説明

ガスケット

【課題】切欠凹部に嵌め込まれて当該切欠凹部をシールするガスケットであって、シール面を傷付けることなく切欠凹部への嵌め込みがなされるようにしたガスケットを提供する。
【解決手段】少なくとも一面に開口部10を有する箱状部材(1)の一壁部11Aに該開口部に通じるように形成された切欠凹部12に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケット4であって、前記切欠凹部の形状に整合するように形成され、前記切欠凹部に弾接するシール面部60を有したゴム外装部6と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体5とを備えており、前記芯体の一部で構成され、厚み方向に突出して前記ゴム外装部を前記開口部側から前記切欠凹部に押し込む方向に押圧可能な押圧作用部(52a,61)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムシャフト取付の為にシリンダヘッドの切欠凹部、或は、電力コントロールユニットを収容するケースの一壁部に形成された切欠凹部等に嵌め込まれて、当該切欠凹部をシールするガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドに形成される上述のような切欠凹部には、この切欠凹部を封止する専用のガスケットが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
また、近時自動車用の内燃機関として電動機を併用するハイブリッド自動車の需要が増え、このようなハイブリッドエンジンには電動機の動作を制御する為にインバータ、コンバータ、或は変圧器等の電力コントロールユニットが用いられる。そして前述の電力コントロールユニットは、ケース内に収容されており、ケースには、発熱を抑える為の冷媒供給用配管や電線を保持するとともにケース壁部に形成された切欠凹部に嵌め込まれてこの切欠凹部を封止するプラグ部材(以下、これも含めてガスケットと称す)が用いられる。特許文献2には、ケース内に収容される電気回路、電気部品の防水性を確保するために、密閉式容器を使用し、外部との接続のためのケーブル等の導入部に防水性を備えるようにした電気機器の防水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264566号公報
【特許文献2】特開2000−101265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ゴムの成型体からなる環状のガスケット本体部と、このガスケット本体部に一体に形成されたプラグ部とよりなるシリンダヘッドガスケットが開示されている。プラグ部は、シリンダヘッドに形成された切欠凹部に嵌め込まれ、ガスケット本体部は、締結合体されるシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間に介在される。この場合、プラグ部を切欠凹部に嵌め込む際に、プラグ部の上面に存在するガスケット本体部を切欠凹部に向けて押圧することになる。その為、組み付け装置の把持手段によってガスケット本体部のシール面を押圧する場合や、手指や工具によってガスケット本体部のシール面を押圧する場合に、ガスケット本体部が傷付くことがある。このような傷付きが生じると、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとの間のシール性が低下することになる。
【0005】
また、特許文献2に示される電気機器の防水構造においては、密閉式容器を構成する下ケースに切欠部を形成し、この切欠部の形状より僅かに大きい形状を有し且つケース内に導入されるケーブルの周囲に一体に形成されたブッシュを切欠部に圧入するようになされている。この場合、ブッシュの上面は、切欠部に圧入させる際の圧入力が付加されるとともに、防水パッキンを介して上ケースとの間のシール面を構成する。本特許文献2には、ブッシュの材質について明示はされていないが、圧入力の付加の際に、手指や圧入用工具、或は、組み付け装置の把持手段等によって、シール面となるブッシュの上面が傷付くことが予想され、この傷付きが上ケースとの間のシール性に影響することとなる。
【0006】
