説明

エレクトロルミネッセンス蛍光体及びそれを用いたEL素子

【課題】 優れた発光効率、輝度を両立し、長寿命の達成されたEL蛍光体を提供する。
【解決手段】ZnSを母体として、これに付活剤として少なくともAu及びCuを含有し、共付活剤としてCl、Br、I及びAlより選ばれる少なくとも一種とを含有するエレクトロルミネッセンス蛍光体であって、蛍光体の平均粒子サイズが0.1〜20μmであり、粒子サイズの変動係数が35%未満であり、蛍光体母体結晶内部の積層欠陥の平均面間隔が5nm以下の面間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子数が全蛍光体粒子数の30%以上存在し、且つ、ZnS1モルに対してAuを1×10−7〜5×10−4モル含有し、且つ、ZnS1モルに対してCuを1×10−4〜1×10−2モル含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnS系エレクトロルミネッセンス(以下ELと称する)蛍光体、及び該蛍光体を用いたEL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
EL素子は、分散剤中に蛍光体粒子を分散してなる分散型EL素子と、誘電体層間に蛍光体薄膜を挟んでなる薄膜型EL素子とに大別できる。分散型EL素子は、高温プロセスを経る必要がないため、プラスティックを基板としたフレキシブルな材料構成が可能であること、真空装置を使用することなく比較的簡便な工程で低コストのEL素子が製造できること、発光色の異なる複数の蛍光体粒子を混合することにより素子の発光色の調整が容易であること、及び比較的大面積化が容易であること等の特徴を有する。このため、分散型EL素子は、平面型の発光光源としての開発が進められ、近年の各種電子機器の多様化に伴って、画像表示素子のほか装飾用ディスプレイ材料としての応用も盛んに行われている。
【0003】
従来の分散型EL素子は、高輝度で発光させる場合、発光効率が低く、(発熱が多いために)耐久性が悪いという課題を有している。高耐久性化を達成する技術として、特許文献1には、第2の共付活剤として金を含有させることが記載されている。しかし、この従来技術は輝度、発光効率はともに低下するため、高輝度では実用に耐えるレベルでの高い発光効率の実現には不十分であり、従って高輝度では耐久性が不十分であった。また、高輝度化を達成する従来技術として、特許文献2および特許文献3には、結晶成長剤(融剤)として用いられるアルカリ土類金属元素の含有量を低減させることが記載されているが、それだけでは、高輝度と発光効率とを両立には不十分であった。また、特許文献4には、EL素子における発光層の層厚を制御することによって発光効率を向上させる技術が記載されているが、やはりそれだけでは高輝度と発光効率とを両立には不十分であった。上記の従来技術では、高輝度と発光効率とを両立することはできなかった。
【特許文献1】特許第2994058号
【特許文献2】特開2000−136381号公報
【特許文献3】特開2003−201474号公報
【特許文献4】特開平3−138890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明では、優れた発光効率、輝度を両立し、長寿命の達成されたEL蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
我々は、鋭意検討の結果、粒子サイズ変動係数が小さく、積層欠陥導入率が高い蛍光体粒子への金の添加、付活剤としての銅の多量添加において、特に粒子サイズとして0.1〜20μmの領域を選択することによって、最も発光効率、輝度を高次元で両立することを見出した。特に、金と共に白金を添加することが好ましい。更に、上記蛍光体粒子を用いたEL素子について、蛍光体層の層厚として40μm〜100μmの領域を選択することによって、最も発光効率、輝度を高次元で両立することを見出した。
すなわち、本発明は下記の通りのものである。
【0006】
(1)ZnSを母体として、これに付活剤として少なくともAu及びCuを含有し、共付活剤としてCl、Br、I及びAlより選ばれる少なくとも一種とを含有するエレクトロルミネッセンス蛍光体であって、蛍光体の平均粒子サイズが0.1〜20μmであり、粒子サイズの変動係数が35%未満であり、蛍光体母体結晶内部の積層欠陥の平均面間隔が5nm以下の面間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子数が全蛍光体粒子数の30%以上存在し、且つ、ZnS1モルに対してAuを1×10−7〜5×10−4モル含有し、且つ、ZnS1モルに対してCuを1×10−4〜1×10−2モル含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス蛍光体。
(2)蛍光体の平均粒子サイズが15〜20μmであることを特徴とする上記(1)に記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
(3)ZnS1モルに対してPtを1×10−7〜1×10−3モル含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
(4) アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)の総含有量が0.075質量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
【0007】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体を含有する発光層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
(6)発光層の膜厚が40μm〜100μmであることを特徴とする上記(5)に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
(7)前記透明電極と前記蛍光体層の間に少なくとも一層の中間層を付設したことを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
(8)前記中間層は、有機高分子化合物、無機化合物、又はそれら複合物であり、中間層の厚みは10nm〜100μmの範囲であることを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【0008】
本発明者らは種々検討の結果、特定の蛍光体粒子、すなわち、粒子サイズが0.1〜20μmであり、その変動係数が小さく、粒子内部が面状の積層欠陥の多い構造を有する蛍光体粒子において、上記蛍光体粒子に金を添加し、銅を多量に添加することにより、高発光効率及び高輝度、長寿命化の効果が格段に向上することを見出し、本発明に到達したものである。更に、上記蛍光体粒子に白金を添加することにより、高発光効率及び高輝度、長寿命化の効果が格段に向上することを見出した。更に、上記高発光効率及び長寿命化の効果は、上記蛍光体粒子を発光層厚40〜100μmであるEL素子に適用することにより、一層格段に向上することが分かった。銅および金の添加は、特に粒子サイズが15〜20μmである蛍光体粒子における発光効率を高める効果が高いことが判明し、従って、これらの技術を組み合わせることにより、全体としての高発光効率及び高輝度、高寿命化に各技術が極めて効率よく寄与するものと推定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のEL蛍光体によれば、高輝度において高効率のEL発光を示すとともに、耐久性が格段と向上する。また、本発明の小サイズで粒子サイズ分布の狭いEL蛍光体は、分散性が良好であり、均一な蛍光体層を形成することができるため、発光のざらつき(粒状性)が飛躍的に向上し、高画質の透過写真やインクジェットの透過照明用途として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のEL蛍光体及びそれを用いたEL素子について詳細に説明する。
[EL蛍光体]
(ZnS系EL蛍光体核粒子)
本発明のEL蛍光体に用いられるZnS系蛍光体核粒子は、平均粒子サイズが0.1〜20μmの範囲である。好ましくは15〜20μmである。また、粒子サイズの変動係数は35%未満であり、30%未満がより好ましい。これらにより、EL蛍光体粒子の分散性や蛍光体層のEL蛍光体粒子の充填率が向上し、EL素子の発光のざらつき(粒状性)を改善できる。
【0011】
また、その粒子内部は、積層欠陥の平均面間隔が5nm以下の面間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子が全蛍光体粒子の30%以上存在する。好ましくは、該粒子が50%以上存在し、より好ましくは70%以上存在する。面状の積層欠陥が多い構造を有する方が、EL発光の効率を高めることができ、好ましい。更に本発明のEL蛍光体は、アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)の総含有量が0.075質量%以下であり、好ましくは0.07質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。アルカリ土類金属元素の総含有量が少ない程、粒子サイズの小サイズ化と相俟って、格段に発光効率が向上し、且つ高寿命化に有効である。
【0012】
本発明のEL蛍光体核粒子は、例えば、以下の方法により得ることができる。
