説明

カルビノール官能性シロキサン樹脂によるクリアコート塗料

クリアコート塗料組成物で、カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含む。本クリアコート組成物は、クリアコート被膜上の修繕被覆層の優れた高ベーク修繕密着性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業および自動車の塗料組成物、特にトップコートあるいは複合被膜の最表層を形成する塗料に関する。
【0002】
発明の背景
クリアコート−ベースコートの複合塗料は塗装技術において広く用いられており、所望の光沢、色の深み、明瞭な像、および/または特殊なメタリック効果が顕著である。複合系は、特に自動車産業で用いられ、有利な視覚的効果、特に高度の透明性を実現する。しかしながら、トップコートの高度の透明性は、欠陥を目につきやすくする。
【0003】
ケイ素含有材料は、表面の擦り傷および損傷に対する被膜の耐性を向上させるために塗料組成物に導入されている。ケイ素含有材料による被覆層は、しかしながら、ケイ素原子によってもたらされる小さい表面張力のために、その後に適用される被膜層の密着が悪いことがある。一般に、ケイ素含有材料を、擦り傷および損傷耐性のために、外塗層に加えた場合、本外塗層の上からさらなる被膜層は適用しないと想定されている。しかしながら、時にはさらなる層を適用する必要があり、それは修繕被覆層を適用して外塗内の欠陥を修繕しなければいけない場合などである。修繕の成功には、修繕被覆層が下層被覆層によく密着する必要があり、それは下層被膜層がケイ素含有材料を含む場合、妥協されることがある。修繕被覆の良好な密着を確実なものにするため、余分な段階を行わなければならず、例えば、修繕被覆層を適用する前に下層被膜を砂で磨くこと、および洗浄することなどである。
【0004】
発明の要約
本発明は、カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性非線形ポリシロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含有するクリアコート塗料組成物を提供する。他の側面で、本発明は、クリアコート層に本発明のクリアコート塗料組成物を適用し、適用したクリアコート層を硬化し、そして第二のクリアコート層を適用して硬化することにより、自動車のクリアコート被膜の高ベーク修繕を実施する方法を提供する。
【0005】
本発明のクリアコートは、優れた擦り傷耐性を提供し、一方で、特別な準備あるいは下塗層なしで、高ベーク修繕被覆層への優れた密着性を有する。
【0006】
単数形は、ここでは、その項目の"少なくとも1つ"が存在することを示すように用いられ、可能であれば多数のその項目が存在しうる。数値に適用される"約"は、その計算あるいは測定が、値においてわずかに不正確であってもよいことを示す(値の正確性への複数のアプローチによって、近似的にあるいは合理的にその値に近く、ほぼ)。複数の理由により、"約"によって供給される不正確性が、当該技術分野の通常の意味で、違った風に理解されないのであれば、その際、"約"は、ここでは値に対して5%までの可能なばらつきを示すように用いられる。
【0007】
好ましい実施態様の詳細な説明
以下の好ましい実施態様の説明は、単に現存しているものを例示しているだけであり、本発明、その用途あるいは使用を限定するという意図はされていない。
【0008】
本発明のクリアコート塗料組成物は、カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含む。
【0009】
カルビノール官能性シロキサン樹脂は、構造
【化1】

[式中、
Rは3つの炭素を有するヒドロカルビル基である]
を含む。
この構造は、例えば白金触媒を用い、アルケンとシロキサンとの反応によって生じ得ると考えられている。カルビノール官能性シロキサン樹脂は、3次元格子構造を有し、その中において、特定のケイ素原子は3つかそれより多い酸素原子と結合している。シロキサン樹脂は、好ましくは少なくとも約20モルパーセント、好ましくは約20〜約80モルパーセントのモノマー単位を有し、その構造は
【化2】

である。
【0010】
特定の実施態様において、カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂の重量平均分子量は、1000〜200,000の間、好ましくは1000〜80,000の間であってよい。特定の好ましい実施態様において、カルビノール官能性非線形シロキサンの重量平均分子量は、少なくとも約2500、好ましくは約3000である。特定の実施態様においても、カルビノール官能性シロキサン樹脂の重量平均分子量は、約30,000まで、好ましくは、約28,000までであってよい。
【0011】
