説明

エチレン系重合体組成物

【課題】
エチレン系重合体にドローダウン性が良好でかつ成形加工性改良効果に優れる加工性改質剤を配合することにより良好な押出成形性を有するエチレン系重合体組成物を提供する。
【解決手段】
高密度ポリエチレン、炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体および(a)を満たす高圧法低密度ポリエチレンよりなる群から選択されるエチレン系重合体(A)50〜95重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)5〜50重量%を含有し、高圧法低密度ポリエチレン(B)が(b)〜(d)を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物。
(a)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが6未満
(b)Mw/Mnが6以上
(c)MFRが1〜10g/10分
(d)95℃で測定した、測定開始5分後の化学発光強度が、ペレット1gあたり40カウント/秒以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系重合体にドローダウン性が良好でかつ成形加工性改良効果に優れる加工性改質剤を配合することにより良好な押出成形性を有するエチレン系重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧ラジカル法によって製造される高圧法低密度ポリエチレンは押出ラミネート加工に際して優れた成膜性を示し、各種の樹脂フィルム、紙、アルミニウム箔等の基材フィルムへの押出ラミネート用途に好適に使用されている。近年、衝撃強度や突刺強度が必要な分野や耐熱性の求められる分野においては、高圧法低密度ポリエチレンでは性能が不足しており、直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンが用いられるようになって来ている。しかし、直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンはいずれも押出ラミネート成形性に劣るため、単独で用いることは困難であるため、高圧法低密度ポリエチレンなどの加工性改質材を混合して用いられている。ポリオレフィン系樹脂に使用する加工性改質材としては、弾性の高い高圧法低密度ポリエチレンが多く用いられる。このような加工性改質材には、直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの性質を活かすため、できる限り少量の混合で押出ラミネート成形性を向上できることが求められ、加工性改質材の弾性が高いほど、少量の混合で押出ラミネート成形性を向上することができることから、従来の高圧法低密度ポリエチレンよりも効果の高い加工性改質材が求められている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂の弾性を高める方法としては、電子線によりポリオレフィン系樹脂を架橋させる方法、過酸化物によるポリオレフィン系樹脂を架橋させる方法などがあるが、この方法によればポリオレフィン系樹脂の弾性が過剰となりラミネート成形時の延展性(ドローダウン)が悪化するため、配合量が制限されるという問題があった(特許文献1,2参照。)。
【0004】
このような理由から、ドローダウン性が良好でかつ成形加工性改良効果に優れる加工性改質剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−301927号公報
【特許文献2】特開平09−104720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、エチレン系重合体にドローダウン性が良好でかつ成形加工性改良効果に優れる加工性改質剤を配合することにより良好な押出成形性を有するエチレン系重合体組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的に対して鋭意検討した結果見出されたものである。すなわち本発明は、高密度ポリエチレン、炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体および(a)を満たす高圧法低密度ポリエチレンよりなる群から選択されるエチレン系重合体(A)50〜95重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)5〜50重量%を含有し、高圧法低密度ポリエチレン(B)が(b)〜(d)を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物に関するものである。
(a)重量平均分子量(以下Mwと記す)と数平均分子量(以下Mnと記す)の比Mw/Mnが6未満
(b)Mw/Mnが6以上
(c)メルトフローレート(以下MFRと記す)が1〜10g/10分
(d)95℃で測定した、測定開始5分後の化学発光強度が、ペレット1gあたり40カウント/秒以上
以下に本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成するエチレン系重合体(A)は高密度ポリエチレン、炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体およびMw/Mnが6未満の高圧法低密度ポリエチレンよりなる群から選択されるものである。
【0009】
高密度ポリエチレンとしては、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒などの重合用触媒を用いて、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法などの製造プロセスにより製造されたものが例示できる。
【0010】
炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒などの重合用触媒を用いて、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法などの製造プロセスにより製造されたものが例示できるが、特にメタロセン系触媒を用いて製造されたものはフィルムに成形した場合の機械的強度に優れることから好ましい。
【0011】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを例示することができる。
【0012】
Mw/Mnが6未満の高圧法低密度ポリエチレンとしては、チューブラー型反応器によりラジカル重合法で製造されたものを例示することができる。
【0013】
各々の樹脂は、市販されているものを購入することで入手することが可能である。
【0014】
