説明

ガイド部材付き無端ベルト及び画像形成装置

【課題】例えば長時間の稼動によっても画像形成装置内で円滑に走行することのできるビード付き無端ベルトを提供すること、及び長時間の稼動によっても高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供。
【解決手段】無端ベルト本体と、25℃における接着強度に対して50℃における接着強度の変化率が±10%以内である接着層と、ガイド部材とを備えて成ることを特徴とするガイド部材付き無端ベルト及びこれを組み込んで成る画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガイド部材付き無端ベルト及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、無限軌道上を長期間にわたって円滑に走行することのできるガイド部材付き無端ベルト及び長期間にわたって高品質の画像を記録体に形成することができ、また円滑に駆動可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置例えば複写機、プリンター、ファクシミリ等には無端ベルトが様々に組み込まれている。例えば、複写機には、転写ベルト、転写搬送ベルト、搬送ベルト、定着ベルト等がその要求される機能に応じて組み込まれている。
【0003】
通常、その無端ベルトはその走行を安定させるために、ベルト本体の、無端ベルトを駆動する駆動部材に接触する側の面に、走行方向に沿って少なくとも一本のリブが設けられて成る。前記リブはガイド部材とも称されている。
【0004】
ガイド部材付き無端ベルトの一例として、特許文献1では、「ベルト本体の、無端ベルトを駆動する駆動部材に接触する側の面に、走行方向に沿って少なくとも一本のリブが設けられてなる導電性エンドレスベルトにおいて、前記リブの伸び率が、前記ベルト本体の伸び率と同じかまたはそれより大きいことを特徴とする導電性エンドレスベルト」が提案されている(特許文献1の請求項1参照)。
【0005】
特許文献1で提案されている発明の目的は、「走行時における蛇行等の発生を防止して、環境条件の変化にかかわらず安定した走行を行うことのできる導電性エンドレスベルトおよびそれを用いた画像形成装置を提供すること。」にある(特許文献1の段落番号0021参照)。
【0006】
一方、この特許文献1の段落番号0019に記載されているように、特許文献2には「耐久性に優れ、長期の使用においても蛇行することなく安定した走行が可能な電子写真装置用無端ベルトを実現するために、ベルトに対し、その内周面の長さが基材側の面の長さより若干短い状態となるようにガイド用リブを接合する技術。」が開示されている。
【特許文献1】特開2005−221625号公報
【特許文献2】特開2000−29326号公報
【0007】
一般に、ガイド部材付き無端ベルトにおいては、無端ベルト本体の、これを駆動する駆動部材に接触する側の面に、走行方向に沿って少なくとも一方のガイド部材が設けられている。このガイド部材の一端と他端とは若干の隙間が設けられている。この隙間は、前記したように、「長期の使用においても蛇行することなく安定した走行を可能にするため」に設けられているとされる(特許文献2)。
【0008】
しかし、この一端と他端とに若干の隙間が生じるようにガイド部材を無端ベルト本体に取り付けてなるガイド部材付き無端ベルトが画像形成装置内で長期にわたる使用を続けているうちに、ガイド部材の一端及び他端が無端ベルト本体から剥離してしまって、ガイド部材の一端及び他端が無端ベルト本体から起立してしまうことがあった。ガイド部材の一端及び他端が無端ベルト本体から剥離する原因は今のところ不明であるが、画像形成装置を長時間にわたって駆動すると画像形成装置内の温度が上昇することによりガイド部材が熱膨張すること、ガイド部材の端部に特に応力集中がかかること等が原因であろうと、推定される。ともかく、ガイド部材の一端及び他端が無端ベルト本体から起立した状態でこのようなガイド部材付き無端ベルトを画像形成装置内で走行させると、走行トラブルを発生させ、又は蛇行状態の走行となってしまい、またそのようになる懼れがあった。画像形成装置に組み込まれた無端ベルトが蛇行し、あるいは無端ベルトの走行の停止といったトラブルは、高い品質の画像を記録体に形成することをできなくする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の課題は、例えば長時間の稼動によっても画像形成装置内で円滑に走行することのできるガイド部材付き無端ベルトを提供すること、及び長時間の稼動によっても高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、無端ベルト本体と、25℃における接着強度に対して50℃における接着強度の変化率が±10%以内である接着層と、ガイド部材とを備えて成ることを特徴とするガイド部材付き無端ベルトであり、
請求項2は、前記接着層がアクリル系粘・接着剤で形成されて成る請求項1に記載のガイド部材付き無端ベルトであり、
請求項3は、前記接着層が基材なしの粘・接着剤で形成されて成る請求項1又は2に記載のガイド部材付き無端ベルトであり、
請求項4は、無端ベルト本体が導電性を有して成る請求項1〜3のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルトであり、
請求項5は、前記無端ベルト本体がポリアミドイミド樹脂で形成されて成る請求項1〜4のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルトであり、