カルビノール官能性を有するシロキサン単位のモルパーセントには、さらなる要件がある。特定の実施態様において、約5〜約25モルパーセントのシロキサン単位がカルビノール官能性を有する。特定の実施態様においても、少なくとも5モルパーセントのシロキサン単位がカルビノール官能性を有する。さらになお、約25モルパーセントまでの、好ましくは約20モルパーセントまでのシロキサン単位がカルビノール官能性を有する。
【0012】
カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂は、膜形成材料(固定された、あるいは不揮発性のベヒクル)を基準にして、少なくとも約0.1質量パーセント、好ましくは少なくとも約0.2質量パーセントの量でクリアコート塗料組成物中に含まれていてもよい。特定の実施態様において、膜形成材料(固定された、あるいは不揮発性のベヒクル)を基準にして、カルビノール官能性シロキサン樹脂は、0.1〜約20質量パーセント、好ましくは0.1〜約5質量パーセントの量でクリアコート塗料組成物中に含まれていてもよい。
【0013】
カルバメート官能性膜形成材料は、カルバメート基を有するアクリルポリマーを含んでいてもよい。本発明による、カルバメート基は
【化3】

[式中、
R’は、Hあるいはアルキルである。好ましくは、R’はHあるいは1から約4つの炭素原子を有するアルキル、より好ましくは、R’はH(第一級カルバメート)である。]
の構造によって表される。
【0014】
一般に、カルバメート基を有するアクリルポリマーは、2つの方法によって製造することができる。第一に、カルバメート基を有するアクリルポリマーは、カルバメート基を有するモノマーを用いた重合によって製造できる。第二に、該アクリルポリマーは、官能性を有するモノマーの重合によって製造することができ、重合の後にカルバメート官能性に変換あるいは付加することができる。米国特許6,160,058号に記載された任意の方法が利用されてもよい。その内容は、参照をもって開示されたものとする。
【0015】
第一の方法において、アクリルポリマーは、カルバメート基を有するモノマーの重合で製造される。例えば、米国特許5,412,049号は、ヒドロキシアルキルカルバメート化合物のヒドロキシル(メタ)アクリレートエステルの反応生成物の重合を開示する。その内容は、参照をもって開示されたものとする。
【0016】
第一の方法の他の実施態様において、アクリルポリマーは、構造
【化4】

[式中、
それぞれのRが水素、あるいは1つのRが水素で且つ他のRがメチルである;nは1〜約4、好ましくは1である;且つ、YおよびZの1つはOHであり、且つ他のYおよびZは、既に定義されたカルバメートあるいはウレア基である]
を有するβ−ヒドロキシカルバメートモノマーと重合されてもよい。前記モノマーの典型的な合成において、反応速度論により、Yがヒドロキシルであり且つZがヒドロキシルである化合物の混合物である生成物が製造される。Yがヒドロキシル基であるとき、モノマーもまたアクリルポリマーに第二ヒドロキシル基を提供する。
【0017】
本構造のβ−ヒドロキシカルバメートモノマーの1つの製造方法は、グリシジル基を有する重合可能なモノマーを、まず二酸化炭素と反応させ、オキシラン基を変換させて環状カーボネート基とし、次にアンモニアあるいは第一級アミンと反応させ、環状カーボネート基を変換してβ−ヒドロキシカルバメート基にすることによる。オキシラン基含有の重合可能なモノマーの適した例は、これらに制限されないが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、およびアリルグリシジルエーテルを含む。オキシラン基は、CO2との反応による環状カーボネート基への最初の変換によって、カルバメート基に変換され得る。これは、大気圧から超臨界CO2圧までの任意の圧力で行われ得るが、好ましくは高圧下(例えば60〜150psi)である。本反応のための温度は、好ましくは60〜150℃である。有用な触媒は、オキシラン環を活性化する任意のものを含み、例えば第三級アミンあるいは第四級塩(例えばテトラメチルアンモニウムブロミド)、有機錫ハライドおよびアルキルホスホニウムハライド錯体の組み合わせ(例えば(CH33SnI、Bu4SnI、Bu4PI、および(CH34PI)、クラウンエーテルとの組み合わせのカリウム塩(例えばK2CO3、KI)、好ましくは、オクタン酸錫、オクタン酸カルシウム、およびその種のものである。環状カーボネート基は、アンモニアあるいは第一級アミンと反応する。第一級アミンは、好ましくは4つまでの炭素を有し、たとえばメチルアミンである。好ましくは、環状カーボネートは、アンモニアと反応する。アンモニアは、水性アンモニア(即ちNH4OH)であってもよい。その反応は環状カーボネートを開環し、β−ヒドロキシカルバメートモノマーを形成する。
【0018】
