説明

カルボスチリル誘導体アミン塩

本発明は、式(1):


[式中、Rはハロゲン原子、カルボスチリル骨格上の側鎖の置換位置は3位または4位であり、該カルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は一重結合または二重結合である]
で示されるカルボスチリル誘導体とアミンから形成されるカルボスチリル誘導体アミン塩を提供するものであり、そのすぐれた水溶性とすぐれた薬理作用により各種疾病治療用医薬、とくに水性製剤として有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用な新規なカルボスチリル誘導体アミン塩、さらに詳しくは、式(1):
【化1】

[式中、Rはハロゲン原子であり、該カルボスチリル骨格上の側鎖の置換位置は3位または4位であり、またカルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は一重結合または二重結合である]で示されるカルボスチリル誘導体とアミンから形成されるカルボスチリル誘導体アミン塩、ならびに該カルボスチリル誘導体アミン塩を有効成分とする医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
上記一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体は抗潰瘍剤として有用であることが知られている(特許文献1)。その誘導体の代表例である2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸は医薬として市販されているが、該化合物は水への溶解性が極めて低いために、それの製剤は内服の固形製剤と懸濁型の液剤(懸濁点眼剤、注腸剤、含嗽剤)に制限されている。懸濁型の液剤では、含量が均一に保ちにくいこと、粒度分布のコントロールが必要であること、懸濁化剤、分散剤等が必要であること、オートクレーブによる最終滅菌あるいは濾過滅菌ができない等の製造上の問題点を有している。それに対して、溶液状態の製剤は、固形製剤や懸濁型の液剤に比べて、吸収が早い等の利点を有しており、該カルボスチリル誘導体を注射剤、点眼剤、内用液剤、注腸剤、含嗽剤、点耳剤、点鼻剤、外用剤等の溶液状態の製剤に調製することが望まれている。
上記一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体及びその製法は特許文献1に記載されている。また該カルボスチリル誘導体がビスマスと塩を形成すること及びカルボン酸ビスマス錯体及びジアミン誘導体又はピペラジン誘導体の塩を形成することも知られている(特許文献2及び3)。しかし、これらの塩も水への溶解性が低い。
【特許文献1】特公昭63−35623号公報
【特許文献2】WO95/12579号公報
【特許文献3】特開平8−295673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題点を克服した一般式(1)で示されるカルボスチリル誘導体の新規な塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、水への溶解性がすぐれた式(1)で示されるカルボスチリル誘導体の塩を見出すべく種々研究を重ねた結果、前記式(1)で示されるカルボスチリル誘導体のアミン塩が目的の優れた水への溶解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は下記の種々の態様を含む。
1.式(1)
【化2】

