説明

オートサンプラ及び全有機体炭素計

【課題】 小型且つ簡易な構成でバイアルの有無を判定でき、操作の安全性を向上可能なオートサンプラ及び全有機体炭素計を提供することを目的とする。
【解決手段】 バイアル3bを配置するラック3と、ニードル4を含むニードル機構61と、ニードル機構61を上下に駆動させる駆動手段62と、ニードル機構61に自重で懸架され、懸架された状態でニードル機構61を下方に移動させたときにニードル4の先端よりも先にバイアルまたは異物に接触する構造を有する懸架部材63と、懸架部材63及びニードル機構61の位置を検知する位置検知手段64と、懸架部材63の位置及びニードル機構61の位置に基づいて、バイアル3b又は異物を検知する物質検知手段110とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分析装置に係り、特に、分析の補助装置として利用されるオートサンプラ及びこれを用いた全有機炭素計に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ(LC)又は全有機体炭素計(TOC)等を用いて水質分析を行う際に、バイアル(試料容器)に入った試料を連続的に分析する補助装置として、オートサンプラが知られている。オートサンプラは、ニードルをバイアルに挿入して試料を吸引採取し、採取した試料を分析装置の流路に供給する(例えば、特許文献1参照)。バイアルは通常、試料の揮発や異物混入を防ぐために、気密性の高いセプタム(蓋)で封止されている。分析時には、ニードルを上下させ、セプタムを突き破ることにより、バイアル中の試料を採取する。
【0003】
しかしながら、ニードルの上下運動の際に、操作者が誤って手などを挟んで怪我する場合がある。そこで従来の装置では、装置全体をカバーで覆うこと、或いは、ニードルを動かす前にバイアルの有無を検知する検知機構を設けること等によって、操作の安全性を確保してきた。
【0004】
ところが、装置全体をカバーで覆う方法では、容積が大きくなるため、装置の機能に対する容積の割合が大きいことが印象の良さに繋がらなかった。また、カバーが装置全体を覆っているために、測定中にバイアルを追加して分析することができなかった。
【0005】
一方、バイアルの有無の検知機構を有する従来の装置は、バイアルが正しくセットされたことを判断する機能を有していなかった。そのため、分析するバイアル(サンプル)番号の指定を間違えていた場合には間違った測定を続行していた。
【0006】
また、バイアルの有無の判定方法として、従来は、シャフト先端がバイアルに当たり、バネが圧縮された力を利用して一定値を超えた場合をエラーとして検出する方法を採用していたが、この方法では、製造ロットにおいてバネ力の均一性が取りにくいため、動作のばらつきがあった。
【0007】
更に、バイアルの有無を検知するためのシャフト、モータ、ベルト、スクリューネジ、バネ等の部品点数が多くなるため、生産コスト及び組み立て工数の増加に繋がっていた。
【特許文献1】特開2005−147725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を鑑み、本発明は、小型且つ簡易な構成でバイアルの有無を判定でき、操作の安全性を向上可能なオートサンプラ及び全有機体炭素計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の態様は、バイアルを配置するラックと、ニードルを含むニードル機構と、ニードル機構を上下に駆動させる駆動手段と、ニードル機構に自重で懸架され、懸架された状態でニードル機構を下方に移動させたときにニードルの先端よりも先にバイアルまたは異物に接触する構造を有する懸架部材と、懸架部材及びニードル機構の位置を検知する位置検知手段と、懸架部材及びニードル機構の位置に基づいて、バイアル又は異物を検知する物質検知手段とを備えるオートサンプラであることを要旨とする。
【0010】
本発明の他の態様は、試料中の全炭素分を分解して二酸化炭素に変換するTC燃焼管と、試料中の無機炭素分を二酸化炭素に変換するIC反応器と、TC燃焼管及びIC反応器に接続され、試料中の全炭素濃度及び無機炭素濃度を検出する検出器と、TC燃焼管及びIC反応器に接続されたマルチポートバルブと、バイアルを配置するラック、ニードルを含むニードル機構、ニードル機構を上下に駆動させる駆動手段と、ニードル機構に自重で懸架され、該懸架された状態でニードル機構を下方に移動させたときにニードルの先端よりも先にバイアルまたは異物に接触する構造を有する懸架部材、懸架部材の位置を検知する位置検知手段、懸架部材及びニードル機構の位置に基づいて、バイアル又は異物を検知する物質検知手段を含み、マルチポートバルブに接続されたオートサンプラとを備える全有機炭素体計であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型且つ簡易な構成でバイアルの有無を判定でき、操作の安全性を向上可能なオートサンプラ及び全有機体炭素計が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの構成等が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
