説明

エゼチミブを含む医薬組成物の調製方法

本発明は、医薬産業の分野に属し、エゼチミブを含有する剤形を調製するための方法であって、この方法が、a)エゼチミブを含む組成物を提供する工程、b)工程(a)の組成物を含む組成物をシーブする工程、c)工程(b)の後に組成物を剪断混合する工程であって、好ましくは組成物の混合が高剪断によって行われる工程、d)剤形に製剤化する工程を含む方法に関する。本発明はまた、エゼチミブ、ならびにエゼチミブおよびシンバスタチンを含有する剤形であって、本発明に記載の方法に従って調製された剤形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬産業分野に属し、エゼチミブを含む剤形を調製するための方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法に従って調製された剤形、ならびに高コレステロール血症の治療のための剤形の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高い血中または血漿コレステロールレベルまたは高コレステロール血症は、西半球の裕福な国々における一般的な疾患パターンの予備段階である。コレステロールは、「動脈硬化」を生じる場合があり、そのため動脈が細くなり、心臓への血流が遅くなり、またはさらにはブロックされて、器官への酸素提供が制限される結果となる。高コレステロール血症は、アテローム性動脈硬化症、心臓発作、および脳卒中と関係しており、米国では主な死亡原因である冠動脈疾患を導き得る幾つかの症状のうちの1つであり、毎年およそ600,000人のヒトが死亡する。リスク群には、体重過多、喫煙者、質の悪い食生活(例えば、飽和脂肪が多い食事)の人々、運動不足およびストレス過多のヒトが含まれる。こうしたリスクを抱えるヒト、ならびに血漿コレステロールレベルが過度に高いと試験され、判明したヒトのために、例えば食生活および食習慣の変更、運動を増やすことなど、様々な治療が提案されている。しかし、こうした治療は実行するのが必ずしも容易ではなく、血漿コレステロールレベルを低下させるのに有効な改善された医療治療が必要とされている。
【0003】
上述したような場合に、エゼチミブは、原発性高コレステロール血症(単独でまたはHMG−CoA還元酵素阻害剤と組み合わせて投与される。)、ホモ接合性家族性高コレステロール血症(アトルバスタチンまたはシンバスタチンと共に投与される。)およびホモ接合性シトステロール血症[Zetia(登録商標)に関するPDR処方情報]に主に適用されるので、エゼチミブが処方され得る。エゼチミブは、Merck/Schering−Plough Pharmaceuticalsが市販するブランド名Zetia(登録商標)として販売されている。Zetia(登録商標)は、10mgのエゼチミブを含有する経口投与用の錠剤として入手可能である。Zetia(登録商標)の非有効成分は、クロスカルメロースナトリウム、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、ポビドン、およびラウリル硫酸ナトリウムであることが報告されている。推奨用量は1日1回10mgであり、Zetia(登録商標)ラベルに従って、食品と共にまたは食品を伴わずに投与される。
【0004】
EP0720599に開示されている白色結晶粉末のエゼチミブは、エタノール、メタノールおよびアセトンに、非常によく溶けることが報告されているが、水には事実上不溶性である。さらに、約163℃の融点を有し、周囲温度にて安定であることが報告されている。コレステロールの吸収および再吸収阻害におけるエゼチミブの作用機構は、コレステロール、および糞便と共に腸管内で生じたこの代謝物の排出を増大させることを含む。この効果は結果として、体内コレステロールレベルを下げ、コレステロール合成を増大させ、トリグリセリド合成を低下させる。増大したコレステロール合成により、初期には循環中のコレステロールレベルを維持するが、コレステロールの吸収および再吸収の阻害が継続している場合は最終的に低下する。薬物作用の全体的な効果では、体の循環および組織におけるコレステロールレベルを低下させる。
【0005】
ヒトの高いコレステロールレベルを治療または予防するために一般に使用される他の化合物は、スタチン類、例えばフルバスタチン、シンバスタチン、およびロバスタチンである。スタチン群のうち、特にシンバスタチンは高いコレステロールレベルによって特徴付けられる症状を治療した場合に良好な結果を示した。この調製方法は、例えばEP0033538、EP0351918、およびEP0299656に開示されている。シンバスタチンは、コレステロールの生合成経路における早期の工程において、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)のメバロナートへの転化を阻害することによってコレステロール低下効果を示す。さらに、シンバスタチンは、非常に低密度のリポタンパク質(VLDL)およびトリグリセリド(TG)の量を低下させ、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)を増大させ、こうしてアテローム性動脈硬化症のような疾患に対抗することができる。シンバスタチンは、世界的に市販されており、商標名ZOCOR(登録商標)として販売されている。ZOCOR(登録商標)錠剤は、シンバスタチン、無水ラクトース、微結晶セルロース(充填剤)、アルファ化トウモロコシデンプン(崩壊剤)、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、クエン酸一水和物およびアスコルビン酸(酸化防止剤)を含有する。
【0006】
薬物治療を改善するために、組み合わせ製品、例えばエゼチミブおよびシンバスタチンの組み合わせが想定された。こうした組み合わせは、例えば米国にて商標名VYTORIN(登録商標)として市販されている。市販されたVYTORIN(登録商標)錠剤は、エゼチミブ、シンバスタチン、ラクトース一水和物、微結晶セルロース(充填剤)、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース(結合剤)、クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、クエン酸一水和物およびプロピルガラート(酸化防止剤)を含有する。差し当たり、それぞれ10mgのエゼチミブと、それぞれ10、20、40および80mgのシンバスタチンとを含む組み合わせが市販されている。こうした組み合わせの薬物投与は、アテローム性動脈硬化症および関連症状の治療および/または予防に有効であることが証明されている。
【0007】
溶解性の乏しい薬物(例えば、エゼチミブ)を含む固体剤形が経口摂取される場合、この薬物は、治療効果を発揮し得る前に、例えば患者の胃において水性の胃腸管液に溶解しなければならない。水溶性に乏しい薬物(例えばエゼチミブ)を含む固体の経口剤形に関して繰り返される問題は、薬物の溶解速度がこの生物学的利用能を制限することである。
