説明

エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器

【課題】高い表示性能を有するトップエミッション型のエレクトロルミネッセンス装置と、このエレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】基体20Aに設けられた第1電極23と、第1電極23上に設けられた発光機能層110と、発光機能層110上に設けられた第2電極50とを備え、基体20に設けられた隔壁22によって区画された複数の画素領域Xにそれぞれ発光機能層110を有してなるエレクトロルミネッセンス装置である。隔壁22の、少なくとも画素領域X内に向く内側面の上に、発光機能層110で発光した光を反射する反射層25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置、及びこのエレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロルミネッセンス装置として、例えば有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと記す)装置が知られている。この有機EL装置は、基板上に複数の回路素子、陽極、正孔注入層や有機EL層(発光層)を含む発光機能層、陰極等を積層し、これらを封止基板などによって封止した構成となっている。また、このような有機EL装置としては、発光機能層で発光した光を回路素子が形成された基板側から取り出すボトムエミッション型と、発光機能層を封止する封止基板側から取り出すトップエミッション型とが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、前記の有機EL装置では、絶縁材料によって形成された隔壁(バンク)により、画素領域間が区画され電気的に分離されている。すなわち、一般に有機EL装置では、回路素子等を形成する基板側に陽極としての画素電極(第1電極)が形成されており、これら画素電極間を前記隔壁によって絶縁するようにしている。そして、画素電極の上に発光機能層を介して陰極として機能する共通電極(第2電極)を形成することにより、各画素領域毎に独立して発光駆動を行えるようにしている。
【特許文献1】特開2005−285977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機EL装置はこれを構成する各EL素子が自発発光素子であるため、特にトップエミッション構造の場合に、発光機能層で発光した光の一部が隔壁の内側面に向けて出射し、該隔壁に吸収されあるいは減衰させられるという課題がある。すなわち、このように発光した光が吸収されたり減衰させられると、封止基板側から出射して表示に寄与する光の取り出し効率が低下し、結果として高い表示性能が得られないといった不満がある。
【0005】
また、例えば隔壁を透明材料によって形成した場合には、隔壁の内側面に入射した光がこの隔壁を透過して隣接する画素領域側に出射してしまい、クロストークするといった問題がある。すなわち、特に封止基板にカラーフィルタを設けた構造では、隔壁を透過して隣接する画素領域側に光が出射すると、この光がこの隣接する画素領域のカラーフィルタを透過することにより、色ずれを生じ、発光のクロストークを生じてしまうのである。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、高い表示性能を有するトップエミッション型のエレクトロルミネッセンス装置と、このエレクトロルミネッセンス装置を備えた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、基体に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた発光機能層と、該発光機能層上に設けられた第2電極とを備え、前記基に設けられた隔壁によって区画された複数の画素領域にそれぞれ前記発光機能層を有してなるエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記隔壁の、少なくとも前記画素領域内に向く内側面の上に、前記発光機能層で発光した光を反射する反射層が設けられていることを特徴としている。
【0008】
このエレクトロルミネッセンス装置によれば、前記隔壁の内側面の上に反射層が設けられているので、発光した光が反射層によって反射させられることにより、発光した光が隔壁で吸収されまたは減衰させられることがなく、したがって光の取り出し効率が高くなり、高い表示性能が得られるようになる。
また、反射層により、発光した光が隔壁を透過し、隣接する画素領域側で出射してしまうことも防止できることから、発光のクロストークを防止することができる。
【0009】
また、前記エレクトロルミネッセンス装置においては、前記反射層が、前記隔壁の内側面と前記発光機能層との間に設けられ、かつ、該反射層は、隣り合う画素領域間において不連続に形成されているのが好ましい。
このようにすれば、発光機能層から隔壁側に向かって発光した光が確実に反射層で反射されるため、光の取り出し効率が高くなり、また発光のクロストークも確実に防止される。また、第1電極が画素電極であり、反射層が金属等の導電材料からなる場合に、反射層が隣り合う画素領域間において不連続に形成されていることから、この反射層を介して隣り合う画素領域の第1電極間が短絡してしまうといったことも防止される。
【0010】
また、前記エレクトロルミネッセンス装置においては、前記反射層は導電材料からなり、共通電極となる前記第2電極に接して設けられているのが好ましい。
このようにすれば、反射層が第2電極からなる共通電極の補助電極として機能するようになり、第2電極の低抵抗化によるエレクトロルミネッセンス装置全体の低抵抗化が図られる。
【0011】
また、前記エレクトロルミネッセンス装置においては、前記反射層は、アルミニウム、ニッケル、銀、金のいずれか一種あるいは二種以上からなるのが好ましい。
