説明

カード検出スイッチ付きカードコネクタ

【課題】 カードが挿入されたことを検出するスイッチの接点部分への異物の付着を回避して接触信頼性を向上させ、かつ、低廉なカード検出スイッチ付きカードコネクタを提供する。
【解決手段】 カードコネクタ1において、カード検出スイッチ16を構成する第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3との間の接点をカード収容部13の外側に配置して、異物の付着を回避した。また、両者間の接点を二箇所として、それぞれの接点で、カードの挿入・抜去の進行に伴う摺動を発生させてワイピングすることで、高い接触信頼性を得た。また、第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3ともに捻り加工を伴わない形状としたことで、加工コストを抑えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード、SDカード、SIMカード等の種々のカード型記憶媒体(以下、カードと称する)が装着されるカードコネクタに関するものであり、さらに詳しくは、カードが装着されていることを検出するためのスイッチを備えるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
カード検出スイッチを備える従来のカードコネクタとして、特許文献1に開示されているものが例示される。このカードコネクタは、図6、および図7に示すように、板バネ状の可動接点91と、同じく板バネ状の相手方接点92とからなるカード検出スイッチ機構を備えており、カードが装着されると、摺動接点部91fと第1の相手方接点部92f、突合わせ接点部91gと第2の相手方接点部92gとがそれぞれ接触することで、可動接点91と相手方接点92との間が短絡され、カードの装着を検出することができるものである。また、このカード検出スイッチ機構は、カードの挿入の進行に伴って、前述の2点の接点それぞれに摺動を発生させて、それぞれの接点をワイピングし、接点部に付着した異物等を除去することで、高い接触信頼性を得ようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4469805号公報(段落0031〜0037)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のカードコネクタでは、前述の2点の接点が、いずれもカード収容部に面して設けられているため、このカードコネクタへカードを挿入(あるいは抜去)した際に、カードとハウジング本体20との間、あるいは、スライド部材50とハウジング本体20との間などにおいて生じる摺動に伴って発生する削れカスが、前述の2点の接点部分に付着する可能性がある。これらの部材は絶縁性樹脂で成形されているため、接点部分に付着した削れカスが前述のワイピングで除去しきれなかった場合には、接触への影響は免れないものであった。
【0005】
また、相手方接点92を形成するために、所定の形状に打ち抜いた弾性金属板材を90度捻る加工が必要となるため、相手方接点92が高価なものとなっていた。さらに、相手方接点92がカードの厚さ方向に対して弾性変位する構成のため、特にカードの厚さ方向について、小型化が困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、カード検出スイッチの接点への異物の付着を防ぐことで高い接触信頼性を獲得し、かつ、簡素な形状のコンタクトを用いてカード検出スイッチを構成することで、従来のものよりも低廉化が可能で、さらに、薄型化も可能なカード検出スイッチ付きカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明による請求項1記載のカードコネクタは、ハウジングと、当該ハウジングと組み合わせられるシールドカバーと、前記ハウジングと前記シールドカバーとによって形成されるカード収容部と、当該カード収容部へ通じており、正面へ向けて開口するカード挿入口と、前記ハウジングによって保持され、挿入されたカードの電極に弾性接触する信号コンタクトと、導電性金属板材によって形成された第1検出コンタクトと弾性を有する導電性金属板材によって形成された第2検出コンタクトとからなるカード検出スイッチとを備え、前記第1検出コンタクトは前記ハウジングに固定される第1基部を有し、前記第2検出コンタクトは前記ハウジングに固定される第2基部と、第2基部から連接して前記第1検出コンタクトへ向けて延在させて弾性変位可能に設けられた第2弾性片部とを有し、当該第2弾性片部は、前記第2基部から連接する部分を、前記カード収容部の内側方向へ折り曲げて形成され、挿入されたカードに当