説明

エレクトロルミネッセンス材料

【課題】内部回転異性性を付与しうる結合軸が存在するビアリール基を有する本発明の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子において高い発光輝度ないしは発光効率と長い発光寿命が両立される有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(C1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネッセンス素子に関し、具体的には、発光型のマルチカラー又はフルカラーディスプレイ、表示パネルなど、民生用や工業用の表示機器に好適に用いられるエレクトロルミネッセンス素子、及びカラー画像形成方法並びにカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子ディスプレイデバイスには、発光型と受光型とがあり、発光型としては、例えばCRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)、VFD(蛍光表示管)などが挙げられる。
中で、ELDについて説明する。
【0003】
ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)とは、電界または電場により発光する材料からなる発光素子、またはそれらを複数個組み合わせたものであり、材料としては有機と無機が、さらに発光機構としては電子と正孔の再結合を利用したキャリア注入型と加速電子の衝突エネルギーを利用した加速電子型がある。材料的には一般的に無機の方が有機よりも寿命が長く安定である反面、材料の展開幅が狭く分子設計に制限がある。機構的には、一般に再結合型の方が加速電子型よりも駆動電圧が低いという利点があり、近年その利点からキャリア注入型のELDが盛んに研究されている。
【0004】
ELD材料としては、具体的には以下の3種類がある。
【0005】
1)無機LED(材料はGaNやGaInN等の無機化合物で構成され、発光機構は再結合型。単にLED(発光ダイオード)とも呼ばれる。)
2)有機LED(材料はトリアリールアミン誘導体やスチルベン誘導体等の有機化合物で構成され、発光機構は再結合型。有機EL(エレクトロルミネッセント)、OLEDとも呼ばれる。)
3)無機EL(材料はZnS:MnやZnS:Tb等の無機化合物で構成され、発光機構は加速電子型。有機ELDよりも歴史が古いため、こちらを単にエレクトロルミネッセンス(EL)と呼ぶ場合もある。)
この中で、本発明で言う「エレクトロルミネッセンス素子」とは1)および2)であり、「エレクトロルミネッセンス材料」とは1)および2)を構成する材料のことを示す。従って、上記3)は本発明から除外される。
【0006】
特に近年注目されているキャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機化合物からなる薄膜を用いるようになってから、発光強度の大きいものが得られるようになってきた。例えば、米国特許第3,530,325号には発光体として単結晶アントラセン等を用いたもの、特開昭59−194393号には正孔注入層と有機発光体層とを組み合わせたもの、特開昭63−295695号には正孔注入層と有機電子注入輸送層とを組み合わせたもの、Jpn.Journal of Applied Phisycs,vol127,No.2第269〜271頁には正孔移動層と発光層と電子移動層とを組み合わせたものがそれぞれ開示されており、これらにより発光強度は改良されてきた。
【0007】
一方、上記エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収して蛍光を発光させる蛍光体が知られている。該蛍光体を用いて、あるエレクトロルミネッセンス材料から多色の蛍光を発光させる方法については、CRT、PDP、VFD等に応用されている。しかしながら、この場合、エレクトロルミネッセンス材料の発光が電子線や遠紫外線であるなど、エネルギー的に高い、即ち発光波長が短波であることが問題となる。つまり、上記蛍光体は具体的には無機蛍光体であり、安定性については非常に高く長期使用に耐えられるものも数多く知られているが、無機蛍光体の中で励起波長が近紫外から可視領域というという長波長に励起するものはほとんどなく、特に赤色光を発光するものが全くないのが実状であった。
【0008】
また、エレクトロルミネッセンス材料から発光させることが可能な近紫外線はおよそ350nm〜400nm程度の極大発光波長の光であると推定されるが、このような近紫外線で励起する蛍光体として有機蛍光色素を用いることが、特開平3−152897号、同9−245511号、同5−258860号等で知られている。
【0009】
しかしながら、一般に有機蛍光色素は、周囲の環境に影響を受けやすく、例えば溶媒や樹脂などの媒体の種類などによっては、その蛍光波長が変化(変色)したり、消光を起こす場合があり、さらに光や熱に対して極めて不安定であり、例えば10万ルックス程度の強い光のもとでは数分から数時間程度で分解してしまうものがほとんどであり、長期保存に耐えうる有機蛍光色素は存在しない。
【0010】
また、前記特許に記載されている方式は、発光体の青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑領域ないしは赤領域に色変換する蛍光色素を使用するものであり、緑色領域の蛍光を発する蛍光変換膜は、ストークスシフト(吸収波長と発光波長との差)が小さくてすみ、かつエレクトロルミネッセンス材料の発光の一部を透過させることが可能であり、比較的高効率で発光体の光を変換できるという特徴を持つが、赤色領域への蛍光は、大きなストークスシフトを必要とする上に、発光体の光をほとんど利用できないので、著しく変換効率が低い。具体的には数種類の励起波長の異なる蛍光色素を併用し、例えば青色光を受けて黄色になる蛍光色素と黄色を受けて赤色に光る蛍光色素のように複数の蛍光色素の光−光変換(フォトルミネッセンス)を他段階に利用する必要があり、原理上高効率化は不可能であった。
【0011】
従って、従来の技術においては、先の変色、輝度低下、消光の問題も含めて、青色、緑色、赤色の発光輝度のバランスが悪く、中でも赤色の輝度が低く、全体的に視認性の悪い、低輝度のカラー表示にならざるを得ないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討の結果、無機系蛍光体及び/又は希土類錯体系蛍光体を用いることにより高輝度でかつ保存性の高いエレクトロルミネッセンス素子を得るに至り、また、該エレクトロルミネッセンス素子の応用により輝度の高いカラーフィルターを提供するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意努力を重ねた結果、下記(5)の構成にて上記目的を達成できることを見出した。
【0014】
また、下記(1)〜(4)及び(6)以下に表される態様も本発明と同様の発明効果を奏する。
(1)下記一般式(A1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0015】
【化1−1】

【0016】
〔式中、Ar11、Ar12およびAr13はアリール基または芳香族複素環基を表し、かつ一般式(A1)で表される化合物の分子内には少なくとも2つの内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基が存在する。〕
(2)下記一般式(A2)で表されることを特徴とする前記1に記載のエレクトロルミネッセンス材料。
【0017】
【化1−2】

【0018】
〔式中、Ar21、Ar22およびAr23はそれぞれ独立に内部回転異性性を付与しうる結合軸を有するビアリールを表す。〕
(3)下記一般式(A3)で表されることを特徴とする前記1又は2の何れかに記載のエレクトロルミネッセンス材料。
【0019】
【化1−3】

【0020】
〔式中、Ar31、Ar32およびAr33はそれぞれ独立にアリール基または芳香族複素環基を表し、かつAr31、Ar32およびAr33のうち少なくとも2つは1,1′−ビナフチル基を有するアリール基を表す。〕
(4)下記一般式(B1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0021】
【化1−4】

【0022】
〔式中、Ar41およびAr42はそれぞれ独立にアリール基または芳香族複素環基を表し、L11、L12およびL13は5員の芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、L11、L12およびL13のうち少なくとも1つは=N−、−N(R41)−、−S−または−O−を表し、R41は水素原子または置換基を表す。ただし、Ar41、Ar42およびR41のうち少なくとも1つは、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基またはその部分を有する基である。また、隣接する置換基同士は互いに縮合して飽和または不飽和の環を形成しても良い。〕
(5)下記一般式(C1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0023】
【化1】

【0024】
〔式中、Ar51はアリール基または芳香族複素環基を表し、nは0から6の整数を表し、nが2以上の時複数のAr51は同じであっても異なっていても良く、また、L21、L22、L23、L24、L25およびL26は6員の含窒素芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、L21、L22、L23、L24、L25およびL26のうち少なくとも1つは=N−または−N(R51)−を表し、R51は水素原子または置換基を表す。ただし、Ar51およびR51のうち少なくとも1つは、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基またはその部分を有する基である。また、隣接する置換基同士は互いに縮合して飽和または不飽和の環を形成しても良い。〕
(6)下記一般式(D1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0025】
【化2】

【0026】
〔式中、Ar61およびAr62はアリール基または芳香族複素環基を表し、R61およびR62は水素原子または置換基を表す。ただし、Ar61、Ar62、R61およびR62のうち少なくとも1つは、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基またはその部分を有する基である。また、隣接する置換基同士は互いに縮合して飽和または不飽和の環を形成しても良い。〕
(7)下記一般式(E1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0027】
【化3】

【0028】
〔式中、Mは1価から4価にイオン状態を取りうる金属元素を表し、n’は1から4の自然数を表し、L71はMとイオン結合を形成し、かつMに配位可能な部分を有する1価のアニオンを表し、mはn’と同じかまたはそれよりも小さい自然数を表し、R71はMとイオン結合を形成する1価のアニオンを表す。ただし、L71、またはR71の少なくとも1つは、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール部分を有する基である。〕
(8)下記一般式(F1)又は(F2)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【0029】
【化4】