このようにすれば、反射層が良好な反射機能を有するものとなる。
【0012】
また、前記エレクトロルミネッセンス装置においては、前記第2電極の上方に封止基板が設けられ、該封止基板には、前記複数の画素領域とそれぞれ対応する位置に着色部が設けられていてもよい。
このようにすれば、着色部によってカラー表示が可能になる。
【0013】
なお、このエレクトロルミネッセンス装置においては、前記発光機能層の発光する光が白色光であってもよい。その場合には、この白色光が着色部を透過することで着色部の色に着色され、カラー表示をなすようになる。
また、前記発光機能層の発光する光が着色光であり、前記着色部の色は、対応する位置の画素領域の発光機能層の着色光と同じ色であってもよい。その場合には、発光した光の色とこれが透過する着色部の色とが同じ色であることにより、着色部を透過した光はその色純度がより高いものとなる。
【0014】
本発明の電子機器は、前記のエレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、前述したように光の取り出し効率が高く、発光のクロストークも防止された高い表示性能を有するエレクトロルミネッセンス装置を備えているので、この電子機器自体も高い表示性能を有するなど優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに適宜縮尺を異ならせてある。
まず、本発明のエレクトロルミネッセンス装置を、トップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と記す)に適用した場合の第1実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す模式図であり、図1において符号1は有機EL装置である。
この有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと称する。)を用いたアクティブマトリクス方式のもので、複数の走査線101…と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102…と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103…とからなる配線構成を有し、走査線101…と信号線102…との各交点付近に画素領域X…を形成したものである。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0017】
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(スイッチング素子)112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT(スイッチング素子)123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極;第1電極)23と、該画素電極23と共通電極(陰極;第2電極)50との間に挟み込まれた発光機能層110とが設けられている。
【0018】
次に、本実施形態の有機EL装置1の具体的な態様を、図2〜図4を参照して説明する。ここで、図2は有機EL装置1の構成を模式的に示す平面図であり、図3は有機EL装置1を模式的に示す断面図、図4は、図3の要部を示す図であって、表示単位画素内の画素領域の構成及び作用を説明するための断面図である。
【0019】
図2に示すように本実施形態の有機EL装置1では、基板20上に各種配線、TFT、画素電極、各種回路を形成したことにより、発光機能層110を発光させる基体20Aを構成している。この基体20Aは、電気絶縁性を備える基板20と、スイッチング用TFT112に接続された画素電極23が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素領域X(図1参照)と、画素領域Xの周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線103…と、少なくとも画素領域X上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを備えて構成されている。
なお、本実施形態において画素部3は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画されている。
【0020】
実表示領域4においては、画素領域Xに対応して設けられた表示領域RGBが紙面左右方向に規則的に配置されている。また、表示領域RGBの各々は、紙面縦方向において同一色で配列しており、いわゆるストライプ配置を構成している。なお、この表示領域RGBについては、本実施形態では後述するカラーフィルタ(着色部)によって規定されるようになっている。すなわち、表示領域RGBの各々に対応する各画素領域Xには、発光機能層110が設けられており、この発光機能層110は、TFT112、123の動作によって白色光を発光するようになっている。そして、発光機能層110で発光した白色光がカラーフィルタを透過することによってこのカラーフィルタの色に着色され、カラー表示をなすようになっているのである。また、表示領域RGBは一つの基本単位となって表示単位画素を構成しており、これによって該表示単位画素は、RGBの発光を混色させてフルカラー表示を行うようになっている。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80、80が配置されている。
この走査線駆動回路80、80は、ダミー領域5の下層側に位置して設けられている。
【0021】
