説明

エコ運転支援装置

【課題】その時々の運転者の状況を考慮したエコ運転についての注意事項を通知することが可能なエコ運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転者が車両を運転する際の、過剰な燃料の消費状態を報知してエコ運転を支援するエコ運転支援装置であり、道路データを記憶する道路データ記憶手段4と、車両走行時の動作状態(加速、減速等)に基づいて、道路データ中の過剰な燃料消費が発生する地点を要注意地点として設定する要注意地点管理手段302と、運転者の丁寧運転を心がけようとする意識度である丁寧運転意識度を推測する丁寧運転意識度推測手段305と、車両が前記要注意地点管理手段にて設定された要注意地点に接近する際に、前記丁寧運転意識度に応じたレベルで、運転者に注意事項を通知する要注意地点通知部304を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が車両を運転する際の、過剰な燃料消費状態を報知してエコ運転を支援するエコ運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両運転時に過剰に燃料を消費する状態を検知し、これを運転者に報知することにより、エコ運転を心がけるように促すようにした支援装置が提案されている。このような支援装置の従来例として例えば、特開2010−66786号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
【0003】
該特許文献1には、車両が走行する道路データ及び車両の動作情報に基づき、燃料を過剰消費し易い過剰消費地点を特定し、更に、運転者の運転特性を判定した結果に基づいて、過剰消費地点の中から要注意地点を選択して、運転者に報知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例では、運転者の過去の運転実績に基づいて、その運転者の運転特性を判定し、その特性を一律に適用して注意喚起するべき地点を決定し、これを運転者に通知するという構成であるので、運転者の基本的な性向は考慮されているものの、その時々の運転者の状態を反映しているものではない。従って、運転者の意識や感情と無関係にエコ運転についての注意事項が報知されることになり、運転者にとって煩わしいと感じられる場合があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、その時々の運転者の状況を考慮したエコ運転についての注意事項を通知することが可能なエコ運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るエコ運転支援装置は、運転者が車両を運転する際の、過剰なエネルギー消費状態を報知してエコ運転を支援するエコ運転支援装置において、運転者の丁寧運転を心がけようとする意識度である丁寧運転意識度を推測する丁寧運転意識度推測手段を備える。更に、車両が、過剰なエネルギーの消費が予測される要注意地点に接近する際に、丁寧運転意識度に応じたレベルで、運転者に注意事項を通知する要注意地点通知手段を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るエコ運転支援装置では、運転者の丁寧運転意識度を推測し、この丁寧運転意識度が低い場合には、車両が要注意地点に近づくことを確実に運転者に知らせることができる。また、丁寧運転意識度が高い場合には、車両が要注意地点に近づくことについての通知を簡素化して、運転者に煩わしさを感じさせることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエコ運転支援装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係るエコ運転支援装置の、車両の速度変化のデータから燃料過剰消費の要注意地点を特定する方法の説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエコ運転支援装置に係り、同乗者が存在する際の運転に影響を及ぼすか否かの調査データを示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るエコ運転支援装置の、目的地の到着時刻の分布と、その到着時刻に要求される厳格度との関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るエコ運転支援装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るエコ運転支援装置の、目的地到着に対する性急度を決定する際に用いるマップの説明図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るエコ運転支援装置の、処理動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第5実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該エコ運転支援装置101は、車両の走行速度や燃料噴射量等の車両走行時の動作状態を取得する車両情報取得手段1と、GPS(Global Positioning System)や自律航法に基づいて車両位置を計測しこの位置データを出力する車両位置測位手段2と、エコ運転支援に関わる各種処理を実行する演算手段3と、道路ネットワーク構成情報を電子データとして記憶する道路データ記憶手段4と、エコ運転支援に関する各種の情報を、画像や音声の形式で運転者に提示する出力手段5と、を備えている。
【0012】
演算手段3は、エコ運転診断部(エコ運転診断手段)301と、要注意地点管理部302と、走行経路管理部(走行経路管理手段)303と、要注意地点通知部(要注意地点通知手段)304と、丁寧運転意識度推測部(丁寧運転意識度推測手段)305と、を備えており、例えば中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成されている。また、図示を省略しているが、演算手段3は、現在時刻を認識し、且つ各処理の経過時間を計時する時計回路(時計手段、計時手段)を備えている。
【0013】
