説明

エポチロンDの投与方法

エポチロンDを腫瘍性疾患を有する対象に送出する方法が提供される。或る実施態様において、本発明は約21の連続の日の期間の送出期間にわたって約7日毎に少なくとも1回のエポチロンDの静脈内注入により腫瘍を有する対象を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は増殖性疾患、特に癌の治療に関する。更に詳しくは、本発明はエポチロン、更に特別には、エポチロンDを投与して治療効果を得る方法を提供する。こうして、本発明は医療、腫瘍学、及び薬理学の分野に関連を有する。
【背景技術】
【0002】
エポチロンとして知られているケトライドのクラスがパクリタキセルと同様の作用の様式を有する潜在的な治療薬化合物の源として出現していた(Bollagら, 1995; Service, 1996; Winkler及びAxelsen, 1996; Bollag, 1997; Cowden及びPaterson, 1997)。エポチロン及びエポチロン類似体の関心は或る種のエポチロンがパクリタキセルに対する耐性を発生した腫瘍に対し活性であるという観察(Harrisら, 1999a)だけでなく、望ましくない副作用についての低下された潜在性(Muhlradt及びSasse, 1997)により増大していた。治療効力について研究されているエポチロン及びエポチロン類似体の中に、エポチロンB1(Ozaら, 2000)並びに半合成エポチロンB類似体、“アザエポチロンB”(Colevasら, 2001; Leeら, 2001; McDaidら, 2002; Yamaguchiら, 2002)としてまた知られているBMS-247550 2、及びBMS-310705 3がある。






























【0003】
【化1】

【0004】
“エポチロンD”としてまた知られている、デスオキシエポチロンB4は治療効力について研究されているパクリタキセルと比較して有望な抗腫瘍特性を有する別のエポチロン誘導体である(Suら, 1997; Chouら, 1998a; Chouら, 1998b; Harrisら, 1999b; Chouら, 2001; Danishefskyら, 2001; Martin及びThomas 2001; Danishefskyら, 2002)。この化合物はまた、おそらく高度に反応性のエポキシド部分の欠如のために、12,13-エポキシドを有するエポチロン、例えば、エポチロンB又はBMS-247550よりも小さい毒性を示した。








【0005】
【化2】

【0006】
臨床医は有効かつ寛容し得る、薬物を患者に送出するための用量及び投与スケジュールを探求している。しばしば、当業者は薬物の毒性を薬物の治療効果とバランスさせる用量及びスケジュールを見つける必要がある。米国特許第6,641,803号及び同第5,635,531号はパクリタキセルについてのこのような投薬養生法を記載しており、また米国特許第6,302,838号はエポチロンBについての投薬養生法を説明している。しかしながら、エポチロンDに最適の投薬養生法は決められるべく残っている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一局面において、本発明はエポチロンDを腫瘍を有する対象(subject)に送出する方法を提供する。本発明の一実施態様によれば、対象が静脈内注入により治療有効量のエポチロンDを受ける。或る実施態様において、エポチロンDが約0.25mg/mL〜約2.0mg/mLの濃度で送出される。その他のこのような実施態様において、エポチロンDが約0.5mg/mL〜約1.0mg/mLの濃度で送出される。エポチロンDの用量は対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約100mgであってもよい。
別の局面において、静脈内注入は約21の連続の日の送出期間にわたって約7日毎に少なくとも1回対象に注入することを含む治療サイクルで行なわれる。その他の実施態様において、注入は送出期間中に約14日にわたって2回行なわれる。いずれの場合の更に特別な実施態様において、治療サイクルは約28日の期間を有する。本発明の方法の更に別の実施態様は治療サイクルが繰り返される実施態様を含む。
更に別の局面において、静脈内注入は注入が約72時間の送出期間にわたって約24時間毎に1回行なわれる治療サイクルで行なわれる。或る更に特別な実施態様において、治療サイクルは約7の連続する日の期間を有する。更に特別な実施態様において、1平方メートル当り少なくとも約40mgのエポチロンDが送出される。更に特別な実施態様において、注入が約2時間以下の期間にわたって行なわれる。
別の局面において、静脈内注入は約24時間の期間にわたって連続的に行なわれる。本発明のこの局面の或る実施態様において、ローディング投薬が対象に施される。更に特別な実施態様において、ローディング投薬に続いて、連続注入が行なわれる。
