説明

ガスクロマトグラフ

【課題】モータと筐体とを適切に冷却することができるガスクロマトグラフを提供する。
【解決手段】 筐体20の内部に、器壁と空間を空けて配置されるオーブン10と、所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第一ハネ32が接続され第一モータ40によって所定の方向を中心軸として回転する第一シャフト34と、所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第二ハネ33が接続され、第二モータ41によって所定の方向を中心軸として回転する第二シャフト35とを備え、筐体20とオーブン10との間を所定の方向に流通するように空気を通過させるために、筐体20の前部には前側開口部21a、22aが形成されるとともに、筐体20の後部には後側開口部23aが形成されているガスクロマトグラフ1であって、所定の方向と垂直となる面において、後側開口部23aの面積は、第二ハネ33の回転面積より大きく、後側開口部23aの周縁部から所定の方向に伸びる筒形状のダクト23bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブンの内部にカラムを収容して、カラムの温度を調節するガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフでは、試料ガスが、キャリアガスに押されてカラムの入口端からカラム内に導入される。これにより、試料ガスに含まれる各測定物質は、カラム内を通過する間に時間軸方向に分離されて、カラムの出口端に到達することになる。このとき、試料ガスを所定の温度でカラム内を通過させるために、オーブンの内部にカラムを収容して、オーブンの内部の温度(例えば、450℃までの任意の温度)Tを調節することができるガスクロマトグラフが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のガスクロマトグラフの一例を示す断面図である。また、図4(a)は、図3に示すガスクロマトグラフの左側面図であり、図4(b)は、図3に示すガスクロマトグラフの右側面図であり、図4(c)は、図3に示すガスクロマトグラフの背面図である。
ガスクロマトグラフ101は、器壁を有する筐体20と、筐体20の内部に配置されるオーブン10と、試料ガスが通過するカラム31と、オーブン10の内部に配置される第一ハネ32と、第一モータ40と、第一ハネ32と第一モータ40とを連結する第一シャフト34と、オーブン10の外部に配置される第二ハネ33と、第二モータ41と、第二ハネ33と第二モータ41とを連結する第二シャフト35とを備える。
【0004】
オーブン10は、上下左右の4面の断熱性の壁11と、断熱性の背面壁12と、断熱性の前面壁となる前面扉13とで囲われた立方体形状のハウジングを備え、オーブン10の内部には、オーブン10の内部の空気を加熱するヒータ14が収容されている。また、オーブン10の内部には、カラム31と第一ハネ32とが収容されている。
そして、背面壁12には円柱形状の貫通孔12aが形成されており、第一シャフト34が貫通孔12aを貫通することにより、オーブン10の内部の第一ハネ32と、オーブン10の外部の第一モータ40とを連結する。
【0005】
第一モータ40は、円筒形状のフレーム40aと、フレーム40aの内周面に固定されたステータ40bと、第一シャフト34の他端部の外周面に固定されたロータ40cと、第一シャフト34がフレーム40aに対して回転自在となるように第一シャフト34の他端部を支持する2個のベアリング40dとを有する。ベアリング40dには、第一シャフト34を滑らかに回転させるために、潤滑油が使用されている。
第一シャフト34は、所定の耐熱性と所定の強度を有する金属(例えば、鉄等)で形成されており、例えば、直径10mm、長さ235mm等の円柱形状である。そして、第一シャフト34の一端部は、第一ハネ32の中央部に固定されている。そして、第一シャフト34の他端部は、第一モータ40に対して円柱形状の中心軸を回転軸として回転自在となるように支持されている。
【0006】
第二モータ41は、円筒形状のフレーム41aと、フレーム41aの内周面に固定されたステータ41bと、第二シャフト35の他端部の外周面に固定されたロータ41cと、第二シャフト35がフレーム41aに対して回転自在となるように第二シャフト35の他端部を支持する2個のベアリング41dとを有する。ベアリング41dには、第二シャフト35を滑らかに回転させるために、潤滑油が使用されている。