請求項6は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルトを備えて成る画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、無端ベルト本体、25℃における接着強度に対して50℃における接着強度の変化率が±10%以内である接着層、及びガイド部材を有するので、長時間の稼動によっても蛇行を生じることがなく、円滑な走行を実現することのできるガイド部材付き無端ベルトが、提供される。この発明に係るガイド部材付き無端ベルトを装備することにより、長時間の稼動によっても高品質の画像を形成することのできる画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係るガイド部材付き無端ベルトについて図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1及び図2に示されるように、ガイド部材付き無端ベルト1は、無端ベルト本体2と、ガイド部材3と、このガイド部材3と無端ベルト本体2とを接着する接着層4とを、有して成る。
【0014】
(無端ベルト本体)
無端ベルト本体は、一般に、所定幅を有する長尺状のシートの一端と他端とを接合してなるジョイント有りの無端ベルト本体と、ジョイント無しの無端ベルト本体とのいずれであってもよい。この発明においては、無端ベルト本体としては、ジョイント無しの無端ベルト本体が、好ましい。このジョイント無しの無端ベルト本体は、一般にシームレスベルトと称されることがある。
【0015】
無端ベルト本体は、樹脂組成物を成形して成る。樹脂組成物は、ある程度の強度を有し、繰返し変形に耐える可撓性に富む樹脂単体又は複数種類の樹脂を含有してなる樹脂組成物であるのがよく、このような樹脂組成物に含有される樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、架橋型ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度及び耐久性等の観点から、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、特に、芳香族ポリアミドイミド樹脂が、機械的強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、好ましい。
【0016】
前記芳香族ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させるジイソシアネート法により製造することができ、原料の入手、反応性及び副生成物が少ない等の点で優れている。ジイソシアネート法で製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂の他にも、重縮合反応を好適に進めることができるのであれば、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いて製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂も、好ましい。ジアミン化合物を用いて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く、無端ベルトを形成する樹脂組成物に含まれる樹脂として好適である。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えてイミド結合を増加させた芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐湿性に優れている。芳香族ポリアミドイミド樹脂は、適宜の溶媒中で、常温下又は加熱下で反応させることにより、容易に合成することができる。
【0017】
前記トリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、例えば、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
トリカルボン酸無水物の一部に代えて用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネート化合物と共に、又は芳香族ジイソシアネート化合物に代えて、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を、又はこれらの誘導体であるアミン類を使用することもできる。
【0020】
芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの芳香族ジイソシアネート化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルト本体の耐熱性、機械的特性及び溶解性等を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の60質量%以上、好ましくは70質量%以上を、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート又はこれらの誘導体であるジアミン類とすることが好ましい。さらに、無端ベルト1の寸法安定性を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の70質量%以上をジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はこの誘導体である4,4′−ジアミノジフェニルメタンとすることがより好ましい。
【0021】
芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒としては、溶解性の点で極性溶媒が好ましく、反応性を考慮すると非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。非プロトン性極性溶媒として、例えば、N,N−ジアルキルアミド類が挙げられ、N,N−ジアルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、及び、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等が挙げられる。また、極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
樹脂組成物は、例えば、転写搬送ベルト等のように、ガイド部材付き無端ベルトにある程度の導電性が要求される場合には、導電性付与剤が添加され、導電性樹脂組成物とされる。導電性樹脂組成物に含有される導電性付与剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、金属又は合金等からなる針状、球状、板状及び不定形等の粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが、粒径、導電性及び樹脂との親和性等がバランスよく優れている点で、好ましい。また、カーボンブラックは、樹脂との親和性が向上する点で、酸化処理により、カルボキシ基、ヒドロキシ基等を付加した酸化処理カーボンブラックがより好ましく、pH5以下の酸化処理カーボンブラックも好ましい。この導電性付与剤は、球状又は不定形であるのが好ましく、そのサイズは0.01〜10μm程度であるのが好ましい。
【0023】
導電性付与剤の添加量は、導電性付与剤の導電性及び粒径、並びに、ガイド部材付き無端ベルトに要求される導電性等により、適宜調整すればよいが、通常、樹脂組成物と溶媒と導電性付与剤との合計100質量%に対して、1〜25質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましい。導電性付与剤の添加量が1質量%より少ないと、発現する導電性が小さいことがあり、一方、導電性付与剤の添加量が25質量%を超えると、ガイド部材付き無端ベルトの機械的強度が低下することがある。導電性付与剤を樹脂に分散させるには、公知の方法を適宜選択することができ、公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。
【0024】
樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、前記樹脂又は前記樹脂及び導電性付与剤に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、補強性充填材、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤、他の樹脂及び溶媒等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明における無端ベルト本体の製造方法を説明する。無端ベルト本体を製造するには、まず、前記樹脂組成物を、公知の成形方法によって、環状に成形する。例えば、無端ベルト本体を形成する樹脂組成物に含有される樹脂として熱可塑性樹脂を選択した場合には、遠心成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形等により、一方、樹脂として熱硬化性樹脂を選択した場合には、遠心成形、RIM成形等により、無端ベルト本体を成形することができる。これらの成形方法の中でも、材料を問わずに適用可能であり、かつ厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
【0026】
無端ベルト本体を遠心成形によって成形する場合には、無端ベルト本体を形成する樹脂組成物は、その成形時の粘度を50,000mPa・s以下に調整するのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト本体を製造するのが困難になることがある。樹脂組成物の粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調整することにより、樹脂組成物の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、例えば前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒等が挙げられる。
【0027】
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した樹脂組成物を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開し、樹脂組成物の層から溶媒を乾燥除去して、無端ベルト本体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤によりコーティング処理され、形成した無端ベルトが内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
【0028】
なお、樹脂組成物に含まれる樹脂としてポリアミドイミド樹脂を選択する場合には、上述した遠心成形による他に、ポリアミドイミド樹脂の原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とが一部重合したポリアミド酸の溶液を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト1を製造することもできる。
