説明

エチレン−酢酸ビニル共重合体の剥離剤

【課題】エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離し、分別回収した部品、ガラス、金属部材等を再利用するために使用する剥離剤の提供。
【解決手段】(A)アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤を20〜85重量%、(B)アニオン界面活性剤を5〜50重量%、及び残部(C)水を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するのに使用する剥離剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を剥離するための剥離剤に関し、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するために使用する剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、光透過性、耐候性、耐湿性、接着性がよく、かつ引裂強度、衝撃強度、ストレスクラッキング性等の機械的特性、電気絶縁性、耐電圧性等の電気的特性が良いので各種用途に用いられている。特に、太陽電池モジュールを構成する表面ガラス基板、太陽電池セル、裏面材(バックシート)等を強固に固定する封止材、電線・ケーブルの被覆材料、ガラスや金属のコーティング用材料等に使用されている。
【0003】
上記太陽電池モジュール用封止剤、電線・ケーブルの被覆材料等は、太陽光を常時浴びる過酷な環境での使用による経年劣化、光透過度の低下、機械的特性の劣化等による製品の耐用年数が一般的に20〜30年と言われ、その後は廃棄されている。しかし、構成部材によっては、表面ガラス基板、太陽電池セル、裏面材のアルミニウム材料、銅やアルミニウムの金属導体等は十分使用可能であり、分別回収して再利用することが資源の有効利用からも求められている。また太陽電池モジュール、電線・ケーブル、コーティング部材の製造過程における規格はずれ対策として、分別回収して再利用することも必要になっている。
【0004】
太陽電池モジュールを構成する表面ガラス基板、太陽電池セル、裏面材(バックシート)を太陽電池モジュールから分離回収したり、電線・ケーブル、ガラスや金属のコーティング部材からガラスや金属を回収するのに、これらに強固に固定されているエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止材、被覆材等を分離除去する必要がある。しかし、ガラスや金属に強固に接着しているエチレン−酢酸ビニル共重合体を分離除去するのは容易ではなく、特に、太陽電池モジュール用封止材の多くは架橋されたエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、分離除去するのは特に困難である。そこで、従来から様々な検討がなされている。
【0005】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を分離除去するのに、現在までに次の処理方法が主に検討されている。即ち(i)大気雰囲気、又は不活性雰囲気中でエチレン−酢酸ビニル共重合体を焼成して除去する方法であり、この応用として、太陽電池モジュールを酸溶液、アルカリ溶液または有機溶剤溶液に浸漬させた後、エチレン−酢酸ビニル共重合体を燃焼させて除去することが提案されている(特許文献1)。しかし、酸、アルカリ溶液はいずれも強酸、強アルカリ溶液である必要があり、有機溶剤も、使用環境条件、廃液処理等の対策が必要であり、設備や燃焼させるのにエネルギーコストを非常に要するものである。
【0006】
(ii)窒素雰囲気等の不活性雰囲気中で温度を上げてエチレン−酢酸ビニル共重合体を熱分解除去する熱分解除去法がある。しかし、熱分解除去法は、不活性雰囲気中で500〜600度程度の高温で処理する必要があり、設備やエネルギーコストを非常に要するものである。更に、上記焼成や熱分解による方法は、有機物が高温により煤状物やコークス状物の炭素質が回収物に付着したりする問題もある。
【0007】
(iii)硝酸に浸漬してエチレン−酢酸ビニル共重合体を分解除去する方法として硝酸浸漬法があり、液温を50℃以上に保った硝酸に浸漬することが提案されている(特許文献2)。しかし、強酸である硝酸を用いるので太陽電池セルの電極や金属等が侵されてしまい、更に使用環境が悪く、排液処理等の対策が必要であるという問題がある。
【0008】
(iv)有機溶剤を用いてエチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、ないし流動化させて除去する方法として、例えば(d)−リモネン含有溶液と接触させる方法(特許文献3)、アルカリを溶解させた有機溶剤と接触させる方法(特許文献4)等が提案されている。しかし、特許文献3の(d)−リモネン含有溶液を用いる方法では、リモネンの化学構造中に炭素−炭素不飽和結合を有するため、長時間の使用では安定性に問題があり、かつ天然物由来であって供給量が安定せず、かつ高価な溶媒である。特許文献4のアルカリを溶解させた有機溶剤を用いる方法では、アルカリを用いているので作業環境の悪化、廃液処理等の問題がある。更に、現在のところ有機溶剤法はエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解できるものはなく、太陽電池セルの変形やわれを起したりして回収歩留まりが悪いという問題がある。
