説明

エレクトロルミネッセンスディスプレイ

バックライトは、基板として知られる透明前面層(11)と、前記透明前面層(11)の背面に形成され、バックライトの前面電極となる透明導電性フィルム(12)と、前記透明導電性フィルム(12)を覆うエレクトロルミネッセンス/蛍光体材料(13)の層と、前記エレクトロルミネッセンス/蛍光体材料(13)の層の背面を覆う高誘電体層(16)と、前記高誘電体層(16)の背面に形成された、裏面電極となる導電性フィルム(17)とによって構成される。これらは全て、ディスプレイが表示するキャラクタを定めるマスク(18)の背後に配置される。これにより、トラックによって生じる後尾の問題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスディスプレイに関するものであり、より詳しくは、このようなディスプレイの均一性および視認性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある種の材料は、電界発光性、すなわち、電界を発生させると光を発して輝く性質を有する。最初に知られたエレクトロルミネッセンス材料は、硫化亜鉛等の無機粒状物質であったが、それよりも最近発見されたエレクトロルミネッセンス材料には、有機LED(OLED)として知られる多数の小分子有機発光体や、発光ポリマー(LEP)として知られる数種のプラスチック(合成有機重合物質)等が含まれる。無機粒状体は、特に、バインダーに混合され、比較的厚い層として基板表面に塗布される場合には、ドープされてカプセル封入された形態で依然として使用されている。一方、LEPは、バインダーマトリックス中の粒状材料として使用することもできるし、あるいは、そのまま比較的薄い連続したフィルムとして使用することもでき、後者にはいくつかの利点がある。
【0003】
この電界発光効果はディスプレイの構成に利用されており、大面積のエレクトロルミネッセンス材料(この文脈では、一般的に蛍光体と称される)を設け、ディスプレイが表示するキャラクタを定めるマスクを通して視認されるバックライトを形成する。
【0004】
このようなバックライトは、一般的には、その前面(視認側)から背面にかけて、基板として知られる、通常、ガラスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックからなる電気絶縁性の比較的厚い透明保護前面層と、前記基板の背面全体を覆うように形成された、インジウム錫酸化物(ITO)等の材料からなる非常に薄い透明導電性フィルムであり、前記バックライトの一方の電極(前面電極)を形成するフィルムと、前記前面電極の背面を覆う、エレクトロルミネッセンス/蛍光体材料(通常は、バインダーマトリックスに含まれる粒状蛍光体)からなる比較的薄い層と、前記蛍光体層の背面に形成された、50前後の比較的高い誘電率(比誘電率)を有する材料(通常はセラミック)からなる比較的薄い電気絶縁層と、前記電気絶縁層の背面全体を覆うように形成された、通常は不透明(かつ、炭素または銀で形成されることが典型的)な連続した導電性フィルムであり、前記バックライトの他方の電極(裏面電極)を形成するフィルムとによって構成されている。
【0005】
さらに、非常に壊れやすい裏面電極層は、ディスプレイの背後に取り付けられることが考えられる何らかの装置の構成部品(例えば、電子回路)との接触による損傷を防止するため、保護フィルム(通常は、別個の、同様のセラミック層)によって被覆されている。
【0006】
前記各種層はそれぞれ、しかるべき位置に簡便にスクリーン印刷される(ただし、通常、スパッタリングによって前記基板上に形成される前記ITO前面電極は除く)。スクリーン印刷は、好適なペーストを用い、前記層の成分の形状、大きさ、および位置を定めるマスクを通して行い、前記ペーストを、次の層の塗布前に、一般的には熱または紫外光によって適宜乾燥、凝固、または硬化させるという通常の方法で行われる。エレクトロルミネッセンスディスプレイに関する文脈において、「比較的厚い」および「比較的薄い」という表現は、30〜300μmの範囲、一般的には100μm前後の厚みと、50μm未満、最も一般的には25μm以下の厚みとをそれぞれ意味するものである。
【0007】
ディスプレイにおいては、このようなバックライトは、ディスプレイが表示するキャラクタを定めるマスクの後ろに配置されている。残念ながら、真に効率的で読みやすいディスプレイを形成するためには、見る人の目が伝えようとする情報からそらされることがないように、ディスプレイの背景の均一性を十分に制御しなければならない。現在に至っても、このような制御はエレクトロルミネッセンスディスプレイに関しては十分に達成されていない。
【0008】
先に示したように、エレクトロルミネッセンスディスプレイのほとんどが、電界発光原理の均一な照明特性をバックライトとして利用しており、特定の開口を通して光が放たれるようにする切り欠きオーバーレイを使用することによって、グラフィックキャラクタの形成を可能にしている。粒状蛍光体を用いてこのような方法で形成されたキャラクタは、不鮮明になりがちである。さらに、このようなディスプレイは、バックライトが「オン」の時には全てのキャラクタが照明され、「オフ」の時にはいずれのキャラクタも照明されない「全か無か」型のディスプレイである。
