説明

カルボン酸の製造方法およびその中間体

【課題】医薬品として有用な化合物の製造に好適な、収率の高い製造法および精製の容易な中間体を提供する。
【解決手段】


(式中、R1は置換されてもよいアルキル基等を、R2は置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基等を、R4は水素原子等を、R5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子等を表す。)
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させ、式(4)で表される化合物を得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1)で表される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種医薬品の合成中間体化合物として有用なカルボン酸の製造方法およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1a)で表される化合物およびその周辺化合物は、医薬品原体として有用な化合物の製造中間体として用いられている(特許文献1)。例えば式(1a)で表されるカルボン酸は、式(2a)で表されるエステルを加水分解して得ることができる(特許文献2)。
【特許文献1】国際公開第02/38564号パンフレット
【特許文献2】特開2006−8641号公報
【0003】
【化1】

[式中、ALOCはアリルオキシカルボニルを表す。]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、式(1a)で表される化合物およびその周辺化合物を製造および使用するにあたり、いくつかの課題を見出した。
(a)通常の加水分解で得られる化合物(1a)をそのまま使用した場合、例えば下図の工程においては、(1a)から(9a)への反応が完結しない。
(b)未精製の式(1a)で表される化合物を使用して、下図の工程を実施したとき、化合物(12a)、化合物(13a)の品質が悪くなる。
(c)式(1a)で表される化合物は結晶性が悪く、オイル状で、結晶化による精製が困難である。
【0005】
【化2】

[式中、Allocはアリルオキシカルボニルを表す。]
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは種々の検討を行った結果、式(1):
【0007】
【化3】

で表される化合物を収率良く、高純度で得る製造方法を見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、
〔1〕 式(1):
【0008】
【化4】

で表される化合物と、式(3):
【0009】
【化5】

で表される化合物とを反応させて、式(4):
【0010】
【化6】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1):
【0011】
【化7】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)、
〔2〕 R1がアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、〔1〕記載の製造方法、
〔3〕 式(1b):
【0012】
【化8】

で表される化合物と、式(3):
【0013】
【化9】

で表される化合物とを反応させて、式(4b):
【0014】
【化10】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1b):
【0015】
【化11】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)、
〔4〕 R1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、〔3〕記載の製造方法、
〔5〕 R1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R4が水素原子またはメチルであり、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、〔3〕記載の製造方法、
〔6〕 式(4):
【0016】
【化12】

(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される化合物、
〔7〕 式(4b):
【0017】
【化13】

(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される化合物、
〔8〕 R1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、〔7〕記載の化合物、
〔9〕 R1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R4が水素原子またはメチルであり、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、〔7〕記載の化合物、
〔10〕 式(5):
【0018】
【化14】

で表される化合物を、式:CH2=CH−CO23で表される化合物および塩基と溶媒中反応させて、式(6):
【0019】
【化15】

で表される化合物を得、これを還元剤と反応させて、式(7):
【0020】
【化16】

で表される化合物を得、これを脱水させて、式(2):
【0021】
【化17】

で表される化合物を得、これを加水分解させて、式(1):
【0022】
【化18】

で表される化合物を得、これと式(3):
【0023】
【化19】

で表される化合物とを反応させて、式(4):
【0024】
【化20】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1):
【0025】
【化21】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表し、
6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
Mは金属原子を表す。)、または
〔11〕 式(5b):
【0026】
【化22】