これらの局面及び利点並びにその他の局面及び利点は以下の記載が図面と一緒に読まれる場合に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明はエポチロンDを抗腫瘍治療として投与する方法を提供する。一局面において、本発明は治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入により腫瘍を有する対象に投与することを特徴とする、抗腫瘍治療をこのような対象に施す方法を提供する。本発明の方法を使用して送出されるエポチロンDは、当業者に良く知られているように(Gennaro, 2000)、生理食塩水又はエポチロンDの溶解性を高める薬剤を使用する対象への投与のための別の水性媒体を使用して製剤化し得る。このような薬剤の一例はクレモフォー(登録商標)である。例えば、以下に例示されるプロトコルに詳述されるように、対象に成功裏に投与される一種の好適な製剤は溶液1ミリリットル(mL)当り1%のクレモフォー(登録商標)及びエポチロンD0.5mgを含む。例えば、1mL当りエポチロン約0.25mg〜エポチロンD約1.0mgの範囲の一層多い量又は一層少ない量のエポチロンDがまた使用し得る。当業者に良く知られているように、エポチロンDの溶解性を高めるのに有効である或る種の薬剤、例えば、クレモフォー(登録商標)は、対象に与えられた場合に陰性反応を誘発することがあり、それ故、このような陰性反応を相殺する薬物が本明細書に記載されたようなエポチロンDの投与とともに、その後に、又はその前に投与されてもよい。また、クレモフォー(登録商標)を含まない製剤が共同未決米国仮特許出願第60/417,356号及び同第60/426,585号に記載されており、これらの未決の出願の夫々が全ての目的のために参考として本明細書に含まれる。
【0009】
上記製剤は注入速度及び注入の時間の適当な調節により当業者に知られている方法及び物質を使用して送出し得る。一般に、注入による静脈内投与は1時間当り注入物約150立方センチメートル(cc)(即ち、150cc/時間)である投薬速度を使用する。その他の実施態様において、注入は90分にわたって行なわれ、更に別の実施態様において、製剤は最初の、比較的迅速な(例えば、約30分の期間にわたる)ローディング投薬、続いて定常の、低用量注入(例えば、24〜72時間の期間にわたって送出される)により送出される。注入の時間は一般に用量に依存するであろう。注入時間の一般的な範囲は約10分〜約10時間であるが、殆どの場合には、注入時間は約6時間を越えず、或る場合には、注入時間は2時間を超えないであろう。また、約30分〜約90分の注入のためのプレセット時間が固定され、注入の速度がそれに応じて調節される。
毒性限界が超えられないことを確実にするために、対象についての投与の効果が監視される。可能な効果として、一種以上の神経障害(これは認識異常/知覚異常として発現し得る)、肢のしびれ、歩行困難、眩暈等が挙げられる。例えば、対象の単位表面積(平方メートル(m2))当りエポチロンD9ミリグラム(mg)〜約60ミリグラムの用量レベルでは、毒性が典型的には5日目に始まり、15日目まで続くであろう。しかしながら、90mg/m2〜185g/m2の如き一層多い用量では、毒性は注入が終了された後の日に直ちに始まることがある。その他の副作用として、はきけ及び嘔吐、疲労、発疹、脱毛症、及び生存徴候の変化、例えば、起立性低血圧が挙げられるかもしれない。脊髄機能低下(これは貧血、好中球減少、血小板減少等として発現し得る)がまた監視されるべきであるが、骨髄機能低下はこの薬物では一般に見られなかった。
【0010】
或る実施態様において、本発明は抗腫瘍治療を腫瘍を有する対象に施す方法を提供する。一実施態様において、本発明の方法は治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入によりこのような対象に投与することを含む。更に特別な実施態様において、静脈内注入により送出される組成物中のエポチロンDの濃度は約0.25mg/mL〜約2.0mg/mLであり、別の実施態様において、組成物中のエポチロンDの濃度は約0.5mg/mL〜約1.0mg/mLであり、更に特別な実施態様において、組成物中のエポチロンDの濃度は約0.5mg/mLである。静脈内注入により対象に送出されるエポチロンDの用量は一般に対象の表面積1平方メートル当り約250ミリグラム(250mg/m2)以下、更に特別には、約70mg/m2〜約250mg/m2である。或る実施態様において、送出される用量はこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約100mgであり、更に特別な実施態様において、このような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約120mgである。本発明の或る実施態様によれば、エポチロンDの更に特別な用量範囲は約100mg/m2〜約200mg/m2である。その他の実施態様において、静脈内注入による投薬の期間は約6時間以下である。