【0008】
エゼチミブを含有する製剤を調製するための既知の方法は、ほとんどの場合、エゼチミブ/シンバスタチンの組み合わせを調製するための最適な方法である湿式造粒を使用する。
【0009】
EP1849459には、エゼチミブの溶解性が改善され、生物学的利用能が増大したエゼチミブを含有する組成物、これらの調製方法、およびこれらを用いた治療方法が開示されている。この文献に記載のエゼチミブ組成物は、例えばエゼチミブを少なくとも1つの親水性賦形剤と同時ミル加工することによって調製できる。
【0010】
WO2008/101723には、溶解速度が改善し、アモルファス形態での高い生物学的利用能を示すエゼチミブのような少なくとも1つのコレステロール吸収阻害剤と、少なくとも1つの親水性ポリマーとを含む医薬組成物が開示されている。実施形態の1つでは、アモルファスのコレステロール吸収阻害剤が、噴霧乾燥によって親水性ポリマー中に細かく分散されている。
【0011】
WO2006/134604には、エゼチミブ、HMG−CoA還元酵素阻害剤、崩壊剤および流動促進剤を含有する固体の経口医薬製剤の安定な降圧リポタンパク質の組み合わせが記載されている。製造中、所望の粒径分布を達成するためにミル加工工程が行われる。しかし、こうしたミル加工工程において、多くの場合粒子のアグロメレートが形成される。これは、製剤の特性に負の影響をもたらし得る。
【0012】
WO2007/003365には、シンバスタチンおよび/またはエゼチミブを含有する安定な医薬組成物、およびこれらの調製が記載されている。一部の実施形態には、高剪断ミキサー中で成分の一部を混合して造粒し、続いて得られた顆粒を乾燥し、シーブする工程が開示されている。
【0013】
US7229982B2には、コレステロール吸収阻害剤およびHMG−CoA還元酵素阻害剤、1つ以上の酸化防止剤、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウムおよびラクトースを含む医薬組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0720599号明細書
【特許文献2】欧州特許第0033538号明細書
【特許文献3】欧州特許第0351918号明細書
【特許文献4】欧州特許第0299656号明細書
【特許文献5】欧州特許第1849459号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/101723号
【特許文献7】国際公開第2006/134604号
【特許文献8】国際公開第2007/003365号
【特許文献9】米国特許第7229982号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、エゼチミブを含有する製剤の上述の方法および調製にも拘わらず、特に、優れた有効性を可能にする溶解プロファイルに関して、および改善された加工処理性に関して、エゼチミブを含有する剤形の調製方法を改善することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、次の態様、主題および好ましい実施形態を提供するが、これらはそれぞれ単独でまたは組み合わせて採用され、さらに、本発明の目的を解決するのに寄与する:
(1)エゼチミブを含む剤形を調製するための方法であって、この方法が、
a)エゼチミブ、場合によっては賦形剤、好ましくは親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物を提供する工程、
b)工程(a)によって提供された組成物を含む組成物をシーブする工程、
c)組成物の構成成分のより均質な分配を得るために、工程(b)の後に組成物を剪断混合する工程、
d)剤形に製剤化する工程
を含む方法。
【0017】
(2)項目2に記載の方法であって、工程b)にてシーブされることによって提供される組成物が工程c)に直接使用される、方法。
これは、さらなる化合物がシーブ工程後および剪断混合前に組成物に添加されないことを意味する。換言すれば、工程c)は、化合物の添加、組成物の加熱、組成物または化合物の溶解などのさらなる工程を行うことなく、工程b)から直接続く。
【0018】
(3)工程(c)が好ましくは高剪断混合によって行われる、項目1または2に記載の方法。
好ましくは、シーブ工程後に得られたエゼチミブを含む粒子の剪断混合、好ましくは高剪断混合は、結果として剪断混合に供された前記粒子のd(0.9)粒径を、20%を超えて、さらに好ましくは10%を超えて、よりさらに好ましくは5%を超えて低下させない。
【0019】
(4)方法工程(d)が直接圧縮を含む、項目1から3のいずれかに記載の方法。
【0020】
(5)エゼチミブを含む剤形を調製するための方法であって、この方法が:
a)エゼチミブを含む組成物を提供する工程、
b)工程(a)によって提供される組成物を含む組成物をシーブする工程、
c)工程(b)の後に組成物を直接圧縮する工程
を含む、方法。
【0021】
(6)エゼチミブの粒径の本質的な変化が回避され、好ましくは粒径の低下が回避される、項目1から5のいずれかに記載の方法。
【0022】
(7)ミル加工工程の実施が省かれている、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
(8)工程(a)において剤形中でエゼチミブが結晶形態である、項目1から7のいずれかに記載の方法。
【0024】
(9)工程(a)の組成物が、少なくとも1つの親水性賦形剤をさらに含む、項目1から8のいずれかに記載の方法。
【0025】
(10)エゼチミブ:親水性賦形剤重量比が約1:1から約1:100の範囲、好ましくは約1:5から約1:80の範囲、最も好ましくは約1:10から約1:60の範囲である、項目9に記載の方法。
【0026】
(11)少なくとも1つの親水性賦形剤が、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、多糖類、糖類またはこれらの混合物(例えば、StarLac(登録商標)またはIsoMalt(登録商標))からなる群から選択され、好ましくは親水性賦形剤が、ラクトース、噴霧乾燥ラクトースおよびデンプンからなる群から選択され、特に親水性賦形剤が噴霧乾燥ラクトースである、項目9または10に記載の方法。
【0027】
(12)シンバスタチンが剤形を調製する方法に使用される、項目1から11のいずれかに記載の方法。
【0028】
(13)少なくとも1つのさらなる賦形剤が剤形を調製する方法に使用される、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
(14)少なくとも1つのさらなる賦形剤が、希釈剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、流動促進剤、芳香剤および着色剤からなる群から選択される、項目13に記載の方法。
