説明

エリア監視システム

【課題】平常時および非常時の双方に1つのシステムで対応できるようにする。
【解決手段】携帯端末装置1とサーバ20を含む管理システム2とを具備するエリア監視システムにおいて、携帯端末装置1において、平常時および非常時のいずれにおける事象情報を入力するかを選択した後に、事象情報の入力を受け付けて、事象情報を、その情報が平常時および非常時のいずれに関係するかを示す識別情報や位置情報と共にサーバ20に送信する。サーバ20では、携帯端末装置1から受信した情報をデータベースに蓄積すると共に、蓄積された情報を用いて、事象と位置情報との関係を示す画像が平常時と非常時とに分かれて配置された地図画像を作成し、PC端末21に送信する。PC端末21では、平常時の表示、非常時の表示、平常時と非常時との双方の表示のいずれかを指定し、その指定に対応する画像が現れた地図画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定広さのエリアにおける事故や設備の異常などの事象の発生状況を監視する作業を支援するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS機能を有する携帯型の通信機器や、地図情報を処理するソフトウェア(GIS)の利用の拡大に伴い、携帯型の通信機器を災害時の情報収集用の端末装置として機能させ、各端末装置により収集された情報に基づき、各地の状況を示す地図画像を表示するシステムが提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、情報収集員が有する携帯端末装置により生成された画像をGPSにより取得した位置情報と共にサーバに送信し、サーバにおいて、被害状況分布図を作成して表示することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、現在位置を表すマークが入った地図を表示する機能を具備する携帯端末装置において、表示上の地図の災害地域を指定する操作に応じて、災害に関する情報を位置情報と共に送信することや、携帯端末装置やその他の機器からの送信情報に基づき編集された地図画像(災害情報レイヤ)を各携帯端末装置に一斉送信することによって、各携帯端末装置で被害状況などを確認できるようにすることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−334184号公報
【特許文献2】特開2000−57457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水道などの公共設備の管理者は、災害時に限らず、平常時でも定期的に各種設備を点検しているが、従来の点検作業は、チェックリストなどの紙媒体に情報を書き込む方法により行われているため、作業の効率が悪く、情報の共有化も困難である。また、設備に故障や異常が発生した場合でも、その異常を報告するのに時間がかかり、対応が遅れるおそれがある。
【0007】
また災害時には、多くの場所で故障や異常が発生する可能性があるため、情報の取得や分析が遅れると、著しい支障が生じるおそれがある。
【0008】
GPS機能を有する携帯端末装置により情報を収集して、収集情報に基づく地図画像を表示する方法は、上記の各問題点を解決する方法として有用であると思われる。しかし、従来は、特許文献1,2に記載されたような非常時に特化されたシステムか、平常の業務を効率的に行うことを目的としたシステムしかなく、平常時および非常時の両方に利用することを目的とするシステムは提案されていない。
【0009】
また、非常時の利用に特化したシステムで携帯端末装置により情報を収集する立場にいる人は、たまの訓練のときしか情報の入力や送信をする機会がないため、実際に非常時になった場合に、操作の手順がわからなくなったり、入力に手間取るなどの支障が生じるおそれがある。また、あせって操作をしたために手順を間違えて、入力や送信に失敗するおそれもある。収集された情報による地図画像を確認する立場にある人も、同様に、ふだん見慣れない画面では、どのような情報を確認できるか即座に判断できないおそれがある。
【0010】
このように、非常時専用のシステムは、操作性が悪く、十分な活用が困難である。また非常時においても、平常時に問題が生じていた場所を確認するなど、対応策を検討するのに有用な平常時の情報を確認したい場合があるが、非常時専用のシステムで平常時の情報を読み出すのは困難である。
【0011】
本発明は上記の問題に着目し、平常時および非常時の双方に1つのシステムで対応できるようにすると共に、非常時でも、平常時と同様の手法で情報の収集作業や確認作業を行うことができるようにすることを、第1の課題とする。
【0012】
さらに本発明では、必要に応じて、平常時および非常時の双方における事象の発生状況を確認できるようにすることを、第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるエリア監視システムは、監視対象のエリア内で生じた事象を示す事象情報を位置情報と共に送信する携帯端末装置と、携帯端末装置からの送信情報を蓄積し、その蓄積情報を用いてエリア内を監視するための表示を行う管理システムとを具備する。
携帯端末装置は、平常時における事象情報および非常時における事象情報のいずれを入力するかを選択するためのインタフェース画面を表示して、この表示に対する選択操作を受け付けると共に、選択操作を受け付けたことに応じて入力用のインタフェース画面を表示して、前記選択に対応する事象情報の入力を受け付ける入力処理手段と、入力処理手段が受け付けた事象情報を、この事象情報が平常時および非常時のいずれに関係するかを示す種別情報ならびに前記位置情報と共に管理システムに送信する情報送信手段とを具備する。また、管理システムは、以下に示すデータベース、指定受付手段、地図画像作成手段、地図画像表示手段を具備する。
【0014】
データベースでは、携帯端末装置から受信した事象情報および位置情報が、これらの情報と共に受信した種別情報に基づき、平常時および非常時のいずれに関係するかを識別できるようにして保存される。指定受付手段は、平常時における事象の表示、非常時における事象の表示、および平常時と非常時の双方における事象の表示のいずれかの指定を受け付ける。
【0015】
地図画像作成手段は、上記のデータベース内の情報を用いて、事象と位置情報との関係を示す画像を少なくとも平常時と非常時とに分けて作成する機能を具備し、この機能により作成される画像を用いて、指定受付手段が受け付けた指定に対応する事象を表す地図画像を表示するための画像データを作成する。地図画像表示手段は、地図画像作成手段により作成された画像データによる地図画像を表示する。
【0016】
上記のシステムにおいて、スマートフォンなどのGPS機能を有する携帯型通信端末を携帯端末装置として使用すれば、GPS機能により取得した位置情報を入力された事象情報や種別情報に組み合わせて送信することができる。このほか、携帯端末装置の画面に地図を表示して、その地図上の一地点を指定する操作により位置情報を割り出したり、郵便番号または住所を入力し、その入力情報から位置情報を割り出すようにしてもよい。
管理システムは、サーバと所定数の端末装置とにより構成することができるが、これに限らず、たとえば1台のコンピュータと画像を表示するためのディスプレイ装置とにより構成してもよい。また、上記の携帯型端末装置も、管理システム内の端末装置の1つとして機能させることもできる。
【0017】
