説明

エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高発光効率と高輝度とを両立した新規分散型EL発光素子を提供する。
【解決手段】 少なくとも一方が透明である対向する電極対に挟持された蛍光体層と誘電体層とを含む分散型EL素子において、該蛍光体層が少なくともEL蛍光体粒子及びバインダーを含有し、該蛍光体粒子が、平均粒径が0.1μm以上15μm以下であり、粒径の変動係数が35%未満であり、且つ、5nm以下の間隔の積層欠陥を10層以上含有する粒子を粒子全体の30%以上含有し、更に、蛍光体層の膜厚/蛍光体粒子の平均粒径の比が2以上10以下であり、蛍光体層における、蛍光体粒子質量/バインダー質量の比が3.5以上7以下である分散型EL素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(以下ELとも称する)蛍光体を用いたEL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型EL素子では、例えば特許文献1に記載されているように、低電圧、高輝度を達成するためには、発光層(蛍光体層)に印加する電界強度を大きくすべく蛍光体層の膜厚を薄くすることが好ましいと考えられてきた。特許文献1では、蛍光体の平均粒径3μm〜10μmであり、且つ蛍光体層の膜厚が10μm〜25μmとすることにより、低電圧で高輝度の分散型EL発光素子を得る技術が記載されている。
【0003】
しかしながら、一方で、膜厚を薄くすると、発光効率が落ちるという課題があった。発光効率の低下により、同一輝度を得るためにより投入エネルギーのコストがかかるばかりでなく、多くの消費電力素子の発熱量が上がり、素子の寿命が短くなるという課題が発生する。例えば、特許文献2には、一定の蛍光体の平均粒径と誘電体層膜厚において、発光体層の膜厚を20μm以下にすると発光効率が低下することが記載されている。しかし、この場合も、膜厚を50μm以上にすると、発光効率の発光出力(輝度)の両方が下がってしまうと記載されており、発光効率と輝度の両立は従来からの大きな課題であった。
【特許文献1】特公昭63−46558号公報
【特許文献2】特開平3−138890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、高発光効率と高輝度とを両立した新規分散型EL発光素子を提供することを目的とする。
本発明は、更に寿命の向上した新規分散型EL発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
(1)少なくとも一方が透明である対向する電極対に挟持された蛍光体層と誘電体層とを含む分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体層が少なくともエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子及びバインダーを含有し、該蛍光体粒子が、平均粒径が0.1μm以上15μm以下であり、粒径の変動係数が35%未満であり、且つ、5nm以下の間隔の積層欠陥を10層以上含有する粒子を粒子全体の30%以上含有し、更に、蛍光体層の膜厚/蛍光体粒子の平均粒径の比が2以上10以下であり、蛍光体層における、蛍光体粒子質量/バインダー質量の比が3.5以上7以下であることを特徴とする分散型EL素子。
【0006】
(2)前記透明電極と前記蛍光体層の間に少なくとも一層の中間層を付設したことを特徴とする上記(1)に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従い、特定構造の蛍光体粒子、すなわち、粒子サイズ及びその変動係数が小さい蛍光体粒子を用いることにより、蛍光体層における「蛍光体質量/バインダー質量」比を向上させることが可能である。このような蛍光体を用いて、本発明に従い、「蛍光体層膜厚/平均粒径」比の大きい素子を作製すれば、より多くの蛍光体粒子を多く含んだEL素子を作製する事が可能となり、薄い膜厚の蛍光体層を用いた場合よりも、発光効率の向上したEL素子が得られることが分かった。
【0008】
更に本発明に従い、粒子の30%(個)以上が、5nm以下の間隔の積層欠陥を10層以上含有しているEL蛍光体粒子を用いることにより、発光効率が高いため、「蛍光体層膜厚/平均粒径」比が2以上の厚膜を作製しても、十分に実用的な電圧で高い輝度を得られる事ができるようになった。蛍光体粒子数を多く含んだ粒子は、一つの粒子にかかる電界が低くなり、結果、素子の発光効率が顕著に向上したものである。
【0009】
「蛍光体層の膜厚/蛍光体粒子の平均粒径」の比は、2以上10以下であり、3以上8以下が好ましく、3以上6以下が更に好ましい。該比が2以下になると、上述したように発光効率の低下が顕著となり、一方10以上を超えると、実用的な電圧で十分な輝度が得られなくなる。
【0010】