エコ運転診断部301は、車両情報取得手段1にて取得される速度情報等を用いて、運転者がエコ運転を実践できているか否かを診断する。具体的には、後述するように、急加速、急減速、頻繁な加速・減速の繰り返し等の操作により燃料を過剰に消費するという、過剰消費状態となっているか否かを判断し、過剰消費状態である場合にエコ運転が実践できていないものと診断する。
【0014】
要注意地点管理部302は、エコ運転診断部301にてエコ運転が実践できていないと診断された際に、このとき車両位置測位手段2で取得される車両位置情報に基づいて、その位置(エコ運転が実践できていない地点)を道路データ上で特定し、これを要注意地点として記憶、管理する。
【0015】
走行経路管理部303は、車両走行の目的地(走行履歴等に基づいて統計的に予想されたものも含む)に到達するまでの走行経路を計算し、且つ保存する。更に、車両位置測位手段にて検出される車両の位置情報が、想定されている走行経路から外れた場合には、再度走行経路を計算して、走行経路を修正する。また、車両が過去に走行した走行経路についての、走行パターンを記憶する。走行パターンは、例えば、同乗者の人数についての情報や同乗者に子供、老人、妊婦、障害者が含まれているか否かの情報、或いは、目的地や目的地の属性、目的地に訪問する時刻等の情報である。
【0016】
要注意地点通知部304は、車両位置測位手段2の出力データに基づいて現在の車両位置を監視し、且つ、走行経路管理部303で管理されている走行経路、及び要注意地点管理部302で管理されている要注意地点の情報に基づいて、車両の走行経路上に存在し該車両が接近しつつある要注意地点を検出する。そして、車両が要注意地点に接近する場合には、この要注意地点を通過する際の、エコ運転を実践する上での注意事項を運転者への提示情報として作成し、車両がこの要注意地点に到達する前の適当なタイミングで、提示情報を出力手段5に出力する。
【0017】
丁寧運転意識度推測部305は、後述する手法に基づいて、運転者が丁寧な運転をしようとする意識の程度(後述する丁寧運転意識度)を推測し、この丁寧運転意識度に応じて、車両が前述の要注意地点を通過する前に運転者に注意事項を通知する際の通知レベルを決定する。
【0018】
出力手段5は、例えば、映像を表示するディスプレイや表示ランプ、或いは音声を出力するスピーカ等である。
【0019】
[丁寧運転意識度、通知レベルの説明]
以下、丁寧運転意識度推測部305により推測される丁寧運転意識度について詳細に説明する。本実施形態では、運転者が丁寧運転しようとする意識度(丁寧運転意識度)を推測し、これを例えば、「高」、「中」、「低」の3段階に設定し、これに基づいて、車両が要注意地点(過剰な燃料消費が発生すると推測される地点)に接近する場合に、運転者にこの接近情報をどの程度積極的に通知するかの程度を示す通知レベル(例えば、「高」、「中」、「低」の3段階)を決定する。
【0020】
丁寧運転意識度としては、同乗者が存在するか否か等の情報により設定することが可能であり、同乗者が存在する場合には丁寧運転意識度が高く、存在しない場合には丁寧運転意識度が低くなるように設定することができる。
【0021】
そして、丁寧運転意識度が低い場合には、燃料を過剰消費する可能性が高まるので、通知レベルを高く設定し、運転者に対してより気付きやすいように要注意地点への接近情報を通知する。一方、丁寧運転意識度が高い場合には、燃料を過剰消費する可能性は低くなるので通知レベルを低く設定し、運転者に対して煩わしさを感じさせないように要注意地点への接近情報を通知する。
【0022】
具体例を示すと、複数箇所設定される各々の要注意地点(要注意地点管理部302に記憶されている)に対してそれぞれ重要度を設定し(「重要度」の設定については後述する)、この重要度と丁寧運転意識度との関係に基づいて、要注意地点への接近を通知するか否かを決定する方法を採用することができる。例えば、丁寧運転意識度が高い場合には、重要度が高い場合にのみ要注意地点への接近状態を運転者に通知するように、通知レベルを低く設定し、丁寧運転意識度が低い場合には、重要度に関係なく要注意地点への接近状態を運転者に通知するように通知レベルを高く設定するという方法を採用することができる。本実施形態では、この方法を採用する例について説明する。
【0023】
また、通知レベルは、高いほど運転者がより認識し易い態様で注意事項を通知するように設定する。具体例として、上記した通知レベル以外に、下記の(イ)〜(ハ)を挙げることができる。
【0024】
(イ)通知レベルが高い場合には、運転者に対して注意事項を通知する回数を多くし、低い場合には、注意事項を通知する回数を少なくする。
【0025】
(ロ)通知レベルが高い場合には、注意事項の通知内容をより詳細にして具体的なアドバイスまで通知し、低い場合には注意事項を簡素な内容とする
(ハ)通知レベルが高い場合には、信号音と視覚的な情報で注意事項を通知し、低い場合には信号音のみで注意事項を通知する。
【0026】
[要注意地点における重要度の説明]
次に、要注意地点、及びその重要度の定義について説明する。要注意地点は、過去における車両走行時において、過剰に燃料を消費した地点(即ち、エコ運転を実践できなかった地点)であり、本実施形態では、車両の速度変化に基づいて、要注意地点を特定する例について説明する。
【0027】
車両の速度変化と燃料消費量との関係を調べると、理想的な速度変化での運転と対比して燃料消費が著しく増えるケースとしては、(a)急激な加速、(b)速度の不安定な上下変動、(c)急激な減速、の3つ場合が典型的であることが知られている。そこで、図3(a)〜(c)に示すように、まず、速度変化(増加、減少を含む)の絶対値Δv1が、予め設定した閾値d以上となる位置を検出する。
【0028】
図3(a)の場合には、Δv1が増加であり、その後の減少変化の絶対値Δv2が閾値d未満であるならば、加速Δv1に要した時間Δtを求めて、評価指標eを「e=Δv1/Δt」により求める。そして、評価指標eが所定の閾値α以上であるならば、加速Δv1の開始地点を急加速の発生した要注意地点として記憶する。
【0029】
図3(b)の場合には、絶対値が閾値d以上の速度変化Δv1、Δv2、…、Δvn(nは2以上)が連続して発生した際に、これらn回の速度変化に要した時間の総和Δtを求め、評価指標eを「e=(Δv1+Δv2+…+Δvn)/Δt」により求める。そして、評価指標eが所定の閾値α以上であるならば、速度変化Δv1の開始地点を不安定な速度変動の発生した要注意地点として記憶する。
【0030】
