説明

ガスバリア性積層フィルム

【課題】
水蒸気バリア性、特に高湿度下での耐水蒸気ガスバリア性に優れた積層フィルムを提要する。
【解決手段】
フィルム基材(A)の少なくとも片面に、不飽和カルボン酸化合物の金属塩であって、その金属塩を構成する金属化合物が95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%の一価の金属化合物である不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体層(C)が形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。あるいは、フィルム基材(A)の片面に無機薄膜層(B)、上記重合体層(C)が順次形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有し水蒸気等のガスバリア性に優れた積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素だけでなく水蒸気等に対するバリア性材料に優れたフィルムが注目されている。
透明ガスバリア性フィルムは、一般に透明性、剛性に優れる二軸延伸ポリエステルフィルムからなる基材面に無機酸化物を蒸着したフィルムであり、さらにその水蒸気ガスバリア性の優れたフィルムが求められている。
これらの欠点を改良する方法として、ガスバリア性を有するポリビニルアルコールを金属酸化物薄膜上に積層する方法(例えば、特許文献1)、無機化合物からなる蒸着層面に水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたは/及びその加水分解物または(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布した積層フィルム(特許文献2)、特定のオルガノシラン、シリル基含有フッ素系重合体及びオルガノポリシロキサンからなるコーティング組成物を塗布してなる積層フィルム(特許文献3)、あるいはポリビニルアルコール系樹脂と金属アルコレート類からなるコーティング剤を塗布してなるガスバリアコーティングフィルム(特許文献4)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−316025号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第2790054号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2000−63752号公報(請求項7、請求項11)
【特許文献4】特開2002−173631号公報(請求項1、請求項11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、耐水蒸気透過性に優れたガスバリア性積層フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フィルム基材(A)の少なくとも片面に、不飽和カルボン酸化合物の金属塩であって、その金属塩を構成する金属化合物が95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体層(C)が形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
また本発明は、フィルム基材(A)の少なくとも片面に無機薄膜層(B)、不飽和カルボン酸化合物の金属塩であって、その金属塩を構成する金属化合物が95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である金属塩から得られる重合体層(C)が順次形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルムに関する。
【0006】
本発明においては、フィルム基材(A)が二軸延伸フィルムであることが望ましい。
また、無機薄膜層(B)が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属窒酸化物のいずれか、あるいはそれらの混合物であることが望ましい。
本発明の不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体は、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満であることが望ましい。
ここで、二価以上の金属は、Mg、Ca、Zn及びBaから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
不飽和カルボン酸化合物は、(メタ)アクリル酸であることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、不飽和カルボン酸化合物の金属塩として特定の金属の構成からなる金属塩から得られる重合体層(C)とすることにより、酸素ガスバリア性のみならず、水蒸気バリア性、特に高湿度下での耐水蒸気ガスバリア性に優れた積層フィルムを提要することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
フィルム基材層(A)
本発明に係るフィルム基材(A)は、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、好ましくは二軸延伸してなるフィルムである。かかる熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、環状オレフィンポリマー、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリフェニレンスルフィド、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等が延伸性、透明性、剛性が良好なフィルムが得られるので好ましい。本発明に係るフィルム基材は、これら熱可塑性樹脂を用いて種々公知の方法で成形して得られるフィルム基材であり、また、二軸延伸フィルムからなるフィルム基材はこれら熱可塑性樹脂を用いて種々公知の方法で二軸延伸して得られるフィルム基材である。具体的にはニ軸延伸ポリエステルフィルム、ニ軸延伸ポリプロピレンフィルム、ニ軸延伸ポリアミドフィルムが挙げられ、中でもニ軸延伸ポリエステルフィルム、ニ軸延伸ポリプロピレンフィルムが耐酸性、剛性、透明性等に優れているので好ましい。
なお、本発明におけるフィルム基材(A)には、本発明の効果を損ねない範囲で紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等、さらにシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル、スチレン等を構成成分とする有機粒子を必要に応じて適宜含有してもよい。
【0009】
無機薄膜層(B)