[式中、R、側鎖の置換位置およびカルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は前記と同意義]で表されるカルボスチリル誘導体とアミンから形成されるカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0006】
2.該カルボスチリル誘導体(1)が2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸である上記1に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0007】
3.該アミンが、L−アルギニンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0008】
4.該アミンが、L−リジンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0009】
5.該アミンが、エチレンジアミンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0010】
6.該アミンが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0011】
7.該アミンが、モノエタノールアミンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0012】
8.該アミンが、ジエタノールアミンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0013】
9.該アミンが、ジイソプロパノールアミンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0014】
10.該アミンが、メグルミンである上記2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【0015】
11.上記1〜10のいずれかに記載のカルボスチリル誘導体アミン塩を有効成分とする医薬製剤。
【0016】
12.上記式(1)で示されるカルボスチリル誘導体とアミンからなり、用時水性溶媒を添加して水性溶液製剤とする、用時調製用医薬製剤。
【0017】
13.該カルボスチリル誘導体(1)が2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸である上記12に記載の用時調製用医薬製剤。
【0018】
14.該アミンが、L−アルギニンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0019】
15.該アミンが、L−リジンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0020】
16.該アミンが、エチレンジアミンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0021】
17.該アミンが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0022】
18.該アミンが、モノエタノールアミンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0023】
19.該アミンが、ジエタノールアミンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0024】
20.該アミンが、ジイソプロパノールアミンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0025】
21.該アミンが、メグルミンである上記13に記載の用時調製用医薬製剤。
【0026】
上記式(1)におけるR基のハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。
【0027】
上記のアミンとしては、アミノ酸、水酸基及びアミノ基なる群から選ばれる基を有していてもよい低級アルキル基置換アミン、アミノ糖等を挙げることがでる。アミノ酸としては、例えば、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒスチジン、β−アミノアラニン、γ−アミノブチリン、オルニチン、δ−ヒドロキシリジン、カナバニン、ロンブリシン、ホモアルギニン、γ−ヒドロキシホモアルギニン、γ−ヒドロキシ−L−アルギニン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、β−アミノイソ酪酸、γ−アミノ−β−メチレン酪酸、クレアチン、ロードイックアシッド、サルコシン、γ−アミノ−α−メチレン酪酸、キュヌレニン、アグリチン、L−トリプトファン、イボテン酸、ラチリン、トリコロミックアシッド、クイスクアリックアシッド、リナチン、エルゴチオネイン、クレアチニン、シクロセリン等の塩基性アミノ酸を挙げることができる。