図3(c)の場合には、Δv1が減少であり、その後の増加変化Δv2が閾値d未満であるか、或いは車両速度がそのまま0に至るならば、減速Δv1に要した時間Δtを求めて、評価指標eを「e=Δv1/Δt」により求める。そして、評価指標eが所定の閾値α以上であるならば、減速Δv1の開始地点を急減速の発生した要注意地点として記憶する。
【0031】
更に、各要注意地点の重要度を上記の評価指標eの大小により定める。評価指標eが小さければ燃料の過剰消費も軽微なものにとどまっており、評価指標eが大きい程、より深刻であるので、例えば、閾値αに対して、α≦e<1.5αであれば重要度「低」、1.5α≦e<2αであれば重要度「中」、e≧2αであれば重要度「高」と設定する。そして、重要度を示すデータは要注意地点管理部302に記憶されている。
【0032】
[第1実施形態の動作]
次に、上述のように構成されたエコ運転支援装置101の演算手段3による処理動作を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0033】
初めに、ステップS201において、走行経路管理部303は、車両が所与の目的地に達する走行経路を算出する。目的地は、システム起動時に運転者が入力して設定してもよいし、車両の過去の走行履歴として出発地点及び出発時間帯毎に、どこに到着したかを集計しておき、現在の出発地点及び出発時間帯を参照して、最も頻度の高い到着地点を今回の目的地として予測してもよい。また、後述の図6に示すスケジュール管理機能と連動させて現在時刻から直近のスケジュールに登録されている場所を、目的地として設定しても良い。
【0034】
ステップS202において、丁寧運転意識度推測部305は、例えば同乗者が存在するか否か等の情報に基づき、運転者が丁寧な運転をどれだけ心がけようと意識しているかの程度を推測し、この程度である丁寧運転意識度を推測する。例えば、丁寧運転意識度を「高」、「中」、「低」の3段階に設定し、これらの3つのうちのどれに相当するかを決定する。
【0035】
ステップS203において、丁寧運転意識度推測部305は、ステップS202の処理で決定した運転者の丁寧運転意識度に基づいて、車両が要注意地点(過剰な燃料消費が発生すると予測される地点)に接近する際に、運転者に対して注意事項を知らせる際の通知レベルを決定する。一例として、ステップS202の処理で推測された丁寧運転意識度が低い場合には、対象となる要注意地点に対して設定されている重要度に関係無く通知レベルを「高」とする。また、丁寧運転意識度が高い場合には、対象となる要注意地点に対して設定されている重要度が「高」の場合にのみ通知レベルを「高」に設定し、それ以外の場合(重要度が「中」または「低」の場合)には通知レベルを「低」に設定する。
【0036】
ステップS204において、走行経路管理部303は、車両が先に求めた走行経路上を外れることなく走行しているか否かを判断し、外れていると判断された場合には(ステップS204でNO)、ステップS205において車両の走行経路を再探索し、ステップS204に処理を戻す。一方、外れていないと判断された場合には(ステップS204でYES)、ステップS206に処理を進める。
【0037】
ステップS206において、要注意地点通知部304は、車両の走行経路上で現在の車両位置から所定距離内となる範囲に要注意地点が存在するか否かを判断する。この処理では、後述のステップS208,S209の処理で既に処理済みフラグが「ON」とされている要注意地点については、判断条件から除外する。そして、要注意地点が存在しないと判断された場合には(ステップS206でNO)は、ステップS204に処理を戻し、要注意地点が存在すると判断された場合には(ステップS206でYES)、ステップS207に処理を進める。
【0038】
ステップS207において、要注意地点通知部304は、通知レベルが「高」であるか否かを判断する。そして、通知レベルが「高」であると判断された場合には(ステップS207でYES)、ステップS208において要注意地点通知部304は、注意事項を通知し、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。例えば、「まもなくエコ運転注意地点を通過します。エコ運転に心がけてください!」等の音声案内を出力したり、「エコ運転を心がけてください」と表示したランプを点灯させる等の注意喚起を実行する。
【0039】
一方、通知レベルが「中」または「低」であると判断された場合には(ステップS207でNO)、ステップS209において要注意地点通知部304は、注意事項を通知せず、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。
【0040】
上記の処理により、通知レベルが「高」に設定されている場合には、運転者に対して要注意地点が近いことを確実に知らせることができ、通知レベルが「中」または「低」に設定されている場合には、車両が要注意地点に接近している場合であっても注意喚起を行わず、丁寧運転に心がけている運転者に対してあえて注意喚起することを行わず、煩わしさを感じさせることを回避する。
【0041】
また、通知レベルが「高」であるか否かに関係なく、一度ステップS208またはS209の処理が実行された要注意地点については、再度通知の対象であるか否かの判断を行わないように、処理済みフラグを「ON」とする。従って、処理済みフラグが「ON」とされた要注意地点については、ステップS206の処理から除外されるので、重複した処理が実行されることを防止できる。
【0042】
ステップS210において、要注意地点通知部304は、車両が目的地に到着したか否かを判断し、目的地に到着していなければ(ステップS210でNO)、ステップS204に処理を戻し、到着した場合には(ステップS210でYES)、本処理を終了する。
【0043】
なお、上記した実施形態では、ステップS208の処理にて注意事項を通知し、ステップS209の処理では注意事項を通知しない例について説明したが、通知レベルに応じた種々の通知内容の変更が可能である。
【0044】
例えば、通知レベルを「高」「中」「低」の3段階に設定し、通知レベルが高いほど、注意事項の内容をより詳細な内容とすることができる。この場合には、通知レベルが高いほど、運転者に対して要注意地点に近づいた場合の注意事項を詳細に認識させることができるので、丁寧運転を心がけるように促すことができる。また、他の例として、通知レベルが高いほど、注意事項を通知する回数を増やすように設定することができる。例えば、車両が要注意地点に近づいた際に、通知レベルが「高」である場合には注意事項を2回繰り返して通知し、通知レベルが「中」である場合には注意事項の通知回数を1回とし、通知レベルが「低」である場合には注意事項の通知を行わないようにすることにより、各通知レベルに適した通知が可能となる。