【0009】
しかしながら、マスキングオーバーレイを備えたバックライトの通常の構造を「反転させる」ことによって、個別にアクティブ化可能なキャラクタを備えた、よりクリアでより輪郭がはっきりとしたディスプレイを構成できることがわかった。より具体的には、連続した電極の代わりに、個別に適切に成形された電極の配列が蛍光体層の少なくとも片側(特に背面)に設けられていれば、前記マスクを完全に省くことができることがわかった。これは、前記蛍光体が、その性質上、所望の不連続形状の形態(例えば、アイコン、英数字、またはその配置によって再構成可能な情報を提供する個別に切換可能なセグメントのパターン)でアクティブ化可能となり、よって、所望の鮮明度を有するディスプレイを構成できるためである。
【0010】
このように形成されたディスプレイは、マスクを利用した従来のディスプレイと比べて実際にかなり有利であったが、依然として多数の欠点があった。このような欠点の一つは、連続した電極の代わりに個別に適切に成形された裏面電極を使用することが直接の原因となっている。ディスプレイの端から端へと有効に延びる連続した裏面電極の場合、励起電圧(activating voltage)は、リードによって、ディスプレイの最端部にあり、容易に視界から隠すことが可能な接点へと供給することができるが、個別の裏面電極の場合、これらの電極が形成された誘電体層上に導電性トラックとして形成されるリードが必要であり、これらトラックリードのうちのいくつかは、必然的にディスプレイの主な領域を横切ってしまう。また、各トラックリードは、極めて細いものであるとはいえ、それ自体が電極として機能するので、蛍光体は、個別に成形された電極のそれぞれによってのみならず、前記電極のリードによっても励起され、微弱ではあるが、注意をそらす(distracting)(さらに、紛らわしくもなりかねない)余計な照明源となり、これにより、ディスプレイの各アイコンまたはキャラクタは後尾(tail)を有しているかのように見える。
【0011】
この問題に対処するため、様々な試みがなされてきた。これまででより高い成果をあげている試みの一つは、通常行われるように裏面電極を備えた誘電体層上にリードトラックを直接形成する代わりに、前記トラックと前記電極を備えた誘電体層との間にさらなる絶縁層を配置することによって前記トラックをエレクトロルミネッセンス材料層から離間させ、前記トラックによって生じる電界を低減し、これにより、その下にある蛍光体の不要な励起や照明効果を最小限に抑えることである。しかしながら、各トラックリードは依然として電極として機能し、よって、依然として微弱な(この場合、ずっと微弱ではあるが)照明源となり、ディスプレイの各アイコンまたはキャラクタは、依然として後尾(tail)を有しているかのように見える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このトラックによって生じる後尾の問題は、本発明によって対処しようとする問題の一つであり、ここで本発明は、二つの方法のいずれかによってこれに対処することを提案している。本発明は、一方法として、エレクトロルミネッセンス材料自体を、関連する個別に成形された裏面電極に形状および大きさが高度に適合する不連続な領域となるように形成することを提案し、もう一つの方法として、エレクトロルミネッセンス材料層(連続した層であってもよい)と成形された裏面電極との間に、前記電極の複数の成形領域のネガとなるような形状および大きさのシールド(導電層)であって、使用時において、前面電極と裏面電極との間に生じる電界を、前記成形された電極領域に適合する領域以外のあらゆる領域において遮断するシールドを配置することを提案している。これらの単純な変更、特に、エレクトロルミネッセンス材料を成形された電極領域に適合するように成形するという変更は、これらの発想を聞いた後で考えれば自明であるかのように思えるかしれない。しかしながら、エレクトロルミネッセンスディスプレイが使用されるようになってから長年にわたり、これらの発想はいずれも誰からも提案されなかったことを指摘する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様においては、本発明は、エレクトロルミネッセンス材料の層が、二つの電極層の間に、前記二つの電極層から離間された状態で挟まれたタイプのエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、別々にアクティブ化可能なエレクトロルミネッセンス材料の個別の領域を複数備え、裏面電極層とエレクトロルミネッセンス材料層の両方が、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供する。
【0014】