で表される化合物を、式:CH2=CH−CO23で表される化合物および塩基と溶媒中反応させて、式(6b):
【0027】
【化23】

で表される化合物を得、これを還元剤と反応させて、式(7b):
【0028】
【化24】

で表される化合物を得、脱水させて、式(2b):
【0029】
【化25】

で表される化合物を得、これを加水分解させて、式(1b):
【0030】
【化26】

で表される化合物を得、これと式(3):
【0031】
【化27】

で表される化合物とを反応させて、式(4b):
【0032】
【化28】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1b):
【0033】
【化29】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表し、
6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
Mは金属原子を表す。)に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、各種医薬品の合成中間体化合物として有用なカルボン酸を、収率良く、高純度で合成可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明における各種の用語を詳細に説明すると次の通りである。なお、特に指示のない限り、各々の基の説明は他の置換基の一部である場合も含む。
【0036】
ハロゲン原子としては例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0037】
アルキル基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられ、具体的には例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、3−ペンチル、3−メチルブチル、ヘキシル、3−ヘキシルまたは4−メチルペンチル等が挙げられる。
【0038】
アルケニルオキシカルボニル基のアルケニル基部分としては、例えばビニル、アリル、プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の直鎖または分枝した炭素原子数2〜6個のアルケニル基等が挙げられる。
【0039】
アラルキル基のアリール部分としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数6〜10個のアリール基等が、アルキル部分としては、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチル等の炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられる。代表的なアラルキル基としては、例えばベンジル基、1−または2−フェネチル基等が挙げられる。
【0040】
アルコキシ基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜6個のアルコキシ基等が挙げられ、具体的には例えばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、2−ブトキシ、2−メチルプロピルオキシまたは1,1−ジメチルエチルオキシ等が挙げられる。
【0041】
アリール基としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数6〜10個のアリール基等が挙げられる。
【0042】
ヘテロアリール基としては、例えば窒素原子を1〜2個含む5〜6員単環式の基、窒素原子を1〜2個と酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5〜6員単環式の基、酸素原子を1個もしくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、または窒素原子1〜4個を含み、6員環と5または6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、具体的には、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、3−ピリダジニル、3−オキサジアゾリル、2−チアゾリル、3−イソチアゾリル、2−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−キノリル、8−キノリル、2−キナゾリニルまたは8−プリニル等が挙げられる。
【0043】
置換アルキル基、置換アルコキシ基および置換アルケニルオキシカルボニル基の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、フタルイミド基、アリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)またはヘテロアリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)が挙げられる。
【0044】
置換アラルキル基における置換基としては、1または複数、同一または異なって、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基またはニトロ基等が挙げられる。
金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の、アルカリ金属等が挙げられる。
【0045】
次に本発明の合成方法および合成中間体について詳細に説明する。
【0046】
【化30】

(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す。)
【0047】
式(2)で表される化合物を、アルカリ水溶液と反応させた後、酸を加え溶媒で抽出することにより式Iで表される化合物を合成することができる。アルカリ水溶液と反応させるとき、溶媒中で行ってもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたは水酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリの使用量としては、式(2)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは1〜4モル倍が挙げられる。反応に使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、水、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒と水との混合溶媒、または、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。反応温度としては通常0℃〜80℃、好ましくは20℃〜40℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜5時間が挙げられる。
【0048】
酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸または酢酸等が挙げられ、好ましくは塩酸または硫酸が挙げられる。酸の使用量としては、式(2)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは4〜6モル倍が挙げられる。抽出溶媒としては、水と任意の割合で混合せず、抽出に悪影響を及ぼさないものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテルまたはtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。抽出温度としては通常0℃〜60℃、好ましくは10℃〜30℃が挙げられる。抽出時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは30分〜3時間が挙げられる。
【0049】
式(2)で表される化合物とアルカリとを反応させた後、そのまま酸を加え式(1)で表される化合物を溶媒で抽出してもよく、また酸を加える前に溶媒を加え、溶媒を除去した後、酸を加え式(1)で表される化合物を溶媒で抽出することで、不要成分を除去してもよい。酸を加える前に溶媒を加えるときの溶媒としては、上記の抽出溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。
【0050】
【化31】

(式中、R1、R2、R4およびR5は前記と同じ意味を表す。)
【0051】
式(1)で表される化合物を式(3)で表される化合物と反応させることにより、式(4)で表される化合物を固体、好ましくは結晶として合成することができる。使用される溶媒としては、反応に不活性なものなら限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒とテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒との混合溶媒が挙げられる。式IIIで表される化合物の使用量としては、式(1)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは1〜3モル倍が挙げられる。反応温度としては通常0〜80℃、好ましくは10〜60℃が挙げられる。反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは30分〜3時間が挙げられる。
【0052】
式(4)で表される化合物は、溶媒中で結晶として析出するので、そのままあるいは低温に冷却後ろ過することにより、容易に単離・精製することができる。通常はそのままで十分高純度のものが得られるが、必要に応じ再結晶することにより、さらに高純度のものを得ることができる。再結晶に使用される溶媒としては、上記の溶媒等が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒とテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒との混合溶媒が挙げられる。再結晶温度としては通常0〜80℃、好ましくは10〜60℃が挙げられる。再結晶時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは30分〜3時間が挙げられる。
【0053】
原料として光学活性体を使用する場合、本発明による方法により、光学純度を向上させることが可能であり、必ずしも原料として極めて光学純度の高いものを用意する必要がない。このことも、本発明の重要な一部である。
【0054】
【化32】