接して第2弾性片部を弾性変位させるカード当接部と、当該カード当接部から延在する部分を折り曲げて形成される接触部とを有してなるものであって、前記第1検出コンタクトと当該接触部とが、前記カード収容部に面していない部分において弾性接触することを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2記載のカードコネクタは、前記第1検出コンタクトが、当該第1検出コンタクトの先端に位置する先端接触部と、前記第1基部から先端接触部に至る間に位置する中間接触部とを有し、前記接触部は、前記カード当接部から延在する部分を折り曲げて形成され、前記先端接触部と弾性接触する第1接触部と、当該第1接触部から延在する部分を折り曲げて形成され、前記中間接触部と弾性接触する第2接触部とからなっており、前記第1検出コンタクトと前記第2検出コンタクトとが前記先端接触部と前記第1接触部、および、前記中間接触部と前記第2接触部の二箇所でそれぞれ弾性接触し、かつ、前記二箇所の弾性接触のうち少なくとも一方が、前記カード収容部に面していない部分で行われることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項3記載のカードコネクタは、前記第1検出コンタクトが、弾性を有する導電性金属板材によって形成され、第1基部から連接して前記第2検出コンタクトへ向けて延在させて弾性変位可能に設けられた第1弾性片部を有しており、前記先端接触部と中間接触部とが当該第1弾性片部に設けられており、カードの挿入、あるいは、抜去に伴って、前記先端接触部と前記第1接触部、および前記中間接触部と前記第2接触部が、それぞれ互いに異なる方向へ摺動しながら弾性接触するものであることを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項4記載のカードコネクタは、前記第1弾性片部が、カードの幅方向、もしくは、カードの挿抜方向のうちの一方と平行な第1方向に沿って弾性変位可能であり、前記第2弾性片部は、カードの幅方向、もしくは、カードの挿入抜去方向のうちの前記第1方向とは異なる第2方向に沿って弾性変位可能であり、前記カード当接部は、前記カードの隅部に対して傾斜して当接するものであって、カードの挿入、あるいは、抜去に伴って、前記先端接触部と前記第1接触部、および前記中間接触部と前記第2接触部が、それぞれカードの幅方向、もしくは、カードの挿抜方向に沿って摺動しながら弾性接触するものであることを特徴とする。
【0011】
本発明による請求項5記載のカードコネクタは、前記第1検出コンタクトが、前記ハウジングの背面側にカードの幅方向に沿って配置され、前記第1弾性片部がカードの挿抜方向に沿って弾性変位可能であり、前記第2検出コンタクトが、前記ハウジングの側部に、カードの挿抜方向に沿って配置され、前記第2弾性片部が、カードの幅方向に沿って弾性変位可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明による請求項6記載のカードコネクタは、前記中間接触部が、前記第1弾性片部を前記カード収容部の外側方向へ向けて湾曲させて設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、第1検出コンタクトと第2検出コンタクトとの間の接点をカード収容部の外側に配置したことで、挿入されたカードとカード当接部、あるいは、カードとハウジングとが摺動することに伴って発生し得るカードの外装樹脂の削れカスが接点に付着することを防ぐことができるため、接触信頼性を向上させることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、第1検出コンタクトと第2検出コンタクトの間の接点を、先端接触部と第1接触部、中間接触部と第2接触部、の二箇所としたことで、さらに接触信頼性を向上させることができる。またこの時、捻り加工を伴わない折り曲げ加工のみで第2検出コンタクトを形成したことで、捻り加工を伴う従来のものに比べて、加工コストを低減することが可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、第1検出コンタクトにおいて、第1基部から連ねて第1弾性片部を形成し、前述の二箇所の接点それぞれに、カードの挿入・抜去の進行に伴う摺動を発生させて、各接点でのワイピングが行われるようにしたことで、より一層、接触信頼性を向上させることができる。またこの時、第1検出コンタクトの形成には捻り加工を伴わないため、加工コストが増大しない。