【0030】
〔式中、ZおよびZは、それぞれ独立に1価の発光性化合物残基を表し、Zはk価の発光性化合物残基を表し、kは1〜8の自然数を表し、xは1〜3の自然数を表し、yは0〜3の整数を表し、xが2以上の時は複数のZは同じであっても異なっていても良く、yが2以上の時は複数のZ2は同じであっても異なっていても良く、さらにxおよびyが共に1以上の時はZとZは同じであっても異なっていてもよい。R81およびR82はそれぞれ独立に置換基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、nが2以上の時は複数のR81は同じであっても異なっていても良く、また互いに縮合して環を形成してもよく、mが2以上の時は複数のR82は同じであっても異なっていても良く、また互いに縮合して環を形成してもよく、さらにnおよびmが共に1以上の時はR81とR82は同じであっても異なっていてもよい。また、Z、Z、R81およびR82のそれぞれの置換基は、ナフタレン環と縮合環を形成してもよい。〕
(9)下記一般式(G1)で表される4−ハロ−1,1’−ビナフチル誘導体を原料に用い、下記一般式(G2)で表される1価のビアリール基を分子内の何れかに有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用化合物。
【0031】
【化5】

【0032】
〔式中、X91はハロゲン原子を表し、R91およびR92はそれぞれ独立に置換基を表し、nは0〜4の整数を表し、mは0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のR91は同じであっても異なっていても良く、また互いに縮合して環を形成してもよく、mが2以上の時は複数のR92は同じであっても異なっていても良く、また互いに縮合して環を形成してもよく、さらにnおよびmが共に1以上の時はR91とR92は同じであっても異なっていてもよい。〕
(10)エレクトロルミネッセンス材料の少なくとも1種及び該エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収し該エレクトロルミネッセンス材料より発せられる極大発光波長とは異なる極大発光波長に発光する無機系蛍光体を少なくとも1種含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(11)前記無機系蛍光体がSol−Gel法により製造された無機系蛍光体であることを特徴とする前記10に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(12)前記無機系蛍光体の極大発光波長が400〜700nmであることを特徴とする前記10又は11に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(13)前記無機系発光体の少なくとも1種が極大発光波長が600〜700nmであることを特徴とする前記10〜12の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(14)エレクトロルミネッセンス材料及び該エレクトロルミネッセンス材料の発光を吸収し該エレクトロルミネッセンス材料より発せられる極大発光波長とは異なる極大発光波長に発光する希土類錯体系蛍光体を含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(15)前記希土類錯体系蛍光体の極大発光波長が400〜700nmであることを特徴とする前記14に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(16)前記希土類錯体系発光体の少なくとも1種が極大発光波長が600〜700nmであることを特徴とする前記14又は15の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(17)前記エレクトロルミネッセンス材料の極大発光波長が430nm以下であることを特徴とする前記10〜16の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(18)前記エレクトロルミネッセンス材料の極大発光波長が400〜430nmであることを特徴とする前記17に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(19)前記エレクトロルミネッセンス材料が有機LEDであることを特徴とする前記10〜18の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(20)前記エレクトロルミネッセンス材料が無機LEDであることを特徴とする前記10〜18の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(21)前記エレクトロルミネッセンス材料が、前記一般式(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(C1)、(D1)、(E1)、(F1)、(F2)、(G1)又は(G2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記10〜20の何れか1項に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(22)基盤上に、エレクトロルミネッセンス材料を含有する層及び該エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜500nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種、501〜600nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種及び601〜700nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種を含有する色変換層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(23)基盤上に、エレクトロルミネッセンス材料を含有する層及び該エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜500nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種、501〜600nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種及び601〜700nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種を含有する色変換層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(24)エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜700nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種を含有することを特徴とする色変換フィルター。
(25)エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜500nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種、501〜600nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種及び601〜700nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体の少なくとも1種を含有することを特徴とする色変換フィルター。
(26)前記無機蛍光体がSol−Gel法により製造された無機系蛍光体であることを特徴とする前記24又は25の何れか1項に記載の色変換フィルター。
(27)エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜700nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種を含有することを特徴とする色変換フィルター。
(28)エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して400〜500nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種、501〜600nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種及び601〜700nmに極大発光波長を有する希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種を含有する色変換層を有することを特徴とする色変換フィルター。
(29)Sol−Gel法により製造された無機系蛍光体を用いて赤色よりも短波長領域の光を赤色に変換することを特徴とする色変換方法。
(30)希土類錯体系蛍光体を用いて赤色よりも短波長領域の光を赤色に変換することを特徴とする色変換方法。
(31)前記希土類錯体系蛍光体の極大吸収波長が340nm以上であることを特徴とする前記30に記載の色変換方法。
(32)下記一般式(R2)で表されるアニオン性配位子を少なくとも1つ有することを特徴とする希土類錯体系蛍光体。
【0033】
【化6】

【0034】
〔式中、R101は水素原子又は置換基を表し、Y101は酸素原子、硫黄原子又は−N(R102)−を表し、R102は水素原子又は置換基を表し、Z101は炭素と炭素の二重結合と共に4〜8員環を形成するのに必要な原子群を表す。〕
また、次の態様を本発明に用いることもできる。
(A)下記一般式(N1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料、
【0035】
【化7】

【0036】
〔式中、Arはアリール基を表し、Aは炭素原子、窒素原子、硫黄原子または酸素原子を表し、XはAおよびNとともに5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、Yは3つの炭素原子とともに5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、式中のC−N結合、C−A結合、C−C結合は単結合または2重結合を表し、Rは水素原子または置換基またはArを表す。さらに
【0037】
【化8】

【0038】
で表される含窒素芳香族複素環および
【0039】
【化9】

【0040】
で表される芳香族炭化水素環または芳香族複素環はさらに炭化水素環または複素環により縮合されていてもよい。〕
【0041】
【化10】

【0042】
〔式中、R101は水素原子又は置換基を表し、Y101は酸素原子、硫黄原子又は−N(R102)−を表し、R102は水素原子又は置換基を表し、Z101は炭素と炭素の二重結合と共に4〜8員環を形成するのに必要な原子群を表す。〕
【発明の効果】
【0043】
第1の効果としては、微粒子無機蛍光体または有機配位子によって配位された希土類金属錯体を用いた色変換フィルターを得ることができたこと、第2の効果としては、色変換フィルターと公知の近紫外発光有機エレクトロルミネッセンス素子との組み合わせにより、可視光に発光波長を変換できることを確認できたこと、第3の効果としては、色変換フィルターと本発明の近紫外ないしは紫色領域に発光する化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子との組み合わせにより、良好な可視発光を確認でき、かつその発光寿命が長いことがわかったこと、第4の効果としては内部回転異性性を付与しうる結合軸が存在するビアリール基を有する本発明の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子において高い発光輝度ないしは発光効率と長い発光寿命が両立されることを確認できたことが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】エレクトロルミネッセンス素子の構造断面図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0046】
本発明において、エレクトロルミネッセンス材料とは、電場又は電界によって発光する材料であって、具体的には陽極と陰極から、それぞれ正孔と電子が注入され、それらが再結合する際に発光する材料であり、加速電子の衝突エネルギーによる発光(いわゆる無機エレクトロルミネッセンス)する材料とは異なる。
【0047】
電場又は電界によって発光するとは、例えば発光層を挟んで一対の対向電極を有し、該電極に電流を流すことで該発光層に含有されるエレクトロルミネッセンス材料が発光するものである。これは、発光層を挟んだ一対の対向電極の一方の電極から注入された電子と、もう一方の電極から注入された正孔により発光層内で再結合が起こり、エレクトロルミネッセンス材料がより高いエネルギー準位に励起され、励起されたエレクトロルミネッセンス材料が元の基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出することにより起こると考えられている。
【0048】
本発明に用いられるエレクトロルミネッセンス材料は、電場又は電界によって発光するものであれば特に制限はなく、例えば窒化ガリウム(GaN)のような無機のエレクトロルミネッセンス材料(無機LEDともいう)でもよく、有機のエレクトロルミネッセンス材料(有機LEDともいう)のいずれであってもかまわないが、有機LEDを用いることが発光効率の点から好ましい。
【0049】
本発明においては、エレクトロルミネッセンス材料は電場又は電界により430nm以下に極大発光波長を有するものであることが好ましく、更には400〜430nmに極大発光波長を有するものであることが好ましい。
【0050】
また、CIE色度図表上では、新編色彩科学ハンドブック第4刷 日本色彩学会編 第108頁に記載されている「図4.16 色刺激(光の色)の色名と色度座標との関係」の中の Purplish Blue、Blueish PurpleまたはPurpleの領域であることが好ましい。
【0051】
用いられるエレクトロルミネッセンス材料について具体的に説明する。
【0052】
用いられるエレクトロルミネッセンス材料は、前記の一般式(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(C1)、(D1)、(E1)、(F1)、(F2)で表される化合物ならびに(G1)で表される4−ハロ−1,1’−ビナフチル誘導体を原料として用い(G2)で表される1価のビアリール基を分子内のいずれかに有する化合物があげられる。
【0053】
一般式(N1)、(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(C1)および(D1)において、Ar、Ar11、Ar12、Ar13、Ar21、Ar22、Ar23、Ar31、Ar32、Ar33、Ar41、Ar42、Ar51、Ar61およびAr62で表されるアリール基は、π電子の数が4n+2(nは自然数)であれば特に制限はなく、単環でも縮合環でもいい。さらに該アリール基は置換基によって置換されていてもよく、その置換されていてもいい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ホスホンアミド基、カルバモイル基、エステル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。また該アリール基の互いに隣接する場所に複数の置換基が置換する場合には、互いに縮合して炭化水素環または複素環を形成してもよく、さらにはスピロ構造を有する部分があっても良い。
【0054】
一般式(N1)、(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(C1)および(D1)において、Ar、Ar11、Ar12、Ar13、Ar21、Ar22、Ar23、Ar31、Ar32、Ar33、Ar41、Ar42、Ar51、Ar61およびAr62で表される芳香族複素環基とは、π電子の数が4n+2(nは自然数)である単環もしくは縮合環の複素環化合物の任意の位置から水素原子を一つ取り除いたものを表し、例えば、それに該当する複素環化合物としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン等が挙げられ、それら複素環はさらに縮合環を形成していてもよい。
【0055】
一般式(B1)、(C1)、(D1)、(E1)、(F1)、(F2)、(G1)および(G2)において、R41、R51、R61、R62、R71、R81、R82、R91およびR92で表される置換基としては、置換可能なものならば特に制限はないが、代表的にはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アミノ基、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ホスホンアミド基、カルバモイル基、エステル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。また、該置換基中の互いに隣接する場所に複数の置換基が置換する場合には、互いに縮合して炭化水素環または複素環を形成してもよく、さらにはスピロ構造を有する部分があっても良い。
【0056】
一般式(N1)において、
【0057】
【化11】

