説明

ガス分析装置

【課題】装置の姿勢に拘わりなく、液体分離装置が適切に機能するようにする。
【解決手段】ガスの計測を行うガス計測部と、このガス計測部を収納する筐体1と、ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備えた液体分離装置と、前記液体分離装置を保持するホルダ部2と、前記ホルダ部2を前記筐体1に取り付ける回転機構とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス、特に有効には生体から得られるガス、を分析するためのサンプリング式のガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サンプリング式の呼吸ガス分析装置は、計測対象のガスを装置内部に引き込み、装置内部のセンサにて計測を行うものである。この装置においては、計測対象のガスに含まれる水蒸気が結露し、液体が装置内部に引き込まれた際に、錆などが生じるなどの装置への悪影響が心配されている。
【0003】
上記の問題を解決するため、表面張力と毛細管現象により、液体を分離して、カップに液体を導くことにより、呼吸ガス分析装置に用いる液体を分離する機構が提案されている(特許文献1参照)。この装置により、計測対象のガスに含まれる水蒸気が結露した液体を分離することが可能であるが、液体分離装置のカップが結露して生じた液体を受けるように結露部よりも重力方向に存在しない場合には、装置内部に液体が流入するという問題を有している。
【0004】
また、上記問題点を解決するために、高分子吸収剤を用い、液体が浸入した際に、シールする機構を組み込んだ液体分離装置が提案されている。これらの装置は、高分子吸収剤を用いることにより、装置内部への液体の侵入を防ぐことができる特徴を持っている(特許文献2、3参照)。しかしながら、依然として、液体分離装置のカップの位置が結露部より重力方向に近い位置になければ液体を分離する機能が正常に働かないという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,713,095号明細書
【特許文献2】米国特許第4,924,860号明細書
【特許文献3】米国特許第6,923,847号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のようなガス分析装置の現状に鑑みてなされたもので、その目的は、装置を通常状態に設置(例えば横置き)して用いる場合にも、また、装置を通常状態から立てた状態に設置(例えば縦置き)して用いる場合にも、それぞれ適切に液体分離装置が機能し、ガス分析に対する悪影響を防止することが可能なガス分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス分析装置は、ガスの計測を行うガス計測部と、このガス計測部を収納する筐体と、ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備えた液体分離装置と、前記液体分離装置を保持するホルダ部と、前記ホルダ部を前記筐体に取り付ける回転機構とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るガス分析装置は、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部となる位置まで前記ホルダ部が回転した場合に、該ホルダ部をロックするロック手段が備えられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るガス分析装置は、重力方向に対する前記ホルダ部の姿勢を検出するセンサを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るガス分析装置は、前記センサによって検出された前記ホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するアラーム手段を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るガス分析装置では、前記センサによって検出された前記ホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るガス分析装置は、ガスの計測を行うガス計測部と、このガス計測部を収納する筐体と、ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備え、液体成分が分離されたガスを前記ガス計測部へ導く液体分離装置を保持するホルダ部と、前記ホルダ部内に液体分離装置を90度ずつ異なる姿勢において保持する保持手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るガス分析装置では、前記保持手段には、液体分離装置からガス計測部へガスを流す主流路と、貯留槽を吸引するための副流路とが備えられていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るガス分析装置は、ホルダ部における液体分離装置との対向面には、主流路の流路口と、この主流路の流路口を中心に対称に配置された副流路の副流路口と、が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るガス分析装置では、重力方向に対する前記ホルダ部に保持された液体分離装置の姿勢を検出するセンサと