別の実施態様において、本発明は約21の連続の日の送出期間にわたって約7日毎に少なくとも1回の静脈内注入により投与する工程を行なうことを含む治療サイクルを提供する。更に特別な実施態様において、丁度記載された治療サイクルは約21の連続の日の送出期間にわたって約14日毎に2回の静脈内注入により投与する工程を繰り返すことを更に含む。約7日に1回の単一の静脈内注入又は7日毎に1回の別々の注入が21日の期間に2回与えられる実施態様を含む、サイクルの更に別の実施態様は、このような対象の状態を評価して追加のエポチロンDをこのような対象に投与するか否かを決める工程を更に含む。丁度記載されたこれらの実施態様の別の実施態様において、治療サイクルは約28日の期間を有する。28日の治療サイクルを含む更に特別な実施態様において、送出期間は前記治療サイクルの最初の日に始まり、また、送出期間が前記治療サイクルの最初の日に始まる28日の治療サイクルの更に特別な実施態様において、本発明は治療期間の完結後に治療サイクルを繰り返す工程を更に含む。
【0011】
更に、21日の静脈内送出期間を含むこれらの実施態様の更に特別な実施態様は静脈内注入により送出される組成物中のエポチロンDの濃度が約0.25mg/mL〜約2.0mg/mLである実施態様を含み、別の実施態様において、組成物中のエポチロンDの濃度は約0.5mg/mL〜約1.0mg/mLであり、また、更に特別な実施態様において、組成物中のエポチロンDの濃度は約0.5mg/mLである。静脈内注入により対象に送出されるエポチロンDの用量は一般に対象の表面積1平方メートル当り約250mg(250mg/m2)以下、更に特別には、約70mg/m2〜約250mg/m2である。或る実施態様において、送出される用量はこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約100mgであり、更に特別な実施態様において、このような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約120mgである。本発明の或る実施態様によるエポチロンDの更に特別な投薬範囲は約100mg/m2〜約200mg/m2である。別の実施態様において、静脈内注入による投薬の期間は約6時間以下である。
更に別の実施態様において、本発明の方法は約72時間の送出期間にわたって約24時間毎に1回の静脈内注入により投与する工程を行なうことを含む治療サイクルで治療有効量のエポチロンDを含む組成物をこのような対象に投与することを含む。72時間の送出期間が使用される更に特別な実施態様において、治療サイクルは約14の連続の日の期間を有する。72時間の送出期間が使用され、治療サイクルが約14の連続の日の期間を有する更に特別な実施態様はその治療サイクルが約28の連続の日にわたって2回繰り返される実施態様を含む。治療サイクルが約28の連続の日にわたって2回繰り返される或る実施態様によれば、静脈内注入が約2時間以下の期間にわたって行なわれる。後者の二つの実施態様のいずれかの更に特別な実施態様は対象に投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約40mgである実施態様を含み、更に特別な実施態様において、対象に投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約50mgである。
本発明の方法が約72時間の送出期間にわたって約24時間毎に1回の静脈内注入により投与する前記工程を行なうことを含む治療サイクルで治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入によりこのような対象に投与することを含む丁度記載された幾つかの実施態様のうち、更に特別な実施態様は静脈内注入により送出される組成物中のエポチロンDの濃度が約0.25mg/mL〜約2.0mg/mLであり、また組成物中のエポチロンDの濃度が約0.5mg/mL〜約1.0mg/mLであり、また、更に特別には、組成物中のエポチロンDの濃度が約0.5mg/mLである実施態様を含む。
【0012】
本発明の方法が治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入によりこのような対象に投与することを含む上記の更に別の実施態様は注入が約24時間の期間にわたって連続的に行なわれる実施態様を含む。このような実施態様は、ローディング用量を与えることを含む実施態様を更に含み、また、丁度記載されたローディング投薬が約30分間にわたって行なわれる更に特別な実施態様を含む。加えて、24時間の連続の投薬を含むこれらの実施態様のいずれかを使用して送出されるエポチロンDの用量は約250mg以下、更に特別には約70mg又は約200mgであってもよい。
一般に、エポチロンD投与の暴露が有利である。以下に記載されるように、エポチロンD投与について測定された薬物速度論は用量依存性であり、用量に関する曲線下の面積(AUC)の依存性は約9mg/m2〜約150mg/m2の用量範囲について線形であった。エポチロンDの半減期は約8-10時間の平均値を有し、90L/m2〜150L/m2の分布の容積(VZ)が良好な薬物浸透を示した。これはパクリタキセルに関する値(これは140±70L/m2である)よりも平均で若干高かった。これらの薬物速度論パラメーターは最初の注入に較べて第二の注入について認められる程には変化しない。
