロウ質固形物に変わる)として(−)-12(6.08g, 96%):[α]D=-77.0°(ベンゼン中c+2.6)lit.(+)-12:[α]D=+80.1°(ベンゼン中c=3):を得たことについて記載している。アルカリ性の水相から得た有機相を併せたものを濃縮し、得られた液体をEt2O(20ml)と混合し、Et2O中のHClをわずかに過剰量添加することによって、粗塩酸塩(+)-1.HClを沈殿させた。濾過後、2-プロパノールから微粉状の無色固形物を再結晶化させて、針状の(+)-1.HCl(1.02g, 64%):[A]D=+20.1°(CHCl3中、c+1.7)を得た。より極性の尿素3(1.85g, 5.89mmol)を正確に同じやり方で処理して、752mgを得た(無色の針状物として(−)-1.HCl(63%):[A]D=-20.0°(CHCl3中、c=2.2))」(段落6、20-37行)。しかしながら、in vivoまたはin vitroデータは全く開示されなかった。
【0011】
Suchockiらは(1991)、ニコチンがもたらす自発運動活性の抑制および痛覚抑制の測定法において、d-およびl-メカミラミン塩酸塩の作用を調べた。彼らは、両方の光学異性体が、ニコチンによって生じた痛覚抑制の阻止において類似の効能を有することを見出したが、ニコチンがもたらす自発運動活性抑制の阻止に関しては、実験的混乱のため、(+)-メカミラミン異性体の効能を特定することができなかった。
【0012】
トゥーレット症候群(TS)は、多用な運動性および発声性のチックを含む広範囲の症状によって特徴付けられる常染色体優性神経精神障害である。その症候群は、突然の、急激な、短時間の、再発する、非リズミカルな、ステレオタイプ運動(運動性チック)または音(発声性チック)によって大体が表現される多動性運動障害であり、抵抗不能衝動として経験されるが、種々の期間抑制され得る(Tourette Syndrome Classification Study Group, Arch Neurol 50: 1013-16)。運動性チックは、通常、瞬き、頭の動き(head jerking)、肩をすくめること、および顔を歪めることを含むが、発声性または声のチックは、喉をゴロゴロ言わせること、鼻をすすること、甲高い声を上げること、舌を打つこと、および汚言を含む。その症状は、通常、幼児期に始まり、患者の一生の間に、比較的軽い状態から非常に重篤な状態に変動する(Robertson MM, Br J Psychiatry, 154:147-169, 1989)。また、多くのTS患者は、強迫症状(Pauls DL et al. Psychopharm Bull, 22: 730-733, 1986)、多動性および注意欠陥(Comings DE, Himes JA, Comings BG, J Clin Psychiatry, 51: 463-469, 1990)等の他の神経精神異常をも表す。過激な気質または攻撃的な行動による問題もしばしば生じ(Riddle MA et al. Wiley Series in Child and Adolescent Mental Health, Eds. Cohen DJ, Bruun, RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 151-162, 1988; Stelf ME, Bornstein RA, Hammond L, A survey of Tourette syndrome patients and their families: the 1987 Ohio Tourette Survey, Cincinnati, Ohio Tourette Syndrome Association, 1988)、不登校および学習障害がそうである(Harris D, Silver AA, Learning Disabilities, 6(1): 1-7, 1995; Silver AA, Hagin RA, Disorders of Learning Childhood, Noshpitz JD, ed. New York City: Wiley, pp. 469-508, 1990)。
【0013】
TSの病因はまだ分かっていないが、ドーパミン受容体アンタゴニストの治療効果に大いに基づいて、過剰な線状体ドーパミンおよび/またはドーパミン受容体の過敏性が挙げられている(Singer HS et al. Ann Neurol, 12: 361-366, 1982)。TSはしばしば、ドーパミンアンタゴニスであるハロペリドール(Haldol○R, McNeil Pharmaceutical, Raritan, NJ)で治療されており、症例の約70%において有効である(Erenberg G, Cruse RP, Rothner, AD, Ann Neurol, 22: 383-385, 1987; Shapiro AK, Shapiro E, Wiley series in child and adolescent mental health, Eds. Cohen DJ, Bruun RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 267-280, 1988)。他の神経安定薬として、ピモジン(Shapiro ES et al. Arch Gen Psychiatry, 46: 722-730, 1989)、フルフェナジン(Singer HS, Gammon K, Quaskey S. Pediat Neuroscience, 12: 71-74, 1985-1986)、およびリスペリドン(Stamenkovic et al., Lancet 344: 1577-78, 1994)が挙げられる。関連する注意欠陥多動性障害(ADHD)に効果的であるα-アドレナリン作動性アゴニストであるクロニジンは、運動性および声のチックにおいて、40%の成功率を有するのみである(Bruun RD, J Am Acad Child Psychiatry, 23: 126-133, 1984; Cohen DJ et al. Arch Gen Psychiatry 37: 1350-1357, 1980)。種々の割合の有効性を有する他の薬剤として、クロナゼパム(Gonce M, Barbeau A. Can J Neurol Sci 4: 279-283, 1977)、ナロキソン(Davidson PW et al. Appl R
es Ment Retardation 4: 1-4, 1983)、およびフルオキセチン(Riddle MA et al. J Am Acad Child Adol Psychiatry 29: 45-48, 1990)が挙げられる。一般的に用いられる薬剤は、ハロペリドールである(Erenberg G, Cruse RP, Rothner AD, Ann Neurol, 22: 383-385, 1987)。しかしながら、ハロペリドールの治療的用量は、神経衰弱、嗜眠状態、鬱状態、体重増加、パーキンソン病様症状−さらに長期間の使用によって−遅発性運動障害における問題をしばしば生じさせる(Shapiro AK, Shapiro E, Tourette's syndrome and Tic Disorders: Clinical Understanding and Treatment;Wiley series in child and adolescent mental health. Eds. Cohen, DJ, Bruun, RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 267-298, 1988)。遅発性運動障害の副作用は、さらに、舌、顎、胴体および/または手足の異常な無意識の動きを付加し得るため特に厄介である。
【0014】
Erenbergらは、ほとんどのTS患者が、しばしば副作用のため、16歳までにハロペリドールまたは他の神経安定薬の使用を中止していることを見出した(Erenberg G, Cruse RP, Rothner AD, Ann Neurol 22: 383-385, 1987)。TS患者が薬剤の使用を止めた後、彼らは発言および運動をほとんど制御しておらず、そのため彼らの多くはフルタイムの責任ある仕事につくのに不適格とみなされている。警察官を含む公衆は、その症状をしばしば中毒と同一視する。突然の行動および汚言は大きな社会問題を生じさせる。
【0015】
TSを表す子供の50%が注意欠損多動性障害(ADHD)でもあることが認められている。ADHDは、注意障害、衝動的行為、および多動性によって特徴付けられる神経生物学的障害である。ADHDは現在、350万人を苦しめている最も一般的に診断されている子供の神経症状である。さらに、ADHDの若者の60%が成人しても引き続いて症状を有し、さらに250万人の患者をもたらす。
【0016】
多くの神経精神障害が、限定はされないが、強迫性障害(OCD)、TS、ADHD、片側失調症 (hemidystonia)、およびハンチントン病等の異常なまたは無意識の運動に関連する。それら疾患は、脳の基底核における神経化学的不均衡によって生じ得る。基底核におけるnACHrsを活性化することによって、アセチルコリンはヒトにおける運動活性を調節する(Clarke PBS, Pert A, Brain Res 348: 355-358, 1985)。ニコチン性興奮は、基底核におけるドーパミン(DA)産生細胞の活性を刺激する(Clarke PBS et al. J Pharmacol Exper Therapeutics 246: 701-708, 1988; Grenhoff J, Aston-Jones G, Svennson TH, Acta Physiol Scand 128: 351-358, 1986; Imperato A, Mulas A, Di Chiara G, Eur J Pharmacol 132: 337-338, 1986)が、メカミラミンはnACHrを阻止し、さらに基底核構造からのDAの遊離を阻害する(Ahtee L, Kaakkola S, Br J Pharmacol 62: 213-218, 1978)。
【0017】
米国特許第5,774,052号(Rose and Levin)は、ニコチンおよび他の薬物の使用を減らすためのアゴニスト−アンタゴニストの組合せについて開示している。ニコチンとの組合せにおいて、タバコ依存症の治療のためニコチン様アンタゴニストであるメカミラミンを与えた。Rose およびLevinは、ニコチンおよびメカミラミンの両方をパッチ中に含めることを提案した。また、RoseおよびLevinはそのようなアゴニスト−アンタゴニストの組合せを他の精神障害およびニューロン機能障害等の症例(例えば、交感神経性自律神経障害による躁鬱病、精神分裂病および高血圧)において用い得ることを主張した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平1−100120号公報
【特許文献2】特表平2−501479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
症状のより優れたコントロールおよびより少ない副作用を有することは、患者にとって利益となるであろう。多様な障害をもつ患者におけるメカミラミンラセミ化合物を用いた我々の臨床経験は様々な用途を支持する。様々なニコチン反応性神経精神障害の治療のために、エキソ−S−メカミラミンを用いて症状コントロールを改善したことについてこの中に開示する。
【0020】
本発明の1つの目的は、ニコチン反応性神経精神障害を有する患者のための改善された治療を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、患者の薬剤コンプライアンスを改善するため、ならびに患者の生活の質および社会的機能を改善するため、副作用の少ない治療を提供することである。
【0022】
1つの実施形態において、薬剤的に許容される担体と組み合わせて、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない治療的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を含む薬剤組成物を提供する。好ましくは、その量は約0.5mgから約20mgである。その好ましい組成物は、エキソ−S−メカミラミン塩酸塩および薬剤的に許容される担体を含む。請求項1記載の薬剤組成物は、経口投与、および静脈投与に適用できる。その薬剤組成物は、経皮パッチ、固形製剤、または徐放性の形態であって差し支えない。好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが95重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは5重量%未満である。より好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは1重量%未満である。さらにより好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.5重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは0.5重量%未満である。最も好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.7重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは0.3重量%未満である。
【0023】
他の実施形態において、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない治療的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を投与することによる病状の治療を提供しており、その治療的有効量は病状を改善するのに十分な量である。好ましくは、その方法は、静脈内に、経皮的に、胞膜内に(intrathecally)、経口的に、またはボーラス注射によって、エキソ−S−メカミラミンを投与する。好ましくは、エキソ−S−メカミラミンの用量は約0.5mgから約20mgである。好ましくは、1日当たり1回から4回、エキソ−S−メカミラミンを投与する。病状として、限定はされないが、物質依存症(ニコチン、コカイン、アルコール、アンフェタミン、鎮痛剤、他の精神興奮剤およびそれらの組合せ等)、禁煙の補助、禁煙に関連する体重増加の治療、高血圧、高血圧性緊急状態、トゥーレット症候群および他の振戦、癌(小細胞肺癌のような)、粥腫症、神経精神障害(双極性障害、鬱病、不安症、精神分裂病、発作障害、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害等)、慢性疲労症候群、クローン病、自律性反射障害、痙攣性腸障害が挙げられる。
【0024】
別の実施形態において、メカミラミンラセミ混合物の対応する用量の効果よりも長い持続期間を有する抗ニコチン効果を誘導するための方法を提供する。その方法は、その治療を必要とする個体に、メカミラミンラセミ混合物の持続期間の2倍より長い持続期間の抗ニコチン効果をもたらす量のエキソ−S−メカミラミン(90重量%以上のエキソ−S−メカミラミンおよび約10重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する)を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、エキソ−S−メカミラミンがカラムに装填後63.971分で純粋に溶出することを示すガスクロマトグラフィー
【図2】図2は、メカミラミンラセミ混合物、エキソ−R−メカミラミンおよびエキソ−S−メカミラミンの構造を一般的に示す
【図3】図3は、生理食塩水または3つの用量の中の1つの用量のメカミラミンでの7日間の感作を受けたラットによる60分間における全移動距離を表すグラフである。ダガー印はSal/Sal群との間の有意差を示す。星印はSal/Nic群との間の有意差を表す
【図4】図4は、同じ実験でのラットによる移動中心間距離を示すグラフ
【図5】図5は、同じ実験でのラットの垂直活動を示すグラフ
【図6】図6は、処置群および対照群の歩行動作を示す棒グラフ
【図7】図7は、処置群および対照群の立ち上がり動作を示す棒グラフ
【図8】図8は、処置群および対照群のステレオタイプ動作の回数を示す棒グラフ
【図9】図9は、生理食塩水またはある形態のメカミラミンの投与後の移動平均中心間距離を示す棒グラフ
【図10】図10は、メカミラミン/ニコチンの組合せでの2日間の処置の24時間前および24時間後における、ニコチン単独に対する運動反応(全移動距離)を示す棒グラフ
【図11】図11Aおよび図11Bは、ハロペリドール誘導カタレプシーに対する各形態のメカミラミンの効果を示す。図11Aは平均値を示し;図11Bは中間値を示す
【発明を実施するための形態】
【0026】
ある患者と別の患者とではいくらかの違いはあるが、全体として、有効量のエキソ−S−メカミラミンのみを投与することによって、全ての他の薬理学的効果をもたらすことなく所望の効果を提供する「より標的化された」治療を達成できることが観察される。全ての患者にとって、多くの活性スペクトラムを有する化合物を投与されることは望ましくないため、上記のことは重量なことである。
【0027】
メカミラミンの合成は、3つの特許:米国特許第2,831,027号(1958)、第2,885,428号(1959)、および第5,986,142号(1999)に開示されている。
【0028】