さらに、第2の態様において、本発明は、エレクトロルミネッセンス材料の層が、二つの電極層の間に、前記二つの電極層から離間された状態で挟まれたタイプのエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、別々にアクティブ化可能なエレクトロルミネッセンス(蛍光体)材料の個別の領域を複数備え、裏面電極層が、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成され、前記成形領域からなる裏面電極のネガとなるような形状および大きさの導電性材料のシールド層が、中間電極として、前記成形領域からなる電極とエレクトロルミネッセンス材料層との間にこれらと位置合わせされて配置されており、前記シールド層の中間電極に前面電極と同一の電位が与えられることを可能にする手段が設けられていることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のディスプレイにおいて、表示される画像は、成形された裏面電極と、成形された蛍光体またはネガとなるように成形されたシールド層の中間電極のいずれかとの組み合わせにより、使用時において、輪郭がはっきりとするように定められる。したがって、本発明のディスプレイは、従来公知のディスプレイとは異なり、画像決定マスクを必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ある種の装置に使用されるエレクトロルミネッセンスディスプレイを提供する。この装置は、いかなる形状および形態であってもよく、また、いかなる用途に使用されるものであってもよい。このような装置の典型例として、ラジオ、オーディオカセットテープデッキ、CDプレーヤー、テレビ、DVDプレーヤー、またはビデオレコーダー用の手で保持できるコントローラ(リモコン)が挙げられる。このような使用のため、前記装置は、通常、用途に適した複数の個別の表示要素が配置された、おそらく13×5cm(5×2インチ)の長方形のパネルを備えている。よって、例えば、テープデッキに関しては、前記表示要素は、「再生」、「早送り」、「巻き戻し」、「録音」、および「停止」(その他の可能性もあるが、特にこれらを挙げた)を表すアイコン(または単語、もしくは単語を構成する個々の文字)であってもよい。
【0017】
本発明のディスプレイは、エレクトロルミネッセンスディスプレイである。すなわち、本発明のディスプレイは、電界発光を用いてそのいくつかの部分を点灯させるディスプレイである。より具体的には、本発明のディスプレイは、エレクトロルミネッセンス材料の連続したシートまたはフィルムではなく、粒状のエレクトロルミネッセンス材料(粒状の蛍光体)の層を利用するディスプレイである。粒状の蛍光体としては、粒子の形態の発光プラスチック(LEP)を使用することができるが、最も好ましいのは無機材料である。典型的な無機粒状蛍光体は、硫化亜鉛であり、特に、カプセル封入粒子(encapsulated particles)の形態の硫化亜鉛である(カプセル封入により、安定性および寿命が実質的に向上される)。このような硫化亜鉛として特に便利なものの例として、7151jグリーンブルー(7151j Green Blue)の商品名でデュポン(Dupont)社より市販されている熱硬化性材料であって、膜厚25μm前後の層であるものが挙げられる。このような硫化亜鉛の他の例として、同じくデュポン社製の8164ハイブライトグリーン(8164 High Bright Green)が挙げられる。
【0018】
当業界で公知の多くのエレクトロルミネッセンスディスプレイとは異なり、本発明のディスプレイは、マスクが定める表示キャラクタまたはアイコンの「バックライト」を形成する、均一にアクティブ化可能な単一の大面積エレクトロルミネッセンス材料の代わりに、表示キャラクタまたはアイコンの全体または一部分を表す別々にアクティブ化可能な個別の領域を備えている。その結果、本発明のディスプレイは、従来のバックパネル型のディスプレイに比べて、はるかに鮮明で、輪郭がはっきりとし、「明瞭(cleaner)」となる。
【0019】
このディスプレイにおいては、各キャラクタまたはアイコンは、それ自体が単独で全体を完全に表すことができ、個々の数字または文字(アルファベットの文字)、あるいは何らかの所望の効果(「再生」を意味するものとして一般的に採用されている単一の右向きの山形、または「早送り」を意味する同様の山形を二つ重ねたもの等)を表すアイコン(またはシンボル、ピクトグラム、カルトゥーシュもしくはグリフ)を表すことができる。しかしながら、これに加えて、あるいはこれに代わるものとして、前記個別の領域は、それ自体が何らかの意味またはメッセージを有するより大きな領域を構成する小部分を形成することができる。よって、前記個別の小領域を、関連するキャラクタ決定セグメント同士のまとまりへとグループ化することができ、各グループは、適切なセグメントのアクティブ化により、表示するキャラクタを決定できる。典型的なグループの例として、近代的な電気および電子ディスプレイにおいて一般的に採用されている標準的な7セグメントグループが挙げられる。7セグメントグループにおいては、オンに切り換えるセグメントを適切に選択することによって、前記グループにアラビア数字またはローマ字を表示させることができる(これ以外のナンバリング方式またはアルファベット方式では、より多数のセグメントを有するグループが必要となる場合がある)。もちろん、前記グループ自体を配列に配置することが可能であり、前記配列の各部分を操作することにより、例えば、完結したテキストメッセージを表示してもよい。
【0020】