また、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(オートサンプラ)
本発明の実施の形態に係るオートサンプラ1は、図1に示すように、本体2と、本体2上に配置された円盤状のラック3と、ラック3の上方に配置された採取ユニット10を有する。
【0015】
ラック3は、複数のバイアルを収納するための複数の開口部3aが設けられている。ラック3に収容されるバイアルとしては、例えば、9ml、24ml、40mlなどの様々な容量のバイアルが用いられる。
【0016】
採取ユニット10は、本体2の内部に配置された駆動機構により左右方向(X方向)に移動可能である。採取ユニット10は、外部からの異物混入等を防ぐために、全体がカバー5で覆われている。本体2の上部には、ニードル4を洗浄するためのリンス槽6が設けられている。
【0017】
図2に示すように、採取ユニット10は、ニードル4を含むニードル機構61と、ニードル61を上下に駆動させる駆動手段62と、ニードル機構61に自重で懸架された懸架部材63と、懸架部材63の位置を検知する位置検知手段64とを備える。
【0018】
ニードル機構61は、ラック3の上方に水平方向(Y方向)に延伸する棒状の稼働アーム12と、稼働アーム12の先端に一端を固定され、鉛直方向(Z方向)に延伸し、バイアル中の試料を採取するニードル4を含む。稼働アーム12は、駆動手段62に接続されている。駆動手段62は、容器本体2の開口部に配置された柱状のスライドシャーシ13に連結されており、スライドシャーシ13の一面に設けられた溝に沿って、稼働アーム12を上下に移動させる。
【0019】
懸架部材63は、ニードル機構61に懸架された状態で、ニードル機構61を下方に移動させたときにニードル4の先端よりも先にバイアルまたは異物に接触する構造を有する。具体的には、懸架部材63は、稼働アーム12の上面に懸架されたセンサドグ17と、センサドグ17の下端に接続されたレール16と、レール16の下端に固定され、バイアル又は異物と接触するバイアルキャッチ19を備えている。
【0020】
位置検知手段64は、柱状(コの字形)のブラケット15と、ブラケット15に取り付けられ、懸架部材63の位置を検知する検知部(フォトカプラ)18とを備えている。ブラケット15は、スライドシャーシ13に固定され、稼働アーム12と同一方向(Y方向)に長い板状の固定アーム14により、ラック3の上方の所定の高さに維持されている。
【0021】
図3に示すように、ブラケット15には鉛直方向(Z方向)を長手方向とする長穴15a、15bが設けられている。レール16は、長穴15bを介してネジ等によりブラケット15に仮留めされ、長穴15bの範囲内で上下に摺動(スライド)する。
【0022】
図4に示すように、ブラケット15は、下端部に、長手方向に対して略垂直に折り曲がるL字形状をなすストッパ15dを備えている。ストッパ15dには、ニードル4の先端を通すための保護穴15cが形成されている。ストッパ15dは、ニードル4をバイアル3bから抜くときに、バイアル3bがニードル4に付随して一定の高さ以上に持ち上がらないようにする。
【0023】
バイアルキャッチ19は、レール16にネジ等によって固定されており、レール16及びセンサドグ17と連動して上下方向にスライドする。バイアルキャッチ19の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、切り欠き部19aを有するL字ブロック形状とすることが好ましい。切り欠き部19aを有するL字ブロック形状を採用することにより、ラック3の外周部分にある開口部3aに配置されたバイアル3bの有無を検知する場合に、バイアルキャッチ19の角部が本体2と接触して誤作動を生じさせることを抑制できる。
【0024】
センサドグ17の上部の一端は、稼働アーム12の面上に自重で載っており、下部において水平方向に延伸し、他端がブラケット15の側面に沿ってL字に折れ曲がっている。L字形に折れ曲がったセンサドグ17の他端は、フォトカプラ18が発する光を遮断する遮光板として機能し、フォトカプラ18を構成する発光素子と受光素子との間を通過可能なように構成されている。センサドグ17は、稼働アーム12の上下移動に連動して、レール16と共に上下方向にスライドする。
【0025】