【0045】
このようにして、第1実施形態に係るエコ運転支援装置101では、運転者の丁寧運転意識度が低く、荒い運転となって過剰な燃料消費が発生すると推測される場合には、通知レベルを高く設定することにより、車両が要注意地点に近づいていることを積極的に運転者に通知する。一方、運転者の丁寧運転意識度が高く、穏やかな運転が実践されて過剰な燃料消費が抑えられる傾向にあると推測される場合には、注意事項を簡素なものとしたり、或いは通知自体を行わないようにすることにより、運転者に煩わしさを感じさせることを回避する。その結果、エコ運転についての注意喚起が必要な運転者に対しては、要注意地点に近づいていることを確実に認識させることができ、丁寧運転を実践している運転者に対しては、いたずらに注意事項を通知することを回避して煩わしさを低減させる。
【0046】
従って、その時々の運転者の状況を考慮して、エコ運転に関する注意事項を通知することができるようになる。
【0047】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。図4に示すように、このエコ運転支援装置102は、前述した図1に示したエコ運転支援装置101の構成に対して、同乗者識別手段6を追加している点で相違し、それ以外の構成は同一である。
【0048】
同乗者識別手段6は、車両の助手席、或いは後部座席に乗員が乗車しているか否かを識別し、更に、同乗者に子供、老人、妊婦、障害者が含まれるか否かを判別する機能を有している。そして、該同乗者識別手段6は、各座席のシート毎に乗員の有無を検知する圧力センサや、シートベルトの装着センサ、映像により乗員を識別する室内カメラ、IDカードセンサ、近距離無線通信による携帯電話の個人認証装置、等を用いることができる。
【0049】
次に、第2実施形態に係るエコ運転支援装置102の動作について説明する。第2実施形態に係るエコ運転支援装置102に係る処理動作のフローチャートは、前述した図2に示した処理手順とほぼ同様であり、ステップS202の処理のみが相違している。
【0050】
即ち、第2実施形態では、丁寧運転意識度推測部305は、同乗者識別手段6により運転者以外の同乗者が存在するか否か、及び、存在する場合にはその人数を確認する。そして、同乗者が存在しない場合(運転者のみが乗車している場合)には、丁寧な運転を心がけようとする運転者の意識は低いものと推測し、丁寧運転意識度を低く設定する。即ち、図2のステップS203の処理では、通知レベルは高く設定される。また、同乗者の数が増加するにつれて丁寧運転意識度が高くなるように設定する。即ち、図2のステップS203の処理では、通知レベルは低く設定される。
【0051】
図5は、発明者らが実施した年齢30〜50代の女性ドライバ10人へのインタビュー内容の抜粋を示しており、10人中6人が単独乗車時に比べて同乗者がいる場合は何らかの形で運転に気を遣っていると回答しており、乗員の有無を検知するといった極めて簡単な手法を用いることにより、丁寧運転意識度が高いか低いかを推測するための要因として効果を上げられることを示唆している。
【0052】
更に、丁寧運転意識度をより高精度に推測するためには、シート圧センサで検知した乗員重量や室内カメラの画像処理結果、或いはIDカードセンサ等による特定個人の認証結果から、乗員中に子供、老人、妊婦、障害者等が存在するか否かを識別し、これらの乗員が存在する場合は、丁寧な運転を心がける意識はより高くなると推測できるので、丁寧運転意識度を高く設定することも可能である。
【0053】
そして、第2実施形態に係るエコ運転支援装置102では、同乗者が存在するか否かを判断し、且つ、同乗者が存在する場合にはその人数、子供、老人、妊婦、障害者が存在するか否かの情報に基づいて、丁寧運転意識度を設定するので、より正確に運転者が丁寧な運転を心がけているか否かを推測することができる。
【0054】
従って、この丁寧運転意識度に基づいて要注意地点の通知レベルを変更することにより、エコ運転が実践できているにも関わらず、要注意地点の接近の通知を繰り返すことにより運転者に煩わしさを感じさせるといった状況を回避することができる。また、同乗者が存在するか否かの判断は、シート座面の圧力やシートベルトの着脱等の、簡易な手段で即時に検知することができるので、比較的低コストで所望の効果を達成することができる。
【0055】
また、子供、老人、妊婦、障害者などが同乗することで、単に一般成人等の同乗者が存在する場合よりも、より一層積極的に運転者が丁寧で穏やかな運転を心がけている状態を推測し、これに応じて要注意地点の通知レベルを変えることによって、より高い効果を発揮することが可能となる。
【0056】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。図6に示すように、該エコ運転支援装置103は、前述した図1に示したエコ運転支援装置101の構成に対して、到着時刻分布記憶手段7を備えている点、及び演算手段3がスケジュール管理部306を備えている点で相違し、それ以外の構成は同一である。
【0057】
スケジュール管理部306は、車両の運転者のスケジュールを記憶、管理する機能を備えており、例えば、日付、目的地及びその到着時刻等が記憶されている。目的地については、例えば、地図データ上で位置を特定できる形式(例えば緯度・経度等の位置情報を付加された形式)で登録している。
【0058】
到着時刻分布記憶手段7は、過去における車両の走行履歴に基づき、到着地点ごとに到着時刻の分散状態(同一時刻ごとの頻度の分布)を記憶する機能を備えている。構成上は道路データ記憶手段4と一体の記憶装置であってもよい。
【0059】
到着時刻分布記憶手段7には、例えば、図7に示すような形式で到着時刻分布のデータが記憶されている。図7に示す(A)〜(C)の3通りの分布は、それぞれ異なる運転者の、過去の走行履歴を示しており、目的地に到着する時刻の分布を示している。例えば、図7(A)に示す運転者の場合には、9時35分から10時05分の間に広く分散して目的地に到着しており、(B)に示す運転者の場合には、ほぼ9時50分前後に集中して目的地に到着しており、(C)に示す運転者の場合には、9時30分から10時00分の間に分散して目的地に到着している。