【0058】
で表される含窒素複素環基としては、5員または6員の6π系の芳香族複素環が好ましく、具体的には、2−ピリジル基、2−ピリミジル基、6−ピリミジル基、2−ピラジル基、3−ピリダジル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソオキサゾリル基、3−イソチアゾリル基、3−フラザニル基、3−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピロロ基、2−オキサジアゾリル基、2−チアジアゾリル基、2−(1,2,4−トリアゾリル)基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基等が挙げられる。さらに該含窒素複素環は例えばR41で説明した置換基によって置換されていても良く、さらに縮合環(例えば2−ピリジル基に炭化水素環を縮合させた2−キノリル基、3−ピラゾリル基に複素環を縮合させた6−(1H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾリル)基等)を形成してもよい。
【0059】
一般式(N1)において、
【0060】
【化12】

【0061】
で表される芳香族炭化水素環基は、4n+2π系の芳香族炭化水素化合物から任意の位置の水素原子を1つ取り除いたものであり、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、1−アントリル基、9−フェナントリル基、2−トリフェニレニル基、3−ペリレニル基等が挙げられる。さらに該炭化水素環は例えばR41で説明した置換基によって置換されていても良く、さらに縮合環(例えば9−フェナントリル基に炭化水素環を縮合させた9−ピレニル基、フェニル基に複素環を縮合させた8−キノリル基等)を形成してもよい。
【0062】
一般式(N1)において、
【0063】
【化13】

【0064】
で表される芳香族複素環基は、含窒素芳香族複素環に結合する部分の両隣接位が炭素原子であり、かつ4n+2π系の芳香族基であれば特に制限はなく、具体的には、3−ピリジル基、5−ピリミジル基、4−ピリダジル基、5−ピリダジル基、4−イソオキサゾリル基、4−イソチアゾリル基、4−ピラゾリル基、3−ピロロ基、3−フリル基、3−チエニル基等が挙げられる。さらに該複素環は例えばR41で説明した置換基によって置換されていても良く、さらに縮合環を形成してもよい。
【0065】
一般式(A1)、(A2)、(B1)、(C1)、(D1)、(E1)、(F1)および(F2)に記載されている「内部回転異性性を付与しうる結合軸」とは、例えば下記1,1’−ビナフチルのナフタレン核とナフタレン核をつなぐ結合軸のように、常温常圧下において立体障害により360度の自由回転ができないような結合軸のことを意味し、便宜的にはCPK模型を組んだ際に360度の自由回転ができなければその結合軸は「内部回転異性性を付与しうる結合軸」であると言うことができる。
【0066】
また、「内部回転異性性を付与しうる結合軸」を有する化合物には異性体が存在し、その異性体を「アトロプ異性体」または「内部回転光学異性体」(化学大辞典 第6巻 第588頁 共立出版)というが、逆に言うと「内部回転異性性を付与しうる結合軸」をもつ化合物(または置換基)とは「アトロプ異性体」または「内部回転光学異性体」が存在する化合物(または置換基)と言い換えることもできる。
【0067】
【化14】

【0068】
以下に「内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基」を有する置換基の基本骨格(図で示す化合物から任意の位置の水素原子を取り除いたものが置換基となる。また、その基本骨格はさらにR41で説明したような置換基によって置換されていても良く、さらに縮合環を形成してもよい。)の一例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
一般式(E1)においてMで表される金属元素は、1価から4価のイオン構造が採れるものであれば特に制限はないが、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hg、Pd、Cu、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Geが好ましく、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、B、Al、Ga、Inがさらに好ましく、Be、Al、Zn、Gaが最も好ましい。
【0073】
一般式(E1)において、L71で表されるMとイオン結合を形成し、かつMに配位可能な部分を有する1価のアニオンとは、酸性状態では酸素原子、硫黄原子または窒素原子上にプロトンが付加された状態を採りうる、すなわち解離性基を有する(−OH、−NH、−SH)化合物からプロトンを1つ取った形のものを示し、かつ該酸素原子、硫黄原子または窒素原子から2ないし3原子隔てた位置に窒素原子またはカルコゲン原子(O、S、Se、Te)のような金属に配位可能な原子を有するものであり、例えば、8−ヒドロキシキノリンの水酸基からプロトンを取った酸素アニオン、1H−2−(1−ピラゾリル)イミダゾールの1位のNHからプロトンを取った窒素アニオン等が挙げられる。
【0074】
一般式(E1)において、R71で表されるMとイオン結合を形成する1価のアニオンは、pH8以上の塩基性条件下でアニオンを発生するものであれば特に制限はなく、例えば、4−ヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2−メルカプトナフタレン、1H−ピラゾロ[5,1−c][1,2,4]トリアゾールからプロトンを1つ取り除いたアニオン等が挙げられる。
【0075】
一般式(F1)において、ZおよびZで表される1価の発光性化合物残基とは、室温下で発光を示す化合物の任意の位置から水素原子または置換基を1つ取り除いたものを表し、一般式(F2)において、Zで表されるk価の発光性化合物残基とは、室温下で発光を示す化合物の任意の位置から水素原子または置換基をk個取り除いたものを表し、該室温下で発光を示す化合物の「発光」は蛍光発光でも燐光発光でもよい。
【0076】
発光性化合物残基となりうる発光性化合物としては、レーザー色素のように可視領域に吸収を有する蛍光色素でも、蛍光増白剤のように紫外領域に吸収を有する蛍光化合物でも、さらにポルフィリンのプラチナ錯体やビアセチルのような燐光発光化合物でもよく、具体的には、例えば八木國夫、吉田善一、太田利一共著「蛍光 −理論・測定・応用−」(南江堂)の第99頁〜122頁に記載されている有機蛍光物質、同書第251頁〜270頁に記載されている蛍光増白剤、さらに同書第274頁〜287頁に記載されている蛍光色素がその代表例として挙げられ、特に好ましくは、トリフェニレンやペリレン等に代表される縮合環式芳香族炭化水素環化合物、p−ターフェニルやクオーターフェニル等に代表される線状共役多環式炭化水素化合物、アクリジン、キノリン、カルバゾール、カルバゾン、フルオレン、キサンチオン、アロキサジン、アクリドン、フラボン、クマリン、ナフトイミダゾール、ベンゾオキサゾールおよびジベンゾフェナジン等に代表される縮合環式芳香族複素環化合物、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびトリアゾール等に代表される芳香族複素環化合物、アミノクロロマレイックイミド、メチルアミノシトラコニックメチルイミド、デカペンタエンカルボン酸およびデカペンタエンジカルボン酸等に代表される共役系脂肪族化合物、アクリジンオレンジNO、メチレンブルー、フルオロセイン、エオシン、ローダミンおよびベンソフラビン等に代表される蛍光色素化合物、オキサカルボシアニン、カルボシアニン、チアカルボシアニンおよび2−(アニリノポリエチニル)−ベンゾチアゾール等の感光色素化合物、ポルフィリン、クロロフィルおよびリボフラビン等に代表される天然色素化合物、ジアミノスチルベン、ジスチリルベンゼン、ベンジジン、ジアミノカルバゾール、トリアゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾロン、ジヒドロピリジン、クマリン、カルボスチリル、ジアミノジベンゾチオフェンオキシド、ジアミノフルオレン、オキサシアニン、アミノナフタルイミド、ピラゾリンおよびオキサジアゾール系の蛍光増白剤 等が挙げられ、さらにこれらは置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成していてもよい。
【0077】
一般式(G1)において、X91で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アスタチン原子が挙げられるが、この中で好ましいものは臭素原子およびヨウ素原子である。
【0078】
本発明において、エレクトロルミネッセンス材料は後述する正孔注入材料、電子注入材料を兼ねても良い。つまり、正孔注入や電子注入能力を併せもっていても良い。また、エレクトロルミネッセンス材料は、該材料をホストとするドーピング材料(ドーパント、ゲストともいう)を必要に応じて併用しても良い。
【0079】
以下にエレクトロルミネッセンス材料の具体例をA−1〜A−30、B−1〜B−24、C−1〜C−9、D−1〜D−12、E−1〜E−19、F−1〜F−21として挙げるが、それらに限定されるものではない。
【0080】
【化18】