【0028】
水酸基及びアミノ基なる群から選ばれる基を有していてもよい低級アルキル基置換アミンとしては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ヒドロキシメチルアミン、(2−ヒドロキシエチル)アミン、1−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2,3−ジヒドロキシエチルアミン、4−ヒドロキシブチルアミン、3,4−ジヒドロキシブチルアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、5−ヒドロキシペンチルアミン、6−ヒドロキシヘキシルアミン、2−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、2,3,4−トリヒドロキシブチルアミン、アミノメチルアミン、1−アミノエチルアミン、3−アミノプロピルアミン、2,3−ジアミノエチルアミン、4−アミノブチルアミン、3,4−ジアミノブチルアミン、1,1−ジメチル−2−アミノエチルアミン、5−アミノペンチルアミン、6−アミノヘキシルアミン、2−メチル−3−アミノプロピルアミン、2,3,4−トリアミノブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、N−メチル−N−エチルアミン、N−エチル−N−プロピルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N−メチル−N−ヘキシルアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−メチル−N−(2−アミノエチル)アミン、N−(2−アミノエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン等の水酸基及びアミノ基なる群から選ばれる基を1〜3個有していてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が1〜3個置換したアミンを挙げることができる。
【0029】
アミノ糖としては、例えば、メグルミン(すなわち、N−メチル−D−グルカミン)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−マンノサミン、ミコサミン、カノサミン、ネオサミンC、N−メチル−L−グルコサミン、ミカミノース、ムラミックアシッド、ストレプタミン等のアミノ糖を挙げることができる。
【0030】
アミノ酸の中では、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒスチジン等の塩基性アミノ酸が、水酸基及びアミノ基なる群から選ばれる基を有していてもよい低級アルキル基置換アミンの中では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が、アミノ糖の中では、メグルミン、D−グルコサミン等が特に好ましい。
【0031】
カルボスチリル誘導体アミン塩の製造法は、適当な溶媒中アミンと反応させることにより製造される。ここで使用される溶媒としは、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水等又はこれらの混合溶媒等を挙げることができる。該反応は、通常室温〜150℃、好ましくは、室温〜120℃付近にて、数分〜7日間程度にて終了する。アミンの使用量は、カルボスチリル誘導体に対して少なくとも0.1倍モル、好ましくは0.1モル〜2倍モル量使用するのがよい。
カルボスチリル誘導体自体の解離を防止するために反応系内に塩酸等の酸を添加してもよい。
また、該カルボスチリル誘導体アミン塩は、塩として単離することなく、カルボスチリル誘導体の水溶性溶媒中の溶液にアミンを添加して、水溶性溶媒の溶液状態の製剤を製造するときに形成させてもよい。
【0032】
本発明の化合物は、抗潰瘍作用、内因性プロスタグランジンE2量を増加させる作用、活性酸素消去または抑制作用、IL−8産生抑制作用、顆粒球活性化抑制作用、顆粒球接着因子発現抑制作用等を有し、抗潰瘍剤、胃炎治療剤、プロスタグランジンE2に由来する薬効、例えば潰瘍の予防および治療剤、抗酸化剤、急性または慢性炎症性疾患の予防、保護、または治療剤として有用である。また人工臓器、人工血管の生体適合性を高めるためにも有用である。その上、本発明の化合物は、特に消化器系の潰瘍および炎症の再発防止にも優れている。