本発明によれば、携帯端末装置の使用者は、平常時における事象情報および非常時における事象情報のいずれを入力するかを選択した後に、その選択に応じて表示されたインタフェース画面に従って事象情報を入力し、送信することができる。平常時および災害時とも同じ携帯端末装置が使用され、入力された事象情報と共に、その事象情報の種別を示す種別情報が送信されるので、入力用のインタフェース画面の構成や入力方式を大幅に変更しなくても済む。したがって使用者は、平常時に頻繁に使用して入力操作に慣れておけば、非常時でも、戸惑うことなく入力を行うことができる。
【0018】
地図画像を確認する担当者も、非常時用の特別なシステムを立ち上げる必要がなく、表示の対象を切り替える操作を行うことによって、平常時の状況を表す表示と非常時の状況を表す表示とを切り替えることができる。切り替えによって、表示される画像の状態は変化するが、地図画像を示す画面のレイアウト構成や各種アイコンなどのユーザインタフェースを変更しなくとも対応できるので、担当者は、違和感なく、作業を進めることができる。
【0019】
さらに、平常時および非常時の双方における事象を表示することを指定すれば、双方の状態を同じ地図に反映させた表示をすることができる。よって、たとえば非常時に、平常時によく異常が生じた場所を特定して重要監視対象に設定したり、非常時になる直前に生じていた事故の現場を確認するなど、平常時に蓄積された情報を非常時でも有効に活用することが可能になる。
【0020】
上記システムの携帯端末装置に関する一実施形態では、入力処理手段は、入力用のインタフェース画面として、平常時の情報と非常時の情報とに共通する入力項目を含む複数の入力項目毎の入力欄が設けられた画面を表示し、これらの入力欄に入力された情報を含む事象情報を作成する。このようにすれば、統一されたフォーマットによる事象情報を作成することができ、管理システムで個々の情報を切り分けたり分析をする場合の処理が容易になる。また、平常時の情報と非常時の情報とに共通する入力項目を必須入力項目としておけば、作業者は、平常時に積んだ経験に基づき、非常時にも難なく情報を入力することが可能になる。
【0021】
他の実施形態による携帯端末装置は撮像部を具備し、入力処理手段は、入力用のインタフェース画面において、撮像部により生成された画像の送信を指定する操作を受け付けて、当該画像を含む事象情報を作成する。
【0022】
上記の実施形態によれば、事故や異常が生じている現場の写真を事象情報として送信することができる。したがって、たとえばこの写真と共に送信された位置情報に基づき、写真が送付された現場がマーキングされた地図画像を表示すると共に、そのマーキングに写真情報へのリンク情報を設定すれば、現場から離れた場所でも、現場の状況を容易に確認することが可能になる。
【0023】
つぎに管理システムにかかる一実施形態では、データベースにおいて、携帯端末装置から受信した情報毎にその受信情報を格納するためのレコードが作成されて、複数のレコードが蓄積される。また、地図画像処理手段は、データベース内の各レコードを、種別情報毎および位置情報が整合するもの毎に分類し、この分類により生じた各グループの最新のレコードを用いて、平常時における事象と位置情報との関係を示す画像、および非常時における事象と位置情報との関係を示す画像を作成して、両画像を監視対象のエリア内の基本の地図画像に重ね合わせた画像データを作成する。地図画像表示手段は、地図画像処理手段により作成された画像データに含まれる画像のうち、基本の地図画像および指定受付手段が受け付けた指定に対応する画像を表示する一方、当該指定に対応しない画像を非表示状態にする。
【0024】
上記の実施形態によれば、平常時の情報と非常時の情報とを区分けすることなく、受信の都度、受信情報を含む1つのレコードを作成してデータベースに保存すれば良いので、データベースの構成が簡単になり、保存や読み出しに要する負荷も軽減される。
また、事故や異常が生じた場所において、新しい情報が送信される都度、その新情報に基づき地図画像を書き換えることができる。また平常時から非常時に転じて、非常時の情報が送信された場合にも、直ちにそれを地図画像に反映させることができる。
【0025】
上記の実施形態においては、地図画像処理手段に、分類により生じた各グループの最新のレコード毎に、そのレコード内の位置情報に対応する位置に当該レコード内の事象情報および種別情報の内容を表すマークが配置された地図画像を作成させるようにしてもよい。このようにすれば、平常時および非常時の別に、それぞれにおいて生じた事象の内容や位置を視覚により容易に判別することができるので、利便性が高められる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、携帯端末装置の使用者は、非常時でも、平常時と同様の方法で事象情報を入力することができるので、戸惑うことなく、容易に情報を入力して送信することができる。また、地図画像を確認する担当者も、表示を切り替える操作によって、平常時における状況確認から非常における状況確認に切り替えて、使い慣れたユーザインタフェースを用いて確認作業を進めることができる。
このように、非常時における情報の収集作業や確認作業を平常時と同様の手順で実施することができるので、非常時への対応に容易に移行することができ、スムーズに作業を進めることができる。また非常時においても、必要に応じて、非常時の情報と共に平常時の情報を表示して、平常時に蓄積された情報を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用された水道設備の監視システムの構成例を示す図である。
【図2】携帯端末装置の機能ブロック図である。
【図3】管理システム側のサーバの機能ブロック図である。
【図4】PC端末における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図5】PC端末における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図6】PC端末における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図7】PC端末における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図8】PC端末における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図9】PC端末における施設状況の確認用画面の例を示す図である。
【図10】携帯端末装置におけるログオン画面の例を示す図である。
【図11】携帯端末装置におけるメインメニュー画面の例を示す図である。
【図12】携帯端末装置における報告入力用のメニュー画面の例を示す図である。
【図13】携帯端末装置における報告情報の入力画面の例を入力例と共に示す図である。
【図14】携帯端末装置における地図画像の表示画面の例を示す図である。
【図15】携帯端末装置が報告情報の送信に関して実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】サーバにおける地図画像の作成処理に関する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明が適用された水道設備の監視システムの構成例を示す。
このシステムは、給水の対象となっている地域における各種水道設備の状態を監視したり、事故や異常が発生した場合に、その現場付近の状況を地図画像などにより確認するためのもので、現場の状況を報告する担当者(以下、「報告者」という。)が所持する携帯端末装置1と、管理部門に設置されるサーバ・クライアントシステム2(以下、「管理システム2」という。)とを、主要な構成とする。
