説明

カバーおよびこれを用いたスイッチ

【課題】操作軸を最終位置まで押し下げても、カバーの外周縁部が上方に反り返えることがなく、破損しにくい長寿命の防水カバーを提供する。
【解決手段】カバー20は、電気機器のスイッチ本体10から突出し、かつ、軸心方向に操作可能な操作軸11を被覆し、前記操作軸11の操作によって押圧力が負荷される筒状押圧部21と、前記筒状押圧部21の外周下方縁部に連続し、かつ、前記筒状押圧部21よりも薄肉の筒状弾性変形部22と、前記スイッチ本体10から突出した取付フランジに密着するように弾性変形させて密着される環状装着部23とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸心方向に操作可能な操作軸を備えたスイッチ、例えば、トリガースイッチ等の操作軸の外周面を被覆し、水や塵埃の侵入を防止する防水用および/または防塵用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カバーとしては、操作軸の外周面を被覆して塵埃の侵入を防止すべく、例えば、リミットスイッチの可動部に装着されるダストカバーにおいて、リミットスイッチ本体を含めて前記可動部全体を覆い、かつ少なくとも1山ないし1谷の蛇腹部を有することを特徴とするリミットスイッチ用ダストカバーがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−53979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のリミットスイッチ用ダストカバーでは、その図1に示すように、プランジャーを最終位置まで押し下げると、蛇腹部4の外周縁部が上方に反り返り、頂部5よりも上方に迫り出す。このため、前記蛇腹部の外周縁部が擦り切れやすく、破損しやすいので、耐久性に乏しく、寿命が短いという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、操作軸を最終位置まで押し下げても、カバーの外周縁部が上方に反り返えることがなく、破損しにくい長寿命のカバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るカバーは、電気機器のハウジングから突出し、かつ、軸心方向に操作可能な操作軸を被覆するカバーにおいて、前記操作軸の操作によって押圧力が負荷される筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続し、かつ、前記筒状押圧部よりも薄肉の筒状弾性変形部と、からなる構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、筒状押圧部を押し下げると、薄肉の筒状弾性変形部が最初に大きく撓む。特に、筒状押圧部を押し下げると、薄肉の筒状弾性変形部が内側に撓み、前記筒状押圧部に覆われる。このため、従来例のような筒状押圧部の外周縁部が上方に反り返ることがなく、迫り出すことがない。この結果、前記筒状押圧部の外周縁部が擦り切れにくくなり、破損しにくいので、耐久性が向上し、長寿命のカバーが得られる。
【0007】
本発明の実施形態としては、筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けておいてもよい。
例えば、筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、
内側面に位置する前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けておいてもよい。また、筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、外周面に位置する前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、筒状押圧部と筒状弾性変形部との間により一層、薄肉の薄肉部が形成される。このため、筒状押圧部を押し下げると、薄肉の薄肉部が最初に弾性変形した後、筒状弾性変形部が変形するので、押し下げ操作をスムーズに行うことができ、操作感触の良いカバーが得られる。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、筒状弾性変形部の外周面に沿って少なくとも1本の環状切り欠き部を設けておいてもよい。また、筒状弾性変形部の内周面に沿って少なくとも1本の環状切り欠き部を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、環状切り欠き部によって筒状弾性変形部に薄肉の領域が部分的に形成される。このため、筒状弾性変形部が環状切り欠き部に沿って撓みやすくなり、押し下げ操作をスムーズに行うことができ、操作感触の良いカバーが得られる。
【0009】
本発明の異なる実施形態としては、複数の略円錐台形の厚肉の筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続する複数の略逆円錐台形の薄肉の筒状弾性変形部と、を交互に蛇腹状に設けておいてもよい。
本実施形態によれば、筒状押圧部を押し下げると、前記筒状押圧部の下方側に位置する筒状弾性変形部が内側に撓み、前記筒状押圧部が下方側の筒状押圧部に直接的に積み重なり、コンパクトに弾性変形する。この結果、押し込み量が大きい操作軸にも適用可能なカバーが得られるという効果がある。
【0010】