【0009】
(v)アルカリ溶液を用いてエチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、ないし流動化させて除去する方法として、例えばpH10以上のアルカリ水溶液で処理することにより分離回収する方法が提案されている(特許文献5)。しかし、強アルカリを用いるので作業環境の悪化、廃液処理等の問題がある。
【0010】
上記従来の処理方法は、いずれも、分別回収した部材、ガラス、金属部材自体の品質に影響してしまい再利用の効率が悪く、又処理設備に費用がかかったり、使用環境上問題があったり、処理後の廃液処理にも問題が生じ、環境負荷が大きく、エネルギー効率の悪いものであった。
【特許文献1】特開2005−311178号公報
【特許文献2】特開2004−42033号公報
【特許文献3】国際公開第2005−065852号パンフレット
【特許文献4】特開2009−214058号公報
【特許文献5】特開2008−307491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離し、分別回収した部品、ガラス、金属部材等への品質に影響がなく、処理設備、使用環境上問題がなく安全で、処理後の廃液処理の問題もなく、環境負荷が小さく、エネルギー効率がよく、簡単にエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離し、分別回収するために使用する剥離剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品から部品、ガラス、金属部材等を分別回収するのに、強固に接着しているエチレン−酢酸ビニル共重合体を分離除去するための剥離剤として、アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤を20〜85重量%、アニオン界面活性剤を5〜50重量%、及び残部として水を含む剥離剤を見出し本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、次に関するものである。
[1](A)アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤を20〜85重量%、(B)アニオン界面活性剤を5〜50重量%、及び残部(C)水を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するのに使用する剥離剤。
[2]前記アルコール系溶剤がベンジルアルコール、フェノキシエタノールのうち少なくとも1つであり、前記グリコール系溶剤がベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコールのうち少なくとも1つである上記[1]記載の剥離剤。
[3]前記アニオン界面活性剤がキシレンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、クメンスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩、又はカリウム塩のうち少なくとも1つである上記[1]または[2]に記載の剥離剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の剥離剤によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離し、分別回収した部品、ガラス、金属部材等への品質に影響が少なく、大型な処理設備を必要とせず、使用環境上安全で、処理後の廃液処理の問題もなく、環境負荷が小さく、エネルギー効率がよく、容易にエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離し、分別回収するエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するのに使用する剥離剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明の剥離剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品から基材を分別回収するために使用するものであり、一体化した製品のうち基材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用い基材とが一体化された製品であればいかなるものでもよい。特に、分別回収し、再利用する必要がある基材であるならばいかなるものでもよい。基材を例示すると、ガラス、金属、セラミックス、合成樹脂などがあり、これら基材と他の部材からなる部品であってもよい。
【0016】
本発明の剥離剤に配合される(A)成分としてのアルコール系溶剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、又は流動化させる作用をなすものである。アルコール系溶剤は、1価のアルコール系溶剤であり、脂肪族アルコール、芳香族アルコールのなかから選択される。脂肪族アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が例示でき、芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、4-メチルベンジルアルコール、2-エチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール等が例示できる。なかでも芳香族アルコールとしてのベンジルアルコール、4-メチルベンジルアルコール、2-エチルベンジルアルコール、フェノキシエタノールから選択されることが好ましい。特に好ましいのは、ベンジルアルコール、フェノキシエタノールである。これらのうち少なくとも一つを含むものであるが2種以上併用してもかまわない。