を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るガス分析装置では、前記センサによって検出された前記液体分離装置の姿勢が、該液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するアラーム手段を具備することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るガス分析装置では、前記センサによって検出された前記液体分離装置の姿勢が、該液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るガス分析装置によれば、ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備え、液体分離装置を保持するホルダ部が回転機構に取り付けられているので、適切に液体分離装置が機能する状態にて装置を動作させることが可能である。
【0019】
本発明に係るガス分析装置によれば、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部となる位置までホルダ部が回転した場合に、該ホルダ部をロックするロック手段が備えられているので、適切に液体分離装置が機能する状態にてホルダ部がロックされて、装置の適切な動作を確保することができる。
【0020】
本発明に係るガス分析装置によれば、重力方向に対する前記ホルダ部の姿勢を検出するセンサを具備するので、ホルダ部の姿勢を検出することができる。
【0021】
本発明に係るガス分析装置によれば、ホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するように構成されているので、適切に液体分離装置が機能する状態になければアラームが発生して、不適切な状態を知ることができる。
【0022】
本発明に係るガス分析装置によれば、センサによって検出されたホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段を具備するので、ホルダ部の姿勢により検出信号を適宜な装置にて受けてアラーム等の出力を行うことができる。
【0023】
本発明に係るガス分析装置によれば、ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備え、液体成分が分離されたガスを前記ガス計測部へ導く液体分離装置を保持するホルダ部内に、液体分離装置を90度ずつ異なる姿勢において保持する保持手段が備えられているので、適切に液体分離装置が機能する状態にて装置を動作させることが可能である。
【0024】
本発明に係るガス分析装置によれば、保持手段には、液体分離装置からガス計測部へガスを流す主流路と、貯留槽を吸引するための副流路とが備えられているので、液体分離装置からガス計測部側へガスを適切に導出することができる。
【0025】
本発明に係るガス分析装置によれば、ホルダ部における液体分離装置との対向面には、主流路の流路口と、この主流路の流路口を中心に対称に配置された副流路の副流路口と、が形成されているので、適切に液体分離装置が機能する状態にて装置を動作させることが可能である。
【0026】
本発明に係るガス分析装置によれば、重力方向に対する前記ホルダ部に保持された液体分離装置の姿勢を検出するセンサを具備するので、液体分離装置の姿勢を検出することが可能である。
【0027】
本発明に係るガス分析装置によれば、液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するので、適切に液体分離装置が機能する状態になければアラームが発生して、不適切な状態を知ることができる。
【0028】
本発明に係るガス分析装置によれば、センサによって検出された前記液体分離装置の姿勢が、該液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段を具備するので、液体分離装置の姿勢により検出信号を適宜な装置にて受けてアラーム等の出力を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置に適用されるウオータトラップを示す斜視図。
【図3】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置に適用されるウオータトラップの背面図。
【図4】図2のI-I断面図。
【図5】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置の組立斜視図。
【図6】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置にウオータトラップを適用した状態を示す正面図。
【図7】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置の要部組立斜視図。
【図8】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置の内部構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置を縦方向に長くなる状態にて設置した正面図。
【図10】本発明の第1の実施例に係るガス分析装置を図9の状態とした場合における背面方向のホルダ部等要部を示す図。