【0030】
(15)充填剤が、様々な等級のデンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、小麦デンプン、アルファ化デンプン、完全アルファ化デンプン、セルロース、例えば微結晶セルロースまたはケイ化微結晶セルロース、マンニトール、エリスリトール、ラクトース、例えばラクトース一水和物および無水ラクトースまたは噴霧乾燥ラクトース、カルシウム、例えばリン酸水素カルシウム、ソルビトール、およびキシリトールからなる群から選択され、特に好ましくは充填剤が、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、ラクトース一水和物、および噴霧乾燥ラクトースからなる群から選択され;
崩壊剤が、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム塩(セルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩、架橋)、デンプン、例えばグリコール酸ナトリウムデンプンまたはコーンスターチ、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、および低置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択され、特に好ましくは崩壊剤が、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウム塩、およびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択され;
潤滑剤が、ステアリン酸、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され、特に好ましくは潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムであり;
結合剤が、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体とのコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、粉末化アカシア、ゼラチン、グアーガム、カルボマー、例えばカルボポール、ポリメタクリラートおよびデンプンからなる群から選択され、特に好ましくは結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコポビドンから選択され;
希釈剤が、炭水化物、例えばグルコースのような単糖類、スクロースのようなオリゴ糖類、無水ラクトースおよびラクトース一水和物、およびソルビトール、マンニトール、エリトロール、およびキシリトールのような糖アルコールから選択され、特に好ましくは希釈剤はソルビトールである;
流動促進剤が、コロイド状シリカ、疎水性コロイド状シリカおよび三ケイ酸マグネシウム、例えばタルカムからなる群から選択され、特に好ましくは流動促進剤が、コロイド状シリカおよび疎水性コロイド状シリカからなる群から選択され;および/または
甘味剤が、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
【0031】
(16)さらなる賦形剤である微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコロイド状シリカが添加される、項目13から15のいずれかに記載の方法。
【0032】
(17)シンバスタチンおよび/または少なくとも1つのさらなる賦形剤が、工程(c)にて組成物に添加され、次いで場合により剪断混合、好ましくは高剪断混合のさらなる工程が行われる、項目13から16のいずれかに記載の方法。
【0033】
(18)工程(c)が工程(b)から直接続く、項目1から17のいずれかに記載の方法。
【0034】
(19)シーブ工程におけるシーブのサイズが125メッシュの間から4メッシュである、項目1から18のいずれかに記載の方法。
【0035】
(20)剪断混合が、少なくとも100のパドル速度、例えば100から1500、好ましくは300から1200RPM、およびより好ましくは500から1000RPMのパドル速度にて行われる、項目1から19のいずれかに記載の方法。
【0036】
(21)水またはアルコールの添加が回避され、場合により液体物質の添加が回避される、項目1から20のいずれかに記載の方法。
【0037】
(22)項目1から21のいずれかに記載の方法に従って得られる剤形。
【0038】
(23)高コレステロール血症の予防または治療に使用するための、項目22に記載の剤形。
【0039】
(24)a)エゼチミブ、場合により親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)細かい粒子分配を得るために、工程(a)の後に組成物を剪断混合する工程であって、好ましくは組成物の剪断混合が高剪断混合によって行われる工程
を含む、方法に従って得られる、エゼチミブを含む組成物。
【0040】
(25)組成物が、乾燥条件下で得られる、好ましくは方法が水またはアルコールの添加を含まず、好ましくは溶媒が添加されず、場合により液体物質が添加されない、項目24に記載の組成物。
【0041】
(26)高コレステロール血症の予防または治療に使用するための、項目24または25に記載の組成物。
【0042】
(27)a)エゼチミブ、場合によっては親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)細かい粒子分配を得るために、工程(a)の後に組成物を混合する工程であって、好ましくは組成物の混合が剪断混合により行われ、シンバスタチンが工程a)の前または後に、好ましくは工程b)の混合方法中に添加される工程、
を含む方法に従って得られる、エゼチミブおよびシンバスタチンを含む組成物。
【0043】
(28)組成物が乾燥条件下で得られる、好ましくは方法は、水またはアルコールの添加を含まず、好ましくは溶媒が添加されず、および場合により液体物質は添加されない、項目27に記載の組成物。
【0044】
(29)さらなる方法工程c)において、方法工程b)から得られた組成物が剤形に製剤化され、好ましくはさらなる方法工程c)が直接圧縮を含む、項目27または28に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】エゼチミブの溶解に対する異なる技術工程の効果を示す。
【図2】エゼチミブの溶解に対するシーブの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで本発明を、好ましい実施形態および実施例によってより詳細に記載するが、これは例示を目的としてのみ示され、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものとして理解されるべきではない。