本発明の別の実施形態としては、筒状押圧部の先端面の中央に、操作軸の先端面が露出する操作孔を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、操作軸の先端面を介して厚肉の筒状押圧部が押し下げられ、薄肉の筒状弾性変形部が内側に撓むことにより、長寿命のカバーが得られる。
なお、操作軸の先端面はカバーの操作孔から必ずしも露出している必要はなく、操作軸全体がカバーで被覆されていてもよい。
【0011】
本発明に係るスイッチは、ハウジングから突出し、かつ、軸心方向に操作可能な操作軸と、前記操作軸を被覆するカバーとを備えたスイッチにおいて、前記カバーが、前記操作軸の操作によって押圧力が負荷される筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続し、かつ、前記筒状押圧部よりも薄肉の筒状弾性変形部と、を備えた構成としてある。
【0012】
本発明に係るスイッチによれば、筒状押圧部を押し下げると、薄肉の筒状弾性変形部が最初に大きく撓む。特に、筒状押圧部を押し下げると、薄肉の筒状弾性変形部が内側に撓み、前記筒状押圧部に覆われる。このため、従来例のような筒状押圧部の外周縁部が上方に反り返ることがなく、迫り出すことがない。この結果、前記筒状押圧部の外周縁部が擦り切れにくくなり、破損しにくいので、耐久性が向上し、長寿命のカバーを備えたスイッチが得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは本願発明に係るカバーを適用したトリガースイッチを示す斜視図、図1Bは図1Aに図示した本願発明のカバーを示す斜視図である。
【図2】図2A,2Bは図1Aに示したトリガースイッチの操作前後を示す斜視図である。
【図3】図3Aは図1Bに示した本願発明のカバーを示す正面図、図3Bは図3AのB−B線断面図である。
【図4】図4A,4Bは図1Bで示したカバーが弾性変形した状態を示す斜視図、正面図、図4Cは図4BのC−C線断面図である。
【図5】図5A,5Bは本願発明に係るカバーの第2実施形態を示す斜視図、正面図、図5Cは図5BのC−C線断面図である。
【図6】図6A,6Bは本願発明に係るカバーの第3実施形態を示す斜視図、正面図、図6Cは図6BのC−C線断面図である。
【図7】図7A,7Bは本願発明に係るカバーの第4実施形態を示す斜視図、正面図、図7Cは図7BのC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明に係るカバーの実施形態を、トリガースイッチに装着する防塵カバーに適用した場合について説明する。
第1実施形態は、図1ないし図4に示すように、スイッチ本体10に軸心方向に往復移動可能に取り付けられた断面略T字形状の操作軸11を被覆する防塵カバー20である。
【0015】
前記防塵カバー20は、図3に示すように、略円錐台形の厚肉の筒状押圧部21と、前記筒状押圧部21の下方側縁部に連続する略逆円錐台形の薄肉の筒状弾性変形部22と、前記筒状弾性変形部22の下方側縁部に連続する環状装着部23と、で形成されている。
【0016】
前記筒状押圧部21は、その上端から下端にかけて肉厚が薄くなっているとともに、その上端面の中央に操作軸11を挿入できる操作孔20を設けてある一方、その外周面に補強用リブ25を所定のピッチで一体成形してある。
【0017】
前記筒状弾性変形部22は、その肉厚が前記筒状押圧部21よりも薄く、前記筒状押圧部21との接続領域のうち、内周面に位置する前記筒状弾性変形部22側の縁部に沿って環状溝部26を設けることにより、カバー20の肉厚が最も薄くなる薄肉部27を形成してある。前記薄肉部27は、前記筒状弾性変形部22を内側に撓み易くするためのものである。
【0018】
前記環状装着部23は、スイッチ本体10のハウジングから突出する取付用フランジ(図示せず)に密着するように弾性変形させて装着される。
【0019】
このため、前記スイッチ本体10に取り付けた断面T字形状の操作軸11に前記カバー20を弾性変形させて被覆するとともに、前記環状装着部23をスイッチ本体10の取付用フランジに装着する。
そして、前記操作軸11の先端面を押し下げると、前記操作軸11の動作によって筒状押圧部21が押し下げられ、最初に環状溝部26に応力が集中し、薄肉部27が弾性変形する。ついで、押し下げる力の分力によって筒状弾性変形部22が内側に向かって撓む。このため、筒状押圧部21の外周縁部が反り返ることなく、カバー20全体がコンパクトに圧縮される(図4参照)。この結果、筒状押圧部21の外周縁部に擦り切れや破損が生じにくくなり、長寿命のカバー20が得られる。
【0020】

なお、本実施形態では、カバー20は必ずしも操作孔24を必要とせず、操作軸11の先端面をも被覆する構造であってよい。また、補強用リブ25は必要に応じて設ければよく、必ずしも必要ではない。
【0021】
第2実施形態は、図5に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は環状溝部26を、筒状押圧部21と筒状弾性変形部22とを接続する領域のうち、外周面に位置する筒状弾性変形部22側の縁部に沿って設けた点である。他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を附して説明を省略する。
【0022】
本実施形態によれば、環状溝部26を外周面に形成するので、成形金型の製造が容易になるとともに、成形が簡単になるという利点がある。
【0023】