本発明は、無機薄膜層(B)を設けない態様を含む。また一方、無機薄膜層(B)を含む本発明の態様において、無機薄膜層(B)を形成する無機化合物としては、蒸着できる無機化合物であれば、特に限定はされないが、具体的には、例えば、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)及び珪素(Si)等の金属あるいはこれら金属の酸化物、窒化物、窒酸化物、硫化物、リン化物等が挙げられる。これら無機化合物の中でも、酸化物、特に酸化アルミニウム、シリカ(酸化珪素)等の酸化物、珪素窒酸化物が透明性に優れるので好ましい。
これら無機化合物の層をフィルム基材(A)に形成させる方法としては、触媒CVD(CAT−CVD)、化学蒸着(CVD)、低圧CVD及びプラズマCVD等の化学蒸着法、真空蒸着(反応性真空蒸着)、スパッタリング(反応性スパッタリング)及びイオンプレーティング(反応性イオンプレーティング)等の物理蒸着法(PVD)、低圧プラズマスプレイ及びプラズマスプレイ等のプラズマスプレイ法が例示できる。
形成される無機薄膜層(B)の厚さは、通常15〜5000A、好ましくは15〜1000A、より好ましくは20〜450Aの範囲である。5000Aを越えると耐屈曲性が低下するとなる虞があり、一方、15A未満では充分な耐ガスバリア性が得られない虞がある。
【0010】
不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)
本発明に係る不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)は、後述の不飽和カルボン酸化合物の特定の構成の金属塩を重合して得られる重合体から得られる層(C)であり、好ましくは、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満、より好ましくは0.20未満の範囲にある不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体からなる層である。
不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体からなるガスバリア性膜は、カルボン酸基と金属がイオン架橋してなるカルボキシレートイオンと遊離のカルボン酸基が存在し、夫々、赤外線スペクトルで、遊離のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸収が1700cm−1付近にあり、カルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸収が1520cm−1付近にある。
本発明に係る重合体において、(A/A)が0.25未満であるということは、遊離のカルボン酸基が存在しないか、少ないことを示しており、0.25を越える膜は、遊離のカルボン酸基の含有量が多く、高湿度下での耐ガスバリア性が改良されない虞があり、また、場合によっては前記無機薄膜層(B)が遊離のカルボン酸により酸化されるおそれもあるので、(A/A)が0.25未満であることが好ましい。
本発明における1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと赤外線吸収スペクトルにおける1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)は、ガスバリア性積層フィルムから1cm×3cmの測定用サンプルを切り出し、その表面(不飽和カルボン酸化合物の金属塩からなる重合体層)の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)に得、以下の手順で、先ず、吸光度A及び吸光度Aを求めた。
1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1660cm−1と1760cm−1の吸光度とを直線(N)で結び、1660〜1760cm−1間の最大吸光度(1700cm−1付近)から垂直に直線(O)を下ろし、当該直線(O)と直線(N)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。
1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度A:赤外線吸収スペクトルの1480cm−1と1630cm−1の吸光度とを直線(L)で結び、1480〜1630cm−1間の最大吸光度(1520cm−1付近)から垂直に直線(M)を下ろし、当該直線(M)と直線(L)との交点と最大吸光度との吸光度の距離(長さ)を吸光度Aとした。尚、最大吸光度(1520cm−1付近)は、対イオンの金属種によりピーク位置が変化することがあり、例えば、カルシウムでは1520cm−1付近、亜鉛では1520cm−1付近、マグネシウムでは1540cm−1付近及びナトリウム(Na)では1540cm−1付近である。
次いで、上記方法で求めた吸光度A0及び吸光度Aから比(A/A)を求めた。
なお、本発明のおける赤外線スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、日本分光社製FT−IR350装置を用い、KRS−5(Thallium Bromide−Iodide)結晶を装着して、入射角45度、室温、分解能4cm−1、積算回数150回の条件で行った。
【0011】
不飽和カルボン酸化合物
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物の金属塩を形成する成分である不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β―エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)は、後述の金属化合物との塩を重合して得られる膜は、高湿度下でのガスバリア性が改良されない虞がある。これら不飽和カルボン酸化合物は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。
これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が金属化合物で完全に中和された塩が形成し易く、これらの塩を重合して得られる重合体層(C)を無機薄膜層(B)上に積層してなるガスバリア性積層フィルムは高湿度下でのガスバリア性に特に優れるので好ましい。
【0012】
金属化合物
本発明に用いられる不飽和カルボン酸化合物の金属塩を形成する金属化合物は、二価以上の金属化合物及び一価の金属化合物から構成される。
二価以上の金属化合物
二価以上の金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、前記不飽和カルボン酸化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら二価以上の金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら二価以上の金属化合物の中でもMg、Ca、Zn及びBaが好ましく、中でも、特にZnが好ましい。