また、実表示領域4の図2中上方側には検査回路90が配置されている。この検査回路90は、ダミー領域5の下層側に配置されて設けられたものであって、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路であり、例えば、検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機EL装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。
【0022】
走査線駆動回路80および検査回路90の駆動電圧は、所定の電源部から駆動電圧導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して印加されている。また、これら走査線駆動回路80及び検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、この有機EL装置1の作動制御を司る所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部(不図示)及び駆動電圧導通部(不図示)を介して送信および印加されるようになっている。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0023】
次に、図3を参照して、有機EL装置1の断面構造を説明する。
有機EL装置1は、大きく分けると、前記の基体20Aと、封止基板30と、これら基体20Aと封止基板30との間を封止する封止部31とから構成されている。
ここで、基体20Aは、基板20上に設けられた層間絶縁膜21と、層間絶縁膜21上に設けられた隔壁22と、この隔壁22内に設けられた発光機能層110などを備えて構成されている。
【0024】
基板20は、透明性材料あるいは非透明性材料からなる基板である。透明性基板としては、ガラス基板や透明性の樹脂基板等が採用され、非透明性基板としては、金属基板や非透明性の樹脂基板が採用される。なお、本実施形態では、前述したようにトップエミッション構造であることから、基板20としては、透明性基板、非透明性基板のいずれも採用可能である。
【0025】
層間絶縁膜21は、酸化シリコン膜(SiO)等によって形成されたもので、基板20上に設けられた走査線101…、信号線102…、電源線103…、スイッチング用TFT112、及び駆動用TFT123(以上図1記載)を覆って形成されたものである。この層間絶縁膜21は、その材料自身によってTFT112、123や各種配線101、102、103を埋設して平坦化させていることから、平坦化膜としても機能する層膜となっている。なお、本実施形態においては、層間絶縁膜21として酸化シリコン膜を採用したが、これに限定することなく、窒化シリコン膜(SiN)や酸窒化シリコン膜(SiON)などの絶縁材料を採用してもよい。
【0026】
また、層間絶縁膜21上には、前記駆動用TFT123にそれぞれ対応して画素電極(第1電極)23が形成されている。画素電極23は、Al等の光反射性金属からなる反射膜23aと、インジウム錫酸化物(ITO)等からなる透明導電膜23bとが積層された構造となっている。ただし、この画素電極23としては、光反射性金属のみの単層構造としてもよい。また、この画素電極23は、前記層間絶縁膜21に形成されたコンタクトホール内のプラグ(図示せず)を介して、前記の駆動用TFT123と電気的に接続されている。
【0027】
また、層間絶縁膜21上には、隣り合う前記画素電極23、23間の間隙を覆い、さらに画素電極23の周辺部に乗り上げた状態で、これら画素電極23、23間を絶縁し、画素領域Xを区画する隔壁22が形成されている。この隔壁22は、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の有機絶縁材料によって形成されたもので、非感光性樹脂あるいは感光性樹脂からなっている。また、この隔壁22には、前記画素電極23を露出させ、画素領域Xを形成する開口部22aが形成されている。
【0028】
そして、この隔壁22には、開口部22aを形成した側、すなわち、画素領域X内に向く内側面上に、反射層25が40〜50nm程度の厚さで形成されている。この反射層25は、光反射性金属などがスパッタ法等によって形成されたもので、本実施形態では、ホトリソ法等の公知のパターニング法により、隔壁22の内側面上にのみ形成され、隔壁22の上面には形成されずに該上面を露出させるように形成されている。このような構成のもとに反射層25は、隣り合う画素領域X間において不連続に形成されている。したがって、反射層25は開口部22a内にて画素電極23と部分的に接続し導通するものの、隣り合う画素領域X間の各画素電極23、23は、この反射層25を介して短絡してしまうといったことが防止されている。ここで、反射層25を形成する光反射性金属としては、例えばアルミニウム、ニッケル、銀、金のいずれか一種あるいは二種以上から形成するのが好ましい。このような金属を用いれば、反射層25の反射機能をより良好にすることができる。
【0029】
また、このように隔壁22の開口部22a内に露出した画素電極23上、反射層25上、及びこの反射層25に覆われることなく露出した隔壁22の上面上には、これらを覆って発光機能層110が設けられている。この発光機能層110は、図示しないものの、画素電極23側から順に、正孔輸送層、正孔注入層、有機EL層、電子注入層、電子輸送層が積層され、形成されたものである。これら各層は、本実施形態では蒸着法等の気相成膜法によって形成されたものである。なお、この発光機能層110の層構成については、必要に応じて適宜に変えることができ、例えば有機EL層を、複数の層からなる積層構造としてもよい。
【0030】
ここで、正孔輸送層や正孔注入層は、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の材料によって形成される。具体的には、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が形成材料として例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4’−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0031】