【0047】
驚くべきことに、シーブ工程に続いて剪断混合工程を用いる本発明の方法は、混合工程またはシーブ工程をそれぞれ単独で用いることによって、または混合工程の後にシーブ工程を用いることによって調製された製剤と比較した場合に、改善された溶解プロファイルを有する医薬製剤を提供できることを見出した。さらにより驚くべきことに、技術的工程の順序が逆である場合、即ち剪断混合工程の後にシーブ工程が続いた場合、エゼチミブの溶解プロファイルは、シーブ工程の後に剪断混合工程を用いることによって調製された製剤の溶解プロファイルに比べて低い。本発明によれば、「剪断混合」という用語は、組成物の構成成分のより均質な分配を得るために組成物を混合する方法を示し、好ましくは「剪断混合」という用語は、組成物中の構成成分の相対的に細かく、より均質な分配、例えば細かい粒子分配が剪断混合前の状況に比較して到達されるように、2つ以上の構成成分を含む組成物を剪断混合する方法を示す。特に、組成物の一部分が、組成物中に存在する構成成分の一部または全ての過剰量を含有することが回避される。好ましくは、剪断混合が高剪断混合により行われる。
【0048】
本発明の意味範囲内において剪断混合は、既知の方法において行われるような弱い「ブレンド」と区別される。ブレンド方法と剪断混合方法とはそれぞれ異なる装置が使用される。重要なことには、こうした異なる装置は、混合手段の異なる回転度合い(RPM、1分あたりの回転)に関連する。例えばブレンドに関しては、ブレンダー、例えば約30RPMの回転速度にて通常操作されるV−ブレンダーが使用される。これらとは反対に、本発明に従って適用される剪断混合方法は、約100RPM以上の極めて大きい回転速度にて行われる。回転は、好ましくは設備の中の回転素子、通常は1つ以上のパドルまたは同様の手段によって達成される。本発明に使用される剪断混合工程に関して、高剪断ミキサーが好ましい。本明細書に開示されるような他の方法工程と組み合わせる場合に、速いパドル速度を用いるより強い混合が、ブレンドだけまたは穏やかな混合方法によって調製される製剤に比べて、得られた製剤の溶解特性に対して正の影響を与えることを見出した。
【0049】
いずれかの工程(即ち、シーブ工程または完全な混合)を除くと、溶解プロファイルの乏しい錠剤が得られることを見出した。そのため、正しい順序で行われる両方の工程が、所望の溶解プロファイルを達成することに大きく寄与する。いかなる理論によっても束縛されることを望まないが、溶解速度の望ましい増大は、エゼチミブのアグロメレートの低減、エゼチミブと適切にブレンドされた賦形剤、特に親水性賦形剤とのより近い会合によるものであり、これが溶解に利用可能な有効薬物物質の比表面積を増大させると現時点では想定される。さらに驚くべきことに、上述の方法は、エゼチミブの粒径のさらなる低下または追加の低下がなく、例えば粒子の表面積をさらに増大させるための強いミル加工手順がなく行われることができ、このことがまた理論的には溶解速度の増大に寄与し得る。しかし、極度にミクロ化された薬物粉末は、高エネルギーミル加工方法のために非常に粘着性であり、粒子表面において結晶構造の大きな転位が生じる。こうした粒子は、固体状態の加工処理中に凝集する傾向にあり、乏しい溶解性能を導く。故に、適切な粒径を用いて、即ちそうでなければエゼチミブ粒子の凝集の傾向が増大し得る余分または過剰のミル加工を行う必要なく、方法が開始されるとともに、本発明に記載の方法により、優れたエゼチミブ溶解性能を得ることができる。
【0050】
予期できないことに、エゼチミブおよび好ましくはラクトースのような親水性賦形剤を含む組成物のシーブ工程および剪断混合ならびに極度に高い剪断混合は、なおさらに改善された特性を有する製剤を提供するのに好適である。
【0051】
エゼチミブを含有する医薬剤形は、有利なことには、エゼチミブ組成物のシーブ工程を行った後、直接圧縮工程を行うことによって調製できることも見出した。これは、驚くべきことに、エゼチミブの改善された溶解プロファイルを有する錠剤をもたらす。エゼチミブの溶解が治療効果に関して重要な工程であるので、これらの錠剤は、良好な治療効果を有すると考えられる。さらに、直接圧縮工程を適用することにより、水およびアルコールまたは水性溶媒混合物のような有機溶媒の使用を避けることができ、これはエゼチミブおよび/またはシンバスタチンのような溶媒感受性の有効化合物を用いる場合に有益である。さらに、固体剤形の調製において時間消費および経済的要求の高い乾燥工程はもはや必要ではない。直接圧縮が困難な技術であるので、通常最適な方法ではないが、有利なことには、錠剤調製の最も速くおよび最もコスト的に有効な方法であり、シーブ後に行われる場合(好ましい実施形態においては、後続の剪断混合の後)、さらにエゼチミブの良好な溶解プロファイルを提供する。エゼチミブおよびシンバスタチンを含む剤形を調製するために本発明に記載の方法を行うことは、改善された安定性を与え、特に剤形中のシンバスタチンの安定性を改善することも見出した。さらに、可能性としての不純物源またはエゼチミブもしくはシンバスタチンのいずれかまたはこの両方の安定性に影響を及ぼす潜在的な因子としての、いずれかの溶媒、例えば水および/またはアルコールまたはその他の溶媒、場合によりさらにはいずれかの液体を排除できる。
【0052】
本発明は、エゼチミブを含有する組成物を提供する工程(方法の工程(a))を含む剤形を調製するための方法に関する。組成物は、組成物の成分をブレンドすることによって既知の方法に従って調製できる。
【0053】
本発明によれば、工程(a)においておよび剤形においてエゼチミブは、アモルファスまたは結晶性変態であることができる。しかし、工程(a)において結晶形態のエゼチミブを使用するのが好ましい。本発明の1つの実施形態において、方法は、水またはアルコールの使用を含まず、場合により溶媒およびさらには液体物質の使用を防ぎ、そのため使用される結晶性エゼチミブの変態は、方法中では変わらない。そのため、結晶性エゼチミブから出発することができ、この場合最終的な剤形中にも存在する。
【0054】