エチレン系重合体(A)のMFRは特に制限はないが、1〜100g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50g/10分、最も好ましくは10〜40g/10分である。MFRが1〜100g/10分の範囲にあれば、本発明の高圧法低密度ポリエチレン(B)を配合することで、良好な成形加工性を得ることができる。
【0015】
エチレン系重合体(A)の密度は特に制限はないが、880〜970kg/mであることが好ましい。密度がこの範囲にあれば本発明の高圧法低密度ポリエチレン(B)を配合することで、良好な成形加工性を得ることができる。
【0016】
これらの樹脂を単独で使用してもよく、複数の樹脂を混合して使用することもできる。
【0017】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、Mw/Mnが6以上、好ましくは7以上である。Mw/Mnが6未満の場合は、高圧法低密度ポリエチレンの溶融張力が低く、ラミネート加工性を改良する効果が小さいため、好ましくない。なお、高圧法低密度ポリエチレン(B)はオートクレーブ型反応器によって製造されたものであることが望ましい。
【0018】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、MFRが1〜10g/10分、好ましくは1〜5g/10分のものである。MFRが1g/10分未満の場合、押出成形加工時の延展性が低下するため好ましくない。またMFRが10g/10分より大きい場合、エチレン系重合体組成物の溶融張力が低下し、成形加工性が悪化するため好ましくない。
【0019】
なおMFRは、JIS K6760(1995)に記載された方法で測定することができる。
【0020】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、95℃で測定した、測定開始5分後の化学発光強度が、ペレット1gあたり40カウント/秒以上である。化学発光強度がペレット1gあたり40カウント/秒未満の場合、成形加工時の酸化によるエチレン系重合体組成物の弾性上昇幅が小さくなり、良好な成形加工性を得ることができず好ましくない。
【0021】
化学発光は、ハイドロパーオキサイド(過酸化物)が分解すると生じる励起カルボニルや一重項酸素が、安定状態に変化する際に放出される微弱な光である。ハイドロパーオキサイドは物質の酸化により形成されるが、分解によってラジカルを発生するため酸化反応の起点となる物質である。したがって化学発光強度が高い樹脂は酸化反応の起点を多く有しており、成形加工時の熱によって容易にハイドロパーオキサイドが分解し高弾性化する。化学発光強度が高い樹脂を樹脂改質材とすることで、比較的低温で押出されることの多い製造時のペレット化においては押出負荷を低く抑えることができ、一方成形加工時には高温によって高弾性化するために良好な成形加工性を得ることができる。
【0022】
なお、化学発光強度の測定は化学発光測定装置を用いて行うことができる。ハイドロパーオキサイドが分解する温度に試料を加熱することで化学発光強度は徐々に上昇し、極大値を示した後徐々に減衰するのが一般的である。本発明では極大値に近い値を示す条件として、加熱温度95℃、測定時間5分での値を基準とした。
【0023】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、毛管粘度計で測定した260℃における溶融張力が150mN以上であることが好ましく、より好ましくは160mN以上である。溶融張力が150mN以上であるとエチレン系重合体組成物の溶融張力が高くなり、成形加工性が良好となるため好ましい。
【0024】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)は、260℃において毛管粘度計で溶融張力を測定する際の延伸比は4.7以上が好ましく、より好ましくは9.4以上である。延伸比が4.7以上であると、延伸性が良好となり、加工性改質材として直鎖状低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂と混合した材料が高速性形成に優れたものとなるため好ましい
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する高圧法低密度ポリエチレン(B)を得る方法としては特に制約はないが、溶融混練による方法が生産性や経済性の面から望ましい。溶融混練の方法としては、連続的に処理を行う方法、バッチ式に処理を行う方法がある。その装置としては、単軸押出機、二軸押出機の他、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー、高速回転ミキサー、押出機等の各種混練機が挙げられる。
【0025】
溶融混練した高圧法低密度ポリエチレン(B)を得るための溶融混練温度は、130℃以上220℃以下が好ましく、さらに好ましくは140℃以上220℃以下、より好ましくは145℃以上200℃以下である。溶融混練温度が130℃以上220℃以下で混練すると、溶融混練後の高圧法低密度ポリエチレンに導入されるハイドロパーオキサイド量が十分であり、なおかつ溶融混練時の高圧法低密度ポリエチレンの劣化が少なくゲル化や着色により製品の品質を損なう恐れがないため好ましい。
【0026】
溶融混練した高圧法低密度ポリエチレン(B)を得るための酸素濃度は、0.1%以上21%以下であることが好ましい。酸素濃度が0.1%以上21%以下であると、溶融混練によるハイドロパーオキサイドの導入量が十分でありなおかつ溶融混練時の高圧法低密度ポリエチレンの劣化が少なく、ゲル化や着色により製品の品質を損なう恐れがないため好ましい
溶融混練した高圧法低密度ポリエチレン(B)を得るための溶融混練時の混練室内の樹脂の充満率は、40%以上90%以下が好ましく、より好ましくは45%以上90%以下である。ここで混練室内の樹脂の充満率とは、押出機の場合は押出機バレルとスクリューとの間の空間中に占める溶融樹脂の割合を、バンバリーミキサーの場合は混合室とローターとの間の空間中に占める溶融樹脂の割合を指す。充満率が40%以上90%以下であると、酸素との接触確率が十分確保され、かつ生産性の面においても良好となり好ましい。
【0027】
本発明のエチレン系重合体組成物は、エチレン系重合体(A)50〜95重量%と高圧法低密度ポリエチレン(B)5〜50重量%からなるものである。高圧法低密度ポリエチレン(B)の配合比率は、より好ましくは20〜40重量%である。高圧法低密度ポリエチレン(B)の配合比率が5%未満の場合、エチレン系重合体組成物の溶融張力が低下し、成形加工性が悪化するため好ましくない。また高圧法低密度ポリエチレン(B)の配合比率が50%を超える場合、成形加工時のドローダウン性が低下するため好ましくない。
【0028】