カルバメート官能性モノマーの他の製造方法は、ヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマーを、ウレアあるいはシアヌル酸の熱分解で形成され得るシアン酸と反応させることによる。さらなる方法は、イソシアネート官能性あるいは酸官能性エチレン性不飽和モノマーを、例えばヒドロキシプロピルカルバメートなどの、ヒドロキシアルキルカルバメート化合物と、あるいはヒドロキシ含有エポキシド化合物と反応させ、続いて該エポキシド基を上記のようにカルバメート基に変換させることによる。なおもさらなる方法において、ヒドロキシル官能性エチレン性不飽和モノマーを、エステル交換反応でアルキルカルバメートと反応させ、カルバメート基を誘導してもよい。カルバメート官能性エチレン性不飽和モノマーを形成するための他の方法は、酸官能性エチレン性不飽和モノマーをエピハロヒドリン化合物と反応させ、次いでオキシラン基を二酸化炭素と反応させカーボネートを形成し、次いでカーボネート環をアンモニアあるいは第一級アミンと反応して第一級カルバメートまたは第二級カルバメートをそれぞれ形成することによる。さらに他の技術は、第一級または第二級アミン、あるいはジアミンを、エチレンカーボネートなどの環状カーボネートと反応させることによるヒドロキシアルキルカルバメートの形成を含む。ヒドロキシアルキルカルバメート上のヒドロキシル基は、次いでアクリルあるいはメタクリル酸と反応してエステル化し、モノマーを形成する。カルバメート官能性を有するモノマー合成のさらなる詳細は、例えば、米国特許3,479,328号、3,674,838号、4,126,747号、4,279,833号、4,340,497号、および5,356,669号およびWO94/10211号に記載され、それら内容はここで参照をもって開示されたものとする。
【0019】
第二の方法において、官能基を有するアクリルポリマーが製造され、官能基は重合の後で反応し、カルバメート基を供給する。米国特許4,758,632号および5,356,669号は、この方法で少なくとも1つのカルバメート官能基を付けたポリマー骨格の製造について記載し、その内容は、参照をもって開示されたものとする。ひとつの技術は、ウレア(アンモニアおよびHNCOを放出する)あるいはシアヌル酸を、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーの存在下で熱分解し、カルバメート官能性アクリルポリマーを形成することを含む。他の技術は、ヒドロキシアルキルカルバメートのヒドロキシル基が、アクリルポリマー上のイソシアネート基あるいはカルボン酸基と反応することを含む。イソシアネート官能性アクリルは、不飽和m−テトラメチルキシレンイソシアネートおよびイソシアナトエチルメタクリレートを含む、イソシアネートビニルモノマーの重合によって製造される。カルボン酸官能性アクリルポリマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、および合成の後で加水分解される無水マレインの重合によって製造されたものを含む。さらに他の技術は、環状カーボネート官能性ポリマー上の環状カーボネート基を、アンモニアあるいは第一級アミンと反応させ、カルバメート官能性アクリルを形成させることである。環状カーボネート官能性アクリルポリマーは、当該技術分野において公知であり、例えば米国特許2,979,514号に記載され、その内容は、ここで参照をもって開示されたものとする。他の技術は、ヒドロキシ官能性ポリマーのアルキルカルバメートによるカルバミル基移転である。より困難であるが、実現可能なポリマー製造方法は、ポリマーとヒドロキシアルキルカルバメートとのエステル化交換である。さらなる方法は、グリシジル基含有アクリルポリマーを二酸化炭素と反応させ、環状カーボネート基を生成し、上記のようにそこでアンモニアあるいは第一級アミンと反応させて、カルバメート官能性を提供する。グリシジル基を含有するアクリルポリマーは、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、あるいはアリルグリシジルエーテルの共重合によって製造できる。
【0020】
カルバメート官能性を有するアクリルポリマーは1つかそれより多くのコモノマーを用いて重合され得る。前記のコモノマーの例は、これらに制限されないが、3〜5つの炭素原子を含有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、およびクロトン酸およびそれらの酸のエステル;4〜6つの炭素原子を含有するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸および無水物、モノエステルおよびそれらの酸のジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、および芳香族あるいは複素環式脂肪族ビニル化合物を含む。適したアクリル酸、メタクリル酸、およびクロトン酸のエステルの代表的な例は、これらに制限されないが、1から20の炭素原子を含有する飽和脂肪族および脂環式アルコールとの反応からのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ステアリル、スルホエチル、およびイソボルニルアクリレート、メタクリレート、およびクロトネートを含む。