フォトカプラ18は、コの字形のC型チャネル材(CC型鋼)からなるブラケット15の側面に配置されている。なお、本実施形態においては、ケースの内部に発光素子と受光素子とが対向して配置されたフォトカプラ18の例を示しているが、フォトカプラ18の他にも、発光素子と受光素子を内部に封止せずに露出させ、ケースの外部で対向させたフォトインタラプタ等のように、他の光学的検出手段を用いてもよいことは勿論である。
【0026】
フォトカプラ18の信号のON/OFFの切り替えは、フォトカプラ18の発光素子と受光素子との間で、L字型に折れ曲がったセンサドグ17の他端部を移動させて光を遮ったり光を遮らなかったりすることにより行われる。例えば、稼働アーム12が図4に示す位置にある場合、センサドグ17の遮光板はフォトカプラ18の光を遮るように受光素子と発光素子との間に挿入されている。この場合、フォトカプラ18の信号は「ON」となる。一方、図2に示すように、ラック3上にバイアルが存在しない場合は、センサドグ17の他端に設けられた遮光板がフォトカプラ18より下方に位置するため、フォトカプラ18の光を遮らない。そのため、フォトカプラ18の信号は、「OFF」となる。一方、ラック状に異物が存在する場合、異物がバイアルキャッチ19と接触し、センサドグ17の他端に設けられた遮光板がフォトカプラ18より上方に位置することとなり、フォトカプラ18の光を遮らない。その場合も、フォトカプラ18の信号は、「OFF」となる。
【0027】
本発明の実施の形態に係るオートサンプラ1によれば、懸架部材63が異物などに接触することにより懸架状態が一時的に外れ、ニードル機構61と懸架部材63との相対位置が変化することにより異物又はバイアルの存在が検出できる。懸架部材63は、ニードル機構61と連動して重力により移動するため、移動に際してバネやシャフトなどを配置する必要がなく、異物検出時の動作のばらつきが少なくなる。
【0028】
また、懸架部材63及び位置検出手段64としてのレール16、センサドグ17、バイアルキャッチ19、ブラケット15及びフォトカプラ18をそれぞれネジ等によって接続して一体化させることによって、装置の簡略化も図れる。
【0029】
また、フォトカプラ18の出力信号の変化を後述するオートサンプラ制御システムの物質検知手段110(下記の図6を用いて後述する)により検知し、必要に応じてニードル機構61の移動を停止させることにより、ニードルの上下運動の際に操作者が誤って手などを挟んで怪我することを回避でき、操作の安全性をより高くすることができる。
【0030】
(オートサンプラ制御システム)
図1〜図5に示すオートサンプラ1を制御する制御システムの一例を図6に示す。オートサンプラ制御システムは、オートサンプラ1に接続されたオートサンプラ制御手段100と、オートサンプラ制御手段100に接続された入力装置201及び出力装置202と、オートサンプラ制御手段100の演算処理に必要なプログラムや各種設定条件等を記憶する記憶装置203とを備える。
【0031】
オートサンプラ制御手段100は、駆動手段101、物質検知手段110及び停止手段104を備える。
【0032】
駆動手段101は、分析対象となるバイアルの番号、位置情報、ラック3の回転角度θ等の情報を記憶装置203から読み出し、ラック3を回転させて、採取ユニット10を左右(X方向)へ移動させる。
【0033】
物質検知手段110は、図2のニードル機構61を一定距離下方に移動させた場合のフォトカプラ18の出力信号の変化を検知することにより、異物又はバイアルを検知する。物質検知手段110は、異物判定手段102及びバイアル判定手段103を含む
異物判定手段102は、異物判定をする際の稼働アーム12の移動距離、移動速度等を格納した異物判定情報を記憶装置203から読み出して、駆動手段101が稼働アーム12を開始位置から所定の距離だけ下げた場合に、フォトカプラ18の信号(パルス信号)を検出することにより、ラック3の周辺に異物があるか否かを判定する。
【0034】
バイアル判定手段103は、バイアル判定をする際の稼働アーム12の移動距離、移動速度等を格納したバイアル判定情報を記憶装置203から読み出して、ラック3上にバイアルが存在するか否かを判定する。
【0035】
停止手段104は、異物判定手段102及びバイアル判定手段103の判定結果を読み出して分析作業を自動停止させる、或いは、必要に応じて出力装置202に警告メッセージ等を表示させる。
【0036】
(オートサンプラ制御方法)
図7に示すフローチャートを用いて、オートサンプラ制御方法を説明する。なお、以下の例においては、試料を通常測定する場合の第1の方法と、ニードル4を洗浄する場合の第2の方法を説明する。
【0037】
−第1の方法(通常測定時)−