また、本発明の「蛍光体質量/バインダー質量」の比は、3.5以上7以下であり、3.5以上6.5以下が好ましく、3.5以上5.5以下がさらに好ましい。3.5以下になると蛍光体粒子の数が少なくなって、輝度が低下し、7以上になった場合、バインダーが不足して空隙ができ、輝度の低下が起こる。より好ましい「蛍光体質量/バインダー質量」の範囲は粒径の単分散度によって異なり、単分散性が増すと「蛍光体質量/バインダー質量」の比を高くしても空隙がない層を得る事ができるようになる。このように、空隙がない層を得られる場合は、「蛍光体質量/バインダー質量」の比は、より高い方が好ましい。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、上記の如く、より多くの蛍光体粒子を含むようになったEL素子において、更に中間層を設けることを特徴とする。
中間層を設けることは、特開平8−288066号公報や特開平10−134963号公報に、平均粒径20μm以上のエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子を用いた蛍光体層に対して中間層を設けた場合、層間剥離が抑制されることが記載されているが、本発明の態様で中間層を設けた場合に、同時に素子全体が暗くなっていく素子の劣化現象を抑制する効果がある事が分かった。すなわち、小粒子で膜厚が厚いEL素子に中間層を適用した場合、大粒子で作製したEL素子と比較して、寿命特性が顕著に向上することが見出された。
【0012】
これは、駆動中に亜鉛イオン・硫黄イオン・銅イオン・塩素イオンなどの溶出量が大粒子と比較して多くなり、これが透明電極を劣化させて輝度が低下している一因であると考えられ、蛍光体層と透明電極との間に中間層を設ける事によって、劣化が抑制できると考えられる。大粒子と比較して小粒子は、このイオン溶出がより顕著となるため、中間層を設ける事で、劣化改善効果が、大粒子と比較して、格段に大きくなるためと考えられる。同様にして、膜厚が厚い素子は、薄い素子に比べて、寿命特性が顕著に向上する。膜厚の厚い素子では、粒子数が多いため駆動時のイオンの溶出がより多いと考えられる。本発明の態様において、中間層によって、イオン溶出による透明電極の劣化が、極めて顕著に抑制できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のEL素子について詳細に説明する。
[EL蛍光体粒子]
本発明のEL蛍光体に用いられる蛍光体粒子は、中心粒子サイズが0.1〜15μmの範囲である。好ましくは1〜14μmである。これにより、蛍光体層の膜厚を小さくして電界強度を高めることができる。
【0014】
また、粒子サイズの変動係数は35%未満であり、小さいほど好ましい。変更係数が35%未満であることにより、EL蛍光体粒子の分散性や蛍光体層のEL蛍光体粒子の充填率が向上し、EL素子の発光のざらつき(粒状性)を改善できる。
また、その粒子内部は、積層欠陥の平均面間隔が5nm以下の面間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子が全蛍光体粒子の30%以上存在する。好ましくは、該粒子が50%以上存在し、より好ましくは60%以上存在する。面状の積層欠陥が多い構造を有する方が、EL発光の効率を高めることができ、好ましい。
【0015】
このようなEL蛍光体粒子は、例えば、以下の方法で得ることができる。
EL蛍光体は、ZnS系であることが好ましく、その原料となる前駆体は、市販の高純度のZnSを用いても良いが、付活剤が均一に添加された前駆体を用いることが好ましい。このような前駆体を得る方法としては、水熱合成法、均一沈殿法、噴霧熱分解法を利用することが好ましい。いずれの方法でも、Zn塩と付活剤の塩とを溶媒に溶解した状態から、ZnSを反応生成させることで付活剤がZnS中に取り込まれた前駆体を得ることができる。付活剤としてはCu、Mn、Ag及び希土類元素を用いることが好ましく、Cuをより好ましく用いることができる。付活剤の添加量は、付活剤の種類によって異なるが、例えばCuの場合には、ZnSが1molに対して1×10-4〜1×10-2molの範囲が好ましく、5×10-4〜5×10-3molがより好ましい。付活剤が添加されていない前駆体を用いる場合には、ZnSを水に分散させて得た懸濁液中に、CuSO、Cu(NO等の水溶性のCu化合物を添加してZnSの粒子表面にCuSが析出した前駆体を作製する。このとき、反応後の懸濁液は、副生成物であるZnSOを除去するため。蒸留水で数回洗浄することが好ましい。
【0016】
共付活剤としては、Cl、Br、I、Alを用いることができる。共付活剤の添加量としては、付活剤と同等量が好ましい。これらの共付活剤は、後述の融剤から導入されるが、Alの場合には別途Al(NO、等の化合物で添加する必要がある。
【0017】
また、これら付活剤及び共付活剤の他に、Au、Sb、Bi、Csを添加物として添加することが好ましく、Auを付活することが特に好ましい。例えばEL蛍光体の電子発生源であるCuS結晶の劣化を抑制することができるため寿命が著しく向上する。この効果は、特に粒子サイズの小さなEL蛍光体で顕著である。Auの添加量は、ZnSが1molに対して1×10-5〜1×10-3molの範囲が好ましく、5×10-5〜5×10-4molがより好ましい。
【0018】