第二シャフト35は、所定の耐熱性と所定の強度を有する金属(例えば、鉄等)で形成されており、例えば、直径10mm、長さ235mm等の円柱形状である。そして、第二シャフト35の一端部は、第二ハネ33の中央部に固定されている。そして、第二シャフト35の他端部は、第二モータ41に対して円柱形状の中心軸を回転軸として回転自在となるように支持されている。なお、第二モータ41が前方に配置され、第二ハネ33が後方に配置されている。
【0007】
筐体20は、上面壁(図示せず)と、下面壁(図示せず)と、左側壁21と、右側壁22と、背面壁123と、前面壁24とで囲われた直方体形状の器壁を有する。筐体20の内部には、オーブン10が器壁と所定の距離(空間)を空けて収容されている。
左側壁21の前部下部と中部下部とには、複数個の長穴の開口部21aが形成されるとともに、右側壁22の前部中部と前部下部とには、複数個の長穴の開口部22aが形成されている。
背面壁123の中央部には、直径L(例えば、100〜130mm)の円形状の後側開口部123aが形成されている。後側開口部123aの前方5〜10mmの位置には、第二ハネ33が配置されている。なお、回転軸と垂直となる面において、後側開口部123aの面積は、第二ハネ33の回転面積(直径Lの円形状)の1.1倍となっている。
【0008】
このようなガスクロマトグラフ101において、ヒータ14に通電電力を供給することによってオーブン10の内部の空気を加熱して、第一モータ40に通電電力を供給することによって第一シャフト34を介して第一ハネ32を回転させることで加熱された空気を循環させることにより、オーブン10の内部を均一の目的温度Tにするようになっている。また、第二モータ41に通電電力を供給することによって第二シャフト35を介して第二ハネ33を回転させることで、前側開口部21a、22aから空気を筐体20とオーブン10との間に入れ、筐体20とオーブン10との間を前方から後方(所定の方向)に空気を流通させ、その後、後側開口部123aから空気を排出させることにより、筐体20と第一モータ40と第二モータ41とを空気で冷却するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−68520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述したようなガスクロマトグラフ101では、筐体20は安全上70℃以下にする必要がある。また第一モータ40や第二モータ41が100℃以上の高温になったりすると、電気導線(図示せず)等が劣化したり、第一モータ40や第二モータ41のベアリング40d、41dの潤滑油等が流出したりしてしまうため、筐体20とオーブン10との間を所定の方向に流通させた空気で筐体20と第一モータ40と第二モータ41とを冷却するようになっている。しかしながら、オーブン10のハウジングの熱で暖められた空気を用いるので、第一モータ40や第二モータ41が効率よく冷却されていなかった。そのため、第二ハネ33を速く回転させて、筐体20とオーブン10との間を流通する空気の流速を上げたところ、今度は筐体20だけでなく、オーブン10のハウジングも冷却されてしまうという問題点が発生した。
そこで、本発明は、モータと筐体とを適切に冷却することができるガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明のガスクロマトグラフは、外部と内部とを分離する器壁を有する筐体と、前記筐体の内部に、前記器壁と空間を空けて配置されるオーブンと、前記オーブンの内部に配置されるカラム及び第一ハネと、前記筐体の内部であり、かつ、前記オーブンの外部である位置に配置される第二ハネ、第一モータ及び第二モータと、所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第一ハネが接続され、前記第一モータによって所定の方向を中心軸として回転する第一シャフトと、所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第二ハネが接続され、前記第二モータによって所定の方向を中心軸として回転する第二シャフトとを備え、前記筐体とオーブンとの間を所定の方向に流通するように空気を通過させるために、前記筐体の前部には前側開口部が形成されるとともに、前記筐体の後部には後側開口部が形成されており、前記第二ハネは、当該後側開口部の前方に配置されるガスクロマトグラフであって、前記所定の方向と垂直となる面において、前記後側開口部の面積は、前記第二ハネの回転面積より大きく、前記後側開口部の周縁部から所定の方向に伸びる筒形状のダクトが形成されているようにしている。
【0012】
ここで、「所定の方向」とは、設計者等によって筐体とオーブンとの間に空気を通過させるために予め決められた任意の一方向であり、例えば、前方から後方等となる。
また、「回転面積」とは、第二ハネが回転してできる面積のことをいう。
【0013】