【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
【化21】

【0084】
【化22】

【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
【化25】

【0088】
【化26】

【0089】
【化27】

【0090】
【化28】

【0091】
【化29】

【0092】
【化30】

【0093】
【化31】

【0094】
【化32】

【0095】
【化33】

【0096】
【化34】

【0097】
【化35】

【0098】
【化36】

【0099】
【化37】

【0100】
次に、本発明でいうエレクトロルミネッセンス素子とは、基盤上に前記下エレクトロルミネッセンス材料と、該エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光を吸収して蛍光を発する無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体とを含有し、エレクトロルミネッセンス材料を含有する層を挟んで一対の対向電極を有する素子をいう。ここで、エレクトロルミネッセンス材料と無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体とは別の層に含有されており、同一の層に存在することはない。
【0101】
下の記載において、特に指定のない限り、エレクトロルミネッセンス材料は発光層を含有する層を発光層、正孔注入層、電子注入層の何れかの層に存在し、無機系蛍光体及び/又は希土類錯体系蛍光体は色変換層に存在するものである。
【0102】
また、本発明におけるエレクトロルミネッセンス素子は、必要に応じて電子注入層や、正孔注入層を介在させてもかまわない。
【0103】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられる基盤は、ガラス、プラスチックなどの種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はない。本発明のエレクトロルミネッセンス素子に好ましく用いられる基盤としては例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムを挙げることができる。
【0104】
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0105】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、本発明のエレクトロルミネッセンス材料を発光層に用いることが好ましいが、公知の発光材料と併用してもかまわない。具体的には例えば「有機EL素子とその工業化最前線」 1998年11月30日 (株)エヌ・ティー・エス発行(以下、文献Aということもある。)の第1編第3章(第35頁〜第51頁)に記載されている低分子系発光材料、同文献Aの第1編第4章(第55頁〜第79頁)に記載されている色素ドープ材料、同文献Aの第1編第5章(第81頁〜第100頁、第178頁〜第189頁、だい192頁〜第212頁)に記載されている高分子系材料などを挙げることができる。また、これらの文献中の引用文献に挙がっている化合物も同様に使用することができる。
【0106】
エレクトロルミネッセンス素子は通常2つの電極間に単層または複数の層を含有して構成され、該構成層としては前記発光層の他に正孔注入層(または電荷注入層、ホール注入層、電荷輸送層、ホール輸送層ともいう)、電子注入層(または電子輸送層ともいう)等が挙げられる。
【0107】
前記、正孔注入層および電子注入層は必要に応じてさらに積層構造をとっていてもよく、例えば、陽極/第1正孔注入層/第2正孔注入層(正孔輸送層)/発光層/第2電子注入層(電子輸送層)/第1電子注入層/陰極のような層構成を取ってもよい。
【0108】
以下に本発明におけるエレクトロルミネッセンス素子の層構成の例を示す(ただし、上記の如く複数の正孔注入層および/または電子注入層についての記載は省略するが、当然それらが複数の化合物を重ねてなる積層構造を形成していても良い。)
基板/色変換層/基板/陽極/発光層/陰極
(2)基板/色変換層/基板/陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)基板/色変換層/基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)基板/色変換層/基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)基板/陽極/発光層/陰極/色変換層/基板
(6)基板/陽極/正孔注入層/発光層/陰極/色変換層/基板
(7)基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極/色変換層/基板
(8)基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極/色変換層/基板
ここで、色変換層と接する基板と陽極と接する基板とは、同じであっても異なっていても良く、さらに各素子の外側を基板で覆っても良い。
【0109】
なお、陽極と発光層または正孔注入層の間、および、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
【0110】
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、文献Aの第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
【0111】
陽極バッファー層としては、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0112】
陰極バッファー層としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
【0113】
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
【0114】
発光層、正孔注入層、電子注入層又はバッファー層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜化することにより形成することができるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、該化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜はLB法により形成された薄膜(分子累積膜)と凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
【0115】
また、この発光層は、特開昭57−51781号公報に記載されているように、樹脂などの結着材と共に上記発光材料を溶剤に溶かして溶液としたのち、これをスピンコート法などにより薄膜化して形成することができる。このようにして形成された発光層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲で用いられることが好ましい。
【0116】
このエレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAuなどの金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)などの導電性透明材料が挙げられる。該陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0117】
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は10Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料によって適宜選択できるが、10nm〜1μm程度で用いるのが好ましく、10〜200nmであることが更に好ましい。
【0118】
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV未満)金属(電子注入性金属と称することもある)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、カリウム、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。
【0119】
これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などのように、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きな金属との混合物が好適である。
【0120】
ただし、陰極表面に前記のような陰極バッファー層を塗設して使用する場合には、仕事関数の制限は解除され、例えば特開平11−224783号に記載されているように陰極バッファー層(該特許明細書中では「電子注入層」と称している)にアルカリ金属やアルカリ土類金属のフッ化物を用いることにより、陰極はITOやSnO、In、ZnO:Al等の通常陽極として使用される仕事関数の大きな物質を使用することもでき、また文献Aの第145頁第15行目〜第28行目に記載されているように、陰極バッファー層としてフッ化リチウム(膜厚0.5〜1μm)を用いることにより、アルミニウムが陰極材料として使用できること、等が知られており、このような陰極バッファー層を用いる場合の陰極材料としては、前記金属酸化物やアルミニウムの他、銀、銅、プラチナ、金等の周期律表で「金属」として定義されている元素が使用できる。
【0121】
該陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより、作製することができる。さらに、特開平11−8074号に記載されているようなメッキ法によって作成することも可能である。
【0122】
陰極としてのシート抵抗は10Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は10nm〜100μmであることが好ましく、50〜2000nmであることが更に好ましい。
【0123】
なお、発光を透過させるため、エレクトロルミネッセンス素子の発光層と色変換層との間に位置する電極が、透明又は半透明であることが発光効率が向上し好ましい。
【0124】
ここで、電極が透明又は半透明であるとは400nm〜700nmにおける可視光透過率が20%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましい。本発明において必要に応じて設けられる正孔注入層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有するものであり、この正孔注入層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入さる。また、発光層に陰極又は電子注入層より注入された電子と、発光層と正孔注入層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
【0125】
この正孔注入層に用いられる材料(以下、正孔注入材料という)については、前記の機能を有するものであれば特に制限はなく、従来、公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0126】
上記正孔注入材料は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0127】
有機の正孔注入材料には、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1号公報等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、フタロシアニン誘導体、テトラアリールベンジシン化合物、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。これらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用するときは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0128】
正孔注入層を積層して使用する場合(正孔注入と正孔輸送の機能を使い分ける時)は、上記の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、陽極(ITO等)側からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積層することが好ましい。また、陽極表面には薄膜性(製膜性)の良好な化合物(例えば特開平4−308688号等に記載されているスターバースト型化合物等がその代表例である)を用いることが好ましい。
【0129】
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4′′−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0130】
また、無機の正孔注入材料としてp型−Si、p型−SiCなどを使用することができる。
【0131】
この正孔注入層は、上記正孔注入材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度であることが好ましい。
【0132】
また、必要に応じて用いられる電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0133】
電子注入層は、発光層に用いる化合物の電子注入輸送機能がさほど高くないときなどに設けられ、陰極からの電子の注入を容易にする機能、電子を輸送する機能および正孔を妨げる機能を有する。なお、電子注入輸送層は、注入機能を持つ層と輸送機能を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0134】
この電子注入層に用いられる材料(以下、電子注入材料という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、電子注入材料としても使用することができる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、アリールアミノ基、アルキルアミノ基に置換したトリアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。
【0135】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子注入材料として用いることができる。その他、前記文献A第 編第 章第38頁〜第48頁に記載の金属錯体系材料、メタルフリーメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子注入材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
【0136】
この電子注入層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。