工程(a)からのエゼチミブを含む組成物を賦形剤、好ましくは少なくとも1つの親水性賦形剤とブレンドすることがさらに好ましい。好ましくは前記親水性賦形剤は、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、多糖類、糖類またはこれらの混合物(例えば、StarLac(登録商標)またはIsoMalt(登録商標))からなる群から選択され、より好ましくは親水性賦形剤は、ラクトース、噴霧乾燥ラクトースおよびデンプンからなる群から選択され、特に親水性賦形剤は噴霧乾燥ラクトースである。本発明の好ましい実施形態において、工程(a)の組成物は、エゼチミブおよび少なくとも1つの親水性賦形剤からなり、さらに好ましくは組成物がエゼチミブおよび1つの親水性賦形剤、好ましくはラクトースからなる。噴霧乾燥されたラクトースの使用は特に好ましい。特に好ましくはエゼチミブおよび少なくとも1つの親水性賦形剤を含む、またはこれらからなる組成物は、本発明に従って、エゼチミブおよび少なくとも1つの親水性賦形剤を乾燥状態で合わせた後、シーブし、剪断混合、好ましくは高剪断混合することにより調製される。特に好ましくは、工程(a)で使用されるエゼチミブは、1から30μmの間、より好ましくは5から30μmの間、さらにより好ましくは8から25μmの間の粒径を有する。さらに好ましくはエゼチミブおよび少なくとも1つの親水性賦形剤、ならびに任意のさらなる成分は、本発明に記載の方法において、シーブ工程および剪断混合工程、好ましくは高剪断混合工程の前に、圧縮されず(例えばローラー圧縮機のような機械を通過させないことを意味する。)、ミル加工されず、または溶解もされない。特に好ましくは、少なくとも1つの親水性賦形剤および/またはさらなる成分は、粒子の形態であり、液体または粘稠な化合物ではない。好ましくはシーブ工程の後に得られたエゼチミブを含む粒子の剪断混合、好ましくは高剪断混合は、剪断混合に供された粒子のd(0.9)粒径を、20%を超えて、さらに好ましくは10%を超えて、なおさらに好ましくは5%を超えて低下させない。
【0055】
好ましくは他の賦形剤は、希釈剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、流動促進剤、香味剤および着色剤からなる群から選択される。これらの賦形剤は、好ましくは工程(b)の後に添加される。
【0056】
本発明によれば、あらゆる充填剤を使用できる。好ましくは充填剤は、様々な等級のデンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、小麦デンプン、アルファ化デンプン、完全アルファ化デンプン、セルロース、例えば微結晶セルロースまたはケイ化微結晶セルロース、マンニトール、エリスリトール、ラクトース、例えばラクトース一水和物およびラクトース無水物または噴霧乾燥ラクトース、カルシウム、例えばリン酸水素カルシウム、ソルビトール、およびキシリトールなる群から選択され、特に好ましくは充填剤は、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロース、ラクトース一水和物、および噴霧乾燥ラクトースなる群から選択される。
【0057】
本発明によれば、あらゆる崩壊剤が使用できる。好ましくは崩壊剤は、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム塩(セルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩、架橋)、デンプン、例えばグリコール酸ナトリウムデンプンまたはコーンデンプン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、および低置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択され、特に好ましくは崩壊剤は、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロースナトリウム塩、およびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される。
【0058】
本発明によれば、あらゆる潤滑剤が使用できる。好ましくは潤滑剤は、ステアリン酸、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され、特に好ましくは、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0059】
本発明によれば、あらゆる結合剤が使用できる。好ましくは、結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体とのコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、粉末アカシア、ゼラチン、グアーガム、カルボマー、例えばカルボポール、ポリメタクリラートおよびデンプンからなる群から選択され、特に好ましくは、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコポビドンからなる群から選択される。
【0060】
本発明によれば、あらゆる希釈剤が使用できる。好ましくは、希釈剤は、炭水化物、例えばグルコースのような単糖類、スクロースのようなオリゴ糖、無水ラクトースおよびラクトース一水和物、およびソルビトール、マンニトール、エリスロール、およびキシリトールのような糖アルコールから選択され、特に好ましくは、希釈剤はソルビトールである。
【0061】
本発明によれば、あらゆる流動促進剤が使用できる。好ましくは、流動促進剤は、コロイド状シリカ、疎水性コロイド状シリカおよび三ケイ酸マグネシウム、例えばタルカムからなる群から選択され、特に好ましくは流動促進剤は、コロイド状シリカおよび疎水性コロイド状シリカからなる群から選択される。
【0062】
本発明によれば、あらゆる甘味剤が使用できる。好ましくは甘味剤は、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリジン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどからなる群から選択される。
【0063】
本発明によれば、当業者に既知のあらゆる香味剤および着色剤が使用できる。
【0064】
好ましくは親水性賦形剤は、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、多糖類、糖類またはこれらの混合物(例えばStarLac(登録商標)またはIsoMalt(登録商標))からなる群から選択され、好ましくは親水性賦形剤が、ラクトース、噴霧乾燥ラクトースおよびデンプンからなる群から選択され、特に親水性賦形剤が噴霧乾燥ラクトースである。
【0065】
工程(a)の組成物のエゼチミブ:親水性賦形剤重量比は、約1:1から約1:100の範囲、好ましくは約1:5から約1:80の範囲、最も好ましくは約1:10から約1:60の範囲であるのがさらに好ましい。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、さらなる医薬的に有効な化合物、好ましくはスタチンおよびより好ましくはシンバスタチンが方法中に添加できる。さらなる医薬的に有効な化合物は、好適には工程(a)の組成物に添加されることができ、好ましくは工程(b)の後、より好ましくは工程(c)の開始時または工程(c)中に添加される。
【0067】