炎症性疾患としては、炎症性角化症(乾癬など)、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎等の炎症性皮膚疾患、慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーテス(SLE)、ベーチェット病等の慢性炎症性疾患である自己免疫疾患、B型肝炎、C型肝炎、アルコール性肝炎、薬物アレルギー性肝炎等の炎症性肝疾患、腎炎、糸球体腎炎等の炎症性腎疾患、気管支炎等の炎症性呼吸器疾患、口内炎、喉頭炎、声帯炎、音声障害、人工臓器・人工血管使用時に起こる炎症、非ステロイド性消炎剤による消化管粘膜障害、腸粘膜障害などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記腸粘膜障害としては、単純性原発性小腸潰瘍、非特異性結腸潰瘍、非特異性炎症による潰瘍性大腸炎、クローン(Crohn)病等の原因不明のもの等があり、さらに感染、循環障害、膠原病、放射線、薬剤等が原因で起こる障害等を挙げることができる。
【0033】
さらに本発明の化合物は、ソマトスタチン分泌低下抑制作用、抗糖尿病作用、ウレアーゼ阻害作用等を有し、ソマトスタチン低下抑制剤、抗糖尿病薬、ウレアーゼ阻害剤として有用である。
該ウレアーゼ阻害作用に基づき、本発明の化合物は、種々の細菌の増殖によりウレアーゼ活性が上昇し、アンモニアが産生することにより起こると考えられる疾患の予防、治療に有用であり、例えば、H.ピロリーの増殖によりアンモニアが産生して起こると考えられている胃粘膜障害等の予防、治療に利用され得る。また、腸管内のアンモニアの産生を抑制することにより高アンモニア血症および高アンモニア血症に伴う症状の改善、治療、具体的には肝炎、肝硬変等の肝疾患で起こる肝性脳症、精神神経障害、脳波異常、手指振戦の予防、治療に利用できる。
【0034】
本発明の化合物は、さらに、眼のゴブレット細胞の増加作用、眼の粘液増加作用、角膜上皮細胞の増殖促進作用、さらに涙液増加作用を有し、ドライアイ、すなわち眼球乾燥症候群の治療剤として有用である。すなわち、本発明の化合物は、眼のゴブレット細胞を増加することによってムチンの産生量を増加し、ドライアイにみられるムチンの減少を防ぐ一方、眼の粘液量を増加して水層を保持する。また、涙液量の増加作用を示し、ドライアイ治療剤として有用である。さらに、本発明の化合物はドライアイ症状を示すシェーグレン症候群やスチーブンジョンソン症候群にも有用であるばかりでなく、ドライアイに起因する2次疾患あるいはゴブレット細胞や粘液量の低下によって起こる種々の眼疾患の予防および/または治療剤として有用である。ドライアイを患った眼球は非常に傷つき易い。したがって、本発明の化合物は角膜上皮細胞の増殖作用を有するため、眼の創傷、特に角膜上皮の創傷治療剤あるいは眼手術(白内障、硝子体、縁内障)時の眼内潅流および洗浄剤等としても有用である。
【0035】
本発明の化合物の医薬組成物は、有効成分としのカルボスチリル誘導体アミン塩を製剤化して一般的な医薬製剤の様々な形態に調製される。本発明の医薬製剤としては、特に注射剤、点眼剤、内用液剤、注腸剤、含嗽剤、点耳剤、点鼻剤、外用剤等の水性溶液製剤が好ましいが、他の通常の医薬製剤の形態、例えば、錠剤、丸剤、散剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、エアゾール剤、シロップ剤なども含まれる。
本発明の水性溶液製剤は、該カルボスチリル誘導体アミン塩を水、生理食塩水などの水性溶媒中に添加して調製される。また、用時調製用医薬製剤では、該カルボスチリル誘導体とアミンからなり、用時水性溶媒を添加して製剤中でカルボスチリル誘導体アミンを形成させて水性溶液製剤とすることができる。
本発明の医薬製剤の調製には、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、香料、風味料、甘味料、着色料などの添加剤あるいは賦形剤を用いることもできる。また、樹脂などに配合して徐放性を高めて使用することもできる。本発明の製剤を眼疾患治療剤として用いる場合には、その適応症に応じて、眼適用製剤、例えば点眼剤、眼軟膏剤等の形に調製するのが特に好ましい。
【0036】
本発明の注射剤を調製する場合には、液剤、乳剤または懸濁剤として調製され、それらは、通常、殺菌され、かつ血液と等張であるのが好ましい。これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に成形するのに際しては、希釈剤としてこの分野において広く使用されているものをすべて使用でき、例えば、水、エチルアルコール、プロピレングリコール等の溶剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール等のステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等の乳化剤、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の懸濁化剤などを挙げることができる。