他のエチレン性不飽和の重合可能なモノマーの代表的な例は、これらに制限されないが、フマル酸、マレイン酸、およびイタコン酸無水物、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、およびtert−ブタノールとのモノエステルおよびジエステルを含む。重合可能なビニルモノマーの代表的な例は、これらに制限されないが、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ビニルおよびビニリデンハライド、およびビニルエチルケトンなどの化合物を含む。芳香族あるいは複素環式脂肪族ビニル化合物の代表的な例は、これらに制限されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレン、および2−ビニルピロリドンなどの化合物を含む。前記のコモノマーは、所望のアクリルポリマー特性を生む、任意の所望の組み合わせで用いられてもよい。
【0021】
前記のアクリルポリマーは、従来技術、例えば重合開始剤および随意に連鎖移動剤の存在下でのモノマーの加熱を用いて製造できる。重合は好ましくは溶液中で行われるが、但し、塊状でのアクリルポリマーの重合も可能である。適した重合溶剤は、これらに制限されないが、エステル、ケトン、エチレングリコールモノアルキルエーテル、およびプロピレングリコールモノアルキルエーテル、アルコール類、および芳香性炭化水素、例えばキシレン、トルエン、およびAromatic 100を含む。
【0022】
典型的な開始剤は有機ペルオキシドであり、例えばジアルキルペルオキシド、例えばジ−t−ブチルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt−ブチルペルオクトエートおよびt−ブチルペルアセテート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、およびペルオキシケタール;アゾ化合物、例えば2,2’アゾビス(2−メチルブタンニトリル)および1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);およびそれらの組み合わせである。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n−またはtert−ドデシルメルカプタン;ハロゲン化化合物、チオサリチル酸、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール、およびダイマーのアルファ−メチルスチレンである。
【0023】
溶剤または溶剤混合物を反応温度まで加熱し、モノマーおよび開始剤および随意に連鎖移動剤を制御された割合で一定時間の間、典型的には約2〜約6時間、添加しうる。重合反応は、通常、約20℃〜約200℃の温度で実施される。前記の反応は、溶剤または溶剤混合物が環流する温度で都合よく行われる、但し、環流が維持されうるより低い温度で適正に制御する。開始剤は、反応が行われる温度に合うように選択されるべきであり、そのため、その温度での開始剤の半減期は、好ましくは約30分以下、より好ましくは約5分以下であるべきである。追加の溶剤が同時に添加され得る。前記の混合物を、一定時間、添加が完了した後、反応温度で保持して重合を完了できる。随意に、モノマーのポリマーへの変換の完了を確実にするために、追加の開始剤を添加できる。
【0024】
アクリルポリマーは、少なくとも約2400、複数の実施態様においては少なくとも約3000、さらなる実施態様においては少なくとも約3500、および特定の好ましい実施態様においては少なくとも約4000の重量平均分子量を有していてもよい。重量平均分子量は、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィで測定できる。さらに、重量平均分子量は、特定の実施態様で約5000まで、複数の実施態様において約4750まで、およびさらに他の実施態様において約4500までであってよい。カルバメート官能基を有するアクリルポリマーは、カルバメート官能基を基準として、当量あたり約700グラムまで、複数の実施態様においては当量あたり約500グラムまで、および複数の実施態様においては当量あたり約425グラムまでの当量を有してもよい。カルバメート当量は、少なくとも当量あたり約350グラムであってよい。
【0025】