【0029】
金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去して、無端ベルト本体が製造される。ここで、除去される溶媒は、金型内周面に展開された樹脂組成物の層に含有された溶媒であり、例えば、樹脂組成物の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、溶媒を高度に除去するには、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
【0030】
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された樹脂組成物の層から、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、成形しつつ溶媒を除去する。一次溶媒除去工程では、熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
【0031】
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、取り出した金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を高度に除去する。例えば、熱風乾燥機、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃の過熱水蒸気で、0.5〜1時間加熱すればよい。このようにして、フィルム状成形体中の溶媒を高度に除去することができる。
【0032】
二次溶媒除去工程において、加熱雰囲気は、その酸素濃度を5%以下に保つのが、フィルム状成形体を酸化させない点で、好ましい。酸素濃度は3%以下であるのがより好ましく、1%以下であるのが特に好ましい。加熱雰囲気の酸素濃度を5%以下に保つには、酸素を含有しないガス又は酸素含有量が少ないガス、例えば、過熱水蒸気、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス等で、加熱装置内部を置換すればよい。なお、熱風乾燥機を用いる場合には、噴射される熱風を前記不活性ガス等にすることもできる。酸素濃度は、公知の酸素濃度計、例えば、「直接挿入形一体型ジルコニア式酸素濃度計/高温湿度計、ZR202G」等(横河電機株式会社製)によって、測定することができる。
【0033】
このようにしてフィルム状成形体から溶媒を高度に除去した後、フィルム状成形体を取り出し、放冷する。なお、金型ごとフィルム状成形体を放冷すると、金型とフィルム状成形体との熱膨張率の差により、樹脂組成物でできたフィルム状成形体を脱型することができる。脱型した円筒状のフィルム状成形体の両側端部を除去し、所定幅に裁断して、無端ベルト本体が製造される。
【0034】
なお、上記のようにして製造された無端ベルト本体は、単層であっても複数層からなる積層体であっても、良い。
【0035】
無端ベルト本体の大きさは、このガイド部材付き無端ベルトがどのような装置のどのような部位に装着されるかその用途に応じて適宜に決定される。このガイド部材付き無端ベルトが画像形成装置における転写搬送ベルトとして使用される場合には、このガイド部材付き無端ベルトの肉厚は、例えば1〜1000μm、好ましくは50〜300μmであり、走行方向に直交する長さである幅は、搬送されるもの例えば記録体の幅に応じて適宜に決定される。
【0036】
(ガイド部材)
この発明におけるガイド部材は、通常の場合、長尺のテープ状に形成され、単層であってもよく、複数層からなっていても良い。また、このガイド部材は適度の硬度を有する弾性体で形成されていればよい。ガイド部材を形成するための素材としては、例えばポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエステル樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等を挙げることができる。この発明において好適なガイド部材は、図3に示されるように、ポリエステル樹脂で形成されたポリエステル層4Aとポリウレタン樹脂で形成されたポリウレタン層4Bとを有する二層構造を有する。ポリエステル層を形成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を挙げることができる。ポリウレタン樹脂は、主鎖の構造によりポリエステルタイプ及びポリエーテルタイプのいずれも使用することができる。
【0037】
前記二層構造のガイド部材を採用する場合には、前記ポリエステル層を無端ベルト本体側にして無端ベルト本体にガイド部材を設置するのが、望ましい。
【0038】
このガイド部材は、通常、0.5〜2.5mmの厚みを有する。このような厚みを有するガイド部材を無端ベルト本体に装着するとガイド部材付き無端ベルトの蛇行が防止される。
【0039】
このガイド部材は、無端ベルト本体の内周面における、走行方向に平行な両端又はいずれか端部縁辺に、装着される。好適なガイド部材付き無端ベルトは、無端ベルト本体の内周面における、走行方向に平行な両端縁辺に、装着される。両端縁辺にそれぞれガイド部材が取り付けられていると、走行安定性が確保されるからである。
【0040】
(接着層)
このガイド部材と無端ベルト本体とは、接着層で接着される。この接着層は、25℃における接着強度に対して50℃における接着強度の変化率が±10%以内の接着層である。
【0041】