一価の金属化合物
一価の金属化合物は、周期表の1A族、即ち、アルカリ金属及びその金属化合物であり、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の一価金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等であり、具体的には酸化ナトリウム、酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
金属化合物として、2価以上の金属化合物と共にこれら一価の金属化合物を併用した場合は、前記不飽和カルボン酸化合物の金属塩として重合して得られる膜は、低湿度下でのバリア性が良好であるばかりではなく、高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら一価の金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら一価の金属化合物の中でもリチウム(Li)またはナトリウム(Na)が特に好ましい。
【0013】
不飽和カルボン酸化合物の金属塩
本発明に係る共重合体の基となる不飽和カルボン酸化合物の二価以上の金属化合物の塩は、その金属塩を構成する金属化合物が、95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である金属塩から構成されていることを特徴とする。
これらの中でも、その金属塩を構成する金属化合物が、85モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び15モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である金属塩から得られる重合体が特に好適である。
不飽和カルボン酸の一価金属塩の含有量が15モル%未満では、得られるガスバリア性フィルムの水蒸気バリア性の改良効果が少なくなる傾向があり、一方、70モル%を超える場合も、得られるガスバリア性フィルムの改良効果が少なくなる傾向がある。
なお、不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体には、本発明の目的を損わない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重
合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等が含まれていてもよい。
【0014】
ガスバリア性積層フィルム
本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記フィルム基材(A)の片面に前記無機薄膜層(B)及び前記不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)が順次形成されてなる。
本発明のガスバリア性積層フィルムの厚さは用途の応じて種々決定され得るが、通常は、フィルム基材(A)の厚さが5〜500μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは9〜30μm、無機薄膜層(B)の厚さが15〜5000A、好ましくは15〜1000A、より好ましくは100〜1000A、不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)の厚さが0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜10μm、ガスバリア性積層フィルムの全体の厚さが20〜750μm、より好ましくは25〜430μmの範囲にある。
【0015】
ガスバリア性積層フィルムの製造方法
本発明のガスバリア性積層フィルムは、フィルム基材(A)の片面に触媒−CVD法(CAT−CVD法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等の公知の方法により、前記無機薄膜層(B)を形成させ、当該蒸着層上に、不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)を被覆することにより製造し得る。
フィルム基材(A)の表面には、無機薄膜層(B)を設ける前に、アンダーコート層を設けることが望ましい。アンダーコート層としては、分子内にビニル基を少なくとも1つ以上有する重合性モノマー、オリゴマーをコートして、紫外線や電子線等による架橋反応によりコート層を形成させるものが好適である。重合性モノマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル等のモノマーが挙げられる。中もで、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、特にウレタン(メタ)アクリレート系のアンダーコート層を設けることが望ましい。
エポキシ(メタ)アクリレート系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラク型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等のエポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる化合物、更にはこれらの化合物をカルボン酸またはその無水物と反応させて得られる酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが例示される。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系の化合物は、光重合開始剤及び必要に応じて他の光重合あるいは熱反応性モノマーからなる希釈剤と共に、基材層の表面に塗布され、その後紫外線等を照射して架橋反応によりアンダーコート層が形成される。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物からなるオリゴマーをアクリレート化したものから構成される。
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネートとポリオールとの縮合生成物から得ることができる。具体的なポリイソシアネートとしては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェートなどが例示でき、また、具体的なポリオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマーなどがある。アクリレートを構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどがある。
これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、必要に応じて、併用される。また、これらを重合させる方法としては、公知の種々の方法、具体的には電離性放射線の照射又は加熱などによる方法があげられる。
これらを紫外線で硬化して使用する場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミフィラベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステルまたはチオキサントン類などを光重合開始剤として、また、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィンなどを光増感剤として混合して使用するのが好ましい。本発明では、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物とウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、併用することも行われる。
また、これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物やウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、(メタ)アクリル系モノマーで希釈することが行われる。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示でされる。
中でもアンダーコート層としてウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いた場合は、得られるガスバリア性フィルムの酸素ガスバリア性の改良に寄与する。
これらのアンダーコート層は、通常0.05〜5.0グラム/mが通常であり、中でも0.1〜3.0グラム/mが好適である。
また、無機薄膜層(B)の表面は金属塩の重合体層(C)を設ける前に、コロナ処理、グロー放電処理、大気圧プラズマ処理、真空プラズマ放電処理などの前処理をすることが望ましい。中でもコロナ処理が好適である。コロナ処理の条件は、特に限定されないが、例えば放電周波数は、5〜40kHz、中でも10〜30kHz程度を用いることもでき、波形として例えば交流正弦波がある。電極と誘電体ロールとのギャップのクリアランスを0.1〜10ミリメートル、中でも1.0〜2.0ミリメートル程度とし、処理量として0.3〜0.4KV・A・分/m程度とすることもできる。空気中常圧で処理できる点で好適である。
【0016】
本発明に係わる重合体層(C)は、例えば、不飽和カルボン酸化合物の一価の金属塩が5〜70モル%及び不飽和カルボン酸化合物の二価以上の金属塩が95〜30モル%となるように水等の溶媒に溶解した後、当該混合物の溶液を塗布する方法、個別に不飽和カルボン酸化合物の一価の金属塩の溶液及び不飽和カルボン酸化合物の二価以上の金属塩の溶液を作成した後、不飽和カルボン酸化合物の一価の金属塩が5〜70モル%となるように混合した溶液を塗布する方法、あるいは重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物若しくはその溶液に前記一価の金属化合物と二価以上の金属化合物とを一価の金属塩の濃度が5〜70モル%となるような比率で添加して不飽和カルボン酸化合物の一価の金属塩と不飽和カルボン酸化合物の二価以上の金属塩とを形成させた溶液を塗布する方法等を例示できるが、これらの方法には限定されず、要は無機薄膜層上に塗布されるものとして、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物から形成された前記不飽和カルボン酸化合物の一価の金属塩を5〜70モル%の範囲で含む前記不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩との混合物が形成されておればよい。
ガスバリア性積層フィルムの無機薄膜層(B)上に、不飽和カルボン酸化合物の属塩の重合体層(C)を被覆する方法としては、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の金属塩の溶液を塗布した後、不飽和カルボン酸化合物の金属塩を重合することにより製造し得るし、前記重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と前記金属化合物とを混合した溶液を塗布した後、当該混合物を重合することにより製造し得る。
不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを混合した溶液を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物のモル数に対して、0.3倍のモル数を越える量の金属化合物を添加することが好ましい。金属化合物の添加量が0.3倍のモル数以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多い積層フィルムとなり、結果として、ガスバリア性が低い積層フィルムとなる虞がある。また、金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、金属化合物の添加量が1倍のモル数を越えると未反応の金属化合物が多くなるので、通常、5倍のモル数以下、好ましくは2倍のモル数以下、特に好ましくは1倍のモル数以下で十分である。
また、不飽和カルボン酸化合物と金属化合物との混合した溶液を用いる場合は、通常、不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の金属塩が形成されるが、金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。
不飽和カルボン酸化合物の金属塩溶液に用いる溶媒は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が最も好ましい。
ガスバリア性積層フィルムの無機薄膜層(B)上に前記不飽和カルボン酸化合物の金属塩の溶液若しくは不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを混合した溶液を塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバース及びジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽和カルボン酸化合物の金属塩の溶液中(固形分)の量で0.05〜10g/m、好ましくは0.1〜5g/mとなるよう塗布すればよい。
【0017】