まず、ステップS10において、図7の駆動手段101が、分析対象となるバイアルの番号、位置情報、ラック3の回転角度θ等のバイアル情報を記憶装置203から読み出す。駆動手段101は、バイアル情報に基づいて、ラック3を角度θだけ回転させ、稼働アーム12を所定のバイアルの上方に配置させる。その後、駆動手段101が、異物判定情報に基づいて、稼働アーム12を開始位置から下方向(Z方向)に第1の距離だけ降下させる。第1の距離移動させる際の稼働アーム12の降下速度は、ニードル4をバイアルに刺す際の速度と同じかそれ以下とするのが好ましい。
【0038】
ステップS11において、稼働アーム12が開始位置から第1の距離L1(例えば5mm)だけ下がった時に、異物判定手段102によりフォトカプラ18の信号を検出させ、ニードル4の周辺に異物があるか否かを判定する。例えば、バイアル上に異物が存在する場合は、バイアルキャッチ19が異物にぶつかることにより、バイアルキャッチ19と一体化したレール16及びセンサドグ17が稼働アーム12上から浮き上がり、センサドグ17がフォトカプラ18よりも上方に位置する。この場合、フォトカプラ18は、センサドグ17の遮光板によって光を遮断されないので、フォトカプラ18が発する信号が「OFF」になる。異物判定手段102は、フォトカプラ18が発する信号がOFFの場合を「ラック3の周辺に異物がある」と判断し、ステップS17へ進む。
【0039】
ステップS17において、異物判定手段102は、ステップS11の異物判定が1回目であるか否かを判定する。異物判定が2回目以上である場合は、ステップS19において、停止手段104により測定を停止させ、出力装置202に警告メッセージ等を表示させる。一方、異物判定が1回目である場合は、ステップS18に進み、駆動手段101により稼働アーム12を開始位置まで戻す。その後、再びステップS10及びS11に示す工程を繰り返す。
【0040】
ステップS11において、センサドグ17がフォトカプラ18の光を遮り、フォトカプラ18が発する信号が「ON」となった場合は、レール16及びセンサドグ17が浮き上がることがないので、異物判定手段102が「ラック3の周辺に異物無し」と判断し、ステップS12に進む。ステップS12において、駆動手段101は稼働アーム12を距離L1から更に降下させる。
【0041】
ステップS13において、稼働アーム12が開始位置から第2の距離L2(例えば12mm)だけ下がった時に、バイアル判定手段103が、フォトカプラ18の信号を検出することにより、バイアルがラック3にセットされているか否かを判定する。例えば、図2に示すように、バイアルがラック3上に存在しない場合には、レール16がブラケット15よりも沈むので、レール16と連動するセンサドグ17が、フォトカプラ18の下方に位置する。その結果、フォトカプラ18はセンサドグ17を検知せず、フォトカプラ18が発する信号が「OFF」になる。
【0042】
フォトカプラ18が発する信号がOFFの場合、異物判定手段102は、「ラック3上にバイアルが存在しない」と判断し、ステップS16へ進む。一方、フォトカプラ18が発する信号がONの場合、バイアル判定手段は103は、「ラック3上にバイアルが存在する」と判断し、ステップS14へ進む。
【0043】
ステップS14において、駆動手段101が、稼働アーム12を更に降下させると、バイアルキャッチ19がバイアル3bの先端に接触し、図5に示すように、バイアルキャッチ19と一体化したセンサドグ17がフォトカプラ18の光を遮った状態で停止した状態で、稼働アーム12だけが更に下方に移動し、ニードル4がバイアル3bの先端を突き破る。
【0044】
その後、ステップS16において、駆動手段101が、次の分析対象となるバイアル情報を記憶装置203から読み出す。次の分析対象が存在する場合は、ステップS10に戻る。次の分析対象が存在しない場合は操作を終了する。
【0045】
−第2の方法(リンスポート時)−
図8に示すステップS20において、図6の駆動手段101が、リンスポートの位置情報を図6の記憶装置203から読み出す。駆動手段101は、リンスポートの位置情報に基づいて、稼働アーム12を図4に示すようにリンスポートの上方に配置させる。その後、駆動手段101が、稼働アーム12を規定位置から下方向(Z方向)に降下させる。稼働アーム12の降下速度は、ニードル4をリンスポートに挿入する際の速度と同じかそれより遅い速度とするのが好ましい。
【0046】
ステップS21において、稼働アーム12が開始位置から距離L1(例えば5mm)だけ下がった時に、異物判定手段102が、フォトカプラ18の信号を監視することにより、リンスポート周辺のラック3の上方に異物があるか否かを判定する。異物判定手段102は、フォトカプラ18が発する信号がOFFの場合を「ラック3の周辺に異物がある」と判断し、ステップS27へ進む。
【0047】