接着強度は、JIS K 6854−3に記載された「剥離接着強さ試験方法 第3部:T形剥離」に準拠する測定法により測定することができる。25℃での接着強度Aは、無端ベルト本体から切り出した試験片とガイド部材とを接着層で接着してから25℃、50%RHの環境下に60時間放置した後に前記試験片とガイド部材とをT形剥離し、その剥離の際の接着強度として求められる。50℃での接着強度Bは、無端ベルト本体から切り出した試験片とガイド部材とを接着層で接着してから50℃、80%RHの条件下に60時間放置した後に前記試験片とガイド部材とをT形剥離し、その剥離の際の接着強度として求められる。接着強度の変化率は、前記接着強度Aと接着強度Bとから、[(B−A)/A]×100〔%〕により求めることができる。
【0042】
この発明においては、前記接着強度の変化率が±10%以内である接着層でガイド部材と無端ベルト本体とを接着するので、無端ベルト本体からガイド部材の端部が剥離し、また、無端ベルト本体に装着されたガイド部材の一端及び他端以外の部分で無端ベルト本体から剥離することがなく、したがって、ガイド部材の剥離による走行トラブル、蛇行等が起こらない。
【0043】
このような接着強度の変化率を有する接着層としては、基材に接着剤を含浸させて成る層、基材なしの接着剤で形成された層等を挙げることができる。
【0044】
前記基材としては、樹脂製のフィルム、繊維シート等を挙げることができる。もっとも、この発明においては、無端ベルト本体とガイド部材との接着がこのガイド部材付き無端ベルトを装備する装置内の熱によって阻害されないことを企図するのであるから、無端ベルト本体及びガイド部材と接着層との熱膨張率が大きく異ならないことが望ましく、このような観点からすると、接着層内に前記樹脂製のフィルム又は繊維シート等を含有しないことが望ましく、したがって基材なしの接着層が好ましい。
【0045】
基材ありの接着層及び基材なしの接着層のいずれにおいても、接着層形成に用いられる接着剤としては、天然又は合成のゴム系粘・接着剤、ウレタン系、アクリル系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系等の合成樹脂からなる粘・接着剤等を挙げることができる。なおここで、「粘・接着剤」との表現は粘着剤及び接着剤のいずれか一方又は両方を含むことを明らかにするためである。
【0046】
これら各種の粘・接着剤の中でも、アクリル系粘・接着剤が好ましい。好適なアクリル系粘・接着剤としては、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、好ましくは炭素数が4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの単独重合体もしくは(メタ)アクリル酸エステルモノマー同士の共重合体、又は上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと該(メタ)アクリル酸エステルモノマーと共重合可能な重合性モノマーとの共重合体等と、架橋剤例えばポリイソシアネート化合物とを含有する組成物、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、ラジカル重合性の不飽和二重結合で末端を修飾されたオレフィン重合体または共重合体(b)と、ラジカル重合性の不飽和二重結合で末端を修飾され、数平均分子量が2000〜30000であり、かつガラス転移温度が30℃以上である重合体(c)とを共重合して成るアクリル系共重合体を含有する組成物、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、あるいはイソシアネート基から選ばれる1種類の官能基を有する重合性単量体(d)と、ラジカル重合性の不飽和二重結合で末端を修飾されたオレフィン重合体または共重合体(b)とを共重合してなるアクリル系共重合体(X1)に、重合性単量体(d)の官能基と反応可能な1種類の官能基を片末端に有し、数平均分子量が2000〜30000であり、かつガラス転移温度が30℃以上である重合体(e)をグラフトさせて成るアクリル系共重合体を含有する組成物、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、あるいはイソシアネート基から選ばれる1種類の官能基を有する重合性単量体(d)とを共重合してなるアクリル系共重合体(X2)に、片末端に重合性単量体(d)の官能基と反応可能な1種類の官能基を有するオレフィン重合体または共重合体(f)をグラフトさせて成るアクリル系共重合体を含有する組成物、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、あるいはイソシアネート基から選ばれる1種類の官能基を有する重合性単量体(d)と、ラジカル重合性の不飽和二重結合で末端を修飾され、数平均分子量が2000〜30000であり、かつガラス転移温度が30度以上である重合体(c)とを共重合してなるアクリル系共重合体(X3)に、片末端に重合性単量体(d)の官能基と反応可能な1種類の官能基を有するオレフィン重合体または共重合体(f)をグラフトさせて成るアクリル系共重合体を含む組成物等を挙げることができる。好適なアクリル系粘・接着剤は、前記組成物で形成された積水化学工業(株)の「ダブルタックテープ♯5516H」として容易に入手することができる。市販されている粘・接着剤は、剥離紙の一面に前記粘・接着剤が塗布されている。
【0047】
この接着層は、無端ベルト本体がポリアミドイミド樹脂から形成され、またガイド部材における無端ベルト本体に接着される層がポリエステル層であるときには、前記アクリル系粘・接着剤が好適である。
【0048】