有機EL層は、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質などの発光物質、Alq(アルミキレート錯体)などの有機エレクトロルミネッセンス材料によって形成される。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン又はポリフルオレン構造を含むものなどが特に好ましい。低分子発光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0032】
ただし、本実施形態では、前述したようにこの有機EL層を含む発光機能層110は白色光を発光するようになっているため、前記材料としては、発光光が白色になるように適宜選択され用いられる。すなわち、白色光は、複数のピーク波長の色波長が合成された光であることから、このような複数のピーク波長の色波長が合成されるよう、前記材料が選択される。
【0033】
電子注入層や電子輸送層は、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等の材料によって形成される。具体的には、先の正孔輸送層や正孔注入層の場合と同様に、特開昭63−70257号、同63−175860号公報、特開平2−135359号、同2−135361号、同2−209988号、同3−37992号、同3−152184号公報に記載されているもの等が形成材料として例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0034】
このような構成からなる発光機能層110上には、特に前記隔壁22の上面上に、Al等の金属からなる補助電極115が形成されている。そして、この補助電極115を覆って前記発光機能層110上には、共通電極としての陰極(第2電極)50が形成されている。この陰極50は、蒸着法等によって形成されたMgAg等の薄膜からなるもので、発光機能層110で発光した光が良好に透過するよう、十分な透明度を有して形成されている。
【0035】
さらに、陰極50上には、これを覆ってSiON等からなる透明なパッシベーション膜55が形成されている。このパッシベーション膜55は、水分や酸素が外部から発光機能層110内に侵入するのを抑制するとともに、発光機能層110で発光した光を封止基板30側に透過させるよう、機能するものである。したがって、不透明な金属製のものは使用できず、前記の透明で緻密な酸化窒化膜が好適に用いられる。
【0036】
また、このパッシベーション膜55上には、透明接着層57を介して前記封止基板30が貼着されている。透明接着層57は、熱硬化型樹脂、または紫外線照射硬化型樹脂によって形成されたもので、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂からなるものである。そして、これらパッシベーション膜55及び透明接着層57により、基体20Aと封止基板30との間を封止する封止部31が形成されている。
【0037】
封止基板30は、光透過性と電気絶縁性とを備えた材質のもので、例えばガラス基板からなるものである。また、この封止基板30には、その内面、すなわち前記透明接着層57側の面にブラックマトリクス35とカラーフィルタ(着色部)37(37R、37G、37B)とが形成されている。
ブラックマトリクス35は、実表示領域4における画素領域Xの相互間、すなわち、前記隔壁22の直上に形成配置されたもので、Cr等の遮光性金属や樹脂ブラック等によって格子状に形成されたものである。このような構成によってブラックマトリクス35に囲まれた領域は、前記の画素領域Xとそれぞれ対応するようになっている。そして、このブラックマトリクス35に囲まれた領域に、カラーフィルタ37が形成配置されている。
【0038】
カラーフィルタ37は、画素領域Xとそれぞれ対応した位置、すなわち画素領域Xのほぼ直上に形成配置されたことにより、前述したように表示領域RGBを規定したものとなっている。つまり、本実施形態では、前述したように発光機能層110は白色光を発光するため、発光した白色光はカラーフィルタ37(37R、37G、37B)を透過することで着色され、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの波長域にピークをもつ光として出射する。したがって、前述したように発光機能層110で発光した白色光は、表示領域RGBが一つの基本単位となって表示単位画素を構成していることから、前記のRGBの発光が混色されることにより、この表示単位画素毎にフルカラー表示をなすようになっているのである。
【0039】
このような構成からなる有機EL装置1にあっては、駆動用TFT123等を動作させて所望の発光機能層110に電流を流すと、発光機能層110では画素電極(陽極)23からの正孔と共通電極(陰極)50からの電子とが再結合し、発光する。すると、発光した白色光は、図4中に矢印で示すようにその一部が直接封止基板30側に向かい、対応するカラーフィルタ37を透過して封止基板30の外側に出射する。また、隔壁22の内側面に向かった白色光も、反射層25で反射させられることから、隔壁22で吸収されたり大きく減衰させられることなく、対応するカラーフィルタ37に導かれ、これを透過して封止基板30の外側に出射する。なお、発光機能層110から画素電極23に向かった白色光は、その反射膜23aによって反射され、カラーフィルタ37側に導かれることにより、封止基板30の外側に出射する。
また、このように反射層25で反射することで、発光した白色光が隔壁22を透過し、隣接する画素領域X側で出射してしまうといったことことも防止されることから、発光のクロストークも防止される。
【0040】
よって、本実施形態の有機EL装置1によれば、隔壁22の内側面に向かった白色光を反射層25で反射するようにしたので、光の取り出し効率を高くし、さらには発光のクロストークも防止したことにより、高い表示性能を得ることができる。