【0017】
本発明の剥離剤に配合される(A)成分としてのグリコール系溶剤は、アルコール系溶剤と同様にエチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、又は流動化させる作用をなすものである。グリコール系溶剤は、脂肪族グリコール、芳香族グリコールのなかから選択される。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール等が例示でき、芳香族グリコールとしては、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコール等が例示できる。なかでも芳香族グリコールから選択されることが好ましい。特に好ましいのは、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコールである。これらのうち少なくとも一つを含むものであるが2種以上併用してもかまわない。
【0018】
本発明における(A)成分としてのアルコール系溶剤又は/およびグリコール系溶剤は、剥離剤全体の20〜85重量%である。好ましくは、40〜50重量%である。20重量%未満では、エチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、又は流動化させる作用性能が低く、剥離効果に影響する。一方85重量%を超えるとエチレン−酢酸ビニル共重合体を膨潤、軟化、又は流動化させる作用性能は飽和してしまい、また引火性が増大し、剥離効果に問題が生じてしまう。(A)成分としてのアルコール系溶剤又は/およびグリコール系溶剤は、アルコール系溶剤又はグリコール系溶剤のなかから2種以上併用してもかまわない。
【0019】
本発明の剥離剤に配合される(B)成分としてのアニオン界面活性剤は、(A)成分としてのアルコール系溶剤又は/およびグリコール系溶剤をエチレン−酢酸ビニル共重合体へ浸透するための成分である。アニオン界面活性剤は、界面の自由エネルギーを低下させエチレン−酢酸ビニル共重合体への浸透・湿潤力を増し剥離性能を向上させる作用をなす。アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、αスルホ脂肪酸メチルエステル塩等のスルホン酸型、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル型、(モノ)アルキルリン酸エステル塩のリン酸エステル型等が例示できる。好ましくは、 キシレンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、クメンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩の中から選択できる。これらのうち少なくとも一つを含むものであるが2種以上併用してもかまわない。
【0020】
本発明の(B)成分としてのアニオン界面活性剤は、剥離剤全体の5〜50重量%である。好ましくは、15〜35重量%である。5重量%未満では、エチレン−酢酸ビニル共重合体への(A)成分の浸透・湿潤力を増し剥離性能を向上させる作用性能が低く、剥離効果に影響する。一方50重量%を超えるとエチレン−酢酸ビニル共重合体への(A)成分の浸透・湿潤力を増し剥離性能を向上させる作用性能は飽和してしまい、これ以上用いても、剥離効果は向上しない。
【0021】
本発明の剥離剤における(C)成分としての水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水等いずれでもかまわない。本発明の水は、上記アニオン界面活性剤成分を溶解するためのものであり、(A)成分としてのアルコール系溶剤又は/およびグリコール系溶剤と(B)成分としてのアニオン界面活性剤を加えた残りの残部量配合する。剥離剤として必須であり、上限は(A)成分と(B)成分の配合割合に応じて自ずから決まる。(C)成分としての水を配合しないとアニオン界面活性剤成分を溶解することができない。本発明の剥離剤は、水を必須成分としているから準水系剥離剤ともいえる。
【0022】
更に、本発明における剥離剤には必要に応じて適宜、従来の剥離剤に配合されている各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、増粘剤、顔料などの着色剤、香料などを添加してもよい。
【0023】
本発明の剥離剤のpHは5〜9である。好ましくは、中性域である6.5〜8.5である。(B)成分であるアニオン界面活性剤などの添加や大気中の二酸化炭素の吸収によって経時的に低下することがあるがpH5〜9ならば十分使用できる。
【0024】
本発明の剥離剤は、上記した各成分を配合したものであるが、使用する各成分が比較的揮発性が低いため、組成変動が少なく、長期間安定して良好な剥離効果を発揮できる。また各成分は人体への影響の大きい成分を含まないので、作業操作上安全で、かつ剥離剤が水性液であるので長期間の使用後に水を補給することで容易に剥離液再生ができ、その上剥離処理後の液管理も容易である。