無端ベルト本体へのガイド部材の取り付けは、例えば無端ベルト本体における所定部位に、前記粘・接着剤を塗工し、又は剥離紙に粘・接着剤を塗工してなる粘・接着テープを接着した後に剥離紙を剥離することにより、無端ベルト本体上に接着層を形成し、次いでその接着層上にガイド部材を重ね合わせ、必要に応じて加熱し、加圧することにより、完了することができる。
【0049】
(画像形成装置)
この発明に係る画像形成装置は、この発明に係るガイド部材付き無端ベルトを装着する。画像形成装置としては複写機、プリンター、ファクシミリ、ビデオプリンター等を挙げることができる。このような画像形成装置における感光装置、中間転写装置、転写搬送装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に、この発明に係るガイド部材付き無端ベルトを応用することができる。
【0050】
このガイド部材付き無端ベルトを転写搬送ベルトとして組み込んだ画像形成装置を図4に示す。なお、図4において、このガイド部材付き無端ベルト1は、転写搬送ベルト30として、複数の支持ローラ5に張架されている。
【0051】
画像形成装置10は、図4に示されるように、各色の現像ユニットに装備された複数の像担持体11を転写搬送ベルト30上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットBK、C、M及びYが転写搬送ベルト30上に直列に配置されている。これらの現像ユニットはそれぞれ、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11を帯電させる帯電手段12と、像担持体11の上方に設けられ、像担持体11に静電潜像を形成する露光手段13と、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に一定の層厚で現像剤22を供給し、静電潜像を現像する現像手段20と、像担持体11の下方に転写搬送ベルト30を介して圧接するように設けられ、像担持体11から転写搬送ベルト30で搬送される転写体16上に現像された静電潜像を転写する転写手段14と、転写体16に転写されず像担持体11に残留した現像剤22等を除去するクリーニング手段15とを備えている。
【0052】
前記像担持体11、前記帯電手段12、前記露光手段13、前記転写手段14及び前記クリーニング手段15は、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0053】
前記現像手段20は、図4に示されるように、像担持体11に対向する位置に開口部を有し、現像剤22を収納する現像剤収納部21と、現像剤収納部21の開口部に、像担持体11に当接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11に現像剤22を一定の層厚で現像剤22を供給する回転可能な現像剤担持体23と、現像剤担持体23の上方に設けられ、現像剤担持体23に当接して現像剤22の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22を帯電させる現像剤規制部材24とを備えている。
【0054】
前記現像剤22は、摩擦により帯電可能で、転写体16に定着可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。現像ユニットBK、C、M及びYはそれぞれ、現像剤収納部21内に、黒色現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤及び黄色現像剤が収納されている。
【0055】
図4に示されるように、現像ユニットBK、C、M及びYにおける像担持体11と転写手段14とは、二本の支持ローラ5に張架された転写搬送ベルト30を介して、当接している。そして、転写体16は、転写搬送ベルト30により、像担持体11と転写手段14との当接部を通過するように、搬送される。この転写搬送ベルト30は転写体16を搬送すると共に、転写手段14と協働して像担持体11に現像された静電潜像を転写する。
【0056】
図4に示されるように、画像形成装置10の底部には、転写体16として複数枚の転写紙を積層収容してなるカセット31が設置されており、カセット31内の転写紙は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、転写搬送ベルト30上に搬送される。
【0057】
図4に示されるように、画像形成装置10における転写体16の搬送方向下流には、転写体16に転写された現像剤22(静電潜像)を定着させる定着手段32が配置されている。
【0058】
画像形成装置10は、次にように作用する。まず、現像ユニットBKの像担持体11が、帯電手段12により一様に帯電され、露光手段13により画像が露光されて、像担持体11の表面に静電潜像が形成される。一方、現像手段20において、現像剤担持体23及び現像剤規制部材24により、黒色現像剤22が所望の層厚に規制され、所望のように帯電される。そして、この黒色現像剤22が現像剤担持体23から像担持体11に供給され、像担持体11に形成された静電潜像が現像されて、現像剤像として可視化される。次いで、この現像剤像が、像担持体11と転写手段14との間に転写搬送ベルト30により搬送される転写体16上に、転写される。このようにして、現像剤像が転写紙16上に黒像に顕像化される。
【0059】