本発明は、切欠凹部に嵌め込まれて当該切欠凹部をシールするガスケットであって、シール面を傷付けることなく切欠凹部への嵌め込みがなされるようにしたガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスケットは、少なくとも一面に開口部を有する箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケットであって、前記切欠凹部の形状に整合するように形成され、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有したゴム外装部と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備えており、前記芯体の一部で構成され、厚み方向に突出して前記ゴム外装部を前記開口部側から前記切欠凹部に押込む方向に押圧可能な押圧作用部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のガスケットにおいて、前記押圧作用部は、厚み方向において前記シール面部を間に挟んで両側に設けられているものとしても良い。また本発明のガスケットにおいて、前記芯体は、金属材からなるとともに、その一部を切り起こすことによって形成された舌片部を含み、該舌片部が前記ゴム外装部で覆われてなる第1押圧作用部を有するようにしてもよい。この場合、舌片部は、前記押込み方向に略平行となるように切り起こされていることが望ましい。また、舌片部は、その先側が前記厚み方向とは交差するように折曲されているものとしてもよい。そして本発明におけるガスケットにおいて、前記芯体は、厚み方向に沿って且つ前記切欠凹部に整合するように形成された横向壁部を含み、前記横向壁部の一部が厚み方向に延長されてなる第2押圧作用部を有するものとしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガスケットは、少なくとも一面に開口部を有する箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部に嵌め込まれ、切欠凹部をシールする。また、ゴム外装部が芯体によって補強されるから、切欠凹部の形状に整合するように形成されたゴム外装部の形状が保たれる。そして厚み方向に突出するように形成されてゴム外装部を開口部側から切欠凹部に嵌め込む方向に押圧可能に構成された押圧作用部を有しているから、当該押圧作用部を押圧することによって、ゴム外装部を嵌め込むことができる。しかもこの押圧作用部は、ゴム外装部よりも剛性の高い芯体の一部で構成されているから、強い押圧力を作用させても、変形することなく、その押圧力を受け止めることができる。また厚み方向に突出する押圧作用部が別途設けられていることで、押込みの際にシール部など、押圧作用部以外の部位を傷付ける懸念がない。
【0010】
押圧作用部は、厚み方向において前記シール面部を間に挟んで両側に設けられているから、同時に両側に設けられた押圧作用部を押圧することができる。そして両側に設けられた押圧作用部を同時に押圧して切欠凹部にゴム外装部を嵌め込めば、容易にシール面部全体を片寄りなく切欠凹部に弾接させることができる。
芯体は、金属材からなるとともに、その一部を切り起こすことによって形成された舌片部を含み、該舌片部がゴム外装部で覆われてなる第1押圧作用部を有する場合、芯体の一部である舌片部で押圧作用部を構成しても、芯体が露出しない。したがって、ゴム外装部によって舌片部を洗浄水等の水分から保護することができ、舌片部が錆びることを防止できる。
舌片部は、前記押込み方向に略平行となるように切り起こされているものとした場合、例えば押込み方向に交差するように切り起こされたものと比べて、押圧作用部は押圧されても、屈曲し難く、より大きな押圧力を受け止めることができる。
また舌片部は、その先側が前記厚み方向とは交差するように折曲されているものとした場合、押圧作用部が厚み方向に極端に突出することを抑えつつ、押圧可能な領域を拡張できる。
そして芯体は、厚み方向に沿って且つ前記切欠凹部に整合するように形成された横向壁部を含み、前記横向壁部の一部が厚み方向に延長されてなる第2押圧作用部を有するものとした場合、押圧作用部を、厚み方向に延長された芯体の横向壁部の一部で構成できるため、切り起こし加工や、溶接加工等を別途行わなくともよく、押圧作用部の製作が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るガスケットの一実施形態をシール対象の第一部材と共に示す概略的全体斜視図である。
【図2】同ガスケットをシール対象の第一部材に嵌め込んだ状態を示す部分破断正面図と部分拡大図である。
【図3】同ガスケットに用いられる芯体の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図1におけるA部の拡大斜視図である。