各アクティブ化可能領域は、蛍光体の薄い(25μm前後)層を備えており、前記蛍光体層は、いずれかの側(前記層の各隣接面)に、前記層に電圧を供給して前記層を電界発光状態へと切り換えるために用いられる(前面また背面)電極を備えている。より具体的には、本発明の第1の態様(成形された蛍光体領域を使用する態様)においては、裏面電極とエレクトロルミネッセンス材料が、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成されている。このように成形された裏面電極はしかるべくパターン化され、表示する情報または情報セグメントの解像度で正確に定められた別個の適切な輪郭成形体の配列を形成し、この配列における各成形体は、それぞれ他とは独立して単独でアドレス可能(駆動電圧が供給される)である。
【0021】
さらに、この第1の態様においては、前記エレクトロルミネッセンス層(前記蛍光体)自体が、表示する情報または情報セグメントの解像度で正確に定められた輪郭成形体の適切な配列でパターン化されている。
【0022】
前記蛍光体層は、当業界で行われているように、通常セラミック材料からなる絶縁層で被覆されている。このような材料の典型的な例として、デュポン社製の熱硬化性材料である7153eまたは紫外線硬化性のセラミックである5018であって、膜厚10〜15μm前後の層であるものが挙げられる。次に、この絶縁層上に、裏面電極が形成される。裏面電極は、通常は、ノルコート(Norcote)社製の紫外線硬化性材料であるELG110等の銀ペーストを用い、必要であれば、膜厚約20μm前後の比較的薄い層となるように形成する。
【0023】
次に、ディスプレイの背面を、薄い(15μm)セラミック絶縁層(上述のデュポン社の5018を使用することが典型的であるが、コーテス(Coates)社製のUV600Gを使用することもできる)で保護してもよい。
【0024】
本発明による成形された電極/蛍光体の配置、すなわち、裏面電極と蛍光体自体の両方を、表示される画像に適合する複数の別個の領域で構成することにより、少なくとも原理上は、使用時において、前記電極のリードトラックによって生じる「後尾」が認められず、所望の画像のみが視認されるディスプレイが形成される。しかしながら、実用上は、成形体の二つの配列(選択された電極のものと蛍光体のもの)が完璧には位置合わせされず、電極のリードトラックのごく短い部分が実際には重なってしまい、対応する蛍光体の成形体を励起してしまう場合がある。
【0025】
この位置合わせ不良の問題は、多数の方法によって十分に対処可能である。既に提案されている対処法の一つは、リードトラックをその電極よりも蛍光体から離間するように配置し、前記トラックの「励起」効果が必然的に弱まるようにすることである。前記離間が十分であれば、前記トラックによる蛍光体の励起は、前記電極による励起と比べてごくわずかとなり、注意の散乱(distraction)は起こらない。よって、選択された電極配列が裏面電極である場合、まずトラックなしで裏面電極を形成し、次に、これらの間の間隙を、絶縁材料(典型的には、前記裏面電極と前記蛍光体との間に既に使用されているようなセラミック)のさらなる層で覆ってから、前記絶縁層の上面にトラックを形成(同種の銀ペースト使用)すれば、前記トラックは前記裏面電極よりも前記蛍光体から離間され、よってその影響が抑制される。
【0026】
パターン化された裏面電極を使用する場合における、上記に代わる解決手段は、蛍光体とリードトラックとの間に適切にパターン化された(トラック状の)第3の電極を配置し、前面電極に印加される電圧と同一の電圧をこの第3の電極に印加することによって、前記トラック自体における電圧の影響から前記蛍光体を防護することである。この第3の、すなわち中間の、トラック状電極(裏面電極のトラックと前記蛍光体層を覆う従来の絶縁層との間に、前記裏面電極のトラックに隣接はするが絶縁されるように簡便に配置され、同種の硬化銀ペーストからなる)は、前記各種裏面電極部分へのトラックのパターンに適合するようにパターン化され、その結果、使用時において、前記トラックによって生じる電圧電界(voltage field)が遮断され、その下にある蛍光体層の励起が抑制される。
【0027】
本発明の第2の態様においては、各アクティブ化可能な領域は、先に述べたように、蛍光体の層を備えており、前記蛍光体層は、いずれかの側(前記層の各隣接面)に、前記層に電圧を供給して前記層を電界発光状態へと切り換えるために用いられる(前面また背面)電極を備えている。さらに、先に述べたように、前記裏面電極は、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成されるようにパターン化されている。しかしながら、これに加えてこの第2の態様においては、ネガとなるようにパターン化されたシールド層が、中間電極として、前記成形領域からなる電極とエレクトロルミネッセンス材料層との間にこれらと位置合わせされて配置されており、さらに、このシールド層の中間電極が前面電極と同一の電位を保持することを可能にする手段が設けられている。
【0028】
この中間電極層(前記成形領域からなる裏面電極のマスクとして機能する)に関しては、好適な導電性材料(典型的には銀)を用いて形成できること、適切な銀含有ペースト(silver-loaded paste)(典型的には、上述のペースト)を通常の方法で蛍光体にスクリーン印刷することによって塗布可能であることを除いては、説明すべきことはあまりない。もちろん、この次に、前記中間電極の層に対応する、その「ポジ」となる裏面電極を、前記中間電極層と位置合わせして塗布しなければならないが、これについてはここで言及する必要はない。