【0029】
管理システム2には、サーバ20と、端末装置として機能する複数台のパーソナルコンピュータ21(以下、「PC端末21」という)とが含まれる。サーバ20は、図示しない中継装置や基地局を介して携帯端末装置1との通信を行う。
【0030】
PC端末21は、厳密には、デスクトップ型、ラップトップ型などの複数種類に分かれる。各PC端末21は、LAN回線を介してサーバ20と接続されるが、これに限らず、サーバ20から離れた場所に配置されて、無線やインターネットなどを介してサーバ20と通信をするPC端末21も存在する。また、PC端末21に代えて、タブレット型の機器などをクライアントとして機能させることもできる。
さらにサーバ20は、インターネットなどを介して、公共施設内のディスプレイ装置や一般市民が所持するコンピュータに情報を配信することもできる。
【0031】
この実施例の携帯端末装置1は、前面にタッチパネルディスプレイ10が設けられ、GPS機能、撮影機能、音声入力機能を具備する汎用のスマートフォンであるが、これに限らず、携帯電話,PDA,タブレット型機器,ラップトップ型PCなど、持ち運び可能な他の機器を携帯端末装置として機能させてもよい。また、装置内の制御部には、管理システム2に対する端末装置として機能させるための専用のアプリケーションソフトウェアが組み込まれる。このアプリケーションソフトウェアによって、携帯端末装置1のタッチパネルディスプレイには、専用のグラフィカル・ユーザ・インタフェース(以下、「GUIインタフェース」という。)が立ち上げられる。
【0032】
図2は、携帯端末装置1の機能ブロック図である。
同図の構成のうち、GUIインタフェース11、出力処理部12、ログ保存部13は、専用のアプリケーションソフトウェアにより設定された機能であり、撮影処理部14,音声入力部15,位置情報取得部16は、スマートフォンが通常備える汎用の機能である。
【0033】
GUIインタフェース11は、タッチパネルディスプレイ10に種々のインタフェース画面を表示して操作を受け付ける。撮影処理部14は、GUIインタフェース11が撮影指示を受けたことに応じて付属のカメラを起動し、ユーザ(報告者)のシャッタ操作に応じて撮影を行わせ、生成された画像データを取得する。音声入力部15は、GUIインタフェース11が音声による情報入力の指示を受けたことに応じて付属のマイクからの音声信号を取り込み、この信号をディジタル変換することにより音声データを作成する。
【0034】
位置情報取得部16は、GUIインタフェース11が後記する「ログ記録」のアイコンの選択を受け付けた場合や、報告情報の入力画面を立ち上げたことに応じて起動し、GPSシステムにより検出された位置情報(緯度情報と経度情報との組み合わせ)を受信する状態を設定する。入力画面が立ち上げられたときに取り込まれた位置情報は、報告情報に自動的に組み入れられ、送信が行われるまでに装置が移動した場合には位置情報も更新される。ただし、位置情報の入力はGPS機能によるものに限らず、後記する地図画面上で入力対象の場所を指定する方法や、住所を入力する方法により行うこともできる。
【0035】
この実施例では、通常の業務において送信される報告情報を「平常時の報告情報」とし、地震などの災害が発生した場合の報告情報を「災害時の報告情報」として、切り分けて管理するために、携帯端末装置1において報告情報を入力する前に、平常時および災害時のいずれの情報を入力するかを報告者に選択させるようにしている。
報告情報には、位置情報のほか、送信の時刻を示す時刻情報、携帯端末装置1の識別情報(たとえば電話番号であるが、メールアドレスや製造番号などでもよい。)、および上記の選択結果を示す種別フラグが自動的に組み入れられる。
【0036】
GUIインタフェース11は、情報入力を受け付けた後に送信操作が行われたことに応じて、入力された情報を含むkml形式の報告情報を編集する。出力処理部12は、この報告情報を圧縮してサーバ20に送信し、ログ保存部13は、報告情報を送信済み情報として保存する。
また、GUIインタフェース11は報告情報の保存を指示する操作を受けてkml形式の報告情報を編集する場合もある。その場合の報告情報は、ログ保存部13により未送信情報として保存される。
【0037】
撮影処理部14により作成された画像データや音声入力部15により作成された音声データも、GUIインタフェース11によって、位置情報、時刻情報、識別情報、種別フラグを含む報告情報として編集される。これらの報告情報も、上記と同様のkml形式の情報となり、圧縮されてサーバ20に送信される。また、入力画面での入力の途中で画像データや音声データが作成された場合には、入力情報による報告情報に、画像を含む報告情報や音声を含む報告情報へのリンク情報が付加される。
サーバ20に届いた報告情報は解凍された後に、1つのレコードとして、以下に述べる報告データベース201内に保存される。
【0038】
管理システム2のサーバ20には、報告データベース201を含むリレーショナル・データベースや、オープンソースのGISソフトウェアを利用して設計された地図画像作成用のアプリケーションが組み込まれる。これらにより、サーバ20には、平常時および災害時の別に、報告情報を反映したマーキングが施された地図画像を作成し、その地図画像のデータをPC端末に提供する機能が設定される。
【0039】
図3は、サーバ20の主要な機能を示す。
この実施例のサーバ20には、主要な情報記憶部として、先に述べた報告データベース201のほか、地図データベース202、設備データベース203が設けられる。
地図データベース202には、管理対象の地域の基本の地図情報が格納されている。設備データベース203には、浄水場などの水道施設について、位置情報、施設の種別、施設内の構成の模式図、詳細見取り図などの情報が格納される。また管路の分布パターンや管路内の設備に関する情報なども、設備データベース203に格納される。
なお、地図データベース202をサーバ20に設けずに、外部のシステムから基本の地図情報を取得してもよい。
【0040】
そのほか、サーバ20には、保存処理部211,地図情報取得部212,検索処理部213,分析処理部214,地図画像作成部215,指定受付部216,出力処理部217などの機能が設けられる。
保存処理部211は、各携帯端末装置1から送信された保存情報を解凍して、報告データベース201に保存するためのものである。
【0041】
地図情報取得部212は、地図データベース202内の基本の地図情報を読み出す。 読み出された地図情報は地図画像作成部215に渡されて、基本の地図画像(背景画像)が作成される。
なお、以下の説明では、この基本の地図画像やこれに重ねられる各レイヤの画像が、管理対象の水道設備の全てを含む範囲を対象に作成されるものとするが、管理範囲を複数の領域に分割して領域毎に地図画像を作成しても良い。
【0042】
検索処理部213は、設備データベース203および報告データベース201を検索して、基本の地図画像に対応するエリアに含まれる設備や、このエリアから送信された報告情報を抽出する。地図画像作成部215は、抽出された情報を用いて、基本の地図画像に重ねる複数の画像(以下、「マーキング画像」という。)を作成する。これらのうち、報告情報に基づき作成されるマーキング画像には、報告情報が送信された位置および報告の種別を示すマークが配置されると共に、そのマークに報告情報へのリンク情報(該当する報告情報の格納先のアドレス)が設定される。
【0043】