【0137】
電子注入層としての膜厚は、特に制限はないが、5nm〜5μm程度であることが好ましい。
【0138】
電子注入層は、上記の電子注入材料一種又は二種以上を含有する一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成又は異種組成の複数層を有する積層構造であってもよい。
【0139】
次に、本発明における無機系蛍光体及び希土類錯体系蛍光体について説明する。
【0140】
本発明において、無機系蛍光体、希土類錯体系蛍光体としては、前記エレクトロルミネッセンス材料から発せられる発光を吸収して該エレクトロルミネッセンス材料の極大発光波長とは異なる極大発光波長に発光するものであれば特に制限はない。
【0141】
ここで、エレクトロルミネッセンス材料から発せられる極大発光波長と異なる発光波長とは、エレクトロルミネッセンス材料が発する極大発光波長に対して、無機系蛍光体の極大発光波長が10nm以上離れたものをいう。
【0142】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子に含有される無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体は、エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光によって400〜700nmの領域に極大発光を有するものであることが好ましい。
【0143】
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子に含有される無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体は、エレクトロルミネッセンス材料から発せられる極大発光波長に対して180nm以上長波側に極大発光波長を有するものを少なくとも1種含有することが好ましい。
【0144】
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、フルカラー化の目的で、エレクトロルミネッセンス材料から発せられる光によって400〜500nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種、501〜600nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種及び601〜700nmに極大発光波長を有する無機系蛍光体又は希土類錯体系蛍光体の少なくとも1種をそれぞれ有する色変換層を有することが好ましい。
【0145】
色変換層は、用途によって様々な形態を採ることができる。
【0146】
例えば、白色の面状発光体にしたい場合には、青色に発光する蛍光体と黄色に発光する蛍光体の混合物を用いるか、または、青色発光、緑色発光、赤色発光の3種の蛍光体の混合物を用いるが、その場合は特にパターニングする必要はなく、均一の厚みで塗設すれば良い。
【0147】
液晶ディスプレイのカラーフィルターのような、多色化された色変換フィルターを得たい場合は、必要とする発光色の得られる蛍光体をストライプ状、ドット状またはモザイク状にパターニングすればよく、そのパターニング方法としては、従来の液晶ディスプレイ用カラーフィルターの製造方法がそのまま適用でき、具体的には顔料分散法、印刷法、インクジェット法等で作成することができる。
【0148】
本発明における無機系蛍光体の組成は特に制限はないが、結晶母体であるYS、ZnSiO、Ca(POCl等に代表される金属酸化物及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、In、Cu、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0149】
結晶母体を更に詳しく説明すると、結晶母体としては金属酸化物が好ましく、例えば、(X)Al1627、(X)Al1425、(X)AlSi10、(X)Si、(X)Si、(X)、(X)、(X)(POCl、(X)Si−2(X)Cl
〔ここで、Xはアルカリ土類金属を表す。なお、Xで表されるアルカリ土類金属は単一成分でも2種類以上の混合成分でもよく、その混合比率は任意でよい。〕のようなアルカリ土類金属で置換された酸化アルミニウム、酸化ケイ素、リン酸、ハロリン酸等が代表的な結晶母体として挙げられる。
【0150】
その他の好ましい結晶母体としては、亜鉛の酸化物および硫化物、イットリウムやガドリウム、ランタン等の希土類金属の酸化物およびその酸化物の酸素の一部を硫黄原子に換えた(硫化物)もの、および希土類金属の硫化物およびそれらの酸化物や硫化物に任意の金属元素を配合したもの等が挙げられる。
【0151】
結晶母体の好ましい例を以下に列挙する。
【0152】
ZnS、YS、YAl12、YSiO10、ZnSiO、Y、BaMgAl1017、BaAl1219、(Ba、Sr、Mg)O・aAl、(Y、Gd)BO、(Zn、Cd)S、SrGa、SrS、GaS、SnO、Ca10(PO(F、Cl)、(Ba、Sr)(Mg、Mn)Al1017、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl、(La、Ce)PO、CeMgAl1119、GdMgB10、Sr、SrAl1425、YSO、GdS、Gd、YVO、Y(P,V)O等である。
【0153】
以上の結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、同族の元素と一部置き換えたものでも構わないし、とくに元素組成に制限はなく、紫外領域の光または紫色領域の光を吸収して可視光を発するものであればよい。
【0154】
本発明において、無機蛍光体の賦活剤、共賦活剤として好ましいものは、La、Eu、Tb、Ce、Yb、Pr等に代表されるランタノイド元素のイオン、Ag、Mn、Cu、In、Al 等の金属 のイオンであり、そのドープ量は母体に対して0.001〜100モル%が好ましく、0.01〜50モル%がさらに好ましい。
【0155】
賦活剤、共賦活剤は結晶母体を構成するイオンの一部を上記ランタノイドのようなイオンに置き換えることでその結晶の中にドープされる。
【0156】
蛍光体結晶の実際の組成は、厳密に記載すれば以下のような組成式になるが、賦活剤の量の大小は本質的な蛍光特性に影響を及ぼさないことが多いので、以下特にことわりのない限り下記xやyの数値は記載しないこととする。例えばSr4−xAl1425:Eu2+は、本発明においてはSrAl1425:Eu2+と表記する。
【0157】
以下に代表的な無機蛍光体(結晶母体と賦活剤によって構成される無機蛍光体)の組成式を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(Ba Mg1−z3−x−yAl1627:Eu2+,Mn2+、Sr4−xAl1425:Eu2+、(Sr1−z Ba1−xl2Si:Eu2+、Ba2−xSiO:Eu2+、Sr2−xSiO:Eu2+、Mg2−xSiO:Eu2+、(BaSr)1−xSiO:Eu2+、Y2−x−ySiO:Ce3+,Tb3+、Sr2−x:Eu2+、Sr2−x:Eu2+、(BaCaMg1−y−z5−x(POCl:Eu2+、Sr2−xSi−2SrCl:Eu2+[x,yおよびzはそれぞれ1以下の任意の数を表す。]
以下に本発明に好ましく使用される無機蛍光体を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
[青色発光 無機蛍光化合物]
(BL−1) Sr:Sn4+
(BL−2) SrAl1425:Eu2+
(BL−3) BaMgAl1017:Eu2+
(BL−4) SrGa:Ce3+
(BL−5) CaGa:Ce3+
(BL−6) (Ba、Sr)(Mg、Mn)Al1017:Eu2+
(BL−7) (Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu2+
(BL−8) BaAlSiO:Eu2+
(BL−9) Sr:Eu2+
(BL−10) Sr(POCl:Eu2+
(BL−11) (Sr,Ca,Ba)(POCl:Eu2+
(BL−12) BaMgAl1627:Eu2+
(BL−13) (Ba,Ca)(POCl:Eu2+
(BL−14) BaMgSi:Eu2+
(BL−15) SrMgSi:Eu2+
[緑色発光 無機蛍光化合物]
(GL−1) (BaMg)Al1627:Eu2+,Mn2+
(GL−2) SrAl1425:Eu2+
(GL−3) (SrBa)AlSi:Eu2+
(GL−4) (BaMg)SiO:Eu2+
(GL−5) YSiO:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr−Sr:Eu2+
(GL−7) (BaCaMg)(POCl:Eu2+
(GL−8) SrSi−2SrCl:Eu2+
(GL−9) ZrSiO、MgAl1119:Ce3+,Tb3+
(GL−10) BaSiO:Eu2+
(GL−11) SrSiO:Eu2+
(GL−12) (BaSr)SiO:Eu2+
[赤色発光 無機蛍光化合物]
(RL−1) YS:Eu3+
(RL−2) YAlO:Eu3+
(RL−3) Ca(SiO:Eu3+
(RL−4) LiY(SiO:Eu3+
(RL−5) YVO:Eu3+
(RL−6) CaS:Eu3+
(RL−7) Gd:Eu3+
(RL−8) GdS:Eu3+
(RL−9) Y(P,V)O:Eu3+
本発明に用いられる無機蛍光体は、発光強度の観点から、製造時に機械的破砕工程を経ない、つまりビルドアップ法で合成されるものが好ましく、特にSol−Gel法等による液相法によって製造されるものが好ましい。また、組成上は無機酸化物が母体となっているものが好ましい。
【0158】
Sol−Gel法による製造方法とは、例えば、作花済夫著「ゾル−ゲル法の応用」(1997年アグネ承風社発行)に詳しく書かれているが、基本的には、溶液から出発し、溶液のゾル化、ゲル化を経て材料を溶融法よりも低温で合成する方法を意味し、本発明でいう「Sol−Gel法」とは、蛍光体製造の少なくとも1工程で液相法での反応を行うことを指し、通常の無機蛍光体合成に適用される溶融反応で行う合成法と区別することができる。本発明のSol−Gel法は、一般的には母体または賦活剤または共賦活剤に用いる元素(金属)を例えばテトラメトキシシラン(Si(OCH)やユーロピウム−2,4−ペンタンジオネート(Eu+(CHCOCH=C(O−)CH)等の金属アルコキシドや金属錯体、またはそれらの有機溶媒溶液に金属単体を加えて作るダブルアルコキシド(例えばAl(OBu)の2−ブタノール溶液に金属マグネシウムを加えて作るMg〔Al(OBu)等)、金属ハロゲン化物、有機酸の金属塩、金属単体として必要量混合し、液相状態で熱的または化学的に重縮合することによる製造方法を意味し、必要に応じて焼成や還元処理等を施してもよい。
【0159】
なお、本発明で用いられる金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、金属塩または金属の「金属」とは、一般に周期律表等で定義されている「金属類(Metals)」の他に「遷移金属(Transition Metals)」の全ての元素、「ランタノイド」の全ての元素、「アクチノイド」の全ての元素、および「非金属(Non Metals)」として定義されるホウ素、珪素(シリコン)を含んだものとして定義する。
【0160】
上記無機蛍光体は、必要に応じて表面改質処理を施してもよく、その方法としてはシランカップリング剤等の化学的処理によるものや、サブミクロンオーダーの微粒子等の添加による物理的処理によるもの、さらにはそれらの併用によるもの等が挙げられる。
【0161】
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、日本ユニカー株式会社発行(1997年8月2日)の「NUCシリコーン シランカップリング剤」カタログに記載されているものがそのまま使え、その具体例としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロピルオキシシラン、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピル−n−プロピルオキシシラン、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)ジ−n−プロピルオキシシラン、アクリロイルオキシジメトキシエチルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0162】
本発明で用いられる微粒子としては、無機微粒子であることが好ましく、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛等の微粒子が挙げられる。
【0163】
また、特にSol−Gel法で製造する場合、蛍光体の前駆溶液または一次粒子を含む液を透明基板に印刷法やインクジェット法等でパターニングした後に焼成や還元処理等の結晶化処理または高輝度化処理を施しても良い。
【0164】
次に、本発明における希土類錯体系蛍光体としては、希土類金属としてCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等を有するものが挙げられ、錯体を形成する有機配位子としては、芳香族系、非芳香族系のどちらでも良く、好ましく下記一般式(1)又は一般式(R2)で表される化合物が好ましい。
【0165】
一般式(1)
Xa−(La)−(Lb)n−(Lc)−Ya
[式中、La、Lb、Lcはそれぞれ独立に2個以上の結合手を持つ原子を表わし、nは0または1を表わし、XaはLaの隣接位に配位可能な原子を有する置換基を表わし、YaはLcの隣接位に配位可能な原子を有する置換基を表わす。さらにXaの任意の部分とLaとは互いに縮合して環を形成してもよく、Yaの任意の部分とLcとは互いに縮合して環を形成してもよく、LaとLcとは互いに縮合して環を形成してもよく、さらに分子内に芳香族炭化水素環または芳香族複素環が少なくとも一つ存在する。ただし、Xa−(La)−(Lb)n−(Lc)−Yaがβ−ジケトン誘導体やβ−ケトエステル誘導体、β−ケトアミド誘導体又は前記ケトンの酸素原子を硫黄原子又は−N(R1)−に置き換えたもの、クラウンエーテルやアザクラウンエーテルまたはチアクラウンエーテルまたはクラウンエーテルの酸素原子を任意の数硫黄原子または−N(R1)−に置き換えたクラウンエーテルを表わす場合には芳香族炭化水素環または芳香族複素環は無くてもよい。]
一般式(1)において、XaおよびYaで表される配位可能な原子とは、具体的には酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子であり、特に酸素原子、窒素原子、硫黄原子であることが好ましい。
【0166】
一般式(1)において、La、Lb、Lcで表される2個以上の結合手を持つ原子としては、特に制限はないが、代表的には炭素原子、酸素原子、窒素原子、シリコン原子、チタン原子等が挙げられるが、このましいものは炭素原子である。
【0167】
以下に一般式(1)で表される希土類錯体系蛍光体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
【化38】