【0029】
このシールド層の中間電極が前記前面電極と同一の電位を保持することを可能にする手段は、通常は、前記ディスプレイの内部または外部のいずれかにおいて、これら2つを単純に電気接続する程度である。
【0030】
ただし、本発明の第2の態様(裏面電極の成形領域パターンのネガとして形成される、位置合わせされた中間電極導電性シールド層を使用する態様)によれば、前記エレクトロルミネッセンス材料(蛍光体)層は、連続した層であってもよい。これは、前記パターン化された裏面電極と前記ネガとしてパターン化されたシールドとの組み合わせにより所要の画像形成が達成されるためである。しかしながら、有益と思われる場合には、前記蛍光体層自体を複数の画像決定領域に成形することも可能である。
【0031】
本発明においては、前記裏面電極層と前記エレクトロルミネッセンス層(前記蛍光体)自体の両方を、表示する情報または情報セグメントの解像度で正確に定められた輪郭成形体の適切な配列に適合するようにパターン化するか、あるいは、前記裏面電極をこのようにパターン化し、これに加えて、前記裏面電極のパターンと同一のパターンのネガとして形成され、使用時には前面電極の電位を有する位置合わせされた中間電極導電性シールド層を用いるようにする。
【0032】
これらの配置により、少なくとも原理上は、使用時において、前記電極のリードトラックによって生じる「後尾」が認められず、所望の画像のみが視認されるディスプレイが形成される。
【0033】
本発明のディスプレイを構成する材料の各種層は、通常のスクリーン印刷法により、この目的において一般に知られている各種技術およびペースト状材料を用いて形成することができ、これに関してはここでこれ以上説明する必要はない。
【0034】
最後に、上述の構成に加え、前記基板に外側保護フィルムを被せてもよく、また、前記保護フィルムに対しては、適切な場合、着色を施すことや、あるいは何らかの銘(legends)を付与することができる。
【0035】
以下、あくまでも例示目的で、本発明の様々な実施形態について添付の概略図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、簡略化した従来技術のエレクトロルミネッセンスディスプレイの一部分を断面図で示している。ディスプレイは、薄い前面電極12と、その上に形成されたより厚いエレクトロルミネッセンス材料(蛍光体)層13を備えた透明保護基板11で構成されている。この蛍光体は、結合マトリックス15内に保持された顆粒状、粒状の材料(図中14)である。しかしながら、ここでは前記層そのものは、ディスプレイ全域にわたって設けられた連続した層として示している。
【0037】
前記蛍光体層13の背後(図中における上面側)には、厚い絶縁性セラミック層16が設けられ、この絶縁性セラミック層上には裏面電極17が形成されている。この裏面電極は、前記蛍光体層13と同様、ディスプレイ全域にわたって設けられた連続した電極である。
【0038】
使用時には、不透明なマスク18が、ディスプレイの前(図中では下)に配置される。このマスクは、成形された開口(図中19)により、前記蛍光体によって発せられた光Ieは各開口19を通過するが、その他の箇所では遮断される状態として、ディスプレイが表示する「画像」を決定する。
【0039】
図2は、基板11、透明前面電極12、連続した蛍光体層13、およびセラミック絶縁体層14を備えた同様のディスプレイであるが、薄くて細いリードトラック(図中22)を介してアドレス可能な多数の成形領域(21、ここでは一つの成形領域のみを示している)からなる画像決定裏面電極を備えたディスプレイの一部分を断面図で示している。成形されたパターン化裏面電極21の使用は、概念上は、個別の成形体21と前面電極11との間に直接存在している蛍光体の領域(図中A)のみが励起され、照明Ieが得られるということを意味している。しかしながら、実用上は、個別のリードトラック22は裏面電極としても機能するため、その下に設けられた蛍光体層からも若干の照明Ieが出力され、これにより表示が分かりづらくなる。この問題に対しては、図3に示すような方法で、すなわち、図2に示すディスプレイの「トラックを離間した」バージョンとすることで、少なくとも部分的には対処することができる。図3からわかるように、裏面電極の成形領域21は、絶縁材料の厚い層31に囲まれており、電極領域21につながるリードトラック32がその上面に形成されている。図3に示す実施形態において、トラック32が、図2の実施形態における同様のトラック22と比べ、蛍光体層13からかなり離れていることは明らかであり、これにより、トラック32の影響が小さくなる。よって、前記トラック32が原因となって発せられる光ieの量もまた小さくなり、場合によってはほとんど無視できる程度にまで低減される。
【0040】