本発明のエチレン系重合体組成物には、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、必要に応じて、安定剤、滑剤、難燃剤、分散剤、充填剤、発泡剤、発泡核剤、架橋剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、着色剤などを含有させることができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合して用いることもできる。
【0029】
本発明のエチレン系重合体組成物は、通常樹脂組成物とする際の方法を用いることができ、例えば溶融・混合方法として、単軸押出機やニ軸押出機を用いた押出混練、ロール混練など公知の方法を挙げることができ、該方法で溶融混練することにより得ることができる。
【0030】
本発明のエチレン系重合体組成物は、押出ラミネート成形、インフレーションフィルム成形、キャストフィルム成形などの押出成形に好適に用いられる。中でも、加工性改質材に高い弾性が求められる押出ラミネート成形に用いることが好ましい。
【0031】
本発明のエチレン系重合体組成物は、公知の押出ラミネート成形機により、Tダイより押出されたエチレン系重合体組成物からなる溶融フィルムを直接基材に貼り合せることにより積層体とすることができ、本発明のエチレン系重合体組成物よりなる層を少なくとも1層有する。
【0032】
押出ラミネート成形法は、シングルラミネート、タンデムラミネート、共押出ラミネート、サンドイッチラミネートのいずれでもよく、特に制限を受けない。また、押出ラミネート加工を行う際、基材とエチレン系重合体組成物層との接着性が良好な積層体を得るため、250〜350℃の温度でダイより押出すことが好ましい。また、エチレン系重合体組成物の溶融フィルムが少なくとも基材と接する面は、空気もしくはオゾンガスにより酸化されていてもよい。空気による酸化反応を進行させる場合、270℃以上の温度でダイより押出すことが好ましく、また、オゾンガスによる酸化反応を進行させる場合は、250℃以上で押出すことが好ましい。なお、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出されたフィルム1m当たり0.5mg以上であることが好ましい。また、基材との接着性を高めるため、基材の接着面に対してアンカーコート剤処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。
【0033】
基材としては、合成高分子重合体フィルムおよびシート、織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子重合体からなるフィルムおよびシート等が挙げられる。さらに、これらの高分子重合体フィルムおよびシートは、さらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルムおよびシートは、さらにウレタン系インキ等を用いて印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、伸張紙、上質紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、エチレン系重合体にドローダウン性が良好でかつ成形加工性改良効果に優れる加工性改質剤を配合することにより良好な押出成形性を有するエチレン系重合体組成物を提供するものであり、広範囲にわたりフィルム、容器、テープ、支持体として用いることができ、産業用資材としてきわめて有用である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下に、物性、加工性の評価方法を記す。
(1)密度
密度は、JIS K6760(1995)に準拠して密度勾配管法で測定した。
(2)MFR
MFRは、JIS K6760(1995)に準拠してメルトインデクサーで測定した。
(3)数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定は、GPC法によって行った。
【0037】
測定試料を秤量後、HPLC級1,2,4−トリクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)に酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株)製)を0.1%添加した溶媒に加えて、140℃で1時間振とうして溶解させたものを試料溶液とした。
【0038】
測定装置として東ソー(株)製HLC−8121GPC/HTを用い、以下のようにして測定した。分離カラムとしてTSKgelGMHHR−H(20)HT(東ソー(株)製、内径7.8mm、長さ30cm)を3本連結して使用した。移動層にはHPLC級1,2,4−トリクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製)に酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業(株)製)を0.05%添加したものを使用し、140℃に保持した分離カラム中を流速1.0mL/分で移動させた。これに1.0mg/mLに濃度を調整した試料溶液を0.3mL注入し、示差屈折計で分離された試料成分を検出した。標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を使用して作成した5次近似曲線を検量線として使用し、分子量分布曲線、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を算出した。
(4)溶融張力
溶融張力は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、長さが8mm、直径が2.095mm、流入角が90°のダイスを装着した。温度を260℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を4.7に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。最大延伸比が4.7未満の場合は、延伸性に乏しく加工性改質材として不適と判定した。なお、測定は23℃に設定した恒温室内で行った。
(5)化学発光強度
化学発光測定装置(東北電子産業、商品名:ケミルミネッセンスアナライザーCLA−ID3)を用いて、試料約4gを試料室に入れて95℃で化学発光強度の計測を行い、計測開始5分後の化学発光強度を測定値とした。
(6)酸素濃度
押出機の場合はスクリュー直上、バンバリーミキサーの場合は混練直前の混合室内の酸素濃度を、酸素濃度計(新コスモス電機(株)製XP−3180)を用いて計測した。
(7)充満率