なお、この場合等張性の注射溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはD−マンニトール等を該治療剤中に含有せしめてもよく、また通常のポリソルベート80等の溶解補助剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、乳酸等の緩衝剤、グリセリン等の無痛化剤などを、更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品を該治療剤中に含有せしめてもよい。
【0037】
点眼剤、眼軟膏剤等の眼適用製剤は、通常の眼科用製剤担体(希釈剤)を用い常法に従って製造される。すなわち、該有効成分を適当な基剤と混合し、滅菌処理することにより製造される。例えば、眼軟膏剤を製造するには、慣用の乳剤性基剤、水溶性基剤、懸濁性基剤等を使用できる。これら基剤の代表例としては、例えば白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等を例示できる。また、点眼剤を製造するには、滅菌蒸留水を代表的な希釈剤として使用できる。さらに、眼適用医薬製剤には必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐剤、等張化剤、pH調整剤等を配合することができる。溶解補助剤としては例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレングリコールエーテル類、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート等のポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。緩衝剤としては、例えばリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。防腐剤としては、例えばクロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェニル水銀塩、チメロサル、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン等が挙げられる。等張化剤としては、例えば食塩、ブドウ糖、D−マンニトール、グリセリン等が挙げられる。またpH調整剤としては、例えば水酸化ナトリウム、塩酸等が挙げられる。
【0038】
錠剤の形態に成形するに際しては、この分野で従来公知の成分を広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸などの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などが例示できる。さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0039】
丸剤の形態に成形するに際しては、この分野で従来公知の成分を広く使用でき、例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などが例示できる。坐剤の形態に成形するに際しては、従来公知の成分を広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを挙げることができる。
【0040】
エアゾール剤は、通常、殺菌された液剤または懸濁剤とし、これに噴射剤を配合して調製される。これら液剤および懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において広く使用されているものすべて使用でき、例えば上記注射剤用希釈剤で挙げたものを例示できる。噴射剤としては、この分野において広く使用されているものすべて使用でき、例えば、フロン12等の塩化フッ化炭素、フロン123等の液化ガス噴射剤、さらに窒素、炭酸ガス等の圧縮ガス噴射剤が挙げられる。またこのエアゾール剤には、通常の溶解補助剤、緩衝剤など、更に必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などを含有せしめてもよい。
【0041】
本発明の薬剤に含有されるべきカルボスチリル誘導体アミン塩の量はとくに限定されず広範囲に選択されるが、通常全組成物中1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%である。眼疾患治療剤としてとくに好ましい眼適用医薬製剤の場合は、通常、製剤組成物全量当り約0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%とするのが良い。また、投与方法には特に制限はなく、本医薬製剤は各種製剤形態、患者の年令、性別その他の条件、並びに疾患の程度などに応じた方法で投与され得る。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、シロップ剤およびカプセル剤の場合には経口投与される。また注射剤の場合には単独であるいはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、さらには必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。また、眼適用医薬製剤は従来の眼適用製剤と同様に、例えば、眼軟膏剤の場合には眼に塗布され、また、点眼剤の場合は従来の点眼剤と同様の方法で投与でき、例えば適当な点滴容器から眼に1〜2滴滴下するか、または噴霧装置により眼に噴射すれば良い。
【0042】
本発明の薬物の投与量は、投与方法、患者の年齢、性別その他の条件、並びに疾患の程度により適宜選択されるが、通常カルボスチリル誘導体(1)に換算して1日当り体重1kg当り0.6〜50mgとするのがよい、また、投与単位形態中に有効成分を10〜1000mg含有せしめるのがよい。また、眼適用医薬製剤、例えば点眼剤または眼軟膏剤は1日当たり1〜15回、好ましくは1〜10回の範囲で投与される。
【発明の効果】
【0043】
本発明のカルボスチリル誘導体アミン塩は、水に対する溶解性にすぐれ、注射剤、点眼剤、内用液剤、注腸剤、含嗽剤、点耳剤、点鼻剤、外用剤等の溶液状態の製剤の調製に有用である。特に、含量が均一に保ちやすく、粒度分布のコントロールが不要であり、懸濁化剤、分散剤等の添加が不要であり、オートクレーブによる最終滅菌あるいは濾過滅菌が容易であるなどの利点があり、所望の製剤を工業的に簡便に容易に製造することができる。特に本発明の点眼液は、懸濁型の液剤にみられる煩雑な使用時の再分散をする必要もなく、視界の妨げがない等使用感がよくなる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
つぎに実施例、製剤例および薬理実験を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0045】
実施例1
