説明

エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の製造方法

【課題】感光性レジストや光学材料用等の機能性ポリマー原料、電子材料、医、農薬等の中間体原料として有用なエキソ体比率の高い架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を、入手容易な原料を用いて、工業的に実施容易な方法で製造する方法の提供。
【解決手段】シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンとビニルシアナイドを反応させ、アルカリにより加水分解して、下記式で表されるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸(例えばR〜R=H,n=0)を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の製造方法に関する。
詳細には、置換基を有していてもよいシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンにビニルシアナイドを付加反応させ、得られた架橋脂環式モノオレフィンシアナイドをアルカリにより加水分解して置換基を有していてもよいエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を製造することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸は、感光性レジストや光学材料用等の機能性ポリマー原料、電子材料、医、農薬等の中間体原料として有用である。
また、架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の製造法は、従来、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン等の脂環式ジオレフィンとアクリル酸乃至メタアクリル酸とのディールスアルダー反応(特開平05−310885号公報)、あるいは、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンとアクリル酸メチル乃至メタアクリル酸メチルとのディールスアルダー反応により得られた脂環式モノオレフィンカルボン酸エステルのアルカリ加水分解(特開2003−183215号公報)により得られることが知られている。このようにして得られた架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸は、そのカルボキシル基の結合炭素原子が不斉であり、架橋脂環式モノオレフィン環に対しエンド及びエキソの光学異性体が混在したラセミ体であり、そのモル比率は、通常、例えばノルボルネンモノカルボン酸の場合は、エンド/エキソモル比:80/20程度であり、またテトラシクロドデセンモノカルボン酸の場合は、エンド/エキソモル比:55/45程度であり、エンド体比率が高いエンド型である。
【0003】
上記のエンド体とエキソ体の異性体では、生理活性、重合活性等その特性が異なり、特に、重合活性において、エキソ体がエンド体より格段によいことが知られている。従って、樹脂モノマー用途等においては、エキソ体比率の高いエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸が望まれている。
一方、光学活性ノルボルネンカルボン酸の製造法としては、例えば、ラセミ体(シス−2−ベンジルアミノシクロヘキシル)にメタノール等の光学活性剤を作用させる光学分割法(特開昭58−029753号公報)、光学活性アクリル酸エステルをシクロペンタジエンと反応させ、次いで加水分解する(特開平05−051345号公報)等の不斉合成法等が知られているが、いずれも、特殊な光学活性化合物を用いる必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開平05−310885号公報
【特許文献2】特開2003−183215号公報
【特許文献3】特開昭58−029753号公報
【特許文献4】特開平05−051345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、入手容易な原料を用いて、光学活性化合物を用いることなく、工業的に実施容易な方法により、エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を得る製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、
【化1】


(一般式1)
(式中、R、R、R、R、R及びRは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、mは0又は1を表す。)
で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと、
【0007】
【化2】


(一般式2)
(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビニルシアナイドを付加反応させ、得られた架橋脂環式モノオレフィンシアナイドをアルカリにより加水分解することを特徴とする、
【0008】
【化3】


(一般式3)
(式中、R、R、R、R、R、R及びmは一般式1のそれと同じであり、R、Rは一般式2のそれと同じであり、*で表された炭素原子は不斉炭素原子を示す。)
で表されるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の製造方法が提供される。
【0009】
本発明において、エンド型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸とは、光学異性体混合物(ラセミ体)中のエンド体/エキソ体モル割合が、51以上、通常、55〜100/45〜0の範囲であり、一方、エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸とは49以下、通常45〜0/55〜100の範囲のものをいう。
【0010】
本発明において、一般式1で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンにおいて、置換基R、R、R、R、R及びRは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、プロピル基、ブチル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもかまわない。また、mは0又は1の整数である。
【0011】
従って、一般式1で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンとしては、具体的には、例えば、
一般式1において、m=0の場合は、
【化4】


(一般式4)
(式中、R、R、R、Rは一般式1のそれと同じである。)
で表される、置換乃至非置換シクロペンタジエンである。
【0012】
従って、具体的には、例えば、
シクロペンタジエン、1−メチル−1,3−シクロペンタジエン、1−エチル−1,3−シクロペンタジエン、1−イソプロピル−1,3−シクロペンタジエン、1−イソブチル−1,3−シクロペンタジエン、1,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、1,4−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、1−メチル−3−エチル−1,3−シクロペンタジエン、1−メチル−3−n−プロピル−1,3−シクロペンタジエン、1,3−ジメチル−4−エチル−1,3−シクロペンタジエン、1,4−ジメチル−3−イソブチル−1,3−シクロペンタジエン等が挙げられる。
【0013】
また、一般式1において、m=1の場合は、
【化5】