また、反射層25を、前記隔壁22の内側面と前記発光機能層110との間に設けたので、発光機能層110から隔壁22側に向かって発光した光を反射層25で確実に反射されることができ、したがって光の取り出し効率をより高め、発光のクロストークも確実に防止することができる。そして、発光のクロストークが防止されることから、視野角依存による発光色変化も改善される。すなわち、封止基板30から出射する光による表示は、発光のクロストークが生じた場合に、このクロストークによる影響が封止基板30に対する角度に依存してしまう。つまり、封止基板30に対する角度がある範囲内であればほとんど影響を受けないものの、その範囲外になると大きく影響を受けてしまい、本来の色とは異なる色が視認されてしまう。しかして、前記したように反射層26を設けて発光のクロストークを防止したので、視野角依存による発光色変化がほとんどなくなるのである。
【0041】
次に、本発明のEL装置を、トップエミッション型の有機EL装置に適用した場合の第2実施形態を説明する。
図5は、第2実施形態の有機EL装置の要部を示す断面図であり、この第2実施形態が第1実施形態と異なるところは、主に反射層の形成位置にある。すなわち、第1実施形態では、隔壁22の内側面と発光機能層110との間に反射層25を設けているのに対し、本実施形態では、隔壁22上で、かつ、共通電極(陰極)50と接するように、該共通電極(陰極)50と発光機能層110との間に反射層26を設けている。さらに、第1実施形態では、隣り合う画素領域X間において不連続となるように、反射層25を形成しているのに対し、この第2実施形態では、隔壁22の全面を覆って相互に連続した状態となるように、反射層26を形成している。
【0042】
反射層26は、第1実施形態と同様に光反射性金属、すなわちアルミニウム、ニッケル、銀、金のいずれか一種あるいは二種以上がスパッタ法等によって成膜され、ホトリソ法等によってパターニングされて形成されたものである。この反射層26を形成する金属は、導電性についても良好であることから、反射層26は良好な導電性をも有するものとなっている。したがって、この反射層26は共通電極(陰極)50と接して設けられているため、補助電極としても機能するようになっている。そこで、本実施形態では、第1実施形態と異なり、この第1実施形態における補助電極115をなくし、反射層26に補助電極としての機能も併せて持たしているのである。
【0043】
このような反射層26を備えた有機EL装置にあっても、駆動用TFT123等を動作させて所望の発光機能層110に電流を流すと、発光機能層110は白色光を発光する。すると、この白色光は、図5中に矢印で示すようにその一部が直接封止基板30側に向かい、対応するカラーフィルタ37を透過して封止基板30の外側に出射する。また、隔壁22の内側面に向かった白色光も、反射層26で反射させられることから、隔壁22で吸収されたり大きく減衰させられることなく、対応するカラーフィルタ37に導かれ、これを透過して封止基板30の外側に出射する。なお、発光機能層110から画素電極23に向かった白色光は、その反射膜23aによって反射され、カラーフィルタ37側に導かれることにより、封止基板30の外側に出射する。
また、このように反射層26で反射することで、発光した白色光が隔壁22を透過し、隣接する画素領域X側で出射してしまうといったことことも防止されることから、発光のクロストークも防止される。
【0044】
よって、本実施形態の有機EL装置によれば、隔壁22の内側面に向かった白色光を反射層26で反射するようにしたので、光の取り出し効率を高くし、さらには発光のクロストークも防止したことにより、高い表示性能を得ることができ、視野角依存による発光色変化も改善することができる。
また、反射層26を共通電極(陰極)50の補助電極として機能させることにより、共通電極(陰極)50の低抵抗化による有機EL装置全体の低抵抗化を図ることができる。さらに、第1実施形態の装置のように独立した補助電極115を形成する必要がないことから、生産性の向上を図ることができるとともに、この補助電極115に比べて反射層26を大面積で形成できることから、共通電極(陰極)50をより低抵抗化することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、特に共通電極(陰極)50と発光機能層110との間に反射層26を設けているが、隔壁22上であり、かつ共通電極(陰極)50と接した状態にするためには、共通電極(陰極)50の外面側、すなわちこの共通電極(陰極)50とパッシベーション膜55との間に反射層26を形成してもよい。このようにしても、発光光を反射する反射層としての機能はもちろん、補助電極としての機能も発揮することができる。
ただし、図5に示したように反射層26を共通電極(陰極)50と発光機能層110との間に設けた方が、共通電極(陰極)50の外面側に設けるより、反射層26の下端部に囲まれる開口(画素電極23を封止基板30側に臨ませる開口)で形成される実質的な発光面積が広くなるため、好ましい。
【0046】
また、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば前記実施形態では、発光機能層110として特にその有機EL層を、発光した光が白色光となるように形成したが、この有機EL層(発光機能層110)を、各画素領域X毎に赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの波長域にピークをもつ光、すなわち着色光として発光させるようにしてもよい。その場合に、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)の色については、対応する位置の画素領域Xの発光機能層110での発光光(着色光)と同じ色とする。このように構成することにより、発光機能層110での発光光(着色光)の色とこれが透過するカラーフィルタ37(37R、37G、37B)の色とが同じ色であることから、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)を透過した光はその色純度がさらに高いものとなり、表示性能がより一層向上する。
