説明

カードリーダーライター

【課題】内部に詰まったICカードを強制排出する際に操作される操作レバーが通常動作時には動作しないように構成されたカード強制排出機構を備えた手動挿入式のICカードリーダーライターを提案すること。
【解決手段】ICカードリーダーライター1のカード強制排出機構20は、操作レバー21とホルダ押出板25を備え、操作レバー21を第1位置21Aから第2位置21Bにスライドすると、操作レバー21がホルダロックレバー9に係合してカードホルダ5のロックが解除され、次に、ホルダ押出板25が旋回してカードホルダ5を前方に押し出す。第1位置21Aに操作レバー21が位置している状態では、操作レバー21、ホルダ押出板25はホルダロックレバー9、カードホルダ5から切り離されており、これらに連動して移動することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技媒体の貸し出し処理をカード型記憶媒体を用いたプリペイド方式により行う場合などに用いられるカードリーダーライターに関し、特に、内部に詰まったカード型記憶媒体を強制排出するためのカード強制排出機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICメモリチップが内蔵されたICカードを用いてプリペイド方式により遊技媒体の貸し出し処理を行うことのできる遊技台用台間機が知られている。かかる遊技台用台間機では、ICカードに対して情報の読み書き処理を行うためのカードリーダーライターが組み込まれており、例えば、利用者が紙幣などの金銭を投入すると、カードリーダーライターによって投入金額情報がICカードに書き込まれた後に、当該ICカードが発行されるようになっている。
【0003】
ICカードリーダーライターは例えば特許文献1に開示されている。当該特許文献1の従来の技術の欄には、カード出入口から手動操作によって内部に挿入したICカードがばね力によって排出されないようにロックしているロック爪を電磁ソレノイドによってロック解除位置に移動させて、ICカードをイジェクトするICカードリーダーライターが開示されている。また、当該特許文献1には、ICカードをカード出入口に挿入すると、駆動モータが駆動して送りローラ対によってICカードが自動挿入され、内部に挿入されたICカードを排出する場合にも送りローラ対によってICカードが自動排出される構成のICカードリーダーライターが開示されている。さらに、駆動モータを用いてICカードの挿入および排出を行うICカードリーダーライターにおいて、内部に詰まったICカードを強制排出するためのカード強制排出機構が開示されている。ここに開示のカード強制排出機構は、内部に挿入されているICカードに係合可能な係合部を備えたカード取出部材から構成されており、このカード取出部材を手動により引くと、内部に詰まっているICカードを強制的に排出できるようになっている。
【特許文献1】特開平8−235327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遊技台用台間機は、遊技台の間の狭いスペースに配置されるので、設置スペースに余裕がない。したがって、このような設置スペースに制約のある機器に組み込まれるカードリーダーライターも可能な限り、小型でコンパクトなものとすることが望ましい。送りローラ対、駆動モータなどのカード自動搬送機構が備わっていると、小型・コンパクト化が困難である。したがって、カード自動搬送機構を省略して、手動操作によってカードを挿入する手動挿入式のカードリーダーライターを用いることが望ましい。
【0005】
手動挿入式のカードリーダーライターにおいては、電磁ソレノイドなどのロック解除機構が故障し、あるいは給電が停止した場合には、挿入されているICカードを排出できない。また、挿入したICカードに大きな反りなどがあると、内部にICカードが詰まり、ばね力だけではICカードを排出できないこともある。したがって、手動挿入式のカードリーダーライターにおいてもカード強制排出機構が搭載されていることが望ましい。
【0006】
ここで、上記の特許文献1に記載されているようなカード強制排出機構は、駆動モータを備えた自動挿入式のICカードリーダーライターに適したものであり、これをそのまま手動挿入式のICカードリーダーライターに用いることができない。すなわち、手動挿入式の場合には、挿入されたICカードを挿入位置にロックするためのロック機構が備わっており、内部に詰まったICカードを押し出す操作だけでは当該ICカードを排出できず、ロック機構によるロックを解除する必要がある。