【図5】図2におけるガスケットのB−B線矢視断面図である。
【図6】図2におけるガスケットのC線方向から見た側面図である。
【図7】図2の拡大図におけるD−D線矢視断面図である。
【図8】図2におけるガスケットのE線方向から見た平面図である。
【図9】同ガスケットをシール対象の2部材間に介在させた使用状態における図2の拡大図と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明のガスケットの一実施形態をシール対象の第一部材と共に示す概略的全体斜視図であり、図2は同ガスケットをシール対象の第一部材に嵌め込んだ状態を示す部分破断正面図と部分拡大図である。
シール対象となる第一部材1は、少なくとも一面に開口部10を有する箱形部材であればよく、図1及び図2では、六面体からなる略直方体の一面(図例は上面)に開口部10を有するとともに、周壁部11を間に挟んで開口部10とは反対側に底部を有する箱形部材を示している。そして、開口部10を囲む周壁部11の上端面11aがシール対象部とされている。即ち、上端面11aには、後記するようにシリンダヘッドカバー或は蓋体等の他のシール対象部材としての第二部材2が別の環状ガスケット3を介して(図5及び図7参照)合体される。
周壁部11のうちの一壁部11Aには前記開口部10側から、即ち、一壁部11Aの上端面11aaから、箱形の第一部材1の深さ方向に向け切欠かれたU字形(半長円形或は半楕円形)の切欠凹部12が形成されている。この切欠凹部12の切欠面12aが、前記周壁部11の上端面11aに連続する。そして、切欠凹部12の角部としての開口部側角部(切欠面12aと前記周壁部11の上端面11aとの境界部)12bには、平斜面状の面取加工が施されている。
【0013】
当該ガスケット4は、図5に示すように、前記切欠凹部12に弾接するシール面部60を有するゴム外装部6と、ゴム外装部6よりも高い剛性に構成されるとともにゴム外装部6によって被覆された芯体5とを備えている。
ゴム外装部6は、FKM,NBR,H−NBR,EPDM,CR,ACM,AEM,VMQ及びFVMQ等のゴム材による加硫成型体からなる。具体的には、事前に板金加工によって形成された前記芯体5を、所定形状のキャビティを有する金型内に配置し、未加硫の前記ゴム材を金型内に注入し、ゴム材を加硫して芯体5と一体とされた図示のような成型体を得る。図例のガスケット4においては、芯体5の縦向壁部50及び第一の横向壁部51の外表面が、ゴム外装部6によって完全に覆われ、ゴム外装部6の外形は切欠凹部12に整合するように形成されている。更に、前記舌片部53,53全体もゴム外装部6に埋設された状態で完全に覆われている。ゴム外装部6が舌片部53,53を覆う部分は、正面視して左右対称で直列状の第1押圧作用部としての突部61,61とされる。突部61,61は、ゴム外装部6の他の部位よりも、ガスケット4(芯体5)の厚み方向外側部に突出して形成されている。第一の横向壁部51の外表面を覆うゴム外装部6の表面部が前記シール面部60とされ、このシール面部60にはその曲成方向に沿った複数のビード部60aが互いに略平行に隆起形成されている(図1、図4、図6参照)。また、第二の横向壁部52の外表面には、ゴム外装部6の一部による薄肉のゴム被覆層62が形成されており、このゴム被覆層62の周囲における第二の横向壁部52の外表面は、一部が露出している。第二の横向壁部52のうち、前記第一部材1の内方側に向く延長部分52aは、芯体5における他の部位より厚み方向内側に突出しており、この延長部分52aが第2押圧作用部とされる(図7及び図8も参照)。このように第2押圧作用部となる延長部分52aを、厚み方向に延長された芯体5の横向壁部52の一部で構成すれば、切り起こし加工や、溶接加工等を別途行わなくともよいので、第2押圧作用部の製作が簡単である。
尚、ビード部60aは、図例では3本形成されているが、これに限定されず、1本、2本、或は4本以上でも良い。このようなビード部60aを設けることは、シール性の点で有効であるが、設けることを必須とするものではない。
【0014】