(一般式5)
(式中、R、R、R、R、R、Rは一般式1のそれと同じである。)
で表される、置換乃至非置換ジシクロペンタジエンである。
【0014】
従って、具体的には、例えば、
ジシクロペンタ−3,8−ジエン、4−メチルジシクロペンタ−3,8−ジエン、7−メチルジシクロペンタ−3,8−ジエン、3,4−ジメチルシクロペンタ−3,8−ジエン、8,9−ジメチルシクロペンタ−3,8−ジエン等が挙げられる。
一方、一般式2で表されるビニルシアナイドにおいて、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、プロピル基、ブチル基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもかまわない。
【0015】
従って、一般式2で表されるビニルシアナイドとしては、具体的には、例えば、
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、1−メチルビニルニトリル、1−エチルビニルニトリル、1−n−プロピルビニルニトリル、1−イソブチルビニルニトリル、1,2−ジメチルビニルニトリル、1−メチルー2−イソプロピルビニルニトリル等が挙げられる。
【0016】
本発明の製造法を反応式で例示すると、例えば、シクロペンタジエンとアクリロニトリルを付加反応させ、得られたシクロペンタジエンシアナイドを、水酸化ナトリウムで加水分解して、エキソ型5−ノルボルネン−2−カルボン酸を得る場合の反応式は、下記の反応式1で示され、
【0017】
【化6】

【0018】
また、ジシクロペンタジエンとアクリロニトリルから、同様にして、エキソ型3−テトラシクロドデセン−8−カルボン酸を得る場合の反応式は、下記の反応式2で示される。
【化7】