【図11】図9の状態からホルダ部を90度右回転させた状態の要部を示す図。
【図12】図11の状態における本発明の第1の実施例に係るガス分析装置の正面図。
【図13】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置の正面図。
【図14】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置に適用されるウオータトラップを示す斜視図。
【図15】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置に適用されるウオータトラップの背面図。
【図16】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置の内部構成を示すブロック図。
【図17】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置の設置状態を変えた場合のウオータトラップ背面を透視して示した図。
【図18】本発明の第2の実施例に係るガス分析装置の筐体の姿勢と第2の姿勢センサを構成するスイッチとの対応関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明に係るガス分析装置の実施例を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。第1の実施例に係るガス分析装置は図1に示されるように、筐体1に基本的機能が収納されたものであり、外部の正面側における側壁には、有底四角筒状のホルダ部2が突出している。
【0031】
ホルダ部2には、図2及び図3に示されるような直方体形状の液体分離装置であるウオータトラップ3が挿入されて嵌合される。ウオータトラップ3は、図4に示すように内部に空室を有し、底板側に、生体から得られるガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽31を備えている。ウオータトラップ3の正面板32には、患者の呼吸ガスを取り出すサンプリングチューブに接続される吸入口33aが形成された吸入管33が設けられている。
【0032】
吸入口33aは、ウオータトラップ3の内部に備えられた貯留槽31における上部前方室34に到る内チューブ34aに連通しており、内チューブ34aの開口からガスが貯留槽31側へ排気されるように構成されている。貯留槽31における上部前方室34の最上部に近い側壁には、サンプルガスを導出させる導出チューブ35の開口35aが臨んでいる。上部前方室34において、導出チューブ35の開口35aと内チューブ34aとの間には、疎水性フィルタ34bが設けられており、内チューブ34aから貯留槽31へ到来するガスに含まれる液体成分が疎水性フィルタ34bによって分離され、導出チューブ35からは液体成分が分離されたガスが導出される。
【0033】
貯留槽31の上部前方室34に隣接する位置には、細長い有蓋筒状の上部後方室36が設けられている。上部後方室36の最上部に近い側壁からは、貯留槽31からガスを引き込むためのバキュームチューブ37の開口37aが臨んでいる。バキュームチューブ37の開口37aと貯留槽31との間には、疎水性フィルタ36bが設けられており、この疎水性フィルタ36bによって、貯留槽31から上部後方室36へ引き込まれるガスに含まれている液体成分が分離され、バキュームチューブ37の開口37aへ引き込まれる。
【0034】
図3に示すように、導出チューブ35における出口側の開口部35Cは、ウオータトラップ3の背面板38に突出して形成された主排出管39Aに接続されている。また、バキュームチューブ37における出口側の開口部37Cは、ウオータトラップ3の背面板38に突出して形成された副排出管39Bに接続されている。
【0035】
以上のように構成されたウオータトラップ3によって、患者の呼吸ガスがサンプリングチューブを介して吸入管33へ到り、内チューブ34aを介して貯留槽31の上部へ到達する。ここにおいて結露などにより液化した液体成分は貯留槽31の底側へ貯留される。また、前述した通り、疎水性フィルタ34b、36bが液体を分離して貯留槽31へ閉じ込める。
【0036】
図5に示すように、筐体1におけるホルダ部2が位置付けられる部分には、開口部5が形成されている。開口部5は、ホルダ部2の長尺辺よりもやや長い四辺を有する例えば正方形形状に筐体1の正面板が切欠されて形成されたものである。この開口部5は、開口部5よりもやや大きな例えば正方形形状のフレーム6によって覆われる。フレーム6の四隅においてネジ8が穴に挿入され、筐体1の開口部5に近接する縁部に形成されたネジ穴と上記ネジ8が螺合することにより、フレーム6が筐体1に固定される。
【0037】
フレーム6には、円周の一部を構成する円弧状に二条の溝穴11、11が形成されている。この溝穴11、11の長さは、ホルダ部2の回転角度に応じて延長されるもので、ここではホルダ部2を90度回転する長さを有している。
【0038】
上記フレーム6とホルダ部2との間には、円盤状のプレート9が介装される。ホルダ部2の底板の形状である長方形の一つの対角線によって結ばれる一対の角部には、ネジ12を挿入する穴13が形成されている。ホルダ部2が載置されるべきプレート9上のエリアには、ホルダ部2の穴13に対応して穴14が形成されている。ネジ12のネジ部は上記ホルダ部2の穴13及びプレート9の穴14を貫通して、フレーム6の溝穴11へ到る。