本発明のガスクロマトグラフによれば、第二ハネを回転させることで、前側開口部から空気を筐体とハウジングとの間に入れ、筐体とハウジングとの間を所定の方向に空気を流通させ、その後、後側開口部の中央部から空気を排出させることにより、筐体とモータとを空気で冷却するようになっている。さらに、第二ハネの回転面積より大きい後側開口部の周縁部から空気を入れ、モータの周りに空気を流通させ、その後、後側開口部の中央部から排出させることにより、モータを空気で冷却するようになっている。つまり、筐体とオーブンとの間を流通していない空気でモータを冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフによれば、モータと筐体とを適切に冷却することができる。
【0015】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記後側開口部は、四角形であるようにしてもよい。
また、上記の発明において、前記所定の方向と垂直となる面において、前記後側開口部の面積は、前記第二ハネの回転面積の1.2倍以上2.25倍以下であるようにしてもよい。
本発明のガスクロマトグラフによれば、後側開口部の面積は、第二ハネの回転面積の1.2倍以上2.25倍以下であるようにしているので、後側開口部の周縁部から空気を入れ、モータの周りに空気を流通させ、その後、後側開口部の中央部から排出させることが確実にできる。
【0016】
そして、上記の発明において、前記筒形状のダクトの内部に、少なくとも第二モータ及び第二ハネが配置されているようにしてもよい。
さらに、上記の発明において、前記第一シャフトと第二シャフトとは、結合されて一本のシャフトとなるとともに、前記第一モータと第二モータとは、一体的に機能するように一個のモータとなっているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のガスクロマトグラフの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示すガスクロマトグラフの左右の側面図と背面図である。
【図3】従来のガスクロマトグラフの一例の断面図である。
【図4】図3に示すガスクロマトグラフの左右の側面図と背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0019】
図1は、本発明のガスクロマトグラフの一例を示す断面図である。また、図2(a)は、図1に示すガスクロマトグラフの左側面図であり、図2(b)は、図1に示すガスクロマトグラフの右側面図であり、図2(c)は、図1に示すガスクロマトグラフの背面図である。なお、上述したガスクロマトグラフ101と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガスクロマトグラフ1は、器壁を有する筐体20と、筐体20の内部に配置されるオーブン10と、試料ガスが通過するカラム31と、オーブン10の内部に配置される第一ハネ32と、第一モータ40と、第一ハネ32と第一モータ40とを連結する第一シャフト34と、オーブン10の外部に配置される第二ハネ33と、第二モータ41と、第二ハネ33と第二モータ41とを連結する第二シャフト35とを備える。
【0020】
筐体20は、上面壁(図示せず)と、下面壁(図示せず)と、左側壁21と、右側壁22と、背面壁23と、前面壁24とで囲われた直方体形状の器壁を有する。筐体20の内部には、オーブン10が器壁と所定の距離(空間)を空けて収容されている。
左側壁21の前部下部と中部下部とには、複数個の長穴の開口部21aが形成されるとともに、右側壁22の前部中部と前部下部とには、複数個の長穴の開口部22aが形成されている。
背面壁23の中央部には、一辺L(例えば、110mm)の四角形の後側開口部23aが形成されている。後側開口部23aの前方5〜10mmの位置には、第二ハネ33が配置されている。なお、回転軸と垂直となる面において、後側開口部23aの面積は、第二ハネ33の回転面積(直径Lの円形状)の1.5倍となっている。
さらに、後側開口部23aの周縁部には、四角筒形状(例えば、一辺110mm、高さ90mm)のダクト23bが形成されている。つまり、ダクト23bの内部に第二ハネ33と第二モータ41とが配置されている。
【0021】