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・L−アルギニン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(3.88g,10.5mmol)、L−アルギニン(2.00g,11.5mmol)のエタノール(200mL)懸濁液を30分間還流させた。水(20mL)を加えて還流を継続すると一時的に完全に溶解した。その後、還流下で析出物が生じた。加熱をやめて室温まで冷却後、さらに氷水で冷却した。析出物をヌッチェを用いてろ取し、それをヌッチェ上にてエタノールで洗浄した。50℃で20時間送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・L−アルギニン塩(5.38g,95%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 1.43 - 1.92 (4H, m), 2.95 - 3.85 (5H, m), 4.41 - 4.58 (1H, m), 6.42 (1H, s), 7.20 (1H, dd, J = 8.1, 7.6 Hz), 7.30 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.47 (1H, dd, J = 8.2, 7.6 Hz), 7.49 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.81 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.96 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.34 ppm (1H, d, J = 8.2 Hz).
【0046】
実施例2
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・L−リジン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(1.94g,5.23mmol)、L−リジン(0.84g,5.76mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水(25mL)を加えて還流を継続すると反応生成物は完全に溶解した。その後、還流下で析出物が生じた。加熱をやめて室温まで冷却後、さらに氷水で冷却した。析出物をヌッチェを用いてろ取し、それをヌッチェ上にてエタノールで洗浄した。60℃で終夜送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・L−リジン塩(1.46g,54%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 1.18 - 1.80 (6H, m), 2.74 (2H, br.d, J = 6.7 Hz), 3.08 (1H, br.dd, J = 13.6, 9.8 Hz), 3.29 (1H, br.t, J = 5.8 Hz), 3.43 - 3.59 (1H, m), 4.48 (1H, br.ddd, J = 9.8, 8.0, 3.6 Hz), 6.44 (1H, s), 7.18 (1H, dd, J = 8.1, 7.5 Hz), 7.31 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.45 (1H, dd, J = 7.9, 7.5 Hz), 7.48 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.81 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.96 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.40 ppm (1H, d, J = 8.0 Hz)
【0047】
実施例3
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・1/2エチレンジアミン塩
(A):2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(2.00g,5.39mmol)、エチレンジアミン(0.18mL,2.69mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水を5mLずつ溶解するまで加えた。全部で35mLの水を加えた時点で完全に溶解した。その後、加熱をやめて室温まで冷却すると結晶が析出した。反応混合物をさらに氷水で冷却後、析出物をヌッチェを用いてろ取し、60℃で送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・1/2エチレンジアミン塩(1.92g,89%収率)を得た。
(B):2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(2.00g,5.39mmol)、エチレンジアミン(0.40mL,5.98mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水を5mLずつ反応生成物が溶解するまで加えた。全部で25mLの水を加えた時点で、反応生成物は完全に溶解した。その後、加熱をやめて室温まで冷却したが結晶が析出しなかったため溶媒を減圧で留去した。残渣にエタノール(50mL)を加えて還流下で分散洗浄後、室温まで冷却した。結晶をヌッチェを用いてろ取し、60℃で送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・1/2エチレンジアミン塩(1.96g,91%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 2.87 (2H, s), 3.11 (1H, br.dd, J = 13.9, 9.8 Hz), 3.52 (1H, br.dd, J = 13.9, 3.5 Hz), 4.50 - 4.57 (1H, m), 6.41 (1H, s), 7.20 (1H, dd, J = 8.0, 7.6 Hz), 7.30 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.48 (1H, dd, J = 8.0, 7.5 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.80 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.93 (1H, d, J = 7.6 Hz), 8.40 ppm (1H, d, J = 8.0 Hz).
【0048】
実施例4
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(2.00g,5.39mmol)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(0.72g,5.94mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水を5〜10mLずつ反応生成物が溶解するまで加えた。全部で40mLの水を加えた時点で、反応生成物は完全に溶解した。その後、加熱をやめて室温まで冷却、さらに氷水で冷却したものの結晶が析出しなかったため溶媒を減圧で留去した。残渣にエタノールを加え、該混合物を減圧濃縮した。残渣にエタノール(50mL)を加えて室温下撹拌した。析出物をヌッチェを用いてろ取し、60℃で送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩(2.58g,97%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 3.07 (1H, br.dd, J = 13.8, 10.1 Hz), 3.47 (6H, s), 3.54 (1H, br.dd, J = 13.9, 3.3 Hz), 4.49 - 4.56 (1H, m), 6.41 (1H, s), 7.21 (1H, dd, J = 8.1, 7.7 Hz), 7.31 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.45 (1H, dd, J = 8.1, 7.5 Hz), 7.51 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.81 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.94 (1H, d, J = 7.7 Hz), 8.38 ppm (1H, d, J = 8.3 Hz).