芯体5は、ゴム外装部6よりも高い剛性に構成されていればよく、例えば、鋼板を板金絞り加工して形成するようにしてもよい。芯体5は、前記切欠凹部12の形状に対応した形状とされ、芯体5を鋼板で形成する場合は、鉄系鋼板やステンレス鋼板等が採用される。芯体5は、図3及び図5に示すように、正面視した(前記周壁部11に直交する方向より見た)外形状が切欠凹部12の形状と略相似の縦向壁部50と、この縦向壁部50の周囲に連成されて前記第一部材1の内方に向く第一及び第二の横向壁部51,52とを有し、横向き箱形(断面コの字形)の形状とされている。第一及び第二の横向壁部51,52は、ガスケット4(芯体5)の厚み方向に沿いつつ切欠凹部12に整合している。なお、ガスケット4(芯体5)の厚み方向とは、図5で図示された矢印Yであって、第二の横向壁部52に対して略平行な方向に相当し、ガスケット4が切欠凹部12に嵌め込まれた状態では、一壁部11Aの厚み方向に相当する。第一の横向壁部51は、前記切欠凹部12の切欠面12aの形状に沿うようU字状に曲成され、第二の横向壁部52は、該第一の横向壁部51の上端縁を接続するように、且つ、当該ガスケット4が切欠凹部12に嵌め込まれた時には、前記周壁部11の上端面11aと略平行になるよう平坦に形成されている。縦向壁部50には、切り起こしによって一対の舌片部53,53が形成されている。即ち、該一対の舌片部53,53は、縦向壁部50の一部を互いに離間するように切り起こすことによって形成されている。そして、この一対の舌片部53,53は、縦向壁部50に垂直な切り起こし片部(切り起こし部)53a,53aの先側を互いに反方向に向くよう更に90°折曲することにより形成されており、これにより一対の舌片部53,53の先側は、ガスケット4(芯体5)の厚み方向に直交した状態となる。
一対の舌片部53,53は、後記する押込み方向a(図1参照)に略平行となるように、第一の横向壁部51の上端縁近傍で切り起こされており、具体的には舌片部53,53の基部となる切り起こし片部53a,53aが、押込み方向aと略平行となるように形成されている。
【0015】
図2に示すように前記U字形シール面部60の両上端部は、一壁部11Aの面域方向に互いに反方向に突出するよう形成され、この突出部位が突出部63,63とされている。当該突出部63,63の下面63aは、面取加工された前記切欠角部12b,12bの面取加工面に沿う形状とされている。前記舌片部53,53は、両突出部63,63の近傍位置に及ぶよう形成されている。図5に示すように、第1押圧作用部である突部61と、第2押圧作用部である延長部分52aとは、厚み方向(矢印Y方向)においてシール面部60を間に挟んで外内両側に設けられている。このように突部61と延長部分52aとを厚み方向においてシール面部60を間に挟んで両側に設けたものとすれば、同時に突部61と延長部分52aとを押圧することができる。そしてこれら突部61と延長部分52aを同時に押圧して切欠凹部12にゴム外装部6を嵌め込めば、容易にシール面部60全体を片寄りなく切欠凹部12に弾接させることができる。また、前記芯体5の縦向壁部50を覆うゴム外装部6の外側周縁部には、一壁部11Aの面域方向に広がるカバー部64が延設されている。このカバー部64は、前記突出部63,63の周縁部からも突出するよう形成されている。更に、前記シール面部60における前記第一部材1の内側部位には、内側鍔部65が一壁部11Aの面域方向に広がるように形成されている。
尚、図例では、芯体5の外表面がゴム外装部6で覆われているが、内表面も覆われたものであっても良く、或は、芯体5の縦向壁部50及び横向壁部51,52で囲まれた空間にゴム外装部6が充填されブロック状に形成されたものであっても良い。また、本明細書において、縦向及び横向なる用語は、前者が第一部材1の深さ方向に沿った方向、後者が第一部材1の一壁部11Aに直交し、且つ第1部材1の深さ方向に直交する方向を意味している。
【0016】
次に、前記構成のガスケット4の使用例について述べる。当該ガスケット4は、図1の矢印aに沿って第一部材1の切欠凹部12に嵌め込まれる。ここで、ガスケット4の突部61はガスケット4の厚み方向及び第一部材1の深さ方向に対して直交する方向が長くなるように形成されており、手指或は簡易な工具を当てることができる領域が十分に確保されている。そのため、ガスケット4を切欠凹部12に嵌め込む際には、図4及び図7に示す白抜矢印b,cに示すように、前記突部61の上辺部及び第二の横向壁部52の前記延長部分52aを手指或は簡易な工具を作用させ矢印aに沿って押込むようにして、ガスケット4を嵌め込むことができる。従って、この矢印aが押込み方向とされる。シール面部60には、ビード部60aが形成されており、前記嵌め込みはこのビード部60aの圧縮弾性変形を伴うことから、強い押圧力を必要とする。然るに、白抜矢印b,cに示すように押し込むようにすれば、第二部材2(図5参照)とのシール面とされるゴム被覆層62等の部分(突部61及び延長部分52aとは異なる部分)を手指等によって傷付ける懸念がない。また、突部61及び延長部分52aを同時に押圧することでガスケット4に対して押圧力を厚み方向において均一に作用させることができる。