ステップS27において、異物判定手段102は、ステップS11の異物判定が1回目であるか否かを判定する。異物判定が2回目以上である場合は、ステップS29において、停止手段104が、測定を停止させ、出力装置202に警告メッセージ等を表示させる。一方、異物判定が1回目である場合は、ステップS28に進み、駆動手段101が稼働アーム12を開始位置まで戻す。その後、再びステップS20及びS21に示す工程を繰り返す。
【0048】
ステップS21において、センサドグ17がフォトカプラ18の光を遮り、フォトカプラ18が発する信号が「ON」の場合は、異物判定手段102が「ラック3の周辺に異物無し」と判断し、ステップS22に進む。ステップS22において、駆動手段101は稼働アーム12を距離L1から更に降下させて、ステップS23において、ニードル4をリンスポート6に挿入し、ニードルを洗浄して、作業を終了する。
【0049】
実施の形態に係るオートサンプラ制御方法によれば、図6の異物判定手段102がフォトカプラ18のON/OFF信号の変化に基づいて異物の有無を判定し、異物が存在する場合には駆動手段101が稼働アーム12の下降を停止させる。これにより、ニードル4を下方に下げて試料を採取する際に操作者が誤って手を挟んだりすることがないので、操作の安全性が図れる。
【0050】
また、バイアル判定手段103が、フォトカプラ18のON/OFF信号の変化に基づいてバイアルの有無を判定し、バイアルが存在しない場合には、停止手段104により駆動アームの下降を停止させる。そのため、例えば、ラック3の正しい位置にバイアル3bがセットされていない場合には、測定を一旦停止させることができる。
【0051】
また、フォトカプラ18のON/OFF信号と、駆動手段101及び停止手段104による稼働アーム12の制御とを関連づけることにより、フォトカプラ18が正常でない場合には、稼働アーム12も稼働しなくなるため、フォトカプラ18の異常も検知できる。
【0052】
なお、図7及び図8にフローを示した一連のオートサンプラ処理は、図7及び図8と等価なアルゴリズムのプログラムにより、図1〜図5に示すオートサンプラ1及び図7に示したオートサンプラ制御システムを制御して実行できる。このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体をプログラム記憶装置等に読み込ませることにより、一連の処理を実行することもできる。
【0053】
(全有機体炭素計)
図1〜図6に示すオートサンプラ1を接続した全有機体炭素計(TOC計20)の例を図9に示す。
【0054】
マルチポートバルブ21の共通ポートには、試料を計量して採取するためのサンプリングシリンジ50が接続されている。サンプリングシリンジ50は、マイクロシリンジに接続されていてもよい。マルチポートバルブ21の他のポートは、試料導入部22(ポート番号1)、オートサンプラ(ポート番号2)、試料水から無機炭素成分を除去する際に使用される酸23(ポート番号3)、希釈水24(ポート番号4)、IC反応器33(ポート番号5、排出用ドレン51(ポート番号6)、TC燃焼管28(ポート番号7)、及びIC反応器33のキャリアガス導入口(ポート番号8)にそれぞれ接続されており、オートサンプラ1から採取した試料をTC燃焼管28やIC反応器33に注入できるようになっている。
【0055】
サンプリングシリンジ50には、通気ガスとしての高純度空気が、キャリアガス入口39から、電磁弁52、調圧弁53、キャピラリ54、電磁弁55を介して供給される。また、キャリアガス入口39から供給されたキャリアガスは、電磁弁52、調圧弁53、調圧弁53の下流側で分岐した経路に接続されたマスフローコントローラ56、流量計57及び加湿器58を介してTC燃焼管28の上部の試料注入部27に供給されるようになっている。
【0056】
TC燃焼管28は、内部に、試料中の炭素成分のすべてをCO2に変換するための金属酸化物や貴金属からなる酸化触媒を備えている。TC燃焼管28は、周囲をTC炉(電気炉)29によって覆われており、所定の温度に加熱されるようになっている。試料注入部27には排出用ドレンが配置されている。TC燃焼管28の下部の出口は、冷却管30、純水トラップ31、逆流防止トラップ32を介してIC反応器33のキャリアガス導入口に接続されている。
【0057】
IC反応器33は、IC測定時には、リン酸などのIC反応液25が、ポンプ59により供給される。IC反応器33には、試料がポート番号5を介して注入される。注入された試料中のICがCO2として発生し、キャリアガスによって防湿用電子クーラ34へ導かれる。IC反応器33中のIC反応液は、IC反応器の上部に配置された試料導入部26が備えるドレンから排出される。
【0058】