【0049】
実施例5
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・ジエタノールアミン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(2.00g,5.39mmol)、ジエタノールアミン(0.62g,5.90mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水を加えなくても反応生成物は完全に溶解した。その後、加熱をやめて該混合物を室温まで冷却、さらに氷水で冷却した。生じた析出物をヌッチェを用いてろ取し、60℃で送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・ジエタノールアミン塩(1.95g,76%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 2.89 (4H, t, J = 5.4 Hz), 3.10 (1H, br.dd, J = 13.9, 9.9 Hz), 3.52 (1H, br.dd, J = 13.9, 3.6 Hz), 3.61 (4H, t, J = 5.4 Hz), 4.50 - 4.56 (1H, m), 6.41 (1H, s), 7.21 (1H, dd, J = 8.1, 7.6 Hz), 7.31 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.48 (1H, dd, J = 8.1, 7.5 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.81 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.94 (1H, d, J = 7.6 Hz), 8.44 ppm (1H, d, J = 8.2 Hz).
【0050】
実施例6
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・ジイソプロパノールアミン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(2.00g,5.39mmol)、ジイソプロパノールアミン(0.79g,5.93mmol)のエタノール(100mL)懸濁液を30分間還流させた。水を加えなくても完全に溶解した。その後、加熱をやめて室温まで冷却、さらに氷水で冷却した。析出物をヌッチェを用いてろ取し、60℃で送風乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・ジイソプロパノールアミン塩(1.66g,61%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 1.07 (3H, d, J = 6.2 Hz), 1.13 (3H, d, J = 6.2 Hz), 2.54 - 2.68 (2H, m), 2.77 (2H, dd, J = 12.2, 3.5 Hz), 3.08 - 3.18 (1H, m), 3.43 - 3.56 (1H, m), 3.75 - 3.92 (2H, m), 4.47 - 4.60 (1H, m), 6.41 (1H, s), 7.21 (1H, dd, J = 8.0, 7.7 Hz), 7.30 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.49 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.81 (2H, d, J = 8.6 Hz), 7.93 (1H, d, J = 7.7 Hz), 8.48 ppm (1H, d, J = 8.1 Hz).
【0051】
実施例7
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・メグルミン塩
2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸(3.7g,10mmol)に1mol/Lメグルミン水溶液(10mL,10mmol)を加え、50℃で加熱溶解させた。これにメグルミンと塩酸の等モル混合水溶液(0.5mol/L;20mL)を添加した後に冷却した。析出物をろ取し、水洗後に室温で減圧乾燥して、白色晶として2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸・メグルミン塩(0.9g,16%収率)を得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ= 2.82 - 3.14 (3H, m), 3.37 - 3.73 (6H, m), 3.82 - 3.94 (1H, m), 4.52 (1H, ddd, J = 9.6, 8.2, 3.5 Hz), 6.41 (1H, s), 7.20 (1H, dd, J = 8.0, 7.2 Hz), 7.30 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.48 (1H, dd, J = 7.8, 7.2 Hz), 7.51 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.80 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.94 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.37 ppm (1H, d, J = 8.2 Hz).
【0052】
実施例8
25℃水に対する溶解度試験
化合物A:2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸
<試料溶液の調製>
上記実施例1〜7で得られた塩0.5gを50mL遠沈管にとり、水5mLを加え、25℃の恒温槽中、振とう機で3時間振とうした(メグルミン塩については、5日間)。振とう後、該混合物を0.45μm(メグルミン塩については、0.2μm)のメンブランフィルターで濾過した。ろ液1mLを正確にとり、50%DMFを加えて正確に50mLとした。この液2mLを正確にとり、50%DMFを加えて正確に20mLとし、試料溶液とした。
<標準溶液の調製>
化合物A0.01gにジメチルホルムアミド(DMF)5mLを加えて溶かし、50%DMFを加えて正確に100mLとし、標準溶液(1)とした。標準溶液(1)5mLを正確にとり、50%DMFを加えて正確に10mLとし、標準溶液(2)とした。標準溶液(1)1mLを正確にとり、50%DMFを加えて正確に10mLとし、標準溶液(3)とした。標準溶液(3)1mLを正確にとり、50%DMFを加えて正確に10mLとし、標準溶液(4)とした。
<クロマトグラフィ>
試料溶液及び標準溶液10μLにつき、次の試験条件により、液体クロマトグラフ法により試験を行った。標準溶液(1)〜(4)より得られた化合物Aのピーク面積と化合物Aの濃度で検量線を作成し、この検量線を用いて、試料溶液の化合物Aのピーク面積より試料溶液の化合物A濃度を算出し、希釈倍率で補正して、各種塩の溶解度(%)をもとめた。