詳細は後述するが、この実施例のサーバ20では、報告データベース201に蓄積された各報告情報内の種別フラグに基づき、平常時の報告情報と災害時の報告情報とを別々に処理することにより、平常時および災害時につき、それぞれ複数種のマーキング画像を作成する。また、平常時および災害時のいずれについても、検索処理部213により位置情報が整合する複数の報告情報が抽出された場合には、その中の最新の報告情報(時刻情報が示す日時が最も新しいもの)を用いてマーキング画像を作成する。
なお、位置情報の整合とは、各位置情報が示す地点の間の距離があらかじめ定めた所定距離以内となる状態をいう。または、各地点に対応する住所に基づき、たとえば番地までが一致する状態を位置情報が整合しているとみなしてもよい。
【0044】
さらに、マーキング画像に採用された報告情報の中に、断水、水のにごり(以下、単に「にごり」という。)、水圧の低下(以下、「減圧」という。)など、管路の異常(関係者には「管路事故」として提示される。)を示すものがある場合には、分析処理部214が起動する。分析処理部214は、異常を示す報告情報中の位置情報により設備データベース203の情報を参照して、同様の異常が生じている範囲を推定する。この推定結果は地図画像作成部215に渡されて、異常の範囲を示すマーキング画像が作成される。
【0045】
地図画像作成部215は、基本の地図画像を背景画像とし、各マーキング画像をそれぞれ個別のレイヤに格納して背景画像に重ねる。
指定受付部216は、端末PC21から、表示対象のエリアの指定を受け付ける。出力処理部217は、この指定の受付に応じて、地図画像作成部215により作成された地図画像から指定された範囲の画像を抽出し、これをエリア指定を送信した端末PC21に送信する。
【0046】
指定受付部216は、地図画像以外の情報の表示の指定を受け付ける場合もある。この指定は,検索処理部213に渡されて、指定に応じた検索処理が行われる。
たとえば、PC端末21において、地図画像内にマーキングされた報告場所に設定されたリンク情報が指定された場合には、そのリンク情報に紐付けられている報告情報を報告データベース201から読み出す。また、特定の施設が指定された場合には、設備データベース203からその施設に関する基本情報を読み出すと共に、報告データベース201から当該施設に関して保存されている報告情報を、新しいものから順に全て、または一定数まで読み出す。
これらの検索結果は、出力処理部217によって、あらかじめ定められた形式による画面情報に編集され、端末PC21に送信される。
【0047】
端末PC21には、サーバ20から送信される地図画像などの情報を表示するためのアプリケーションが組み込まれている。
図4〜図8は、このアプリケーションにより、PC端末21に表示される画面の例を示す。この画面は、地図画像を表示するためのエリア220(以下、「地図表示エリア220」という。)が大半を占めるが、地図表示エリア220の左端縁に沿って、操作メニューなどを表示するためのメニューエリア221が設けられる。また地図表示エリア220の上方には、表示の切り替えや印刷などに関するメニューを含むツールバー222,223が設定される。
【0048】
メニューエリア221には、「凡例」「選択」「タスク」と名付けられた3種類のメニューが設けられている。各メニューは折り畳み構造になっており、図4,5,6,8の各例では、「凡例」の詳細メニューが展開され、図7の例では、「タスク」のメニューが展開された状態となっている。
【0049】
「凡例」内のメニューは、地図表示エリア220で有効にするレイヤを指定するためのもので、各レイヤでの表示対象のマークと当該マークが示す情報を示す文字列とが、情報の種に基づき設定された階層構造に従って配列されている。各図では、この階層構造に基づき、各レイヤをA,B,C,Dの4つのグループに分けて示す。以下、各グループをA群,B群,C群,D群という。
【0050】
A群は、水道設備に関するマーキング画像が格納されるレイヤのグループである。このグループのマーキング画像は、設備データベース203から読み出された情報に基づき作成されたものである。
B群は、平常時の報告情報に基づくマーキング画像が格納されるレイヤのグループであり、C群は災害時の報告情報に基づくマーキング画像が格納されるレイヤのグループである。これらのグループのマーキング画像は、報告データベース201から読み出された情報に基づき作成されたものである。
【0051】
D群は断水などの異常が生じている範囲を示すマーキング画像(図3の分析処理部の処理によるもの)が格納されるレイヤのグループである。このD群のレイヤには、分析処理部214による推定結果に基づき、異常が生じている範囲が所定の色彩で着色されたマーキング画像が格納される。メニューエリア221には、「断水」「減圧」「にごり」の各異常にそれぞれマーキング画像と同じ色彩の矩形マークが対応づけられている。
【0052】
PC端末21のユーザ(管理部門の担当者)は、メニューエリア221におけるレイヤの選択を切り替えることによって、地図表示エリア220内の画像のマーキング状態を、様々に変更することができる。
【0053】
以下、図4〜図8を参照して、ユーザの操作に伴う画面表示の変化の例を説明する。
まず図4は、災害が発生したことにより立ち上げられた初期の画面である。この例では、A群およびC群のレイヤが選択されている。なお、水道設備によるマーキングが複雑になるのを避けるために、A群については、水道施設のみが選択されているものとする。
【0054】
上記のレイヤの選択に伴い、地図表示エリア220内の地図画像の2箇所に水道設備のマークM1が表示されている。また、災害時の管路事故報告が送信された場所に、その報告の種別を示すマークM2が表示され、その近傍位置に、報告情報を送信した携帯端末装置1の電話番号、報告日時、報告内容(減圧)を示す文字情報が表示されている。
【0055】
ユーザがマークM2の上でクリック操作を行うか、ツールバー222の「点検情報を表示」の項目を選択すると、図5に示すように、画面上に、マークM2が示す場所から送信された報告情報の全内容を示す小ウィンドウ225が表示される。この例のウィンドウ225には、表示されている報告情報と一緒に送信された画像データへのリンクが設定された文字列「画像へ」も表示されている。
【0056】
図6は、図4の表示からしばらくして、さらに2箇所からの報告情報を受信して表示が更新された場合の表示例を示す。この例の画面では,新たな報告情報が送信された場所にもそれぞれマークM2や文字情報が表示されている。また、この例では、C群に加えてD群のレイヤが選択され、これに伴い、「減圧」が生じている範囲および「にごり」が生じている範囲が、それぞれ対応する色彩により着色されている。
【0057】
これらの範囲は、分析処理部214が、異常を示す報告情報(図示例では「減圧」および「にごり」)に基づき推定した結果に基づくものである。
この推定のアルゴリズムは種々考えられる。たとえば、あらかじめ管理対象の地域を管路の分布や住所などに従って複数の領域に分割して、各領域を位置情報に対応づけて設備データベース203に保存しておき、異常を示す報告情報が送信された地点が含まれる領域を、異常発生範囲として推定してもよい。または、報告情報が送信された地点を中心とする所定大きさの円を設定して、その円を異常発生範囲と推定したり、同内容の報告情報が3点以上の場所から送信されたことに応じて、これらの地点を結ぶ多角形領域を異常発生範囲であると推定してもよい。
【0058】
このように、D群のレイヤには、報告情報に基づき推定された異常発生範囲が表示されるが、この範囲は担当者の判断に応じて変更することができる。また、異常発生範囲がマーキングされていない状態でも、担当者の操作に応じて異常発生範囲を書き込み、これをサーバ20に送信して、サーバ20内の地図画像に反映させることもできる。