【0019】
一般式1で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと一般式2で表されるビニルシアナイドとの付加反応は、ディールスアルダー反応であり、これより、シアノ基が結合した脂環式モノオレフィンシアナイドが生成する。この反応は、通常、シクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンとビニルシアナイドを反応溶剤の存在下又は、不存在下に、温度100〜200℃において、好ましくは、160〜190℃において、1〜10時間程度ディールスアルダー反応させることによって得られる。
【0020】
ディールスアルダー反応時には、溶媒を使用しなくてもよいが、必要に応じて反応に悪影響を及ぼさないような、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化物等を使用してもよい。
なお、前記ディールスアルダー反応により生成する架橋脂環式モノオレフィンシアナイドは、種々のディールスアルダー付加体の混合物として得られるが、原料仕込みモル量論比や反応条件を適当に選択することにより、目的の架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物への反応転化率を向上できることが知られており、また、目的の架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物は、減圧蒸留により、反応混合物から容易に単離することができ、これを原料として、加水分解反応に付してもよい。或いはまた、上記副生物を含む反応混合物をそのまま原料として、加水分解反応した後、洗浄溶剤で洗浄することによって、副生物を除去してもよい。本発明においては、工程が簡略である理由で、後者の方法が好ましい。
【0021】
本発明においては、このようにして得られた架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物をアルカリにより加水分解して、目的物であるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を得る。
用いられるアルカリ化合物は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化リチウム等のアルカリ土類金属水酸化物が用いられる。このようなアルカリ化合物は、粒状等の固体状であっても、水溶液等の液状状であってもよいが、好ましくは、12〜48%の水溶液として用いられる。また、このようなアルカリ化合物は脂環式モノオレフィンシアナイド化合物1モル部に対して、通常、1モル部以上、好ましくは1.2〜4.0モル部の範囲で用いられる。
【0022】
このような、架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物の加水分解は、通常、水が反応溶媒として用いられる。しかし、必要に応じて、原料及び目的生成物の溶解性を考慮して、水と任意の割合で混和するアルコールやケトンのような有機溶媒や、このような有機溶媒と水との混合溶媒も用いられる。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン等を挙げることができる。本発明によれば、反応溶媒は、架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物100重量部に対して、通常、100〜200重量部、好ましくは150〜180重量部の範囲で用いられる。
加水分解温度は、50〜150℃の範囲、好ましくは80〜130℃の範囲で行う。反応時間は、通常、10〜30時間程度である。反応の終点は、液体クロマトグラフィー分析、ガスクロマトグラフィー分析等により確認することができる。
上記加水分解反応では、架橋脂環式モノオレフィンに置換したシアノ基が加水分解してカルボキシアルカリ塩基が生成する。これを例えば、酸等で中和することによりカルボキシル基とすることができる。
【0023】
本発明の方法によれば、このようにして、架橋脂環式モノオレフィンシアナイド化合物を反応溶媒中、アルカリ加水分解した後、好ましくは、得られた反応混合物を、先ず、水と混和しない有機溶媒にて洗浄する。このような洗浄のための有機溶媒(以下、洗浄溶媒という。)としては、好ましくは、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭素原子数5以上の脂肪族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等の炭素原子数5以上の脂肪族ケトン類等が用いられ、なかでも、芳香族炭化水素類が好ましく用いられる。
【0024】
本発明によれば、このような洗浄溶媒は、架橋脂環式モノオレフィンニトリル化合物のアルカリ加水分解に際して、予め、反応溶媒に加えておいてもよく、また、反応終了後に得られた反応混合物に加えてもよい。
架橋脂環式モノオレフィンニトリルのアルカリ加水分解によって得られた反応混合物を上記洗浄溶媒にて洗浄するには、例えば、得られた反応混合物に洗浄溶媒を加え、得られた混合物を、特に限定されるものではないが、通常、50〜60℃の温度で、撹拌、混合した後、油水分液して、洗浄溶媒層を除去すればよい。このような洗浄は、必要に応じて、複数回行ってもよい。
本発明において、原料として用いられる脂環式モノオレフィンニトリルを含む反応生成混合物は、目的物以外の副生物が含まれており、また、このような副生物には、架橋脂環式モノオレフィンニトリルのアルカリ加水分解によっても加水分解されないものもあり、このような副生物は、前記反応溶媒には溶解しないが、上記洗浄溶媒には溶解するので、架橋脂環式モノオレフィンニトリルの加水分解後、得られた反応混合物を前記洗浄溶媒で洗浄することによって、その洗浄溶媒中に抽出することができる。
他方、架橋脂環式モノオレフィンシアナイドのアルカリ加水分解生成物である架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸アルカリ塩は、加水分解反応終了後、得られた反応混合物を洗浄溶媒で洗浄した後も、反応溶媒(水や水混和性有機溶媒)中にとどまっている。
【0025】
そこで、このように、反応混合物を洗浄溶媒で洗浄した後、この洗浄溶媒からなる油層を分液等によって反応混合物から分離除去し、必要に応じて、洗浄溶媒にて更に洗浄し、油層を分液、除去した後、水層を酸で中和することによって、この水層中に目的とする脂環式モノオレフィンカルボン酸を得ることができる。
即ち、本発明によれば、上述したように、架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸アルカリ塩を含む水層を、必要に応じて、洗浄溶媒にて更に洗浄し、油層を分液、除去した後、好ましくは、この水層に、攪拌下、塩酸等の酸を加えて、上記カルボン酸アルカリ塩を中和し、その後又はその前に水層に洗浄溶媒を加えて、この油層中に目的物である架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を抽出し、その後、分液等によって水層を分離除去する。かくして、目的物を含む油層から減圧蒸留等により洗浄溶媒を留去するか、又は蒸留の際に、水等と溶媒置換して、この後、濾別すれば、目的物である架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の精製物を得ることができる。酸としては、速やかに中和作用をするものであれば特に制限はないが、反応後の処理や経済的な面から塩酸、硫酸等の鉱酸あるいはイオン交換樹脂が好ましい。
【0026】
本発明においては、エンド型架橋脂環式モノオレフィンシアナイドを加水分解してカルボン酸アルカリ塩とし、これを酸中和して架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を得る工程において、理論的には不明であるがエキソ型に異性化が起きるものと思われ、その結果、エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を得ることができる。従来の製造法による架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸のエンド体/エキソ体モル割合は、通常、ノルボルネンモノカルボン酸の場合は、例えば、80/20程度であり、またテトラシクロドデセンモノカルボン酸の場合は、55/45程度であるが、本発明の製造方法によると、例えば前者では、25/75程度、後者では、0/100程度である。
【0027】
本発明によれば、このようにして、前記一般式1で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと一般式2で表されるビニルシアナイドから、簡単な操作によって、収率よく、前記一般式3で表されるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の高純度品を得ることができる。