EL蛍光体の焼成は、従来法と同様の固相反応で行うことができる。まず、付活剤を含有した前駆体とハロゲン共付活剤の供給源ともなるアルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化亜鉛、等の融剤、共付活剤がAlの場合にはAl化合物とを混合する。添加物としてCsを導入する場合にはCsのハロゲン化物をさらに加えて混合する。この混合は、乳鉢やターブラミキサー、等による乾式混合でも良いし、一度蒸留水を加えて懸濁液として乾燥させることで、さらに均一に混合することもできる。融剤の添加量は、ZnSに対して1〜80質量%の範囲が好ましく、20〜60質量%の範囲がより好ましい。融剤が少なすぎると結晶成長が十分に進まないことがあり、多すぎると腐食性の有毒ガスを発生する原因となる。この混合物を、アルミナ製の坩堝に充填し、900〜1200℃の範囲の焼成温度で焼成する。焼成時間は、結晶成長が十分に進み、付活剤がZnS中に均一に拡散するために、30分〜12時間の範囲が好ましく、1〜6時間がより好ましい。焼成の雰囲気は、空気、酸素、等の酸化性雰囲気、窒素、アルゴン、等の不活性雰囲気、水素−窒素混合雰囲気、炭素−酸素混合雰囲気、等の還元雰囲気、硫化水素、二硫化炭素、等の硫化雰囲気、等を利用できる。
【0019】
焼成した混合物を坩堝から取り出し、余分な融剤、反応副生成物、ZnSが酸化されてできたZnO、等を除去するために、酸洗浄と水洗を十分に繰り返すことが好ましい。洗浄した粒子を真空乾燥機、等を用いて乾燥して、ウルツ鉱型の結晶系を有する中間蛍光体が得られる。
【0020】
次いで、上記焼成した中間蛍光体は、応力を与えた後、再焼成することが積層欠陥の密度を増加させて輝度を高めるためより好ましい。蛍光体粒子への応力付与は、ボールミル、超音波、静水圧、等が利用でき、いずれの場合も蛍光体粒子を破壊しない程度の負荷で、粒子に均一に加えることが好ましい。応力を加えた蛍光体は、500〜900℃の温度で再焼成する。このとき、必要に応じてSb、Biの化合物を、添加することもEL蛍光体の寿命を向上させるので好ましい。添加量は、ZnSが1molに対して1×10-5〜1×10-3の範囲が好ましい。これによって、結晶のほとんどが閃亜鉛鉱型構造に変換される。再焼成の焼成時間や雰囲気は、上記焼成と同様の条件が利用できる。
【0021】
次いで、再焼成により生成した粒子表面のZnO層や、乱れや歪みの多い表面層を除去するために、酸洗浄と水洗を十分に繰り返すことが好ましい。さらに、Cuを付活剤として用いた再焼成によって粒子表面に余分のCu化合物が析出しているため、酢酸、シアン化合物、アンモニア、Cuキレート剤、等での洗浄と水洗を繰り返すことが好ましい。洗浄した粒子を真空乾燥機、等を用いて乾燥して、平均粒子サイズが0.1〜15μmで、粒子サイズ分布の変動係数が35%未満で、5nm以下の面間隔の積層欠陥を10枚以上含有する粒子を粒子全体の30%以上有するZnS系EL蛍光体を得ることができる。
【0022】
なお、上記のように焼成条件等の調整により、所望の粒子サイズや粒子サイズ分布を得ることができるが、本発明に使用できるZnS系EL蛍光体の作製方法はこれに限るものではない。例えば、中心粒子サイズが15μmよりも大きいEL蛍光体を得た後、乾式篩、湿式篩、気体サイクロン、液体サイクロン、水簸などを用いて分級操作することで、所望の中心粒子サイズや粒子サイズ分布のEL蛍光体を得ることができる。また、同様に中心粒子サイズが15μmよりも大きいEL蛍光体を得た後、乳鉢、ボールミル、ジェットミル、等を用いて粉砕操作することで所望の中心粒子サイズや粒子サイズ分布のEL蛍光体を得ることができる。
【0023】
本発明のEL蛍光体は、前記EL蛍光体の粒子の表面に被覆層を形成していてもよい。 該被覆層の平均膜厚は0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。ここで、被覆層の平均膜厚とは、被覆層を形成したEL蛍光体粒子の断面SEM写真から、10個以上の粒子に対して被覆層膜厚を1粒子当たりに任意の3点を実測し平均した値をいう。
被覆層の平均膜厚が上記の範囲内において、良好な防湿性やイオンバリア性が得られるとともに、EL蛍光体粒子への電界強度を減少させることなく、輝度低下や発光閾値電圧の上昇を引き起こし難いため、好ましい。
また、被覆層は、粒子の平均サイズに適した膜厚であることが好ましく、例えば1μmの粒子に1μmの被覆層を形成した場合には、粒子への電界強度の低下を引き起こし易い。従って、粒子の平均粒子サイズに対する被覆層の平均膜厚の比は、0.001〜0.1の範囲であることが好ましく、0.002〜0.05の範囲であることがより好ましい。
【0024】
被覆層の組成は特に限定されないが、酸化物、窒化物、水酸化物、フッ化物、リン酸塩、ダイヤモンド状カーボン及び有機化合物を用いることができ、それらの混合物、混晶、多層膜等の使用も好ましい。具体的には、SiO、Al、TiO、ZrO、HfO、Ta、Y、La、CeO、BaTiO、SrTiO、PZT、Si、AlN、Al(OH)、MgF、CaF、Mg(PO、Ca(PO、Sr(PO、Ba(PO、フッ素樹脂等が好ましい。また、被覆層は、ピンホールやクラックが無く、連続的であることが好ましい。
【0025】