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、第1検出コンタクトの第1弾性片部、第2検出コンタクトの第2弾性片部の両方が、カードの厚さ方向に対して変位しないように構成することができるため、カードコネクタの薄型化が可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、カードコネクタの挿抜方向に沿って第2検出コンタクトを配置したことで、第2弾性片部に求められる弾性特性を得るために必要となる第2弾性片部の長さを確保することが容易となる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、第1弾性片部の一部をカード収容部の外側方向へ向けて湾曲させて中間接触部を形成したことによって、中間接触部と第2接触部との間の摺動をスムーズなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係るカードコネクタの外観を、装着されるカードと共に示した図であり、(a)は正面側斜視図、(b)は背面側斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るカードコネクタのシールドカバーを除去した状態の外観を示す正面側斜視図である。
【図3】第1検出コンタクトの外観を示す正面側斜視図である。
【図4】第2検出コンタクトの外観を示す正面側斜視図である。
【図5】カードの抜去に伴う第1検出コンタクトと第2検出コンタクトの挙動を示す図であり、(b)および(c)は要部以外を省略している。
【図6】従来のカードコネクタの例を示す平面図である。
【図7】従来のカードコネクタのカード検出スイッチ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例に係るカードコネクタ1について、図1乃至図5を用いて説明する。尚、便宜上、カード4が挿入される面をカードコネクタ1の正面として説明することとする。
【0021】
図1と図2を参照して、カードコネクタ1の主要な構造について説明する。カードコネクタ1は、下面側に絶縁性樹脂を射出成形することによって形成されたハウジング11を有しており、上面側に導電性を有する金属薄板をプレス成形することによって形成されたシールドカバー12を有している。シールドカバー12は、カードコネクタ1の上面を構成する面からハウジング11の外形に沿って、カードコネクタ1の左右側面、および背面へ向けて垂直に折り曲げて形成された三つの垂下面12aを有しており、それぞれの垂下面12aの先端には、垂下面12aの先端部分の一部をさらにカードコネクタ1の内側方向へ垂直に折り曲げて形成されたホールドダウン12bを有している。ハウジング11とシールドカバー12とは、シールドカバー12の上面、三つの垂下面12a、およびホールドダウン12bによってハウジング11を包み込むことで、互いに組み合わされている。
【0022】
ハウジング11は、カードコネクタ1の下面を構成する底面と、底面から、カードコネクタ1の左右側面、および背面のそれぞれと平行に立設して設けた三つの立設壁11aを有している。これら三つの立設壁11aと、ハウジング11の底面、および、シールドカバー12の上面によって、挿入されたカード4が収められるカード収容部13が構成されている。ハウジング11、シールドカバー12は、共に正面側へ向けて開放されており、カード収容部13と同じ幅、同じ高さでカード収容部13へ通じるカード挿入口14となっている。
【0023】
カードコネクタ1に挿入されるカード4は、公知のSIMカードである。カード4の下面には、カード4に内蔵されているデータ記憶手段と電気的に接続されている八つの電極41が所定の位置関係で配設されている。カードコネクタ1へのカード4の挿入が進行し、カード4の先端面が前述したハウジング11の背面側の立設面に当接した状態が、カード収容部13内における挿入されたカード4の所定の位置となる。
【0024】
ハウジング11には、弾性を有する導電性金属板材をプレス加工することによって形成した信号コンタクト15が埋設され、保持されている。各信号コンタクト15は、ハウジング11に埋設された部分の近傍より二股に分岐して設けられた二つの弾性接触部分を有しており、一方は幅広の主コンタクト15a、他方は幅狭の副コンタクト15bとなっている。主コンタクト15aと副コンタクト15bは、共にカード4の同一な電極41に弾性接触する。このように、幅の異なる二つの弾性接触部分を設けることで、カード4に衝撃が加わった際における接触信頼性を向上させることができる。
【0025】
信号コンタクト15の主コンタクト15aと副コンタクト15bは、いずれも同じ長さであり、ハウジング11の底面に対して同じ角度で、カード4の厚さ方向に弾性変位可能な状態で、カード収容部13内へ突出している。各信号コンタクト15は、カード4が所定の位置にある状態において、各主コンタクト15a、副コンタクト15bがカード4の各電極41に接触するように配設されている。