【0025】
本発明の剥離方法は、被剥離物に本発明の剥離剤を接触させることができるならばいかなる方法でもよい。浸漬、塗布、スプレー、シャワーなどの方法によって、大気中で常温ないし加熱下で接触させればよいが、剥離剤を加熱下で使用する方が剥離をより促進することができる。特に本発明の剥離剤を高温に加温した剥離剤槽に被剥離物を浸漬あるいは揺動浸漬して剥離する方法が最も好ましい。また剥離剤槽中で超音波振動を併用することもできる。これにより、高温液中においてエチレン−酢酸ビニル共重合体の剥離が容易にできる。
【0026】
本発明の剥離方法においては、剥離剤の温度を水が蒸発しない条件で、即ち常温〜90℃で用いることができる。好ましくは30〜90℃、特に好ましくは50〜85℃に加温した剥離剤槽に、被剥離物を入れて剥離処理することがよい。処理時間としては24〜300時間浸漬あるいは揺動浸漬し、その後通常の洗浄・乾燥で剥離剤を除去すればよい。例えば水、アセトン、イソプロピルアルコールなどを用いて洗浄したのち、室温で乾燥して剥離剤を除去すればよい。
【0027】
本発明の剥離剤を使用し得る対象としての被剥離物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とからなる製品、物品であるならば如何なるものでもよい。特に、製品としては太陽電池モジュール、被覆電線・ケーブルを例示できる。なかでも太陽電池モジュールを構成する表面ガラス基板、太陽電池セル、裏面材(バックシート)等を強固に固定するエチレン−酢酸ビニル共重合体の封止材、電線・ケーブル、ガラスや金属基材にエチレン−酢酸ビニル共重合体を被覆したコーティング物品のエチレン−酢酸ビニル共重合体の剥離に使用される。
【実施例】
【0028】
以下には、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
【0029】
<剥離対象物>ガラス基板としてのスライドガラス(76mm×26mm×1mm)2枚の間にバックシートを配置し、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA:Hangzhou First PV Material Co. Ltd製)を用いて、150℃、10分の条件で貼り合わせ、室温で2時間放置後、物品の厚さを約3.0mmとして試料を作成した。
【0030】
<剥離方法>下記各種剥離剤を液温60〜85℃に加温した剥離剤槽に試料を浸漬して300時間を限度に剥離処理した。
【0031】
<評価手段、方法>剥離処理はガラス基板が剥離するまでの時間、ガラス基板の剥離状態を調べた。剥離時間は、目視によりガラス基板が完全に剥離するまでの時間で評価した。剥離状態はエチレン−酢酸ビニル共重合体の剥離状態を目視により次のとおりに評価した。
完全剥離:ガラス基板にエチレン−酢酸ビニル共重合体が全く見えない状態、
剥離:ガラス基板にエチレン−酢酸ビニル共重合体が一部かわずか残る状態、
剥離せず:ガラス基板にエチレン−酢酸ビニル共重合体がほとんど残っている状態。
【0032】
[実施例1〜6]
(A)成分のアルコール系溶剤として、ベンジルアルコール(TESSENDERLO CHMIE NV/SA製)40〜85重量%、(B)成分のアニオン界面活性剤として、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、有効成分100%(三菱ガス化学株式会社製、商品名「SXS−Y」)5〜35重量%、残り(C)水とした剥離剤を、60℃に加温し、試料を浸漬させ剥離処理した。剥離液の組成に応じて実施例1〜実施例6とした。剥離剤組成、及び剥離時間、剥離状態は、表1に示す。
【0033】
【表1】

(A)成分:ベンジルアルコール(TESSENDERLO CHMIE NV/SA製)
(B)成分:アニオンイオン界面活性剤:メタキシレンスルホン酸ナトリウム
(三菱ガス化学株式会社製、商品名「SXS−Y」)
【0034】
実施例1〜4は、剥離時間も短く、かつ剥離状態も完全剥離の状態で、エチレン−酢酸ビニル共重合体は効率良く剥離することができた。実施例5〜6は、300時間の剥離時間で剥離の状態であった。この剥離の状態は、ガラス基板にエチレン−酢酸ビニル共重合体が一部わずかに残る状態であるが、後工程として脱イオン水によるシャワーリンスにより完全剥離の状態にできるものであり、剥離剤としては有用なものであった。
【0035】
[実施例7〜8、比較例1〜3]
(A)成分のアルコール系溶剤として、ベンジルアルコール(TESSENDERLO CHMIE NV/SA製)20〜30重量%、(B)成分のアニオン界面活性剤として、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、有効成分100%(三菱ガス化学株式会社製、商品名「SXS−Y」)25〜30重量%、残り(C)水とした剥離剤を、60℃に加温し、試料を浸漬させ剥離処理した。剥離液の組成に応じて実施例7〜8とした。比較例1は、(B)成分のアニオン界面活性剤、(C)成分の水を配合していない剥離剤、即ち(A)成分のみからなる剥離剤、比較例2は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを含むpH13以上のアルカリ系剥離剤を用い、比較例3は、硝酸溶液濃度10%による剥離剤である。剥離剤組成、及び剥離時間、剥離結果は、表2に示す。