【0039】
上記ネジ12に対向するフレーム6の面の方向から溝穴11へ向かって鋲15が設けられる。鋲15の頭部16は円盤状であり、その径は溝穴11の幅より長く構成されている。また、円盤状の頭部16の裏面側中央部からは脚部17が突出しており、この脚部17の径は溝穴11の幅より僅かに短く、このため、鋲15は脚部17が溝穴11に挿入された状態で、溝穴11に沿って摺動可能に構成されている。
【0040】
更に、鋲15の脚部17には、端面側から頭部16側へ向かってネジ12と螺合するネジ溝17aが形成されている。このため、ネジ12を上記ホルダ部2の穴13及びプレート9の穴14を貫通するように挿入し、上記ネジ12と対向するフレーム6の面の方向から溝穴11へ向かって鋲15を挿入し、ネジ12を鋲の脚部17に形成されているネジ溝17aに螺合させることによって、ホルダ部2がプレート9に固定されると共に鋲15の脚部17が溝穴11に嵌まった状態で、鋲15の頭部16がフレーム6の一方の面に当接した状態となる。このように、摺動溝である溝穴11を有するフレーム6と、ホルダ部2に固定される摺動体としての鋲15によって、回転機構が構成されている。
【0041】
図6、図7に示すように、ホルダ部2の背板には、ウオータトラップ3の主排出管39Aが挿入して嵌合する主挿入孔41Aと、ウオータトラップ3の副排出管39Bが挿入して嵌合する副挿入孔41Bが形成されている。この主挿入孔41A及び副挿入孔41Bは、ウオータトラップ3からプレート9側へ突出した主突出管42A内及び副突出管42B内へつながっている。プレート9とフレーム6において、ホルダ部2の回転に伴う主突出管42A及び副突出管42Bの回転範囲には、円形の透通穴43、44が形成されている。
【0042】
上記ホルダ部2から突出した主突出管42A及び副突出管42Bには、筐体1内の図8に示す取込チューブ45と吸引チューブ46が接続されている。これら取込チューブ45と吸引チューブ46は、ホルダ部2の回転に伴って動くことになるが、上記円形の透通穴43、44内を通って設けられているため、回転が疎外されることはない。
【0043】
ガス分析装置は、図8に示すように、筐体1内に電磁弁21、ガス計測部22、ポンプ23及び制御部20が備えられている。筐体1の壁部にはスイッチ等が設けられた操作部24が設けられ、制御部20へコマンド等を送出可能となっている。二重線により示す部分はチューブであり、ガスが流れる。
【0044】
取込チューブ45から取り込まれたガスは電磁弁21を介して、ガス計測部22へ送られる。ガス計測部22は、公知の手法により二酸化炭素、酸素、亜酸化窒素、揮発性麻酔薬などの濃度や換気量などの計測を行うものである。測定結果に係る情報は、制御部20から図示しないモニタなどへ送られ表示される。また、これらの情報は、当該ガス分析装置に表示されても良い。
【0045】
吸引チューブ46から取り込まれたガス及びガス計測部22から排出されたガスは、ポンプ23に吸引されて排出される。吸引チューブ46とポンプ23との間のチューブには適当な抵抗25が介装されて、ガスの流れが制御される。
【0046】
更に、姿勢センサ28がプレート9に貼着されており、姿勢センサ28の出力は制御部20へ送られる。制御部20には、スピーカとドライバによって構成されるアラーム発生手段29が接続されている。姿勢センサ28は、重力方向に対するホルダ部2の姿勢を検出するもので、3軸加速度センサなどと称され、保持したウオータトラップ3において貯留槽31が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する。制御部20は姿勢センサ28から検出信号を受け取ると、アラーム発生手段29を駆動してアラーム音を発生させる。アラーム発生手段29は、音以外に光や文字表示を行うものとすることもできる。また、ウオータトラップ3において貯留槽31が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を図示しないモニタに送出し、モニタでアラーム音を発生させてもよい。
【0047】
以上のように構成されたガス分析装置にあっては、図1に示されるように、筐体1の高さが低い状態に設置され、ホルダ部2が縦に長い状態であって、ホルダ部2の下部側にウオータトラップ3の貯留槽31が存在する状態が通常状態である。矢印Yが下を向いている状態が適正状態である。この状態では、既に説明したようにウオータトラップ3へ到来するガスから液体成分が分離されて、貯留槽31に貯留されてゆくので、適切に装置を動作させることができる。
【0048】
図1の状態では、ガス分析装置の設置面積が広く、この状態では設置する場所を確保できない状況も考えられる。このような場合には、図9に示すように縦方向に長い状態で設置することが出来る。図1の状態から筐体1を持って単に90度回転させて図9の状態となるように机上等に設置すると、姿勢センサ28が検出信号を送出し、アラーム発生手段29によるアラーム報知がなされる。
【0049】
そこで、図9の状態においてホルダ部2を矢印Rに示すように90度右回転させる。すると、鋲15の頭部16側から目視した図10、図11に示すように、鋲15の脚部17が溝穴11に挿入された状態で、溝穴11の一方の端部から溝穴11に沿って摺動して溝穴11の他方端部へ到る。筐体1との関係において示した場合には図9の状態からホルダ部が90度回転して、図12に示すように、ホルダ部2が筐体1と共に図の縦方向に長い状態であって、ホルダ部2の下部側にウオータトラップ3の貯留槽31が存在する状態となる。このとき、矢印Yが下を向いている適正状態である。この状態では、図1の状態と同様にウオータトラップ3へ到来するガスから液体成分が分離されて、貯留槽31に貯留されてゆくので、適切に装置を動作させることができる。