メカミラミンの合成のための1つの出発原料はカンフェンであり、そのラセミ混合物またはいずれかの鏡像体である。鏡像体は天然供給源から利用でき、またはキラル媒体を用いて液体クロマトグラフィーで分割することによって得ることができる(Armstrong, J Chrom A, 666: 445, 1994)。キラル試薬が一方の鏡像体と選択的に反応し、他方の鏡像体をそのまま残す動力学的分割を用いてそれら鏡像体を作成しても差し支えない(Jenke, J Organomet Chem, 405: 383, 1991)。また、キラルな前駆体からカンフェン鏡像体を作成しても差し支えない(Hana, Chem Ber, 111: 2527, 1978)。
【0029】
酸性媒体中のカンフェンのラセミ混合物または鏡像体をアジド(Pancrazi, Bull Chim Soc (Fr.), (1977) 162)、シアニド(Stein, J Am Chem Soc, 78: 1514, 1956; Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962; Pfister, 米国特許第2,831,027号(1958))、またはチオシアネート(Luskin, 米国特許第2,885,428号;CA. 53: 20124h)のような窒素供給源と反応させて差し支えない。その様にして作成した中間体をメカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換させることができる。
【0030】
カンフェンのラセミ混合物または鏡像体をカンフェン塩酸塩に変換させ(Gream, Aust J Chem, 27: 567, 1974)、それを亜硝酸塩と反応させて(Hunckel;. Ann 528 (1937) 57; CA. 31: 3033-4)メカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得る中間体を作成して差し支えない。また、その塩酸塩をアミンと反応させて、メカミラミンラセミ混合物または鏡像体(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)、あるいはメカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得る中間体をもたらしても差し支えない。
【0031】
カンフェニロンのラセミ混合物またはその何れかの鏡像体をメチルリチウムまたは類似の求核メチルと反応させて、アルコールを得ても差し支えない(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962; Gream, Aust J Chem, 27 (1974) 567)。カンフェンのために上述した酸性反応をそのアルコールまたはその誘導体に施して、メカミラミンラセミ混合物または何れかの鏡像体、あるいはメカミラミンに変換され得る産物をもたらして差し支えない(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)。カンフェンのラセミ混合物または鏡像体から同様のアルコールを作成し(Coxon, Tetrahedron, 26: 3755, 1970)、さらに上記と同じ反応を施して類似産物をもたらしても差し支えない。
【0032】
カンフェンのラセミ混合物またはそのいずれかの鏡像体と有機アジドとの反応、およびそれに続く反応産物の光分解または熱分解によって(Huisgen, Chem Ber, 98: 3992, 1965; Franz, J Org Chem, 29: 2922, 1964)、開環されて(Gold, J Org Chem, 37: 2208, 1972)メカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得るアジリジンをもたらして差し支えない。
【0033】
ラセミ体または鏡像体のいずれにおいてメカミラミンを合成しても差し支えない。キラルな酸(カルボン酸、スルホン酸、リン酸)を用いた塩形成によってラセミ産物をその鏡像体に分割し(Pfister, 米国特許第2,831,027号(1958);Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)、さらにキラル分子を用いた誘導体化によってその鏡像体を再び生じさせることができる。結晶化または簡単なクロマトグラフィーによって、得られたジアステレオマーを分離し(Schonenberger, Helv. Chim. Acta., 69 (1986) 283)、さらにキラル媒体を用いた液体クロマトグラフィーによって鏡像体を再び生じさせることができる。
【0034】
定義
「エキソ−S−メカミラミン」は、N,2,3,3-テトラメチルバイシクロ-[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩826-39-1のd-鏡像体を含む。その鏡像体は、エキソ−S−N,2,3,3-テトラメチル-バイシクロ-[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩としても称される。
【0035】
「関連するエキソ−S−メカミラミン化合物」は、メカミラミンの様々な活性のある立体異性体および置換アナログを含む(Stone et al., J Med Pharm Chem 5(4); 665-90, 1962、引例によってこの中に組み込まれる)。ニコチン性痙攣、瞳孔拡張、および以下に記載のような他の方法によって、活性をラットで評価することができる。そのような活性は、通常、メチル基の大きな置換によって失われ、そのような化合物は本発明の一部ではない。アミノ基上にメチル基またはジメチル基がある場合に、他の置換基の場合よりも活性が高く、本発明に含まれる。d体は活性があるが;しかしながらdlラセミ混合物の方がわずかに活性が高いように思われる。結果的に、l体が重要な活性を有するように思われる。Stoneらは、エキソ体(メチルアミノ基がメチレン架橋と同じ平面状に位置する)は、エンド体(メチルアミノ基がメチレン架橋の下に位置し、さらにその架橋によって作られたケージ内に位置する傾向がある)よりも常に強力であることを報告した。さらには、一部の構造2,2-ジメチル-3-メチルアミノブタンも活性を有する。Stoneは、d体の異なる型と他のアナログとの間の活性のわずかな違いは重要ではないと結論付けた。
【0036】
この中で用いられている「実質的にエキソ−R−メカミラミン塩酸塩を含まない」の用語は、その組成物が約90重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約10重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有することを意味する。より好ましい実施形態では、組成物は95重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約5重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する。最も好ましい実施形態では、組成物は99重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約1重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する。
【0037】
「有益な効果」は、基準線の臨床的に観察される兆候および症状を越える顕著な改善であり、さらに主観的な患者の改善報告を含めても差し支えない。例えば、運動障害における有益な効果として、チックの頻度または重篤性における減少が挙げられるが、しばしば重篤な異常行動に先行しまたはそれにつながる不安、攻撃的爆発、および前兆となる衝動における減少によって間接的に改善を明示しても差し支えない。臨床的観察およびビデオテープの採点法によって治療効果を定量化することができる。また、動物スクリーニングの結果によって、有益な効果を予測することができる。例えば、Suemaruらは(ibid)、振戦を治療する化合物のスクリーニングのために、ニコチン誘導のラット尻尾の震えを用い得ることを提案した。繰り返しのニコチン投与は、過剰運動およびラット尻尾の震えを誘導し、それらはメカミラミン(0.1-1mg/日、ip)で阻止されるが、脳内に容易に入れないヘキサメトニウムでは阻止されない(Suemaru K., Oishi R, Gomita Y, Arch Pharm 350: 153-57, 1994)。
【0038】
エールグローバルチックセビリティースケール(Yale Golobal Tick Severity Scale)(YGTTS)が、チック症状を評価するために用いられる最も広く使用されている臨床評価尺度である。それは、臨床観察に基づいた重篤なチック頻度の客観的尺度を提供する。その尺度は、前週の間に起こったチックについての患者の個人回想に基づいて記入したチック症状記録を含む。その記録をガイドとして用いて、臨床医は、5つの別個の次元:数、頻度、強度、複雑さおよび障害(interference):に基づいて、運動性および発声性のチックの重篤性を評価する。さらに、前週の間での患者の社会的機能、自尊心等に対するその障害の影響を特徴付ける全体的な機能障害の別個の評価もある。
【0039】
チック症状を評価するための客観的方法は、患者のビデオ記録を用いる。少なくとも5分のビデオテープを見て、運動性および発声性のチックの頻度および重篤性を記録する。ビデオ記録することは、薬剤試験のための臨床評価システムに対して有益性をもたらした(Leckman JF, et al., Arch Gen Psychiatry, 48: 324-328, 1991; Shapiro ES, et al., Arch Gen Psychiatry, 46: 722-730, 1989; McConville BJ, Fogelson MH, Norman AB, Klykylo WM, Manderscheid MA, Parker KW, Sanberg PR, Am J Psychiatry, 148: 793-794, 1991; Silver AA, Shytle RD, Philipp MK, Sanberg PR, The Effects of Nicotine on Biological Systems II. PBS Clarke, M. Quik and K. Thurau, (Eds.); Advances in Pharmacological Sciences, Birkhauser Publishers, pp. 293-299, 1995; Reveley MA, et al., Journal of Psychopharmacology Supplement, A30, 117, 1994)。
【0040】
強迫性障害での有益な効果は、患者または家族の報告によって確認し得る強迫観念または強迫的行動の減少を含む。ニコチン、アルコールまたはコカイン乱用での有益な効果は、薬物を長期間使わないこと、ならびに薬物の要求が減ったという主観的感覚を含む。ヘルペス感染での有益な効果は、発生が止まり、治癒が早く、さらに長期間感染しないことを含む。
【0041】
「副作用」は望ましくない作用であり、限定はされないが、心血管への影響、低体温、振戦、抗利尿、痛覚抑制、視力障害、勃起不全、排尿困難、舞踏病に似た動き、精神異常、緊張感、鬱状態、不安、不眠、言語不明瞭、虚弱、疲労、鎮静、頭痛、便秘、腎不全、味覚異常(味覚の変化)、目眩、および消化不良が挙げられる。
【0042】
「有効量」の用語は、効果もたらすのに必要であるエキソ−S−メカミラミンの量を称する。要求される正確な量は、患者の年齢および体重、障害の重篤性、投与経路等に基づき変化するであろうが、以下に記載のような臨床実験における日常的実験によって容易に特定できる。しかしながら、通常、エキソ−S−メカミラミンの有効量は、一日当たり約0.001mg/kgから約6mg/kg、好ましくは約0.002mg/kgから約3mg/kg、より好ましくは約0.005mg/kgから約2mg/kg、最も好ましくは約0.01mg/kgから約1.5mg/kgの範囲である。薬物抵抗性TSの成人のための開始容量は、一日当たり約2.5mgであり、症状の報告に基づき用量を調整する。軽いADHDの小さな子供は、好ましくは一日当たり1mg以下で開始する。
【0043】
「薬剤的に許容される」の用語は、塩または賦形剤のような化合物において許容できない毒性が無いことを称する。薬剤的に許容される塩として、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等のような無機塩、ならびに酢酸塩、マロン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、シンナメート(cinnamate)、トシル酸塩、クエン酸塩等の有機塩が挙げられる。薬剤的に許容される賦形剤は、E. W. Martinによって完全に記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co)。
【0044】
エキソ−S−メカミラミンを含有する薬剤組成物は、1つ以上の薬剤担体を包含していて差し支えない。「薬剤的に許容される担体」の用語は、相対的に不活性で、毒性が無く、かつ非刺激性である一般的に許容される任意の賦形剤を称する。担体が希釈剤として働く場合は、活性成分のための運搬体、賦形剤または媒体として作用する固形、半固形、または液体の物質であって差し支えない。限定はされないが、経口および非経口(特に、筋肉内および静脈内注射によって、あるいは皮内移植または経皮投与によって)等の任意の投与経路による投与のために、薬剤の単位剤形を調製して差し支えない。そのような剤形の例示として、錠剤、軟質または硬質のゼラチンカプセル、粉末、トローチ剤、チューインガム、エマルジョン、懸濁液、シロップ、溶液、滅菌注射液、および滅菌包装粉末が挙げられる。投与後、任意のまたは全ての化合物の迅速な、持続性の、または遅延性の放出をもたらすために、当業界で公知の方法によって、ニコチンアンタゴニストを含有する組成物を製剤化して差し支えない。上述した一般的剤形に加えて、制御放出手段および/または米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,910,321号;第5,348,746号に記載のような運搬装置によって、ならびに制御放出手段および/または運搬装置の様々な製品によって、本発明の化合物を投与しても差し支えない。
【0045】
本発明のエキソ−S−メカミラミン製剤が経口投与に良く適している場合、好ましい担体が錠剤またはカプセルの形態への製剤化を容易にする。充填剤、潤滑剤、湿潤剤、保存剤、崩壊剤、香味料、ならびにゼラチン、アラビアゴム、セルロース、メチルセルロース等の結合剤等の他の従来の薬用アジュバントと共に、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、デンプン、スクロース、デキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)、タルク等の固形の薬用賦形剤を用いて、それ自体で使用され得る、あるいは錠剤化され、カプセル化され、または上記のような他の適切な形態に調製され得る混合添加剤を形成して差し支えない。製剤の概説は、Remington's Pharmaceutical Science(Mack publishing Co.)に記載されている。
【0046】
投与形態
経口による投与が好ましいが、経皮的使用、鼻腔内スプレー、気管吸入、座剤、注射剤(例えば、筋肉内または静脈内注射)等によって投与しても差し支えない。非経口投与のための担体として、限定はされないが、デキストロース、マンニトール、マンノース、ソルビトールの水溶液、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック重合体等が挙げられる。さらには、適切な保存剤、安定化剤、酸化防止剤、抗菌剤、ならびに例えばBHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリン等の緩衝剤を含んでいて差し支えない。あるいは、ニコチンアンタゴニスト製剤を適切な高分子マトリックスまたは高分子膜中に組込みまたは封入し、皮膚への移植または塗布に適した徐放性運搬装置を提供しても差し支えない。他の装置として、内在カテーテルおよびAlzet○R小型ポンプのような装置が挙げられる。
【0047】
本発明を直接的記載によって開示した。以下に、本方法の利益をもたらす効果を示す実施例を記載する。その実施例は単に例示であり、何ら本方法の範囲を限定するものではない。
【0048】
エキソ−S−メカミラミン塩酸塩の分析
エキソ−S−メカミラミン塩化物(ロット2351)は、図1に示すように、ガスクロマトグラフィーで確認したところ、99.95%の純度であった。エキソ−S−メカミラミン塩酸塩は63.971分間ガスクロマトグラフィー上に保持され、他の意味のあるピークは認められなかった。塩化物の含有量は17.2%であり、理論的限度17.8%より低かったが、規格内であった。カンフェンまたは他の不純物は全く検出されなかった。施光度は+19.4°であった。そのロットは、以下の実施例1および9において使用された。メカミラミンおよびその鏡像体の構造を図2に示す。
【0049】
薬理学 一般的方法 動物
平均体重463グラムの雄のスピローグ-ドーリー(Sprague-Dawley)ラット(Zici-Miller Laboratories, Allison Park, PA)を用いた。それらラットをケージ当たり2-4匹の群に分けて飼育し、食事および水を自由に取れるようにし、さらに、午前8時から午後8時までが夜になるように12時間明/12時間暗の明暗周期を逆転させて飼育した。ラットの夜行性周期の間に全ての試験を行った。
【0050】
測定および装置