【0169】
【化39】

【0170】
【化40】

【0171】
【化41】

【0172】
【化42】

【0173】
【化43】

【0174】
【化44】

【0175】
次に、色変換フィルターについて説明する。
【0176】
色変換フィルターとは、光源の色(発光色)を所望の色に変換するのに用いられる波長変換素子のことであり、基本的には光源の最大極大波長よりも10nm以上長波長に波長を変換できる波長変換素子であり、具体的な用途としては、特開平3−152897号、同9−245511号、同11−297477号等に記載されたフルカラーディスプレイ用フィルター(青色の光源から緑および赤に変換し、それらをストライプ状に配置することによって青、緑、赤の発光を可能とする色変換フィルター)、照明や液晶ディスプレーのバックライト用の白色発光用フィルター(400〜700nmの可視領域の光を幅広く発光させる色変換フィルター)、ネオンサインや自動車の計器類の部分発光用フィルター(必要に応じた場所に必要な色を表示するための色変換フィルター)などがその代表例として挙げられる。
【実施例】
【0177】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0178】
実施例(1−1) エレクトロルミネッセンス素子(UV−1)の作製
陽極としてガラス上にITOを150nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA−45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD)200mgを入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにp−クウオーターフェニル(PQP)200mgを入れ、さらに別のモリブデン製抵抗加熱ボートにトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、TPDの入った前記加熱ボートに通電して、220℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで透明支持基板に蒸着し、膜厚60nmの正孔注入層を設けた。さらに、PQPの入った前記加熱ボートを通電して220℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで前記正孔注入層上に蒸着して膜厚40nmの発光層を設けた。さらに、Alqの入った前記加熱ボートを通電して250℃まで加熱し、蒸着速度0.1nm/secで前記発光層の上に蒸着して膜厚20nmの電子注入層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。次に、真空槽をあけ、電子注入層の上にステンレス鋼製の長方形穴あきマスクを設置し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにマグネシウム3gを入れ、タングステン製の蒸着用バスケットに銀を0.5g入れ、再び真空槽を2×10−4Paまで減圧した後、マグネシウム入りのボートに通電して蒸着速度1.5〜2.0nm/secでマグネシウムを蒸着し、この際、同時に銀のバスケットを加熱し、蒸着速度0.1nm/secで銀を蒸着し、前記マグネシウムと銀との混合物からなる対向電極とすることにより、エレクトロルミネッセンス素子UV−1を作製した。
【0179】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、発光最大波長380nmの発光を得た。
【0180】
実施例(1−2) 比較用エレクトロルミネッセンス素子(B−1)の作製
(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)に置き換えた以外は(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(B−1)を作製した。
【0181】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、発光最大波長475nmの青色の発光を得た。
【0182】
【化45】