EL蛍光体の原料は、市販の高純度のZnSを用いることができる。使用可能なZnSの純度は、99.9%以上が好ましく、99.99%以上がより好ましい。不純物として、特にEL蛍光体に深い準位を形成するような、Fe、Ni、Co、Cr、等の金属元素を10ppm以上含有していないことが好ましい。原料となるZnSの粒子サイズに制限はないが、焼成によりEL蛍光体の粒子サイズを調整するために、0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。さらに、X線回折の回折ピークの半値幅から計算される結晶子サイズは、高輝度を得るために、1〜50nmの範囲が好ましく、10〜30nmがより好ましい。このようなZnS原料は、Zn水溶液中にHSガスを導入することで得られるが、Zn塩濃度、反応のpH、HSガス導入速度、温度、等の条件を適宜選択して所望のZnS原料を得ることが好ましい。
【0013】
本発明では、上記ZnS原料に、付活剤として少なくともCuを添加する。Cuの添加量は、ZnSが1molに対して1×10-4〜1×10-2molの範囲が好ましく、5×10-4〜5×10-3molがより好ましい。付活剤としてCuを添加するには、例えば、ZnS粒子を水に分散させた懸濁液中に、CuSO、Cu(NO、等のCu化合物水溶液を添加してZnSの粒子表面にCuSが析出した前駆体を作製する。本発明では、さらに付活剤としてAuを添加する。Auの添加に際しては、塩化物、塩素酸塩、等のAu化合物を、懸濁液中に添加する。懸濁液は、マグネットスターラー、インペラー攪拌機、等で全てのZnS粒子が懸濁液中で運動するように撹拌することが好ましく、CuおよびAu化合物水溶液の添加は、スポイト、ビーカー、等で適当に添加することができるが、添加速度が制御可能なシリンジポンプ、チューブポンプ、オリフィス、等を用いることが付活剤の添加の均一性の点でより好ましい。反応後の懸濁液は、副生成物であるZnSOやZn(NOを除去するため、蒸留水やイオン交換水で数回洗浄することが好ましい。懸濁液からの粒子の回収は、デカンテーション、吸引濾過、限外濾過、遠心分離、等の方法により固液分離した後、温風乾燥機、真空乾燥機、等の乾燥機で80〜500℃の温度で、0.5〜24時間程度乾燥することが好ましい。この後の焼成工程での雰囲気を制御するため、乾燥後の前駆体の水分含有率は、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。原料中の水分量が多いと、焼成により水分と原料との反応、分解、等によりHS、SO、O、等が発生し、焼成中の雰囲気を一定に保つことが難しくなる。
【0014】
付活剤や添加物がZnS結晶中に均一に添加された前駆体を用いることも好ましいため、水熱合成法、均一沈殿法、噴霧熱分解法を利用することもできる。いずれの方法でも、Zn塩と付活剤や添加物の塩とを溶媒に溶解した状態から、ZnSを反応生成させることで付活剤や添加物がZnS内部に取り込まれた前駆体を得ることができるため好ましい。
【0015】
Auの添加により、例えばEL蛍光体の電子発生源であるCuS結晶の劣化を抑制することができると推定され、本発明の上記高発光効率、高寿命化の手段と相俟って、更に格段と高発光効率、寿命向上に効果的に寄与することが見出された。この効果は、特に付活剤としてCuを多量に添加したEL蛍光体で顕著である。
【0016】
更に、Au付活の効果は、特に蛍光体の平均粒子サイズが15〜20μmである場合に顕著である。平均粒子サイズが15〜20μmである場合は、15μmより小さい場合と比較して、Auの添加量をより多くすることが可能であり、その結果、Auによる高発光効率、高寿命化の効果が顕著であると推定される。一方、蛍光体の平均粒子サイズが20μmより大きい場合は、Au添加による発光効率向上の効果よりも粒子サイズ増大による発光効率低下の効果が大きくなり、粒子サイズ増大により全体としての発光効率は低下すると推定される。
Auの添加量は、ZnS1モルに対してAuを1×10−7〜5×10−4モルの範囲で添加することが好ましく、5×10−7〜1×10−4モルがより好ましい。
【0017】
更に、Ptを添加することにより更なる発光効率および輝度向上の効果が得られる。Ptは硫化亜鉛中に硫化亜鉛1モルに対して1×10-7モルから1×10-3モルの範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは1×10-6モルから5×10-4モル含まれることが好ましい。
【0018】
また、これら付活剤及び共付活剤の他に、Sb、Bi及び/又はCsを添加物として添加することも好ましい。
【0019】
これらの金属は硫化亜鉛粉末と所定量の硫酸銅と共に脱イオン水に添加し、スラリー状にした上でよく混合し、乾燥してからフラックスと共に焼成を行うことで硫化亜鉛粒子に含有させることが好ましいが、これらの金属を含む錯体粉末をフラックスと混合しておきこのフラックスを用いて焼成を行い硫化亜鉛粒子に含有させることも好ましい。いずれの場合も金属を添加する際の原料化合物としては使用する金属元素を含む任意の化合物を使用することが出来るが、より好ましくは、金属または金属イオンに酸素、または窒素が配位した錯体を用いることが好ましい。配位子としては無機化合物でも有機化合物であってもよい。
【0020】
また本発明では、共付活剤として、Cl、Br、I及びAlから選ばれる少なくとも一種を用いる。共付活剤の添加量は、付活剤と同等量が好ましい。これらの共付活剤は、後述の融剤から導入されるが、Alの場合には別途Al(NO、等の化合物で添加する必要がある。
【0021】
また、白色化の為にZnS蛍光体から発光された光により赤色を発光させる蛍光体をZnS蛍光体中に別途入れているが、赤を発する蛍光体で赤色発光させる為には青緑光が適している。金を含有すると発光波長が青緑側へシフトするので、発光体の演色性を向上させるためには金の含有が有効であることが分かった。
【0022】
EL蛍光体の焼成は、従来法と同様の固相反応で行うことができる。まず、付活剤や添加物を含有したZnS粒子と、共付活剤の供給源ともなる融剤(結晶成長剤)として、アルカリ土類金属ハロゲン化物等のアルカリ土類金属化合物と混合する。必要に応じて、アルカリ金属ハロゲン化物、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化亜鉛等の他の融剤、共付活剤がAlの場合にはAl化合物とを混合する。添加物としてCsを導入する場合にはCsのハロゲン化物をさらに加えて混合する。本発明では、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物を好ましく用いることができ、それらの塩化物がより好ましい。具体的には、NaCl、MgCl、SrCl、BaCl、等が特に好ましく、小サイズのEL蛍光体を得るためには融剤の一部に少なくともSrClを含むことが最も好ましい。Csを添加する場合には、融剤としてCsのハロゲン化物を用いる。このとき、融剤は水分を吸収しやすい物質が多いため、混合前に乾燥することが好ましく、温風乾燥機や真空乾燥機を用いて、80〜200℃で0.5〜24時間乾燥することが好ましい。さらに、Auを添加する場合には、塩化物、塩素酸塩、等のAu化合物を、ここで混合しても良い。
【0023】
これらの混合は、乳鉢、ターブラミキサー、Vコーンミキサー、ボールミル、ジェットミル、等による乾式混合でも良いし、一度蒸留水やイオン交換水を加えて懸濁液又はペースト状とした後、水分を乾燥させることで、さらに前駆体と融剤とを均一に混合することもできる。混合時間は混合方法により異なるが、短すぎると混合が不十分となり、長すぎると原料が再吸湿してしまうため、0.2〜3時間が好ましい。再吸湿を避けるために、乾燥した雰囲気中で混合することも好ましい。
【0024】
融剤の添加量は、混合物の1〜80質量%の範囲が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、20〜60質量%が特に好ましい。この範囲内において、EL蛍光体の収量を低下させたり、腐食性の有毒ガスを発生させたりすることなく、結晶成長を十分に進ませることができる。次いで、この混合物を、ルツボに充填する。使用するルツボは、アルミナ、シリカ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、等のセラミックス製ルツボを使用することが好ましい。ルツボへの混合物の充填は、タップ法やバイブレーターを用いてできるだけ緻密に充填することが好ましく、ルツボ容積の50〜100体積%に充填することが好ましく、80〜95体積%がより好ましい。ルツボには蓋をかぶせることが好ましく、ルツボと蓋との接触部分は摺り合わせ処理をして機密性を高めることが好ましい。混合物を充填したルツボの外側に、より大きなルツボを組み合わせて多重構造にすることがルツボ内の雰囲気を安定させるためには好ましく、多重構造で形成された空間に、ZnS、炭素、硫黄、等の酸化防止剤やMgCl、NHCl、等の雰囲気作成物質、及びそれらの混合物を配置することが好ましい。
【0025】
ルツボに充填した混合物の焼成は、電気やガスを熱源としたマッフル炉、チューブ炉、イメージ炉、連続炉、等を用いて焼成する。ルツボは、炉の均熱帯に配置するが、均熱帯は設定した焼成温度に対して±50℃の範囲が好ましく、±20℃の範囲がより好ましい。焼成温度は、結晶成長が十分に進み、付活剤や添加物がZnS中に均一に拡散するために、900〜1300℃の範囲で焼成することが好ましく、1100〜1200℃がより好ましい。焼成時間も同様に、30分〜12時間の範囲が好ましく、1〜6時間がより好ましい。このとき、炉の昇温速度は、100〜2000℃/hの範囲が好ましく、300〜800℃/hがより好ましい。冷却速度は、通常は自然冷却で行われるが、10〜10000℃/hの範囲で制御することが好ましい。降温速度が速い場合には、炉内に冷風を導入したり、水冷したりすることで降温速度を制御できる。焼成をより精密に制御するために、ステップ状の焼成パターンを選択することも好ましい。焼成の雰囲気は、空気、酸素、等の酸化性雰囲気、窒素,アルゴン、等の不活性雰囲気、水素−窒素混合雰囲気、炭素−酸素混合雰囲気、等の還元雰囲気、硫化水素,二硫化炭素、等の硫化雰囲気、等を利用できる。チューブ炉、等を用いる場合には、ルツボではなくボート形状の容器を用いることもできる。