全ての運動試験のためにDigiscan Animal Activity Monitor(Model RXYSCM, Accuscan, Inc., Columbus, OH)を用いた。箱の大きさは42cmx42cmx30cmであり、壁および床は透明なアクリル系であった。本実験で用いた各箱は、ラットの動きによって光ビームが遮断された場合に変数の数を計算する光電セルを持つ。全ての運動活性は、Digiproソフトウェアプログラムを用いて自動的に捕獲および記録された。
【0051】
ハロペリドールによって誘導されかつ治療によって遮断されるカタレプシー(ある位置に置かれた後、その位置を維持する能力)を評価するため、棒試験(bar test)を用いた。棒をテーブル表面の9cm上に置いた。ラットの前足を同時に棒上に置き、支えるために後足を下に置いた。両方の前足が棒上に置かれた瞬間から、ラットが両方の前足を棒から離すまでを測定した。最低時間は1秒であり、最大時間は60秒とした。棒上に置かれた時間が短ければ短いほど、ハロペリドール誘導カタレプシーの遮断が大きくなる。
【0052】
薬剤
メカミラミンHClをLayton Bioscience, Inc., Atherton, CAより得た。光学純度および収率を改善するために重要な改変を加えたが(上記を参照)、Stoneらの方法(supra)に従って、ラセミ混合物からメカミラミンの光学異性体を分割した。(-)-ニコチンをSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から得た。ハロペリドール乳酸塩(SolopakR)を地方の製薬会社から得た。全ての薬剤を1mg/mlとなるように生理食塩水に溶解し、皮下投与した。
【実施例】
【0053】
実施例1
88匹の実験に使っていない成長した雄のスピローグ-ドーリー由来ラットをケージ当たり2匹ずつ飼育し、かつ自由に食事および水を取れるようにした。各ラットは、無作為に割り当てられた前処置条件を7日間連続で受けた。その前処置期間の毎日、生理食塩水またはニコチン(0.4mg/kg 、s.c.)を注射する20分前に、生理食塩水、メカミラミンラセミ混合物、エキソ−R−メカミラミンまたはエキソ−S−メカミラミンをラットに投与し、元のケージに戻した。前処置の割当ては、順序の影響を制御するために、各条件から2匹のラットを一緒に開始しかつ試験するように手配した。8日目は処置または試験をラットに与えなかった。60分の慣らし時間、各ラットを運動箱(locomotor box)に入れ、続いてニコチン(0.4mg/kg, s.c.)を注射し、直ぐに運動箱に戻した。続く60分間、5分間隔でデータをコンピューターが記録した。
【0054】
図3-5は、9日目に0.4mg/kgのニコチンを試験投与された全ての群について、3つの独立した変数をそれぞれ示す。生理食塩水/ニコチン(sal/nic)前処置群は、敏感となったニコチンに対する運動反応を表し、そのような反応はメカミラミン/ニコチン(mec/nic)前処置群の何れにおいても明らかでなかった。さらには、ポスト-ホック比較(post-hoc comparison)は、他の前処置群と比較した場合、sal/nic前処置群においてニコチンに対する運動反応が有意に大きい(p<0.05)ことを示唆した。mec/nic前処置群におけるニコチンに対する反応は、全てのmec/sal群が対照よりも有意に低い活性を有していた垂直活動の場合を除いて、sal/sal前処置群にニコチンを投与しなかった群と有意差は無かった(p>0.05)。たった0.1mg/kgで、エキソ−R−メカミラミンはニコチン活性を効率的に遮断して全移動距離を制御した。
【0055】
ニコチン暴露の日におけるメカミラミンおよびその両方の立体異性体での前処置は、敏感となったニコチンに対する運動反応の発生を用量依存的に妨げた。長期にわたる生理食塩水/生理食塩暴露を受けたラットと比較して、長期にわたるメカミラミン/ニコチン暴露を受けたラットにおいて、ニコチン単独での試験投与(9日目)の後の垂直活動の低下が認められた。このことは、メカミラミンへの長期にわたる暴露が、実際に、生理食塩水/生理食塩水群で認められるよりも低いレベルまで、ニコチンに対する運動反応を低下させることを示唆する。メカミラミンの両方の異性体は同じ全体的傾向となったが、エキソ−R−メカミラミンが全体として、より低い用量でより効果が高く、特に中心距離および垂直活動においてそうである。興味深いことに、エキソ−R−メカミラミンで前処置すると中心移動距離において敏感になったニコチン反応の発生を妨げたが、エキソ−S−メカミラミンは妨げなかった。このことは、喫煙者におけるニコチンの抗不安効果の軽減において、エキソ−R−メカミラミンがエキソ−S−メカミラミンまたはメカミラミンラセミ混合物よりも効果が高いことを示唆する。
【0056】
実施例2
本実験は、鏡像体が自発運動活性に作用する能力において異なるか否かを特定するために設計された。7日間のウォッシュアウト期間の後、ラットを無作為にそれぞれ8匹のラットから成る新たな群に割り当てた。生理食塩水、メカミラミンラセミ混合物(3.0mg/kg)、エキソ−S−メカミラミン(3.0mg/kg)、またはエキソ−R−メカミラミン(3.0mg/kg)の中の1つを動物に投与した。そのラットを60分間運動箱に入れ、5分間隔でデータを採取した。
【0057】
図6は、次の3つの図の要である。図6、7および8は、メカミラミンラセミ混合物が、全移動距離(図6)、垂直活動時間(vertical time)(図7)、およびステレオタイプ動作(図8)を含む自発運動活性を減らすことを示す。自発運動活性を減らすその傾向は、エキソ−R−メカミラミンにも当てはまる。一方、エキソ−S−メカミラミンは実質的に自発運動活性に全く効果をもたらさず、あるいは、ある場合には、運動を増加させた。例えば、エキソ−S−メカミラミンを投与されたラットは、生理食塩水で処置されたラットよりも中心位置での有意に高い運動活性を表した(図9)。
【0058】
単独で与えられた場合、エキソ−R−メカミラミンは自発運動活性を減らす傾向があるが、エキソ−S−メカミラミンは全く効果がないか、あるいは実際に運動を増加させる。例えば、エキソ−S−メカミラミンは露地(open field)の中心における移動距離を有意に増加させた。ヒトにおいて不安を軽減させる薬剤(例えばバリウム)を用いた以前の研究でも露地の中心における移動距離を増加させたことから、エキソ−S−メカミラミンも不安を軽減させる可能性がある。
【0059】
実施例3
本実験は、鏡像体がニコチンの運動効果を遮断する作用の持続期間において異なるか否かを特定するために設計された。7日間のウォッシュアウト期間の後、ラットを無作為にそれぞれ8匹のラットから成る2つの群に割り当てた。全てのラットに、1日1回、5日間、ニコチン(0.4mg/kg)を皮下投与した。さらに、ニコチン投与前、1、3および6時間の間隔で、閾値のエキソ−R−メカミラミン(0.3mg/kg)またはエキソ−S−メカミラミン(0.3mg/kg)を投与した。間の日には、ニコチン(0.4mg/kg)を投与する前に1、3および6時間の間隔で生理食塩水を各群のラットに投与した。ニコチン投与前30分間の慣らし時間ラットを運動箱に入れ、その後30分間試験した。
【0060】
図10は、連続2日間エキソ−R−メカミラミンで前処置されたラットが、最後のエキソ−R−メカミラミン投与の24時間後に投与されたニコチンに対する興奮反応を表さないことを示す(paired 2-tailed t-testによって前後を比較して、p<0.01)。エキソ−S−メカミラミンで処置されたラットの興奮反応には実質的に違いは無かった。このことは、エキソ−R−メカミラミンがより長い作用持続期間を有することを示唆する(本試験では24時間以上)。その効果が異性体間の薬物動力学的または薬力学的相違に関連するか否かはまだ確認されていない。
【0061】
実施例4
本実験は、ハロペリドール誘導カタラプシーに対するメカミラミン鏡像体の効果を試験した。48匹のラットをそれぞれ12匹から成る4つの群に無作為に割り当てた。以下の処置:メカミラミンラセミ混合物(3.0mg/kg)、エキソ−S−メカミラミン(3.0mg/kg)、またはエキソ−R−メカミラミン(3.0mg/kg):の中の1つを受けた動物から成る各群を有する対象間(between-subject)設計である。処置化合物を皮下注射する30分前にハロペリドール(0.3mg/kg)をラットに皮下投与した。さらに30分後、ラットを棒の上に置いた。7日間のウォッシュアウト期間の後、処置薬剤を皮下注射する30分前に、ラットに生理食塩水を投与した。実験者はラットが受けた処置を知らされておらず、同じ実験者がその度に投与した。
【0062】
図11Aおよび11Bは、エキソ−R−メカミラミンはハロペリドール誘導カタレプシーを高める傾向があるが、エキソ−S−メカミラミンはハロペリドールに対するカタレプシー反応を軽減させる傾向があることを示す。その所見は、エキソ−R−メカミラミンが多動性障害に有用となり得るが、エキソ−S−メカミラミンは運動低下性障害に有用となりうることを示唆する。
【0063】
実施例5
最近、限定はされないが、若年性ミオクローヌス癲癇、常染色体優性の夜行性前頭葉癲癇およびおそらく遺伝性の突発性癲癇等のいくつかの痙攣性障害が、脳内でニコチンに結合するのと同じ受容体を介していることが示された。ニコチンは、ラットにおいて、短時間の痙攣を引き起こすことが示されている。Okamotoらは(Jpn J Pharmacol 59: 449-55, 1992)、単一の高い用量のメカミラミン(1.0mg/kg)がラットにおいてニコチン誘導痙攣を遮断することを示した。本実験は、ラットでのニコチン誘導痙攣の遮断におけるエキソ−R−メカミラミンの効果を評価する。エキソ−R−メカミラミンの用量は、0.1から3.0mg/kg/日の範囲であり、かつニコチンの用量は2.5から5mg/kg/日の範囲である。腹腔内または他の適切な経路によって投与する。ニコチンを投与する15分前に、エキソ−R−メカミラミンまたは生理食塩水を一揆に腹腔内投与する。薬剤を投与した後、30分間、観察試験箱に各ラットを入れ、痙攣を記録した。
【0064】
実施例6
ドーパミンアゴニストであるアポモルフィンの行動的効果は、トゥーレット症候群のような多ドーパミン性障害(hyperdopaminergic disorder)のための有用な動物モデルを提供した。ラットに投与した場合、アポモルフィンはステレオタイプ動作および舐める動き(licking behavior)を誘導する。ニコチンをアポモルフィンの前に投与した場合、用量依存的に、ニコチンは舐める動きを変化させる(0.05および0.5μg/kgの用量で増加させ、250μg/kgで減少させた)。メカミラミン(1および3mg/kg)はニコチンに対する反応を低下させ、かつ自発的毛づくろいを増加させた(Zarrindast et al., J Psychopharmacol 12: 375-9, 1998)。メカミラミン(0.05、0.25および0.5mg/kg ip)はアポモルフィンに対するラットの舐める反応を多いに減らした(Zarrindast et al. Eur Neuropsychopharmacol 9: 235-8, 1999)。ラットにおけるアポモルフィンに対するステレオタイプ動作の反応を遮断する能力について、エキソ−S−メカミラミン鏡像体を試験する。投与経路は皮下または静脈内注射である。エキソ−S−メカミラミンの用量は薬0.1-3.0mg/kg/日であり、アポモルフィンは0.5-2.0mg/kg/日であり、かつニコチンは0.4mg/kg/日である。急性試験において、アポモルフィンまたはニコチンを投与する15分前に、各ラットに生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンを投与する。薬剤投与に続いて直ぐに、試験のため1時間各ラットを運動箱に入れる。慢性試験のために、ラットを用いて、その前処置が生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンへの暴露の7日間を必要とすることを除いて、急性試験と同じ処置を行って差し支えない。
【0065】
実施例7
本実験は、ストレスに対する神経内分泌反応に関連するニコチン受容体に対するエキソ−S−メカミラミンの効果を評価する。本実験は、ラットへの短期間の暴露によって生じさせた急性ストレスを用いる。低用量(0.1mg/kg)のメカミラミンラセミ混合物は、ストレスを受けたラットに対する神経内分泌反応を妨げる(Shytle et al., Soc Neurosci Abstr 24: 371-15, 1998)。生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンをラットに皮下注射して前処置する。エキソ−S−メカミラミンの用量は約0.01-3.0mg/kg/日である。次に、8区画に分けられた円形で透明のPlexiglas容器に、各ラットごとに1区画を割り当てて入れる。さらに、その容器の一番上に20分間ラットを置く。ストレスを与えない対照は、ホームケージに入れておく。20分後、ラットを取り出して、神経内分泌測定のために直ぐに断頭する。各ラットから血液を集め、血清コルチコステロンレベルを測定する。CRFおよびカテコールアミンレベルの測定のために、各ラットの脳を取り出す。
【0066】
実施例8
脳脊髄を穿刺したラットにおいて、交感神経刺激によって誘導された昇圧反応の遮断を測定することによって、エキソ−S−メカミラミン鏡像体の降圧効果を示す。ハロタン(酸素中2%)でラットを麻酔し、右の頚動脈および頚静脈にカテーテルを挿入し、さらに両方の迷走神経を頸部中間あたりで切断する。左の頚動脈および頚静脈を結紮して脳への血液供給を減らす。全身的な血圧および心拍数を連続的に記録するために、動脈経路を圧力変換機にくっつける。化合物注射のために静脈経路を用いる。眼孔および大後頭孔を通って脊髄を下がり第1仙椎まで鋼製の棒を挿入することによってラットにおいて脳脊髄を穿刺する:交感神経性の流出物に電気的刺激を運ぶためにその棒を用いる。脳脊髄を穿刺すると直ぐに、酸素を豊富に含む空気を用いて人工呼吸を実施し、背中の皮の下に不関電極を挿入し、さらに筋肉収縮を防止するためにガラミン(20mg/kg, iv)を投与する。30分間休ませると心血管パラメーターが安定化する。1Hz、40V、1msパルス持続時間で、交感神経性の流出を引き起こし、その間心血管パラメーターを連続的にモニターすることによって、エキソ−S−メカミラミン処置前後での刺激誘導昇圧反応を測定する。脈圧における刺激によって誘導される上昇の減少は、エキソ−S−メカミラミンによる交感神経阻害を反映する。脈圧が上昇しない場合は、その薬剤が交感神経遮断効果を有し、かつさらなる降圧試験の候補であることを示唆する。あるいは、その試験は、副作用としての起立性低血圧を予測する。
【0067】
実施例9
本実験は、ゼノプスの卵母細胞において発現されたヒトα3β4、α4β2、α3β2およびα7受容体に対するエキソ−S−メカミラミンの効果および効能を評価し、さらにその活性をメカミラミンの活性と比較する。また、電圧依存性および結合可逆性を特定する。成熟した雌のゼノプス・ラエビス(Xenopus laevis)アフリカヒキガエルを卵母細胞の供給源として用いる。クローン化されたcDNAの線状化および精製後、Ambion Inc.(Austin TX)からの適切なmMessage mMachine○Rキットを用いて、in vitroでRNA転写物を調製する。回収した卵母細胞をカルシウムを含まない溶液中、コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corporation, Freehold NJ)と共に室温で1時間処理する。続いて、ステージ5の卵母細胞を単離し、さらに適切なサブユニットcRNAの混合物のそれぞれ(50nL)を注入する。cRNA注入の約1-7日後、記録を行う。
【0068】
電気生理現象のために、卵母細胞増幅器(たとえば、Warner Instruments, Hamden,CT, No. OC-725C)および記録チャンバーを用いて卵母細胞の記録を行う。卵母細胞を全容量約0.6mlの記録チャンバー中に置き、潜在的なムスカリン様反応を阻害するため、1μMアトロピンを含有するカエルリンガー溶液(115mM NaCl, 2.5mM KCl, 10mM HEPES pH7.3, 1.8mM CaCl2)を室温で還流させる。薬剤運搬および洗浄のための一定の静水圧を維持するために、リンガー溶液で満たしたマリオットフラスコを用いる。薬剤を還流液で希釈し、還流経路の末端にある2mlループに装填する。薬剤装填ループのバイパスは、薬剤ループがロードされている間、浴槽液が連続して流れることを可能とする。2様式電気バルブを用いることによって、薬剤装填をデータ収集と同期化させる。浴槽液交換および薬剤装填の速度は好ましくは約6ml/分である。電流電極は250mM CsCl,250mM Csfおよび100mM EGTAを含有する溶液で満たされ、0.5-2MΩの抵抗を持つ。電圧電極は3M KClで満たされ、1-3MΩの抵抗を持つ。-30mVよりプラスの静止膜電位をもつ卵母細胞は用いられなかった。
【0069】
エキソ−S−メカミラミン添加に対する電流反応の測定は、2電極電圧クランプの下で実施する。エキソ−S−メカミラミン添加直前の保持電流を薬剤に対するピーク反応の測定値から差引く。全ての薬剤添加は、5分以上の洗浄時間によって分けられ、薬剤効果が持続する場合はその時間はさらに長い。記録の開始時、全ての卵母細胞はAchの2回の初期コントロール添加を受ける。コントロールAchの2回目の添加は、初期Ach反応後に時折生じる衰弱の効果を最小化する。また、Achの2回目の添加は,各卵母細胞におけるチャンネル発現のレベルを正常化させるために用いられる。残留阻害効果を特定するため、阻害剤と共にAchを添加しまたは阻害剤単独で添加し、その後さらに、AChを単独で添加し、前添加コントロールAch反応と比較する。