防湿用電子クーラ34を経たガスは、ハロゲン成分を除去するハロゲンスクラバー35を介して非分散形赤外分析方式(NDIR)の試料セル36aに導かれる。試料セル36aの両端には、光源36b及び検出器36cが対向して備えられている。検出器36cが検出する信号はTC濃度として、処理装置40に出力される。排出された二酸化炭素は、CO2吸収器37に吸着される。防湿用電子クーラ34には、水分除去するためのドレンポット38が接続されている。
【0059】
処理装置40は、検出器36cの他に、マルチポートバルブ21、サンプリングシリンジ50と接続されている。処理装置40は、TOC測定に関する各種動作を制御する。処理装置40は、オートサンプラ1の動作を制御するための図6に示したオートサンプラ制御手段100を含んでいてもよい。処理装置40には、処理装置40に必要な情報を入力するためのキーボード41、処理装置40の処理結果を出力するディスプレイ手段(LCD)42及びプリンタ43が接続されている。
【0060】
図9に示すTOC計を用いてTOC測定する場合は、まず、試料が、サンプリングシリンジ50によってオートサンプラ1から採取される。その後、サンプリングシリンジ50がTC燃焼管28に接続されたポート(ポート番号7)に切り替えられる。TC燃焼管28には、150ml/minの流量に制御されたキャリアガス(高純度空気)が、キャリアガス入口39から電磁弁52、調圧弁53、キャピラリ54、電磁弁55を介して試料注入部27に送られることにより、試料と空気の混合物が、TC燃焼管28に導入される。TC燃焼管28は、TC炉29により680℃に加熱され、試料中の炭化成分が酸化されてCO2に変換される。
【0061】
TC燃焼管28で発生したCO2と水蒸気を含むガスは、冷却管30で冷却され、純水トラップ31及び逆流防止トラップ32を経由してIC反応器33に導入される。IC反応器33内にはポンプ59を介してIC反応液25が供給される。TC燃焼管28で発生した二酸化炭素分と水蒸気を含むガスは、その後、防湿用電子クーラ34に導かれて水分が取り除かれ、ハロゲンスクラバー35でハロゲン成分が除かれ、試料セル36aに導入される。
【0062】
試料セル36a内には、光源36bからの赤外光が照射され、試料セル36a中に含まれるCO2濃度を検出器36cにより検出する。このCO2濃度はTCに相当する。排出されたCO2は、CO2吸収器37に吸着される。
【0063】
サンプリングシリンジ50によって、オートサンプラ1から吸入された試料が、マルチポートバルブ21の切り替えとサンプリングシリンジ50の作動によってIC反応器33に導入される。IC反応器33は、下部からキャリアガスが送られて内部に配置されたIC反応液がバブリングされている。試料導入部26に供給された試料は、IC反応器33においてIC反応液と接触し、CO2が発生する。発生したCO2は、防湿用電子クーラ34に導かれて水分が除去され、ハロゲンスクラバー35でハロゲン成分が除かれ、試料セル36aに導かれる。
【0064】
試料セル36a内には、光源36bからの赤外光が照射され、試料セル36a中に含まれるCO2濃度を検出器36cにより検出する。このCO2はICに相当する。よって、先の工程において測定したTCからICを差し引きすれば、TOCが求められる。
【0065】
実施の形態に係るTOC計20によれば、図1〜図6に示すオートサンプラ1を小型化できるため、装置の機能に対する容積の割合を小さくし、操作の安全性を向上可能な装置が提供できる。
【0066】
本実施形態においては、オートサンプラとオートサンプラを接続したTOC計を例に説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0067】
例えば、図1〜図6のオートサンプラ1は、TOC計の他にも、オートサンプラ1を接続する他の様々な装置、例えば、GC、GC/MS等の様々な分析装置に接続可能であることは勿論である。
【0068】
このように、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項により定められるものであり、実施段階においてはその要旨を逸脱しない範囲で変形して具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係るオートサンプラの一例を示す斜視図である。