【0007】
そこで、ロック機構に連動するようにカード取出部材を取り付け、カード取出部材を操作すると、ロック機構によるICカードのロック状態も解除できるようにすることが考えられる。しかしながら、このようなカード強制排出機構の場合には、通常のICカードの挿入排出動作において、ロック機構に連動して、カード強制排出機構の構成部材であるカード取出部材が不必要に動作してしまう。
【0008】
カード取出部材は手動で操作できるように、ICカードリーダーライターのケースから外部に露出しており、これが不必要に動作すると、塵などの異物がケース内部に侵入する危険性がある。ケース内に侵入した異物がロック機構、カード取出部材の支軸などに詰まると、これらの部材の駆動負荷が増加し、例えば、ロック機構を解除するためのロック解除用の電磁ソレノイドの負荷が増え、ロック解除動作に支障を来たす危険性もある。また、このような弊害が生じない場合であっても、電磁ソレノイドには、ロック機構に連動するカード取出部材による不必要な負荷が常に作用することになってしまう。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、内部に詰まったICカードを強制排出する際に操作される操作レバーが通常のカード挿入排出のための動作時には動作しないように構成されたカード強制排出機構を備えた手動挿入式のICカードリーダーライターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明のカードリーダーライターは、カード挿入口と、このカード挿入口からカード型記憶媒体を押し込むと、当該カード型記憶媒体と共に押し込まれるカードホルダと、このカードホルダが所定量押し込まれると、当該カードホルダに係合して当該カードホルダをその押し込み位置にロックするホルダロックレバーと、このホルダロックレバーを、前記カードホルダとの係合が解除されるロック解除方向に移動させるためのロック解除部材と、前記ホルダロックレバーとの係合が解除された前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出すためのカード排出用付勢部材と、挿入されたカード型記憶媒体を強制的に排出するためのカード強制排出機構とを有している。
【0011】
また、本発明のカード強制排出機構は、第1位置から第2位置に向けて操作可能な操作レバーと、この操作レバーを前記第1位置に保持している保持用付勢部材と、前記操作レバーの動きを、前記ホルダロックレバーをロック解除方向に移動させる力として伝え、当該ホルダロックレバーのロック解除後における前記操作レバーの動きを前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出す力として伝えるリンク機構とを備えている。
【0012】
さらに、本発明のカード強制排出機構においては、前記操作レバーが前記第1位置にある状態では、前記リンク機構における前記ホルダロックレバーとの係合部は当該ホルダロックレバーの移動範囲から外れた位置にあり、当該リンク機構における前記カードホルダとの係合部は当該カードホルダの移動範囲から外れた位置にあることを特徴としている。
【0013】
本発明のカードリーダーライターでは、カード強制排出機構の操作レバーが、ロックレバーおよびカードホルダから切り離された状態にあり、通常は、ロックレバーおよびカードホルダが移動しても操作レバーが移動することはない。操作レバーを第1位置から第2位置に向けて操作すると、当該操作レバーの動きを伝えるためのリンク機構が、ホルダロックレバーおよびカードホルダに係合して、ホルダロックレバーが強制的に移動させられてカードホルダのロックが解除され、しかる後に、カードホルダがカード挿入口に向けて強制的に押し出される。
【0014】
したがって、カード強制排出機構の操作レバーおよびリンク機構は、通常のカード挿入・排出動作時には動作しない。これらの部分が不必要に動作することに起因して発生する、埃などの異物が内部に侵入するなどの弊害を回避できる。また、操作レバーおよびリンク機構はホルダロックレバーから切り離されているので、ホルダロックレバーに連結されている電磁ソレノイドなどのロック解除部材に、これらの部分の負荷が作用することもないので、ロック解除部材に不必要な負荷が作用することも防止できる。