本発明に記載の方法の工程(b)において、工程(a)の組成物を含む組成物は、シーブ工程に供される。本発明の方法全体においてシーブ工程のタイミングが重要である一方で、そういうものとしてシーブ工程は当業者に既知の方法に従って行うことができる。好ましくは、シーブ工程は、シーブのサイズが[125]メッシュから[4]メッシュの間、好ましくは[120]メッシュから[4]の間、より好ましくは[60]メッシュから[10]メッシュの間、最も好ましくは[40]メッシュから[16]メッシュの間であるサイズを有するシーブを用いて行われる。好適な装置は、例えばFrewitt GLA−OV(スイス)である。本発明の好ましい実施形態において、シーブ工程に供される組成物は、工程(a)によって直接得られる組成物である。
【0068】
工程(c)において、組成物は剪断混合工程に供される。本発明に記載の方法に関して、工程c)は好ましくは、化合物の添加、組成物の加熱、組成物または化合物の溶解などのようなさらなる工程を行うことなく、工程(b)の後に直接続く。好ましくは工程(c)は、高剪断混合によって行われる。剪断混合は、組成物の構成成分のより均質な分配を得ることができ、特に細かい粒子分配を提供できる。剪断手順は、例えば少なくとも2分、例えば5から30分行われることができる。好適な装置は、例えばCollette Gral 25 Pro(ドイツ)である。こうしたタイプまたは同様の設備の装置を用いることによって、パドル速度は、約100RPM(1分あたりの回転)から約300RPMの範囲であることができる。しかし、それぞれの適切なパドル速度は、本明細書に開示されるような剪断混合を行うために使用される装置に依存する場合があり、また当業者は、いかなるパドル速度がどの装置に好適であるかが分かる。故に、回転速度のより速い混合手段は、本発明の方法における混合工程の十分な範囲内である。方法全体においては混合工程のタイミングが重要であり、これが認められるので、混合は、好ましくは100から1500RPM、好ましくは300から1200RPM、およびより好ましくは500から1000RPMのパドルのような混合素子の回転速度にて行われる。さらに、「剪断」混合は、特定のパドル速度、即ち単純なブレンドが行われる際の速度に比べて速いパドル速度によって到達されるだけでなく、剪断の発生も、使用される装置および/またはパドルの機械的特性、例えばパドルの幾何学形状によって到達できる。剪断応力に注意を払う際、当業者は、回転速度、またはさらには上記した速度よりも低いパドル回転速度、例えば100RPM未満の速度とは別に、剪断混合を得るために好適な装置手段を配置できる。
【0069】
本発明に記載の方法の記載された工程に関して、出発物質として使用されるエゼチミブの所定の適切な粒径を本質的に変化させるのを回避でき、好ましくは粒径の本質的な(さらなる)低下を避けることができる。本発明の意味の範囲内において粒径の本質的変化は、約20%から約99%の範囲、好ましくは約30%から約99%の範囲、より好ましくは約40%から約99%、および最も好ましくは約50%から約99%の範囲の変更を示す。これとは反対に、所定の出発物質のエゼチミブのさらなるミル加工および同時ミル加工手順は、粒径の大きな低下(例えば、エゼチミブに関して先行して既にミル加工されたエゼチミブ粒径の少なくともさらに50%の低下)を導き得る。上述したように、こうした粒径の低下は、医薬剤形の特性に影響を与える場合があるので、好ましくは回避される。そのため所与の出発物質エゼチミブが好適な粒径に先行してミル加工されている場合は、さらなるエゼチミブ粒径の低下をもたらす(さらなる)ミル加工工程の実施は、好ましくは省略される。本発明の教示を適用することによって、最終医薬組成物からのエゼチミブの優れた溶解プロファイルは、追加のミル加工工程を行う必要なく達成できる。
【0070】
予期できないことに、エゼチミブの粒径を本質的にさらに低下させることなく、シーブおよび剪断混合工程を使用することにより、改善された特性、特に改善された溶解速度を有する剤形を与えることを見出した。好ましくは、20%を超えるエゼチミブの粒径低下が回避される。
【0071】
好ましくは、工程(c)において得られた組成物中に含有されるエゼチミブの粒径d(0.9)は、1から30μmの間、より好ましくは5から30μmの間、さらにより好ましくは8から25μmの間である。エゼチミブの粒径をさらに低下させることは、粒子凝集の危険を増大させて劣化し、ひいては溶解プロファイルを悪化させるものであり、避けることができる。故に、本発明に記載の方法において行われる工程と組み合わせて、上述のサイズ範囲は、低下した凝集の傾向と水中へのエゼチミブの優れた溶解との優れたバランスを達成することができる。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態において、シンバスタチンおよび/または少なくとも1つのさらなる賦形剤は、混合工程(c)から得られる組成物に添加される。この場合、得られた組成物は、工程(c)に関して上述されたさらなる剪断混合工程に再び供されるのがさらに好ましい。この点に関して、さらなる賦形剤は、上述のような化合物の群から選択できる。好ましくは、さらなる賦形剤は、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコロイド状シリカから選択される。本発明の好ましい実施形態において、上述のさらなる賦形剤の全てが共に使用される。
【0073】
本発明によれば、上述の方法工程から得られる組成物は、剤形に製剤化される(工程(d))。本発明の製剤は、周知の技術方法によって調製でき、好ましくは方法は、直接圧縮工程、乾燥造粒および/または凍結乾燥を含む。好ましくは、工程(d)は、直接圧縮を含む。他の方法技術に対して直接圧縮は、水またはアルコールの必要性を排除するという利点を有し、これは場合によっては、他の溶媒またはさらにはいかなる液体物質もさらに回避し、故に溶媒感受性の薬物の製剤化が可能になる。さらに、直接圧縮は最も速く、最もコスト的に有効な錠剤調製方法である。直接圧縮を行うために、当業者は、好適な装置を選択できる。この点において、適用される力は、錠剤のサイズに依存することが当業者には分かる。好適な力は、例えば約5から約30kNの範囲、好ましくは約10から約20kNの範囲、より好ましくは約10から約15kNの範囲であることができる。例えば、錠剤が約800mgの総質量を示し、例えば約10mgのエゼチミブおよび約80mgのシンバスタチンを含む場合、最適な力は、約10から約15kNの範囲、好ましくは、力は約12kNである。
【0074】
本発明に記載の剤形は、好ましくは錠剤、カプセル(軟質または硬質カプセル)、カプレット、口内錠、およびサッシェを含む固体形態である。本発明に記載の剤形は、錠剤の形態であるのが好ましい。さらに、剤形は、コーティングを含むことができる。好適なコーティングは当該技術分野において既知であり、例えばフィルムコーティングは、周囲のガスがコアに侵入するのを防止する。さらに、剤形は、多層、二層または単層錠剤であることができる。
【0075】