(式中、R1、R2、R4およびR5は前記と同じ意味を表す。)
【0055】
式(4)で表される化合物に、酸の水溶液を加え溶媒で抽出することにより、式(1)で表される化合物を得ることができる。酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸または酢酸等が挙げられ、好ましくは塩酸または硫酸が挙げられる。酸の使用量としては、式(4)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは4〜6モル倍が挙げられる。抽出溶媒としては、水と任意の割合で混合しないものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテルまたはtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。抽出温度としては通常0℃〜60℃、好ましくは10℃〜30℃が挙げられる。抽出時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは30分〜3時間が挙げられる。
【0056】
原料として用いられる式(2)で表される化合物は、例えば、特開2006−8641号公報に記載されているような公知の方法により合成することができるが、より好ましい製造方法を以下に記載する。
【0057】
【化33】

(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す。R6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表す。)
【0058】
式(5)で表される化号物は公知の方法(例えば、特開2006−8641号公報)により式(8)で表される化合物から製造され、必要に応じ蒸留により精製できる。
また、式(8)で表される化合物は公知であるか、公知の化合物から公知の方法によって合成できる。
【0059】
【化34】

(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す。R6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基、Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の金属原子を表す)
【0060】
式(5)で表される化合物(例えば、特開2006−8641号公報)をアクリル酸エステル(CH2=CH−CO23)および塩基と溶媒中反応させ、式(6)で表される化合物を合成した後、還元剤と反応させ式(7)で表される化合物を合成することができる。また式(6)で表される化合物を合成した後、水と有機溶媒を加え、式(6)で表される化合物を水相に、不要物を有機溶媒相に移行させ、有機溶媒相を除去し、水相中の式(6)で表される化合物を還元剤と反応させ式(7)で表される化合物を合成することもできる。
【0061】
アクリル酸エステル(CH2=CH−CO23)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルまたはアクリル酸t−ブチル等が挙げられ、好ましくはアクリル酸メチルが挙げられる。アクリル酸エステル(CH2=CH−CO23)の使用量としては式(5)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは4〜8モル倍が挙げられる。塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム等が挙げられ、好ましくは、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドまたは水素化ナトリウム等が挙げられる。塩基の使用量としては、式(5)で表される化合物に対し、通常0.5〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍が挙げられる。使用する溶媒としては、反応に不活性なものなら限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルまたはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒、またはこれらとヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒との混合溶媒等が挙げられ、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒が挙げられる。反応温度としては、通常−40℃〜+60℃、好ましくは−20℃〜+10℃が挙げられる。反応時間としては、通常10分〜1日程度、好ましくは0.1時間〜8時間が挙げられる。原料と試薬の混合方法としては、式(5)で表される化合物とアクリル酸エステルと塩基が溶媒中で混合される方法であれば特に限定されないが、好ましくは例えば式(5)で表される化合物とアクリル酸エステルを溶媒中で混合後、塩基または塩基の溶液を添加する方法が挙げられる。式(6)で表される化合物を合成した後、水と共に加える有機溶媒としては、水と任意の割合で混合しないものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテルまたはtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはトルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。
【0062】
式(6)で表される化合物を合成した後、水と有機溶媒を加える前に、アクリル酸エステルの重合促進剤を加え反応系中に残存しているアクリル酸エステルの重合を促進させてもよい。重合促進剤としてはメタノールやエタノールまたは2−プロパノール等のアルコール系溶媒が挙げられ、好ましくはメタノールが挙げられる。重合促進剤の使用量としては、式(5)で表される化合物に対し、通常0.1〜10モル倍、好ましくは1〜5モル倍が挙げられる。そのときの反応温度としては、通常−20℃〜+20℃、好ましくは0℃〜10℃が挙げられる。反応時間としては、通常10分〜1日程度、好ましくは0.5〜3時間が挙げられる。
【0063】
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたはシアン化水素化ホウ素ナトリウム等の水素化金属化合物等が挙げられ、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。還元剤の使用量としては、式(5)で表される化合物に対し、通常0.2〜2モル倍、好ましくは0.25〜1モル倍が挙げられる。還元剤はそのままあるいは溶液として用いてもよく、溶媒としては、水、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。還元剤を添加するとき、同時に酸を加えて反応系内のpHを調整してもよく、酸としては、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸等が挙げられ、好ましくは塩酸が挙げられる。
式(7)で表される化合物を合成後、水相から抽出する溶媒としては、水と任意の割合で混合せず抽出に悪影響を及ぼさないものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテルまたはtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはメチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0064】
【化35】