そのため、ガスケット4を切欠凹部12に嵌め込んだときに、シール面部60が片寄った状態で切欠面12aに弾接することを防止することができる。さらに延長部分52a及び舌片部53は、芯体5の一部によって構成されているから、ゴム材のみからなるものよりも、剛性が高くなり、強い押圧力を作用させることができる。また舌片部53の基部となる切り起こし片部53aが、押込み方向aに略平行となるように切り起こされて形成されているから、例えば押込み方向aに交差するように切り起こされたものと比べて、押込み方向aに押圧されても、屈曲し難く、より大きな押圧力を受け止めることができる。従って、強い押圧力でガスケット4を突部61に作用させても、突部61が変形しないため、ガスケット4を切欠凹部12に嵌め込む作業を確実に行うことができる。
さらに舌片部53は、その先側が図3に示すように厚み方向とは交差するように折曲されているものとした場合、突部61(第1押圧作用部)が厚み方向に極端に突出することを抑えつつ、押圧可能な領域を拡張できる(図4参照)。
切欠凹部12にガスケット4が嵌め込まれた状態では、切欠凹部12の近傍の一壁部11Aが、カバー部64及び内側鍔部65によって内外より挟装された状態とされる(図5参照)。そして第一部材1は、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドや、インバータケースであり、インバータケースの場合には、ガスケット4の正面部分より、発熱を抑える為の冷媒供給用配管や電線を保持する為の保持孔(不図示)が貫設される。
【0017】
上述のように、切欠凹部12にガスケット4を嵌め込んだ後、図5に示すように環状ガスケット3を、周壁部11の上端面11a及びゴム被覆層62を含むガスケット4の上辺部4aの上に載せ置くように位置付ける。この環状ガスケット3は、ゴム単体による成型体、若しくは、無機或は有機繊維を含有するゴムコンパウンドの成型体であっても良く、その形状も平帯状に限らず、周方向に沿ったビード部を備えたものであっても良い。更に、第一部材1の上には、環状ガスケット3を介してシール対象の第二部材2を載せ置き、不図示のボルトによって第一部材1及び第二部材2を締結合体させる。この締結合体によって、前記ビード部60aが更に圧縮されると共に、環状ガスケット3もその厚み方向に圧縮される。これによって、ガスケット4におけるシール面部60と切欠凹部12の切欠面12aとの界面がシールされる。また、これによって一壁部11Aの上端面11aa及びガスケット4の上辺部4aと、第二部材2との界面が環状ガスケット3を介してシールされる。そして、図9に示すように、突出部63は、面取加工された切欠凹部12の切欠角部12bと、第二部材2との間で、環状ガスケット3と共に圧縮され、切欠角部12bの面取による空間部分を埋めるように弾性変形する。この結果、所謂三面合せ部でありながら、液状ガスケット等の補助シール剤を用いずとも、この三面合せ部のシールが確実になされる。因みに、このように切欠角部12bが面取加工されていない場合には、切欠凹部12やガスケット4の寸法公差に起因した切欠角部12bの隙間にガスケット4が充填されず、シール性が保てなくなる懸念が生じる。
【0018】
また、前記芯体5の縦向壁部50を覆うゴム外装部6の周囲に延設されたカバー部64により前記界面における第一部材1の外方側に位置する側辺部が覆われ、例えば、高圧洗浄水が作用しても、洗浄水の界面への浸入が防止される。そして、前記三面合せ部(切欠角部12b)の近傍には、芯体5の一部としての舌片部53の先側が厚み方向とは交差するように折曲されるので、三面合せ部の近傍にまで舌片部53がゴム外装部6による突部61に埋設された状態で及ぶので、高圧洗浄水によって三面合せ部におけるカバー部64が煽られることがなく、三面合せ部におけるシール性の維持が好適になされる。また芯体5の一部によって構成される舌片部53はゴム外装部6によって覆われているため、例えば、突部61が高圧洗浄水に晒されることないので、舌片部53が錆びることを防止できる。
【0019】
尚、切欠角部12bの面取形状として、平斜面状の例を挙げたが、凸曲状や凹曲状であっても良い。また、作用部の一方としての一対の突部61,61を直列的に形成した例を示したが、当該ガスケット4を正面視して逆ハの字形に形成しても良く、或は中央部に1個形成しても良い。また、舌片部53を芯体5の一部を切り起こして形成した例について述べたが、芯体5の縦向壁部50に別途作製した舌片用部片を溶接すること等により形成することも可能である。また、縦向壁部50に絞り加工を施して縦向壁部50の一部を厚み方向に突出させ、その突出部分で押圧作用部を構成してもよい。更に、本発明のガスケット4が適用される対象として、自動車用のシリンダヘッドやインバータケースを例示したが、箱形部材の壁部に切欠形成された凹部に嵌め込まれて、その切欠面をシールするものであれば、他の分野のものもその対象とされる。また、ガスケット4が嵌め込まれる切欠凹部12は、箱状部材の開口部10に通じるように切欠形状且つ凹状に形成されていればよく、箱状部材を成型後、切欠形成されるものに限らず、例えば、箱型部材が樹脂材からなる場合は、成型時に図1に示すような切欠凹部12を形成するものであってもよい。