【0070】
各受容体サブタイプのために、その反応ピークにおいてかなり高いPopen値を表すがACh添加による衰弱を最小化するレベルまで受容体を刺激するのに十分なコントロールAChの濃度を選択する。そのような条件は最大阻害を達成するのに適切である。より高いACh濃度は得られる最大反応を阻害するため、α3含有受容体のためのコントロールACh濃度は通常約100μMであり、かつα4β2受容体のためには10μMである。
【0071】
薬剤阻害の電圧依存性を評価する実験のため、最初に、卵母細胞を保持電位-50mVに電圧を固定し、ACh単独のコントロール添加を供給する。設計された試験電位で第2のコントロール反応を得る。AChとエキソ−S−メカミラミンとの同時投与のために、保持電位を設計された電圧に維持する。5分間の洗浄時間後、試験電圧でAChを続いて添加して、残存阻害を評価する。
【0072】
α3β4受容体を有する卵母細胞において、ラセミ混合物およびエキソ−S−メカミラミンは類似の正規化用量反応曲線およびIC50を有し、その結果から、エキソ−R−メカミラミンも同様であると予測される。しかしながら、ラセミ混合物およびエキソ−S−メカミラミンの5分間の洗浄後の用量反応曲線は異なっており、ほとんどの用量でエキソ−S−メカミラミンの方がより高い反応を誘導する。このことは、エキソ−S−メカミラミンは受容体遮断の持続時間が短く、かつエキソ−R−メカミラミンが重要な抹消受容体とのより長時間の活性を担うことを示唆する。S-鏡像体のIC50は、ラセミ混合物のIC50より約2倍大きかった。
【0073】
以前暴露されたα3β4受容体を有する卵母細胞を洗浄し、回復させ、さらにメカミラミンラセミ混合物で処理した場合、二相性の曲線となり、そのことは、その受容体に対してラセミ混合物が二相性に解離することを示唆する。阻害の約50%は7-8分でなされ、さらに残りの50%は遥かに長い時間がかかり、5-10倍の時間がかかると予測される。エキソ−R−メカミラミン塩酸塩は、その重要な中枢神経系受容体において非常に長い半減期を有するであろう。
【0074】
要約すると、それら実験は、エキソ−R−メカミラミンとエキソ−S−メカミラミンとの作用の重要な薬理学的相違を示す。それら異性体は以下の兆候(それらに限定はされないが):トゥーレット症候群、高血圧、高血圧性緊急状態、癌(例えば、小細胞肺癌)、脂肪腫(atherogenic lipid profile)、気分障害(双極性障害および鬱病)、不安障害、振戦、アルコール依存症、鎮痛剤およびアンフェタミン中毒、発作障害、嘔吐、慢性疲労症候群、クローン病、自律性反射障害、痙攣性腸障害、ならびにニコチン反応性障害(例えば、精神分裂病、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害)、ニコチン乱用(喫煙、噛みタバコ等)およびコカインおよびアルコールのような他の物質の乱用:の治療において有効である。本発見は、両方の異性体が強力なニコチンアンタゴニストとして作用し、一方で、メカミラミン塩酸塩のラセミ混合物に関連する副作用を回避することを示唆する。
【0075】
他の使用
最近の報告は、ニコチンが精神分裂病(Adler LE et al, Am J Psychiatry 150: 1856-1861, 1993)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(Levin ED et al, Psychopharmacology 123: 55-62, 1995)および鬱病(Salin-Pascual RJ et al, Psychopharmacology 121(4): 476-479, 1995)の症状を軽減することを示唆している。一般的にnAChr活性化が「ニコチン反応性」障害におけるニコチンの治療的作用を担うと考えられているが(Decker MW et al, Life Sci, 56: 545-570, 1995)、多くの他の薬物と同様に、ニコチンは複合的な神経薬理学的効果を有する。従って、そのようなニコチン反応性障害を有する多くの人々をnAChr遮断薬によって救済することができ、そのことは、ニコチン反応性障害であるTSおよびADHDでの症状を軽減させるnAChr遮断薬であるメカミラミンの実施例を用いてこの中に開示されている。
【0076】
多ドーパミン性症状に関連すると考えられている精神障害の1つである精神分裂病は神経安定薬で最もよく治療される;しかしながら、その障害がニコチン反応性障害であるという考察は無い。例えば、精神分裂病患者の調査は、喫煙割合が、全精神障害患者において35%から54%でありかつ一般住民において30%-35%であるのに対して、精神分裂患者では74%から92%であることを示している。喫煙は、集中力を強化し異常覚醒からの不安を軽減することによって、潜在的な精神病質を改善し得ると考えられてきた(Gopalaswamy AK, Morgan R, Br J Psychiatry, 149: 523, 1986)。さらには、ニコチンは精神分裂病治療および神経安定治療に関連する認識欠損を軽減させるのにある役割を果たし得る。喫煙は、精神分裂病患者における知覚ゲート欠損(sensory gating deficit)を正常化することが見出されており(Aldler LE et al, Am J Psychiatry 150: 1856-1861, 1993)、さらに最近の研究は、経皮吸収させたニコチンが標準的な抗精神病薬の不利な認識効果を逆転させ、さらに全体的に精神分裂患者の認識能力を改善することを見出した(Levin ED et al, Psychopharmacology 123: 56-63, 1996)。ニコチン投与が実際にnAChr遮断薬と類似の効果を有すると仮定すると、メカミラミン異性体のようなnAChr遮断薬も抗精神病薬の不利な認識効果を逆転させかつ精神分裂患者の認識能力を改善することが可能である。さらには、ニコチンはTSにおける神経安定剤の治療効果を増強するため(McConvile BJ et al, Biological Psychiatry 31: 832-840, 1992)、精神分裂病およびハンチントン舞踏病のような「神経安定剤反応性」障害における神経安定剤への添加剤としてメカミラミンを使用すると、神経安定剤の用量を減らすことができ、それによって治療効果を減らすことなく神経安定剤の副作用を軽減させることができる。
【0077】
コカイン使用は、米国において次第に一般問題となっており、生涯での使用割合は2.5%であり、現在のコカイン乱用または依存症の割合は約1%である(Regier et al., 1990)。高額な個人的な徹底管理およびカウンセリングプログラムを除いて、公知の有用な治療は無い。
【0078】
多くの精神分裂病および鬱病患者もコカインの高い使用率を有する;その割合は40-50%と見積もられる。対照では喫煙率が22%であるのに対して、コカイン乱用者の75%はニコチン依存症でもあると推定されている。
【0079】
コカイン、ニコチンおよびメカミラミンに関する動物結果は曖昧である。一方、コカインおよびそのアナログは、メカミラミンの作用部位である高親和性nAChr上の非競合的イオンチャンネル部位に対する適度な親和性で、仔牛の脳に結合する(Lerner-Marmarosh N, Carroll FI and Abood LG, Life Sciences 56(3): 67-70, 1995)。コカインはニコチンの行動的効果に拮抗するのに適度に効果的である。しかしながら、マウスにおいて、メカミラミン(1mg/kg)、およびニコチンアンタゴニストであるジヒドロ-β-エリスロイジン(2mg/kg)、およびムスカリン性アンタゴニストであるアトロピン(2mg/kg)の全身的投与は、未使用動物での精神刺激誘導のステレオタイプ動作に効果が無かった。それら3つ全ての薬剤は、コカイン過敏化の誘導または発現の何れに対しても効果が無かった(Karler, Brain Res. 1996(Jul 1) 725(2): 192-8)。SpealmanおよびGoldbergは、リスザルにおいて、ニコチンおよびコカインの静脈内注射による予定管理された行動に対するメカミラミンの効果を試験した(J Pharm Exp Therap 223: 402-06, 1982)。実験の前にメカミラミンを投与すると、ニコチンによる維持された反応を生理食塩水による対照レベルまで下げるが、コカインによる維持された反応は下げない。それにもかかわらず、トゥーレット症候群、双極性障害患者、および精神分裂病様症状の患者におけるメカミラミンの上記経験に基づき、コカイン乱用者もメカミラミンおよび他のニコチンアンタゴニストを用いた治療によって恩恵を受けると考えられる。
【0080】
ウィルス感染、特にI型およびII型ヘルペスの治療は、自律神経節遮断薬であるテトラエチルアンモニウムイオンまたはヘキサメトニウムイオンを用いて上手く着手されている(米国特許第5,686,448号)。エキソ−S−メカミラミンは自律神経節遮作用を有するため、ウィルス感染に対しても同様に効果的であることが予測され得る。
【0081】
メカミラミンは有機リン殺虫剤の中毒性を軽減させることが知られている。例えば、ラットに8mg/kgのDFP(有機リン殺虫剤)を投与すると全てのラットが5時間以内に死亡した。しかしながら、30mg/kgのメカミラミンおよび致死量のDFPを受けた4匹のラット中3匹が5時間を越えて生存した。効果的な異性体のみを投与することによって、メカミラミンの用量を減らすことは有益であろう。
【0082】
ニコチン性アセチルコリン受容体であるα4(α3ではなく)およびα7は、アルツハイマー病において側頭部皮質から失われる。トリチウム化されたアゴニストで標識されたニューロンのニコチン性アセチルコリン受容体は、アルツハイマー病(AD)において大脳皮質で減少する。[3H]エピバチジン結合と組み合わせて、α3、α4およびα7サブユニットに特異的な組換えペプチドに対する抗体による免疫ブロッティングを用いて、14名のAD症例および15名の年齢を合せた対照患者の側頭部皮質からの検死解剖組織を比較した。α3、α4およびα7に対する抗体は、ウェスタンブロットにおいて、それぞれ59、51および57kDの位置に1つの主要バンドをもたらした。[3H]エピバチジン結合およびα4様の免疫反応性(α4サブユニットの細胞外ドメインおよび細胞質ループに対する抗体を用いる)は、対照患者と比較して(p<0.02)、および対照患者の死亡前に喫煙していなかった下位群(前記2つのパラメーターのための)(n=9)と比較して(p<0.05)、AD症例において低かった。[3H]エピバチジン結合および細胞質のα4様の免疫反応性は、対照群の死亡前に喫煙していた下位群(n=4)において有意に高かった(p<0.05)。α3 またはα7様の免疫反応性は、ADまたはタバコの使用に関連した有意な変化は無かった。α4の選択的関連性は、ADにおけるニコチン受容体の役割および可能性のある治療標的を理解するのに意味を持つ(Martin-Ruiz CM et al. Neurochem 1999 Oct; 73(4): 1635-40)。
【0083】
前述の説明および実施例は単に例示を意図しており、開示された発明を限定することを意図していない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体異性体、より詳細にはエキソ−S−メカミラミン鏡像体の化学合成、ならびに医療における使用の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
メカミラミン(N,2,3,3-テトラメチルバイシクロ−[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩、 826-39-1)は、臨床的に有意な血圧降下作用を有する神経節遮断薬としてメルク(Merck & Co., Inc.)によって開発されかつ特徴付けが成された(Stone et al., J. Med Pharm Chem 5(4); 665-90, 1962)。メカミラミンの独特な特徴−非常に優れた経口投与による効果、迅速な効果発現、長い作用持続期間、および胃腸管からのほぼ完全な吸収等−は、その当時、既存の神経節遮断薬よりもメカミラミンをより望ましいものとした(Baer et al., 1956)。
【0003】
高血圧の治療におけるメカミラミンの確認された効果にもかかわらず、広範囲の副交感神経阻害の結果生じる副作用のため、メカミラミンは本態性高血圧のための第一線の治療から排除された。一般的に神経節遮断は、結果として、膀胱および胃腸管の無緊張症、性的機能障害、毛様体筋麻痺、口腔乾燥症、発汗の減少、ならびに体位性低血圧をもたらし得る。高血圧に効果的な用量(25mg/日)で経験したメカミラミンの副作用は、心血管への影響、低体温、振戦、抗利尿、痛覚抑制 (antinociception)、視力障害、勃起不全、排尿困難、舞踏病に似た動作、精神異常、緊張感、鬱状態、不安、不眠、言語不明瞭、虚弱、疲労、鎮静、頭痛、便秘、および腎不全であった。7.5mg/日のような低用量でさえ便秘を生じさせるといういくつかの証拠が報告されている。味覚異常(味覚の変化)、目眩、不眠および消化不良のわずかな増加が認められた。メカミラミンは、高血圧性脳障害(Moser, 1969)、高血圧性緊急状態、自律性反射障害(autonomic dysreflexia)(Badddom and Johnson, 1969; Braddom and Rocco, 1991)のような特別の状況において引き続き使用された。いくつかの研究室および時折の臨床研究を除いて、メカミラミンの需要は稀である。
【0004】
末梢神経節遮断作用に加えて、メカミラミンは血液脳関門を通過し、さらに、副交感神経機能に対する有意な影響を及ぼさない用量で選択的ニコチン受容体アンタゴニストとして機能する(Banerjee et al., 1990; Martin et al., 1993)。その結果、メカミラミンは、タバコおよびニコチンのほとんどの生理的、行動的、および補強的効果を遮断する(Martin et al., 1989)。ニコチン依存性の研究において、2.5から20mgの用量を患者に対して急性に投与した。例えば、Roseらは、成人喫煙者において、うまく許容された低用量のメカミラミン(2.5から10mg)が喫煙の主観的効果を減らすことを見出した(1989)。
【0005】
成人における禁煙治療のための経口メカミラミン(5mg/日、1日に2回服用)の効果を評価した最近の二重盲式プラセボ比較試験において、メカミラミン治療で報告された視覚障害、起立時の目眩、口腔乾燥、虚弱、腹痛、または排尿困難等のほとんどの症状の副作用に関して、対照を超える有意な上昇は無かった。メカミラミン治療による最も一般的な症状は軽い便秘である;5週間のメカミラミン治療のある時点において、プラセボ群において32%であったのに対して、患者の70%が便秘を報告した(Rose et al., 1994)。また、メカミラミンが認識機能(Newhouse PA et al., Neuropsychopharmacology 10: 93-107, 1994)、脳波(Pickworth WB, Herning RI, Henningfield JE, Pharmacology Biochemistry & Behavior 30: 149-153, 1988)、および皮質血流(Gitalman DR, Prohovnik I, Neurobiology of Aging 13: 313-318, 1992)を変化させることが報告されている。
【0006】
ほとんどの動物研究は0.5mg/kgを超える用量を用いたが、Driscollは、低用量のメカミラミン(0.5mg/kgではなく、<0.3mg/kg)のみを高回避ラット(high-avoidance rats)に投与すると、0.1mg/kgニコチンとほとんど同程度(0.2mg/kgニコチンよりは低いが)、回避成功を上昇させることを見出した。その実験に基づき、Driscollは、「メカミラミンは、行動試験においてニコチンを遮断するのに用いられる用量レベルで、ラットに予測できない効果を与えるであろう」と結論付けた(Driscoll P., Psychopharmacologia (Berl.) 46: 119-21, 1976)。
【0007】
多くの有機化合物が光学活性体として存在し、すなわち、それら化合物は平面偏光の偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物の記載において、前に付けたRおよびSは、キラル中心の周りでのその分子の絶対配置を表示するのに用いられる。前につけた(+)および(−)、あるいはdおよびlは、その化合物による偏光面の回転の符号を示すのに用いられ、(−)およびlはその化合物が左旋性であることを意味する。(+)およびdが前に付けられた化合物は右旋性である。所定の化学構造において、立体異性体と称されるそれら化合物は、それらがお互いの鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体を鏡像体と称して差し支えなく、さらにそのような異性体の混合物を鏡像体混合物またはラセミ混合物と称することが多い。
【0008】
立体化学的純度は医薬の分野で重要であり、上位20の処方薬の中で、12が光学活性である。プロプラノロールのl-体が1つの例であり、d-体よりも約100倍強力である。特定の異性体は単に不活性というよりもむしろ有毒と成り得るため、光学純度は重要である。別の例は、妊娠時のつわりを制御するための安全かつ効果的な鎮静剤であるd-サリドマイドである;l-サリドマイドは強力なテラトゲンと考えられている。
【0009】