【0059】
メニューエリア221内の「タスク」のメニューには、このD群のレイヤに対する編集作業を行うための操作メニューが含まれている。操作メニューは、「タスク」を展開して選択する方法のほか、ツールバー222の「断水エリア入力」の項目を選択することによっても呼び出すことができる。
【0060】
図7は、この操作メニューを呼び出して、図6に示した表示を変更した例を示す。
図示の操作メニューには、範囲を指定するためのボタン(「長方形」「ポリゴン」)、指定した範囲の状況を指定するためのボタン(「断水」「減圧」「にごり」「解除」)、指定を確定するためのボタン(「登録」、全ての登録を解除するためのボタン(「全解除」)が含まれる。図7の例では、範囲指定や状況指定のボタンを用いて、「にごり」の範囲を、図6の状態より拡大している。また、『影響なし』という報告が送信されている場所を含む所定範囲の「減圧」の表示が解除されている。
【0061】
図8は、図7に示した編集作業の後に、再びレイヤのメニュー表示を呼び出し、B群のレイヤの選択を追加することにより更新された画面を示す。この画面の地図表示エリア220には、これまでに表示されたマークM1,M2に加えて、平常時の報告情報が送信された場所を示すマークM3が現れている。このマークM3の近傍にも、報告情報を送信した携帯電話の電話番号、報告日時、報告の内容を示す文字情報が表示される。
マークM3にも、対応する報告情報へのリンク情報が設定されており、マークM3上でのクリック操作によって、図5の例と同様に、該当する報告情報を呼び出すことができる。
【0062】
メニューエリア221内のB群およびC群のレイヤの名称や、携帯端末装置1の後記するインタフェース画面(図12参照)に示すように、平常時および災害時ともに、「管路事故報告」「施設点検報告」「応急給水報告」の3種類の報告をすることができ、さらに災害時には「貯水量報告」をすることができる。いずれの報告でも、初回の報告情報が送信された場所やその近隣で、引き続き、新たな報告情報を送信することができ、その送信に応じて、マークM2,M3に対応づけられる文字情報やリンク情報も、最新の報告情報に対応するものに更新される。ただし、「管路事故報告」や「応急給水報告」については、事態が終結したという内容の報告情報が送信されたことをもって、マークM2,M3の表示を消失させる。
【0063】
したがって、「管路事故報告」や「応急給水報告」のマークが表示されている間は、復旧作業や給水作業は終了しておらず、マークが消失したことによって作業が終了したということになる。また、図8の例のように、災害時に通常時のレイヤを選択したときに通常時の「管路事故報告」を示すマークが表示された場合には、その表示は、災害が発生する前に管路事故が発生しており、それがまだ終結していないことを意味することになる。通常時の「応急給水報告」のマークが表示された場合も、同様である。
よって、表示を確認する担当者は、災害時にもC群と共にB群のレイヤを選択することにより、災害の発生後に生じた事象だけでなく、災害の発生前に生じていた事象を認識して、必要な対策を考えることが可能になる。
【0064】
過去に報告情報が送信された場所毎に、その場所につき送信された全ての報告情報を呼び出して表示することもできる。この機能を利用すれば、たとえば、災害時に、これまで頻繁に事故が発生している場所を特定して、その場所の状態を確認するように報告者に指示を出したり、図7に示した「断水エリア入力」を利用する場合に、過去に生じた異常の広がり度合いを参照して今回の異常の範囲を判別するなど、蓄積された情報を活用しながら対応を考えることができる。
【0065】
ツールバー222の「平常時施設状況」「災害時施設状況」「貯水量を表示」の各項目も、「断水エリア入力」と同様に、タスク内のメニューに含まれている。「平常時施設状況」および「災害時施設状況」は、定期的な点検の対象に設定されている施設の状況を確認するためのもので、共通の操作メニューにより利用することができる。
【0066】
図9は、「災害時施設状況」を選択して、ある浄水場に関する情報を呼び出した場合の表示例である。この画面は、図4〜図8の画面に重ねて、または地図画像表示エリア220に置き換えて表示される。
【0067】
この例の画面には、浄水場の構成を示す模式図230が示されると共に、この浄水場に関して送信された報告情報の一覧リストの表示欄231や、管理担当者により入力されるコメントの表示欄232が含まれる。欄231には、災害時の報告情報として携帯端末装置1から送信された情報が、1行単位の概要に編集されて、最新のものから順に時系列に並べて表示される。また、模式図230には、これらの報告情報により報告された異常の発生箇所が、着色や警報マークにより明示されている。
【0068】
欄231の中の各行には、報告データベース201内の該当情報へのリンクが設定されており、いずれかの行がクリック操作されると、画面に図5に示したのと同様の小ウィンドウ225が呼び出される。この表示により、担当者は、報告情報を詳細に確認することができる。さらに、この報告情報に画像データや音声データのリンクが設定されている場合には、これらも呼び出して確認することができる。
【0069】
担当者は、上記の操作により異常の状態を確認して、コメントの入力欄232を有効にし、判断結果や現場への指示などのコメントを入力することができる。この入力の後に送信操作が行われると、コメントがサーバ20に送信されて登録され、関係者全員がコメントの表示を確認できる状態になる。さらに、コメントを入力した担当者以外の人(たとえば上司)が、コメントを修正したり、コメントを追加することも可能である。
また、この施設の状況を確認する画面でも、災害時の報告情報に基づく表示と共に、過去の平常時の報告情報を呼び出すように設定することができる。
【0070】
地図画像の表示画面のツールバー222の「貯水量を表示」が選択されると、管轄下にある各貯水場の貯水量を表示するウィンドウ(図示せず。)が表示される。このウィンドウには、各貯水場における最新の「貯水量報告」に基づく貯水量が表示される。
なお、この実施例では、「貯水量報告」を災害時のメニューにのみ設定しているが、平常時に関しても、たとえば「施設点検報告」の定期的な報告項目に組み込み、上記の「貯水量を表示」により報告情報を確認することができる。
【0071】
つぎに、携帯端末装置1のGUIインタフェースについて説明する。
図10は、最初のログオン画面を示す。このログオン画面には、平常時の報告を選択するためのボタン101と、災害時の報告を選択するためのボタン102とが、上下に並べて配備される。
【0072】
上記のログオン画面において、報告者がボタン101,102の一方を操作すると画面は、図11(1)に示すようなメインメニュー画面に変化する。
このメインメニュー画面には、6種類のアイコン(符号なし)が表示される。これらのうち「新規点検」のアイコンが操作されると、図11(2)に示すように、3つのアイコン104,105,106が横並びに配列された帯状領域103が現れる。
【0073】
左端のアイコン104が操作された場合には、報告情報を手操作で入力するためのインタフェース画面に移行する。中央のアイコン105が操作された場合には、撮影用のインタフェース画面が呼び出され、右端のアイコン106が操作された場合には、音声入力用のインタフェース画面が呼び出される。報告者は、これらのインタフェース画面を用いて報告情報に含める情報を入力する。
【0074】