また突出部63だけで三面合せ部を十分にシールできるのならば、カバー部64を省略してもよい。また、本発明のガスケット4におけるゴム外装部6と、図5に示す環状ガスケット3とを一体に成型することも可能である。また、ガスケット4を補強する芯体5は、上述の鉄系鋼板やステンレス鋼板等からなるもの限らない。例えば、ゴム外装部6よりも高剛性の芯体であれば、樹脂材やゴム材等からなる芯体であってもよい。また芯体5の形状を変更してもよく、例えば縦断面が略I型形状(不図示)であってもよい。更に芯体5の形状は、切欠凹部12に整合する形状に限らず、ゴム外装部6の形状を保持可能であればよく、適宜変更してもよい。また、ガスケット4及びガスケット4が適用される箱形部材のそれぞれを精度よく製作し、三面合せ部に隙間が発生しないようにすることができるのであれば、カバー部64を省略し、且つ切欠角部12bに対する面取り加工を行わなくてもよい。さらにガスケット4は、必ずしも第1押圧作用部としての突部61及び第2押圧作用部としての延長部分52aの両方を含んでいなくともよく、少なくともどちらか一方の押圧作用部を有したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 第一部材(箱形部材)
10 開口部
11A 一壁部
12 凹部
12a 切欠面
4 ガスケット
5 芯体
52a 延長部分(第2押圧作用部)
53 舌片部
53a 切り起こし部
6 ゴム外装部
60 シール面部
61 突部(第1押圧作用部)
a 押込み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に開口部を有する箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケットであって、
前記切欠凹部の形状に整合するように形成され、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有したゴム外装部と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備えており、
前記芯体の一部で構成され、厚み方向に突出して前記ゴム外装部を前記開口部側から前記切欠凹部に押込む方向に押圧可能な押圧作用部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記押圧作用部は、厚み方向において前記シール面部を間に挟んで両側に設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガスケットにおいて、
前記芯体は、金属材からなるとともに、その一部を切り起こすことによって形成された舌片部を含み、該舌片部が前記ゴム外装部で覆われてなる第1押圧作用部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項3に記載のガスケットにおいて、
前記舌片部は、前記押込み方向に略平行となるように切り起こされていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項4に記載のガスケットにおいて、
前記舌片部は、その先側が前記厚み方向とは交差するように折曲されていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のガスケットにおいて、
前記芯体は、厚み方向に沿って且つ前記切欠凹部に整合するように形成された横向壁部を含み、
前記横向壁部の一部が厚み方向に延長されてなる第2押圧作用部を有することを特徴とするガスケット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255515(P2012−255515A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129870(P2011−129870)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】