薬物の活性は中間期細胞中の微小管の結束を測定することにより評価し得る。これはパクリタキセルの如き微小管安定剤の活性の特徴と考えられる。束形成は免疫蛍光又はウェスタンブロッティングにより容易に測定し得る。典型的な測定において、全血が患者から集められ、単核細胞(PBMC)が束形成の評価のために単離される。用量が18mg/m2程度に低い場合に、かなりの量の束形成が観察され、これは用量につれて増大する。最大の微小管束形成が60mg/m2〜185mg/m2の用量で観察された。
以上に加えて、本明細書に記載された方法は薬物、手術、及び放射線を含む、その他の治療様式と組み合わせて使用される場合にエポチロンDを送出するのに使用し得る。更に特別な実施態様において、本発明の方法は共同未決米国仮特許出願第60/417,535号(これは全ての目的のために参考として本明細書に含まれる)に記載されたようなヌクレオシド類似体と組み合わせてエポチロンDを送出するのに使用し得る。これらの実施態様の幾つかにおいて、ヌクレオシド類似体はアザシチジン、クラドリビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビンホスフェート、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、ペントスタチン、ウラシルマスタード、及び5'-デオキシ-5-フルオロ-N-〔(ペンチルオキシ)カルボニル〕-シチジン(商品名ゼロダ(登録商標)(ロシェ)として販売される)からなる群から選ばれる。
【実施例】
【0013】
下記の実施例は本発明の或る局面を説明し、当業者が本発明を実施することを助けるために示される。これらの実施例は本発明の範囲を何らかの様式で限定するものと考えられるべきではない。
5.1実施例1:患者研究
5.1.1 登録
患者が進行した悪性(原発性又は転移性)を示し、通常の治療では手に負えない(又は通常の治療が利用できない)場合、また彼らが経験した抗癌治療(妥当な場合)の最後の投薬が登録の21日以上前であった場合に、患者を登録した。研究に含まれるために、患者は測定可能であり、又は評価できる型の癌を有している必要があった。その他の基準として、適当な肝臓、腎臓及び造血の機能、即ち、従来の治療の可逆的効果(存在する場合)からの回復が挙げられた。研究に含まれた患者はそれらの情報承諾を与えた。しかしながら、候補患者がクレモフォー(登録商標)を含む製品に対しアレルギー性であった場合、彼らを拒絶した。何とならば、この研究に使用された組成物はエポチロンDの可溶化剤として0.5%〜1%のクレモフォー(登録商標)を含んでいたからである。また、患者が既存の神経障害を有し、又は25%より多い骨髄を含む骨格のRTを示し、頭蓋内浮腫もしくは転移を有し、又は硬膜疾患、心臓疾患を有し、或いはHIV陽性であり、高度に活性の抗レトロウイルス治療(HAART)養生法を受けていた場合に、彼らを拒絶した。
上記基準を満足する約81人の患者を研究に登録した。治療した患者のうち、約60%が男性であり、40%が女性であり、年齢が23才から85才の範囲であった。結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及び肺腫瘍を含む、広範囲の腫瘍型が研究に含まれた。登録者の殆どが研究に入る前にその他の化学療法の多くのラウンドを受けていた。
【0014】
5.1.2 患者投薬
組成物中のクレモフォー(登録商標)に対する不利な反応を防止するために、H1/H2ブロッカーを注入の30-60分前に患者に経口投与した。夫々のサイクルについて、薬物を約150cc/時間の速度及び約0.5mg/mLのエポチロンD濃度で注入した。こうして、9mg/m2の用量は約10-15分の注入を必要とし、一方、150mg/m2の用量は3-4時間の投薬を必要とした。CBCを毎週差別的に試験すること、3週毎の種々の研究所試験、及び3週毎の神経学的評価を含む物理的試験により、患者を監視した。腫瘍評価を6週毎に行なった。
5.1.3 結果
夫々の患者に関するエポチロンDの毒性を監視し、治療中に継続基準で夫々の患者について慎重に評価した。用量制限毒性は主として神経学的であり、認識異常/知覚異常により顕在的であり、これらが最高用量(即ち、約120mg/m2〜185mg/m2)でのみ観察され、一時的であった。その他の神経学的作用として、一時的運動神経障害(不安定、運動失調、及び眩暈)、筋肉攣縮、一般に指及び足指の時折のしびれを伴う刺痛として生じる知覚神経障害が挙げられた。更に別の毒性として、疲労、はきけ及び嘔吐、下痢、並びに便秘が挙げられた。これらの毒性は用量依存性であり、一般に等級2の重度であった。脊髄機能低下の明らかな証拠は観察されなかった。
【0015】
エポチロンDの薬物速度論及び薬力学の両方を患者で測定した。時間の関数としての血漿濃度を数人の患者で種々の用量レベルで第一サイクル及び第二サイクルで測定した。これらの薬物速度論的データを測定するために、エポチロンDのレベルを注入の前、30分及び60分の注入の間(注入がこの期間を越えた場合)、注入の終了時、並びに注入が終了された後の15分、30分、45分、60分及び2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、24時間、及び48時間に測定した。血漿分析を2ng/mL〜498ng/mLの線形較正範囲でもってLC/MS/MSにより行なった。エポチロンDを内部標準定量により測定した。