クリアコート塗料組成物は、さらにカルバメート官能性材料を含んでもよく、それは(1)第一のカルバメート基およびヒドロキシル基を含む化合物、および(2)化合物(1)の多数の分子上のヒドロキシル基と反応するが、化合物(1)上のカルバメート基とは反応しない化合物、との反応生成物である。化合物(1)は、例えば、これらに制限されないが、ヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、あるいはヒドロキシブチルカルバメートであってもよい。化合物(2)は、好ましくは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、それらのイソシアヌレートあるいはビウレット、それらの化合物の混合物である。特に好ましい化合物(2)は、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートおよびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである。
【0026】
化合物(1)および(2)の反応生成物のカルバメート官能性化合物は、クリアコート組成物中に、ベヒクルの質量を基準にして、約5質量パーセントから約30質量パーセントの量で含まれていてもよい。特定の実施態様において、カルバメート官能性化合物は、クリアコート組成物中に、ベヒクルの質量を基準にして、約10質量パーセントから約15質量パーセントの量で含まれていてもよい。"ベヒクルの質量"とは、塗料組成物中の熱硬化性の膜形成成分の合計質量である。
【0027】
クリアコート塗料組成物は他のカルバメート官能性化合物を含んでもよい。前記のカルバメート官能性化合物は、これらに制限されないが、米国特許第6,160,058号、6,084,038号、6,080,825号、5,994,479号のいずれかの中に記載されるものを含み、その内容は参照をもって開示される。特に、前記組成物は、少なくとも2つの官能基を含み、そのうちの少なくとも1つはカルバメートまたはウレア基である、カルバメート官能性またはウレア官能性材料を含んでもよく、それは(1)エポキシ基を有する化合物と有機酸基を有する化合物との開環反応の結果である第一の化合物のヒドロキシル基と、(2)シアン酸あるいはカルバメートまたはウレア基含有化合物との反応生成物である。
【0028】
他の実施態様において、クリアコート組成物は、カルバメート官能性またはウレア官能性材料を含んでいてもよく、前記材料は、(1)カルバメートまたはウレア基および(2)と反応する活性水素基を含む化合物と、(2)ラクトンあるいはヒドロキシカルボン酸との反応生成物である。特に好ましい実施態様においては、化合物(1)の活性水素基はヒドロキシル基であり、化合物(2)はε−カプロラクトンである。化合物(1)は、例えば、これらに制限されないが、ヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、あるいはヒドロキシブチルカルバメートであってもよい。
【0029】
他の実施態様において、クリアコート組成物は、直前に記載されたように、(1)第一カルバメートまたは第一ウレア基およびヒドロキシル基を含む化合物と、(2)ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸との反応によって製造される第一の材料(A)とを反応させ、化合物(A)の多数の分子上のヒドロキシル基と反応するが、化合物(A)上のカルバメート基あるいはウレア基とは反応しない第二の材料(B)と、さらに反応させた反応生成物であるカルバメート官能性あるいはウレア官能性材料を含んでもよい。例えば、化合物(B)はポリイソシアネート、特にイソシアネート、特にイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートであってよい。ここでもまた、化合物(2)は、好ましくはε−カプロラクトンである。
【0030】
さらに別の態様において、クリアコート組成物は、直前に記載されたように、(1)第一カルバメートまたは第一ウレア基およびヒドロキシル基を含む化合物と、(2)ラクトンまたはヒドロキシカルボン酸との反応によって製造される第一の材料(A)とを反応させ、反応生成物上のヒドロキシル基を、カルバメート基、あるいはヒドロキシル基およびカルバメートあるいはウレア基あるいはカルバメートまたはウレアに変換されうる基と反応する基を含む化合物に変換する第二の材料(B)と、さらに反応させた反応生成物であるカルバメート官能性あるいはウレア官能性材料を含んでもよい。ヒドロキシル基は、例えば、これらに制限されないが、モノイソシアネート、例えばメチルイソシアネートおよびブチルイソシアネートと反応することができ、それは反応して第二のカルバメート基;シアン酸(ウレアの熱分解によって形成される)を形成し、ヒドロキシル基と反応して、第一カルバメート基;あるいはホスゲンを形成し、引き続きアンモニア(第一カルバメート基)あるいは第一級アミン(第二カルバメート基)と反応させることができる。
【0031】