また、被覆層の形成方法は特に限定されないが、例えば、流動床などでEL蛍光体核粒子を流動化させた状態でCVD法(chemical vapor deposition法)などにより形成する方法、溶媒中に分散させた状態で被覆層の原料を供給して粒子表面に堆積する方法、EL蛍光体核粒子と被覆層材料を衝撃や摩擦による機械的熱的エネルギーを加えて固化する方法などを採る事ができ、また、このようにして形成した被覆層をアニーリングする事で安定化させる事も可能である。
【0026】
[EL素子の作製]
本発明のEL蛍光体は、EL素子の蛍光体層に含有させて用いられる。EL素子は、基本的には蛍光体層を、少なくとも一方が透明な、対向する一対の電極で挟持した構成をもつ。蛍光体層と電極の間に誘電体層を隣接することが好ましい。また、透明電極層と蛍光体層との間に中間層を付設することが好ましい。
【0027】
蛍光体層としては、本発明のEL蛍光体を結合剤に分散させた層を用いることができる。結合剤としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。これらの結合剤に、BaTiOやSrTiOなどの高誘電率の微粒子を、結合剤100質量部に対して5〜100質量部混合して誘電率を調整することもできる。分散方法としては、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機などを用いることができる。
【0028】
上記蛍光体層は、EL蛍光体粒子含有塗布液を塗工して形成することができる。EL蛍光体粒子含有塗布液は、少なくともEL蛍光体粒子、結合剤、及び結合剤を溶解する溶剤を含有してなる塗布液である。ここで、溶剤としては、アセトン、MEK、DMF、酢酸ブチル、アセトニトリルなどが用いられる。常温におけるEL蛍光体粒子含有塗布液の粘度は、0.1Pa・s以上5Pa・s以下の範囲が好ましく、0.3Pa・s以上1.0Pa・s以下の範囲が特に好ましい。EL蛍光体粒子含有塗布液の粘度が、低すぎるときは、塗膜の膜厚ムラが生じやすくなり、また分散後の時間経過とともにEL蛍光体粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、EL蛍光体粒子含有塗布液の粘度が高すぎるときには、比較的高速での塗布が困難となる場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。なお、前記粘度は、塗布温度と同じ16℃において測定される値である。
【0029】
本発明の蛍光体層は、スライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーター、等を用いて、透明電極を付設したプラスチック支持体や、背面電極と後述する必要に応じて設けることのできる誘電体層を積層した積層体の上に、蛍光体層の膜厚/蛍光体粒子の平均粒径の比が2以上10以下、蛍光体粒子質量/バインダー質量の比が3.5以上7以下になるように連続的に塗布して形成することが好ましい。このとき、蛍光体層の膜厚変動は、12.5%以下とするのが好ましく、特に5%以下とするのが好ましい。
【0030】
また、本発明の分散型EL素子においては、上述の電極及び蛍光体層の他に、誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層は、蛍光体層と背面電極の間に、蛍光体層に隣接させて配置することが好ましい。該誘電体層は、誘電率と絶縁性とが高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する誘電体材料であれば任意のものを用いて形成することができる。このような材料は、金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO3、PbNbO、Ta、BaTa26、LiTaO3、Y、Al、ZrO、AlON、ZnSなどが用いられる。これらは薄膜結晶層として設置されても良いし、また粒子構造を有する膜として用いても良い。
【0031】
また、本発明の誘電体層は、蛍光体層の片側に設けてもよく、また蛍光体層の両側に設けることも好ましい。誘電体層を塗布で形成する場合は、蛍光体層と同様に、スライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーター、等を用いることが好ましい。薄膜結晶層の場合は、基板にスパッタリングや真空蒸着等の気相法で形成した薄膜であっても、BaやSrなどのアルコキサイドを用いたゾルゲル膜であっても良く、この場合膜の厚みは通常0.1μm以上10μm以下の範囲である。粒子形状の場合は、EL蛍光体粒子の大きさに対し十分に小さいことが好ましい。具体的にはEL蛍光体粒子サイズの1/1000以上1/3以下の範囲の大きさが好ましい。
【0032】