押出機の場合は押出機バレルとスクリューとの間の空間の体積を、バンバリーミキサーの場合は混合室とローターとの間の空間の体積を計算し、溶融混練混合する樹脂の体積を空間の体積で除して計算した。
(8)ネックイン
エチレン重合体組成物を90mm径のスクリューを有する押出ラミネーター(ムサシノキカイ)の押出機へ供給し、340℃の温度で開口幅600mmのTダイより押出し、基材の引取り速度を200m/分として、坪量50g/mのクラフト紙基材上に押出ラミネート用樹脂組成物が10μmの厚さになるよう押出ラミネートした際の、Tダイ開口幅とエチレン系重合体組成物のコート幅との差をネックインとし、その値を測定した。
(9)ドローダウン
エチレン重合体組成物を90mm径のスクリューを有する押出ラミネーター(ムサシノキカイ)の押出機へ供給し、340℃の温度で開口幅600mmのTダイより坪量50g/mのクラフト紙基材上に押出し、スクリュー回転数10回転一定で基材の引取り速度を徐々に上げていったとき、エチレン重合体組成物の膜が破断した際の引取速度をドローダウンとし、その値を測定した。
【0039】
実施例1
混練機として、噛合型スクリュー、異方向回転型の二軸押出機(東洋精機製作所、商品名:ラボプラストミル2D25S型)を用い、MFR3.0g/10分、密度924kg/m、Mw/Mn6.5の高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、ペトロセン205)を溶融混練し、高圧法低密度ポリエチレン(B−1)を作製した。その際の条件は、混練温度160℃、吐出量1.7kg/時、酸素濃度21%とした。このときの充満率は80%であった。スクリューは多条フライト型逆リード付(2S25R型)のものを用いた。混練条件および混練品の物性を表2に記す。
【0040】
この高圧法低密度ポリエチレン(B−1)25重量%に対し、エチレン系重合体として高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 1000;密度966kg/m、MFR20g/10分)(以下、(A−1)という。)75重量%を配合し、これを回転式タンブラーでドライブレンドしたものを180℃に設定した50mm径の単軸押出機(プラコー)を使用して溶融混練してエチレン系重合体組成物を得た。得られたエチレン系重合体組成物は、評価方法に示した方法によりラミネート成形し、ネックイン、ドローダウンを計測した。これらの評価結果を表3に示す。
【0041】
実施例2
エチレン系重合体(A)としてエチレン−α−オレフィン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロンL M65;密度920kg/m、MFR20g/10分)(以下、(A−2)という。)を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0042】
実施例3
エチレン系重合体(A)としてエチレン−α−オレフィン共重合体(密度925kg/m、MFR24g/10分)(以下、(A−3)という。)を使用した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0043】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)は、以下に示す合成例1により製造されたものである。
【0044】
合成例1
[変性ヘクトライトの調製]
水3リットルにエタノール3リットルと37%濃塩酸100ミリリットルを加えた後、得られた溶液にN−メチル−ジオレイルアミン585g(1.1mol)を添加し、60℃に加熱することによって、塩酸塩溶液を調製した。この溶液にヘクトライト1kgを加えた。この懸濁液を60℃で、3時間撹拌し、上澄液を除去した後、60℃の水50Lで洗浄した。その後、60℃、10−3torrで24時間乾燥し、ジェットミルで粉砕することによって、平均粒径5.2μmの変性ヘクトライトを得た。
[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]
前記変性ヘクトライト500gをヘキサン1.7リットルに懸濁させ、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド8.25g(20.0mmol)とトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.714M)2.8リットル(2mol)の混合液を添加し、60℃で3時間攪拌した後、静置して上澄み液を除去、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加してマクロモノマー合成触媒(100g/L)とした。
【0045】
上記で調製したマクロモノマー合成触媒にジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライドに対して10mol%のイソプロピリデン(1−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド1.21g(2.22mmol)を添加して室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.15M)を添加して最終的に100g/Lのポリエチレン系樹脂製造触媒を得た。
[エチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)の製造]
内容積540Lの重合器に、ヘキサンを145kg/時、エチレンを33.0kg/時、ブテン−1を4.9kg/時、水素を20NL/時およびポリマー生産量が30kg/時になるように上記[ポリエチレン系樹脂製造触媒の調製]で調製したポリエチレン系樹脂製造触媒を連続的に供給し、全圧を3,000kPa、重合器内温を60℃に保ちながら連続的に重合反応を行った。重合器から連続的にスラリー抜き出し、未反応の水素、エチレン、ブテン−1を除去した後、分離、乾燥の工程を経てエチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)粉末を得た。これを200℃に設定した50mm径の単軸押出機を使用して溶融混練し、ペレタイズすることでエチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)ペレットを得た。得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(A−3)ペレットの密度は925kg/m、MFRは24g/10分、長鎖分岐数は1000炭素原子当り0.13個、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは3.8であった。
【0046】
実施例4