【0026】
各信号コンタクト15は、主コンタクト15aおよび副コンタクト15bと一体に形成されたはんだ付け部15cを有している。尚、主コンタクト15aおよび副コンタクト15bとはんだ付け部15cとの間を接続する部分は、ハウジング11に埋設されており、外観には現れていない。はんだ付け部15cは、カードコネクタ1を実装する印刷配線基板(図示しない)と平行に延在しており、カードコネクタ1を印刷配線基板へ載置した状態で、印刷配線基板に接するように形成されている。
【0027】
カードコネクタ1は、カード4が挿入されたことを検出するためのカード検出スイッチ16を備えている。カード検出スイッチ16は、ハウジング11の背面側に固定されている第1検出コンタクト2と、右側面側に固定されている第2検出コンタクト3とによって構成される。
【0028】
第1検出コンタクト2は、ハウジング11の背面側の立設壁11aに、第1検出コンタクト2の厚さと略同幅に設けられている第1保持溝11bに圧入されて保持されている。第2検出コンタクト3も同様に、ハウジング11の右側面側の立設壁11aに設けられている第2保持溝11cに圧入されて保持されている。カード検出スイッチ16は、カード4が挿入されていない状態において、第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3とが接触し、カード4が所定の位置まで挿入された状態において、第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3とが離間する、いわゆるノーマルクローズタイプのスイッチとなっている。検出スイッチの導通、非導通を図示しない検出回路によって検出することによって、カード4が挿入されているか、されていないかを判断することができる。
【0029】
図3を参照して、第1検出コンタクト2について詳述する。第1検出コンタクト2は、弾性を有する導電性金属板材をプレス加工して形成されており、ハウジング11に固定される第1基部21と、カード4の挿入方向に沿って弾性変位可能な第1弾性片部22とからなる。
【0030】
第1基部21は、第1延在部21a、第1圧入部21b、第1はんだ付け部21cを有する。第1延在部21aは、カードコネクタ1の幅方向に沿って延在している。第1圧入部21bは、第1延在部21aの一部を下方へ突出させて設けられており、本実施例では全部で三つの第1圧入部21bが設けられている。これらの第1圧入部21bは、ハウジング11の第1保持溝11bの底面側に設けられた圧入溝(図示しない)に圧入され、ハウジング11に対して強固に保持される。第1はんだ付け部21cは、第1延在部21aの一部を下方へ突出させ、さらに、その先端部分を背面方向へ垂直に折り曲げ、カードコネクタ1を印刷配線基板へ載置した状態で、その先端部分が印刷配線基板に接するように形成されている。
【0031】
第1弾性片部22は、前述した第1基部21から連接し、第1保持溝11bによって狭持されていない弾性変位可能な部分である。第1弾性片部22の先端付近に位置する部分には、カードコネクタ1の背面方向へ向けて突出する方向に湾曲させた中間接触部22aが設けられている。また、第1弾性片部22の最も先端に位置する部分が先端接触部22bである。これらの中間接触部22aと先端接触部22bの二点が、後述する第2検出コンタクト3と接触することによって、検出スイッチが構成されている。
【0032】
図4を参照して、第2検出コンタクト3について詳述する。第2検出コンタクト3は、弾性を有する導電性金属板材をプレス加工して形成されており、ハウジング11に固定される第2基部31と、カードコネクタ1の幅方向に沿って弾性変位可能な第2弾性片部32とからなる。
【0033】
第2基部31は、第2延在部31a、第2圧入部31b、第2はんだ付け部31cを有する。第2延在部31aは、カードコネクタ1のカード挿入方向に沿って延在している。第2圧入部31bは、第2延在部31aの一部を下方へ突出させて設けられており、本実施例では全部で三つの第2圧入部31bが設けられている。これらの第2圧入部31bは、ハウジング11の第2保持溝11cの底面側に設けられた圧入溝(図示しない)に圧入され、ハウジング11に対して強固に保持される。第2はんだ付け部31cは、第2圧入部31bと兼ねて形成されている。第2圧入部31bの長さは、第2圧入部31bが圧入溝に完全に挿入された状態で、第2圧入部31bの先端が、ハウジング11の印刷配線基板と対向する面とほぼ同一面に位置するように設定されており、ハウジング11の裏面側へ露出した第2圧入部31bの先端を、第2はんだ付け部31cとして利用できるようになっている。このように構成することで、カードコネクタ1の幅方向寸法の増大を抑制することができる。