上記誘電体層は、好ましくは誘電体粒子含有塗布液を塗布して形成される。該誘電体粒子含有塗布液は、少なくとも誘電体粒子、結合剤、及び結合剤を溶解する溶剤を含有してなる塗布液である。ここで、結合剤としては、前記蛍光体層に用いられるものと同様のものが挙げられる。溶剤としては、アセトン、MEK、DMF、酢酸ブチル、アセトニトリルなどが用いられる。常温における誘電体粒子含有塗布液の粘度は、0.1Pa・s以上5Pa・s以下の範囲が好ましく、0.3Pa・s以上1.0Pa・s以下の範囲が特に好ましい。誘電体粒子含有塗布液の粘度が、低すぎるときは、塗膜の膜厚ムラが生じやすくなり、また分散後の時間経過とともに誘電体粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、誘電体粒子含有塗布液の粘度が高すぎるときには、比較的高速での塗布が困難となる場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。なお、前記粘度は、塗布温度と同じ16℃において測定される値である。
【0033】
本発明のEL素子において用いられる前記透明電極層としては、一般的に用いられる任意の透明電極層材料を用いて形成された電極が用いられる。該透明電極層材料としては、例えばITO(酸化インジウム錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、ZTO(亜鉛ドープ酸化錫)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、等の酸化物、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子などが挙げられる。これら透明電極層には、櫛型、グリッド型、等の金属細線を配置して通電性を改善することも好ましい。
【0034】
前記透明電極層の表面抵抗率は、300Ω/□以下の範囲が、EL素子が高輝度を発揮する点で好ましく、100Ω/□以下の範囲がより好ましく、30Ω/□以下の範囲がさらに好ましい。表面抵抗率は、JIS K6911に記載の測定方法によって測定することができる。EL素子の大面積にともなう電圧降下を防止するため、透明電極層上の内周部に導電率ペースト、等でバス電極を形成することが好ましい。バス電極の面積は、蛍光体層の面積に対して1%以上の面積であり、さらに蛍光体層へ効率良く電力を供給するために、2%以上がより好ましい。バス電極は、蛍光体層の面積の増加に応じて増加させる必要があるため、蛍光体層総面積に対する面積比率で表すことが必要である。1%以上とするのは、高輝度化のために、蛍光体層膜厚を薄くしたり、駆動電圧や周波数を増加させるためである。しかしながら、10%以上のバス電極面積はEL素子の性能に影響しないため不必要に非発光部を増加させたり、素子面積を大きくしてしまうため好ましくない。 バス電極の形成方法としては、スクリーン印刷法やキャスティング法などが利用できる。
【0035】
前記背面電極層は、光を取り出さない側であり、導電性の有る任意の材料(通常、この種の背面電極の形成に用いられる材料)を用いて形成できる。形成に際しては、導電性微粒子を結合剤に分散した導電性ペーストを用いて塗布形成しても、銅、アルミニウム、金、銀、等の金属材料を貼り合わせても良い。貼り合わせる金属材料はシート状のものであることが好ましい。また、金属シートの代わりにグラファイト・シートを用いることもできる。背面電極層の熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましく、200W/m・K以上であることがより好ましい。
【0036】
また、両電極層とも塗布形成する場合には、前述のスライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーター、等を用いて塗布することもできる。
【0037】
本発明のEL素子は、透明電極層と発光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。中間層は、有機高分子化合物、無機化合物、又はこれらが複合化されていても良いが、有機高分子化合物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。中間層は少なくとも1層あれば良いが、2層以上の構成をとっても良い。中間層の総厚みは、100nm以上100μmが好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下であり、最も好ましくは1μm以上20μm以下である。
【0038】
上記中間層は、実質的に発光に寄与しない中間層であることが好ましく、本発明において実質的に発光に寄与しないとは、該EL素子に含まれる発光粒子の総量(質量)に対し、該層に含まれる発光粒子の量が30%以下であることを言う。この範囲であれば、該中間層は発光体粒子を含有し得る。好ましくは該中間層の発光粒子含有量はEL素子全体の20%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0039】
中間層を形成する材料が有機高分子化合物である場合、使用できる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニルアルコール、プルランやサッカロース、セルロース等の多糖類、塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂、等が挙げられる。また、ここで使用する高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。