好ましくは、剤形は、1mg、2mg、5mg、7mg、10mg、12mg、15mgまたは20mg、より好ましくは5mg、7mg、10mgまたは12mg、さらにより好ましくは7mgまたは10mg、および最も好ましくは10mgの用量において、エゼチミブを含有する。
【0076】
シンバスタチンがさらに、本発明に記載の剤形を調製するために使用される場合、好ましくは、シンバスタチンは、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは160mg、およびより好ましくは10mg、20mg、40mgまたは80mgの用量で使用される。
【0077】
本発明に記載の方法の実施形態の1つでは、場合により、水またはアルコール、または場合によりさらなる溶媒または液体物質は全く使用されない。本発明に関して、本明細書に使用されるような「溶媒」という表現は、エゼチミブを溶解できるあらゆる液体を指す。例えば、エゼチミブは、メタノール、エタノール、またはアセトンのような有機溶媒中に可溶性であり、水にはあまり溶けない。
【0078】
本発明はさらに、エゼチミブを含む剤形を調製するための方法に関し、この方法は、
a)エゼチミブ、場合により賦形剤、好ましくは親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物を提供する工程、
b)工程(a)によって提供された組成物を含む組成物をシーブする工程、
c)工程(b)の後の組成物の直接圧縮工程を含む。
【0079】
本発明のこの実施形態に関して、組成物を提供する工程、組成物をシーブする工程および組成物の直接圧縮工程の方法工程は、上述したように行うことができる。さらに好ましくは、上述のような剪断混合工程が、シーブ工程(b)の後および直接圧縮工程(c)の前に適用できる。
【0080】
本発明のこの実施形態において、好ましくは水またはアルコール、さらに好ましくは溶媒およびよりさらに好ましくは液体物質を使用しない。これとは反対に、エゼチミブを含有する製剤を調製する既知の方法は、大抵の場合、既知の特許および科学文献においてエゼチミブ/シンバスタチンの組み合わせの調製のために最適な方法である湿式造粒を使用する。この方法は、顆粒を調製するために使用され、粉末よりも圧縮するのにより好適であり、方法に使用される酸化防止剤の均一な分配を提供すると考えられていた。酸化防止剤が方法に使用されない場合でも、湿式造粒が最適な方法として想定されていた。湿式造粒が、粉末より圧縮により好適である顆粒を提供する一方で、この方法は、最終的な剤形の調製において幾つかの追加の工程を必要とする。まず、粉末物は、顆粒を調製するために湿潤されなければならず、この工程は薬物物質を水および/または有機溶媒に曝すことになる。第2に、調製された顆粒は乾燥されなければならず、これは、相当量の時間を必要とし、極めてエネルギー消費型の方法である。故に両方の工程は、方法の経済的効能を大きく低下させ、安定性(水の存在、温度上昇)、安全性(有機溶媒を用いる場合の暴露危険性)、および残留溶媒(有機溶媒の場合)に関するさらなる問題をもたらす。
【0081】
提案された解決策は、時間およびコストに有効な直接圧縮によって調製される製剤を提供し、そうでなければ直接圧縮を用いては容易に得ることができない最終的な剤形の好適な溶解特性を確実にする。
【0082】
さらに、本発明は、上述の本発明の方法に従って得られた剤形に関する。
【0083】
本発明に記載の剤形は、高コレステロール血症の予防または治療に使用できる。
【0084】
さらに、本発明は:
a)エゼチミブ、場合により親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)工程(a)の後の組成物を剪断混合して、細かい粒子分配を提供する、好ましくは組成物の剪断混合を高剪断混合によって行う工程
を含む方法に従って得られるエゼチミブを含む組成物に関する。
【0085】
組成物をシーブし、剪断混合する方法工程は、上述のように行うことができる。実施形態の1つでは、組成物は、乾燥条件下で得られ、好ましくは、方法は、水またはアルコールの添加を含まず、好ましくは溶媒は添加されず、場合によっては液体物質は添加されない。好ましくは、方法は、直接圧縮によって剤形を製剤化することを含む。
【0086】
本発明に記載のエゼチミブを含む組成物は、高コレステロール血症の予防または治療に使用できる。
【0087】
本発明はさらに:
a)エゼチミブ、場合により親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)工程(a)の後の組成物を混合して、細かい粒子分配を提供する、好ましくは組成物の混合を剪断混合によって行う工程
を含む方法に従って得られる、エゼチミブおよびシンバスタチンを含む組成物に関し、ここでシンバスタチンは、工程a)の前または工程a)の後に、好ましくは工程b)中に添加できる。かさねて、組成物をシーブおよび混合する方法工程は上述したように行うことができる。場合によりブレンドのために使用されることができる親水性賦形剤に関して、上記の説明を参照されたい。エゼチミブとシンバスタチンとの有益な共同作用の観点において、エゼチミブは良好な溶解プロファイル、特に迅速な溶解速度を示すことに関連する。これは、本発明に記載の組み合わせ組成物によって提供できる。
【0088】
さらに、好ましい実施形態において、エゼチミブおよびシンバスタチンを含有する組成物は、方法に従って調製され、この方法は水またはアルコールの添加を含まず、好ましくは溶媒を添加せず、さらにより好ましくは液体物質を添加しない。これは、シンバスタチンが、調製方法中に水または溶媒が使用される場合に安定性が低下する水および溶媒感受性の薬物であることが知られているので、特に有利である。
【0089】
さらなる好ましい実施形態において、エゼチミブおよびシンバスタチンを含有する組成物は、好ましくは混合工程が行われた後に上述の剤形に製剤化される。好ましくは、製剤化は、錠剤調製の最も速く、最もコスト的に有効な方法である直接圧縮を含む。さらに、直接圧縮を用いることによって、水または溶媒の使用を避けることができ、他の製剤方法に比べてシンバスタチンの改善された安定性をもたらす。
【0090】
次の実施例は、本発明の方法を示し、添付された特許請求の範囲に示される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0091】
本発明に従って調製されたブレンドと、既知の方法に従って調製されたブレンドとの比較
80gのエゼチミブおよび320gの噴霧乾燥ラクトースからなるサンプルを、円錐ブレンダーにて5分間ブレンドし、得られたブレンド(ブレンド1)をエゼチミブの溶解プロファイルの観点にて分析した。
【0092】
ブレンド(ブレンド1、比較例)をさらに、シーブを通してさらに3回シーブし、得られたブレンド(ブレンド2、比較例)をエゼチミブの溶解プロファイルの観点から分析した。
【0093】