(式中、R1、R2およびR3は前記と同じ意味を表す。)
【0065】
式(7)で表される化合物を、塩基および水酸基の活性化剤と反応させ、引き続き、脱離反応を行うことで、式(2)で表される化合物を合成することができる。使用する塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エンまたは1,5−ジアザビシクロ[4.3.0.]ノン−5−エン等が挙げられ、好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。塩基の使用量としては、式(7)で表される化合物に対し、通常1〜10モル倍、好ましくは2〜7モル倍が挙げられる。使用する水酸基の活性化剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホニルクロリドまたはp−トルエンスルホン酸無水物等が挙げられ、好ましくはメタンスルホニルクロリドが挙げられる。活性化剤の使用量としては、式(7)で表される化合物に対し、通常1〜5モル倍、好ましくは1〜2モル倍が挙げられる。使用する溶媒としては、反応に不活性なものなら特に限定されず、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテルまたはtert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ヘキサンまたはヘプタン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくはメチルイソブチルケトン、トルエンまたはクロロベンゼン等が挙げられる。活性化剤との反応温度としては通常−10℃〜40℃、好ましくは0℃〜30℃が挙げられる。活性化剤との反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは0.5〜3時間が挙げられる。脱離の反応温度としては通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃が挙げられる。脱離の反応時間としては通常10分〜1日程度、好ましくは1〜4時間が挙げられる。反応終了後、酸の水溶液を加え過剰の塩基を除去してもよく、また、酸で洗浄する前に過剰の塩基を減圧下留去してもよい。
【0066】
また、式(2)で表される化合物は、必要に応じ蒸留等により精製してもよい。式(2)で表される化合物を得た後、ピロリン環がピロール環に酸化されるのを抑制するために、酸化防止剤を加えてもよい。使用する酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノールまたは2,6−ジt−ブチル−4−メチルメトキシフェノール等が挙げられ、好ましくは2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノールが挙げられる。酸化防止剤の使用量としては、式(2)で表される化合物に対して、通常0.0001〜0.1重量倍、好ましくは0.0005〜0.01重量倍が挙げられる。
【0067】
本方法により得られる式(2)で表される化合物は、原料の式(5)または(8)で表される化合物として高い光学純度のものを用いても、通常、途中で若干のエピ化を伴うため、必ずしも製品として十分な光学純度を持たないが、本発明の方法によれば、式(4)で表される化合物での精製で光学純度も向上するため、そのまま使用することが可能である。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例1】
【0069】
実施例1
【0070】
【化36】

窒素雰囲気下、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸19.09g(含量81.4%、純分15.54g、73.57mmol、光学純度97.5%ee)をトルエン−テトラヒドロフラン(95:5)混液146g中に溶解し、撹拌下60℃に加熱した。ベンジルアミン9.84gを滴下し、カルボン酸ベンジルアミン塩の種晶12mgを加えた。60℃で撹拌を続けると結晶が析出した。20℃に冷却し、析出した結晶をろ取し、白色結晶として、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸 ベンジルアミン塩22.44gを得た。含量100%。収率96%。光学純度99.6%ee。
【0071】
実施例2
【0072】
【化37】