メカミラミンは、光学異性体エキソ−R−メカミラミンおよびエキソ−S−メカミラミン塩酸塩を含むラセミ混合物として市販されてきた。それら2つの異性体の薬理作用を調べる目的での以前の研究は、概して、効能または効果においてほとんどまたは全く違いを見出さなかった。例えば、Stoneらは(1962)、ニコチン誘導痙攣および瞳孔拡張に対する効果について、(+)メカミラミン塩酸塩をメカミラミン塩酸塩ラセミ混合物と比較し、本質的にそれら2つの化合物間に有意差を見出さず、「光学異性は活性の程度の決定に重要な役割を果たさない」と結論付けた(Stone, supra, p.675)。Schonenbergerらは(1986)、神経筋伝達の測定法でのd-およびl-メカミラミン塩酸塩の作用において「興味深い違い」を報告した。しかしながら、彼らはその違いについて詳述しなかった。
【0010】
米国特許第5,039,801号(Brossi and Schonenberger)は、「対応するメチルベンジル尿素から、それぞれ収率40%で、正反対の(−)-および(+)-メカミラミンを得て、それらは高い光学純度(95%、HPLC)であり、1回の結晶化によって光学的に純粋である塩酸塩をもたらす」ことを開示した(段落3、32-37行)。しかしながら、それら実験結果の開示において、彼らは、「濃縮された酸性化反応混合物のエーテル抽出物を濃縮し、さらにその残渣を蒸留して(Kugel、180°、20トール(2.67kpa))、TLC純粋無色液体(冷却するとロウ質固形物に変わる)として(−)-12(6.08g, 96%):[α]D=-77.0°(ベンゼン中c+2.6)lit.(+)-12:[α]D=+80.1°(ベンゼン中c=3):を得たことについて記載している。アルカリ性の水相から得た有機相を併せたものを濃縮し、得られた液体をEt2O(20ml)と混合し、Et2O中のHClをわずかに過剰量添加することによって、粗塩酸塩(+)-1.HClを沈殿させた。濾過後、2-プロパノールから微粉状の無色固形物を再結晶化させて、針状の(+)-1.HCl(1.02g, 64%):[A]D=+20.1°(CHCl3中、c+1.7)を得た。より極性の尿素3(1.85g, 5.89mmol)を正確に同じやり方で処理して、752mgを得た(無色の針状物として(−)-1.HCl(63%):[A]D=-20.0°(CHCl3中、c=2.2))」(段落6、20-37行)。しかしながら、in vivoまたはin vitroデータは全く開示されなかった。
【0011】
Suchockiらは(1991)、ニコチンがもたらす自発運動活性の抑制および痛覚抑制の測定法において、d-およびl-メカミラミン塩酸塩の作用を調べた。彼らは、両方の光学異性体が、ニコチンによって生じた痛覚抑制の阻止において類似の効能を有することを見出したが、ニコチンがもたらす自発運動活性抑制の阻止に関しては、実験的混乱のため、(+)-メカミラミン異性体の効能を特定することができなかった。
【0012】
トゥーレット症候群(TS)は、多用な運動性および発声性のチックを含む広範囲の症状によって特徴付けられる常染色体優性神経精神障害である。その症候群は、突然の、急激な、短時間の、再発する、非リズミカルな、ステレオタイプ運動(運動性チック)または音(発声性チック)によって大体が表現される多動性運動障害であり、抵抗不能衝動として経験されるが、種々の期間抑制され得る(Tourette Syndrome Classification Study Group, Arch Neurol 50: 1013-16)。運動性チックは、通常、瞬き、頭の動き(head jerking)、肩をすくめること、および顔を歪めることを含むが、発声性または声のチックは、喉をゴロゴロ言わせること、鼻をすすること、甲高い声を上げること、舌を打つこと、および汚言を含む。その症状は、通常、幼児期に始まり、患者の一生の間に、比較的軽い状態から非常に重篤な状態に変動する(Robertson MM, Br J Psychiatry, 154:147-169, 1989)。また、多くのTS患者は、強迫症状(Pauls DL et al. Psychopharm Bull, 22: 730-733, 1986)、多動性および注意欠陥(Comings DE, Himes JA, Comings BG, J Clin Psychiatry, 51: 463-469, 1990)等の他の神経精神異常をも表す。過激な気質または攻撃的な行動による問題もしばしば生じ(Riddle MA et al. Wiley Series in Child and Adolescent Mental Health, Eds. Cohen DJ, Bruun, RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 151-162, 1988; Stelf ME, Bornstein RA, Hammond L, A survey of Tourette syndrome patients and their families: the 1987 Ohio Tourette Survey, Cincinnati, Ohio Tourette Syndrome Association, 1988)、不登校および学習障害がそうである(Harris D, Silver AA, Learning Disabilities, 6(1): 1-7, 1995; Silver AA, Hagin RA, Disorders of Learning Childhood, Noshpitz JD, ed. New York City: Wiley, pp. 469-508, 1990)。
【0013】
TSの病因はまだ分かっていないが、ドーパミン受容体アンタゴニストの治療効果に大いに基づいて、過剰な線状体ドーパミンおよび/またはドーパミン受容体の過敏性が挙げられている(Singer HS et al. Ann Neurol, 12: 361-366, 1982)。TSはしばしば、ドーパミンアンタゴニスであるハロペリドール(Haldol○R, McNeil Pharmaceutical, Raritan, NJ)で治療されており、症例の約70%において有効である(Erenberg G, Cruse RP, Rothner, AD, Ann Neurol, 22: 383-385, 1987; Shapiro AK, Shapiro E, Wiley series in child and adolescent mental health, Eds. Cohen DJ, Bruun RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 267-280, 1988)。他の神経安定薬として、ピモジン(Shapiro ES et al. Arch Gen Psychiatry, 46: 722-730, 1989)、フルフェナジン(Singer HS, Gammon K, Quaskey S. Pediat Neuroscience, 12: 71-74, 1985-1986)、およびリスペリドン(Stamenkovic et al., Lancet 344: 1577-78, 1994)が挙げられる。関連する注意欠陥多動性障害(ADHD)に効果的であるα-アドレナリン作動性アゴニストであるクロニジンは、運動性および声のチックにおいて、40%の成功率を有するのみである(Bruun RD, J Am Acad Child Psychiatry, 23: 126-133, 1984; Cohen DJ et al. Arch Gen Psychiatry 37: 1350-1357, 1980)。種々の割合の有効性を有する他の薬剤として、クロナゼパム(Gonce M, Barbeau A. Can J Neurol Sci 4: 279-283, 1977)、ナロキソン(Davidson PW et al. Appl R
es Ment Retardation 4: 1-4, 1983)、およびフルオキセチン(Riddle MA et al. J Am Acad Child Adol Psychiatry 29: 45-48, 1990)が挙げられる。一般的に用いられる薬剤は、ハロペリドールである(Erenberg G, Cruse RP, Rothner AD, Ann Neurol, 22: 383-385, 1987)。しかしながら、ハロペリドールの治療的用量は、神経衰弱、嗜眠状態、鬱状態、体重増加、パーキンソン病様症状−さらに長期間の使用によって−遅発性運動障害における問題をしばしば生じさせる(Shapiro AK, Shapiro E, Tourette's syndrome and Tic Disorders: Clinical Understanding and Treatment;Wiley series in child and adolescent mental health. Eds. Cohen, DJ, Bruun, RD, Leckman JF, New York City, John Wiley and Sons, pp. 267-298, 1988)。遅発性運動障害の副作用は、さらに、舌、顎、胴体および/または手足の異常な無意識の動きを付加し得るため特に厄介である。
【0014】
Erenbergらは、ほとんどのTS患者が、しばしば副作用のため、16歳までにハロペリドールまたは他の神経安定薬の使用を中止していることを見出した(Erenberg G, Cruse RP, Rothner AD, Ann Neurol 22: 383-385, 1987)。TS患者が薬剤の使用を止めた後、彼らは発言および運動をほとんど制御しておらず、そのため彼らの多くはフルタイムの責任ある仕事につくのに不適格とみなされている。警察官を含む公衆は、その症状をしばしば中毒と同一視する。突然の行動および汚言は大きな社会問題を生じさせる。
【0015】
TSを表す子供の50%が注意欠損多動性障害(ADHD)でもあることが認められている。ADHDは、注意障害、衝動的行為、および多動性によって特徴付けられる神経生物学的障害である。ADHDは現在、350万人を苦しめている最も一般的に診断されている子供の神経症状である。さらに、ADHDの若者の60%が成人しても引き続いて症状を有し、さらに250万人の患者をもたらす。
【0016】
多くの神経精神障害が、限定はされないが、強迫性障害(OCD)、TS、ADHD、片側失調症 (hemidystonia)、およびハンチントン病等の異常なまたは無意識の運動に関連する。それら疾患は、脳の基底核における神経化学的不均衡によって生じ得る。基底核におけるnACHrsを活性化することによって、アセチルコリンはヒトにおける運動活性を調節する(Clarke PBS, Pert A, Brain Res 348: 355-358, 1985)。ニコチン性興奮は、基底核におけるドーパミン(DA)産生細胞の活性を刺激する(Clarke PBS et al. J Pharmacol Exper Therapeutics 246: 701-708, 1988; Grenhoff J, Aston-Jones G, Svennson TH, Acta Physiol Scand 128: 351-358, 1986; Imperato A, Mulas A, Di Chiara G, Eur J Pharmacol 132: 337-338, 1986)が、メカミラミンはnACHrを阻止し、さらに基底核構造からのDAの遊離を阻害する(Ahtee L, Kaakkola S, Br J Pharmacol 62: 213-218, 1978)。
【0017】
米国特許第5,774,052号(Rose and Levin)は、ニコチンおよび他の薬物の使用を減らすためのアゴニスト−アンタゴニストの組合せについて開示している。ニコチンとの組合せにおいて、タバコ依存症の治療のためニコチン様アンタゴニストであるメカミラミンを与えた。Rose およびLevinは、ニコチンおよびメカミラミンの両方をパッチ中に含めることを提案した。また、RoseおよびLevinはそのようなアゴニスト−アンタゴニストの組合せを他の精神障害およびニューロン機能障害等の症例(例えば、交感神経性自律神経障害による躁鬱病、精神分裂病および高血圧)において用い得ることを主張した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平1−100120号公報
【特許文献2】特表平2−501479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
症状のより優れたコントロールおよびより少ない副作用を有することは、患者にとって利益となるであろう。多様な障害をもつ患者におけるメカミラミンラセミ化合物を用いた我々の臨床経験は様々な用途を支持する。様々なニコチン反応性神経精神障害の治療のために、エキソ−S−メカミラミンを用いて症状コントロールを改善したことについてこの中に開示する。
【0020】
本発明の1つの目的は、ニコチン反応性神経精神障害を有する患者のための改善された治療を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、患者の薬剤コンプライアンスを改善するため、ならびに患者の生活の質および社会的機能を改善するため、副作用の少ない治療を提供することである。
【0022】
1つの実施形態において、薬剤的に許容される担体と組み合わせて、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない治療的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を含む薬剤組成物を提供する。好ましくは、その量は約0.5mgから約20mgである。その好ましい組成物は、エキソ−S−メカミラミン塩酸塩および薬剤的に許容される担体を含む。請求項1記載の薬剤組成物は、経口投与、および静脈投与に適用できる。その薬剤組成物は、経皮パッチ、固形製剤、または徐放性の形態であって差し支えない。好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが95重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは5重量%未満である。より好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは1重量%未満である。さらにより好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.5重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは0.5重量%未満である。最も好ましくは、実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.7重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンは0.3重量%未満である。
【0023】
他の実施形態において、実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない治療的有効量のエキソ−S−メカミラミンまたは薬剤的に許容されるその塩を投与することによる病状の治療を提供しており、その治療的有効量は病状を改善するのに十分な量である。好ましくは、その方法は、静脈内に、経皮的に、胞膜内に(intrathecally)、経口的に、またはボーラス注射によって、エキソ−S−メカミラミンを投与する。好ましくは、エキソ−S−メカミラミンの用量は約0.5mgから約20mgである。好ましくは、1日当たり1回から4回、エキソ−S−メカミラミンを投与する。病状として、限定はされないが、物質依存症(ニコチン、コカイン、アルコール、アンフェタミン、鎮痛剤、他の精神興奮剤およびそれらの組合せ等)、禁煙の補助、禁煙に関連する体重増加の治療、高血圧、高血圧性緊急状態、トゥーレット症候群および他の振戦、癌(小細胞肺癌のような)、粥腫症、神経精神障害(双極性障害、鬱病、不安症、精神分裂病、発作障害、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害等)、慢性疲労症候群、クローン病、自律性反射障害、痙攣性腸障害が挙げられる。
【0024】
別の実施形態において、メカミラミンラセミ混合物の対応する用量の効果よりも長い持続期間を有する抗ニコチン効果を誘導するための方法を提供する。その方法は、その治療を必要とする個体に、メカミラミンラセミ混合物の持続期間の2倍より長い持続期間の抗ニコチン効果をもたらす量のエキソ−S−メカミラミン(90重量%以上のエキソ−S−メカミラミンおよび約10重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する)を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、エキソ−S−メカミラミンがカラムに装填後63.971分で純粋に溶出することを示すガスクロマトグラフィー
【図2】図2は、メカミラミンラセミ混合物、エキソ−R−メカミラミンおよびエキソ−S−メカミラミンの構造を一般的に示す
【図3】図3は、生理食塩水または3つの用量の中の1つの用量のメカミラミンでの7日間の感作を受けたラットによる60分間における全移動距離を表すグラフである。ダガー印はSal/Sal群との間の有意差を示す。星印はSal/Nic群との間の有意差を表す
【図4】図4は、同じ実験でのラットによる移動中心間距離を示すグラフ
【図5】図5は、同じ実験でのラットの垂直活動を示すグラフ
【図6】図6は、処置群および対照群の歩行動作を示す棒グラフ
【図7】図7は、処置群および対照群の立ち上がり動作を示す棒グラフ
【図8】図8は、処置群および対照群のステレオタイプ動作の回数を示す棒グラフ