他の実施態様において、クリアコート組成物は、(1)少なくとも1つのポリイソシアネートおよび活性水素含有鎖延長剤を含む混合物の反応生成物である第一の材料と、前記の第一の材料およびカルバメート基あるいはカルバメートに変換されうる基と反応する基を含む化合物(2)との反応生成物であるカルバメート官能性あるいはウレア官能性材料を含んでもよい。材料(1)の適した例は、これらに制限されないが、少なくとも1つのジイソシアネート、トリイソシアネート、それらのイソシアヌレートあるいはビウレット、前記の化合物の混合物、および1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメチロール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル 3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、1,4−ブタンジオール、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの鎖延長剤を含む混合の反応生成物を含む。化合物(2)の適した例は、これらに制限されないが、ヒドロキシエチルカルバメート、ヒドロキシブチルカルバメート、ヒドロキシプロピルカルバメート、およびそれらの組み合わせを含む。
【0032】
クリアコート塗料組成物はさらに、1つあるいはそれより多くのアミノプラスト架橋剤を含む。有用な架橋剤は、これらに制限されないが、活性メチロールあるいはメチルアルコキシ基を有する材料を含む。前記硬化剤化合物の例は、メラミンホルムアルデヒド架橋剤を含み、前記架橋剤は、モノマーのあるいはポリマーのメラミンホルムアルデヒド樹脂および部分的または完全にアルキル化されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、ウレア樹脂、およびメチロールウレア、例えばウレアホルムアルデヒド樹脂、アルコキシウレア、例えばブチル化されたウレアホルムアルデヒド樹脂を含んでいる。
【0033】
特定の実施態様において、アミノプラスト架橋剤は、不揮発性ベヒクルに対して少なくとも約5質量%、より好ましくは少なくとも約10質量%であってよい。"不揮発性ベヒクル"は、膜形成成分を指す。不揮発性ベヒクルに対して、アミノプラスト架橋剤が約40質量%まで、より好ましくは約30質量%までであることもまた好ましい。特定の実施態様において、架橋剤は、不揮発性ベヒクルに対して、約5質量%〜約40質量%、より好ましくは約10質量%〜約35質量%、さらにより好ましくは、約15質量%〜約35質量%であってよい。
【0034】
クリアコート塗料組成物は、硬化反応を促進する触媒を含んでもよい。例えば、特にモノマーのメラミンを硬化剤として用いる場合、硬化反応を促進するために強酸触媒を使うことができる。前記の触媒は、当該技術分野においてよく知られており、これらに制限されないが、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、モノブチルマレアート、ブチルホスフェート、およびヒドロキシホスフェートエステルを含む。強酸触媒は、多くの場合、例えばアミンでブロックされる。
【0035】
1つの溶剤あるいは複数の溶剤が、本発明の実施で使用される塗料組成物内で用いられる。一般に、溶剤は任意の有機溶剤および/または水であってよい。1つの好ましい実施態様において、溶剤は極性の有機溶剤を含む。より好ましくは、溶剤は、極性脂肪族溶剤あるいは極性芳香族溶剤から選択される1つあるいはそれより多くの有機溶剤を含む。さらにより好ましくは、溶剤は、ケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、非プロトン性アミン、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む。有用な溶剤の例は、これらに制限されないがメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、m−アミルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、N−メチルピロリドン、芳香族炭化水素の配合物、およびそれらの混合物を含む。他の好ましい実施態様において、溶剤は、水あるいは水と少量の助溶剤との混合物である。
【0036】
本発明による塗料組成物は、自動車用合成カラープラスクリア(color−plus−clear)被膜のクリアコートとして有用である。添加剤、例えば界面活性剤、安定剤、湿潤剤、流動制御剤、分散剤、定着剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤などが、塗料組成物内に組み入れられる。
【0037】
塗料組成物は、当該技術分野で公知の多くの任意の手法によって物体上に塗布され得る。それらは、例えば、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングおよびその種のものを含む。自動車の車体板には、スプレーコーティングが好ましい。