【0060】
そして、図7(A)〜(C)に示す各運転者に対して、目的地の到着時刻の平均をとると、いずれについても9時52分となるので、この場所に対して通例で求められていると想定される到着時刻はおおよそ10時少し前ということになる。
【0061】
しかし、各運転者に対する到着時間の分布状況の違いにより、(A)のように比較的広い範囲に到着時刻が分散している場合にはこの到着時刻はそれほど厳格に求められているものではないと推測される。これに対し、(B)のように狭い時間帯に集中している場合には、少なくともこの分布の最も遅い時刻(9時56分)には到着すべき程度の厳格さが求められていると推測される。
【0062】
また(C)のように分布は比較的広い範囲になるものの平均時刻以降の後半に偏って分布しているというような分布の偏在が見られる場合には、やはり到着時刻にある程度の厳格さが求められていると推測される。
【0063】
そして、本実施形態では、到着時刻分布記憶手段7に記憶されている到着時刻の分布に基づいて、到着時間に対する厳格度を推測し、これに応じて丁寧運転意識度を設定する。即ち、図7(B)に示したように、到着時刻が集中している場合には厳格度を高く設定し(例えば、厳格度「高」に設定)、図7(A)に示したように、到着時刻が分散している場合には厳格度を低く設定する(例えば、厳格度「低」に設定)。
【0064】
更に、本実施形態では、図9に示すマップを参照して、運転者が目的地に到着するための急ぎの度合いを示す到着性急度を決定する。具体的には、現在時刻が想定到着時刻(図7に示す例では、9時52分)に達していない場合で、厳格度が「高」である場合には、3段階に設定される到着性急度を「中」とし、厳格度が「低」である場合には、到着性急度を「低」とする。また、現在時刻が想定到着時刻を過ぎている場合で、厳格度が「高」である場合には、到着性急度を「高」とし、厳格度が「低」である場合には、到着性急度を「中」とする。このように、厳格度と現在時刻、及び想定到着時刻との関係から、到着性急度を設定する。そして、図9に示すマップは丁寧運転意識度推測部305に記憶されている。即ち、丁寧運転意識度推測部305は、車両が移動する際の性急度を判断する性急度判断手段としての機能を備えている。
【0065】
そして、本実施形態では、上記のように設定した到着性急度が高いほど、通知レベルが高くなるように設定する。例えば、到着性急度が「高」である場合にはエコ運転を疎かにして運転する可能性が高いので(即ち、丁寧運転意識度が低いので)、通知レベルを「高」に設定し、到着性急度が「低」である場合にはエコ運転に注意を払う可能性が高いので(即ち、丁寧運転意識度が高いので)、通知レベルを「低」に設定する。また、到着性急度が「中」の場合には通知レベルを「中」に設定する。
【0066】
[第3実施形態の動作]
次に、第3実施形態に係るエコ運転支援装置103の処理動作を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0067】
初めに、ステップS801において、走行経路管理部303は、車両が所与の目的地に達する走行経路を算出する。この目的地は、スケジュール管理部306に記憶されているスケジュールに基づいて設定される。即ち、スケジュール管理部306は、前述したように、地図上にて目的地を特定できるように、経度、緯度等の位置情報が付加されて登録されているので、目的地の位置座標を認識することができる。
【0068】
また、この目的地の到着想定時刻は、このスケジュールの開始時刻に設定することが可能である。つまり、この目的地に到着した後の行動の開始時刻を、この目的地の到着時刻であるものと想定することができる。また、統計的に次の目的地とその想定される到着時刻が予測可能である場合には、これらの到着時刻を採用することも可能である。
【0069】
ステップS802において、走行経路管理部303は、ステップS801の処理で設定された目的地についての過去の到着時刻分布を参照し、その到着時刻に要求される厳格度を例えば「高」、「低」の2段階で決定する。この処理では、図7に示した如くの、到着時刻分布記憶手段7に記憶されている到着時刻分布を参照して決定する。例えば、図7(A)に示した例では、厳格度は「低」に設定され、図7(B)に示した例では、厳格度は「高」に設定される。
【0070】
ステップS803において、走行経路管理部303は、車両が先に求めた走行経路上を外れることなく走行しているか否かを判断し、外れていると判断された場合には(ステップS803でNO)、ステップS804において車両の走行経路を再探索した後、ステップS803に処理を戻す。一方、走行経路上を外れていないと判断された場合には(ステップS803でYES)、ステップS805に処理を進める。
【0071】
ステップS805において、要注意地点通知部304は、車両の走行経路上で現在の車両位置から所定距離内に要注意地点が存在するか否かを判断する。この処理では、後述のステップS808,S809の処理で既に処理済みフラグが「ON」とされている要注意地点については、判断条件から除外する。そして、要注意地点が存在しないと判断された場合には(ステップS805でNO)は、ステップS803に処理を戻し、要注意地点が存在すると判断された場合には(ステップS805でYES)、ステップS806に処理を進める。
【0072】
ステップS806において、丁寧運転意識度推測部305は、目的地への到着の性急度を推測する。例えば、現在時刻と、想定される到着時刻、及びステップS802の処理で求めた目的地への到着時刻に要求される厳格度に基づいて、図9に示したマップを参照して、現在の移動における運転者の性急度を求める。そして、性急度が「高」であれば、運転者は丁寧な運転に気を配っている余裕はないと想定されるので、丁寧運転の意識度は低く、そのため要注意地点での通知レベルを「高」に設定する。また、性急度が「中」または「低」であれば、丁寧運転の意識度は高いので、要注意地点の通知レベルを「中」または「低」設定する。
【0073】