第3実施形態は、図6に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は、筒状押圧部21の外周面に補強リブを設けずに肉厚を厚く、かつ、一様にする一方、筒状弾性変形部22の外周面に所定のピッチで環状の切り欠き溝28を設けた点である。他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を附して説明を省略する。
【0024】
本実施形態によれば、内周面に設けた環状溝部26が形成する薄肉部27に応力が集中して弾性変形を開始した後、環状切り欠き溝28に沿って更に筒状弾性変形部22が内側に撓み始める。このため、筒状弾性変形部22に設けた複数本の環状切り欠き溝28に沿って前記筒状弾性変形部22がより一層スムーズに変形し、操作感触が向上するという利点がある。
なお、前記環状切り欠き溝28は筒状弾性変形部22の内周面に沿って設けておいてもよいことは勿論である。
【0025】
第4実施形態は、図7に示すように、複数の筒状押圧部21と複数の筒状弾性変形部22とを交互に蛇腹状に形成した場合である。また、前記筒状押圧部21の外周面には補強用リブ25を所定のピッチで設けてある。他は前述の実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を附して説明を省略する。
【0026】
本実施形態によれば、図示しない操作軸で本実施形態のカバー20を圧縮すると、薄肉の筒状弾性変形部22が内側に向かって弾性変形し、厚肉の前記筒状押圧部21が下方側に位置する厚肉の筒状押圧部21に積み重なるように変形する。このため、薄肉の筒状弾性変形部22が厚肉の押厚部21,21に挟まれることがない。この結果、カバー20全体の弾性変形量が大きくでき、移動距離の大きい操作軸に適用可能なカバーが得られるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
前述の実施形態では、トリガースイッチの防塵カバーに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限らず、他のスイッチ、例えば、リミットスイッチに適用してもよい。
また、防塵カバーに適用する場合に限らず、防水カバーに適用してもよい。
さらに、略円錐台形の筒状押圧部あるいは略逆円錐台形の筒状弾性変形部には、例えば、6角錐台形、8角錐台形、12角錐台形のものをも含む概念である。
そして、操作軸は必ずしもカバーから露出している必要はなく、前記操作軸全体がカバーで被覆されていてよい。
【符号の説明】
【0028】
10:スイッチ本体
11:操作軸
20:カバー
21:筒状押圧部
22:筒状弾性変形部
23:環状装着部
24:操作孔
25:補強用リブ
26:環状溝部
27:薄肉部
28:環状切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のハウジングから突出し、かつ、軸心方向に操作可能な操作軸を被覆するカバーにおいて、
前記操作軸の操作によって押圧力が負荷される筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続し、かつ、前記筒状押圧部よりも薄肉の筒状弾性変形部と、からなることを特徴するカバー。
【請求項2】
筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って、肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、内側面に位置する前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って、肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のカバー。
【請求項4】
筒状押圧部の下方縁部と筒状弾性変形部の上方縁部とを接続する領域のうち、外周面に位置する前記筒状弾性変形部側の縁部に沿って、肉厚が最も薄い薄肉部を形成する環状溝部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のカバー。
【請求項5】
筒状弾性変形部の外周面に沿って少なくとも1本の環状切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項6】
筒状弾性変形部の内周面に沿って少なくとも1本の環状切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項7】
複数の略円錐台形の厚肉の筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続する複数の略逆円錐台形の薄肉の筒状弾性変形部と、を交互に蛇腹状に設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項8】
筒状押圧部の先端面の中央に、操作軸の先端面が露出する操作孔を設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のカバー。
【請求項9】
ハウジングから突出し、かつ、軸心方向に操作可能な操作軸と、前記操作軸を被覆するカバーとを備えたスイッチにおいて、
前記カバーが、前記操作軸の操作によって押圧力が負荷される筒状押圧部と、前記筒状押圧部の外周下方縁部に連続し、かつ、前記筒状押圧部よりも薄肉の筒状弾性変形部と、を備えたことを特徴するスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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