【0038】
本発明による塗料組成物は、合成カラープラスクリア被膜のクリアコートとして用いられる。上にそれを適用される着色のベースコート組成物は、多くのタイプが当該技術分野で公知であり、ここで詳細な説明は必要とされない。当該技術分野でベースコート組成物として有用と知られるポリマーはアクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキド、およびポリシロキサンを含む。好ましいポリマーは、アクリルおよびポリウレタンを含む。本発明の1つの好ましい実施態様において、ベースコート組成物もカルバメート官能性アクリルポリマーを使用する。ベースコートポリマーは、熱可塑性であってよいが、好ましくは架橋可能で、且つ1つあるいはそれより多くタイプの架橋可能な官能基を含む。前記の基は、例えば、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シラン、およびアセトアセテート基を含む。前記の基は、前記の方法で覆われるか、あるいはブロックされていてもよく、それらは非ブロック化されて所望の硬化条件、一般的には高温下で、硬化反応が利用できる。有用な架橋可能な官能基は、ヒドロキシ、エポキシ、酸、無水物、シラン、およびアセトアセテート基を含む。好ましい架橋可能な官能基は、ヒドロキシ官能基およびアミノ官能基を含む。
【0039】
ベースコートポリマーは、自己架橋可能か、あるいはポリマーの官能基と反応する別途架橋剤が必要であってもよい。ポリマーがヒドロキシ官能基を含むとき、例えば、架橋剤はアミノプラスト樹脂、イソシアネートおよびブロックトイソシアネート(イソシアヌレートを含む)、および酸あるいは無水物官能性架橋剤であってよい。
【0040】
クリアコート塗料組成物は、ベースコート塗料組成物上に、本産業で広く行われているウェット・オン・ウェット(wet−on−wet)で適用される。ここで記載される塗料組成物は、好ましくは被膜層が硬化するような条件にさらされる。様々な硬化方法が使われ得るが、熱硬化が好ましい。一般に熱硬化は、被覆した物品を、主に輻射加熱源によって供給される高温、一般には90℃〜180℃の間の温度にさらすことによって実施される。特定の実施態様において、硬化温度は115℃〜150℃の間であってよく、典型的には115℃〜140℃の間の温度がブロックト酸−触媒系に用いられる。非ブロックト酸−触媒系には、硬化温度は典型的には80℃〜100℃の間であってよい。硬化時間は使用される特定の構成要素、および層厚などの物理的パラメーターによって異なるが、典型的な硬化時間は15〜60分の時間範囲、より一般的には、ブロックト酸−触媒系に対して15〜25分、非ブロックト酸−触媒系に対して10〜20分である。硬化時間は、金属の温度がベーク温度("メタル温度")に到達したあとの時間として表されてもよい。例えば、硬化時間は、メタル温度で5〜30分、好ましくは10〜20分であってよい。
【0041】
自動車用被膜のクリアコート層の修繕方法において、クリアコート層を、必要であれば欠陥を除去するために砂で磨き、そこで本発明のクリアコート塗料組成物を前記クリアコート層の少なくとも一部分に適用して第二のクリアコート層を形成し、その後硬化させる。第二のクリアコート層は、既に言及したように、265℃、15分間から、300゜F、30分間で硬化できる。本発明のクリアコート組成物は、硬化した第一のクリアコート層上に適用された場合、密着力に著しい改善を提供する。
【0042】
本発明は、以下の実施例によって例示される。実施例は、ただの例示であり、記載され特許請求された本発明の目的を限定しない。特に注記されない限り、全ての成分は質量での成分である。
実施例
【表1】

【0043】
クリアコート組成物を、BASF Corporationの商品、R10CG069(lot101319739)を用い、非線形シロキサン樹脂(Aromatic 100中、69.5% N.V.カルビノール官能性シロキサン樹脂、25モルパーセントの−OSi(CH32((CH22(CH32OH)、72.7モルパーセントの
【化5】

、釣り合う−OSi(CH32O−)を添加して上記の表に示されるように製造した。
【0044】
密着試験を以下のように行った。4X12インチの電着塗布(Cathogard310B)パネルを、BASF社のG27AM127粉末プライマーで下塗りした。次いでパネルをBASF社のR174KW502でベースコートし、クリアコーティングの前に室温で5分間フラッシュした。そしてベースコート−クリアコート複合材を、メタル温度285゜Fで20分間ベークした。ベークの後、パネルを再度クリアコートし、285゜Fで20分間ベークした。冷却の後、パネルを1mmのクロスハッチ器でけがいた。スコッチブランド(Scotch Brand)898接着テープを、けがいた領域の上から貼り、そして引きはがした。第二の被膜のクリアコートが少しでも第一の被膜から剥がれた場合、結果は不合格として記録した。何も剥がれなければ、結果は合格として記録した。