【図2】ラック上にバイアルが何も存在しない場合の本発明の実施の形態に係るオートサンプラを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るオートサンプラを裏側から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るオートサンプラにおいて、リンスポートにニードルを挿入する場合の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るオートサンプラにおいて、バイアルにニードルを突き刺す様子を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るオートサンプラ制御システムの一例を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るオートサンプラ制御方法の第1の方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係るオートサンプラ制御方法の第2の方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に係るオートサンプラを用いたTOC計の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
1…オートサンプラ
2…本体
3…ラック
3a…開口部
3b…バイアル
4…ニードル
6…リンスポート
10…採取ユニット
11…駆動手段11
12…稼働アーム
13…スライドシャーシ
14…固定アーム
15…ブラケット
15c…保護穴
15d…ストッパ
16…レール
17…センサドグ
18…フォトカプラ
19…バイアルキャッチ
20…TOC計
61…ニードル機構
62…駆動手段
63…懸架部材
64…位置検出手段
110…物質検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアルを配置するラックと、
ニードルを含むニードル機構と、
前記ニードル機構を上下に駆動させる駆動手段と、
前記ニードル機構に自重で懸架され、該懸架された状態で前記ニードル機構を下方に移動させたときに前記ニードルの先端よりも先に前記バイアルまたは異物に接触する構造を有する懸架部材と、
前記懸架部材及びニードル機構の位置を検知する位置検知手段と、
前記懸架部材の位置及び前記ニードル機構の位置に基づいて、前記バイアル又は前記異物を検知する物質検知手段と
を備えることを特徴とするオートサンプラ。
【請求項2】
前記懸架部材が、
前記ニードル機構上に懸架され、前記下方への移動により前記位置検知手段の出力信号をON/OFFするセンサドグと、
前記センサドグの下端に接続されたレールと、
前記レールの下端に固定され、前記バイアル又は前記異物と接触するバイアルキャッチと
を備えることを特徴とする請求項1に記載のオートサンプラ。
【請求項3】
前記位置検知手段が、
鉛直方向を長手方向とする長穴を有し、前記長穴を介して前記懸架部材を摺動可能に連結した柱状のブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられた検知部と、
を備え、
前記物質検知手段が、
前記ニードル機構を一定距離だけ下方に移動させた場合の前記検知部の出力信号の変化を検知することにより、前記バイアル又は異物を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載のオートサンプラ。
【請求項4】
前記ブラケットが、前記長手方向に対し垂直に折り曲がるL字形状をなしており、前記ニードルの先端を収容する保護穴を有し、前記バイアルに突き刺した前記ニードルを前記バイアルから引き抜く際に前記バイアルが一定以上の高さに持ち上がるのを抑制するストッパを下端に有することを特徴とする請求項3に記載のオートサンプラ。
【請求項5】
試料中の全炭素分を分解して二酸化炭素に変換するTC燃焼管と、
前記試料中の無機炭素分を二酸化炭素に変換するIC反応器と、
前記TC燃焼管及び前記IC反応器に接続され、前記試料中の全炭素濃度及び無機炭素濃度を検出する検出器と、
前記TC燃焼管及び前記IC反応器に接続されたマルチポートバルブと、
バイアルを配置するラック、ニードルを含むニードル機構、前記ニードル機構を上下に駆動させる駆動手段と、前記ニードル機構に自重で懸架され、該懸架された状態で前記ニードル機構を下方に移動させたときに前記ニードルの先端よりも先に前記バイアルまたは異物に接触する構造を有する懸架部材、前記懸架部材の位置を検知する位置検知手段、前記懸架部材及び前記ニードル機構の位置に基づいて、前記バイアル又は前記異物の存在を検知する物質検知手段を含み、前記マルチポートバルブに接続されたオートサンプラと
を備えることを特徴とする全有機炭素体計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−294139(P2009−294139A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149502(P2008−149502)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】