メインメニュー画面の「点検更新」のアイコンは、過去の報告の内容を更新する処理を選択するためのものである。「ログ記録」のアイコンは、GPSにより取得した位置情報を定期的にサーバ20に送信することを指定するためのものである。「地図画面」のアイコンは、サーバ20から地図画像の送信を受けて、受信した地図画像を表示することを選択するためのものである。
「点検項目更新」のアイコンは、オプションの点検項目を追加したり、削除する処理を選択するためのものである。「点検送信」のアイコンは、サーバ20に報告情報を送信するためのもので、報告情報が作成されている場合にのみ有効になる。
【0075】
図12は、「新規点検」のアイコンと帯状領域103内のアイコン104との操作により呼び出される報告入力用のメニュー画面を示す。ログオン画面で「平常時」のボタン101が操作された場合には図12(1)に示す画面が表示され、「災害時」のボタン102が操作された場合には図12(2)に示す画面が表示される。
【0076】
各画面には、それぞれ「管路事故報告」「応急給水報告」「施設点検報告」の各報告を選択するためのボタン111,112,113や、見出しに追加する情報を入力するための入力欄115が設けられる。また、入力欄への入力のために、文字キーを含む操作部116が表示される。さらに、災害時報告用のメニュー画面にのみ、「貯水量報告」のボタン116が設けられる。
【0077】
上記のとおり、最初のログオン画面で平常時および災害時のいずれが選択された場合でも、図11に示した共通のメインメニュー画面が表示される。さらに、報告用のメニュー画面も、平常時と非常時との間でレイアウトが統一され、表示されるメニューも殆ど同じである。以下の処理でも、平常時と災害時とに共通するメニューについては、ほぼ同じ構成の画面が提示される。
【0078】
図13は、災害時報告用のメニュー画面で「管路事故報告」のボタン111が選択された場合に表示される入力画面の例を示す。
この例の画面には、複数の入力項目毎に入力欄120が設けられ、画面をスクロールしながら各入力欄120に情報を入力する構成となっている。図13(1)は初期状態の画面を示し、図13(2)は情報の入力が行われている途中の画面の状態を示す。
【0079】
図中、右端に▼印が付いている入力欄120は選択方式になっており、▼をタッチすることにより選択肢が呼び出され、選択操作が行われると、その操作により選択された選択肢が入力される。▼印が付いていない入力欄120に関しては、欄内がタッチされたことに応じて図12に示したのと同様の操作部116が表示され、キー操作に応じて欄内に情報が入力される。
【0080】
1番目および2番目の欄121,122には、位置情報取得部16により取り込まれた緯度および経度が自動入力される。また画面の右上に、撮影を指示するためのアイコン123が表示される。
【0081】
図示していないが、図13に示す画面が下端部までスクロールされると、登録ボタンが現れる。この登録ボタンの操作に応じて報告情報のデータファイルが作成される。このデータファイルは、送信の操作に応じて圧縮されて、サーバ20に送信される。
【0082】
アイコン123の操作に応じて撮影が行われた場合には、その撮影による画像データを含む報告情報が作成されると共に、各入力欄120への入力情報による報告情報に画像データへのリンク情報が設定され、2つの報告情報が一緒に送信される。
一方、図11(1)に示したアイコン105の操作に応じて撮影が行われた場合には、撮影に続いて「点検送信」のアイコンを操作することにより、画像入りの報告情報が単独で送信される。
【0083】
音声データによる報告情報も、画像データと同様に、2通りの方法で送信することができる。また、画像データによる報告情報と音声データによる報告情報とを一緒に送信することもできる。なお、音声データは、報告者の肉声の録音データに限らず、現場での異常音の録音データを作成することもできる。また、携帯端末装置1に音声認識機能が組み込まれている場合には、図13に示した入力画面の表示下で入力した音声データをテキストデータに変換し、これを入力欄120に入力することもできる。
【0084】
なお、図11に示したメインメニュー画面での「点検更新」のアイコンが操作された場合には、メモリ内に保存された報告情報のリストが表示される。そのリスト中の1つが選択されると、図13と同様の構成の画面により、選択された報告情報が表示される。報告者は、この表示の中で変更したい箇所のみを変更した後、新規の報告情報と同じ方法でサーバに送信することができる。
【0085】
図14(1)は、メインメニュー画面の「地図画面」のアイコンが操作された場合に読み出される画面の例を示す。この例では、サーバ20から現在地付近の基本の地図画像の送信を受けて表示すると共に、その画像上に、過去に自装置から報告情報を送信した場所を示すマークm2,m3が重ね合わせられている。これらのマークm2,m3は、PC端末21で表示されるマークM2,M3と同様の形態であるが、サーバ20からの送信情報によるものではなく、携帯端末装置1に保存されているログ情報により表示されたもの、すなわち、携帯端末装置1で過去に送信された報告情報を示すものである。なお、表示される地図画像はサーバ20から送信されるものに限らず、たとえば、インターネットを介して外部の地図提供システムから地図画像の配信を受けて、この画像を表示してもよい。
【0086】
画面の右手側縁には倍率変更用のバー124が設けられ、左手側縁には上下に並ぶ一対のアイコン125,126が設けられる。また画面の中央には、位置を表す十字マーク128が表示される。地図画像の表示はスクロール操作に応じて変動するが、十字マーク128の表示位置は常に画面の中央に維持される。これにより、マーク128が示す位置情報が変化する。アイコン125が操作されると、図12に示した報告入力用のメニュー画面に移行し、新たな報告情報を入力することができるが、この場合には、十字マーク128が置かれている位置の緯度および経度が位置情報として入力される。
【0087】
アイコン126は、地図画像上に表示された過去の報告情報を削除する目的に使用される。たとえば、地図上のマークm2をタッチした後にアイコン126をタッチすると、マークm2が消去されると共に、当該マークm2に対応する報告情報もメモリから消去される。または、アイコン126の操作により、メモリに保存されている報告情報のリストを呼び出し、そのリストで消去対象の情報を選択して削除してもよい。これらの処理によれば、古い報告情報が増えた場合に不要な情報を削除することができる。
【0088】
また、画面の上部の中央位置には、地図画像の表示の切り替えメニューを呼び出すためのボタン127が設けられる。詳細な図示は割愛するが、ボタン127をタッチすると、現在のログオン状態に対応するレイヤの選択メニューが呼び出され(たとえば「災害時」のボタンによりログオンしている場合には、PC端末21におけるC群およびD群に相当するレイヤの選択メニューが表示される。)、基本の地図画像が表示される状態から、選択されたレイヤのマーキング画像が追加された地図画像が表示される状態へと変化する。図12(2)は、この変化後の表示例を示すもので、サーバ20で作成されたマークM2や、異常範囲を表す着色が現れている。
【0089】
以上に説明したように、この実施例の携帯端末装置1では、ログオン画面で平常時および災害時のいずれかの報告を選択した後は、共通のメニュー画面により処理を選択し、以後もほぼ同じ構成の画面により作業を進めることができる。したがって、報告者は、災害時に緊急の報告をしなければならない状態下でも、平常時に馴染んだ操作により速やかに報告情報を送信することができる。