混練温度を200℃とした以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−2)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−2)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0047】
実施例5
酸素濃度を5%とした以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−3)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−3)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0048】
実施例6
充満率を50%とした以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−4)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−4)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0049】
実施例7
エチレン系重合体組成物の配合比率をA−1 90重量%、B−1 10重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0050】
実施例8
エチレン系重合体組成物の配合比率をA−1 55重量%、B−1 45重量%に変更した以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0051】
比較例1
押出機内に窒素を導入して酸素濃度を0.1%未満とした以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−5)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−5)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0052】
エチレン系重合体組成物は、ネックインが非常に大きくなり、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0053】
比較例2
吐出量を2.2kg/時、充満率を98%とした以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−6)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−6)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0054】
エチレン系重合体組成物は、ネックインが非常に大きくなり、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0055】
比較例3
高圧法低密度ポリエチレン(B)を配合しないこと以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0056】
エチレン系重合体組成物は、ネックインが非常に大きくなり、ラミネート加工性に劣るものであった。
比較例4
高圧法低密度ポリエチレン(B)として高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 360;密度919kg/m、MFR1.6g/10分)(以下、(B−7)という。)を使用した。B−7は溶融混練を行わずに使用し、A−1 75重量%に対しB−7 25重量%を配合して実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0057】
エチレン系重合体組成物は、ドローダウン性が悪化し、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0058】
比較例5
ペトロセン205の代わりにペトロセン180(東ソー(株)製、MFR2.0g/10分、密度924kg/m、Mw/Mn4.8)を使用した以外は実施例1と同じ条件で高圧法低密度ポリエチレン(B−8)を調製した。この高圧法低密度ポリエチレン(B−8)を高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてエチレン系重合体組成物のペレットを得た。得られたペレットは、実施例1と同様にラミネート成形し評価を行った。これらの評価結果を表4に示す。
【0059】
エチレン系重合体組成物は、ネックインが非常に大きくなり、ラミネート加工性に劣るものであった。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレン、炭素数3〜8のα−オレフィンから導かれる繰返し単位からなるエチレン−α−オレフィン共重合体および(a)を満たす高圧法低密度ポリエチレンよりなる群から選択されるエチレン系重合体(A)50〜95重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)5〜50重量%を含有し、高圧法低密度ポリエチレン(B)が(b)〜(d)を満たすことを特徴とするエチレン系重合体組成物。
(a)重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが6未満
(b)Mw/Mnが6以上
(c)MFRが1〜10g/10分
(d)95℃で測定した、測定開始5分後の化学発光強度が、ペレット1gあたり40カウント/秒以上
【請求項2】
高圧法低密度ポリエチレン(B)が(e)〜(f)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体組成物。
(e)毛管粘度計で測定した260℃における溶融張力が150mN以上
(f)260℃において毛管粘度計で溶融張力を測定する際の延伸比が4.7以上
【請求項3】
高圧法低密度ポリエチレン(B)が下記条件(g)〜(i)を満たす条件で溶融混練したものであることを特徴とする、エチレン系重合体組成物。
(g)混練温度が130℃以上220℃以下
(h)酸素濃度が0.1%以上21%以下
(i)混練室内における溶融樹脂の充満率が40%以上90%以下
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物よりなる層を少なくとも1層有することを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2013−112794(P2013−112794A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262576(P2011−262576)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】