残存ブレンド(ブレンド2)はさらに、高剪断ミキサーにおいて5分間混合し、得られたブレンド(ブレンド3、本発明に記載)を、エゼチミブの溶解プロファイルの観点にて分析した。
【0094】
全てのブレンドサンプルは、0.01MのHClおよび0.25%ラウリル硫酸ナトリウム中のUSP装置2(パドル)にて分析し、これを図1に示す。
【0095】
エゼチミブの粒径は、Malvern Mastersizerによって決定され、表1に示す。ブレンド中のラクトースは、溶解していたので、サイズ測定を妨害しなかった。
【0096】
高剪断ミキサーにおけるブレンド2の混合の後、良好な粒子分配を達成できた。エゼチミブ粒子のサイズは本質的に変化しなかった。
【0097】
【表1】

【0098】
本発明に従って調製された錠剤と、既知の方法に従って調製された錠剤との比較
錠剤の組成を以下の表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
製造手順1(比較例):
エゼチミブを噴霧乾燥ラクトースとブレンドし、高剪断ミキサー中で混合した。シンバスタチン、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコロイド状シリカを、高剪断ミキサーに添加し、混合物を再び混合した。得られた混合物を、シーブを通してシーブし、ステアリン酸マグネシウムとブレンドし、錠剤に圧縮した(錠剤1)。
【0101】
製造手順2(本発明に記載の実施例):
エゼチミブは、噴霧乾燥ラクトースとブレンドし、シーブを通してシーブした。シーブされた混合物を高剪断ミキサー中で混合した。シンバスタチン、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびコロイド状シリカを高剪断ミキサーに添加し、混合物を再び混合した。得られた混合物を、シーブを通しシーブし、ステアリン酸マグネシウムとブレンドし、錠剤に圧縮した(錠剤2)。
【0102】
錠剤を分析し、全ての錠剤サンプルを0.01MのHClおよび0.25%ラウリル硫酸ナトリウム中にてUSP装置2(パドル)にて分析し、図2に示す。図2は、本発明に従って調製された錠剤の改善された溶解特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゼチミブを含む剤形を調製するための方法であって、この方法が、
a)エゼチミブを含む組成物を提供する工程、
b)工程(a)によって提供される組成物を含む組成物をシーブする工程、
c)工程(b)の後に組成物を剪断混合する工程、
d)剤形に製剤化する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(c)が高剪断混合によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法工程d)が直接圧縮を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の組成物がさらに、少なくとも1つの親水性賦形剤を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
エゼチミブ:親水性賦形剤重量比が、約1:1から約1:100の範囲、好ましくは約1:5から約1:80の範囲、最も好ましくは約1:10から約1:60の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの親水性賦形剤が、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、多糖類、糖類またはこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは該親水性賦形剤が、ラクトース、噴霧乾燥ラクトースおよびデンプンからなる群から選択され、特に該親水性賦形剤が噴霧乾燥ラクトースである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
シンバスタチンおよび/または少なくとも1つのさらなる賦形剤が、剤形を調製するために使用される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
シンバスタチンおよび/または少なくとも1つのさらなる賦形剤が、工程(c)にて組成物に添加され、次いで場合により高剪断混合のさらなる工程が行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シーブのサイズが125メッシュから4メッシュの間である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
剪断混合が、少なくとも100のパドル速度にて、例えば100から1500のパドル速度にて、好ましくは300から1200RPM、およびより好ましくは500から1000RPMのパドル速度にて行われる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の方法に従って得られた剤形。
【請求項12】
a)エゼチミブ、場合により親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)工程(a)の後に組成物を剪断混合する工程であって、好ましくは組成物の混合が高剪断混合によって行われる工程
を含む方法に従って得られる、エゼチミブを含む組成物。
【請求項13】
組成物が乾燥条件下で得られ、好ましくは方法が水またはアルコールの添加を含まず、好ましくは、溶媒は添加されず、場合により液体物質が添加されない、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
高コレステロール血症の予防または治療に使用するための、請求項11に記載の剤形または請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
a)エゼチミブ、場合により親水性賦形剤とブレンドされたエゼチミブを含む組成物をシーブする工程、
b)工程(a)の後に組成物を混合する工程であって、好ましくは組成物の混合が剪断混合によって行われる工程
を含む方法に従って得られる、エゼチミブおよびシンバスタチンを含む組成物であって、シンバスタチンが工程a)の前または工程a)の後に添加され、好ましくは工程b)中に添加される組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−516876(P2012−516876A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548690(P2011−548690)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051401
【国際公開番号】WO2010/089361
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】