本発明による、リードトラックの影響を回避するための改良された構成を図4に示している。図4は、図2に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、蛍光体材料43の異なる個々の成形体43からなるパターン化された蛍光体層を用いて構成することでさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。図4から容易にわかるように、励起により、成形された蛍光体部分のみから光が発せられ、よって、原理上は、リードトラック22によって生じる電界によって光が発せられることはない。しかしながら、実用上は、前記蛍光体と裏面電極層である43と21との位置合わせが正確でない場合が考えられるため、短いトラック部分が関連する蛍光体の成形体43の一部に重なってしまう可能性がある。したがって、前記トラックによってもたらされる影響を最小限に抑えるためには、前記トラックを図3に示すような「持ち上げた」形態に構成することが最善であり、このような構成を図5に示している。
【0041】
図5Aは、図5に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、その構成を容易にするようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。より具体的には、絶縁体層14を形成した後、さらに別の絶縁体層54をしかるべき位置に印刷する。この絶縁体層54は、裏面電極レイアウトの「ネガ」画像であり、裏面電極の成形体領域を有効に決定する開口55を有する。これらの領域が完成したら、電極材料を、所望の特定の形状よりも若干大きい領域に配置し、各電極51が、絶縁体層54の開口55に若干重なるようにしてもよい。
【0042】
図5Aには、先に形成された層を保護する役割を果たす、最後に形成される外側セラミック絶縁体層56の形成も示されている。
【0043】
図5に示すバージョンにおいても、トラックによる不要な影響が依然として若干認められる場合がある。したがって、図6に示すさらに改良を加えたバージョンにおいては、図5に示すものと同様のディスプレイであるが、トラック32と蛍光体層の成形体43を覆うセラミック絶縁体層14との間に、前記トラックを持ち上げる絶縁体層31に埋め込まれる形で導電性のトラック状にパターン化されたシールド61を備えたディスプレイの一部分を断面図で示している。使用時には、このシールドは中間電極となり、前面電極11に接続(図示されていない手段による)され、前面電極11と同一の駆動電位とされる。これにより、前記シールドは、トラック32による有害な(光発生)効果を防止する。
【0044】
図4においては、蛍光体層を適切に成形された複数の領域に形成して所要の画像を提供するという概念を示した。図7は、電極パターンのネガとして形成されたシールドを設けることによってこの目的を達成しようとする、上述の代替方法に関するものである。図7に示すディスプレイは、図3のものと類似するが、セラミック絶縁体層14と蛍光体層13との間に開口が設けられた導電層71を有しており、前記導電層の開口72(ここでは、セラミック絶縁体材料14が充填されている)は、成形された電極領域21と同様、形成する画像を決定する。使用時において、前記開口が設けられた導電層71は、前面電極に電気的に接続されて前記前面電極と同一の電位を有する中間電極を形成する。よって、明白であるように、前記中間電極は、裏面電極21とそのリードトラック32が蛍光体13(ここでは連続した層として示している)に与える影響を完全に遮断し、裏面電極/中間電極の開口によって定められた蛍光体の領域においてのみ蛍光体が励起されて光が発せられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、簡略化した従来技術のエレクトロルミネッセンスディスプレイの一部分を断面図で示している。
【図2】図2は、図1に示す簡略化した従来技術のディスプレイに、裏面電極をパターン化するように改良を加えたバージョンの一部分を断面図で示している。
【図3】図3は、図2に示す簡略化した従来技術のディスプレイに、トラックを離間させるようにさらに改良を加えたバージョンの一部分を断面図で示している。
【図4】図4は、図2に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、本発明に基づきパターン化された蛍光体層を備えるようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。
【図5】図5は、図4に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、図3に示すように、トラックを離間させるようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。図5Aは、図5に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、その構成を容易にするようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。
【図6】図6は、図5に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、トラック状にパターン化されたシールドを備えるようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。