【0090】
また、PC端末21により、報告情報に基づく地図情報を確認する担当者も、レイヤの選択を切り替えることにより、平常時の表示から災害時の表示に速やかに切り替えることができ、平常時と同じ手順で確認作業を進めることができる。また、災害時にも、必要に応じて平常時の情報を呼び出し、状況の分析や対応策の検討に活用することができるので、利便性が大幅に高められる。
【0091】
以下、サーバ20および携帯端末装置1において実施される主要な処理の流れを説明する。
【0092】
図15は、携帯端末装置1が報告情報の送信に関して実行する処理の手順を示す。
まず、最初のステップS101では、図10に示したログオン画面を表示して、報告の種別の選択を受け付ける。種別の選択とは、平常時の報告および災害時の報告のいずれを入力するかを選ぶことであり、ボタン101,102の操作により行われるものである。
【0093】
選択操作が行われると、ステップS102において、選択された種別用のフラグ(種別フラグ)を作業メモリに保存した後にステップS103に進み、図11に示したメインメニュー画面を表示する。
【0094】
メインメニュー画面において「新規点検」または「点検更新」のアイコンが操作されると、ステップS104が「YES」となってステップS105に進み、選択されている種別用のインタフェース画面を表示する。
【0095】
たとえば「新規点検」のアイコンが操作された場合に「平常時」が選択されていると、図12(1)の画面が表示され、「災害時」が選択されていると、図12(2)の画面が表示される。また、「点検更新」のアイコンが操作された場合に「平常時」が選択されていると、過去の「平常時」に送信された報告情報のリストが表示され、「災害時」が選択されていると、過去の「災害時」に送信された報告情報のリストが表示される。ただし、リストの表示については、「平常時」と「災害時」とを分けることなく、常に双方の報告情報を含むリストを表示してもよい。
【0096】
ステップS106では、メニュー画面内で選択された処理に応じた情報入力処理が実行される。いずれの入力でも、図13に例示したような入力画面が立ち上げられて、選択肢の選択操作やテキストの入力操作が行われる。平常時の入力画面と災害時の入力画面とは、前者での入力項目が後者より若干多い以外は同じである。また、いずれの入力画面でも、GPS機能により取得した現在地の緯度情報および経度情報が入力される。
さらに撮影や音声による情報入力の処理が行われる場合もある。
【0097】
登録を指示する操作が行われると、情報入力処理は終了し、ステップS107において、入力された情報、位置情報、時刻情報およびステップS102で保存した種別フラグを含む報告情報が作成される。
この後、送信操作が行われると(ステップS108が「YES」)、上記の報告情報を保存すると共に、当該報告情報を圧縮してサーバ20に送信する(ステップS109)。送信操作ではなく、保存操作が行われた場合(ステップS108が「NO」、ステップS110が「YES」)には、報告情報の保存のみを実施する(ステップS111)。
【0098】
この後、ログオフ操作が行われると、ステップS112が「YES」となって処理を終了する。ログオフ操作が行われない場合にはステップS103に戻り、再びメインメニューが表示される。
なお、メインメニューで「新規点検」や「点検更新」以外のアイコンが操作された場合(ステップS104が「NO」)には、そのアイコンに対応する処理(ステップS113)を実行した後にステップS103に戻る。また、送信操作が行われない場合には、登録操作ではなく、メインメニューに戻る操作に応じて報告情報の保存処理(ステップS111)を実施してもよい。
【0099】
また保存処理により、未送信の報告情報が複数件蓄積された場合には、メインメニュー画面の「点検送信」のアイコンの操作などに応じて、未送信の報告情報を一括送信してもよい。または、未送信の報告情報のリストを呼び出して、リスト内の任意数の報告情報の選択を受け付けて、選択された報告情報を送信してもよい。
【0100】
図16は、サーバ20で実施される地図画像の作成処理の概略手順を示す。この処理は、図3に示した地図画像作成部215が、地図画像取得部212,検索処理部213,分析処理部214と協働して実行するものである。
【0101】
最初のステップS201では、地図データベース202から地図情報を読み出して基本の地図画像を作成し、これを背景画像として設定する。ステップS202では、設備データベース203から各種設備に関する情報を読み出して、A群に属する各レイヤの画像を作成する。
【0102】
上記ステップS201,S202により作成された背景画像およびA群のレイヤの画像は、処理対象の地域が変更されたり、地図データベース202や設備データベース203が更新されることがない限り、維持される。
これに対し、B,C,D群のレイヤの画像は、以下のステップS203〜S208を一定の時間間隔で繰り返すことにより、報告データベース201の更新に応じて変更される。
【0103】
ステップS203では、報告データベース201内のB群およびC群のレイヤの表示の対象となる報告情報(平常時および災害時の「管路事故報告」「施設点検報告」「応急給水報告」および災害時の「貯水量報告」の各報告種別による情報)を対象として、これらを種別フラグ、報告種別、位置情報の組み合わせが異なるもの毎に分類して抽出する。これにより、平常時および災害時のそれぞれについて、報告種別毎および位置情報が整合するもの毎にグループが設定されるが、1つの報告情報しか含まれないグループもあれば、複数の報告情報を含むグループもある。後者のグループは、同一の場所の同一の事象につき送信された複数回の報告情報をまとめたものになると思われる。
【0104】
各グループは、いずれも最新の情報が先頭になるようにソートされる。
ステップS204では、「平常時」に属する各グループの最新情報を用いてB群のレイヤの画像を作成し、ステップS205では、「災害時」に属する各グループの最新情報を用いてC群のレイヤの画像を作成する。
【0105】
具体的にステップS204,205では、使用する報告情報毎に、その情報中の位置情報に該当する位置に当該報告の内容に対応するマークを設定し、そのマークに報告情報へのリンク情報を設定する。ただし、「管路事故報告」での「復旧完了」や「応急給水報告」での「給水終了」など、最終の報告事項を示す報告情報は、マークやリンク情報を設定する対象から除外される。
【0106】
つぎに、ステップS206では、「管路事故報告」に関係する各グループの最新情報を用いて異常が生じている範囲を推定し、ステップS207において、推定結果に基づきD群のレイヤの画像を作成する。なお、ステップS206の推定処理では、「復旧完了」を示す報告情報も含めて推定を行ってもよい。
【0107】
この後は、ステップS208において、各画像をそれぞれ対応するレイヤに格納し、ステップS203に戻る。
以下、同様に所定の時間間隔でステップS203〜S208を繰り返すことにより、平常時および災害時のそれぞれにおける各地の最新の報告情報に基づき、B,C,D群のレイヤの画像が更新される。また、図7に示した「断水エリア入力」のメニュー操作によりPC端末21からD群のレイヤの画像を変更する指定を受けた場合には、その指定に応じてD群のレイヤの画像を更新する。
【0108】
図16の処理は、携帯端末装置1からの報告情報を受信して蓄積する処理と並列して実行されるので、定期的に管理対象の地域全域の地図画像を更新することができる。したがって、PC端末21から表示対象のエリアの指定を受け付けた場合には、その時点の最新の報告情報に基づく地図画像から指定エリア内の画像を抽出し、PC端末21に送信することができる。