【0026】
焼成した混合物をルツボから取り出し、余分な融剤、反応副生成物、ZnSが酸化されてできたZnO等を除去するために、酸洗浄と純水洗浄を十分に繰り返すことが好ましい。酸洗浄に使用する酸は、HCl、HNO、HSO、等が使用でき、酸濃度は0.01〜10Mの範囲が好ましく、0.05〜1Mがより好ましい。酸洗浄及び水洗に使用する洗浄液は、処理する混合物の質量の1〜100倍の量を用いることが好ましい。洗浄液の温度は、室温で良いが、10〜90℃の範囲で保温することが好ましい。混合物を洗浄液に投入して、マグネットスターラー、インペラー攪拌機、超音波洗浄器等で、懸濁液中の全ての粒子が運動するように撹拌する。
これにより、本願発明のアルカリ土類金属の総含有量を0.075質量%以下とすることができ、好ましい。
【0027】
洗浄した粒子を吸引濾過、限外濾過、遠心分離、等で固液分離した後、温風乾燥機、真空乾燥機、等を用いて80〜500℃で0.5〜24時間乾燥して、粒子のほとんどがウルツ鉱型結晶を有する中間蛍光体が得られる。中間蛍光体の平均粒子サイズが、EL蛍光体の平均粒子サイズにほぼ等しくなるため、中間蛍光体の平均粒子サイズは0.1〜20μmの範囲であり、15〜20μmが好ましい。同様に中間蛍光体の粒子サイズの変動係数も、35%未満であり、30%未満が好ましい。
【0028】
次いで、上記焼成した中間蛍光体は、応力を与えた後、再焼成することが積層欠陥の密度を増加させて輝度を高めるためより好ましい。中間蛍光体粒子への応力付与は、ボールミル、超音波、静水圧、ラバープレス、等が利用でき、いずれの場合も中間蛍光体粒子を破壊しない程度の負荷で、全ての粒子に均一に加えることが好ましい。特に、応力付与には乾式又は湿式ボールミルを用いることが好ましい。ボールミルに用いる容器及びボールは、ガラス、アルミナ、ジルコニア、等を好ましく用いることができ、ボールによる汚染の点でアルミナとジルコニアをより好ましく用いることができる。使用するボール径は、0.01〜10mmの範囲が好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。ボール径が小さすぎると処理後の中間蛍光体粒子との分離が困難になり、大きすぎると応力が大きくなり中間蛍光体粒子を破砕したり、均一な応力付与が困難になる。ボール径の異なる2種以上のボールを混合することも、中間蛍光体粒子に均一に応力を与えられるため好ましい。中間蛍光体とボールの比率は、中間蛍光体1質量部に対してボールが1〜100質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部がより好ましい。ボールと中間蛍光体の混合物の充填率は、容器の容積に対して10〜60体積%の範囲が好ましい。ボールミルの回転数は、容器の外径により適宜選択されるが、このときの線速度は1〜500cm/secの範囲が好ましく、10〜100cm/secがより好ましく、ボールと中間蛍光体の混合物が容器内で半月状の運動をし、回転中のボールの傾斜角度が5〜45°の範囲になるように回転数を設定することが好ましい。ボールミルの時間は、回転数などの前記条件により異なるが、1分〜24時間の範囲が好ましく、10分〜1時間がより好ましい。これら条件は、EL蛍光体の輝度と寿命から適宜組み合わせることが好ましい。
【0029】
湿式ボールミルの場合には、溶媒として水の他に、アルコール類、ケトン類、等の有機溶媒を用いることができる。加える溶媒量は、ボールの隙間をちょうど充填する量が最適とされるが、混合物の流動性を向上させるために、ちょうど充填する体積の1〜10倍量の範囲を加えることが好ましい。添加する溶媒量が少ないと混合物が流動せず、多すぎると均一な応力付与が困難になる。混合物の流動性を向上させるために、分散剤として界面活性剤、水ガラス、等を添加しても良い。その他のボールミル条件は、乾式ボールミルと同様の範囲を用いることが好ましい。
【0030】
ボールを用いた応力付与の場合、ボールをインペラー、ローター、等で強制的に撹拌する装置や、容器を振動する装置などを用いることもできる。
最後に、ボールミルにより応力を加えた中間蛍光体を、乾式篩、湿式篩、等を用いてボールと分離し、温風乾燥機、真空乾燥機、等を用いて80〜500℃で0.5〜24時間乾燥する。
【0031】
次いで、応力を加えた中間蛍光体を、焼成工程と同様にルツボに充填し、焼成工程と同様の炉で再焼成する。チューブ炉を用いる場合には、ボートを使用することもできる。このとき、SbやBiの化合物を添加することもEL蛍光体の寿命を向上させるので好ましい。これらの添加物は、ハロゲン化物のような化合物で中間蛍光体に混合しても良いし、中間蛍光体と分離して再焼成による温度で昇華させて雰囲気として作用させても良い。添加量は、ZnSが1molに対して1×10−5〜1×10−3molの範囲が好ましい。混合する場合には、前述の焼成工程と同様の混合方法を用いることができる。さらに、必要に応じて前記付活剤や融剤を再度加えることもできる。再焼成の焼成温度は、400〜900℃の範囲が好ましく、500〜800℃がより好ましい。再焼成の焼成時間、昇温速度、冷却速度、雰囲気は、前述の焼成工程と同様の条件が利用できる。これによって、粒子の70質量%以上が閃亜鉛鉱型結晶に変換される。
【0032】
次いで、再焼成により生成した粒子表面のZnO層や、結晶の乱れや歪みの多い表面層を除去するために、酸エッチングを行うことが好ましい。酸エッチングは、前述の焼成工程後の酸洗浄と同様の方法で実施できるが、酸洗浄の酸濃度は1〜10Mの範囲が好ましく、1〜7Mがより好ましい。酸エッチング後は、前述と同様の方法で水洗を繰り返して、酸と溶解した塩を除去する。さらに、Cuを付活剤として用いた場合には、粒子表面に余分のCu化合物が析出しているため、酢酸、シアン化合物、アンモニア、硫化アンモニウム、Cuキレート剤、等のCu洗浄液での洗浄と水洗を繰り返すことが好ましい。Cu洗浄液の濃度は、添加したCuを溶解するのに必要な量(化学量論比)よりも多い量で洗浄することが好ましく、具体的には2〜100倍量がより好ましい。Cu洗浄液には、洗浄効果を高めるために、H、等の酸化剤を添加することも好ましい。洗浄した粒子を前述の方法と同様に固液分離して、温風乾燥機、真空乾燥機、等を用いて80〜500℃で0.5〜24時間乾燥する。
【0033】
最後に、乾式篩などを用いて、粗大粒子や凝集粒子を取り除き用いて平均粒子サイズが0.1〜20μmで、粒子サイズ分布の変動係数が35%未満で、5nm以下の面間隔の積層欠陥を10層以上含有する粒子を粒子全体の30%以上有するZnS系EL蛍光体が得られる。
【0034】
[被覆層の形成]
EL蛍光体は、外部環境から侵入する水分やEL素子内に残留する水分により分解し輝度劣化を引き起こしたり、EL蛍光体粒子から溶出するSイオン、Clイオン、等によりITO、等の透明電極層の腐食を引き起こすことがあるため、EL蛍光体の粒子表面全体に、平均膜厚が0.01〜1μmの被覆層を形成することが好ましく、平均膜厚は0.05〜0.5μmであることがより好ましい。0.01μm以下の膜厚では、防湿性やイオンバリア性が低く、EL蛍光体の輝度低下や透明電極層の腐食を引き起こし易いため好ましくなく、また、1μm以上ではEL蛍光体粒子への電界強度が減少して、輝度低下や発光閾値電圧の上昇を引き起こし易いため好ましくない。また、粒子の平均粒子サイズに対する被覆層の平均膜厚の比は、0.002〜0.05の範囲であることが好ましい。被覆層は、粒子の平均粒子サイズに適した膜厚であることが好ましく、例えば1μmの粒子に1μmの被覆層を形成した場合には、粒子への電界強度の著しい低下を引き起こし易いため好ましくない。
【0035】
被覆層の組成は、酸化物,窒化物,水酸化物、フッ化物,リン酸塩,ダイヤモンド状カーボン及び有機化合物、等が利用でき、それらの混合物、混晶、多層膜、等の利用も好ましい。具体的には、SiO、Al、TiO、ZrO、HfO、Ta、Y、La、CeO、BaTiO、SrTiO、PZT、Si、AlN、Al(OH)、MgF、CaF、Mg(PO、Ca(PO、Sr(PO、Ba(PO、フッ素樹脂、等が好ましい。
【0036】
また、被覆層は、十分な防湿性やイオンバリア性を得るために、ピンホールやクラックが無く、連続的であることが好ましい。このような被覆層は、ゾルゲル法、沈殿法、等の液相合成法を用いて形成することができるが、流動床、撹拌床、振動床、転動床、等を利用したCVD法、プラズマCVD法、スパッタリング法、及びメカノフュージョン法、等で形成することがより好ましく、被覆層の連続性の点で流動床を用いることが特に好ましい。
【0037】
[EL素子]
本発明のEL素子は、少なくとも透明電極、EL蛍光体粒子を含む蛍光体層、誘電体層、背面電極とを積層した構成である。
【0038】
[EL素子の作製]
上記のようなEL素子は、例えば以下の方法で得ることができる。
EL素子を作製する環境としては、水分によるEL素子の初期輝度及び寿命の低下や、ゴミ、等の混入による品質の低下を防止するため、温度、湿度、露点、クリーン度、等が管理された場所で実施することが好ましい。温度としては20〜25℃が好ましい。湿度は20℃で58%RH以下、25℃で44%RH以下、絶対湿度で10g/m以下、露点は10℃未満が好ましい。クリーン度は、クラス10000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。
【0039】