【図7】図7は、図3に示すものと同様の簡略化したディスプレイであるが、電極パターンのネガとして形成されたシールドを備えるようにさらに改良を加えたディスプレイの一部分を断面図で示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンス材料の層が、二つの電極層の間に、前記二つの電極層から離間された状態で挟まれたタイプのエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、別々にアクティブ化可能なエレクトロルミネッセンス材料の個別の領域を複数備え、
裏面電極層とエレクトロルミネッセンス材料層の両方が、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項2】
前記エレクトロルミネッセンス材料として粒状蛍光体が使用されている請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項3】
前記粒状蛍光体が、カプセル封入粒子(encapsulated particles)の形態の硫化亜鉛である請求項2に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項4】
前記別々にアクティブ化可能な個別の領域が、関連するキャラクタ決定セグメント同士のまとまりへとグループ化され、各グループは、適切なセグメントのアクティブ化により、表示するキャラクタを決定できる請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項5】
前記各グループが、近代的な電気および電子ディスプレイにおいて一般的に採用されている標準的な7セグメントグループである請求項4に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項6】
エレクトロルミネッセンス材料の層が、二つの電極層の間に、前記二つの電極層から離間された状態で挟まれたタイプのエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、別々にアクティブ化可能なエレクトロルミネッセンス(蛍光体)材料の個別の領域を複数備え、
裏面電極層が、前記ディスプレイの関連箇所に表示される画像に形状および大きさが適合する複数の別個の領域で構成され、
前記成形領域からなる裏面電極のネガとなるような形状および大きさの導電性材料のシールド層が、中間電極として、前記成形領域からなる電極とエレクトロルミネッセンス材料層との間にこれらと位置合わせされて配置されており、
前記シールド層の中間電極に前面電極と同一の電位が与えられることを可能にする手段が設けられていることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項7】
前記エレクトロルミネッセンス材料として粒状蛍光体が使用されている請求項6に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項8】
前記粒状蛍光体が、カプセル封入粒子の形態の硫化亜鉛である請求項7に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項9】
前記別々にアクティブ化可能な個別の領域が、関連するキャラクタ決定セグメント同士のまとまりへとグループ化され、各グループは、適切なセグメントのアクティブ化により、表示するキャラクタを決定できる請求項6〜8のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項10】
前記各グループが、近代的な電気および電子ディスプレイにおいて一般的に採用されている標準的な7セグメントグループである請求項9に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項11】
前記シールド層の中間電極が前記前面電極と同一の電位を保持することを可能にする手段が、前記中間電極と前記前面電極との間の単純な電気接続である請求項6〜10のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイであって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のディスプレイにも該当し、よって、前記エレクトロルミネッセンス材料(蛍光体)層が複数の画像決定領域に成形されているエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項13】
実質的に、図4〜6を参照して本明細書で述べたようなエレクトロルミネッセンスディスプレイ。
【請求項14】
実質的に、図7を参照して本明細書で述べたようなエレクトロルミネッセンスディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−501994(P2007−501994A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522413(P2006−522413)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003411
【国際公開番号】WO2005/015960
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】