【0183】
実施例(2−1) 例示化合物(GL−10) BaSiO:Eu2+の合成
0.016モルのアンモニアを含有するアンモニア水にエタノール150mlと水150mlを加えアルカリ液を作製した。
【0184】
さらにテトラエトキシシラン8.33g(0.04モル)とユーロピウム(III)アセチルアセトナート錯体2水和物0.097g(0.2ミリモル)を150mlのエタノールに溶解した溶液を室温下にて前記アルカリ液中に滴下速度約1ml/minで攪拌しながら添加し、ゾル液を調整した。得られたゾルをエバポレータで約15倍(約30ml)に濃縮し、これに0.3mol/lの硝酸バリウム水溶液を295ml添加しゲル化させた。
【0185】
得られた湿潤ゲルは密閉容器中、60℃で一晩熟成させた。その後エタノール(約300ml)中に攪拌分散させ、濾紙(Advantec 5A)を用いた吸引濾過により分取し、室温で乾燥した。乾燥ゲルは、5% H−N雰囲気中、1000℃で2時間熱処理を施し、太陽光下で薄緑色に光る無機蛍光体 GL−10 (BaSiO:Eu2+0.005) 2.7gを得た。
【0186】
GL−10 の成分組成はXRDスペクトルにより分析した。その結果主成分はBaSiO、微量含まれる副成分はBaSiOとBaSiOであることがわかった。
【0187】
GL−10の平均粒径は1.05μm、発光極大波長は500nm(励起光405nm)の緑色に発光する蛍光体であることがわかった。
【0188】
また、同様な方法で、赤色発光微粒子無機蛍光体(RL−5)(平均粒径約0.85μm、極大発光波長610nm(励起光375nm))と青色発光無機蛍光体(BL−3)(平均粒径0.90μm、極大発光波長432nm(励起光375nm))を得た。
【0189】
実施例(2−2) 微粒子無機蛍光体の表面物性改質
平均粒径5nmのエアロジル0.16gにエタノール15gおよびγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.22gを加えて開放系室温下1時間攪拌した。この混合物と無機蛍光体(GL−10)20gとを乳鉢に移し、よくすり混ぜた後、70℃のオーブンで2時間、さらに120℃のオーブンで2時間加熱し、表面改質した(GL−10)を得た。
【0190】
また、同様にして、RL−5とBL−3の表面改質も行った。
【0191】
実施例(2−3) 比較無機蛍光体の表面物性改良
無機蛍光体(RL−5)を化成オプトニクス社製KX−605(ZnSiO:Mn2+、平均粒径7μm、極大発光波長570nm(励起光343nm))に置き換えた以外は上記(2−2)記載の方法と全く同じ方法でKX−605の表面改質を行った。
【0192】
実施例(3−1) 無機蛍光体を用いた色変換フィルターの作製
上記の表面改質を施した赤色発光無機蛍光体(RL−5)10gに、トルエン/エタノール=1/1の混合溶液(300g)で溶解されたブチラール(BX−1)30gを加え、攪拌した後、Wet膜厚200μmでガラス上に塗布した。得られた塗布済みガラスを100℃のオーブンで4時間加熱乾燥して、色変換フィルター(F−1)を作成した。
【0193】
また、これと同じ方法で緑色発光無機蛍光体(GL−10)を塗設した色変換フィルター(F−2)および青色発光無機蛍光体(BL−3)を塗設した色変換フィルター(F−3)を作成した。
【0194】
さらに、同様な方法で比較無機蛍光体KX−605(表面改質処理を施したもの)を塗設した比較用色変換カラーフィルター(F−4)を作成した。
【0195】
色変換フィルターF−1、F−2およびF−3はほぼ無色で透明なフィルターであるのに対し、比較の色変換フィルターF−4は白色に濁りほとんど光透過性がなかった。
【0196】
可視光透過率はF−1が54%、F−2が57%、F−3が57%、F−4が4%であった。
【0197】
実施例(3−2) 希土類錯体系蛍光体を用いた色変換フィルターの作成
トルエン/エタノール=1/1の混合溶液(300g)で溶解されたブチラール(BX−1)30gに希土類錯体系蛍光体(RE−17)3gを溶解し、厚さ80μmのポリエーテルスルフォン(PES)フィルム上にWet膜厚150μmで塗布し、温風乾燥して、赤色発光の色変換フィルター(F−5)を作成した。
【0198】
また、これと同様に、RE−17の替わりにRE−23を用いて、緑色発光の色変換フィルター(F−6)を作成した。
【0199】
さらに、RE−17の替わりにRE−1を用いて、青色発光の色変換フィルター(F−7)を作成した。
【0200】
実施例(3−3) 蛍光色素を用いた色変換フィルターの作成(比較)
上記(3−2)のRE−17の替わりに蛍光色素 クマリン6 2.0gと蛍光顔料ソルベントイエロー116 0.5gに替えた以外は(3−2)と同様な方法で比較となる青色光励起緑色発光の色変換フィルター(F−8)を作成した。
【0201】
また、(3−2)のRE−17の替わりに蛍光顔料ソルベントイエロー116を1.0g、ベーシックバイオレット11を0.5gおよびローダミン6Gを0.5gに替えた以外は(3−2)と同様な方法で比較となる青色光励起赤色発光の色変換フィルター(F−9)を作成した。
【0202】
(1−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(UV−1)と(3−1)で作製した色変換フィルター(F−1)を重ね乾燥窒素ガス雰囲気下で12V直流電圧をかけると、色変換フィルターから発光する輝度は、26cd/mであり、CIE色度座標はx=0.64、y=0.29で赤色(レッド)の発光がでていることを観測した。
【0203】
実施例(4−1) (エレクトロルミネッセンス素子の発光効率、寿命および色調の評価)
エレクトロルミネッセンス素子(UV−1)および比較用エレクトロルミネッセンス素子(B−1)の各々に色変換フィルターまたは比較の色変換フィルターを蛍光体層がエレクトロルミネッセンス素子の発光面と相対するように重ね、温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で12V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光効率(lm/W)および輝度の半減する時間を測定した。発光効率は試料No.7の発光効率を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.8の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表1に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
表1より、赤色に発光する、色変換フィルターを有するエレクトロルミネッセンス素子(試料No.1および2)は比較の試料No.3に比べ発光効率が高く寿命も長いことがわかった。さらに発光色も該試料の方が好ましい色調であった。
【0206】
また、緑色に発光する、色変換フィルターを有するエレクトロルミネッセンス素子(試料No.4および6)は色変換フィルターに従来の無機系蛍光体を使用した比較の試料No.5に比べて圧倒的に発光効率が高いことがわかった。さらに青色発光のエレクトロルミネッセンス素子と色変換フィルターとの組み合わせである試料No.7と比べても、発光効率が高く、寿命も長いことがわかった。さらに発光色も比較試料より好ましい色調であった。
【0207】
さらに青色に発光する試料No.8および9においても高い発光効率と高い経時安定性が確認された。
【0208】
実施例(5−1) (LED素子の評価)
日亜化学(株)製紫外発光LED素子(UV LED Lamp)にLED素子側に蛍光体層が近づくように色変換フィルター(F−1)、(F−5)をそれぞれ重ねて電圧をかけ発光したところ輝度、色調ともに良好な赤色光を発した。同様に色変換フィルター(F−2)、(F−6)をそれぞれ重ねて電圧をかけ発光したところ輝度、色調ともに良好な緑色光を発した。同様に色変換フィルター(F−3)、(F−7)をそれぞれ重ねて電圧をかけ発光したところ輝度、色調ともに良好な青色光を発した。
【0209】
実施例(6−1) 化合物N−7を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−N7)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を化合物N−7に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−N7)を作製した。
【0210】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、紫色の発光を得た。
【0211】
実施例(6−2) 化合物A−3を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−A3)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を本発明の化合物A−3に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−A3)を作製した。
【0212】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、薄紫色の発光を得た。
【0213】
実施例(6−3) 化合物B−1を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−B1)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を化合物B−1に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−B1)を作製した。
【0214】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、紫色の発光を得た。
【0215】
実施例(6−4) 化合物D−5を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−D5)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を化合物D−5に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−D5)を作製した。
【0216】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、紫色の発光を得た。
【0217】
実施例(6−5) 化合物F−1を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−F1)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を化合物F−1に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−F1)を作製した。
【0218】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、紫色の発光を得た。
【0219】
実施例(7−1) (本発明の近紫外〜紫発光化合物の評価)
上記実施例(6−1)〜(6−5)で作成した近紫外〜紫発光のエレクトロルミネッセンス素子およびその比較として実施例(1−1)で作成した従来の発光材料を用いて作成したエレクトロルミネッセンス素子(UV−1)の各々に色変換フィルター F−2を蛍光体層がエレクトロルミネッセンス素子の発光面と相対するように重ね、温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.701の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.701の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表2に示す。
【0220】
【表2】

【0221】
表2より明らかなように、発光化合物(A−3、B−1、D−5、F−1)を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−A3、S−B1、S−D5、S−F1)は、従来の発光化合物を用いたエレクトロルミネッセンス素子(UV−1)に比べ、同じ色変換フィルターを用いた際の発光輝度が非常に高く、さらに寿命も大幅に改善されることがわかった。なお、試料No.702は、前記発行化合物(N−1)を用いた。
【0222】
(可視領域に発光する化合物を使用したエレクトロルミネッセンス素子の作製)
実施例(8−1) 本発明の化合物C−8を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−C8)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を本発明の化合物C−8に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−C8)を作製した。
【0223】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、青緑色の発光を得た。
【0224】
実施例(8−2) 本発明の化合物E−1を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−E1)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を本発明の化合物E−1に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−E1)を作製した。
【0225】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、緑色の発光を得た。
【0226】
実施例(8−3) 化合物F−7を使用したエレクトロルミネッセンス素子(S−F7)の作製
実施例(1−1)の発光体p−クウオーターフェニル(PQP)を化合物F−7に置き換えた以外は実施例(1−1)と全く同じ方法で作製した比較用エレクトロルミネッセンス素子(S−F7)を作製した。
【0227】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、青色の発光を得た。
【0228】
(本発明の化合物と公知の類似化合物との性能比較)
実施例(9−1)比較のエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の作製
実施例(1−1)と同様な方法を用い、図101に示す構成のエレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0229】
第1層の正孔輸送層にNPBを70nmの厚さで、第2層の発光層にZn(BOX)2を50nmの厚さで、第3層の電子輸送層にOXD−7を30nmの厚さで積層した以外は実施例(1−1)のエレクトロルミネッセンス素子(UV−1)と全く同様の手法で比較のエレクトロルミネッセンス素子CF−1を作製した。
【0230】
この素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として直流10ボルトを印加したところ、青色の発光を得た。
【0231】
【化46】

【0232】
実施例(9−2)トリアリールアミン系化合物の性能比較(正孔輸送材料としての評価)
実施例(9−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の第1層の正孔輸送材料であるNPBのみを表3に示す化合物に替えたエレクトロルミネッセンス素子(9201〜9214)を作製した。
【0233】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9201の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9201の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表3に示す。
【0234】
【化47】

【0235】
【化48】

【0236】
【表3】

【0237】
表3から明らかなように、トリアリールアミン系化合物をエレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料として使用した試料(No.9207〜9214)は何れも発光輝度が高くまた素子の発光寿命も長いことがわかる。
【0238】
例えば、N,N,N−トリ−p−ターフェニルアミン(QA−1)を使用した試料(No.9201)に対し、結合軸を3つ有する化合物A−3では約2倍の発光輝度と2倍以上の寿命があることがわかる。
【0239】
また、3つ以上のトリアリールアミン部分を有するQA−2およびQA−3を用いた試料(No.9202、9203)に対しては、3つのトリアリールアミン部分を持ち且つC2対称軸を分子内に3つ有する化合物(A−13)を使用した試料(9209)の方が発光輝度、寿命ともに高いことがわかった。
【0240】
同様に、ベンジジン(ナフチジン)誘導体である比較化合物QA−4、QA−5およびQA−6に比べ、化合物A−6、A−18、A−19およびF−1はそれを正孔輸送層に用いたエレクトロルミネッセンス素子において高い発光輝度と長い発光寿命とが両立されることがわかった。
【0241】
つまり、分子内に2つ以上のアトロプ結合軸を持つビアリール基を有する本発明のトリアリールアミン系化合物は全般的に、アトロプ結合軸を持つビアリール基を有さないか、もしくは1個だけ有する化合物に比べ、それを正孔輸送材料に用いたエレクトロルミネッセンス素子において、正孔輸送機能が高くさらに寿命が長いことがこの結果から明らかになった。
【0242】
実施例(9−3)トリアリールアミン系化合物の性能比較(正孔輸送材料兼発光材料としての評価)
実施例(9−1)および(9−2)のエレクトロルミネッセンス素子の作成において、第2層(発光層)を蒸着しない以外は同様の方法で図102に示す第1層(正孔輸送層兼発光層)と第3層(電子輸送層)の2層構成とした有機EL(9300〜9312)を作製した。
【0243】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9301の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9301の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表4に示す。
【0244】
【表4】

【0245】
表4からわかるように、比較のトリアリールアミン系化合物(NPB、QA−1〜QA−6)は何れも正孔輸送材料兼発光材料になることがわかるが、何れの場合も発光輝度が低くまた寿命も短い。
【0246】
それに対しアトロプ結合軸を持つビアリール基を分子内に2個以上有するトリアリールアミン系化合物を用いたエレクトロルミネッセンス素子では、高い発光輝度と長い寿命とを両立しうることがわかった。
【0247】
【化49】