初めに、使用する材料を準備する。蛍光体層に用いる前記EL蛍光体粒子と誘電体層に用いる誘電体粒子を乾燥する。誘電体粒子としては、金属酸化物、窒化物から選択され、例えばTiO,BaTiO,SrTiO,PbTiO,KNbO3,PbNbO,Ta,BaTa26,LiTaO3,Y,Al,ZrO,AlON,ZnSなどを好ましく用いることができる。特に、誘電率の高いBaTiO,SrTiOを好ましく用いることができる。誘電体粒子は、EL蛍光体粒子よりも平均粒子サイズが小さいものが好ましく、具体的には、EL蛍光体粒子の平均粒子サイズの1/1000〜1/10の範囲、又は0.01〜1μmの範囲が好ましい。EL蛍光体粒子及び誘電体粒子の乾燥は、温風乾燥機、真空乾燥機、等を用いて80〜500℃で0.5〜24時間、水分含有率が好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下になるように乾燥する。同様に、蛍光体層及び誘電体層に用いる結合剤を乾燥する。蛍光体層としては、EL蛍光体粒子を結合剤に分散させた層を用いることができる。結合剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができるが、シアノエチルセルロース、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、等のように、誘電率の高いポリマーをより好ましく用いることができる。結合剤を乾燥する場合には、軟化温度が低いため低温での真空乾燥を長く実施することが好ましく、50〜150℃で2〜24時間乾燥することが好ましい。結合剤を溶解するアセトン、MEK、DMF、酢酸ブチル、アセトニトリル、等の有機溶媒も、モレキュラーシーブなどで脱水しておくことが好ましい。乾燥した結合剤を、脱水した有機溶媒に、ホモジナイザー、遊星型混練機、ボールミル、等を用いて5〜70質量%の濃度で溶解し、結合剤溶液を作製する。結合剤溶液は、静置脱泡、真空脱泡、遠心脱泡、等の方法で脱泡した後、ゴミ、等を除去するために、濾布や濾紙を用いて濾過しておくことが好ましい。また、結合剤溶液は、ポリエチレン容器のような密閉容器で長期保存することも可能である。
【0040】
次いで、EL蛍光体粒子分散液と誘電体粒子分散液とを作製する。EL蛍光体粒子分散液は、前記EL蛍光体粒子を前記結合剤溶液に添加して、ホモジナイザー、遊星型混練機、ロール混練機、超音波分散機ボールミル、ローターミキサー、等で分散して作製する。EL蛍光体粒子は、機械的応力によって劣化してしまうため、機械的応力を最小限に留めて、EL蛍光体粒子と結合剤とが馴染む分散方法を選択することが好ましい。このとき、EL蛍光体粒子と結合剤の比率は、EL素子の輝度を向上させるため、結合剤が1質量部に対して、EL蛍光体粒子が1〜20質量部の範囲が好ましく、2〜10質量部がより好ましく、4〜7質量部が特に好ましい。EL蛍光体の比率が大きくなりすぎると、蛍光体層中に空隙を形成しやすくなり、輝度低下や絶縁破壊を引き起こすため好ましくない。さらに、誘電体粒子をEL蛍光体に対して0〜10質量%の範囲で混合して誘電率を調整することもできる。分散時間は、分散する分散液の量や使用する分散機によっても異なるが、0.5〜72時間の範囲が好ましい。通常は、分散液の量が多いほど分散時間は長くなる。EL蛍光体粒子分散液は、結合剤溶液に使用したものと同じ有機溶媒を用いて粘度を調整する。EL蛍光体粒子分散液の16℃において測定される粘度は、後述の塗布方法によっても異なるが、0.01〜10Pa・sの範囲が好ましく0.1〜5Pa・sがより好ましい。EL蛍光体粒子分散液の粘度が、低すぎるときは、塗膜の膜厚ムラや平滑性などの膜質低下が生じやすくなり、また分散後の時間経過とともにEL蛍光体粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、EL蛍光体粒子分散液の粘度が高すぎるときには、高速領域での塗布が困難となる場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。粘度調整したEL蛍光体粒子分散液は、前記と同様に脱泡し、濾過することが好ましい。同様にして誘電体粒子分散液を作製する。誘電体粒子は、EL蛍光体粒子よりも粒子サイズが小さいため、分散時間もEL蛍光体粒子分散液よりも長くすることが好ましい。
【0041】
蛍光体層は、前記のEL蛍光体粒子分散液を塗工して形成することができる。後述の透明電極層や、後述の背面電極上に誘電体層を積層した積層体の上に、塗膜の乾燥膜厚が0.5〜100μmの範囲になるように連続的に塗布して形成することが好ましい。このとき、蛍光体層の膜厚変動は、EL素子の輝度ムラを抑制するために、10%以下とするのが好ましく、5%以下とするのがより好ましい。蛍光体層の膜厚は、発光効率と発光効率との両立の観点では、上記蛍光体粒子を上記蛍光体層に適用する場合には40μm〜100μmが好ましく、50〜80μmがより好ましい。上記の蛍光体層の膜厚では、同一の輝度で駆動する時の消費電力を小さくすることができるため、発光に伴う発熱を少なくすることができ、発熱によるEL素子の劣化を抑制できるので、耐久性に優れたEL素子を得ることができる。
【0042】
蛍光体層の塗布は、一般的な塗布機で塗布可能だが、スライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーター、ディップコーター、等を用いることが好ましい。スライドコーター、エクストルージョンコーター、ディップコーターは、0.01〜1Pa・sの比較的低粘度の分散液を高速で塗布するのに適しており、ドクターブレードコーターは0.5〜10Pa・s高粘度の分散液にも対応できる。塗布速度はいずれの塗布方法の場合も、0.1〜200m/minの範囲が好ましく、0.5〜50m/minがより好ましい。塗布長が長く、塗布時間がかかる場合には、コーター部での分散液の皮バリや溶剤の蒸発を防止するために、コーターや液溜部を水冷などにより25℃以下、より好ましくは20℃以下に冷却することや、コーター周囲にカバーを付設して、溶剤雰囲気を高濃度で充満させて溶剤の蒸発を防止することが好ましい。
【0043】
前述の各層は、少なくとも塗布から乾燥工程までを連続工程として形成することが好ましい。乾燥工程は、塗膜が乾燥固化するまでの恒率乾燥工程と、塗膜の残留溶媒を減少させる減率乾燥工程に分けられる。本発明では、各層の結合剤比率が高いため、急速乾燥させると表面だけが乾燥し塗膜内で対流が発生し、いわゆるベナードセルが生じやすくなり、また急激な溶媒の膨張によりブリスター故障を発生しやすくなり、塗膜の均一性を著しく損う。逆に、最終の乾燥温度が低いと、溶媒が各層内に残留してしまい、防湿フィルムのラミネート工程、等のEL素子化の後工程に影響を与えてしまう。したがって、乾燥工程は、恒率乾燥工程を緩やかに実施し、溶媒が乾燥するのに十分な温度で減率乾燥工程を実施することが好ましい。恒率乾燥工程を緩やかに実施する方法としては、ベースが走行する乾燥室をいくつかのゾーンに分けて、塗布工程終了後からの乾燥温度を段階的に上昇することが好ましい。さらに、結合剤の重合や硬化のため必要な温度まで上昇させることもできる。このような乾燥温度としては、具体的には50〜200℃の範囲が好ましく、80〜150℃がより好ましい。最後に、乾燥した積層体を冷却して巻き取る。
【0044】
また、本発明のEL素子は、上述の蛍光体層に隣接して、誘電体層を設ける。誘電体層は、蛍光体層と背面電極の間に、蛍光体層に隣接させて配置することが好ましい。該誘電体層は、誘電率と絶縁性とが高く、且つ高い誘電破壊電圧を有する誘電体材料であれば任意のものを用いて形成することができる。このような材料は、薄膜結晶層として設置されても良いし、また塗布で形成された粒子構造を有する膜として用いても良い。また、蛍光体層の片側に設けてもよく、また蛍光体層の両側に設けることも好ましい。
【0045】
薄膜結晶層の場合は、基板にスパッタリングや真空蒸着等の気相法で形成した薄膜であっても、BaやSrなどのアルコキシドを用いたゾルゲル膜であっても良く、この場合膜の厚みは通常0.1〜10μmの範囲である。
【0046】
塗布形成する誘電体層の場合は、後述の背面電極や、透明電極層に蛍光体層を積層した積層体の上に、誘電体層を、塗膜の乾燥膜厚が0.5〜50μmの範囲になるように連続的に塗布して形成することが好ましく、30μm以下がより好ましい。このとき、誘電体層の膜厚変動は、10%以下とするのが好ましく、特に5%以下とするのが好ましい。誘電体粒子分散液の粘度は、塗布方法によっても異なるが、0.01〜10Pa・sの範囲が好ましく、0.1〜5Pa・sがより好ましい。誘電体粒子分散液の粘度が、低すぎるときは、塗膜の膜厚ムラが生じやすくなり、また分散後の時間経過とともに誘電体粒子が分離沈降してしまうことがある。一方、誘電体粒子分散液の粘度が高すぎるときには、高速領域での塗布が困難となる場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。誘電体層を塗布で形成する場合は、前述の蛍光体層と同様の塗布方法及び塗布条件を用いることが好ましい。
【0047】
また、蛍光体層と誘電体層は、蛍光体層と誘電体層の界面の平滑度を向上するために、透明電極層又は背面電極層の上に、同時に連続塗布することも好ましい。同時塗布は、多段のスライドコーター、エクストルージョンコーター、ドクターブレードコーターを用いて実施することができる。この場合、下層となる分散液の液比重が、上層の分散液の液比重よりも大きいことが、2層の塗布界面の平滑度を向上させるためには好ましい。
【0048】