【0015】
ここで、本発明のカードリーダーライターにおける前記リンク機構は、前記操作レバーに形成した第1係合部および第2係合部と、前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する前記操作レバーの前記第1係合部に係合して前記ホルダロックレバーを前記ロック解除方向に移動させるように、前記ホルダロックレバーに形成した第1被係合部と、前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出すためのホルダ押出部材と、前記ホルダロックレバーがロック解除状態になった後に、前記第2位置に向けて移動する前記操作レバーの前記第2係合部に係合して前記カードホルダの押出動作を開始するように、前記ホルダ押出部材に形成した第2被係合部とを備えた構成とすることができる。
【0016】
この場合には、前記ホルダロックレバーの前記第1被係合部を、第1被係合面および第2被係合面を備えたものとし、前記操作レバーの前記第1係合部が、前記第1被係合面に係合して前記ホルダロックレバーを前記ロック解除方向に移動させてロック解除状態が形成された後は、当該第1係合部を前記第2被係合面に係合させて、前記ホルダロックレバーをその位置に保持することが望ましい。このようにすれば、ホルダロックレバーをロック解除状態に保持できると共に、ホルダロックレバーが必要以上に移動してしまうことを回避できる。ホルダロック部材が必要以上に移動する場合には、そのためのスペースを確保しておく必要があり、小型化、レイアウトの自由度の点で不利になってしまう。
【0017】
なお、前記ロック解除部材としては電磁ソレノイドを用いることができ、この電磁ソレノイドの復帰用ばねのばね力によって、前記ホルダロックレバーを前記カードホルダに係合する方向に付勢しておけばよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカードリーダーライターでは、カード強制排出機構の操作レバーおよびリンク機構が、ロックレバーおよびカードホルダから切り離された状態にあり、通常は、ロックレバーおよびカードホルダが移動しても、操作レバーおよびリンク機構が動作することはない。したがって、本発明によれば、カード強制排出機構の操作レバーなどの部材が通常の動作時には動作しないので、これらが不必要に動作することに起因して発生する異物侵入などの弊害を回避できる。また、操作レバー、リンク機構の負荷が、電磁ソレノイドなどのロック解除部材に作用することも回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るICカードリーダーライターを説明する。なお、ICカード以外の磁気カードなどのカード型記憶媒体を取り扱うためのカードリーダーライターに対しても本発明を同様に適用可能なことは勿論である。
【0020】
図1および図2はICカードリーダーライターの内部構造を示す図であり、図1(a)はICカードが挿入される前の状態を示す概略構成図であり、図1(b)はカード強制排出機構の部分を示す部分斜視図であり、図2はICカードが挿入されて内部まで押し込まれた後の状態を示す概略構成図である。
【0021】
これらの図を参照して説明すると、ICカードリーダーライター1は扁平な略矩形のケース2を備え、この内部に各構成部品が組み付けられている。ケース2の前端面3にはカード挿入口4が形成されている。カード挿入口4が形成されている前端面部分は、その上下方向の中央部分がカード挿入方向に凹状となっており、ICカード100の挿入および取り出しが容易となっている。
【0022】
ケース2の内部には、カード挿入口4から挿入されるICカード100を受け入れ可能なカードホルダ5が配置されている。このカードホルダ5は、ケース2内を、その前端側のカード受け入れ位置5Aから、その後端側のカード押し込み位置5Bまでの間で、前後方向にスライド可能でケース2に取り付けられている。カードホルダ5とケース2の間には、前後方向に水平に延びる引張りコイルばね6が架け渡されている。カード挿入口4からICカード100を挿入すると、引張りコイルばね6を伸長させながらカードホルダ5を後方に押し込むことができる。
【0023】