次いで、現像ユニットBKと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、現像剤像が黒像に顕像化された転写紙16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。このとき、転写搬送ベルト30として、この発明に係るガイド部材付き無端ベルト1を用いているから、転写搬送ベルト30が蛇行走行及び波打ち走行することを所望のように防止することができ、転写紙16上に顕像化された黒像に、シアン像、マゼンタ像及び黄色像が正確な位置に重畳される。その結果、この発明に係るガイド部材付き無端ベルトを備えて成る画像形成装置10によれば、色ムラ及び画像ズレ等を長期間にわたって効果的に防止することができ、高品質の画像を形成することができる。
【0060】
次いで、カラー像が顕像化された転写体16は、定着手段32に搬送され、定着手段32によりカラー像が永久画像として転写体16に定着される。このようにして、転写体16にカラー画像を形成することができる。
【0061】
画像形成装置10によれば、長期間にわたって、黒像、シアン像、マゼンタ像及び黄色像を正確な位置に重畳することができるから、色ムラ及び画像ズレ等を長期間にわたって所望のように防止することができ、高品質かつ高解像度の画像を形成することができる。
【0062】
なお、この発明に係るガイド部材付き無端ベルト1を、前記像担持体11と同様の役割を担う感光ベルト、像担持体11で顕像化された現像剤像が一旦転写(一次転写)され、次いで、転写体16に転写(二次転写)されて、転写体に画像を転写する際に、一次転写体として使用される中間転写ベルト、転写体16を搬送する搬送ベルト、定着器に使用される定着ベルト及び前記現像剤担持体と同様の役割を担う現像ベルトとして、画像形成装置に組み込んでも、転写搬送ベルトの場合と同様に、画像形成装置10によって、高品質かつ高解像度の画像を形成することができる。
【0063】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置とされているが、画像形成装置は、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置であっても、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
ポリアミドイミド溶液からなる流動性の材料を準備した。この材料の調製に際しては、トリメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとの当量をジメチルアセトアミドに溶解し、加熱反応して固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)28質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。これにジメチルアセトアミドを加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH5.8、揮発分10.0%)をポリアミドイミド溶液と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間混合分散して、導電性樹脂組成物を調製した。成形に使用する金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、導電性樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。次いで、金型を同速度で回転させて導電性樹脂組成物を金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、金型ごと250℃のオーブンに2時間投入して、二次溶媒除去工程を行い、無端ベルト基体を得た。
【0065】
金型を取り出したら、金型を放置して室温で冷却し、金型と無端ベルト基体との熱膨張差を利用して無端ベルト基体を脱型した。そして、無端ベルト基体の両端部をそれぞれカットして240mmの幅とし、厚さ約100μmの無端ベルト本体を作製した。
【0066】
次いで、幅1000mm、厚さ100μmのPETフィルム(商品名:ルミラーS10#100 東レ株式会社製)をフィルム成形機にセットし、冷却ロールと巻き取りロールの間で196.1Nの張力で引張った上に120℃に加熱溶融させた熱可塑性ウレタン樹脂(商品名:E180 日本ミラクトラン株式会社製)をTダイにより厚み0.9mmに吐出しラミネートさせ、これをガイド部材原反とした。
【0067】
このガイド部材原反からMD方向の長さ707mm、TD方向の幅5mmのガイド部材をトムソン刃により切り出した。このガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に100℃、0.2MPa、20秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0068】
(実施例2)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に120℃、0.2MPa、30秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0069】
(実施例3)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に100℃、0.2MPa、10秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0070】
(実施例4)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に80℃、0.2MPa、15秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0071】