不飽和カルボン酸化合物の金属塩を溶解させる際若しくは不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを溶解させる際には、前述した如く、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物等の単量体あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等を添加してもよい。
また、不飽和カルボン酸化合物の金属塩を溶解させる際若しくは不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを溶解させる際には、本発明の目的を損わない範囲で、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、基材層との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0018】
ガスバリア性積層フィルムの無機薄膜層(B)上に塗布した不飽和カルボン酸化合物の金属塩若しくは不飽和カルボン酸化合物と金属化合物とを混合物を重合させるには、種々公知の方法、具体的には例えば、電離性放射線の照射また加熱等による方法が挙げられる。
電離性放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離性放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線及び0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
電離性放射線として可視光線及び紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物の金属塩の溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。さらに、重合度または重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸化合物の金属塩を重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態で重合させてもよいし、乾燥後に重合させてもよいが、溶液を塗布後直ぐに重合させた場合は、得られるガスバリア性膜が白化する場合がある。一方、溶媒(水分)が少なくなるとともに、不飽和カルボン酸化合物の金属塩が析出する場合があり、このような状態で重合を行うと得られるガスバリア性膜の形成が不十分になり、外観が白化したり、得られる膜のガスバリア性が安定しない虞がある。したがって、塗布した不飽和カルボン酸化合物の金属塩を重合させる際には、適度な水分を含んだ状態で重合することが好ましい。
また、本発明のガスバリア性積層フィルムは、熱処理をすることが望ましい。熱処理によって重合体層(C)の水蒸気ガスバリア性を更に向上させることができる。熱処理としては、対流伝熱によるもの(例えばドライヤー、オーブン)、伝導伝熱によるもの(例えば加熱ロール)、輻射伝熱によるもの(例えば赤外線、遠赤外線のヒータ等の電磁波を用いるもの)、内部発熱によるもの(例えばマイクロ波)があげられる。オーブンによる熱処理の場合、フィルム基材の種類にもよるが、通常60℃〜350℃程度で、1分〜5時間程度が通常であり、特に100℃〜200℃、5分〜2時間が望ましい。長尺のガスバリア積層フィルムを連続で加熱する場合は、加熱ロール及び遠赤外線炉による処理が処理速度が速く有効である。また、これらの熱処理は、減圧下で行ってもよい。
【0019】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層フィルムが得られる。このような熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
このような熱融着層の厚さは通常1〜50μm程度である。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【0021】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)酸素透過度[ml/(m・day・MPa)]:多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/20を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20%、湿度90%R.H.の条件で測定した。
(2)水蒸気透過度[g/(m・day)]:多層フィルムを折り返し、2方をヒートシールして(線状低密度ポリエチレンフィルム面)袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01mになるように袋を作成し、これを40%、90%R.H.の条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
(3)吸光度比(A/A):上記記載の方法で測定した。
【0022】
<溶液(X)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%))に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物Zn塩溶液(X)を作製した。
【0023】
<溶液(Y)の作製>
アクリル酸(単量体)(共栄社化学社製)を水で希釈して25%水溶液を作成した。この水溶液中のアクリル酸のカルボキシル基に対して等モルの水酸化リチウム一水和物(関東化学社製)を添加して、アクリル酸リチウム(アクリル酸のLi塩)水溶液を作製した。
次に、作製したアクリル酸リチウム水溶液に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物のリチウム塩の溶液(Y)を作製した。
【0024】
<溶液(Z)の作製>
アクリル酸(単量体)(共栄社化学社製)を水で希釈して25%水溶液を作成した。この水溶液中のアクリル酸のカルボキシル基に対して等モルの水酸化ナトリウム(関東化学社製)を添加して、アクリル酸ナトリウム(アクリル酸のNa塩)水溶液を作製した。
次に、作製したアクリル酸ナトリウム水溶液に、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をアクリル酸に対して固形分比率でそれぞれ2%及び0.4%添加し、不飽和カルボン酸化合物のナトリウム塩の溶液(Z)を作製した。
【0025】
実施例1〜4