カードホルダ5の後方には、カードホルダ5をカード押し込み位置5Bにロックするためのホルダロック機構7が組み込まれている。ホルダロック機構7は、支軸8を中心として上下方向に旋回可能なホルダロックレバー9と、このホルダロックレバー9を上下に旋回させるための電磁ソレノイド10を備えている。ホルダロックレバー9における支軸8よりも前側の腕部分9aは、カードホルダ5の側面に沿って前方に延びており、その下端面部分には下方および後方に向けて突出したレバー側係合爪9bが形成されている。カードホルダ5の側面には、レバー側係合爪9bが前側から係合可能なホルダ側係合爪5aが形成されている。このホルダ側係合爪5aは、水平な上端面5bと、この上端面5bの前端縁から下方および後方に延びる傾斜前端面5cとによって規定されている。
【0024】
ICカード100が挿入される前においては、ホルダロックレバー9のレバー側係合爪9bは、電磁ソレノイド10の復帰ばね力によって、ホルダ側係合爪5aの上端面5bに上側から押し付けられた状態9A(図1に示す状態)となっている。カードホルダ5が後方に押し込まれると、ホルダロックレバー9のレバー側係合爪9bが上端面5bから前側に外れて、ホルダ側係合爪5aに前方から係合し、カードホルダ5の前方への移動が阻止されたロック状態9Bになる(図2に示す状態)。電磁ソレノイド10を励磁すると、ホルダロックレバー9が上方に旋回してロック状態が解除される。この結果、カードホルダ5は引張りコイルばね6(カード排出用付勢部材)のばね力によって前端側のカード受け入れ位置5Aに戻る。
【0025】
カード挿入口4が形成されている前端面3の下端部分には、引抜防止シャッター11が配置されている。引抜防止シャッター11は、挿入されたICカード100が不用意に引き抜かれてしまうことを防止するためのものである。引抜防止シャッター11は、ケース2に回転自在に支持されている垂直軸11aを中心としてケース幅方向(図面に垂直な方向)に旋回可能である。また、引抜防止シャッター11における垂直軸11aよりも後側の部位は、不図示のカム機構を介して、カードホルダ5の前側下端部分から前方に延びている延長部5dに連結されている。カードホルダ5がカード受け入れ位置5Aにある状態では、引抜防止シャッター11の垂直軸11aよりも前側の部分11bがカード挿入口4から退避している。カードホルダ5がカード押し込み位置5Bまで押し込まれると、当該部分11bがカード挿入口4内に突出して当該カード挿入口4を封鎖して、ICカード100が引き抜かれることを阻止可能である。
【0026】
ケース2の内部におけるカード挿入口4の上端側の近傍位置には、カードストッパ12が配置されている。カードストッパ12は上下方向に旋回可能な状態でケース2に取り付けられており、捻りばね13によって下方に付勢されている。カードストッパ12の下端面部分は挿入されたICカード100の上端面に当接可能なカード押し付け面12aとなっている。挿入されたICカード100はカードストッパ12によって押し付けられて、ガタ付き無くカードホルダ5に保持された状態に維持され、この状態で内部に押し込まれる。
【0027】
なお、挿入されたICカード100によって押し上げられたカードストッパ12の先端部分12bは、その上側に配置されているホトセンサ14の検出位置に進入するようになっている。ホトセンサ14によってICカード100が挿入されたことが検出される。また、ホルダロックレバー9には、その支軸8の下側位置から下方に延びている検出片9cが形成されている。ホルダロックレバー9がロック状態9Bに移動すると、支軸8の下方位置に配置されているホトセンサ15の検出位置から検出片9cが外れた位置となり、これにより、ホルダロックレバー9がロック状態9Bになったこと、すなわち、カードホルダ5がカード押し込み位置5Bに押し込まれて、そこにロックされたことが検出される。
【0028】
(カード強制排出機構)
ここで、挿入されたICカード100に大きな反りなどの変形がある場合には、挿入されたICカード100が内部に詰まってしまうことがある。この状態では、ホルダロック機構7を解除しても、引張りコイルばね6のばね力のみでは、ICカード100および当該ICカード100が保持されているカードホルダ5をカード挿入口4の側のカード受け入れ位置5Aまで戻すことができない場合がある。また、ホルダロック機構7の電磁ソレノイド10が故障して動作しなくなった場合、電磁ソレノイド10への給電が止まり電磁ソレノイド10が駆動しない場合などにおいても、ロックを解除できずに、ICカード100を保持しているカードホルダ5をカード受け入れ位置5Aに戻すことができない場合がある。