【0040】
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒に溶解し透明電極上あるいは蛍光体層上に塗布して形成することができる。その場合には、前述のスライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーター、等を用いて塗布することが好ましい。有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0041】
中間層は、実質的な透明性を有する範囲で、種々の機能を付与するための添加物を有していても良い。中間層の透過率としては、好ましくは波長550nmの透過率が70%以上、より好ましくは80%以上が好ましい。例えばチタン酸バリウム粒子などの誘電体、または酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズ−インジウム、金属粒子などの導電体、または染料、蛍光染料、蛍光顔料、または本発明の効果を失わない程度(エレクトロルミネッセンス素子全体の輝度のうち30%以下)の発光体粒子を存在させても良い。
【0042】
中間層は、SiO2、その他金属酸化物、金属窒化物、等の無機化合物で有っても良い。無機化合物で中間層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。中間層が無機化合物で形成されている場合、膜厚は10nm以上1μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上200nm以下である。また中間層が無機化合物の層と有機高分子化合物の層の組み合わせで構成されているものも好ましい。
【0043】
特に本発明においては、少なくとも1層の有機高分子化合物を含んでなる厚み0.5μ以上10μ以下の中間層を有することが好ましく、該有機高分子化合物はポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂から選ばれるものが好ましく、更にこれらのうち軟化点が70℃以上(より好ましくは100℃以上)のものが好ましい。これらから選ばれる複数の高分子化合物が組み合わされていることも好ましい。
【0044】
中間層の有機高分子化合物が軟化点の高い(例えば200℃以上)である場合、透明電極層や発光粒子含有層との密着性を改良するなどの目的で、軟化点の低い有機高分子化合物を含む別な中間層を併用することも好ましい。
【0045】
本発明のEL素子は、光源としての用途を考えると、発光色は白色が好ましい。発光色を白色とする方法としては、蛍光顔料を用いて発光の一部を緑色や赤色に波長変換(発光)させて白色化する方法が好ましい。さらに、CIE色度座標(x,y)は、x値が0.30以上0.43以下の範囲で、かつy値が0.27以上0.41以下の範囲が好ましい。蛍光顔料は、蛍光体層や誘電体層の中にEL蛍光体粒子や誘電体粒子とともに分散して混入させても良いし、蛍光顔料を含有した単独の蛍光顔料層として付設しても良い。蛍光顔料層として付設する場合は、蛍光体層の上部(発光を取り出す側)に設けても良いが、蛍光体層の下部(前記上部と対向する側)に設けることが、EL蛍光体からの発光を有効に利用できるので好ましい。具体的には、蛍光体層と誘電体層の間に蛍光顔料層を設けることが好ましい。このとき、蛍光顔料層と蛍光体層の間に、反射率の高い白色顔料を含む反射層を付設することが、蛍光顔料層内でのEL発光の多重散乱による変換効率の向上や、変換光の長波長化のために好ましい。
【0046】
前述の各層は、少なくとも塗布から乾燥工程までを連続工程として形成することが好ましい。乾燥工程は、塗膜が乾燥固化するまでの恒率乾燥工程と、塗膜の残留溶媒を減少させる減率乾燥工程に分けられる。本発明では、各層の結合剤比率が高いため、急速乾燥させると表面だけが乾燥し塗膜内で対流が発生し、いわゆるベナードセルが生じやすくなり、また急激な溶媒の膨張によりブリスター故障を発生しやすくなり、塗膜の均一性を著しく損う。逆に、最終の乾燥温度が低いと、溶媒が各層内に残留してしまい、防湿フィルムのラミネート工程、等のEL素子化の後工程に影響を与えてしまう。したがって、乾燥工程は、恒率乾燥工程を緩やかに実施し、溶媒が乾燥するのに十分な温度で減率乾燥工程を実施することが好ましい。恒率乾燥工程を緩やかに実施する方法としては、ベースが走行する乾燥室をいくつかのゾーンに分けて、塗布工程終了後からの乾燥温度を段階的に上昇することが好ましい。
【0047】
本発明の分散型EL素子は、最後に封止フィルムを用いて、外部環境からの湿度や酸素の影響を排除するよう加工するのが好ましい。
【0048】
EL素子を封止する封止フィルムは、JIS K7129に記載の測定方法に準じて測定される、40℃−90%RHにおける水蒸気透過率が0.05g/m/day以下が好ましく、0.01g/m/day以下がより好ましい。さらに40℃−90%RHでの酸素透過率が0.1cm/m/day/atm以下が好ましく、0.01cm/m/day/atm以下がより好ましい。このような封止フィルムとしては、有機物膜と無機物膜との積層膜が好ましく用いられる。
【0049】