【図9】図9は、生理食塩水またはある形態のメカミラミンの投与後の移動平均中心間距離を示す棒グラフ
【図10】図10は、メカミラミン/ニコチンの組合せでの2日間の処置の24時間前および24時間後における、ニコチン単独に対する運動反応(全移動距離)を示す棒グラフ
【図11】図11Aおよび図11Bは、ハロペリドール誘導カタレプシーに対する各形態のメカミラミンの効果を示す。図11Aは平均値を示し;図11Bは中間値を示す
【発明を実施するための形態】
【0026】
ある患者と別の患者とではいくらかの違いはあるが、全体として、有効量のエキソ−S−メカミラミンのみを投与することによって、全ての他の薬理学的効果をもたらすことなく所望の効果を提供する「より標的化された」治療を達成できることが観察される。全ての患者にとって、多くの活性スペクトラムを有する化合物を投与されることは望ましくないため、上記のことは重量なことである。
【0027】
メカミラミンの合成は、3つの特許:米国特許第2,831,027号(1958)、第2,885,428号(1959)、および第5,986,142号(1999)に開示されている。
【0028】
メカミラミンの合成のための1つの出発原料はカンフェンであり、そのラセミ混合物またはいずれかの鏡像体である。鏡像体は天然供給源から利用でき、またはキラル媒体を用いて液体クロマトグラフィーで分割することによって得ることができる(Armstrong, J Chrom A, 666: 445, 1994)。キラル試薬が一方の鏡像体と選択的に反応し、他方の鏡像体をそのまま残す動力学的分割を用いてそれら鏡像体を作成しても差し支えない(Jenke, J Organomet Chem, 405: 383, 1991)。また、キラルな前駆体からカンフェン鏡像体を作成しても差し支えない(Hana, Chem Ber, 111: 2527, 1978)。
【0029】
酸性媒体中のカンフェンのラセミ混合物または鏡像体をアジド(Pancrazi, Bull Chim Soc (Fr.), (1977) 162)、シアニド(Stein, J Am Chem Soc, 78: 1514, 1956; Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962; Pfister, 米国特許第2,831,027号(1958))、またはチオシアネート(Luskin, 米国特許第2,885,428号;CA. 53: 20124h)のような窒素供給源と反応させて差し支えない。その様にして作成した中間体をメカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換させることができる。
【0030】
カンフェンのラセミ混合物または鏡像体をカンフェン塩酸塩に変換させ(Gream, Aust J Chem, 27: 567, 1974)、それを亜硝酸塩と反応させて(Hunckel;. Ann 528 (1937) 57; CA. 31: 3033-4)メカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得る中間体を作成して差し支えない。また、その塩酸塩をアミンと反応させて、メカミラミンラセミ混合物または鏡像体(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)、あるいはメカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得る中間体をもたらしても差し支えない。
【0031】
カンフェニロンのラセミ混合物またはその何れかの鏡像体をメチルリチウムまたは類似の求核メチルと反応させて、アルコールを得ても差し支えない(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962; Gream, Aust J Chem, 27 (1974) 567)。カンフェンのために上述した酸性反応をそのアルコールまたはその誘導体に施して、メカミラミンラセミ混合物または何れかの鏡像体、あるいはメカミラミンに変換され得る産物をもたらして差し支えない(Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)。カンフェンのラセミ混合物または鏡像体から同様のアルコールを作成し(Coxon, Tetrahedron, 26: 3755, 1970)、さらに上記と同じ反応を施して類似産物をもたらしても差し支えない。
【0032】
カンフェンのラセミ混合物またはそのいずれかの鏡像体と有機アジドとの反応、およびそれに続く反応産物の光分解または熱分解によって(Huisgen, Chem Ber, 98: 3992, 1965; Franz, J Org Chem, 29: 2922, 1964)、開環されて(Gold, J Org Chem, 37: 2208, 1972)メカミラミンラセミ混合物またはいずれかの鏡像体に変換され得るアジリジンをもたらして差し支えない。
【0033】
ラセミ体または鏡像体のいずれにおいてメカミラミンを合成しても差し支えない。キラルな酸(カルボン酸、スルホン酸、リン酸)を用いた塩形成によってラセミ産物をその鏡像体に分割し(Pfister, 米国特許第2,831,027号(1958);Stone, J Med Pharm Chem, 5: 665, 1962)、さらにキラル分子を用いた誘導体化によってその鏡像体を再び生じさせることができる。結晶化または簡単なクロマトグラフィーによって、得られたジアステレオマーを分離し(Schonenberger, Helv. Chim. Acta., 69 (1986) 283)、さらにキラル媒体を用いた液体クロマトグラフィーによって鏡像体を再び生じさせることができる。
【0034】
定義
「エキソ−S−メカミラミン」は、N,2,3,3-テトラメチルバイシクロ-[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩826-39-1のd-鏡像体を含む。その鏡像体は、エキソ−S−N,2,3,3-テトラメチル-バイシクロ-[2.1.1]ヘプタン-2-アミン塩酸塩としても称される。
【0035】
「関連するエキソ−S−メカミラミン化合物」は、メカミラミンの様々な活性のある立体異性体および置換アナログを含む(Stone et al., J Med Pharm Chem 5(4); 665-90, 1962、引例によってこの中に組み込まれる)。ニコチン性痙攣、瞳孔拡張、および以下に記載のような他の方法によって、活性をラットで評価することができる。そのような活性は、通常、メチル基の大きな置換によって失われ、そのような化合物は本発明の一部ではない。アミノ基上にメチル基またはジメチル基がある場合に、他の置換基の場合よりも活性が高く、本発明に含まれる。d体は活性があるが;しかしながらdlラセミ混合物の方がわずかに活性が高いように思われる。結果的に、l体が重要な活性を有するように思われる。Stoneらは、エキソ体(メチルアミノ基がメチレン架橋と同じ平面状に位置する)は、エンド体(メチルアミノ基がメチレン架橋の下に位置し、さらにその架橋によって作られたケージ内に位置する傾向がある)よりも常に強力であることを報告した。さらには、一部の構造2,2-ジメチル-3-メチルアミノブタンも活性を有する。Stoneは、d体の異なる型と他のアナログとの間の活性のわずかな違いは重要ではないと結論付けた。
【0036】
この中で用いられている「実質的にエキソ−R−メカミラミン塩酸塩を含まない」の用語は、その組成物が約90重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約10重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有することを意味する。より好ましい実施形態では、組成物は95重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約5重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する。最も好ましい実施形態では、組成物は99重量%より多くのエキソ−S−メカミラミン、および約1重量%未満のエキソ−R−メカミラミンを含有する。
【0037】
「有益な効果」は、基準線の臨床的に観察される兆候および症状を越える顕著な改善であり、さらに主観的な患者の改善報告を含めても差し支えない。例えば、運動障害における有益な効果として、チックの頻度または重篤性における減少が挙げられるが、しばしば重篤な異常行動に先行しまたはそれにつながる不安、攻撃的爆発、および前兆となる衝動における減少によって間接的に改善を明示しても差し支えない。臨床的観察およびビデオテープの採点法によって治療効果を定量化することができる。また、動物スクリーニングの結果によって、有益な効果を予測することができる。例えば、Suemaruらは(ibid)、振戦を治療する化合物のスクリーニングのために、ニコチン誘導のラット尻尾の震えを用い得ることを提案した。繰り返しのニコチン投与は、過剰運動およびラット尻尾の震えを誘導し、それらはメカミラミン(0.1-1mg/日、ip)で阻止されるが、脳内に容易に入れないヘキサメトニウムでは阻止されない(Suemaru K., Oishi R, Gomita Y, Arch Pharm 350: 153-57, 1994)。
【0038】
エールグローバルチックセビリティースケール(Yale Golobal Tick Severity Scale)(YGTTS)が、チック症状を評価するために用いられる最も広く使用されている臨床評価尺度である。それは、臨床観察に基づいた重篤なチック頻度の客観的尺度を提供する。その尺度は、前週の間に起こったチックについての患者の個人回想に基づいて記入したチック症状記録を含む。その記録をガイドとして用いて、臨床医は、5つの別個の次元:数、頻度、強度、複雑さおよび障害(interference):に基づいて、運動性および発声性のチックの重篤性を評価する。さらに、前週の間での患者の社会的機能、自尊心等に対するその障害の影響を特徴付ける全体的な機能障害の別個の評価もある。
【0039】
チック症状を評価するための客観的方法は、患者のビデオ記録を用いる。少なくとも5分のビデオテープを見て、運動性および発声性のチックの頻度および重篤性を記録する。ビデオ記録することは、薬剤試験のための臨床評価システムに対して有益性をもたらした(Leckman JF, et al., Arch Gen Psychiatry, 48: 324-328, 1991; Shapiro ES, et al., Arch Gen Psychiatry, 46: 722-730, 1989; McConville BJ, Fogelson MH, Norman AB, Klykylo WM, Manderscheid MA, Parker KW, Sanberg PR, Am J Psychiatry, 148: 793-794, 1991; Silver AA, Shytle RD, Philipp MK, Sanberg PR, The Effects of Nicotine on Biological Systems II. PBS Clarke, M. Quik and K. Thurau, (Eds.); Advances in Pharmacological Sciences, Birkhauser Publishers, pp. 293-299, 1995; Reveley MA, et al., Journal of Psychopharmacology Supplement, A30, 117, 1994)。
【0040】
強迫性障害での有益な効果は、患者または家族の報告によって確認し得る強迫観念または強迫的行動の減少を含む。ニコチン、アルコールまたはコカイン乱用での有益な効果は、薬物を長期間使わないこと、ならびに薬物の要求が減ったという主観的感覚を含む。ヘルペス感染での有益な効果は、発生が止まり、治癒が早く、さらに長期間感染しないことを含む。
【0041】
「副作用」は望ましくない作用であり、限定はされないが、心血管への影響、低体温、振戦、抗利尿、痛覚抑制、視力障害、勃起不全、排尿困難、舞踏病に似た動き、精神異常、緊張感、鬱状態、不安、不眠、言語不明瞭、虚弱、疲労、鎮静、頭痛、便秘、腎不全、味覚異常(味覚の変化)、目眩、および消化不良が挙げられる。
【0042】
「有効量」の用語は、効果もたらすのに必要であるエキソ−S−メカミラミンの量を称する。要求される正確な量は、患者の年齢および体重、障害の重篤性、投与経路等に基づき変化するであろうが、以下に記載のような臨床実験における日常的実験によって容易に特定できる。しかしながら、通常、エキソ−S−メカミラミンの有効量は、一日当たり約0.001mg/kgから約6mg/kg、好ましくは約0.002mg/kgから約3mg/kg、より好ましくは約0.005mg/kgから約2mg/kg、最も好ましくは約0.01mg/kgから約1.5mg/kgの範囲である。薬物抵抗性TSの成人のための開始容量は、一日当たり約2.5mgであり、症状の報告に基づき用量を調整する。軽いADHDの小さな子供は、好ましくは一日当たり1mg以下で開始する。
【0043】
「薬剤的に許容される」の用語は、塩または賦形剤のような化合物において許容できない毒性が無いことを称する。薬剤的に許容される塩として、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等のような無機塩、ならびに酢酸塩、マロン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、シンナメート(cinnamate)、トシル酸塩、クエン酸塩等の有機塩が挙げられる。薬剤的に許容される賦形剤は、E. W. Martinによって完全に記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co)。
【0044】
エキソ−S−メカミラミンを含有する薬剤組成物は、1つ以上の薬剤担体を包含していて差し支えない。「薬剤的に許容される担体」の用語は、相対的に不活性で、毒性が無く、かつ非刺激性である一般的に許容される任意の賦形剤を称する。担体が希釈剤として働く場合は、活性成分のための運搬体、賦形剤または媒体として作用する固形、半固形、または液体の物質であって差し支えない。限定はされないが、経口および非経口(特に、筋肉内および静脈内注射によって、あるいは皮内移植または経皮投与によって)等の任意の投与経路による投与のために、薬剤の単位剤形を調製して差し支えない。そのような剤形の例示として、錠剤、軟質または硬質のゼラチンカプセル、粉末、トローチ剤、チューインガム、エマルジョン、懸濁液、シロップ、溶液、滅菌注射液、および滅菌包装粉末が挙げられる。投与後、任意のまたは全ての化合物の迅速な、持続性の、または遅延性の放出をもたらすために、当業界で公知の方法によって、ニコチンアンタゴニストを含有する組成物を製剤化して差し支えない。上述した一般的剤形に加えて、制御放出手段および/または米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,910,321号;第5,348,746号に記載のような運搬装置によって、ならびに制御放出手段および/または運搬装置の様々な製品によって、本発明の化合物を投与しても差し支えない。
【0045】
本発明のエキソ−S−メカミラミン製剤が経口投与に良く適している場合、好ましい担体が錠剤またはカプセルの形態への製剤化を容易にする。充填剤、潤滑剤、湿潤剤、保存剤、崩壊剤、香味料、ならびにゼラチン、アラビアゴム、セルロース、メチルセルロース等の結合剤等の他の従来の薬用アジュバントと共に、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、デンプン、スクロース、デキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)、タルク等の固形の薬用賦形剤を用いて、それ自体で使用され得る、あるいは錠剤化され、カプセル化され、または上記のような他の適切な形態に調製され得る混合添加剤を形成して差し支えない。製剤の概説は、Remington's Pharmaceutical Science(Mack publishing Co.)に記載されている。
【0046】
投与形態
経口による投与が好ましいが、経皮的使用、鼻腔内スプレー、気管吸入、座剤、注射剤(例えば、筋肉内または静脈内注射)等によって投与しても差し支えない。非経口投与のための担体として、限定はされないが、デキストロース、マンニトール、マンノース、ソルビトールの水溶液、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック重合体等が挙げられる。さらには、適切な保存剤、安定化剤、酸化防止剤、抗菌剤、ならびに例えばBHA、BHT、クエン酸、アスコルビン酸、テトラサイクリン等の緩衝剤を含んでいて差し支えない。あるいは、ニコチンアンタゴニスト製剤を適切な高分子マトリックスまたは高分子膜中に組込みまたは封入し、皮膚への移植または塗布に適した徐放性運搬装置を提供しても差し支えない。他の装置として、内在カテーテルおよびAlzet○R小型ポンプのような装置が挙げられる。
【0047】
本発明を直接的記載によって開示した。以下に、本方法の利益をもたらす効果を示す実施例を記載する。その実施例は単に例示であり、何ら本方法の範囲を限定するものではない。
【0048】
エキソ−S−メカミラミン塩酸塩の分析