【0248】
実施例(9−4)5員複素環化合物の性能比較(電子輸送材料としての評価)
実施例(9−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の第3層の電子輸送材料であるOXD−7のみを表5に示す化合物に替えたエレクトロルミネッセンス素子(9401〜9411)を作製した。
【0249】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9401の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9401の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表5に示す。
【0250】
【表5】

【0251】
表5から明らかなように、5員複素環化合物をエレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料として使用した試料(No.9403〜9411)は、従来の電子輸送材料を用いて作製した試料(9200、9401および9402)に比べて何れも発光輝度の向上が認められた。また素子の発光寿命も非常に大きく改善された。このような効果(特に素子の寿命において)は、アトロプ結合軸を持つビアリール基を分子内に1つ有する5員複素環化合物(B−1、B−3、B−7、B−9、B−10)においても十分に発揮されるが、さらに分子内に2つのアトロプ結合軸を持つビアリール基を有する5員複素環化合物(B−2、B−8、B−6、F−3)ではその効果がより顕著になるという傾向も認められた。
【0252】
実施例(9−5)5員複素環化合物の性能比較(電子輸送材料兼発光材料としての評価)
実施例(9−4)のエレクトロルミネッセンス素子の作成において、第2層(発光層)を蒸着しない以外は同様の方法で図103に示す第1層(正孔輸送層)と第3層(電子輸送層兼発光層)の2層構成とした有機EL(9500〜9511)を作製した。
【0253】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9501の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9501の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表6に示す。
【0254】
【表6】

【0255】
表6から明らかなように、5員複素環化合物をエレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料兼発光材料として使用した試料(No.9503〜9511)は、従来の電子輸送材料を用いて作製した試料(9500、9501および9502)に比べて何れも発光輝度の大幅な向上が認められた。また素子の発光寿命も非常に大きく改善された。このような効果(特に素子の寿命において)は、アトロプ結合軸を持つビアリール基を分子内に1つ有する5員複素環化合物(B−1、B−3、B−7、B−9、B−10)においても十分に発揮されるが、さらに分子内に2つのアトロプ結合軸を持つビアリール基を有する5員複素環化合物(B−2、B−8、B−6、F−3)ではその効果がより顕著になるという傾向も認められた。
【0256】
実施例(9−6)6員複素環化合物の性能比較(電子輸送材料としての評価)
実施例(9−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の第3層の電子輸送材料であるOXD−7のみを表7に示す化合物に替えたエレクトロルミネッセンス素子(9601〜9605)を作製した。
【0257】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9601の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9601の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表7に示す。
【0258】
【表7】

【0259】
表7から明らかなように、本発明の6員複素環化合物をエレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料として使用した試料(No.9602〜9605)は、従来の電子輸送材料を用いて作製した試料(9601)に比べて何れも発光輝度の向上が認められた。また素子の発光寿命も非常に大きく改善されることがわかった。
【0260】
実施例(9−7)6員複素環化合物の性能比較(電子輸送材料兼発光材料としての評価)
実施例(9−6)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(9601〜9605)の第2層(発光層)を取り除き、第1層(正孔輸送)と第3層(電子輸送層層兼発光層)の2層構成とした有機EL(9701〜9705)を作製した。これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9701の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9701の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表8に示す。
【0261】
【表8】

【0262】
表8から明らかなように、本発明の6員複素環化合物をエレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料兼発光材料として使用した試料(No.9702〜9705)は、従来の電子輸送材料を用いて作製した試料(9701)に比べて何れも発光輝度の大幅な向上が認められた。また素子の発光寿命も非常に大きく改善されることがわかった。
【0263】
実施例(9−8)6員複素環化合物のその他の使用例
本発明の化合物C−9は蛍光性ドーパントとして、従来のキナクリドンおよびN,N’−ジメチルキナクリドン(DMQA)に比べ、Alq3等の発光材料との併用で高い発光輝度と長い寿命が達成されることがわかった。
【0264】
また、本発明の化合物C−6においては、黄緑色に発光する発光材料となることがわかった。
【0265】
実施例(9−9)スチルベン系化合物の性能比較(発光材料としての評価)
実施例(9−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の第2層の発光材料であるZn(BOX)2のみを表9に示す化合物に替えたエレクトロルミネッセンス素子(9901〜9908)を作製した。
【0266】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度(cd/m)および輝度の半減する時間を測定した。発光輝度は試料No.9901の発光輝度を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.9901の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表9に示す。
【0267】
【表9】

【0268】
表9から明らかなように、5員複素環スチルベン系化合物をエレクトロルミネッセンス素子の発光材料として使用した試料(No.9902〜9908)は、従来の発光材料を用いて作製した試料(9901)に比べて何れも発光輝度の向上が認められた。また素子の発光寿命も大きく改善された。このような効果は、アトロプ結合軸を持つビアリール基を分子内に1つ有するスチルベン系化合物(D−1、D−5、D−8、D−11、D−12)においても十分に発揮されるが、さらに分子内に2つのアトロプ結合軸を持つビアリール基を有するスチルベン系化合物(D−2、D−4)ではその効果がより顕著になるという傾向も認められた。
【0269】
実施例(9−10)金属錯体系化合物の性能比較(電子輸送材料兼発光材料としての評価)
実施例(9−1)で作製したエレクトロルミネッセンス素子(CF−1)の第2層の発光材料であるZn(BOX)2を表10に示す化合物に替え、さらに第3層の電子輸送層を取り除いた正孔輸送層(第1層)と電子輸送層兼発光層(第2層)の2層構成のエレクトロルミネッセンス素子(91001〜91008)を作製した。
【0270】
これらの素子のITO電極を陽極、マグネシウムと銀からなる対向電極を陰極として温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で15V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光効率(lm/W)および輝度の半減する時間を測定した。発光効率は試料No.91001の発光効率を100とした時の相対値で表し、輝度の半減する時間は試料No.91001の輝度が半減する時間を100とした相対値で表した。結果を表10に示す。
【0271】
【表10】

【0272】
表10から明らかなように、本発明の金属錯体系化合物をエレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料兼発光材料として使用した試料(No.91003〜91007)は、従来の材料を用いて作製した試料(91001および91002)に比べて何れも発光効率が良好(発光波長が大きく異なり発光輝度では比較できないため発光効率での比較を行った)であった。また素子の発光寿命も大きく改善されることがわかった。
【0273】
エレクトロルミネッセンス材料の代表的合成方法
一般式(N1)で表される2−アリールフェニルピリジン誘導体は、Shuichi Oi,Susumu Fukita and YoshioInoue Chem.Comumun.,1998,2439−2440に記載された方法で合成することができる。
【0274】
その他、ビナフチル基を有する種々の化合物の合成は代表的には、スキーム2〜スキーム5に示したような合成経路で合成することができる。
【0275】
次にその代表例として、スキーム4で示した経路によるトリアリールアミン(A−18)の合成例を示す。
【0276】
【化50】

【0277】
〔合成例1〕
4−ブロモ−1,1’−ビナフチル〔化合物XX〕の合成:1,1’−ビナフチル50g (197mmol) を2000ml四つ口フラスコ内で塩化メチレン600mlに溶解させ、氷浴中において臭素3.4ml(65.6mol、3分の1当量)を塩化メチレンで10倍希釈した溶液を滴下した。滴下終了後溶液をサンプリングし、高速液体クロマトグラフィーによって反応率を確認しながら、さらに臭素溶液を3分の1当量ずつ2回加えた。その後室温で一昼夜撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物をアセトニトリルから再結晶を行ない、さらにメタノールによって懸濁洗浄を2回行なうことによって4−ブロモ−1,1’−ビナフチルを43.9g (67.0%) 得た。
[合成例2]
N,N’−ジフェニル−N,N’−ビナフチルベンジジン[化合物A−18]の合成:500ml三ツ口フラスコ内に4−ブロモ−1,1’−ビナフチル10g(30.0mmol) 、N,N’−ジフェニルベンジジン5.05g (15.0mmol)、銅粉末を0.48g (7.50mmol)、炭酸カリウムを4.73g (34.2mmol)、ニトロベンゼン25mlを入れ、200℃で30時間撹拌した。反応終了後トルエンを加え、濾過して無機物を除いた。次いでろ液を水洗して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して、トルエン−ヘキサン混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離精製することによりN,N’−ジフェニル−N,N’−ビナフチルベンジジンを5.40g (65.0mmol、43.0%)得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(C1)で表されることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料。
【化1】

〔式中、Ar51はアリール基または芳香族複素環基を表し、nは0から6の整数を表し、nが2以上の時複数のAr51は同じであっても異なっていても良く、また、L21、L22、L23、L24、L25およびL26は6員の含窒素芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表し、L21、L22、L23、L24、L25およびL26のうち少なくとも1つは=N−または−N(R51)−を表し、R51は水素原子または置換基を表す。ただし、Ar51およびR51のうち少なくとも1つは、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つビアリール基またはその部分を有する基である。また、隣接する置換基同士は互いに縮合して飽和または不飽和の環を形成しても良い。〕

【図1】
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【公開番号】特開2011−127125(P2011−127125A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2575(P2011−2575)
【出願日】平成23年1月8日(2011.1.8)
【分割の表示】特願2007−19223(P2007−19223)の分割
【原出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】