前記一般式3で表されるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸としては、上記用いられる原料に対応して、各種のエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸化合物を得ることが出来るが、例えば、前記一般式4で表される、置換乃至非置換シクロペンタジエンと前記一般式2で表されるビニルシアナイドから5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン及びそのアルキル置換体が得られる。
【0028】
前記一般式5で表される、置換乃至非置換ジシクロペンタジエンと前記一般式2で表されるビニルシアナイドから8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びそのアルキル置換体が得られる。
なお、本発明の製造方法においてエンド体/エキソ体の異性体モル割合の確認は、文献(HELVETICA CHIMICA ACTA VOL.83(2000),2769-2782)記載の方法と同様にして、プロトン核磁気共鳴スペクトル分析法により不斉炭素原子に結合したプロトンのシグナル強度により確認した。
【発明の効果】
【0029】
本発明の製造方法によると、入手容易な原料を用いて、光学活性化合物を用いることなく工業的に実施容易な方法により、エキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸を得ることができる。
【実施例1】
【0030】
エキソ型5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの合成
攪拌機、温度計及び冷却菅を備えた500mL容量四つ口フラスコにアクリロニトリル18.6g(0.35モル)、トルエン56gを仕込み、反応容器内を窒素置換した後、常圧下、温度30℃に昇温した。次いで、シクロペンタジエン27.7g(0.42モル)を上記フラスコ内に攪拌下、温度30℃に保ちながら、40分かけて滴下した。滴下終了後、同温度において、更に6時間、攪拌下に反応を行った後、得られた反応液を減圧濃縮して、反応生成物5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを含む濃縮残渣45g(ガスクロマトグラフィー純度90.6%、また、目的中間物であることはガスクロマトグラフィー質量分析で確認した。)を得た。
次いで、上記得られた濃縮残渣23.8gに、メチルアルコール23.8gを添加し、温度30℃に昇温し、これに48%水酸化ナトリウム水溶液47.6gを25分かけて滴下した。滴下終了後、温度を90℃に昇温して、同温度に保ちながら24時間、攪拌下に反応を行った。得られた反応液を30℃に冷却した後、これにトルエン71.4gを加えて洗浄し、油水分液して、トルエン層をフラスコから分別した。得られた水層に、室温において、17.5%塩酸水90.5g(0.4モル)を加えて、1時間攪拌し、中和した。その後、これにトルエン71.4gを加え温度50℃において1時間攪拌した後、油水分液して水層を除き、得られた油層を3回水洗した後、減圧濃縮して、赤黄色の濃縮残渣を得た。原料アクリロニトリルに対する収率は88.0モル%、ガスクロマトグラフィー分析による純度は98.7%であった。また、赤外分光分析及びプロトン核磁気共鳴分析に付することによって、目的物の生成及びエンド/エキソ割合を確認した。
得られたエキソ型5−カルボキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンのエンド体/エキソ体割合は、モル比で25/75であった。
プロトンNMRチャート(溶媒CDCL 400MHz)を図1に示す。
【実施例2】
【0031】
エキソ型8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンの合成
<8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンの合成>
ジシクロペンタジエン198g(1.50モル)及びアクリロニトリル6.6g(0.12モル)を1L容量のオートクレーブに仕込み、容器内を窒素置換した後、攪拌下に、温度160℃に昇温した。次いで、アクリロニトリル126g(2.38モル)を上記オートクレーブ内に、攪拌下、同温度に保ちながら、5時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度において、更に3時間、攪拌下に反応を行った後、オートクレーブ内温を190℃に昇温し、ジシクロペンタジエン132g(1.0モル)を、攪拌下、同温度に保ちながら、5時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度において、更に4.5時間、攪拌下に反応を行った後、反応混合液を室温まで冷却した。
得られた反応混合液をフラスコに移し、10段相当の精留装置で精留を行い、純度95%(ガスクロマトグラフィー分析による)の8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン186gを得た。
<エキソ型8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンの合成>
上記で得られた、8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン186g(1.0モル)、顆粒状水酸化カリウム112g(2.0モル)及びエチレングリコール557gを、3L4つ口フラスコに仕込み、容器内を窒素置換した後、温度120℃程度において、攪拌下に17時間反応を行った。反応終了後、反応混合液にトルエン556g及び水588gを加えて、温度30℃において、1持間攪拌した後、油層を分液除去し、目的物を含む水層を得る。その後、この分液操作を2回行った後、得られた水層にトルエンを加え、更に17.5%の塩酸水628gを加えて、温度50℃において、1時間攪拌した。その後、水層を分液除去し、得られた油層を水で3回洗浄した後、油層中のトルエンを蒸留で一部留去して濃縮し、得られた濃縮液から、晶析ろ過、乾燥して、純度96.2%(ガスクロマトグラフィー分析による)の粗製8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン126gを得た。
【0032】
得られた粗製8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンにトルエン187gを加えて再結晶精製して、純度99.3%(ガスクロマトグラフィー分析による)の8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン93gを得た。
プロトン核磁気共鳴分析に付することによって、目的物の生成及びエンド/エキソ割合を確認した。得られたエキソ型8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンのエンド体/エキソ体割合は、モル比で0/100であった。
プロトンNMRチャート(溶媒DMSO 400MHz)を図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1で得られた目的物のプロトンNMR分析結果
【図2】実施例2で得られた目的物のプロトンNMR分析結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1で表されるシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと一般式2で表されるビニルシアナイドを付加反応させ、得られた架橋脂環式モノオレフィンシアナイドをアルカリにより加水分解することを特徴とする、一般式3で表されるエキソ型架橋脂環式モノオレフィンカルボン酸の製造方法。
【化1】


(一般式1)
(式中、R、R、R、R、R及びRは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、mは0又は1を表す。)
【化2】


(一般式2)
(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
【化3】


(一般式3)
(式中、R、R、R、R、R、R及びmは一般式1のそれと同じであり、R、Rは一般式2のそれと同じであり、*で表された炭素原子は不斉炭素原子を示す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−96723(P2006−96723A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287453(P2004−287453)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】