エキソ−S−メカミラミン塩化物(ロット2351)は、図1に示すように、ガスクロマトグラフィーで確認したところ、99.95%の純度であった。エキソ−S−メカミラミン塩酸塩は63.971分間ガスクロマトグラフィー上に保持され、他の意味のあるピークは認められなかった。塩化物の含有量は17.2%であり、理論的限度17.8%より低かったが、規格内であった。カンフェンまたは他の不純物は全く検出されなかった。施光度は+19.4°であった。そのロットは、以下の実施例1および9において使用された。メカミラミンおよびその鏡像体の構造を図2に示す。
【0049】
薬理学 一般的方法 動物
平均体重463グラムの雄のスピローグ-ドーリー(Sprague-Dawley)ラット(Zici-Miller Laboratories, Allison Park, PA)を用いた。それらラットをケージ当たり2-4匹の群に分けて飼育し、食事および水を自由に取れるようにし、さらに、午前8時から午後8時までが夜になるように12時間明/12時間暗の明暗周期を逆転させて飼育した。ラットの夜行性周期の間に全ての試験を行った。
【0050】
測定および装置
全ての運動試験のためにDigiscan Animal Activity Monitor(Model RXYSCM, Accuscan, Inc., Columbus, OH)を用いた。箱の大きさは42cmx42cmx30cmであり、壁および床は透明なアクリル系であった。本実験で用いた各箱は、ラットの動きによって光ビームが遮断された場合に変数の数を計算する光電セルを持つ。全ての運動活性は、Digiproソフトウェアプログラムを用いて自動的に捕獲および記録された。
【0051】
ハロペリドールによって誘導されかつ治療によって遮断されるカタレプシー(ある位置に置かれた後、その位置を維持する能力)を評価するため、棒試験(bar test)を用いた。棒をテーブル表面の9cm上に置いた。ラットの前足を同時に棒上に置き、支えるために後足を下に置いた。両方の前足が棒上に置かれた瞬間から、ラットが両方の前足を棒から離すまでを測定した。最低時間は1秒であり、最大時間は60秒とした。棒上に置かれた時間が短ければ短いほど、ハロペリドール誘導カタレプシーの遮断が大きくなる。
【0052】
薬剤
メカミラミンHClをLayton Bioscience, Inc., Atherton, CAより得た。光学純度および収率を改善するために重要な改変を加えたが(上記を参照)、Stoneらの方法(supra)に従って、ラセミ混合物からメカミラミンの光学異性体を分割した。(-)-ニコチンをSigma Chemical Co.(St. Louis, MO)から得た。ハロペリドール乳酸塩(SolopakR)を地方の製薬会社から得た。全ての薬剤を1mg/mlとなるように生理食塩水に溶解し、皮下投与した。
【実施例】
【0053】
実施例1
88匹の実験に使っていない成長した雄のスピローグ-ドーリー由来ラットをケージ当たり2匹ずつ飼育し、かつ自由に食事および水を取れるようにした。各ラットは、無作為に割り当てられた前処置条件を7日間連続で受けた。その前処置期間の毎日、生理食塩水またはニコチン(0.4mg/kg 、s.c.)を注射する20分前に、生理食塩水、メカミラミンラセミ混合物、エキソ−R−メカミラミンまたはエキソ−S−メカミラミンをラットに投与し、元のケージに戻した。前処置の割当ては、順序の影響を制御するために、各条件から2匹のラットを一緒に開始しかつ試験するように手配した。8日目は処置または試験をラットに与えなかった。60分の慣らし時間、各ラットを運動箱(locomotor box)に入れ、続いてニコチン(0.4mg/kg, s.c.)を注射し、直ぐに運動箱に戻した。続く60分間、5分間隔でデータをコンピューターが記録した。
【0054】
図3-5は、9日目に0.4mg/kgのニコチンを試験投与された全ての群について、3つの独立した変数をそれぞれ示す。生理食塩水/ニコチン(sal/nic)前処置群は、敏感となったニコチンに対する運動反応を表し、そのような反応はメカミラミン/ニコチン(mec/nic)前処置群の何れにおいても明らかでなかった。さらには、ポスト-ホック比較(post-hoc comparison)は、他の前処置群と比較した場合、sal/nic前処置群においてニコチンに対する運動反応が有意に大きい(p<0.05)ことを示唆した。mec/nic前処置群におけるニコチンに対する反応は、全てのmec/sal群が対照よりも有意に低い活性を有していた垂直活動の場合を除いて、sal/sal前処置群にニコチンを投与しなかった群と有意差は無かった(p>0.05)。たった0.1mg/kgで、エキソ−R−メカミラミンはニコチン活性を効率的に遮断して全移動距離を制御した。
【0055】
ニコチン暴露の日におけるメカミラミンおよびその両方の立体異性体での前処置は、敏感となったニコチンに対する運動反応の発生を用量依存的に妨げた。長期にわたる生理食塩水/生理食塩暴露を受けたラットと比較して、長期にわたるメカミラミン/ニコチン暴露を受けたラットにおいて、ニコチン単独での試験投与(9日目)の後の垂直活動の低下が認められた。このことは、メカミラミンへの長期にわたる暴露が、実際に、生理食塩水/生理食塩水群で認められるよりも低いレベルまで、ニコチンに対する運動反応を低下させることを示唆する。メカミラミンの両方の異性体は同じ全体的傾向となったが、エキソ−R−メカミラミンが全体として、より低い用量でより効果が高く、特に中心距離および垂直活動においてそうである。興味深いことに、エキソ−R−メカミラミンで前処置すると中心移動距離において敏感になったニコチン反応の発生を妨げたが、エキソ−S−メカミラミンは妨げなかった。このことは、喫煙者におけるニコチンの抗不安効果の軽減において、エキソ−R−メカミラミンがエキソ−S−メカミラミンまたはメカミラミンラセミ混合物よりも効果が高いことを示唆する。
【0056】
実施例2
本実験は、鏡像体が自発運動活性に作用する能力において異なるか否かを特定するために設計された。7日間のウォッシュアウト期間の後、ラットを無作為にそれぞれ8匹のラットから成る新たな群に割り当てた。生理食塩水、メカミラミンラセミ混合物(3.0mg/kg)、エキソ−S−メカミラミン(3.0mg/kg)、またはエキソ−R−メカミラミン(3.0mg/kg)の中の1つを動物に投与した。そのラットを60分間運動箱に入れ、5分間隔でデータを採取した。
【0057】
図6は、次の3つの図の要である。図6、7および8は、メカミラミンラセミ混合物が、全移動距離(図6)、垂直活動時間(vertical time)(図7)、およびステレオタイプ動作(図8)を含む自発運動活性を減らすことを示す。自発運動活性を減らすその傾向は、エキソ−R−メカミラミンにも当てはまる。一方、エキソ−S−メカミラミンは実質的に自発運動活性に全く効果をもたらさず、あるいは、ある場合には、運動を増加させた。例えば、エキソ−S−メカミラミンを投与されたラットは、生理食塩水で処置されたラットよりも中心位置での有意に高い運動活性を表した(図9)。
【0058】
単独で与えられた場合、エキソ−R−メカミラミンは自発運動活性を減らす傾向があるが、エキソ−S−メカミラミンは全く効果がないか、あるいは実際に運動を増加させる。例えば、エキソ−S−メカミラミンは露地(open field)の中心における移動距離を有意に増加させた。ヒトにおいて不安を軽減させる薬剤(例えばバリウム)を用いた以前の研究でも露地の中心における移動距離を増加させたことから、エキソ−S−メカミラミンも不安を軽減させる可能性がある。
【0059】
実施例3
本実験は、鏡像体がニコチンの運動効果を遮断する作用の持続期間において異なるか否かを特定するために設計された。7日間のウォッシュアウト期間の後、ラットを無作為にそれぞれ8匹のラットから成る2つの群に割り当てた。全てのラットに、1日1回、5日間、ニコチン(0.4mg/kg)を皮下投与した。さらに、ニコチン投与前、1、3および6時間の間隔で、閾値のエキソ−R−メカミラミン(0.3mg/kg)またはエキソ−S−メカミラミン(0.3mg/kg)を投与した。間の日には、ニコチン(0.4mg/kg)を投与する前に1、3および6時間の間隔で生理食塩水を各群のラットに投与した。ニコチン投与前30分間の慣らし時間ラットを運動箱に入れ、その後30分間試験した。
【0060】
図10は、連続2日間エキソ−R−メカミラミンで前処置されたラットが、最後のエキソ−R−メカミラミン投与の24時間後に投与されたニコチンに対する興奮反応を表さないことを示す(paired 2-tailed t-testによって前後を比較して、p<0.01)。エキソ−S−メカミラミンで処置されたラットの興奮反応には実質的に違いは無かった。このことは、エキソ−R−メカミラミンがより長い作用持続期間を有することを示唆する(本試験では24時間以上)。その効果が異性体間の薬物動力学的または薬力学的相違に関連するか否かはまだ確認されていない。
【0061】
実施例4
本実験は、ハロペリドール誘導カタラプシーに対するメカミラミン鏡像体の効果を試験した。48匹のラットをそれぞれ12匹から成る4つの群に無作為に割り当てた。以下の処置:メカミラミンラセミ混合物(3.0mg/kg)、エキソ−S−メカミラミン(3.0mg/kg)、またはエキソ−R−メカミラミン(3.0mg/kg):の中の1つを受けた動物から成る各群を有する対象間(between-subject)設計である。処置化合物を皮下注射する30分前にハロペリドール(0.3mg/kg)をラットに皮下投与した。さらに30分後、ラットを棒の上に置いた。7日間のウォッシュアウト期間の後、処置薬剤を皮下注射する30分前に、ラットに生理食塩水を投与した。実験者はラットが受けた処置を知らされておらず、同じ実験者がその度に投与した。
【0062】
図11Aおよび11Bは、エキソ−R−メカミラミンはハロペリドール誘導カタレプシーを高める傾向があるが、エキソ−S−メカミラミンはハロペリドールに対するカタレプシー反応を軽減させる傾向があることを示す。その所見は、エキソ−R−メカミラミンが多動性障害に有用となり得るが、エキソ−S−メカミラミンは運動低下性障害に有用となりうることを示唆する。
【0063】
実施例5
最近、限定はされないが、若年性ミオクローヌス癲癇、常染色体優性の夜行性前頭葉癲癇およびおそらく遺伝性の突発性癲癇等のいくつかの痙攣性障害が、脳内でニコチンに結合するのと同じ受容体を介していることが示された。ニコチンは、ラットにおいて、短時間の痙攣を引き起こすことが示されている。Okamotoらは(Jpn J Pharmacol 59: 449-55, 1992)、単一の高い用量のメカミラミン(1.0mg/kg)がラットにおいてニコチン誘導痙攣を遮断することを示した。本実験は、ラットでのニコチン誘導痙攣の遮断におけるエキソ−R−メカミラミンの効果を評価する。エキソ−R−メカミラミンの用量は、0.1から3.0mg/kg/日の範囲であり、かつニコチンの用量は2.5から5mg/kg/日の範囲である。腹腔内または他の適切な経路によって投与する。ニコチンを投与する15分前に、エキソ−R−メカミラミンまたは生理食塩水を一揆に腹腔内投与する。薬剤を投与した後、30分間、観察試験箱に各ラットを入れ、痙攣を記録した。
【0064】
実施例6
ドーパミンアゴニストであるアポモルフィンの行動的効果は、トゥーレット症候群のような多ドーパミン性障害(hyperdopaminergic disorder)のための有用な動物モデルを提供した。ラットに投与した場合、アポモルフィンはステレオタイプ動作および舐める動き(licking behavior)を誘導する。ニコチンをアポモルフィンの前に投与した場合、用量依存的に、ニコチンは舐める動きを変化させる(0.05および0.5μg/kgの用量で増加させ、250μg/kgで減少させた)。メカミラミン(1および3mg/kg)はニコチンに対する反応を低下させ、かつ自発的毛づくろいを増加させた(Zarrindast et al., J Psychopharmacol 12: 375-9, 1998)。メカミラミン(0.05、0.25および0.5mg/kg ip)はアポモルフィンに対するラットの舐める反応を多いに減らした(Zarrindast et al. Eur Neuropsychopharmacol 9: 235-8, 1999)。ラットにおけるアポモルフィンに対するステレオタイプ動作の反応を遮断する能力について、エキソ−S−メカミラミン鏡像体を試験する。投与経路は皮下または静脈内注射である。エキソ−S−メカミラミンの用量は薬0.1-3.0mg/kg/日であり、アポモルフィンは0.5-2.0mg/kg/日であり、かつニコチンは0.4mg/kg/日である。急性試験において、アポモルフィンまたはニコチンを投与する15分前に、各ラットに生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンを投与する。薬剤投与に続いて直ぐに、試験のため1時間各ラットを運動箱に入れる。慢性試験のために、ラットを用いて、その前処置が生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンへの暴露の7日間を必要とすることを除いて、急性試験と同じ処置を行って差し支えない。
【0065】
実施例7
本実験は、ストレスに対する神経内分泌反応に関連するニコチン受容体に対するエキソ−S−メカミラミンの効果を評価する。本実験は、ラットへの短期間の暴露によって生じさせた急性ストレスを用いる。低用量(0.1mg/kg)のメカミラミンラセミ混合物は、ストレスを受けたラットに対する神経内分泌反応を妨げる(Shytle et al., Soc Neurosci Abstr 24: 371-15, 1998)。生理食塩水またはエキソ−S−メカミラミンをラットに皮下注射して前処置する。エキソ−S−メカミラミンの用量は約0.01-3.0mg/kg/日である。次に、8区画に分けられた円形で透明のPlexiglas容器に、各ラットごとに1区画を割り当てて入れる。さらに、その容器の一番上に20分間ラットを置く。ストレスを与えない対照は、ホームケージに入れておく。20分後、ラットを取り出して、神経内分泌測定のために直ぐに断頭する。各ラットから血液を集め、血清コルチコステロンレベルを測定する。CRFおよびカテコールアミンレベルの測定のために、各ラットの脳を取り出す。
【0066】
実施例8
脳脊髄を穿刺したラットにおいて、交感神経刺激によって誘導された昇圧反応の遮断を測定することによって、エキソ−S−メカミラミン鏡像体の降圧効果を示す。ハロタン(酸素中2%)でラットを麻酔し、右の頚動脈および頚静脈にカテーテルを挿入し、さらに両方の迷走神経を頸部中間あたりで切断する。左の頚動脈および頚静脈を結紮して脳への血液供給を減らす。全身的な血圧および心拍数を連続的に記録するために、動脈経路を圧力変換機にくっつける。化合物注射のために静脈経路を用いる。眼孔および大後頭孔を通って脊髄を下がり第1仙椎まで鋼製の棒を挿入することによってラットにおいて脳脊髄を穿刺する:交感神経性の流出物に電気的刺激を運ぶためにその棒を用いる。脳脊髄を穿刺すると直ぐに、酸素を豊富に含む空気を用いて人工呼吸を実施し、背中の皮の下に不関電極を挿入し、さらに筋肉収縮を防止するためにガラミン(20mg/kg, iv)を投与する。30分間休ませると心血管パラメーターが安定化する。1Hz、40V、1msパルス持続時間で、交感神経性の流出を引き起こし、その間心血管パラメーターを連続的にモニターすることによって、エキソ−S−メカミラミン処置前後での刺激誘導昇圧反応を測定する。脈圧における刺激によって誘導される上昇の減少は、エキソ−S−メカミラミンによる交感神経阻害を反映する。脈圧が上昇しない場合は、その薬剤が交感神経遮断効果を有し、かつさらなる降圧試験の候補であることを示唆する。あるいは、その試験は、副作用としての起立性低血圧を予測する。
【0067】
実施例9
本実験は、ゼノプスの卵母細胞において発現されたヒトα3β4、α4β2、α3β2およびα7受容体に対するエキソ−S−メカミラミンの効果および効能を評価し、さらにその活性をメカミラミンの活性と比較する。また、電圧依存性および結合可逆性を特定する。成熟した雌のゼノプス・ラエビス(Xenopus laevis)アフリカヒキガエルを卵母細胞の供給源として用いる。クローン化されたcDNAの線状化および精製後、Ambion Inc.(Austin TX)からの適切なmMessage mMachine○Rキットを用いて、in vitroでRNA転写物を調製する。回収した卵母細胞をカルシウムを含まない溶液中、コラゲナーゼ(Worthington Biochemical Corporation, Freehold NJ)と共に室温で1時間処理する。続いて、ステージ5の卵母細胞を単離し、さらに適切なサブユニットcRNAの混合物のそれぞれ(50nL)を注入する。cRNA注入の約1-7日後、記録を行う。
【0068】
電気生理現象のために、卵母細胞増幅器(たとえば、Warner Instruments, Hamden,CT, No. OC-725C)および記録チャンバーを用いて卵母細胞の記録を行う。卵母細胞を全容量約0.6mlの記録チャンバー中に置き、潜在的なムスカリン様反応を阻害するため、1μMアトロピンを含有するカエルリンガー溶液(115mM NaCl, 2.5mM KCl, 10mM HEPES pH7.3, 1.8mM CaCl2)を室温で還流させる。薬剤運搬および洗浄のための一定の静水圧を維持するために、リンガー溶液で満たしたマリオットフラスコを用いる。薬剤を還流液で希釈し、還流経路の末端にある2mlループに装填する。薬剤装填ループのバイパスは、薬剤ループがロードされている間、浴槽液が連続して流れることを可能とする。2様式電気バルブを用いることによって、薬剤装填をデータ収集と同期化させる。浴槽液交換および薬剤装填の速度は好ましくは約6ml/分である。電流電極は250mM CsCl,250mM Csfおよび100mM EGTAを含有する溶液で満たされ、0.5-2MΩの抵抗を持つ。電圧電極は3M KClで満たされ、1-3MΩの抵抗を持つ。-30mVよりプラスの静止膜電位をもつ卵母細胞は用いられなかった。