【0029】
本例のICカードリーダーライター1は、このような場合に、カードホルダ5を強制的にカード受け入れ位置5Aに戻してICカード100を取り出すためのカード強制排出機構20を備えている。本例のカード強制排出機構20はケース2の内部における後端部の上方の部位に組み込まれており、その操作レバー21を操作すると、ホルダロックレバー9によるカードホルダ5のロックを解除するロック解除動作と、ロックが解除されたカードホルダ5を前方に押し出すホルダ押出動作が連続して行われるように構成されている。
【0030】
図3は、カード強制排出機構20によってカードホルダ5のロックが解除された後の状態を示す概略構成図である。図4は、カード強制排出機構20によってロックが解除された後のカードホルダ5が前方に押し出された状態を示す概略構成図である。主として、図1(b)、図3および図4を参照してカード強制排出機構20の構成および動作を説明する。
【0031】
カード強制排出機構20の操作レバー21は、ケース2の内部の後端部の上方位置に配置されており、前方側の第1位置21A(図1、2参照)と後方側の第2位置21B(図4参照)の間をスライド可能にケース2に取り付けられている。操作レバー21は、ここと、これよりも前側のケース2の部位との間に架け渡した引張りコイルばね22(保持用付勢部材)によって、常に前方側の第1位置21Aに保持されている。この操作レバー21の一方の側面21aの上半部分には、垂直方向に延びる複数の凹凸部からなる指掛け部23が形成されている。この指掛け部23はケース2から外部に露出しており、操作者は当該指掛け部23に指を掛けて、操作レバー21をケース後端に当たった第2位置21Bまでスライドさせることが可能である。
【0032】
カード強制排出機構20は、操作レバー21の第1位置21Aから第2位置21Bに向かう動きを、ホルダロックレバー9をロック解除方向に移動させる力として伝え、当該ホルダロックレバー9のロック解除後における操作レバー21の動きをカードホルダ5をカード挿入口4に向けて押し出す力として伝えるリンク機構を備えている。本例のリンク機構は次のように構成されている。
【0033】
まず、操作レバー21における一方の側面21aの下半部分からは矩形の係合突起24(第1係合部)が側方に突出している。この係合突起24の後方には、ロック解除状態9A(図1参照)にあるホルダロックレバー9における支軸8よりも後側の後側腕部の上端部9dが位置している。操作レバー21を後方に所定量だけスライドさせると、係合突起24が上端部9d(第1被係合部)の前端面部分9e(第1被係合面)に当るようになっている。係合突起24が前端面部分9eに当った後は、操作レバー21を後方にスライドさせる動作に伴って、ホルダロックレバー9は後方に押されて、支軸8を中心としてロック解除方向に旋回して、カードホルダ5のロックが解除される。
【0034】
係合突起24は、ホルダロックレバー9の上端部9dを後方に押し込んでロック解除状態に移行させた後は、その上端面部分9f(第1被係合面)に乗り上げる。図3にはこの状態を示してある。この後は、上端面部分9fに沿って後方に移動する。したがって、ホルダロックレバー9は当該ロック解除姿勢9Cに保持される。
【0035】
次に、操作レバー21における側面21aとは反対側の部位には、ホルダ押出板25が配置されている。このホルダ押出板25は、支軸26を中心として前後方向に旋回可能な状態でケース2に取り付けられている。ホルダ押出板25における支軸26より上側の部位には前後方向に長いガイド穴25a(第2被係合部)が形成されている。操作レバー21におけるガイド穴25aに対峙している側面には、係合突起24と同一位置から係合ピン27(第2係合部)が突出して当該ガイド穴25a内にスライド可能な状態で差し込まれている。一方、ホルダ押出板25における支軸26よりも下側の部位には、前方および下方に向けて突出した係合腕25bが形成されている。
【0036】
ここで、操作レバー21が前方側の第1位置21Aにある状態では、その係合ピン27が、ホルダ押出板25のガイド穴25aにおける前端側の縁に当っている。また、ホルダ押出板25の下側の係合腕25bは、その先端が、カード押し込み位置5Bに位置しているカードホルダ5の後端面5eに当接可能な位置にある。操作レバー21を後方にスライドさせて、その係合ピン27がホルダ押出板25のガイド穴25aの後端側の縁に当った後は、操作レバー21のスライドに連動して、ホルダ押出板25が支軸26を中心として後方に押される。