【0053】
実施例9
塩を取りだすことなく用時調製での25℃に対する溶解度試験
化合物Aに各アミンを等モル加え、全溶解しない範囲で水を添加し、25℃の恒温槽中で7日間振とうした。その後アルギニン添加試料については懸濁液を0.2μmのメンブランフィルターでろ過した。リジン、ジイソプロパノールアミン、メグルミン、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンが加えられた試料については、溶液部分が固化してろ過できなかったため、ろ過が可能になるまでさらに水を加えた後0.2μmのメンブランフィルターでろ過した。実施例8と同様にしてHPLCを用いて各種塩の溶解度(%)をもとめた。

【0054】
製剤例1

上記各成分を蒸留水に溶解し、適当なフィルターを用いて滅菌濾過して点眼剤の形態を有する本発明薬剤を製造した。
【0055】
製剤例2

本発明化合物、アビセル、コーンスターチおよびステアリン酸マグネシウムを混合粉砕後、糖衣R10mmの杵で打錠した。得られた錠剤をヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール−6000、ヒマシ油およびメタノールからなるフィルムコーティング剤で被覆を行ないフィルムコーティング錠を製造した。
【0056】
製剤例3

【0057】
本発明化合物、クエン酸、乳糖、リン酸二カルシウム、プルロニックF−68およびラウリル硫酸ナトリウムを混合する。上記混合物をNo.60スクリーンでふるい、ポリビニルピロリドン、カルボワックス1500および6000を含むアルコール性溶液で湿式造粒する。必要に応じてアルコールを添加して粉末をペースト状塊にする。コーンスターチを添加し、均一な粒子が形成されるまで混合を続ける。該粒子をNo.10スクリーンに通過させ、トレイに入れ100℃のオーブンで12〜14時間乾燥する。乾燥粒子をNo.16スクリーンでふるい、ふるいを掛けられた粒子に乾燥ラウリル硫酸ナトリウムおよび乾燥ステアリン酸マグネシウムを加え混合し、打錠機で所望の形状に圧縮する。上記の芯部をワニスで処理し、その表面にタルクを散布し、表面の湿気の吸収を防止する。芯部の表面を下塗り層でさらに被覆する。その表面をさらにワニスで被覆し、内服用の被覆錠剤を製造するために十分な回数の層にする。錠剤を完全に丸くかつその表面を滑かにするために、被覆された錠剤はさらに下塗層および平滑被覆層で被覆される。所望の色合が得られるまで、その被覆された錠剤は着色被覆を行う。乾燥後、該被覆錠剤を磨いて均一な光沢の錠剤にする。
【0058】
製剤例4

【0059】
上記本発明化合物および添加剤を蒸留水に溶解し、ガラスバイアルに充填後、オートクレーヴにて滅菌し、注射剤を調製する。
【0060】
製剤例5

上記発明化合物および添加剤を配合し、内服用液剤を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のカルボスチリル誘導体アミン塩は、水への溶解性がすぐれており、特に注射剤、点眼剤、内用液剤等の水性溶液製剤の調製に有利に用いられ、またそのカルボスチリル誘導体の優れた薬理作用、例えば、抗潰瘍作用、内因性プロスタグランジンE2量を増加させる作用、活性酸素消去または抑制作用、IL−8産生抑制作用、顆粒球活性化抑制作用、顆粒球接着因子発現抑制作用、ソマトスタチン分泌低下抑制作用、抗糖尿病作用、ウレアーゼ阻害作用、さらに眼ゴブレット細胞増加作用、眼の粘液増加作用、涙液増加作用等を保持し、各種疾病治療用医薬として有用であり、とくに点眼剤としてドライアイ等の各種眼疾患の治療剤として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、Rはハロゲン原子であり、該カルボスチリル骨格上の側鎖の置換位置は3位または4位であり、またカルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は一重結合または二重結合である]で示されるカルボスチリル誘導体とアミンから形成されるカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項2】
該カルボスチリル誘導体(1)が2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸である請求項1に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項3】
該アミンが、L−アルギニンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項4】
該アミンが、L−リジンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項5】
該アミンが、エチレンジアミンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項6】
該アミンが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項7】
該アミンが、モノエタノールアミンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項8】
該アミンが、ジエタノールアミンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項9】
該アミンが、ジイソプロパノールアミンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項10】
該アミンが、メグルミンである請求項2に記載のカルボスチリル誘導体アミン塩。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載のカルボスチリル誘導体アミン塩を有効成分とする医薬製剤。
【請求項12】
式(1):
【化2】

[式中、Rはハロゲン原子であり、該カルボスチリル骨格上の側鎖の置換位置は3位または4位であり、またカルボスチリル骨格の3位と4位間の結合は一重結合または二重結合である]で示されるカルボスチリル誘導体とアミンからなり、用時水性溶媒を添加して水性溶液製剤とする用時調製用医薬製剤。
【請求項13】
該カルボスチリル誘導体(1)が2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸である請求項12に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項14】
該アミンが、L−アルギニンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項15】
該アミンが、L−リジンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項16】
該アミンが、エチレンジアミンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項17】
該アミンが、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項18】
該アミンが、モノエタノールアミンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項19】
該アミンが、ジエタノールアミンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項20】
該アミンが、ジイソプロパノールアミンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。
【請求項21】
該アミンが、メグルミンである請求項13に記載の用時調製用医薬製剤。


【公表番号】特表2007−514641(P2007−514641A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520510(P2006−520510)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001034
【国際公開番号】WO2005/070892
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】