【0109】
ただし、地図画像の作成処理の手順やPC端末21への提供の方法は上記に限定されるものではない。たとえば、PC端末21からエリアの指定を受け付ける都度、その指定エリアに対応する地図情報を地図データベース202から読み出して背景画像を作成し、設備データベース203や報告データベース201に対しても、指定エリアに範囲を絞り込んだ検索を実行して各レイヤの画像を作成し、これらを合わせた地図画像をPC端末21に送信してもよい。
【0110】
また、PC端末21からの指定に応じて地図画像を作成する場合には、エリアの指定と共に現在のレイヤの選択状況を示すデータをサーバ20に送信してもよい。この場合、サーバ20は、送信されたデータに基づき、背景画像および選択されているレイヤの画像を作成し、これらの画像を含み、選択されていないレイヤが空白にされた地図画像を、PC端末21に送信する。
【0111】
PC端末21で表示対象のエリアを指定することは、必須の事項ではない。たとえば、あらかじめ各PC端末21間で表示するエリアを分担し、サーバ20でそれぞれのPC端末21用の地図画像を作成して、定期的に各PC端末21に送信してもよい。
また、サーバ20からは全域の地図画像を送信し、PC端末21において、エリアの指定操作などに応じて必要な範囲の地図画像を表示してもよい。
【0112】
また、PC端末21で長時間地図画像が表示される場合には、その表示の立ち上げ時にのみ背景画像および各レイヤの画像を送信し、以後は、定期的に、更新が生じたレイヤの画像を送信してもよい。このようにすれば、報告の推移に連動させて地図画像の表示を更新することが可能になる。また、担当者が常にPC端末21の表示を見ていない場合でも、適宜、最新の報告情報を反映した地図画像を確認することができる。
【0113】
また、上記の実施例では、地図画像を表示する機能や表示対象のレイヤを指定する操作を受け付ける機能をPC端末21や携帯端末装置1に設定したが、サーバ20にもモニタや操作部を接続して、同様の機能を設けることも可能である。
【0114】
上記の実施例では、水道設備の監視のためのシステムを示したが、これに限らず、ガス、電気、電話などの他の公共設備、鉄道や道路など、日常業務としてエリアを監視し、非常時にもエリア内の情報を収集する必要がある各種事業に、同様の構成によるシステムを適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 携帯端末装置
2 管理システム
11 GUIインタフェース
12 出力処理部
14 撮影処理部
15 音声入力部
16 位置情報取得部
20 サーバ
21 PC端末
201 報告データベース
211 保存処理部
212 地図情報取得部
213 検索処理部
214 分析処理部
216 指定受付部
217 出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象のエリア内で生じた事象を示す事象情報を位置情報と共に送信する携帯端末装置と、前記携帯端末装置からの送信情報を蓄積し、その蓄積情報を用いて前記エリア内を監視するための表示を行う管理システムとを具備し、
前記携帯端末装置は、
平常時における事象情報および非常時における事象情報のいずれを入力するかを選択するためのインタフェース画面を表示して、この表示に対する選択操作を受け付けると共に、選択操作を受け付けたことに応じて入力用のインタフェース画面を表示して、前記選択に対応する事象情報の入力を受け付ける入力処理手段と、
入力処理手段が受け付けた事象情報を、この事象情報が平常時および非常時のいずれに関係するかを示す種別情報ならびに前記位置情報と共に前記管理システムに送信する情報送信手段とを具備し、
前記管理システムは、
前記携帯端末装置から受信した事象情報および位置情報を、これらの情報と共に受信した種別情報に基づき、平常時および非常時のいずれに関係するかを識別できるようにして保存するデータベースと、
平常時における事象の表示、非常時における事象の表示、および平常時と非常時の双方における事象の表示のいずれかの指定を受け付ける指定受付手段と、
前記データベース内の情報を用いて、事象と位置情報との関係を示す画像を少なくとも平常時と非常時とに分けて作成する機能を具備し、この機能により作成される画像を用いて、前記指定受付手段が受け付けた指定に対応する事象を表す地図画像を表示するための画像データを作成する地図画像作成手段と、
地図画像作成手段により作成された画像データによる地図画像を表示する地図画像表示手段とを、具備するエリア監視システム。
【請求項2】
前記携帯端末装置の入力処理手段は、前記入力用のインタフェース画面として、平常時の情報と非常時の情報とに共通する入力項目を含む複数の入力項目毎の入力欄が設けられた画面を表示し、これらの入力欄に入力された情報を含む事象情報を作成する、請求項1に記載されたエリア監視システム。
【請求項3】
前記携帯端末装置は撮像部を具備し、
前記携帯端末装置の入力処理手段は、前記入力用のインタフェース画面において、前記撮像部により生成された画像の送信を指定する操作を受け付けて、当該画像を含む事象情報を作成する、請求項1または2に記載されたエリア監視システム。
【請求項4】
前記管理システムのデータベースでは、前記携帯端末装置から受信した情報毎にその受信情報を格納するためのレコードが作成されて、複数のレコードが蓄積され、
前記地図画像処理手段は、前記データベース内の各レコードを、種別情報毎および位置情報が整合するもの毎に分類し、この分類により生じた各グループの最新のレコードを用いて、平常時における事象と位置情報との関係を示す画像、および非常時における事象と位置情報との関係を示す画像を作成して、両画像を前記監視対象のエリア内の基本の地図画像に重ね合わせた画像データを作成し、
前記地図画像表示手段は、前記地図画像処理手段により作成された画像データに含まれる画像のうち、基本の地図画像および指定受付手段が受け付けた指定に対応する画像を表示する一方、当該指定に対応しない画像を非表示状態にする、請求項1に記載されたエリア監視システム。
【請求項5】
前記地図画像処理手段は、前記分類により生じた各グループの最新のレコード毎に、そのレコード内の位置情報に対応する位置に当該レコード内の事象情報および種別情報の内容を表すマークが配置された地図画像を作成する、請求項4に記載されたエリア監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−104953(P2013−104953A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247424(P2011−247424)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)平成23年10月2日に発行された第4回IWAアジア太平洋地域会議(The 4th IWA ASPIRE)発表予稿集(USBメモリ)内のsr119H00457DIS.pdfのプリントアウト (2)平成23年9月8日付(第4824号)株式会社日本水道新聞社発行の日本水道新聞第12面に掲載された新聞記事のコピー
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り (3)平成23年10月3日〜5日に開催された第4回IWAアジア太平洋地域会議組織委員会主催の第4回IWAアジア太平洋地域会議にて発表
【出願人】(511274880)株式会社大阪水道総合サービス (1)
【Fターム(参考)】