有機物膜の形成材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられ、特にポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂などは吸水性があるため、あらかじめ真空加熱などの処理を施すことで絶乾状態にしたものを用いることがより好ましい。これらの樹脂を塗布などの方法によりシート状に加工したものの上に、無機物膜を蒸着、スパッタリング、CVD法などを用いて堆積させる。堆積させる無機物膜の形成材料としては、酸化ケイ素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化ケイ素/酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが好ましく用いられ、特に酸化ケイ素がより好ましく用いられる。より低い水蒸気透過率や酸素透過率を得たり、無機物膜が曲げ等によりひび割れることを防止するために、有機物膜と無機物膜の形成を繰り返したり、無機物膜を堆積した有機物膜を接着剤層を介して複数枚貼り合わせて多層膜とすることが好ましい。有機物膜の膜厚は、5μm〜300μmの範囲が好ましく、10μm〜200μmの範囲がより好ましい。無機物膜の膜厚は、10nm〜300nmの範囲が好ましく、20nm〜200nmの範囲がより好ましい。積層した封止フィルムの膜厚は、30μm〜1000μmの範囲が好ましく、50μm〜300μmの範囲がより好ましい。
【0050】
この封止フィルムでELセルを封止する場合、2枚の封止フィルムでELセルを挟んで周囲を接着封止しても、1枚の封止フィルムを半分に折って封止フィルムが重なる部分を接着封止しても良い。封止フィルムで封止されるELセルは、ELセルのみを別途作成しても良いし、封止フィルム上に直接ELセルを作成することもできる。この場合には、支持体の替わりとすることができる。また、封止工程は、真空又は露点管理された乾燥雰囲気中で行うことが好ましい。
【0051】
上記以外にも、EL素子の振動抑制のために、衝撃吸収能の高い高分子材料や発泡剤を加えて発泡させた高分子材料、等からなる緩衝材層や、透明電極層又は背面電極層と絶縁層を挟んで設ける補償電極層、等を付設することも好ましい。
【0052】
本発明のEL素子の組立方法は、下記のいずれの方法でも好適に行うことができる。アルミニウム箔のような背面電極層上に誘電体層、蛍光体層を順に塗布した後、透明電極層と貼り合わせる方法、透明電極層上に蛍光体層、誘電体層を順に塗布した後、背面電極層と貼り合わせる方法、透明電極層上に蛍光体層を、背面電極層上に誘電体層を塗布した後、両者を貼り合わせる方法、等が好ましい。貼り合わせは、金属又はシリコーン樹脂、等を被覆した熱ローラーにより、熱圧着することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により例証するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
ZnS(フルウチ化学製・純度99.999%)150gに水を加えてスラリーとし、0.416gのCuSO4・5H2Oを含む水溶液を添加し、一部にCuを置換したZnS生粉(平均粒径100nm)を得た。得られた生粉25.0gに、BaCl2・2H2O 4.2g・MgCl2・6H2O 11.1g・SrCl2・6H2O 27.3g を加え、1200℃で1時間焼成を行い、蛍光体中間体を得た。上記の粒子をイオン交換水で10回水洗し、乾燥した。得られた中間体を、700℃で6時間、アニールした。 得られた蛍光体粒子を、10%のKCN水溶液で洗浄して表面にある余分な銅(硫化銅)を取り除いた後5回水洗を行い、表1に示すエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子3を得た。この粒子の積層欠陥粒子頻度は、5%(個)であった。
【0055】
第1の焼成(1200℃1時間)と第2の焼成(700℃6時間アニール)の間にアルミナビーズによるボールミル衝撃工程(蛍光体5gに対してボールサイズボールサイズφ0.5mmのアルミナビーズ50gを混合し、20分ミルをかけた。)を加え、他のプロセスは蛍光体粒子3と同様の方法で作製した、蛍光体粒子1を作製した。また、蛍光体粒子1と同様の方法で作製し、ミル時間を10分とした蛍光体粒子2を作製した。蛍光体粒子1・2の積層欠陥粒子頻度は、それぞれ、40%(個)、60%(個)であった。
蛍光体1・2とも、平均粒径14μm、変動係数は34%であった。
【0056】
次に、Cuを置換したZnS生粉25.0gに対し、NaCl 1.0g, BaCl2・2H2O 2.1g, MgCl2・6H2O 4.25gを加え、1200℃で4時間焼成を行い、蛍光体中間体を得た。該中間体をイオン交換水で10回水洗し、乾燥した後、第1の焼成(1200℃4時間)と第2の焼成(700℃6時間アニール)の間にアルミナビーズによるボールミル衝撃工程(蛍光体5gに対してボールサイズボールサイズφ0.5mmのアルミナビーズ50gを混合し、20分ミルをかけた。)を加え、700℃で6時間、アニールした。得られた蛍光体粒子を、10%のKCN水溶液で洗浄して表面にある余分な銅(硫化銅)を取り除いた後5回水洗を行い、蛍光体4を得た。積層欠陥粒子頻度は75%(個)の粒子が得られたが、粒径は平均25μm、変動係数は53%であった。