【0037】
本例では、図3に示すように、操作レバー21の係合突起24がホルダロックレバー9の上端面部分9fに乗り上げた時点において、係合ピン27がガイド穴25aの後端側の縁に当るように設定されている。この後は、操作レバー21のスライドに連動して、ホルダ押出板25の下側の係合腕25bが前方に押し出される。この結果、当該係合腕25bによって、カード押し込み位置5Bに位置しているカードホルダ5が前方に向けて押し出される。図4にはこの状態が示されており、この状態では、カードホルダ5に保持されているICカード100におけるカード挿入口4の側の端部分が、当該カード挿入口4から所定量だけ突出しており、操作者が指で当該部分を把持して、引き出すことが可能である。
【0038】
以上説明したように、本例のICカードリーダーライター1にはカード強制排出機構20が備わっており、ICカード100が内部に詰まった場合、電磁ソレノイド10が故障してカードホルダ5のロックを解除できない場合などにおいては、操作レバー21を手で操作することにより、ICカード100を強制的に排出することができる。
【0039】
カード強制排出機構20の操作レバー21は前後方向にスライド可能であるが、常時は、引張りコイルばね22によって前方側の第1位置21Aに保持されている。この状態においては、カード強制排出機構20のリンク機構におけるカードホルダ5との係合部(係合腕25b)はカードホルダ5の移動範囲から外れた位置にある。すなわち、カード押し込み位置5Bに位置しているカードホルダ5の後端面5eの後側に位置している。よって、ICカード100の出し入れに伴ってカードホルダ5が移動しても、当該カードホルダ5によってホルダ押出板25が移動することはなく、操作レバー21も移動しない。
【0040】
また、リンク機構におけるホルダロックレバー9との係合部として機能する操作レバー21の係合突起24も、当該ホルダロックレバー9の移動範囲から外れた位置にある。したがって、カードホルダ5の移動に伴ってホルダロックレバー9が旋回しても、その後側の上端部9dが操作レバー21の係合突起24に当ることはないので、操作レバー21が移動することがない。
【0041】
このように、カード強制排出機構20の構成部品である操作レバー21およびホルダ押出板25は、通常のICカード100の出し入れ時には移動せず、カードホルダ5から切り離されており、また、ホルダロック機構7の構成部品であるホルダロックレバー9および電磁ソレノイド10からも切り離されている。この結果、操作レバー21が不必要に動作して、操作レバー21を外部に露出させているケース2の開口部から埃などの異物が内部に侵入して、操作レバー21のスライド部分、ホルダロックレバー9の支軸8の部分などに付着して、これらの円滑な動作が阻害されるという弊害を回避できる。また、操作レバー21、ホルダ押出板25の負荷が電磁ソレノイド10に作用してその駆動負荷が増加してしまうなどの弊害も回避できる。
【0042】
また、本例では、図3、4に示すように、ホルダロックレバー9がロック解除姿勢9Cになった後は、それ以上旋回することがなく、その状態に保持される。ホルダロックレバー9の移動範囲を抑制して、その移動のためのスペースを少なくしてあるので、カードリーダーライター1の小型化、レイアウトの自由度の点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は本発明を適用したICカードリーダーライターにおけるICカードが挿入される前の状態を示す概略構成図であり、(b)はそのカード強制排出機構の主要部分を示す部分斜視図である。
【図2】図1のICカードリーダーライターにおけるICカードが挿入されて内部まで押し込まれた後の状態を示す概略構成図である。
【図3】図1のICカードリーダーライターにおけるカード強制排出機構によってカードホルダのロックが解除された後の状態を示す概略構成図である。
【図4】図1のICカードリーダーライターにおけるカード強制排出機構によってロック解除後のカードホルダが前方に押し出された後の状態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ICカードリーダーライター
2 ケース
3 前端面
4 カード挿入口
5 カードホルダ
5A カード受け入れ位置
5B カード押し込み位置