ステップS807において、要注意地点通知部304は、通知レベルが「高」であるか否かを判断する。そして、通知レベルが「高」であると判断された場合には(ステップS807でYES)、ステップS808において、要注意地点通知部304は、注意事項を通知し、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。例えば、「まもなくエコ運転注意地点を通過します。エコ運転に心がけてください!」等の音声案内を出力したり、「エコ運転を心がけてください」と表示したランプを点灯させる等の注意喚起を実行する。
【0074】
一方、通知レベルが「高」でないと判断された場合には(ステップS807でNO)、ステップS809において、要注意地点通知部304は注意事項を通知せず、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。
【0075】
上記の処理により、通知レベルが「高」に設定されている場合には、運転者に対して要注意地点が近いことを確実に知らせることができ、通知レベルが「中」、「低」に設定されている場合には、車両が要注意地点に接近している場合であっても注意喚起を行わず、丁寧運転に心がけている運転者に対して煩わしさを感じさせることを回避できる。
【0076】
また、通知レベルが「高」であるか否かに関係なく、一度ステップS808またはS809の処理が実行された要注意地点については、再度通知の対象であるか否かの判断を行わないように、処理済みフラグを「ON」とする。従って、処理済みフラグが「ON」とされた要注意地点については、ステップS806の処理から除外されるので、重複した処理を回避できる。
【0077】
ステップS810において、要注意地点通知部304は、車両が目的地に到着したか否かを判断し、目的地に到着していなければ(ステップS810でNO)、ステップS803に処理を戻し、到着した場合には(ステップS810でYES)、本処理を終了する。
【0078】
このようにして、第3実施形態に係るエコ運転支援装置103では、目的地への到着を急いでいるために丁寧な運転に対して消極的である状態を推測し、この推測結果に応じて要注意地点の通知レベルを変更することによって、運転が乱暴になりがちで結果としてエコ運転が実践できない可能性の高い場合に、より積極的に要注意地点が接近していることを運転者に通知することにより、効果的にエコ運転の実践を支援することができる。
【0079】
また、習慣的に繰り返し訪問している目的地に対して、到着すべき時間帯やその到着時間がどれほど厳格に要求されているかを推測し、これに応じて要注意地点の通知レベルを変更することにより、運転者が目的地設定などの入力操作をしない場合でも要注意地点の通知情報を適正化してエコ運転の実践を支援することができる。
【0080】
更に、時刻の比較という直接的な手段で、移動に対する性急度を確実に推測し、これに応じて要注意地点の通知レベルを変更することにより、運転が乱暴になりがちな状態での要注意地点の通知を充実させてエコ運転を支援する、という効果をより確実に実現できる。
【0081】
[第4実施形態の説明]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、本発明の第4実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。図10に示すように、このエコ運転支援装置104は、前述した図1に示したエコ運転支援装置101の構成に対して、丁寧運転意識度推測部305がエコ運転診断部301によるエコ運転診断結果を参照して、丁寧運転に対する意識度を推測する点で相違する。即ち、図10では、エコ運転診断部301から丁寧運転意識度推測部305に信号を送信する接続線が追加されている点で相違しており、それ以外は図1に示したエコ運転支援装置101と同一の構成を有している。
【0082】
そして、第4実施形態では、運転を開始してから所定時間の運転後、或いは、運転を開始してから所定距離の運転後にて、この運転者がエコ運転を実践しているか否かを診断し、この診断結果に基づいて、丁寧運転意識度を推定する。そして、推定した丁寧運転意識度に基づいて通知レベルを決定する。
【0083】
この際、エコ運転診断として種々の方法が考えられる。本実施形態では、一例として、要注意地点の発生状況、及び重要度に基づいて診断を行う。具体的には、各要注意地点に対してそれぞれ、前述した評価指標eの数値に基づいた重要度を付し、更に、減点法により、発生した要注意地点の数が多いほど減点値を多くし、且つ重要度が高いほど減点値を多くするといった手法により、対象となる走行区間のエコ運転診断の結果を得る。そして、トータルの減点値が大きい程、エコ運転診断の結果は悪いと判断されるので、丁寧運転意識度を低く設定する。反対に、トータルの減点値が少ない場合にはエコ運転診断の結果は良いと判断されるので、丁寧運転意識度を高く設定する。そして、この手法を採用することにより、丁寧運転意識度を「高」、「中」、「低」の3段階に区分する。
【0084】
[第4実施形態の動作]
以下、第4実施形態に係るエコ運転支援装置104の処理動作を、図11に示すフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様に、複数の要注意地点に対して、重要度(上述した「評価指標e」により決定される程度)が設定されているものとする。
【0085】
初めに、ステップS1101において、走行経路管理部303は、車両が所与の目的地に達する走行経路を算出する。目的地は、システム起動時に運転者が入力して設定してもよいし、車両の過去の走行履歴として出発地点及び出発時間帯毎に、どこに到着したかを集計しておき、現在の出発地点及び出発時間帯を参照して、最も頻度の高い到着地点を今回の目的地として予測してもよい。
【0086】
ステップS1102において、エコ運転診断部301は、車両が走行を開始してから所定時間経過するか、或いは所定距離を走行するまでの間において、エコ運転が実践されているか否かを診断し、この診断結果を丁寧運転意識度推測部305に出力する。
【0087】
この際、所定時間、或いは所定距離は、出発地点や出発時間帯毎に、適当な時間、距離を設定しておくことが望ましい。所定距離でエコ運転診断の対象区間を設定する場合においては、自宅を出発するときは最終目的地がどこであるかによらず、まず自宅から主要幹線路までのアプローチに関してはほぼ同一の道路を走行する場合が多いので、この区間をエコ運転診断の対象とすることにより、多くの場合においてこの診断結果を有効に利用することができる。
【0088】