上記の不飽和カルボン酸化合物Zn塩溶液(X)及び不飽和カルボン酸化合物Li塩溶液(Y)、不飽和カルボン酸化合物Na塩溶液(Z)をそれぞれ表1に示す量を混合した後、アクリル酸亜鉛及びアクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウムを含む混合溶液を厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(商品名;エンブレットPET50、ユニチカ社製)からなる基材フィルムのコロナ処理面に、メイヤーバーを用いて、1.3g/mになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;60%、時間;30秒の条件で乾燥した。この後速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度190mW/cm、積算光量250mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行った後、得られたガスバリア性積層フィルムを熱板の上に載置して加熱処理した。加熱処理の条件は、熱板の温度200℃、保持時間60分である。得られたガスバリア性積層フィルムを上記記載の方法で評価した。

その評価結果を表1及び表2に示す。
【0026】
表1
項目 単位 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
アクリル酸亜鉛 モル% 75 50 90 75
アクリル酸リチウム モル% 25 50
アクリル酸ナトリウム モル% 10 25


表2
項目 単位 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
水蒸気透過度 注1
40℃90%RH 0.26 0.32 0.42 0.44
40℃10%RH 0.04 0.04 0.08 0.06
酸素透過度 注2 2.0
吸光度比 注3 [−] 0.05 0.1 0.1 0.08


注1 水蒸気透過度 の単位 [g/(m・day)]
注2 酸素透過度 の単位 [ml/(m・day・MPa)]
注3 吸光度比は、以下の値である。
(A/A)

【0027】
実施例5
厚さ100μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレート(帝人デュポン社製 商品名PEN Q−65)の平滑面にウレタンアクリレート(ウレタンアクリレート系UV硬化塗材(新中村化学社製 商品名 UA−100)を酢酸エチルで希釈し、メイヤーバーを用いて1.2g/m(固形分)になるように塗布し、100℃、15秒間乾燥した。続いて、コート面にUV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:250mW/cm、積算光量:117mJ/cmの条件で紫外線を照射してアンダーコート層の重合を行った。次いでその上にCAT−CVD装置により厚さ50ナノメータ(nm)のSiON膜を形成させガスバリア性フィルムを得た。
その後、得られたガスバリア性積層フィルムに実施例1の塗材を2.8g/mになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;60%、時間;30秒の条件で乾燥した。この後速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度190mW/cm、積算光量250mJ/cmの条件で紫外線を照射して重合を行った後、得られたガスバリア性積層フィルムを熱板の上に載置して加熱処理した。加熱処理の条件は、熱板の温度200℃、保持時間60分である。得られたガスバリア性積層フィルムの40℃90%RH下での水蒸気透過度は0.01g/m2/d以下であった。
【0028】
表1及び表2から明らかなように、本発明の不飽和カルボン酸化合物の金属塩の重合体層(C)では、水蒸気ガスバリア性が特に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、酸素ガスバリア性のみならず、耐水蒸気透過性に優れており、各種包装材料、医療用途、工業用途の様々な用途の利用が可能であり、特に、太陽電池のバックシート、有機ELの封止材など電気、電子材料へ利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材(A)の少なくとも片面に、不飽和カルボン酸化合物の金属塩であって、その金属塩を構成する金属化合物が95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体層(C)が形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【請求項2】
フィルム基材(A)の少なくとも片面に、無機薄膜層(B)、不飽和カルボン酸化合物の金属塩であって、その金属塩を構成する金属化合物が95モル%〜30モル%の二価以上の金属化合物及び5モル%〜70モル%(両者の合計で100モル%)の一価の金属化合物である不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体層(C)が順次形成されてなることを特徴とするガスバリア性積層フィルム。
【請求項3】
フィルム基材(A)が二軸延伸フィルムである請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項4】
無機薄膜層(B)が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属窒酸化物のいずれか、あるいはそれらの混合物である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項5】
不飽和カルボン酸化合物の金属塩から得られる重合体が、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=Oに基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=Oに基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項6】
二価以上の金属化合物が、Mg、Ca、Zn及びBaから選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項7】
一価の金属化合物がリチウムまたはナトリウムであることを特徴とする請求項1または2にに記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項8】
不飽和カルボン酸化合物が、(メタ)アクリル酸である請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
【請求項9】
フィルム基材(A)と無機薄膜層(B)の間にアンダーコート層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリ性フィルム。
【請求項10】
熱処理されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。

【公開番号】特開2010−42574(P2010−42574A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207521(P2008−207521)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】