本発明のEL素子において用いられる前記透明電極層としては、透明高分子フィルムの一方の面に、任意の透明電極層材料を用いて形成された電極が用いられる。高分子フィルムとしては、PET、PAR、PES、等が用いられ、高分子フィルムの膜厚は20〜200μmの範囲が好ましく、50〜100μmがより好ましい。このときの膜厚変動は、平均膜厚に対して10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。透明電極層材料としては、例えばITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、ZTO(亜鉛ドープ酸化錫)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)、等の酸化物膜又はこれら酸化物粒子を高分子に分散した導電性インクを塗布した塗布膜、銀の薄膜を高屈折率層で挟んだ多層構造膜、ポリアニリン、ポリピロールなどのπ共役系高分子膜などが挙げられる。前記透明電極層の表面抵抗率は、300Ω/□以下の範囲が、EL素子が高輝度を発揮する点で好ましく、100Ω/□以下の範囲がより好ましく、30Ω/□以下の範囲がさらに好ましい。表面抵抗率は、JIS K6911に記載の測定方法によって測定することができる。このとき、透明電極層の550nm透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。透明電極層の膜厚を増加すれば表面抵抗率は減少するが、光透過率が減少するため、透明電極層の膜厚は、導電性と透過率のバランスで、5〜500nmの範囲が好ましく、10〜300nmがより好ましい。
【0049】
これら透明電極層には、前記透明電極層に網目型、櫛型、グリッド型、等の金属細線を配置して導電性と透明性を改善することも好ましい。金属細線を配置することで光の透過率が減少するが、前記透明電極層の膜厚を減少できるため、金属細線の配置で減少する分の透過率以上に改善することができる。配置される金属細線の材質は、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、及びそれら含む合金、等が好ましく用いられる。電気伝導性と熱伝導性が高い材料であることが好ましい。金属細線の幅は、0.1〜1000μmの間が好ましい。金属細線の間隔は、50μm〜5cmの間隔で配置されていることが好ましく、100μm〜1cmがより好ましい。金属細線の高さ(厚み)は、0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。金属細線の幅は、細線間隔の1/10000〜1/10が好ましい。細線の高さも同様であるが、細線の幅に対して1/100〜10倍の範囲が好ましく用いられる。金属細線と透明導電膜は、どちらが表面に出ていも良いが、導電性面の平滑度は、5μm以下であることが好ましく、0.05〜3μmがより好ましい。ここで、導電性面の平滑度は、3次元表面粗さ計(例えば、東京精密社製;SURFCOM575A−3DF)を用いて5mm四方を測定したときの凹凸部の平均振幅を示す。表面粗さ計の分解能の及ばないものについては、STMや電子顕微鏡による測定によって、平滑度を求める。
【0050】
EL素子の大面積にともなう電圧降下を防止するため、透明電極層上の内周部に銅、金、銀、カーボン、等の導電性微粒子を含有する導電性ペースト、等でバス電極を形成することが好ましい。バス電極の面積は、蛍光体層の面積に対して1%以上の面積であり、さらに蛍光体層へ効率良く電力を供給するために、2%以上がより好ましい。バス電極は、蛍光体層の面積の増加に応じて増加させる必要があるため、蛍光体層総面積に対する面積比率で表すことが必要である。1%以上とするのは、高輝度化のために、蛍光体層膜厚を薄くしたり、駆動電圧や周波数を増加させるためである。しかしながら、10%以上のバス電極面積はEL素子の性能に影響しないため不必要に非発光部を増加させたり、素子面積を大きくしてしまうため好ましくない。バス電極の形成方法としては、スクリーン印刷法やキャスティング法などが利用できる。
【0051】
前記背面電極層は、光を取り出さない側であり、導電性の有る任意の材料を用いることができる。例えば、銅、アルミニウム、金、銀、等の金属材料を用いることができる。使用する金属材料はシート状のものであることが好ましい。また、金属シートの代わりにグラファイトシートを用いることも好ましい。シート状の背面電極の膜厚は、20〜200μmの範囲が好ましく、50〜100μmがより好ましい。このときの膜厚変動は、平均膜厚に対して10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。EL素子の駆動により発生する熱をEL素子面内で均一化して、効率よく放熱するためには、背面電極層の熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましく、200W/m・K以上であることがより好ましい。放熱のために、背面電極に熱的接触でEL素子を固定する金属部材やヒートシンクに熱を移動させ流すことが好ましい。また、銅、金、銀、カーボン、等の導電性微粒子を含有した導電性ペーストを塗布することで、背面電極層を形成しても良い。塗布形成した背面電極層の膜厚は、10〜100μmの範囲が好ましく、20〜50μmがより好ましい。この場合は、例えば透明電極層上に、蛍光体層、誘電体層を順に積層した積層体上に背面電極層を塗布形成する。この場合には、前述の蛍光体層や誘電体層と同様の塗布方法及び塗布条件を用いることが好ましい。
【0052】
本発明のEL素子は、透明電極層と蛍光体層との密着強度を改善して透明電極層と蛍光体層との層間剥離を防止したり、EL蛍光体粒子と透明電極層との接触による透明電極層の腐食やEL蛍光体粒子と透明電極層との接触界面での局所発熱による劣化を防止するために、透明電極層と発光体層との間に少なくとも1層の中間層を有することが好ましい。中間層は、有機高分子化合物、無機化合物、又はこれらが複合化されていても良いが、有機高分子化合物を含む層を少なくとも1層有することが好ましい。中間層の膜厚は、10nm〜100μmの範囲が好ましく、100nm〜30μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましい。このときの膜厚変動は、平均膜厚に対して10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0053】
中間層を形成する材料が有機高分子化合物である場合、使用できる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニルアルコール、プルランやサッカロース、セルロース等の多糖類、塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸アミド類、ポリメタクリル酸アミド類、シリコーン樹脂、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース、または多官能アクリル酸エステル化合物から得られる紫外光硬化型樹脂やエポキシ化合物やシアネート化合物から得られる熱硬化型樹脂、等が挙げられる。また、ここで使用する高分子化合物は絶縁体であっても導電体で有っても良い。また、これらのうち軟化点が70℃以上(より好ましくは100℃以上)のものが好ましい。これらから選ばれる複数の高分子化合物が組み合わされていることも好ましい。中間層の有機高分子化合物が軟化点の高い(例えば200℃以上)である場合、透明電極層や発光粒子含有層との密着性を改良するなどの目的で、軟化点の低い有機高分子化合物を含む別な中間層を併用することも好ましい。
【0054】
これら有機高分子化合物またはその前駆体は、適当な有機溶媒に溶解し透明電極上あるいは蛍光体層上に塗布して形成することができる。その場合には、前述の蛍光体層、誘電体層、電極層、等と同様の塗布方法及び塗布条件を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0055】
中間層は、実質的な透明性を有する範囲で、種々の機能を付与するための添加物を有していても良い。中間層の透過率としては、好ましくは波長550nmの透過率が70%以上、より好ましくは80%以上が好ましい。例えばチタン酸バリウム粒子などの誘電体、または酸化スズ、酸化インジウム、酸化スズ−インジウム、金属粒子などの導電体、または染料、蛍光染料、蛍光顔料、または本発明の効果を失わない程度(EL素子全体の輝度のうち30%以下)の発光体粒子を存在させても良い。
【0056】
中間層は、SiO、その他金属酸化物、金属窒化物、等の無機化合物で有っても良い。無機化合物で中間層を形成する方法としては、スパッタ法、CVD法などが採用できる。中間層が無機化合物で形成されている場合、膜厚は10nm〜1μmが好ましく、より好ましくは10nm〜200nmである。また中間層が無機化合物の層と有機高分子化合物の層の組合せで構成されているものも好ましい。
【0057】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子では、白色発光を作るために青緑に発光する硫化亜鉛粒子の他に赤色に発光する発光材料を使用する。赤色の発光材料は発光粒子層中に分散しても、誘電体層中に分散してもよく、発光粒子層と透明電極の間や透明電極に対して発光粒子層と反対側に位置させてもよい。
【0058】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子において、白色発光時の赤色の発光波長として好ましくは600nm以上、650nm以下である。この範囲に含まれる赤色発光波長を得るには、赤色発光材料を発光粒子層に含有させても、発光粒子層と透明電極の間に入れても、透明電極を中心として発光粒子層の反対側に入れてもよいが、誘電体層に含有させることが最も好ましい。赤色発光材料を含む誘電体層は、本発明におけるエレクトロルミネッセンス素子中の誘電体層を全て赤色発光材料を含む層とすることも好ましいが、素子中の誘電体層を2つ以上に分割し、そのうちの一部を赤色発光材料を含む層とすることがより好ましい。赤色発光材料を含む層は、赤色発光材料を含まない誘電体層と発光粒子層の間に位置することが好ましく、両側を赤色発光材料を含まない誘電体層で挟まれる様に位置させることも好ましい。