また、所定時間でエコ運転診断の対象区間を設定する場合においては、同一の出発地点で、且つ同一の時間帯であった方が、診断条件を同一化し易い。こうして、所定時間、或いは所定距離を走行し終えた時点でエコ運転診断部301が、直前に走行した区間に関してのエコ運転実践度を診断し、この診断結果を丁寧運転意識度推測部305に出力する。
【0089】
ステップS1103において、丁寧運転意識度推測部305は、エコ運転診断結果に基づいて、上述した手法に基づいて運転者の丁寧運転意識度を推測する。例えば、丁寧運転意識度を「高」、「中」、「低」の3段階に設定し、これらの3つのうちのどれに相当するかを決定する。
【0090】
ステップS1104において、丁寧運転意識度推測部305は、ステップS1103の処理で決定した運転者の丁寧運転意識度に基づいて、車両が要注意地点(過剰な燃料消費が発生する地点)に接近する際に、運転者に対して注意事項を知らせる際の通知レベルを決定する。例えば、ステップS1103の処理で推測された丁寧運転意識度が「低」である場合には、対象となる要注意地点に対して設定されている重要度に関係無く通知レベルを「高」とし、丁寧運転意識度が「高」である場合には、対象となる要注意地点に対して設定されている重要度が「高」の場合にのみ通知レベルを「高」に設定する。
【0091】
ステップS1105において、走行経路管理部303は、車両が先に求めた走行経路上を外れることなく走行しているか否かを判断し、外れていると判断された場合には(ステップS1105でNO)、ステップS1106において、車両の走行経路を再探索し、ステップS1105に処理を戻す。一方、走行経路を外れていないと判断された場合には(ステップS1105でYES)、ステップS1107に処理を進める。
【0092】
ステップS1107において、要注意地点通知部304は、車両の走行経路上で現在の車両位置から所定距離内に要注意地点が存在するか否かを判断する。この処理では、後述のステップS1109,S1110の処理で処理済みフラグが「ON」とされている要注意地点については、判断条件から除外する。そして、要注意地点が存在しないと判断された場合には(ステップS1107でNO)は、ステップS1105に処理を戻し、要注意地点が存在すると判断された場合には(ステップS1107でYES)、ステップS1108に処理を進める。
【0093】
ステップS1108において、要注意地点通知部304は、ステップS1104の処理で決定した通知レベルが「高」であるか否かを判断する。そして、通知レベルが「高」であると判断された場合には(ステップS1108でYES)、ステップS1109において、要注意地点通知部304は運転者に対して注意事項を通知し、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。例えば、「まもなくエコ運転注意地点を通過します。エコ運転に心がけてください!」等の音声案内を出力したり、「エコ運転を心がけてください」と表示したランプを点灯させる等の注意喚起を実行する。
【0094】
一方、通知レベルが「高」でないと判断された場合には(ステップS1108でNO)、ステップS1110において、要注意地点通知部304は運転者に対して注意事項を通知せず、この処理が終了したことを示す処理済みフラグを「ON」とする。
【0095】
上記の処理により、通知レベルが「高」に設定されている場合には、運転者に対して要注意地点が近いことを確実に知らせることができ、通知レベルが「低」に設定されている場合には、車両が要注意地点に接近している場合であっても注意喚起を行わず、丁寧運転に心がけている運転者に対して煩わしさを感じさせることを回避できる。
【0096】
また、通知レベルが「高」であるか否かに関係なく、一度ステップS1109またはS1110の処理が実行された要注意地点については、再度通知の対象であるか否かの判断を行わないように、処理済みフラグを「ON」とする。従って、処理済みフラグが「ON」とされた要注意地点については、ステップS1107の処理から除外されるので、重複した処理を回避できる。
【0097】
その後、ステップS1111において、要注意地点通知部304は、車両が目的地に到着したか否かを判断し、目的地に到着していなければ(ステップS1111でNO)、ステップS1105に処理を戻し、到着した場合には(ステップS1111でYES)、本処理を終了する。
【0098】
このようにして、第4実施形態に係るエコ運転支援装置104では、その時々の運転者の状況に応じて変化する運転の丁寧さを、直近の運転実績から直接推測し、これに応じて要注意地点の通知レベルを変更するので、運転者の実際の運転状況に即した極めて直接的に通知レベルを設定することができる。従って、要注意地点での注意事項の通知を適正に行うことが可能となる(※請求項7の効果)
[第5実施形態の説明]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図12は、本発明の第5実施形態に係るエコ運転支援装置の構成を示すブロック図である。図12に示すように、該エコ運転支援装置105は、前述した図4(第2実施形態)に示したエコ運転支援装置102の構成に対して、演算手段3が意識ルール管理部(意識ルール管理手段)307を備えている点、及び該意識ルール管理部307が同乗者識別手段6の出力信号、及びエコ運転診断部301の出力信号を入力している点で相違する。
【0099】
意識ルール管理部307は、過去の車両走行時において、そのとき同乗していた人に関する情報や、いつ頃どんな場所に行ったかという目的地やその種別、移動時間に関する情報を、同乗者識別手段6及び走行経路管理部303より取得する。
【0100】
更に、1回の走行を終えるごとに、エコ運転診断部301より、今回の運転の診断結果を取得し、同乗者情報や目的地・移動時間情報を前提部パラメータ、その際のエコ運転診断結果を帰結部パラメータとして、このような走行状況の時には、エコ運転をこの程度実践していた、というルールを生成してこれを記憶する。
【0101】
この際、前提部パラメータが同一となる状況が新たに発生する度に、帰結部パラメータを最新値に書き替えても良いし、記憶されている前回値との平均をとって更新しても良い。そして、新たに走行を開始する際、具体的には、図2に示したフローチャートのステップS202の処理で記載した丁寧運転の意識度推測処理の中で、まず、現時点での同乗者情報、目的地・移動時間情報を確認し、前提部パラメータが一致するルールをこれまで記憶されたものの中から検索し、その帰結部パラメータとして、これまで同じ走行状況であったときにはどの程度、エコ運転を実践していたかを示すデータを取得する。