5a ホルダ側係合爪
5b 上端面
5c 傾斜前端面
5d 延長部
6 引張りコイルばね
7 ホルダロック機構
8 支軸
9 ホルダロックレバー
9A ロック解除状態
9B ロック状態
9C ロック解除姿勢
9a 腕部分
9b レバー側係合爪
9c 検出片
9d 上端部
9e 前端面部分
9f 上端面部分
10 電磁ソレノイド
11 引抜防止シャッター
11a 垂直軸
11b 部分
12 カードストッパ
12a カード押し付け面
13 捻りばね
14、15 ホトセンサ
20 カード強制排出機構
21 操作レバー
21A 第1位置
21B 第2位置
21a 側面
22 引張りコイルばね
23 指掛け部
24 係合突起
25 ホルダ押出板
25a ガイド穴
25b 係合腕
26 支軸
27 係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード挿入口と、
このカード挿入口からカード型記憶媒体を押し込むと、当該カード型記憶媒体と共に押し込まれるカードホルダと、
このカードホルダが所定量押し込まれると、当該カードホルダに係合して当該カードホルダをその押し込み位置にロックするホルダロックレバーと、
このホルダロックレバーを、前記カードホルダとの係合が解除されるロック解除方向に移動させるためのロック解除部材と、
前記ホルダロックレバーとの係合が解除された前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出すためのカード排出用付勢部材と、
挿入されたカード型記憶媒体を強制的に排出するためのカード強制排出機構とを有し、
このカード強制排出機構は、
第1位置から第2位置に向けて操作可能な操作レバーと、
この操作レバーを前記第1位置に保持している保持用付勢部材と、
前記操作レバーの動きを、前記ホルダロックレバーをロック解除方向に移動させる力として伝え、当該ホルダロックレバーのロック解除後における前記操作レバーの動きを前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出す力として伝えるリンク機構とを備え、
前記操作レバーが前記第1位置にある状態では、前記リンク機構における前記ホルダロックレバーとの係合部は当該ホルダロックレバーの移動範囲から外れた位置にあり、当該リンク機構における前記カードホルダとの係合部は当該カードホルダの移動範囲から外れた位置にあることを特徴とするカードリーダーライター。
【請求項2】
請求項1において、
前記リンク機構は、
前記操作レバーに形成した第1係合部および第2係合部と、
前記第1位置から前記第2位置に向けて移動する前記操作レバーの前記第1係合部に係合して前記ホルダロックレバーを前記ロック解除方向に移動させるように、前記ホルダロックレバーに形成した第1被係合部と、
前記カードホルダを前記カード挿入口に向けて押し出すためのホルダ押出部材と、
前記ホルダロックレバーがロック解除状態になった後に、前記第2位置に向けて移動する前記操作レバーの前記第2係合部に係合して前記カードホルダの押出動作を開始するように、前記ホルダ押出部材に形成した第2被係合部とを備えていることを特徴とするカードリーダーライター。
【請求項3】
請求項2において、
前記ホルダロックレバーの前記第1被係合部は、第1被係合面および第2被係合面を備えており、
前記操作レバーの前記第1係合部は、前記第1被係合面に係合して前記ホルダロックレバーを前記ロック解除方向に移動させてロック解除状態が形成された後は、前記第2被係合面に係合して、前記ホルダロックレバーをその位置に保持することを特徴とするカードリーダーライター。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記ロック解除部材は電磁ソレノイドであり、
この電磁ソレノイドの復帰用ばね力によって、前記ホルダロックレバーは前記カードホルダに係合する方向に付勢されていることを特徴とするカードリーダーライター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−83929(P2008−83929A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262382(P2006−262382)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】