【0059】
赤色発光材料を含む層を赤色発光材料を含まない誘電体層と発光粒子層の間に位置させる場合、赤色発光材料を含む層は1μm以上20μm以下であることが好ましいが、より好ましくは3μm以上17μm以下である。赤色発光材料を添加した誘電体層中の赤色発光材料の濃度は、誘電体粒子に対しての質量%で、1質量%以上20質量%以下が好ましいが、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。赤色発光材料を含む層が両側から赤色発光材料を含まない誘電体層に挟まれる様に位置する場合、赤色発光材料を含む層は1μm以上20μm以下であることが好ましいが、より好ましくは3μm以上10μm以下である。赤色発光材料を添加した誘電体層中の赤色発光材料の濃度は、誘電体粒子に対しての質量%で、1質量%以上30質量%以下が好ましいが、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。赤色発光材料を含む層が両側から赤色発光材料を含まない誘電体層に挟まれる様に位置する場合には赤色発光材料を含む層に誘電体粒子を含有させず、高誘電率バインダーと赤色発光材料のみの層にすることも好ましい。
【0060】
ここで使用される赤色発光材料が粉末の状態にある時の発光波長として好ましくは600nm以上750nm以下であることが好ましいが、より好ましくは610nm以上650nm以下であり、最も好ましくは610nm以上、630nm以下である。この発光材料がエレクトロルミネッセンス素子に添加され、エレクトロルミネッセンス発光時の赤色の発光波長としては前述の様に600nm以上、650nm以下であることが好ましいが、より好ましくは605nm以上630nm以下であり、最も好ましくは608nm以上、620nm以下である。
【0061】
上記の様な赤色発光材料層を誘電体層中に設定する時でも、誘電体層全体の厚みとしては5μm以上、40μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、35μm以下である。赤色発光材料を含む誘電体層に使用する誘電体粒子としては、赤色発光材料を含まない誘電体層に使用する粒子と同じものから選ぶことが出来る。誘電体粒子は赤色発光材料を含む層と赤色発光材料を含まない層とで同じ粒子を用いても異なる粒子を用いてもよい。赤色発光材料を含む層の結合剤としては、シアノエチルセルロース系樹脂のように、比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂が好ましい。誘電体材料の分散方法としては、ホモジナイザー,遊星型混練機,ロール混練機、超音波分散機などを用いて分散することが好ましい。
【0062】
本発明の赤色発光材料としては、蛍光顔料または蛍光染料を好ましく用いることが出来る。これらの発光中心をなす化合物としては、ローダミン、ラクトン、キサンテン、キノリン、ベンゾチアゾール、トリエチルインドリン、ペリレン、トリフェンニン、ジシアノメチレンを骨格として持つ化合物が好ましく、他にもシアニン系色素、アゾ染料、ポリフェニレンビニレン系ポリマー、ジシランオリゴチエニレン系ポリマー、ルテニウム錯体、ユーロピウム錯体、エルビウム錯体を用いることも好ましい。これらの化合物は単独で用いても複数種類を用いてもよい。また、これらの化合物はさらにポリマー等に分散した後に使用してもよい。
【0063】
本発明のEL素子の組立方法は、下記のいずれの方法でも好適に行うことができる。アルミニウム箔のような背面電極層上に誘電体層、蛍光体層を順に塗布した積層体と透明電極層とを貼り合わせる方法、透明電極層上に蛍光体層、誘電体層を順に塗布した積層体と背面電極層と貼り合わせる方法、透明電極層上に蛍光体層を塗布した積層体と背面電極層上に誘電体層を塗布した積層体とを貼り合わせる方法、等が好ましい。貼り合わせは、金属又はシリコン樹脂、等を被覆した熱ローラーにより、熱圧着することが好ましい。このときの熱圧着温度は、100〜300℃の範囲が好ましく、150〜200℃がより好ましい。熱圧着速度は、0.01〜1m/minの範囲が好ましく、0.05〜0.5m/minがより好ましい。熱圧着圧力は、0.01〜1MPa/mの範囲が好ましく、0.05〜0.5MPa/mがより好ましい。熱圧着温度や圧力が低いと十分な密着強度を得ることができずに層間剥離を引き起こし、高すぎると蛍光体層や誘電体層が過度に圧延されて薄層化するために絶縁破壊を引き起こしたり、圧力によるEL蛍光体粒子の破砕や温度による蛍光体層や誘電体層に含まれる結合剤の劣化を引き起こす。
【0064】
本発明の分散型EL素子は、最後に封止フィルムを用いて、外部環境からの湿度や酸素の影響を排除するよう加工するのが好ましい。
EL素子を封止する封止フィルムは、JIS K7129に記載の測定方法に準じて測定される、40℃−90%RHにおける水蒸気透過率が0.1g/m/day以下が好ましく、0.05g/m/day以下がより好ましく、0.01g/m/day以下が特に好ましい。さらに40℃−90%RHでの酸素透過率が0.1cm/m/day/atm以下が好ましく、0.01cm/m/day/atm以下がより好ましい。このような封止フィルムとしては、ポリ塩化トリフロロエチレン樹脂や有機物膜と無機物膜との積層膜が好ましく用いられる。
【0065】
封止フィルムが積層膜の場合、有機物膜の形成材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられ、特にポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂などは吸水性があるため、あらかじめ真空加熱などの処理を施すことで絶乾状態にしたものを用いることがより好ましい。これらの樹脂を塗布などの方法によりシート状に加工したものの上に、無機物膜を蒸着、スパッタリング、CVD法などを用いて堆積させる。堆積させる無機物膜の形成材料としては、酸化ケイ素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化ケイ素/酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが好ましく用いられ、特に酸化ケイ素がより好ましく用いられる。より低い水蒸気透過率や酸素透過率を得たり、無機物膜が曲げ等によりひび割れることを防止するために、有機物膜と無機物膜の形成を繰り返したり、無機物膜を堆積した有機物膜を接着剤層を介して複数枚貼り合わせて多層膜とすることが好ましい。有機物膜の膜厚は、5μm〜300μmの範囲が好ましく、10μm〜200μmの範囲がより好ましい。無機物膜の膜厚は、10nm〜300nmの範囲が好ましく、20nm〜200nmの範囲がより好ましい。積層した封止フィルムの膜厚は、30μm〜1000μmの範囲が好ましく、50μm〜300μmの範囲がより好ましい。
【0066】
封止フィルムの一方の面にはホットメルト接着剤が塗布されており、封止フィルムでELセルを封止する場合、2枚の封止フィルムでELセルを挟んで熱圧着封止しても、1枚の封止フィルムを半分に折って熱圧着封止しても良い。熱圧着は前述の熱ローラー、プレス型熱圧着機、等を用いることが好ましく、そのときの熱圧着温度は100〜200℃の範囲が好ましい。封止フィルムで封止されるELセルは、ELセルのみを別途作成しても良いし、封止フィルム上に直接ELセルを作成することもできる。この場合には、支持体の替わりとすることができる。また、封止工程は、真空又は露点管理された乾燥雰囲気中で行うことが好ましい。真空雰囲気で封止する場合には、10−2Pa以下が好ましい。
【0067】
上記以外にも、EL素子の振動抑制のために、衝撃吸収能の高い高分子材料や発泡剤を加えて発泡させた高分子材料、等からなる緩衝材層や、透明電極層又は背面電極層と絶縁層を挟んで設ける補償電極層、等を付設することも好ましい。さらに、駆動によってEL素子から発生する熱を効果的に除去するために、セラミックス材料を分散した放熱シートを付設することも好ましい。さらに、後述の画像シートやEL素子に含まれる蛍光顔料の紫外線による退色を防止するために、紫外線吸収層を付設したり、EL素子からの電磁波の放出を防止するために、電磁波吸収層を付設することも好ましい。
【0068】
通常、EL素子は、100Vで50Hz〜400Hzの交流電源を用いて交流で駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧ならびに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m2以上の大面積EL素子の場合は、EL素子の容量成分が増大し、EL素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、EL素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなるため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になりやすい。特に0.25m2以上のEL素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下がおこり、輝度低下が起こることがしばしば起こる。これに対し本発明のEL素子は、0.25m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能で、高輝度化することができる。その場合、500Hz〜5KHzでの駆動が好ましく、800Hz〜3KHzの駆動がより好ましい。
【0069】