【0102】
そして、同一状況でのエコ運転の成績が良好であれば、丁寧な運転を心がけようとする意識は今回も高く、逆に成績が悪ければ今回もエコ運転に対する意識は低いものとして、丁寧運転意識度を決定する。
【0103】
このようにして、第5実施形態に係るエコ運転支援装置105では、前述した第2実施形態にて示した効果に加え、過去の運転実績を客観的なパラメータと関連付けてルール化し、このルールを適用して現在期待できる運転の丁寧さを推測し、要注意地点の通知レベルを変えることによって、運転者が過去の傾向に従って走行している場合には、客観的なパラメータのチェックだけで要注意地点に関する情報提示の適正化を図ることができる。
【0104】
また、同乗者の有無といった単純な状態だけでなく、具体的に誰と誰が乗っていたときはどのような運転であったかといった多様性を考慮したルールを作成・適用することによって、乗員が運転の丁寧さに及ぼす影響をより正確に捉えて情報提示の適正化を図ることができる。
【0105】
更に、どこに、或いはどういう種類の場所に、いつ頃行ったときはどのような運転であったかといった多様性を考慮したルールを作成・適用することによって、移動目的が運転の丁寧さに及ぼす影響をより正確に捉えて情報提示の適正化を図ることができる。
【0106】
以上、本発明のエコ運転支援装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0107】
例えば、上述した各実施形態では、エネルギーの過剰消費を低減する例として、内燃機関を用いた車両における燃料の消費を低減させる例について説明したが、電力をエネルギーとして走行する車両(例えば、電気自動車)については、電力の過剰消費を低減するための支援を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、過剰に燃料を消費する運転を回避するように運転者に注意喚起することに利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 車両情報取得手段
2 車両位置測位手段
3 演算手段
4 道路データ記憶手段
5 出力手段
6 同乗者識別手段
7 到着時刻分布記憶手段
101,102,103,104,105 エコ運転支援装置
301 エコ運転診断部
302 要注意地点管理部
303 走行経路管理部
304 要注意地点通知部
305 丁寧運転意識度推測部
306 スケジュール管理部
307 意識ルール管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が車両を運転する際の、過剰なエネルギー消費状態を報知してエコ運転を支援するエコ運転支援装置において、
運転者の丁寧運転を心がけようとする意識度である丁寧運転意識度を推測する丁寧運転意識度推測手段と、
車両が、過剰なエネルギーの消費が予測される要注意地点に接近する際に、前記丁寧運転意識度に応じたレベルで、運転者に注意事項を通知する要注意地点通知手段と、
を備えたことを特徴とするエコ運転支援装置。
【請求項2】
前記丁寧運転意識度推測手段は、車両に同乗者が存在する場合に、丁寧運転意識度が高いものと推測することを特徴とする請求項1に記載のエコ運転支援装置。
【請求項3】
前記車両に同乗する子供、妊婦、老人、障害者のうちの少なくとも一人を確認する同乗者識別手段を更に備え、前記丁寧運転意識度推測手段は、前記子供、妊婦、老人、障害者のうちの少なくとも一人が同乗した場合に、丁寧運転意識度が高いものと推測することを特徴とする請求項2に記載のエコ運転支援装置。
【請求項4】
車両が移動する際の性急度を判断する性急度判断手段を更に備え、前記丁寧運転意識度推測手段は、前記性急度に基づいて丁寧運転意識度を推測することを特徴とする請求項1に記載のエコ運転支援装置。
【請求項5】
車両の位置を検出する車両位置測位手段と、車両が向かう目的地を推測する目的地推測手段と、現在の時刻を検出する時計手段と、を更に備え、
前記性急度判断手段は、車両の現在位置と、目的地の位置、及び車両が前記目的地に到着した過去の到着時刻の分布から、前記目的地に到着する時刻の厳格さを推定し、この推定結果に基づいて前記性急度を判断することを特徴とする請求項4に記載のエコ運転支援装置。
【請求項6】
車両の位置を検出する車両位置測位手段と、車両が向かう目的地を推測する目的地推測手段と、現在の時刻を検出する時計手段と、を更に備え、
前記性急度判断手段は、現在時刻から、車両が目的地に到着すると想定される到着時刻までの所要時間を演算し、この所要時間に基づいて性急度を判断することを特徴とする請求項4に記載のエコ運転支援装置。
【請求項7】
車両がエコ運転をしているか否かを診断するエコ運転診断手段と、車両の走行を開始した後の経過時間を計時する計時手段と、を更に備え、
前記丁寧運転意識度推測手段は、走行を開始してから所定時間内、または所定距離内の、車両走行に対するエコ運転診断結果に基づいて、前記丁寧運転意識度を推測することを特徴とする請求項1に記載のエコ運転支援装置。
【請求項8】
車両が過去に走行した際の走行経路及び走行パターンを管理する走行経路管理手段と、車両走行時の意識のルールを管理する意識ルール管理手段と、を更に備え、
前記丁寧運転意識度推測手段は、過去における走行パターンと、そのときのエコ運転診断結果との関係から導かれるルールに基づいて、前記丁寧運転意識度を推測することを特徴とする請求項7に記載のエコ運転支援装置。
【請求項9】
前記過去における走行パターンを、車両の同乗者人数、及び同乗者に子供、老人、妊婦、障害者が含まれているか否かの情報に基づいて設定することを特徴とする請求項8に記載のエコ運転支援装置。
【請求項10】
前記過去における走行パターンを、目的地、該目的地の属性、及び目的地への訪問時刻のうちの少なくとも一つに基づいて設定することを特徴とする請求項8に記載のエコ運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−69020(P2013−69020A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205691(P2011−205691)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】