【0057】
このようにして得られた蛍光体1〜4に関して、以下の方法により素子を作製した。堺化学製のチタン酸バリウム粉末(BT−02)を、30wt%のシアノレジンDMF溶液に分散して、75μmのアルミシート上に、誘電体層の厚みが25μmとなるように塗布し、温風乾燥機にて110℃6時間乾燥させた。
【0058】
上記蛍光体粒子を30wt%のシアノレジンDMF溶液に、蛍光体粒子/シアノレジンの質量比が4.0となるように分散し(蛍光体粒子の質量1に対してシアノレジンDMF溶液の量が0.825)、トービ社製の透明導電性フィルム上に蛍光体層の厚みが所定の膜厚となるように積層塗布し、温風乾燥機で110℃にて6時間乾燥させた。
【0059】
このようにして作製したアルミシートと透明導電性フィルムを、誘電体層と蛍光体層が重なるように両者を貼り合わせ、150℃のヒートローラーを用いて真空中で熱圧着した。
上記素子の透明電極と背面電極から、それぞれ厚み80μmの銅アルミシートを用いて外部接続用の端子を取り出した後、素子を2枚のナイロン6から成る吸水性シートと2枚のSiO2層を有する防湿フィルムとで挟んで熱圧着し、封止した。
【0060】
このようにして得られた素子を、初期輝度が300cd/m2となるように、1kHzの駆動周波数で各々の素子に関して印加電圧を決め、発光効率を求めた。使用している電源電圧は300V以上は出力する事ができないため、一部の素子は、300cd/m2で光らせる事ができなかった。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1のように、積層欠陥粒子頻度が低い粒子(蛍光体3)では、蛍光層の膜厚が厚くなり、膜厚/粒径比が大きくなると、電圧を高くしても300cd/m2で光らせる事ができなかった。一方、積層欠陥頻度が高い粒子を用いた素子(蛍光体1・2)では、膜厚を厚くすると印加電圧は高くなるものの、十分に実用に耐える印加電圧で発光効率を向上する事ができた。
また、表2のように、平均粒径が25μm以上の大粒子では、発光効率を向上させようとすると、膜厚が非常に厚くなるために、実用に耐える印加電圧で駆動する事ができなかった。
【0064】
(実施例2)
実施例1に記載の蛍光体1を用い、蛍光体粒子/シアノレジンの質量比が6.0となるように分散した以外は同様の方法で素子19〜21を作製した。
【0065】
【表3】

【0066】
蛍光体粒子/シアノレジンの質量比が6.0とした素子でも、質量比が4.0の場合の素子と同様に本発明の優れた効果が見られた。
【0067】
(実施例3)
実施例1で用いた素子1・素子2・素子5・素子17と素子作製方法を同一にして、透明電極と蛍光体層の間に中間層を入れる部分だけ変更することにより、素子22〜25を作製した。
中間層は、以下のようにして作製した。ビスフェノールAとフタル酸(テレフタル酸とイソフタル酸1:1)のポリエステル(ユニチカ株式会社;U-100)をジクロロメタンに溶解し、濃度14%の溶液とした。これを、トービ社製の透明導電性フィルム上に塗布し、厚み1.5μmの層を形成させた。この中間層上に蛍光体層を塗布し、他の作製方法は、前記の通りとした。
得られた素子を、初期輝度が300 cd/m2となるように駆動して、輝度が半減するまでの時間を求めた。結果を表3に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
本発明による素子は、中間層を用いない素子と比較して、2倍以上の寿命の向上が見られた。これは、本発明外の寿命改善効果と比較し、顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明である対向する電極対に挟持された蛍光体層と誘電体層とを含む分散型エレクトロルミネッセンス素子において、該蛍光体層が少なくともエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子及びバインダーを含有し、該蛍光体粒子が、平均粒径が0.1μm以上15μm以下であり、粒径の変動係数が35%未満であり、且つ、5nm以下の間隔の積層欠陥を10層以上含有する粒子を粒子全体の30%以上含有し、更に、蛍光体層の膜厚/蛍光体粒子の平均粒径の比が2以上10以下であり、蛍光体層における、蛍光体粒子質量/バインダー質量の比が3.5以上7以下であることを特徴とする分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記透明電極と前記蛍光体層の間に少なくとも一層の中間層を付設したことを特徴とする請求項1に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2006−54114(P2006−54114A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235201(P2004−235201)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】