【0034】
第2弾性片部32は、前述した第2基部31から連接し、第2保持溝11cによって狭持されていない弾性変位可能な部分である。第2弾性片部32には、第2基部31から近い順に、第1屈曲部32a、第2屈曲部32b、第3屈曲部32d、第4屈曲部32fが設けられている。
【0035】
第2弾性片部32は、第1屈曲部32aによって、カード収容部13の内側方向へ向けて、約10度の角度で折り曲げられている。これは、第2弾性片部32における第1屈曲部32aより先端側の部分が変位するためのスペースを確保するための措置である。
【0036】
第2弾性片部32は、第2屈曲部32bによって、カード収容部13の内側方向へ向けて、さらに約20度の角度で折り曲げられている。カード当接部32cは、この第2屈曲部32bから次の第3屈曲部32dへ至る間の部分である。カード当接部32cは、カード挿入方向に対して約30度の角度で傾斜している。この傾斜によって、カードコネクタ1へカード4が挿入され、挿入されたカード4の隅部42とカード当接部32cとが当接した状態から、さらにカード4が押し込まれた場合、第2弾性片部32をカード収容部13の外側へと変位させる作用がもたらされる。
【0037】
第2弾性片部32は、第3屈曲部32dによって、第1屈曲部32a、第2屈曲部32bとは逆に、カード収容部13の外側方向へ向けて、約30度の角度で折り曲げられている。この結果、第2弾性片部32の第3屈曲部32dから第4屈曲部32fへ至る部分は、カード4の挿入方向とほぼ平行となっている。第1接触部32eは、この第3屈曲部32dから次の第4屈曲部32fへ至る間の部分であり、前述の第1検出コンタクト2の先端接触部22bと当接し、弾性接触する。第1接触部32eをカード4の挿入方向とほぼ平行となるように設けることによって、第1接触部32e、先端接触部22bのそれぞれの変位に伴う相互間の良好な摺動を得ることができる。
【0038】
第2弾性片部32は、第4屈曲部32fによって、カード収容部13の内側方向へ向けて、約90度の角度で折り曲げられている。この結果、第2弾性片部32の第4屈曲部32fから先端へ至る部分は、カードコネクタ1の背面とほぼ平行となっている。第2接触部32gは、第4屈曲部32fから先端へ至る部分を、正面方向へ湾曲させて設けられており、前述の第1検出コンタクト2の中間接触部22aにおける背面側の面、すなわち、中間接触部22aにおけるカード収容部13に面していない部分において、中間接触部22aと弾性接触する。
【0039】
カードコネクタ1を印刷配線基板へ実装するに当たっては、前述の各信号コンタクト15のはんだ付け部15c、シールドカバー12の各ホールドダウン12b、第1はんだ付け部21c、および、第2はんだ付け部31cを、それぞれ印刷配線基板上に設けられた所定の形状の銅箔露出部上へはんだ付けを行う。本実施例のように、各信号コンタクト15や各検出コンタクトのはんだ付け部15cに加えて、シールドカバー12と一体に設けられたホールドダウン12bをもはんだ付けすることで、より高い実装強度を得ることができる。
【0040】
以下、このように構成された本発明に係るカードコネクタ1の所定の位置にカード4が装着されている状態から、カード4を抜去する際における第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3の挙動について、図5を参照しながら説明する。
【0041】
図5(a)は、カード収容部13の所定の位置にカード4が装着されている状態における第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3の様子を示している。この状態では、第2検出コンタクト3のカード当接部32cが、装着されているカード4の隅部42と当接しており、隅部42に対して傾斜しているカード当接部32cの作用によって、第2弾性片部32が、弾性力に抗してカード収容部13の外側へ向けて変位させられた状態となっている。この状態では、第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3との間が接触しておらず、検出スイッチは非導通状態となっている。
【0042】
図5(b)は、図5(a)の状態からカード4がわずかに抜去された状態における第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3の様子を示している。この段階では、カード4の抜去に伴って、カード4の隅部42とカード当接部32cとの当接箇所が第2基部31の方向へ移動し、第2弾性片部32が弾性復帰力によってカード収容部13内側へ向けて、やや変位している。この結果、第1検出コンタクト2の中間接触部22aと第2検出コンタクト3の第2接触部32gとが接触し始める状態にある。