図1Aは120mg/m2の用量における時間の関数としての結果(ng/血漿1ml)を示す。予想されるように、注入の終了時におけるレベルは高く、徐々に減少し、特別な時間における濃度レベルは用量依存性である。図1Bは60mg/m2で治療された3人の患者についての二つの異なるサイクルで得られた結果の比較を示す。示されるように、サイクルに基づく薬物速度論の認められる差はない。図2は曲線下の面積(AUC)、用量の関数としての患者により経験されたエポチロンDの合計量のグラフである。第一のサイクル及び第二のサイクルの両方で、与えられた用量(ミリグラム)と曲線下の面積(これはng/ml x 時間で測定される)の間に線形の相関関係がある。
100mg/m2で治療された患者についての結果を平均した。薬物クレアランスは18.9±5.8L/時間であり、分布の容積(VZ)は232±82であり、排除半減期は8.8±2.4時間であった。これらのパラメーターの全てが用量非依存性であり、サイクルの数に依存する実質的な変化はなかった。
【0016】
毒性及び薬物速度論を監視することに加えて、治療の薬力学をまた監視した。標準の基準は中間期細胞中の微小管の結束に影響する薬物の能力である。全血を患者から集め、単核細胞(PBMC)を単離した。束形成を測定するために、PBMCを0.75x106の細胞/mLを含む5%のFBS/PBS中で再懸濁させ、サイトスピン製剤をつくるのに使用した。次いで細胞を20℃で10分間にわたって100%のメタノール中で定着させ、空気乾燥させ、免疫染色の前に4℃で貯蔵した。免疫染色のために、細胞を20分間にわたってPBS中10%の正常ヤギ血清中でブロックし、1時間にわたって37℃でPBS中5%の正常ヤギ血清中で希釈されたα-チューブリンモノクローナル抗体の1:100希釈液とともにインキュベートした。次いでスライドをPBS中ですすぎ、取り付けの前に暗所で1時間にわたって1:200のCy3-複合ヤギ抗マウスIgGとともにインキュベートした。ザイスAXIOSCOP顕微鏡を使用して細胞数を定量し、個々の研究者によりスライド当り500の細胞のレベルで評価した。
微小管束形成の評価の結果を図3に示す。示されるように、束形成を示す微小管の%が注入中に上昇し、その後に徐々に減少し始める。上昇のレベルは強く用量依存性であり、120mg/m2の用量で、微小管の55%が結束され、ほんの18mg/m2では、微小管のほんの12%がこの現象を示す。
この薬力学的効果と血漿中のエポチロンDの濃度の間の関係を図4に示す。図4Aは注入の終了時の血漿中のエポチロンDの濃度と微小管束形成%の間の相関関係を示す。優れた相関関係がr2=0.89で得られた。図4B中、相関関係が束形成と曲線下の面積の間にあった。この場合の相関関係は依然としてr2=0.54でかなりのものであった。
腫瘍マーカー減少が卵巣、膵臓、睾丸、胸部、胆管の疾患を含む、幾つかの異なる腫瘍型で観察された。幾人かの患者が多くのサイクル(少なくとも4ヶ月)を受け、これは安定な疾患を示唆する。
【0017】
6 参考文献
下記の文献があらゆる目的のために参考として本明細書にそのまま含まれる。
Bollag, D.M. (1997), “エポチロン:新規な微小管安定剤” Expert Opinion on Investigational Drugs 6(7): 867-873
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【0018】
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【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1−A】図1A及び図1Bは時間の関数としての患者の血漿中のエポチロンDの濃度を示す。図1Aは時間の関数としての血漿1ミリリットル当りの結果(ナノグラム;(ng/mL))を示す。
【図1−B】3人の患者に関して二つの異なるサイクルで得られた結果の比較を示す。
【図2】曲線下の面積(AUC)、用量の関数としての患者により経験されたエポチロンDの全暴露のグラフである。
【図3】時間の関数としてのエポチロンDにより結合された微小管束の形成を示すグラフである。
【図4−A】図4A及び図4Bは薬力学とエポチロンDの注入終了濃度の関係を示す。図4Aは束形成に関する関係を示す。
【図4−B】AUCに関する関係を示す。
【図5】本発明の方法に従って治療された患者に関する効力を示す。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入により腫瘍を有する対象に投与することを特徴とする、抗腫瘍治療をこのような対象に施す方法。
【請求項2】
前記組成物中のエポチロンDの濃度が約0.25mg/mL〜約2.0mg/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記組成物中のエポチロンDの濃度が約0.5mg/mL〜約1.0mg/mLである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記組成物中のエポチロンDの濃度が約0.5mg/mLである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