(実施例5)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に90℃、0.2MPa、25秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0072】
(実施例6)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516H 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に80℃、0.2MPa、5秒で熱圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0073】
(比較例1)
実施例1で作製したガイド部材を、ポリエステルフィルム基材のアクリル系両面粘着剤(商品名:#7641 株式会社寺岡製作所製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0074】
(比較例2)
実施例1で作製したガイド部材を、基材のないアクリル系両面粘着剤(商品名:♯5516C 積水化学工業株式会社製)を介して無端ベルト本体内周面の一方の側縁に圧着し、ガイド部材付き無端ベルトを作製した。この際にガイド部材の継ぎ目の間隔を3mmとした。このガイド部材付き無端ベルトを25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものと、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを作製した。
【0075】
[接着強度測定方法]
実施例1〜6、および比較例1、2で作製した無端ベルト本体から切り出した幅5mm、長さ70mmの試験片とガイド部材とを各6個ずつ用意して接着し、25℃、50%RHの環境下で60時間放置したものを各3個、50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したものを各3個作製した。次に、無端ベルト本体から切り出した試験片及びガイド部材の接着層を有していない各々端部(幅5mm)を引張ゲージに固定した。続いて、無端ベルト本体から切り出した試験片に対してガイド部材を180度方向に100mm/分の速度で引張り、引張り時の最大荷重を接着強度とした(接着強度A:25℃、50%RHの環境下で60時間放置したもの、接着強度B:50℃、80%RHの恒温槽で60時間加熱したもの)。尚、接着強度は、テンシロン引張試験機を用いて、JIS K 6854−3に従って測定した。各3個の平均接着強度を算出した評価結果を表1に示す。
【0076】
[無端ベルトの実用性評価]
実施例1〜6、および比較例1、2で作製したガイド部材付き無端ベルトを、それぞれタンデム方式のカラープリンタ(株式会社沖データ:MicroLine9055c)に装着して実機テストをした。プリント速度は、A4用紙を横21枚/分印刷する速度で1万枚印刷して、目視によりガイド部材付き無端ベルトの端部を確認した。ガイド部材と無端ベルト本体との接着面において、剥離なきものを○とし、剥離ありのものを×とした。評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、この発明の一実施例であるガイド部材付き無端ベルトを示す一部切欠概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例であるガイド部材付き無端ベルトにおけるガイド部材取り付け部位を示す一部切欠斜視図である。
【図3】図3は、この発明の一実施例であるガイド部材付き無端ベルトにおけるガイド部材を示す断面斜視図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例であるタンデム型カラー画像形成装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0079】
1 無端ベルト
2 無端ベルト本体
3 ガイド部材
4 接着層
10 画像形成装置
11 像担持体
12 帯電手段
13 露光手段
14 転写手段
15 クリーニング手段
16 転写体
20 現像手段
21 現像剤収納部
22 現像剤
23 現像剤担持体
24 現像剤規制部材
30 転写搬送ベルト
31 カセット
32 定着手段
BK、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト本体と、25℃における接着強度に対して50℃における接着強度の変化率が±10%以内である接着層と、ガイド部材とを備えて成ることを特徴とするガイド部材付き無端ベルト。
【請求項2】
前記接着層がアクリル系粘・接着剤で形成されて成る請求項1に記載のガイド部材付き無端ベルト。
【請求項3】
前記接着層が基材なしの粘・接着剤で形成されて成る請求項1又は2に記載のガイド部材付き無端ベルト。
【請求項4】
無端ベルト本体が導電性を有して成る請求項1〜3のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルト。
【請求項5】
前記無端ベルト本体がポリアミドイミド樹脂で形成されて成る請求項1〜4のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のガイド部材付き無端ベルトを備えて成る画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−316449(P2007−316449A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147434(P2006−147434)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】