【0043】
図5(c)は、図5(b)に示す位置よりも、さらにカード4が抜去された状態における第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3の様子を示している。この段階になると、カード当接部32cとカード4の隅部42とは当接しなくなり、第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3とが、相互に弾性接触している状態となっている。図5(b)の状態の後、カード4の抜去の進行によって、第2弾性片部32のカード収容部13の内側へ向けた変位がさらに進行する。これに伴って、中間接触部22aと第2接触部32gとは、中間接触部22aの湾曲に沿って摺動し続ける。このため、中間接触部22aと第2接触部32gとの接点において、ワイピングを得ることができる。
【0044】
第2接触部32gの変位は、第2弾性片部32の第2基部側の端部を中心とする円に沿う軌跡となる。このため第2接触部32gは、変位の進行に伴って、中間接触部22aを、カード収容部13の内側(カード4の抜去方向側)へ向けて弾性変位させる。この時、中間接触部22aが背面側へ向けて湾曲していることによって、第2接触部32gの変位軌跡と、中間接触部22aと第2接触部32gとの接点の移動軌跡とがほぼ同一となるため、摺動がスムーズに行われる。中間接触部22aが変位すると同時に、先端接触部22bもカード収容部13の内側へ向けて変位する。この先端接触部22bの変位は、先端接触部22bと第2検出コンタクト3の第1接触部32eとが当接する瞬間も継続しているため、これらが接触する際に、ワイピングを得ることができる。
【0045】
ここまで述べた通り、カードコネクタ1の検出スイッチにおいて、カード4を抜去する場合に、中間接触部22aと第2接触部32g、および、先端接触部22bと第1接触部32eとの間がそれぞれ摺接することで、これら二つの接点のそれぞれがワイピングされる。
【0046】
一連の挙動において、カード4の隅部42とカード当接部32cとの間での摺動が発生する。また、カード4と、カード収容部を構成するハウジング11、及びシールドカバー12との間でも摺動が発生する。カード4の外装、及びハウジング11は絶縁性合成樹脂によって形成されているため、摺動に伴って細かな削れカスが発生する可能性があるが、中間接触部22aと第2接触部32gとの間の接点が第1検出コンタクト2の背面側に位置するため、前述の細かな削れカスがこの接点へ侵入し、付着することによる電気的接触への悪影響が回避される。また、前述のワイピングによる異物除去の作用によって、接点がクリーンな状態に保たれ、高い接触信頼性を得ることができる。
【0047】
以上、カード収容部13の所定の位置にカード4が装着されている状態からカード4が抜去された場合の第1検出コンタクト2と第2検出コンタクト3の挙動について述べたが、抜去する場合とは逆に、カード4が挿入される場合においては、これまで述べた挙動が逆に進行することは言うまでもない。
【0048】
尚、信号コンタクト15、第1検出コンタクト2、及び、第2検出コンタクト3のハウジングによる固定方法は、本実施例で採用している圧入に限定されるものではなく、一体成形などの任意の固定方法が適用されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、カード検出スイッチを備えるカードコネクタに好適に応用でき、カード検出スイッチの接触信頼性の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0050】
1 カードコネクタ
11 ハウジング
11a 立設壁
11b 第1保持溝
11c 第2保持溝
12 シールドカバー
12a 垂下面
12b ホールドダウン
13 カード収容部
14 カード挿入口
15 信号コンタクト
15a 主コンタクト
15b 副コンタクト
15c はんだ付け部
16 カード検出スイッチ
2 第1検出コンタクト
21 第1基部
21a 第1延在部
21b 第1圧入部
21c 第1はんだ付け部
22 第1弾性片部
22a 中間接触部
22b 先端接触部
3 第2検出コンタクト
31 第2基部
31a 第2延在部
31b 第2圧入部
31c 第2はんだ付け部
32 第2弾性片部
32a 第1屈曲部
32b 第2屈曲部
32c カード当接部
32d 第3屈曲部
32e 第1接触部
32f 第4屈曲部
32g 第2接触部
4 カード
41 電極