晶析溶媒としてトルエン−テトラヒドロフラン(90:10)混液を用い、実施例2と同様にして行った。原料の(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸17.50g(含量73.5%、純分12.86g、60.89mmol、光学純度97.1%ee)から、白色結晶として(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸 ベンジルアミン塩18.03gを得た。含量99.1%。収率92%。光学純度99.8%ee。
【0073】
実施例3
【0074】
【化38】

(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸 ベンジルアミン塩1.01g(含量99.1%、純分1.00g、光学純度99.8%ee)にトルエン4g、水3g、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール1mgを加え、室温下撹拌下、35%塩酸0.4gを加えた。有機相を取り、水相をトルエン2gで2回抽出した。有機相をあわせ、溶媒を減圧下留去した。淡黄色油状物質として(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸0.75g(含量89.7%、純分0.67g、収率100%、溶媒を除いた面積%:100%、光学純度99.8%ee)を得た。
このように、アミン塩からカルボン酸誘導体への工程の収率はほぼ定量的であり、また、アミン塩での純度・光学純度がカルボン酸誘導体でそのまま保持されることがわかる。
【0075】
実施例4
【0076】
【化39】

窒素雰囲気下、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸675mg(光学純度83.5%ee)をトルエン4gに溶解し、撹拌下60℃に加熱した。(R)フェネチルアミン457mgを滴下し、氷冷した。析出した結晶をろ取し、白色結晶として(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸 (R)-フェネチルアミン塩546mgを得た。収率52%。光学純度90.4%ee。
【0077】
実施例5
【0078】
【化40】

窒素雰囲気下、(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸701mg(光学純度83.5%ee)をトルエン4gに溶解し、撹拌下60℃に加熱した。(S)フェネチルアミン457mgを滴下し、氷冷した。析出した結晶をろ取し、白色結晶として(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸 (S)-フェネチルアミン塩687mgを得た。収率66%。光学純度97.4%ee。
【0079】
式(3)で表される化合物としてベンジルアミン、(R)−フェネチルアミン、(S)−フェネチルアミン、4−メチルベンジルアミンまたは4−クロロベンジルアミンを使用した場合の収率は下表の通りであった。式(3)で表される化合物以外のアミン類として、例えば2−フェニルエチルアミン、3−フェニルプロピルアミン、n−ブチルアミン、ピペリジン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミンまたはアニリンを使用した場合、結晶は析出せず溶液のままであり、式(1)で表される化合物のアミン塩合成には、式(3)で表される化合物が好ましいことがわかる。また結晶が析出した場合、光学純度の向上が見られた。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例7
【0082】
【化41】

窒素雰囲気下、メチル N-[(アリルオキシ)カルボニル]-L-アラニナート20.45g(含量97.8%、純分20.0g、0.107mol、光学純度>99.9%ee)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)170gに溶解し、アクリル酸メチル73.59gを加え、撹拌下−10℃〜−5℃に冷却した。そこにナトリウムt−ブトキシド12.32gのDMF38g溶液を滴下した。原料の消失を確認し、メタノール13.7gを加え0℃に昇温し2時間撹拌後、トルエン230g、水266gを加えた。有機相を除去し、水相をトルエン230gで洗浄し、水相にリン酸2.6gを加えpHを7付近に調整した。20%塩酸によりpHを7付近に調整しながら水素化ホウ素ナトリウム1.21gの1mol/L水酸化ナトリウム24g溶液を加えた。中間体の消失を確認し、メチルイソブチルケトン173g、水173g、塩化ナトリウム42gを加え、30℃に昇温した。有機相を取り、水相をメチルイソブチルケトン173gで2回抽出し、有機相をあわせて溶媒を減圧下留去した。淡黄色液体として1-アリル 3-メチル (5S)-4-ヒドロキシ-5-メチルピロリジン-1,3-ジカルボキシラート36.75g(含量59.0%、純分21.67g、収率83%)を得た。
【0083】
実施例8
【0084】
【化42】