このようなガスクロマトグラフ1において、ヒータ14に通電電力を供給することによってオーブン10の内部の空気を加熱して、第一モータ40に通電電力を供給することによって第一シャフト34を介して第一ハネ32を回転させることで加熱された空気を循環させることにより、オーブン10の内部を均一の目的温度Tにするようになっている。また、第二モータ41に通電電力を供給することによって第二シャフト35を介して第二ハネ33を回転させることで、前側開口部21a、22aから空気を筐体20とオーブン10との間に入れ、筐体20とオーブン10との間を前方から後方(所定の方向)に空気を流通させ、その後、後側開口部23aの中央部から空気を排出させることにより、筐体20と第一モータ40と第二モータ41とを空気で冷却するようになっている。さらに、後側開口部23aの周縁部(四角形の角部)から空気を入れ、第二モータ41とダクト23bとの間に空気を所定の方向と逆方向に流通させ、その後、第二モータ41とダクト23bとの間に空気を所定の方向に流通させ、後側開口部23aの中央部から排出させることにより、第二モータ41を空気で冷却するようになっている。つまり、筐体20とオーブン10との間を流通していない空気で第二モータ41を冷却することができる。
【0022】
以上のように、本発明のガスクロマトグラフ1によれば、第一モータ40と第二モータ41と筐体20とを適切に冷却することができる。
【0023】
<他の実施形態>
(1)上述したガスクロマトグラフ1において、ダクト23bの内部に第二ハネ33と第二モータ41とが配置されているような構成を示したが、ダクトの内部に第二ハネと第二モータと第一モータとが配置されているような構成としてもよい。
(2)上述したガスクロマトグラフ1において、第一モータ40と第二モータ41とが分離されて設けられているような構成を示したが、第一シャフトと第二シャフトとを連結させることにより、第一モータと第二モータとが一体的になるように1個のモータで設けられているような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、オーブンの内部にカラムを収容して、カラムの温度を調節するガスクロマトグラフに利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ガスクロマトグラフ
10 オーブン
20 筐体
21a、22a 前側開口部
23a 後側開口部
23b ダクト
31 カラム
32 第一ハネ
33 第二ハネ
34 第一シャフト
35 第二シャフト
40 第一モータ
41 第二モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と内部とを分離する器壁を有する筐体と、
前記筐体の内部に、前記器壁と空間を空けて配置されるオーブンと、
前記オーブンの内部に配置されるカラム及び第一ハネと、
前記筐体の内部であり、かつ、前記オーブンの外部である位置に配置される第二ハネ、第一モータ及び第二モータと、
所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第一ハネが接続され、前記第一モータによって所定の方向を中心軸として回転する第一シャフトと、
所定の方向に伸びる棒状であり、一端部に第二ハネが接続され、前記第二モータによって所定の方向を中心軸として回転する第二シャフトとを備え、
前記筐体とオーブンとの間を所定の方向に流通するように空気を通過させるために、前記筐体の前部には前側開口部が形成されるとともに、前記筐体の後部には後側開口部が形成されており、
前記第二ハネは、当該後側開口部の前方に配置されるガスクロマトグラフであって、
前記所定の方向と垂直となる面において、前記後側開口部の面積は、前記第二ハネの回転面積より大きく、
前記後側開口部の周縁部から所定の方向に伸びる筒形状のダクトが形成されていることを特徴とするガスクロマトグラフ。
【請求項2】
前記後側開口部は、四角形であることを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記所定の方向と垂直となる面において、前記後側開口部の面積は、前記第二ハネの回転面積の1.2倍以上2.25倍以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスクロマトグラフ。
【請求項4】
前記筒形状のダクトの内部に、少なくとも第二モータ及び第二ハネが配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガスクロマトグラフ。
【請求項5】
前記第一シャフトと第二シャフトとは、結合されて一本のシャフトとなるとともに、
前記第一モータと第二モータとは、一体的に機能するように一個のモータとなっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガスクロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−52861(P2012−52861A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194347(P2010−194347)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)