42 隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
当該ハウジングと組み合わせられるシールドカバーと、
前記ハウジングと前記シールドカバーとによって形成されるカード収容部と、
当該カード収容部へ通じており、正面へ向けて開口するカード挿入口と、
前記ハウジングによって保持され、挿入されたカードの電極に弾性接触する信号コンタクトと、
導電性金属板材によって形成された第1検出コンタクトと、弾性を有する導電性金属板材によって形成された第2検出コンタクトと、からなるカード検出スイッチと、
を備え、
前記第1検出コンタクトは、
前記ハウジングに固定される第1基部を有し、
前記第2検出コンタクトは、
前記ハウジングに固定される第2基部と、
第2基部から連接して前記第1検出コンタクトへ向けて延在させて弾性変位可能に設けられた第2弾性片部とを有し、
当該第2弾性片部は、
前記第2基部から連接する部分を、前記カード収容部の内側方向へ折り曲げて形成され、挿入されたカードに当接して第2弾性片部を弾性変位させるカード当接部と、
当該カード当接部から延在する部分を折り曲げて形成される接触部と、
を有してなるカードコネクタにおいて、
前記第1検出コンタクトと当該接触部とが、前記カード収容部に面していない部分にいおいて弾性接触することを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記第1検出コンタクトは、
当該第1検出コンタクトの先端に位置する先端接触部と、
前記第1基部から先端接触部に至る間に位置する中間接触部とを有し、
前記接触部は、
前記カード当接部から延在する部分を折り曲げて形成され、前記先端接触部と弾性接触する第1接触部と、
当該第1接触部から延在する部分を折り曲げて形成され、前記中間接触部と弾性接触する第2接触部とからなり、
前記第1検出コンタクトと前記第2検出コンタクトとは、前記先端接触部と前記第1接触部、および、前記中間接触部と前記第2接触部、の二箇所でそれぞれ弾性接触するものであって、
かつ、前記二箇所の弾性接触のうち少なくとも一方は、前記カード収容部に面していない部分で行われることを特徴とする請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記第1検出コンタクトは、
弾性を有する導電性金属板材によって形成され、
第1基部から連接して前記第2検出コンタクトへ向けて延在させて弾性変位可能に設けられた第1弾性片部を有しており、
前記先端接触部と中間接触部とは、当該第1弾性片部に設けられてなり、
カードの挿入、あるいは、抜去に伴って、前記先端接触部と前記第1接触部、および前記中間接触部と前記第2接触部が、それぞれ互いに異なる方向へ摺動しながら弾性接触するものであることを特徴とする請求項2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記第1弾性片部は、
カードの幅方向、もしくは、カードの挿抜方向のうちの一方と平行な第1方向に沿って弾性変位可能であり、
前記第2弾性片部は、
カードの幅方向、もしくは、カードの挿入抜去方向のうちの、前記第1方向とは異なる第2方向に沿って弾性変位可能であり、
前記カード当接部は、
前記カードの隅部に対して傾斜して当接するものであって、
カードの挿入、あるいは、抜去に伴って、前記先端接触部と前記第1接触部、および前記中間接触部と前記第2接触部が、それぞれカードの幅方向、もしくは、カードの挿抜方向に沿って摺動しながら弾性接触するものであることを特徴とする請求項3記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記第1検出コンタクトは、前記ハウジングの背面側に、カードの幅方向に沿って配置され、前記第1弾性片部は、カードの挿抜方向に沿って弾性変位形可能であり、
前記第2検出コンタクトは、前記ハウジングの側部に、カードの挿抜方向に沿って配置され、前記第2弾性片部は、カードの幅方向に沿って弾性変位可能であることを特徴とする請求項4記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記中間接触部は、前記第1弾性片部を前記カード収容部の外側方向へ向けて湾曲させて設けられていることを特徴とする請求項3乃至5記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−12451(P2013−12451A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156108(P2011−156108)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】