【0050】
なお図10と図11に示すように、溝穴11の両端部は、溝穴11の中間部の幅より極めて僅かに長い径の円形状部11a、11bに形成されている。このため、溝穴11の中間部においては鋲15の脚部17が溝穴11の縁部と当接しているのに対し、溝穴11の両端部に形成された円形状部a、11bにあっては、鋲15の脚部17が円形状部11a、11bの縁部に当接することなく円形状部11a、11bの中央部において留まる。つまり、ホルダ部2が所定角度である90度回転した場合に、該ホルダ部2をロックするロック手段が備えられている。
【0051】
上記においては、90度の回転が可能な回転機構による構成を例としたが、回転中心から二つの溝穴11までの距離を異ならせ、各溝穴11における端部の位置を僅かに異なる位置とし、これに鋲15を対応させることで、360度の回転を可能とすることができる。勿論、270度回転や180度回転の構成とすることもできる。この場合、前述の通り、溝穴11の中間部の幅より極めて僅かに長い径の円形状部11a、11bに匹敵する構成を90度回転毎に設け、90度回転毎にロックすることもできる。
【0052】
次に、第2の実施例に係るガス分析装置を説明する。ガス分析装置においては図13に示すように、ホルダ部2内の背板の中央に、主流路穴51と、この主流路穴51を囲繞するように形成された4つの副流路穴52とが形成されている。4つの副流路穴52は、主流路穴51を中心として順に90度ずつ回転した位置に形成されている。
【0053】
主流路穴51を中心として4つの副流路穴52を結ぶ線分方向には、4つの角穴53a〜53dが形成されている。ホルダ部2内の背板の裏面側には、主流路穴51と副流路穴52に対応する図7の如き主突出管41Aが突出して形成されており、また副流路穴52に対応する図7の如き副突出管41Bが4本突出して形成されている。主突出管41Aは、第2の実施例に係るガス分析装置の内部構成を示す図16に示される取出チューブ45に接続され、4本の副突出管41Bにはそれぞれ吸引チューブ46が接続され、全体では図16に示すように4本のチューブがポンプ23まで伸びる。このように、液体分離装置であるウオータトラップ3Aからガス計測部21へガスを流す主流路と、貯留槽31を吸引するための副流路とが備えられている。
【0054】
図14には、ウオータトラップ3Aの外観図が示されている。ウオータトラップ3Aの正面板32には、患者の呼吸ガスを取り出すサンプリングチューブに接続される吸入口33aが形成された吸入管33が設けられている。ウオータトラップ3Aの吸入口33aに接続される部分を含め、この内部構成は図4に示したウオータトラップ3と基本的に同一である。
【0055】
図15に示すように、ウオータトラップ3Aの背面板38に突出して主排出管39Aが形成されている。主排出管39Aを中心として順に90度ずつ回転した位置に4つの副排出管39Bが形成されている。主排出管39Aに接続されるウオータトラップ3Aの内部構成は、図4に示した構成と同一であるが、副排出管39Bに関しては、図4に示した副排出管39Bに関する内部構成を4経路備えている。
【0056】
図14の状態において、貯留槽31が重力方向の最下位位置に存在する状態である。この状態において、背面板38に突出して形成された4つの副排出管39Bの内において、最上部にある副排出管39Bの上には横長の凸片40が形成されている。
【0057】
上記凸片40は、ホルダ部2の角穴53a〜53dに嵌合する構成を有する。また、主排出管39Aは主流路穴51に嵌合し、4つの副排出管39Bは副流路穴52に嵌合する。従って、筐体1が図13の状態であるときに、ホルダ部2に対して図15の状態であるウオータトラップ3Aを挿入して嵌合保持させることができる。また、図15の状態から右または左に90回転させた状態であるウオータトラップ3Aを、図13の状態のホルダ部2に挿入して嵌合保持させることができる。更に、図15の状態から上下反転させた状態であるウオータトラップ3Aを、図13の状態のホルダ部2に挿入して嵌合保持させることができる。
【0058】
ホルダ部2の角穴53a〜53dの裏面には、凸片40が挿入された際に押圧されてスイッチオンとなる接点SWa〜SWdが設けられている。この接点SWa〜SWdは図16に示すように、第2姿勢センサ27として機能する。第2姿勢センサ27の接点SWa〜SWdに関するオンオフ情報は制御部20に取り込まれる。
【0059】
姿勢センサ28は、重力方向に対する筐体1の姿勢を検出するもので、筐体1が図17(a)〜図17(d)の四状態のいずれであるかを検出して、制御部20へ信号を送出する。筐体1の正面パネルの丸印により明らかな通り、筐体1の姿勢は四態様存在する。
【0060】
図17(a)〜図17(d)に合わせて、筐体姿勢をa〜dとすると、凸片40は、それぞれ53a〜53dに嵌合されたときに貯留槽31が重力方向の最下位位置に存在する状態である。つまり、スイッチオンとなる接点SWa〜SWdと、筐体1の姿勢a〜dとの組み合わせは、図18の通りとなる。これ以外の組み合わせの場合に、液体分離装置であるウオータトラップ3Aの姿勢が、該ウオータトラップ3Aにおいて貯留槽31が重力方向である最下部に設置された所定姿勢でないことが検出され、アラーム発生手段29からアラームを発生する。また、検出された信号が、図示しないモニタに送出され、モニタ側でアラームを発生させてもよい。