本発明のEL素子の応用例として、屋内外のサイン及びディスプレイがある。特に、EL素子とカラー写真プリント、インクジェットプリント、等の透過画像シートを組み合わせた画像表示システムが好ましい。画像の視認性を確保するためには、透過画像シートの濃度は1.5〜4.5の範囲が好ましく、2〜3がより好ましい。透過画像シートは、EL素子の発光面に密着配置される。透過画像シートは、圧力、静電気、等で密着されても良いし、接着剤等で着脱自在にEL素子に貼付されても良い。画像シートとEL素子との間に、非発光時の白色度を高めるために拡散板、等を配置することも好ましい。さらに、画像シートの表面に、樹脂製の保護板を配置しても良い。保護板は、耐光性、耐衝撃性、透明性を十分に確保するためには、アクリル、ポリカーボネート、等の樹脂及びそれら樹脂に紫外線吸収層を付与した物などを好ましく用いることができる。保護板は、剛性の確保や、カッターナイフ等の鋭利な金属によるEL素子の傷つきや感電を防止するために、1〜10mmの厚さが好ましく、2〜8mmがより好ましい。EL素子、画像シート、及び保護板からなる画像表示部は、アルミニウム、樹脂、木製、等の固定枠と背板からなる固定部材により固定されることが好ましい。EL素子は、固定枠や背板に接着剤等により着脱自在に固定されても良いし、圧力等により固定されても良い。円柱等の曲面への設置においては、設置面の曲率と同様の固定部材を用いて固定することが好ましい。また、固定部材に空間を設けて、EL素子の駆動用電源を収納することが、省スペース化のために好ましい。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明のEL蛍光体、それらの製造方法、EL素子を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明の実施例は以下の各実施例に制限されるものではない。
【0071】
<蛍光体粒子の作製>
〔EL蛍光体粒子A〕
ZnS原料として結晶子サイズが20nmで、平均粒子サイズが0.1μmのZnSを準備した。このZnSを25g秤量し、300ml容積のビーカーに200mlの蒸留水とともに入れて、マグネットスターラーですべてのZnS粒子が分散するように撹拌した。CuSO・5HOを0.09gを秤量し、5mlの蒸留水に溶解した水溶液を準備し、その溶液を前記ZnS粒子が分散した溶液中に、ビュレットを用いて約30秒間で添加した。添加終了から30分間撹拌を維持し、停止した後、静置してZnS粒子が沈降するまでの時間放置して、ZnS粒子が完全に沈降した上澄み液をデカンテーションで除去し、洗浄の目的で200mlの蒸留水を加えて再度撹拌して分散させた。10分間の撹拌の後、ZnS粒子を沈降させて上澄み液をデカンテーションで除去した。この洗浄操作を3回繰り返した後、温風乾燥機で120℃で4時間乾燥させてCu添加ZnSを得た。
前記Cu添加ZnSに、下記の融剤を下記の量で加えて乳鉢混合し、混合物を得た。
【0072】
・Cu・(Au)添加ZnS ・・・25g
・SrCl・6HO ・・・27.3g
・BaCl・2HO ・・・4.2g
・MgCl・6HO ・・・11.1g
【0073】
上記混合物を、アルミナ坩堝に充填し、蓋をして室温のマッフル炉内に設置した。マッフル炉を800℃/hの速度で昇温し、1200℃に保持し、空気中で1時間、第1の焼成を実施した。第1焼成終了後、室温まで自然冷却し、アルミナ坩堝を取り出した。アルミナ坩堝から、第1焼成した混合物を取り出し、HCl水溶液及び蒸留水で洗浄し、温風乾燥機で120℃で4時間乾燥した。これによって、ZnS:Cu,Cl中間蛍光体粒子を得た。
【0074】
前記中間蛍光体粒子5gと1mmのアルミナボール20gとを、15mmφのガラス瓶に充填して20分間10rpmの回転速度でボールミルした後、100メッシュの篩いを用いてアルミナボールと中間蛍光体粒子を分離した。分離した中間蛍光体粒子を、アルミナ坩堝に充填し、蓋をして室温のマッフル炉内に設置した。マッフル炉を400℃/hの速度で昇温し、700℃に保持し、空気中で4時間の第2焼成を実施した。第2焼成終了後、室温まで冷却し、アルミナ坩堝を取り出した。アルミナ坩堝から、第2焼成物を取り出し、10%のKCN水溶液100mlで洗浄した後、500mlの蒸留水で5回水洗し、温風乾燥機で120℃で4時間乾燥した。これによって、平均粒子サイズが18μmのZnS:Cu,ClのEL蛍光体粒子Aを得た。
【0075】
〔EL蛍光体粒子B及びB′〕
上記EL蛍光体粒子Aにおいて、CuSO・5HOを0.09g秤量する際、更にHAuCl・4HOを0.05gとを秤量し、CuSO・5HOと同時に上記5mlの蒸留水に溶解した水溶液を準備することを除いては全く上記EL蛍光体粒子Aと同様にしてZnS:Cu,Cl,AuのEL蛍光体粒子Bを得た。
【0076】
また、前記EL蛍光体粒子Bの中間蛍光体粒子のボールミル処理を省略したこと以外はEL蛍光体Bと同様にして、ZnS:Cu,Cl,AuのEL蛍光体粒子B′を得た。
【0077】
〔EL蛍光体粒子BA〕
上記EL蛍光体粒子Bにおいて、HAuCl・4HOを0.9g用いたこと以外はEL蛍光体Bと同様にして、ZnS:Cu,Cl,AuのEL蛍光体粒子BAを得た。
【0078】
〔EL蛍光体粒子BB〕
上記EL蛍光体粒子Bにおいて、SrCl・6HO27.3gの代わりにNaClを2gを用いたこと以外はEL蛍光体Bと同様にして、ZnS:Cu,Cl,AuのEL蛍光体粒子BBを得た。
【0079】
〔EL蛍光体粒子C〕
上記EL蛍光体粒子Aにおいて、CuSO・5HOを秤量する際、0.09gではなく0.01g秤量することを除いては全く上記EL蛍光体粒子Aと同様にしてZnS:Cu,ClのEL蛍光体粒子Cを得た。
【0080】
〔EL蛍光体粒子CA〕
上記EL蛍光体粒子Aにおいて、CuSO・5HOを秤量する際、0.09gではなく1g秤量することを除いては全く上記EL蛍光体粒子Aと同様にしてZnS:Cu,ClのEL蛍光体粒子CAを得た。
【0081】
〔EL蛍光体粒子D〕
上記EL蛍光体粒子Aにおいて、CuSO・5HOを0.09gを秤量する際、更にHAuCl・4HOを0.05gとを秤量し、CuSO・5HOと同時に上記5mlの蒸留水に溶解した水溶液を準備すること、かつ、上記BaCl2・2H2Oの一部をとり、Na[Pt(OH)] を17.5mg添加し、よく混合した後に、ZnS生粉や他のフラックスと混合し、混合物を得たことを除いては全く上記EL蛍光体粒子Aと同様にしてZnS:Cu,Cl,Au、PtのEL蛍光体粒子Dを得た。
【0082】
〔EL蛍光体粒子J〕
前記EL蛍光体粒子Aの第1焼成前の混合物を下記の組成にした以外はEL蛍光体粒子Aと同様にして、平均粒子サイズが28μmのZnS:Cu、Clの蛍光体粒子Jを得た。
・Cu添加ZnS ・・・25g
・NaCl ・・・0.5g
・BaCl・2HO ・・・1.0g
・MgCl・6HO ・・・2.1g
【0083】
〔EL蛍光体粒子K、K’〕
上記蛍光体粒子Jにおいて、CuSO・5HOを0.09gを秤量する際、更にHAuCl・4HOを0.05gとを秤量し、CuSO・5HOと同時に上記5mlの蒸留水に溶解した水溶液を準備することを除いては全く上記EL蛍光体粒子Jと同様にしてZnS:Cu,Cl,AuのEL蛍光体粒子Kを得た。
【0084】
<蛍光体粒子の洗浄>
上記で得た(洗浄前の)EL蛍光体粒子A〜K、B’において、第1焼成後の洗浄を、70℃に保温した0.1モル/LのHCl溶液500ml中で、インペラー撹拌機を用いて30分洗浄した後、又は、70℃に保温した0.1モル/LのHCl溶液500mlでインペラー撹拌機を用いて30分洗浄し、引き続き0.06モル/LのHCl溶液500ml中で28kHz−100Wの超音波洗浄機を用いて10分洗浄した後、それぞれ蒸留水で5回水洗し、(洗浄後の)EL蛍光体粒子A〜K、B’を得た。
上記洗浄において、0.1モル/LのHCl溶液500mlの代わりに、純水500mlを用いて上記と同様に(洗浄前の)EL蛍光体粒子B’の洗浄を行ない、(洗浄後の)EL蛍光体粒子bを得た。
上記方法により、表1に示す通りの各蛍光体粒子を得た。
【0085】
<蛍光体粒子の評価>
作製したEL蛍光体粒子に対して、下記項目を測定又は評価した。
(1)平均粒子サイズ(堀場製作所;LA−920で計算されるメジアン径を用いて測定)
(2)粒子サイズの変動係数(堀場製作所;LA−920で計算される変動係数を用いて測定)
(3)積層欠陥面間隔(蛍光体粒子をメノー乳鉢で磨りつぶし、破片をTEM観察し、積層欠陥の最大面間隔と枚数を測定)
(4)積層欠陥頻度(上記破片100個をTEM観察し、積層欠陥の頻度を測定)
(5)蛍光体組成分析(アルカリ土類金属、CuはICPにより、AuはICP−MASにより測定)
【0086】
<EL素子の作成>
上記で得たEL蛍光体粒子を用いて、以下に示す方法により、EL素子を作製した。なお、EL素子の作製は、温度20℃、湿度47%RHの環境で実施した。
【0087】
100μmのPET支持体上に、表面抵抗率100Ω/□のITO電極を積層させた透明電極フィルムを準備した。次いで、透明電極フィルムに、ビスフェノールAとフタル酸(テレフタル酸とイソフタル酸1:1)のポリエステル(ユニチカ株式会社;U−100)をジクロロメタンに溶解した濃度14質量%の溶液を、ディップコート法によって厚み2μmの層を形成した後、その上にシアノレジン(信越化学社製;CR−V)をDMFに溶解した濃度30質量%の溶液を、ディップコート法によって厚み0.5μmの層(この層を「中間層」と称する)を形成し、中間層を付設した透明電極を形成した。中間層を形成しない場合は、100μmのPET支持体上に、表面抵抗率100Ω/□のITO電極を積層させた透明電極フィルムをそのまま用いて(中間層なしの)透明電極とした。
【0088】