【0045】
実施例4および5は密着試験に合格した。
【0046】
本発明の記載は、単に現存しているものを例示しているに過ぎず、故に、本発明の要旨から逸脱することのない変形物は、本発明の範囲内であるとされる。前記の変形物とは、本発明の意図と範囲から逸脱するとは見なされないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含む塗料組成物において、
カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂が、
【化1】

[式中、
Rは5つ以下の炭素原子を有するヒドロカルビル基]
の構造を含むことを特徴とし、前記被膜がクリアコート塗料組成物であることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
Rが3つの炭素原子を有するヒドロカルビル基であることを特徴とする、請求項1に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項3】
Rが、−CH2CH2CH2−であることを特徴とする、請求項2に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項4】
カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂が、構造
【化2】

を有する少なくとも20モルパーセントのモノマー単位を含むことを特徴とする、請求項2に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項5】
約0.1〜約20質量パーセントのカルビノール官能性非線形シロキサン樹脂を含む、請求項1に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項6】
カルバメート官能性膜形成材料が、カルバメート基を有するアクリルポリマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項7】
カルバメート官能性膜形成材料が、
(1)第一級カルバメート基およびヒドロキシル基を含む化合物と、(2)化合物(1)の多数の分子上のヒドロキシル基と反応するが、化合物(1)上のカルバメート基とは反応しない化合物との反応生成物であるカルバメート官能性材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項8】
アミノプラスト架橋剤がメラミンホルムアルデヒド樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載のクリアコート塗料組成物。
【請求項9】
自動車用クリアコート被膜の一領域の修繕方法において、
自動車用クリアコート被膜を適用して成膜し、カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含むクリアコート塗料組成物を硬化し、そして
自動車用クリアコート被膜の修繕される領域に、カルバメート官能性膜形成材料、カルビノール官能性シロキサン樹脂、およびアミノプラスト架橋剤を含む第二のクリアコート塗料組成物を適用し、第二の層を硬化させることを含む方法。
【請求項10】
カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂が、構造
【化3】

[式中、
Rは3つの炭素原子を有するヒドロカルビル基である]
を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Rが、−CH2CH2CH2−であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カルビノール官能性非線形シロキサン樹脂が、構造
【化4】

を有する、少なくとも20モルパーセントのモノマー単位を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
約0.1〜約20質量パーセントのカルビノール官能性非線形シロキサン樹脂を含む、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−531528(P2009−531528A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503147(P2009−503147)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/064262
【国際公開番号】WO2007/112222
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】