静脈内注入により投与する前記工程で投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約100mgである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
静脈内注入により投与する前記工程で投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約120mgである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
静脈内注入による前記投与を約6時間以下にわたって行なう、請求項1記載の方法。
【請求項8】
約21の連続の日の送出期間にわたって約7日毎に少なくとも1回静脈内注入により投与する前記工程を行なうことを含む治療サイクルを施すことを更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項9】
約21の連続の日の前記送出期間にわたって約14日で2回の静脈内注入により投与する前記工程を繰り返すことを更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
このような対象の状態を評価して追加のエポチロンDをこのような対象に投与するか否かを決める工程を更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記治療サイクルが約28日の期間を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記送出期間が前記治療サイクルの最初の日に開始する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記治療期間の完結後に前記治療サイクルを繰り返す工程を更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
約72時間の送出期間にわたって約24時間毎に1回静脈内注入により投与する前記工程を行なうことを含む治療サイクルをこのような対象に施す工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記治療サイクルが約14の連続の日の期間を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
約28の連続の日にわたって前記治療サイクルを2回繰り返すことを更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
静脈内注入により投与する前記工程で投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約40mgである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
静脈内注入により投与する前記工程で投与されるエポチロンDの量がこのような対象の表面積1平方メートル当りエポチロンD少なくとも約50mgである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
静脈内注入による前記投与の工程を約2時間以下の期間にわたって行なう、請求項16記載の方法。
【請求項20】
治療有効量のエポチロンDを含む組成物を静脈内注入により腫瘍を有する対象に投与することを含む、抗腫瘍治療をこのような対象に施す方法であって、前記静脈内注入を約24時間の期間にわたって連続的に行なうことを特徴とする、抗腫瘍治療を対象に施す方法。
【請求項21】
投与の前記工程がローディング用量を与えることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ローディング用量に続いて、連続注入を行なう、請求項21記載の方法。
【請求項23】
投与の前記工程が前記エポチロンD約250mg以下の用量をこのような対象に送出する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
投与の前記工程が前記エポチロンD約70mgの用量をこのような対象に送出する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
投与の前記工程が前記エポチロンD約200mgの用量をこのような対象に送出する、請求項24記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−514681(P2006−514681A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−572190(P2004−572190)
【出願日】平成15年5月20日(2003.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/017921
【国際公開番号】WO2004/103267
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(504269110)コーザン バイオサイエンシス インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】