次いで、誘電体粒子としてチタン酸バリウム(キャボットスペシャリティケミカルズ製:BT−8、平均粒径120nm)、結合剤としてシアノレジン(信越化学社製;CR−SとCR−Vを同質量混合した混合物)をDMFに溶解した濃度35質量%の溶液を準備する。下記組成物をテフロン製の広口瓶に収容し、回転ローラー上で50rpmで30分間分散させた後、平均粒子径が2mmのジルコニア粒子を280質量部添加して、さらに30分間分散した。
【0089】
この分散物を、ミックスローター(アルミナ製の平行多段円盤で構成)で2時間分散した。ローター回転数は、初期500rpmで、段階的に2000rpmまで上昇させながら分散した。溶媒の蒸発を防ぐため、分散機のポット周囲を水冷して20℃前後に保った。この分散後、分散物にシアノレジン35質量%溶液を120質量部と、DMFを54質量部とを添加して、さらに20分間分散した。この分散物を、開口50μmのナイロンメッシュで濾過した後、脱泡した。濾過した分散物をテフロン製の広口瓶に収容し、回転ローラー上で50rpmで24時間分散させた後、適量のDMFを添加して16℃における粘度が0.5Pa・sである誘電体粒子分散液を調製した。さらに、誘電体粒子分散液は、塗布直前に0.66μmのフィルター(ロキテクノ社製)を通した。
【0090】
・BT−8 ・・・・・280質量部
・シアノレジン ・・・・・80質量部
・DMF ・・・・・25質量部
【0091】
次いで、背面電極として膜厚が80μm(膜厚ムラ±3μm)のアルミニウムベースに、前記誘電体粒子分散液を、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにクリアランスを設定したブルノーズ形ナイフを有するドクターブレードコーターを用いて、0.9m/minの塗布速度で塗布し、110〜130℃と段階的に昇温するように配置された乾燥ユニットで乾燥し、背面電極上に誘電体層を積層した。
【0092】
次いで、誘電体粒子としてチタン酸バリウム(キャボットスペシャリティケミカルズ製:BT−8、平均粒径120nm)、結合剤としてシアノレジン(信越化学社製;CR−SとCR−Vを同質量混合した混合物)をDMFに溶解した濃度30質量%の溶液、波長620nmに発光ピークを持つ赤色顔料とを準備する。下記組成物をテフロン製の広口瓶に収容し、回転ローラー上で50rpmで30分間分散させた後、平均粒子径が2mmのジルコニア粒子を280質量部添加して、さらに30分間分散した。
【0093】
この分散物を、ミックスローター(アルミナ製の平行多段円盤で構成)で2時間分散した。ローター回転数は、初期500rpmで、段階的に2000rpmまで上昇させながら分散した。溶媒の蒸発を防ぐため、分散機のポット周囲を水冷して20℃前後に保った。この分散後、分散物にシアノレジン30質量%溶液を120質量部と、DMFを54質量部とを添加して、さらに20分間分散した。この分散物を、開口50μmのナイロンメッシュで濾過した後、脱泡した。濾過した分散物をテフロン製の広口瓶に収容し、回転ローラー上で50rpmで24時間分散させた後、適量のDMFを添加して16℃における粘度が0.5Pa・sである誘電体粒子分散液を調製した。さらに、誘電体粒子分散液は、塗布直前に0.66μmのフィルター(ロキテクノ社製)を通した。
【0094】
・BT−8 ・・・・・280質量部
・シアノレジン ・・・・・80質量部
・赤色顔料 ・・・・・17質量部
・DMF ・・・・・25質量部
【0095】
次いで、背面電極として膜厚が80μm(膜厚ムラ±3μm)のアルミニウムベースに、前記誘電体粒子分散液を、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにクリアランスを設定したブルノーズ形ナイフを有するドクターブレードコーターを用いて、0.9m/minの塗布速度で塗布し、110℃の乾燥ユニットで乾燥し、背面電極上に顔料層を積層した。
【0096】
次いで、各EL蛍光体、結合剤としてシアノレジン(信越化学社製;CR−SとCR−Vを同質量混合した混合物)をアセトニトリルに溶解した濃度35質量%の溶液とを準備する。下記組成物をテフロン製の広口瓶に収容し、回転ローラー上で50rpmで16時間分散させた後、適量のアセトニトリルを添加して16℃における粘度が0.5Pa・sであるEL蛍光体粒子分散液を調製した。各塗布液の粘度は、粘度計(VISCONIC ELD.R及び VISCOMETER CONTROLLER E−200 ローターNo.71、東京計器(株)製)を用い、撹拌(回転数:20rpm)下、16℃液温において測定した。
【0097】
・EL蛍光体 ・・・・・98質量部
・シアノレジン35質量%溶液 ・・・・・70質量部
・アセトニトリル ・・・・・約15質量部
【0098】
前述の乾燥した誘電体層上に、EL蛍光体粒子分散液を、乾燥後の膜厚が30μmおよび50μmとなるようにクリアランスを設定したブルノーズ形ナイフを有するドクターブレードコーターを用いて、0.5m/minの塗布速度で塗布し、110〜130℃と段階的に昇温するように配置された乾燥ユニットで乾燥し、背面電極、誘電体層、蛍光体層が積層した積層体を得た。
【0099】
得られた各積層体の蛍光体層と、前記透明電極フィルムとに、それぞれ引き出し電極を付設した後、ラミネーターを用いてローラー温度190℃、送り速度0.1m/min、圧力0.2MPa/mで熱圧着した。最後に、A4サイズに切り出し、積層体全体をPCTFE防湿フィルム(日東電工社製)で封止して、EL素子を得た。透明電極フィルムIIを用いたEL素子の構成を図1に示す。
【0100】
<EL素子の評価>
上記のようにして得られた各EL素子に、100V−1kHzの交流電圧で駆動したときの輝度、発光効率および輝度半減期を測定した。EL素子の輝度は、輝度計(トプコン;BM9)で測定した。発光効率はEL素子を駆動しているときの消費電力を、パワーマルチメーター(NF回路社製;2721)で測定して発光効率を計算して求めた。輝度半減期は、100V−1kHzで初期輝度が300cd/mとした駆動条件で連続駆動したときに初期輝度の1/2の輝度に減少する時間を測定した。
これらの結果を表1及び表2に示した。
【0101】
【表1】

【0102】
これらの結果から、本願発明の態様において、輝度を保ったままで、相対発光効率及び相対輝度半減期が格段と向上することがわかる。特に、粒子サイズの選択(例えば、実施例1と比較例aとの比較)、および適量の銅添加(例えば、実施例1と比較例e1、e2との比較)、適量の金添加(例えば、実施例1と比較例d1、d2との比較)により上記効果がより顕著になり、更に、アルカリ土類金属の含有量を減少させ(例えば、実施例1と実施例3との比較)、発光効率が高くなる蛍光体層の膜厚を選択(例えば、実施例1と実施例4との比較)することにより、上記効果が更に格段に向上することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明のEL素子の一例の断面を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0104】
52.中間層
53.蛍光体層
54.誘電体層
55.透明電極層
56.PET支持体
57.背面電極層
58.防湿フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZnSを母体として、これに付活剤として少なくともAu及びCuを含有し、共付活剤としてCl、Br、I及びAlより選ばれる少なくとも一種とを含有するエレクトロルミネッセンス蛍光体であって、蛍光体の平均粒子サイズが0.1〜20μmであり、粒子サイズの変動係数が35%未満であり、蛍光体母体結晶内部の積層欠陥の平均面間隔が5nm以下の面間隔で10層以上の積層欠陥を有する粒子数が全蛍光体粒子数の30%以上存在し、且つ、ZnS1モルに対してAuを1×10−7〜5×10−4モル含有し、且つ、ZnS1モルに対してCuを1×10−4〜1×10−2モル含有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス蛍光体。
【請求項2】
蛍光体の平均粒子サイズが15〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
【請求項3】
ZnS1モルに対してPtを1×10−7〜1×10−3モル含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
【請求項4】
アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)の総含有量が0.075質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のエレクトロルミネッセンス蛍光体を含有する発光層を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
発光層の膜厚が40μm〜100μmであることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記透明電極と前記蛍光体層の間に少なくとも一層の中間層を付設したことを特徴とする請求項5または6に記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記中間層は、有機高分子化合物、無機化合物、又はそれら複合物であり、中間層の厚みは10nm〜100μmの範囲であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の分散型エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−241183(P2006−241183A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54456(P2005−54456)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】