【0036】
【表2】

(A)成分:ベンジルアルコール(TESSENDERLO CHMIE NV/SA製)
(B)成分:アニオンイオン界面活性剤:メタキシレンスルホン酸ナトリウム
(三菱ガス化学株式会社製、商品名「SXS−Y」)
【0037】
実施例7〜8は、300時間の剥離時間で剥離の状態であった。この剥離の状態は、ガラス基板にエチレン−酢酸ビニル共重合体が一部見える状態であるが、後工程として脱イオン水によるシャワーリンスにより完全剥離の状態にできるものであり、剥離剤としては有用なものであった。
【0038】
比較例1は、(A)成分のベンジルアルコールであり、比較例2は、アルカリ系剥離剤で比較例3は、硝酸溶液を用いたもので、いずれも300時間の剥離時間で剥離せずの状態であった。後工程としての脱イオン水によるシャワーリンスを加えても、完全剥離、剥離の状態にできないものであった。これらは従来の剥離処理に用いていたものであり、剥離時間も更に長時間必要なものであり、設備、処理環境、廃液処理上も問題になるものであった。
【0039】
[実施例9]
(A)成分のアルコール系溶剤として、ベンジルジグリコール(青木油脂工業製、商品名SBA−102K)40重量%、(B)成分のアニオン界面活性剤として、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、有効成分100%(三菱ガス化学株式会社製、商品名「SXS−Y」)35重量%、残り(C)水とした剥離剤を、60℃に加温し、試料を浸漬させ剥離処理した。その結果、116時間で剥離でき、かつ剥離状態も完全剥離の状態であった。
【0040】
[実施例10]
実施例1において、剥離剤を70℃に加温した以外は、実施例1と同じ剥離処理をした。その結果、72時間で剥離でき、かつ剥離状態も完全剥離の状態であった。
【0041】
[実施例11]
実施例3において、スライドガラス(76mm×26mm×1mm)にEVA、アルミ(薬包紙(アルミ箔)YBSA105 アズワン株式会社製)をカットして作成した試料を用いた以外は、実施例3と同じ剥離処理をした。その結果24時間で剥離でき、かつ剥離状態も完全剥離の状態であった。
【0042】
[実施例12]
実施例3において、スライドガラス(76mm×26mm×1mm)にEVA、フッ素系シート(テドラー登録商標 デュポン製 ポリフッ化ビニル樹脂フィルム(PVF)) を張り合わせた試料を用いた以外は、実施例3同じ剥離処理をした。その結果24時間で剥離でき、かつ剥離状態も完全剥離の状態であった。
【0043】
[実施例13]
実施例3において、スライドガラス(76mm×26mm×1mm)を半分ずらしてEVAで貼り合わせ、加重(6g)としてバインダークリップ(ライオン事務器製No.111)を吊して浸漬処理をした以外は、実施例3と同じ処理をした。その結果60時間で剥離でき、かつ剥離状態も完全剥離の状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するのに分別回収した部品、ガラス、金属部材等への品質に影響がなく剥離できるので、エチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とからなる各種製品、物品の剥離剤として有用である。特に、太陽電池モジュールを構成する表面ガラス基板、太陽電池セル、裏面材(バックシート)等を強固に固定するエチレン−酢酸ビニル共重合体の封止材、電線・ケーブル、ガラスや金属基材にエチレン−酢酸ビニル共重合体をコーティングした物品のエチレン−酢酸ビニル共重合体の剥離に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルコール系溶剤及び/又はグリコール系溶剤を20〜85重量%、(B)アニオン界面活性剤を5〜50重量%、及び残部(C)水を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体と基材とが一体化された製品からエチレン−酢酸ビニル共重合体を剥離するのに使用する剥離剤。
【請求項2】
前記アルコール系溶剤がベンジルアルコール、フェノキシエタノールのうち少なくとも1つであり、前記グリコール系溶剤がベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコールのうち少なくとも1つである請求項1記載の剥離剤。
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤がキシレンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、クメンスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩、又はカリウム塩のうち少なくとも1つである請求項1または請求項2に記載の剥離剤。

【公開番号】特開2013−1806(P2013−1806A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134339(P2011−134339)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【出願人】(597157646)株式会社極東商会 (1)
【Fターム(参考)】