【0047】
また、このように有機EL層(発光機能層110)で着色された光が発光するように構成した場合には、カラーフィルタ37(37R、37G、37B)を設けることなく、必要に応じてブラックマトリクス35のみを設けることで、封止基板を形成してもよい。このようにしても、着色された光が直接封止基板から出射することにより、フルカラー表示が可能となる。
また、カラーフィルタ37についても、前記実施形態ではRGBの3色系のものを用いるようにしたが、多色系、すなわちRGBにW(白)を加えた4色系のものや、さらには6色系のものなどを用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施形態では、本発明のEL装置をトップエミッション型の有機EL装置に適用したが、本発明は無機EL装置にも適用可能であり、さらにボトムエミッション型にも適用可能である。
【0048】
次に、本発明の電子機器について説明する。
本発明の電子機器は、特に前記実施形態の有機EL装置を表示部として備えたものであり、以下のようなものが挙げられる。
図6(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6(a)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図6(b)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理本体、符号602は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図6(c)において、符号700は時計本体を示し、符号701は有機EL装置を備えた表示部を示している。
図6(a)〜(c)に示す電子機器は、先の実施形態に示した有機EL装置が備えられたものであるので、高い表示特性を有する良好な電子機器となる。
【0049】
なお、電子機器としては、前記電子機器に限られることなく、種々の電子機器に本発明を適用することができる。例えば、ディスクトップ型コンピュータ、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】有機EL装置の配線構造を示す模式図である。
【図2】第1実施形態の有機EL装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図3】第1実施形態の有機EL装置を模式的に示す断面図である。
【図4】第1実施形態の有機EL装置の要部を示す断面図である。
【図5】第2実施形態の有機EL装置の要部を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の有機EL装置を備える電子機器を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1…有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)、20…基板、20A…基体、22…隔壁、23…画素電極(陽極;第1電極)、25…反射層、26…反射層、37、37R、37G、37B…カラーフィルタ(着色部)、30…封止基板、50…共通電極(陰極;第2電極)、110…発光機能層、X…画素領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に設けられた第1電極と、該第1電極上に設けられた発光機能層と、該発光機能層上に設けられた第2電極とを備え、前記基体に設けられた隔壁によって区画された複数の画素領域にそれぞれ前記発光機能層を有してなるエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記隔壁の、少なくとも前記画素領域内に向く内側面の上に、前記発光機能層で発光した光を反射する反射層が設けられていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記隔壁の内側面と前記発光機能層との間に設けられ、かつ、該反射層は、隣り合う画素領域間において不連続に形成されていることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記反射層は導電材料からなり、共通電極となる前記第2電極に接して設けられていることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記反射層は、アルミニウム、ニッケル、銀、金のいずれか一種あるいは二種以上からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記第2電極の上方に封止基板が設けられ、該封止基板には、前記複数の画素領域とそれぞれ対応する位置に着色部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記発光機能層の発光する光が白色光であることを特徴とする請求項5記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記発光機能層の発光する光が着色光であり、前記着色部の色は、対応する位置の画素領域の発光機能層の着色光と同じ色であることを特徴とする請求項5記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−165214(P2007−165214A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362851(P2005−362851)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】