【0069】
エキソ−S−メカミラミン添加に対する電流反応の測定は、2電極電圧クランプの下で実施する。エキソ−S−メカミラミン添加直前の保持電流を薬剤に対するピーク反応の測定値から差引く。全ての薬剤添加は、5分以上の洗浄時間によって分けられ、薬剤効果が持続する場合はその時間はさらに長い。記録の開始時、全ての卵母細胞はAchの2回の初期コントロール添加を受ける。コントロールAchの2回目の添加は、初期Ach反応後に時折生じる衰弱の効果を最小化する。また、Achの2回目の添加は,各卵母細胞におけるチャンネル発現のレベルを正常化させるために用いられる。残留阻害効果を特定するため、阻害剤と共にAchを添加しまたは阻害剤単独で添加し、その後さらに、AChを単独で添加し、前添加コントロールAch反応と比較する。
【0070】
各受容体サブタイプのために、その反応ピークにおいてかなり高いPopen値を表すがACh添加による衰弱を最小化するレベルまで受容体を刺激するのに十分なコントロールAChの濃度を選択する。そのような条件は最大阻害を達成するのに適切である。より高いACh濃度は得られる最大反応を阻害するため、α3含有受容体のためのコントロールACh濃度は通常約100μMであり、かつα4β2受容体のためには10μMである。
【0071】
薬剤阻害の電圧依存性を評価する実験のため、最初に、卵母細胞を保持電位-50mVに電圧を固定し、ACh単独のコントロール添加を供給する。設計された試験電位で第2のコントロール反応を得る。AChとエキソ−S−メカミラミンとの同時投与のために、保持電位を設計された電圧に維持する。5分間の洗浄時間後、試験電圧でAChを続いて添加して、残存阻害を評価する。
【0072】
α3β4受容体を有する卵母細胞において、ラセミ混合物およびエキソ−S−メカミラミンは類似の正規化用量反応曲線およびIC50を有し、その結果から、エキソ−R−メカミラミンも同様であると予測される。しかしながら、ラセミ混合物およびエキソ−S−メカミラミンの5分間の洗浄後の用量反応曲線は異なっており、ほとんどの用量でエキソ−S−メカミラミンの方がより高い反応を誘導する。このことは、エキソ−S−メカミラミンは受容体遮断の持続時間が短く、かつエキソ−R−メカミラミンが重要な抹消受容体とのより長時間の活性を担うことを示唆する。S-鏡像体のIC50は、ラセミ混合物のIC50より約2倍大きかった。
【0073】
以前暴露されたα3β4受容体を有する卵母細胞を洗浄し、回復させ、さらにメカミラミンラセミ混合物で処理した場合、二相性の曲線となり、そのことは、その受容体に対してラセミ混合物が二相性に解離することを示唆する。阻害の約50%は7-8分でなされ、さらに残りの50%は遥かに長い時間がかかり、5-10倍の時間がかかると予測される。エキソ−R−メカミラミン塩酸塩は、その重要な中枢神経系受容体において非常に長い半減期を有するであろう。
【0074】
要約すると、それら実験は、エキソ−R−メカミラミンとエキソ−S−メカミラミンとの作用の重要な薬理学的相違を示す。それら異性体は以下の兆候(それらに限定はされないが):トゥーレット症候群、高血圧、高血圧性緊急状態、癌(例えば、小細胞肺癌)、脂肪腫(atherogenic lipid profile)、気分障害(双極性障害および鬱病)、不安障害、振戦、アルコール依存症、鎮痛剤およびアンフェタミン中毒、発作障害、嘔吐、慢性疲労症候群、クローン病、自律性反射障害、痙攣性腸障害、ならびにニコチン反応性障害(例えば、精神分裂病、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害)、ニコチン乱用(喫煙、噛みタバコ等)およびコカインおよびアルコールのような他の物質の乱用:の治療において有効である。本発見は、両方の異性体が強力なニコチンアンタゴニストとして作用し、一方で、メカミラミン塩酸塩のラセミ混合物に関連する副作用を回避することを示唆する。
【0075】
他の使用
最近の報告は、ニコチンが精神分裂病(Adler LE et al, Am J Psychiatry 150: 1856-1861, 1993)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(Levin ED et al, Psychopharmacology 123: 55-62, 1995)および鬱病(Salin-Pascual RJ et al, Psychopharmacology 121(4): 476-479, 1995)の症状を軽減することを示唆している。一般的にnAChr活性化が「ニコチン反応性」障害におけるニコチンの治療的作用を担うと考えられているが(Decker MW et al, Life Sci, 56: 545-570, 1995)、多くの他の薬物と同様に、ニコチンは複合的な神経薬理学的効果を有する。従って、そのようなニコチン反応性障害を有する多くの人々をnAChr遮断薬によって救済することができ、そのことは、ニコチン反応性障害であるTSおよびADHDでの症状を軽減させるnAChr遮断薬であるメカミラミンの実施例を用いてこの中に開示されている。
【0076】
多ドーパミン性症状に関連すると考えられている精神障害の1つである精神分裂病は神経安定薬で最もよく治療される;しかしながら、その障害がニコチン反応性障害であるという考察は無い。例えば、精神分裂病患者の調査は、喫煙割合が、全精神障害患者において35%から54%でありかつ一般住民において30%-35%であるのに対して、精神分裂患者では74%から92%であることを示している。喫煙は、集中力を強化し異常覚醒からの不安を軽減することによって、潜在的な精神病質を改善し得ると考えられてきた(Gopalaswamy AK, Morgan R, Br J Psychiatry, 149: 523, 1986)。さらには、ニコチンは精神分裂病治療および神経安定治療に関連する認識欠損を軽減させるのにある役割を果たし得る。喫煙は、精神分裂病患者における知覚ゲート欠損(sensory gating deficit)を正常化することが見出されており(Aldler LE et al, Am J Psychiatry 150: 1856-1861, 1993)、さらに最近の研究は、経皮吸収させたニコチンが標準的な抗精神病薬の不利な認識効果を逆転させ、さらに全体的に精神分裂患者の認識能力を改善することを見出した(Levin ED et al, Psychopharmacology 123: 56-63, 1996)。ニコチン投与が実際にnAChr遮断薬と類似の効果を有すると仮定すると、メカミラミン異性体のようなnAChr遮断薬も抗精神病薬の不利な認識効果を逆転させかつ精神分裂患者の認識能力を改善することが可能である。さらには、ニコチンはTSにおける神経安定剤の治療効果を増強するため(McConvile BJ et al, Biological Psychiatry 31: 832-840, 1992)、精神分裂病およびハンチントン舞踏病のような「神経安定剤反応性」障害における神経安定剤への添加剤としてメカミラミンを使用すると、神経安定剤の用量を減らすことができ、それによって治療効果を減らすことなく神経安定剤の副作用を軽減させることができる。
【0077】
コカイン使用は、米国において次第に一般問題となっており、生涯での使用割合は2.5%であり、現在のコカイン乱用または依存症の割合は約1%である(Regier et al., 1990)。高額な個人的な徹底管理およびカウンセリングプログラムを除いて、公知の有用な治療は無い。
【0078】
多くの精神分裂病および鬱病患者もコカインの高い使用率を有する;その割合は40-50%と見積もられる。対照では喫煙率が22%であるのに対して、コカイン乱用者の75%はニコチン依存症でもあると推定されている。
【0079】
コカイン、ニコチンおよびメカミラミンに関する動物結果は曖昧である。一方、コカインおよびそのアナログは、メカミラミンの作用部位である高親和性nAChr上の非競合的イオンチャンネル部位に対する適度な親和性で、仔牛の脳に結合する(Lerner-Marmarosh N, Carroll FI and Abood LG, Life Sciences 56(3): 67-70, 1995)。コカインはニコチンの行動的効果に拮抗するのに適度に効果的である。しかしながら、マウスにおいて、メカミラミン(1mg/kg)、およびニコチンアンタゴニストであるジヒドロ-β-エリスロイジン(2mg/kg)、およびムスカリン性アンタゴニストであるアトロピン(2mg/kg)の全身的投与は、未使用動物での精神刺激誘導のステレオタイプ動作に効果が無かった。それら3つ全ての薬剤は、コカイン過敏化の誘導または発現の何れに対しても効果が無かった(Karler, Brain Res. 1996(Jul 1) 725(2): 192-8)。SpealmanおよびGoldbergは、リスザルにおいて、ニコチンおよびコカインの静脈内注射による予定管理された行動に対するメカミラミンの効果を試験した(J Pharm Exp Therap 223: 402-06, 1982)。実験の前にメカミラミンを投与すると、ニコチンによる維持された反応を生理食塩水による対照レベルまで下げるが、コカインによる維持された反応は下げない。それにもかかわらず、トゥーレット症候群、双極性障害患者、および精神分裂病様症状の患者におけるメカミラミンの上記経験に基づき、コカイン乱用者もメカミラミンおよび他のニコチンアンタゴニストを用いた治療によって恩恵を受けると考えられる。
【0080】
ウィルス感染、特にI型およびII型ヘルペスの治療は、自律神経節遮断薬であるテトラエチルアンモニウムイオンまたはヘキサメトニウムイオンを用いて上手く着手されている(米国特許第5,686,448号)。エキソ−S−メカミラミンは自律神経節遮作用を有するため、ウィルス感染に対しても同様に効果的であることが予測され得る。
【0081】
メカミラミンは有機リン殺虫剤の中毒性を軽減させることが知られている。例えば、ラットに8mg/kgのDFP(有機リン殺虫剤)を投与すると全てのラットが5時間以内に死亡した。しかしながら、30mg/kgのメカミラミンおよび致死量のDFPを受けた4匹のラット中3匹が5時間を越えて生存した。効果的な異性体のみを投与することによって、メカミラミンの用量を減らすことは有益であろう。
【0082】
ニコチン性アセチルコリン受容体であるα4(α3ではなく)およびα7は、アルツハイマー病において側頭部皮質から失われる。トリチウム化されたアゴニストで標識されたニューロンのニコチン性アセチルコリン受容体は、アルツハイマー病(AD)において大脳皮質で減少する。[3H]エピバチジン結合と組み合わせて、α3、α4およびα7サブユニットに特異的な組換えペプチドに対する抗体による免疫ブロッティングを用いて、14名のAD症例および15名の年齢を合せた対照患者の側頭部皮質からの検死解剖組織を比較した。α3、α4およびα7に対する抗体は、ウェスタンブロットにおいて、それぞれ59、51および57kDの位置に1つの主要バンドをもたらした。[3H]エピバチジン結合およびα4様の免疫反応性(α4サブユニットの細胞外ドメインおよび細胞質ループに対する抗体を用いる)は、対照患者と比較して(p<0.02)、および対照患者の死亡前に喫煙していなかった下位群(前記2つのパラメーターのための)(n=9)と比較して(p<0.05)、AD症例において低かった。[3H]エピバチジン結合および細胞質のα4様の免疫反応性は、対照群の死亡前に喫煙していた下位群(n=4)において有意に高かった(p<0.05)。α3 またはα7様の免疫反応性は、ADまたはタバコの使用に関連した有意な変化は無かった。α4の選択的関連性は、ADにおけるニコチン受容体の役割および可能性のある治療標的を理解するのに意味を持つ(Martin-Ruiz CM et al. Neurochem 1999 Oct; 73(4): 1635-40)。
【0083】
前述の説明および実施例は単に例示を意図しており、開示された発明を限定することを意図していない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン反応性神経精神障害治療用薬剤組成物であって、
a)実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない薬剤的有効量のエキソ−S−メカミラミン又は薬剤的に許容されるその塩、及び
b)1つ以上の薬剤的に許容される担体
を含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項2】
前記薬剤的有効量が約0.5mgから約20mgであることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】
エキソ−S−メカミラミン塩酸塩及び薬剤的に許容される担体を含むことを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項4】
経口投与用であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項5】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが95重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが5重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項6】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが1重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項7】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.5重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが0.5重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項8】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.7重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが0.3重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項1】
ニコチン反応性神経精神障害治療用薬剤組成物であって、
a)実質的にエキソ−R−メカミラミンを含まない薬剤的有効量のエキソ−S−メカミラミン又は薬剤的に許容されるその塩、及び
b)1つ以上の薬剤的に許容される担体
を含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項2】
前記薬剤的有効量が約0.5mgから約20mgであることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】
エキソ−S−メカミラミン塩酸塩及び薬剤的に許容される担体を含むことを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項4】
経口投与用であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項5】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが95重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが5重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項6】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが1重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項7】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.5重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが0.5重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項8】
実質的に純粋なエキソ−S−メカミラミンが99.7重量%より多く含まれており、かつエキソ−R−メカミラミンが0.3重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−126909(P2011−126909A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55716(P2011−55716)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2000−587608(P2000−587608)の分割
【原出願日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(501243247)ユニヴァーシティー オブ サウス フロリダ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2000−587608(P2000−587608)の分割
【原出願日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(501243247)ユニヴァーシティー オブ サウス フロリダ (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]