窒素雰囲気下、1-アリル 3-メチル (5S)-4-ヒドロキシ-5-メチルピロリジン-1,3-ジカルボキシラート35.0g(含量59.0%、純分20.6g、84.7mmol)をメチルイソブチルケトン171gに溶解し、トリエチルアミン55.7gを加えた。20℃下撹拌下メタンスルホニルクロリド14.55gを滴下し、さらにメタンスルホニルクロリド1.94gを追加した。原料の消失を確認後、50℃に昇温した。3時間後、原料の消失を確認し、減圧下トリエチルアミンを留去した(9kPa、41℃)。20℃に冷却後、35%塩酸9gと水35gを加え分液後、有機相を水35gで洗浄し、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール19mgを加え、溶媒を減圧下留去した。黄色液体として、1-アリル 3-メチル (5S)-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1,3-ジカルボキシラート23.49g(含量74.9%、純分17.60g、収率92%)を得た。
【0085】
(減圧蒸留)
1-アリル 3-メチル (5S)-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1,3-ジカルボキシラート28.5gを減圧蒸留した。減圧度0.21kPa。本留23.4g(119〜121℃、回収率82%)、初留3.1g(110〜119℃、回収率11%)を得た。
【0086】
実施例9
【0087】
【化43】

窒素雰囲気下、1-アリル 3-メチル(5S)-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1,3-ジカルボキシラート23.34g(含量74.9%、純分17.48g、77.61mmol)をアセトニトリル175gに溶解し20℃で撹拌下1mol/L水酸化ナトリウム水溶液105gを滴下した。1時間後原料消失を確認し、トルエン70gを加えた。有機相を除き、水相にトルエン70gを加え、35%塩酸10.6gを滴下した。有機相を取り、水相をトルエン70gにて抽出し、合わせた有機相を濃縮した。淡黄色油状物質として(5S)-1-[(アリルオキシ)カルボニル]-5-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸19.29gを得た。含量81.4%、純分15.70g、収率96%、光学純度97.5%ee。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化1】

で表される化合物と、式(3):
【化2】

で表される化合物とを反応させて、式(4):
【化3】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1):
【化4】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)。
【請求項2】
1がアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(1b):
【化5】

で表される化合物と、式(3):
【化6】

で表される化合物とを反応させて、式(4b):
【化7】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1b):
【化8】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)。
【請求項4】
1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R4が水素原子またはメチルであり、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
式(4):
【化9】

(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される化合物。
【請求項7】
式(4b):
【化10】

(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される化合物。
【請求項8】
1aがアルキル基、R2が置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、R4が水素原子またはアルキル基、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
1aがメチル、R2がアリルオキシカルボニル、R4が水素原子またはメチルであり、R5が、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロまたは置換されてもよいアルキル基である、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
式(5):
【化11】

で表される化合物を、式:CH2=CH−CO23で表される化合物および塩基と溶媒中反応させて、式(6):
【化12】

で表される化合物を得、これを還元剤と反応させて、式(7):
【化13】

で表される化合物を得、これを脱水させて、式(2):
【化14】

で表される化合物を得、これを加水分解させて、式(1):
【化15】

で表される化合物を得、これと式(3):
【化16】

で表される化合物とを反応させて、式(4):
【化17】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1):
【化18】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表し、
6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
Mは金属原子を表す。)。
【請求項11】
式(5b):
【化19】

で表される化合物を、式:CH2=CH−CO23で表される化合物および塩基と溶媒中反応させて、式(6b):
【化20】

で表される化合物を得、これを還元剤と反応させて、式(7b):
【化21】

で表される化合物を得、脱水させて、式(2b):
【化22】

で表される化合物を得、これを加水分解させて、式(1b):
【化23】

で表される化合物を得、これと式(3):
【化24】

で表される化合物とを反応させて、式(4b):
【化25】

で表される化合物を固体として得、必要に応じ再結晶を行った後、これを酸性水溶液で処理し、溶媒にて抽出することを特徴とする、式(1b):
【化26】

で表される化合物の製造方法
(式中、R1aは、置換されてもよいアルキル基を表し、
2は、置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基、置換されてもよいアルケニルオキシカルボニル基、置換されてもよいアラルキルオキシカルボニル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
3は、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
4は、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表し、
5は、存在しないか、1つまたは2つ存在し、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ、置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアルコキシ基を表し、
6は置換されてもよいアルキル基または置換されてもよいアラルキル基を表し、
Mは金属原子を表す。)。

【公開番号】特開2008−208057(P2008−208057A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44974(P2007−44974)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】