【0061】
以上のように構成された本実施例に係るガス分析装置によれば、筐体1の姿勢を図17(a)〜図17(d)のいずれの姿勢になったときにも、ホルダ部2に対してウオータトラップ3Aを、該ウオータトラップ3Aにおいて貯留槽31が重力方向である最下部に設置された姿勢(適正姿勢)として挿入して嵌合させることができ、適正な状態において使用が可能である。
【0062】
また、筐体1の姿勢を図17(a)〜図17(d)のいずれかの姿勢にした場合に、ウオータトラップ3Aを適正姿勢として挿入して嵌合させなければ、姿勢センサ28、第2姿勢センサ27、アラーム発生手段29及び制御部20によりアラームが発生され、不適切な設置或いは取り付けとなっていることが報知される。
【0063】
なお、本実施例では筐体1を90度、180度、270度、それぞれ回転させて設置した場合に対応する構成としたが、ホルダ部2内の背板に形成した主流路穴51と流路穴52の構成を変更し、また、これに合わせてウオータトラップ3の構成を変更し、90度だけ、或いは90度と270度回転しても、ウオータトラップ3Aにおいて貯留槽31が重力方向である最下部に設置された姿勢(適正姿勢)としてホルダ部2へ挿入して嵌合させることができ、適正に動作可能となる構成としても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 筐体 2 ホルダ部
3、3A ウオータトラップ 6 フレーム
9 プレート 11 溝穴
15 鋲 20 制御部
21 電磁弁 22 ガス計測部
23 ポンプ 27 姿勢センサ
28 第2姿勢センサ 29 アラーム発生手段
31 貯留槽 34b、36b 疎水性フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの計測を行うガス計測部と、
このガス計測部を収納する筐体と、
ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備えた液体分離装置と、
前記液体分離装置を保持するホルダ部と、
前記ホルダ部を前記筐体に取り付ける回転機構と、
を具備することを特徴とするガス分析装置
【請求項2】
保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部となる位置まで前記ホルダ部が回転した場合に、該ホルダ部をロックするロック手段が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
重力方向に対する前記ホルダ部の姿勢を検出するセンサ
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記センサによって検出された前記ホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するアラーム手段
を具備することを特徴とする請求項3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記センサによって検出された前記ホルダ部の姿勢が、保持した液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段
を具備することを特徴とする請求項3に記載のガス分析装置。
【請求項6】
ガスの計測を行うガス計測部と、
このガス計測部を収納する筐体と、
ガスから分離した液体成分を貯留する貯留槽を備え、液体成分が分離されたガスを前記ガス計測部へ導く液体分離装置を保持するホルダ部と、
前記ホルダ部内に液体分離装置を90度ずつ異なる姿勢において保持する保持手段と
を具備することを特徴とするガス分析装置。
【請求項7】
前記保持手段には、液体分離装置からガス計測部へガスを流す主流路と、貯留槽を吸引するための副流路とが備えられていることを特徴とする請求項6に記載のガス分析装置。
【請求項8】
ホルダ部における液体分離装置との対向面には、主流路の流路口と、この主流路の流路口を中心に対称に配置された副流路の副流路口と、が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のガス分析装置。
【請求項9】
重力方向に対する前記ホルダ部に保持された液体分離装置の姿勢を検出するセンサ
を具備することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記センサによって検出された前記液体分離装置の姿勢が、該液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合にアラームを発生するアラーム手段
を具備することを特徴とする請求項9に記載のガス分析装置。
【請求項11】
前記センサによって検出された前記液体分離装置の姿勢が、該液体分離装置において貯留槽が重力方向の最下部に位置する所定姿勢でない場合に検出信号を送出する送出手段
を具備することを特徴とする請求項9に記載のガス分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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